説明

静電荷像現像剤

【課題】トナー消費量が少なく長期使用しても画像濃度が低下しにくい静電荷像現像剤を提供する。本発明によれば、二成分静電荷現像剤中のキャリアの帯電量が高くなる作用をもたらす。その結果、感光体潜像への過度なトナー付着が防がれるためトナー消費量が低減できる効果、帯電が低下しにくく安定するために長期使用後の画像濃度を維持できる効果、スリーブローラーからキャリアが離脱しにくくなるのでキャリアが感光体を汚染して画像を乱すことを防止する。
【解決手段】 結着樹脂、帯電制御剤を少なくとも含有するトナーと、キャリアと、からなる静電荷像現像剤であって、該キャリアが、酸化鉄(III)と、酸化銅および酸化亜鉛を主成分とする金属酸化物との質量比が6:4〜8:2の範囲であり、かつ該キャリアが樹脂コートされている静電荷像現像剤。前記金属酸化物に含まれる酸化銅および酸化亜鉛の質量比が94%以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電記録、電子写真等(以下、「電子写真等」という。)において使用される静電荷像現像剤に関する。より詳しくは静電荷像現像用トナー(トナー)とキャリアとからなる二成分現像方式用の静電荷像現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真等においてトナーを帯電させる方法として、該トナーと金属成分を含むキャリアとを混合、攪拌する二成分現像方式が良く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−129272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環境への負荷をより低減させることを目的に、従来の二成分現像方式用の静電荷像現像剤と比較して、よりトナー消費量が少なく長期使用しても画像濃度が低下しにくい静電荷像現像剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記の技術的構成により、前記課題を解決できたものである。
本発明(1)の静電荷像現像剤は、結着樹脂、帯電制御剤を少なくとも含有するトナーと、キャリアと、からなる静電荷像現像剤であって、該キャリアが酸化鉄(III)と、酸化銅および酸化亜鉛を主成分とする金属酸化物との質量比が6:4〜8:2の範囲であり、かつ該キャリアが樹脂コートされていることを特徴とする。
【0006】
本発明(2)の静電荷像現像剤は、上記(1)の静電荷像現像剤において、金属酸化物に含まれる酸化銅および酸化亜鉛の質量比が94%以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来のキャリア、例えば酸化マンガンおよび酸化マグネシウムを含む樹脂コートフェライト系キャリアと比較して、キャリアの帯電量が高い静電荷像現像剤を提供することができる。その結果、感光体潜像への過度なトナー付着を防ぐことができるためトナー消費量が低減でき、帯電が低下しにくく安定するために長期使用後の画像濃度を維持でき、スリーブローラーからキャリアが離脱(いわゆるキャリア上がり)しにくくなるのでキャリアが感光体を汚染して画像を乱すこと(いわゆるドラム現像)を防止できる、等の効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0009】
(キャリア)
本発明に用いられるキャリアは、酸化鉄(III)と、酸化銅および酸化亜鉛を主成分とする金属酸化物と、の質量比が6:4〜8:2の範囲であるフェライト系キャリアであることが好ましい。フェライト系キャリア中の酸化鉄(III)の質量比が80%を超えると、キャリアの帯電量が不十分となりやすく、本発明の効果を十分に得ることができない。金属酸化物の質量比が40%を超えると、電気抵抗が下がりすぎることにより帯電量が不十分となりやすく、この場合も本発明の効果を十分にえることができない。
【0010】
キャリア中の銅成分および亜鉛成分は、各々3%以上含有されるフェライトを用いることが好ましい。銅成分または亜鉛成分のいずれかが3%未満であると、電気抵抗のバランスが崩れるためか、キャリアの帯電量が不十分となりやすく、本発明の効果を十分に得ることができない。
【0011】
前記樹脂コートは、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、スチレン系樹脂など種々の樹脂が使用可能であるが、特にアクリル系樹脂、シリコーン樹脂のいずれか単独もしくは併用によるコートであることが、キャリアおよび現像剤の耐久性が高くでき、キャリアの帯電量を高く維持できるので好ましく、特にアクリル樹脂コートが好ましい。樹脂コートしないキャリアは、現像剤の攪拌の際にトナー粒子を研磨しやすく、現像剤の耐久性が損なわれやすくなるという問題がある。
【0012】
キャリアの平均粒子径は20〜150μmであるのが好ましい。20μmより小さいとトナー粒子の大きさに近づいてスリーブローラーへの保持が困難となりやすくなり、150μmを超えると表面積が小さくなるためにトナーの摩擦帯電が不十分となりやすくなり、いずれも画質の低下、現像剤の耐久性の低下等につながる。
