説明

静電荷像現像用トナーおよびその製造方法

【課題】 環状ポリオレフィン系樹脂を用いて、印刷枚数が増加しても巻き付き現象を防止できる静電荷像現像用トナーおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 環状ポリオレフィン系樹脂と、極性樹脂とを含有し、該環状ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して該極性樹脂が10〜50重量部であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。少なくとも、環状ポリオレフィン樹脂および着色剤を溶融混練し、混練物を得る工程、該混練物を粉砕して着色粒子を得る工程、該着色粒子および極性樹脂を溶融混練し、粉砕、分級してトナーを得る工程、を有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法に用いられる静電荷像現像用トナーおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トナーの主成分である結着樹脂として、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂に加えて、環状ポリオレフィン系樹脂(シクロオレフィン系樹脂)が検討されている。
環状ポリオレフィン系樹脂は、無色・透明性、良好な熱特性(低温定着・高速定着性)、シャープな分子量分布、良好な粉砕性(高生産性、シャープな粒度分布)、低吸水性、無臭、無公害など種々の優れた特性を有しているが、トナー定着時に転写紙が定着ローラーに巻き付く現象が発生しやすい欠点がある。
【0003】
そこで、その欠点を解消するために環化ポリイソプレンを添加する技術や(例えば、特許文献1を参照。)エラストマーを添加する技術(例えば、特許文献2を参照。)などが提案されている。
【0004】
しかしながら、環状ポリオレフィン系樹脂に環化ポリイソプレンやエラストマーを均一に分散させることは容易でなく、トナー粒子によって分散の良し悪しに差が生じていた。
そのため、現像器内では分散が良く帯電性の良いトナーが優先的に消費されるいわゆる選択現像が起こり、結果として印刷枚数の増加に伴って巻き付き現象が増加するという問題点があった。
【0005】
【特許文献1】特開2003−035971号公報
【特許文献2】特開2005−292362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とする処は、環状ポリオレフィン系樹脂を用いて、印刷枚数が増加しても巻き付き現象を防止できる静電荷像現像用トナーおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の技術的構成により、上記課題を解決できたものである。
【0008】
(1)環状ポリオレフィン系樹脂と、極性樹脂とを含有し、該環状ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して該極性樹脂が10〜50重量部であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
(2)さらに、相溶化剤を含有することを特徴とする前記(1)記載の静電荷像現像用トナー。
(3)前記相溶化剤は、無極性セグメントと極性セグメントを有する重合体であることを特徴とする前記(2)記載の静電荷現像用トナー。
(4)前記極性樹脂は、スチレン−アクリル系樹脂またはポリエステル系樹脂であることを特徴とする前記(1)記載の静電荷像現像用トナー。
(5)さらに、ワックスを含有することを特徴とする前記(1)ないし(4)のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
(6)少なくとも、環状ポリオレフィン樹脂および着色剤を溶融混練し、混練物を得る工程、該混練物を粉砕して着色粒子を得る工程、該着色粒子および極性樹脂を溶融混練し、粉砕、分級してトナーを得る工程、を有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、環状ポリオレフィン系樹脂を用いて、印刷枚数が増加しても巻き付き現象を防止できる静電荷像現像用トナーおよびその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、トナーともいう。)は、環状ポリオレフィン系樹脂と、極性樹脂とを含有し、該環状ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して該極性樹脂が10〜50重量部であることを特徴とする。
【0011】
[環状ポリオレフィン系樹脂]
環状ポリオレフィン系樹脂は、少なくとも1種類の環状オレフィンを含有し、下記の重合体(a)、(b)、(c)等が例示できる。
(a)1種類の環状オレフィンで構成されている単独重合体
(b)2種類以上の環状オレフィンで構成されている共重合体
(c)環状オレフィンと非環式不飽和単量体とで構成されている共重合体