【0013】
(結着樹脂)
本発明に用いられる結着樹脂としては、ポリエステル系、スチレン−アクリル系共重合体、ポリオレフィン系、エチレン−環状ポリオレフィン共重合体、などの樹脂を適宜使用することができる。これら結着樹脂を、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化重合法、スプレードライ法等によりトナーに用いられる。
【0014】
(帯電制御剤)
本発明に用いられるトナーには、帯電制御剤が必須である。
正荷電性帯電制御剤としては、例えばニグロシン系染料、4級アンモニウム塩系化合物、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂などがある。
負荷電性帯電制御剤としては、Cr、Co、Al、Fe等の金属含有アゾ系染料、サリチル酸金属化合物、アルキルサリチル酸金属化合物、カーリックスアレーン化合物、ホウ素錯体、高分子タイプ帯電制御剤などがある。
添加量は、結着樹脂100質量部に対して0.05〜10質量部程度が好ましい。
【0015】
(着色剤)
前記トナーは、発色のため、適宜、着色剤を添加することができる。
イエロー着色剤の顔料系としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。
具体的には、C.I.PigmentYellow3、7、10、12、13、14、15、17、23、24、60、62、73、74、75、83、93、94、95、99、100、101、104、108、109、110、111、117、122、123、128、129、138、139、147、148、150、155、166、168、169、177、179、180、181、183、185、191:1、191、192、193、199が好適に用いられる。
染料系としては、例えば、C.l.solventYellow33、56、79、82、93、112、162、163、C.I.disperseYellow42.64.201.211が挙げられる。
【0016】
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。
具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレッド19が特に好ましい。
【0017】
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。
具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が特に好適に利用される。
【0018】
黒色着色剤としては、アセチレンブラック、ランブラック、アニリンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、ニグロシン、鉄黒、四三酸化鉄、酸化鉄マンガン、酸化鉄亜鉛、酸化鉄ニッケル等の磁性粒子等が利用できるほか、上記イエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用される。
【0019】
着色剤の添加量としては、結着樹脂100質量部に対して2〜20質量部、好ましくは2〜15質量部、さらにはトナー像の好適なOHPフィルムの透過性を考慮すると12質量部未満の範囲で使用されるのが好ましく、通常3〜9質量部であるのが最も好適である。
【0020】
(外添剤)
本発明に用いられるトナーには、流動性付与の観点から、外添剤が表面に付着していることが好ましい。
外添剤としては無機または有機の各種外添剤を使用することができるが、特にトナーの流動性向上、凝集性抑制を図る為にシリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、金属石鹸(ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛等)等の無機微粉末が好適である。
【0021】
外添剤の混合量は、使用する外添剤及びトナー粒子の平均粒径、粒度分布などにより異なるが、所望するトナー流動性を得る量を適宜選択できる。一般的にはトナー粒子100質量部に対して0.05〜10質量部、更には0.1〜8質量部が好適である。
混合量が0.05質量部未満では流動性改善効果が少なく、高温での貯蔵安定性能が悪くなる。混合量が10質量部より多いと一部遊離した外添剤により感光体にフィルミングを発生したり、現像槽内部に堆積して現像剤の帯電機能劣化等の障害を引き起こしたりして好ましくない。
【0022】
また、外添剤は高湿環境下での安定性面より、無機微粉末の場合にはシランカップリングなどの処理剤で疎水化処理されたものがより好ましく、更に、帯電性を考慮する場合には負荷電性を付与する処理剤としてはジメチルジクロルシラン、モノオクチルトリクロルシラン、ヘキサメチルジシラザン、シリコーンオイルなど、正荷電性を付与する処理剤としてはアミノシランなどを使用すればよい。
【0023】
この他、外添剤としてトナーの電気抵抗調整、研磨剤などの目的で、流動性改善用以外のマグネタイト、フェライト、導電性チタン、酸化アンチモン、酸化錫、酸化セリウム、ハイドロタルサイト類化合物、アクリルビーズ、シリコーンビーズ、ポリエチレンビーズなどの微粉末を適量混合してもよく、その混合量はトナー100質量部に対して0.005〜10質量部が好ましい。
【0024】
さらに、外添剤としてポリ4フッ化エチレン樹脂粉末、ポリフッ化ビニリデン樹脂粉末などの樹脂微粉末を付着してもよい。トナーに対してこれらの樹脂微粉末を添加する割合は、トナー100質量部対して、0.01〜8質量部の範囲から適宜選択でき、好ましくは0.1〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜4質量部である。
【0025】
トナー粒子への外添剤の付着方法としては、ドライブレンドによる混合を行うことが好ましく、混合装置の一例としては、ダブルコーン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等を挙げることができる。
【0026】
以下、この発明の実施の形態について実施例により説明する。
【実施例1】
【0027】
トナー5.0質量部と、酸化鉄(III)と前記酸化銅および酸化亜鉛を主成分とする金属酸化物との質量比が6:4〜8:2の範囲であるアクリル樹脂コートフェライト系キャリア(パウダーテック社製)95.0質量部とを混合し、実施例1の静電荷像現像剤を得た。
【0028】
[比較例1]
トナー5.0質量部と、酸化マンガンおよび酸化マグネシウムを含むアクリル樹脂コートフェライト系キャリア(関東電化社製)95.0質量部とを混合し、比較例1の静電荷像現像剤を得た。
【0029】
<製造したトナー及びその画像に関する評価>
(トナー粒子の帯電性)
実施例及び比較例の二成分現像剤を、それぞれ二成分現像方式の負極性トナー用複写機(シャープ社製 商品名:「SF2030」)の現像装置に入れ、A4サイズコピー用紙(上質紙)に印字率6%にて印字した。2000枚印字後と10万枚印字後の帯電量を測定し、その差を帯電性として評価した。
(2000枚印字後の帯電量)−(10万枚印字後の帯電量)
○:5.0μC/g未満
×:5.0μC/g以上
なお、帯電量はEpping社製、qmメーターにて測定した。
【0030】
(画像濃度)
上記10万枚印字後の画像濃度を測定し、評価した。
なお、画像濃度は反射濃度計(マクベス社製、商品名:RD−914)を使用して測定した。画像濃度1.3以上であれば実用上問題なく、1.3未満であれば実用上問題がある。
【0031】
(地汚れ)
上記現像条件におけるコピー用紙の地肌部の汚れについて、転写紙上の地肌部(非画像部)に付着しているトナーの個数を数え、1cm当たり付着個数(個/cm)に換算し、以下の基準で4段階に評価した。
A:0〜50(個/cm
B:51〜100
C:101〜200
D:200以上
【0032】
次に、実施例及び比較例の二成分現像剤を、前記二成分現像方式の複写機で、印字率20%、プリントスピード:24ページ/分として、A4サイズコピー用紙(上質紙)に低現像電位、低転写電位条件(現像電圧:−250V、一次転写電圧:800V)で50000枚までの耐刷試験を実施した。
そして、トナー消費量について評価した。
【0033】
(トナー消費量)
トナー消費量は、1000枚プリントするのに要したトナー量を測定した。
なお、トナー消費量は50g未満であれば実用上問題ない。
結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1に示されるように、実施例1は、帯電性に優れ、画像濃度、地汚れ、トナー消費量においても実用上問題なかった。
これに対し、比較例1は、帯電性、画像濃度、地汚れ、オフセット発生、トナー消費量において実用上問題があった。
【0036】
以上のように、本発明によれば、二成分静電荷現像剤中のキャリアの帯電量が高くなる作用をもたらす。その結果、感光体潜像への過度なトナー付着が防がれるためトナー消費量が低減できる効果、帯電が低下しにくく安定するために長期使用後の画像濃度を維持できる効果、スリーブローラーからキャリアが離脱(いわゆるキャリア上がり)しにくくなるのでキャリアが感光体を汚染して画像を乱すこと(いわゆるドラム現像)を防止することができる効果を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂、帯電制御剤を少なくとも含有するトナーと、キャリアと、からなる静電荷像現像剤であって、該キャリアが、酸化鉄(III)と、酸化銅および酸化亜鉛を主成分とする金属酸化物との質量比が6:4〜8:2の範囲であり、かつ該キャリアが樹脂コートされていることを特徴とする静電荷像現像剤。
【請求項2】
前記金属酸化物に含まれる酸化銅および酸化亜鉛の質量比が94%以上であることを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像剤。