環状オレフィンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環環状オレフィン又はこれらの誘導体、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエンなどの環状共役ジエン又はこれらの誘導体、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、トリシクロデセン、テトラシクロドデセン、ヘキサシクロヘプタデセンなどの多環状オレフィン又はこれらの誘導体、ビニルシクロブタン、ビニルシクロブテン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロヘプテン、ビニルシクロオクタン、ビニルシクロオクテンなどのビニル環状炭化水素又はこれらの誘導体、スチレンなどのビニル芳香族系単量体の芳香環部分の水素化物又はこれらの誘導体、などの、少なくとも1つの二重結合を有する環式及び/又は多環式オレフィン系化合物が例示できる。
これらの環状オレフィンは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
前記誘導体としては、アルキル置換体、アルキリデン置換体、アルコキシ置換体、アシル置換体、ハロゲン置換体、カルボキシル置換体等が挙げられる。
環状構造を構成する炭素原子数は、成形性及び透明性等の観点から、通常、4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個程度である。
【0012】
環状ポリオレフィン系樹脂は、前記(a)、(b)および(c)の中でも特に(c)であることが粉砕性、加工性、機械特性等の点で好ましい。
非環式不飽和単量体は、環状オレフィンと共重合可能な非環式不飽和単量体であれば特に制限されないが、例えば、オレフィン系単量体;(メタ)アクリル酸系単量体;例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸C1−6アルキルエステルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体;例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニル化エステル単量体;例えば、(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体;例えば、ブタジエン、1,4−ペンタジエン、イソプレンなどジエン系単量体、等が例示できる。
これらの非環式不飽和単量体は単独で又は2種類以上組み合わせて使用してもよい。
非環式不飽和単量体は、上記の中でも特に、トナーに柔軟性を付与する点から、オレフィン系単量体を用いるのが好ましい。
オレフィン系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブチレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等のα−C2−10オレフィン(好ましくはα−C2−6オレフィン、さらに好ましくはα−C2−4オレフィン)、イソブテン、イソプレンなどの分枝鎖状オレフィンなどが挙げられる。
これらのオレフィンは、単独で又は2種類以上組み合わせて使用してもよい。
これらのオレフィンのうち、エチレン、プロピレンが特に好ましい。
非環式不飽和単量体の使用量は、環状オレフィン100モルに対して、100モル以下、好ましくは1〜90モル、さらに好ましくは1〜80モル程度の範囲から選択できる。
【0013】
環状ポリオレフィン系樹脂の中で、(c)の具体例としては、エチレン又はプロピレンと、ノルボルネンとの共重合体(エチレン−ノルボルネン共重合体、プロピレン−ノルボルネン共重合体など)が好ましく使用でき、不飽和二重結合が無く、無色透明で高い光透過率を有するものであるのが好ましい。
【0014】
環状ポリオレフィン系樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した分子量が4万以上の分子量体の含有率が10〜40重量%であり、かつ分子量40万以上の分子量体の含有率が5〜20重量%であることが好ましい。
【0015】
(c)のガラス転移温度は、環状オレフィンと非環式不飽和単量体との組成比で決まり、通常、50〜200℃程度であり、用途や成形温度に応じて適宜選択できる。
トナー用としては、50〜80℃、好ましくは50〜70℃、さらに好ましくは50℃〜65℃程度である。
【0016】
環状ポリオレフィン系樹脂は、カルボキシル基、水酸基、アミノ基などを既知の方法により導入してもよい。
さらに、カルボキシル基を導入した環状ポリオレフィン系樹脂には、亜鉛、銅、カルシウム等の金属の添加により架橋構造を導入してもよい。
これらの置換基あるいは金属架橋構造を導入することにより、定着特性が向上するとともに、トナー製造時に他の樹脂や着色剤との混合性が向上するため、トナーの成形性も向上する。
【0017】
[極性樹脂]
極性樹脂は、極性を有する樹脂であれば特に制限はないが、スチレン−アクリル系樹脂またはポリエステル系樹脂であることが好ましい。スチレン−アクリル系樹脂は、他の樹脂に比べて比重が小さいのでトナー消費量の低減に寄与する。また、ポリエステル系樹脂は、発色度と光沢度が良好で機械的耐久性にも優れている。
また、ポリエステル樹脂の中でも環境に配慮する観点から、生分解性を有するポリヒドロキシアルカノエート樹脂がさらに好ましく用いられる。
極性樹脂の配合量は、環状ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して10〜50重量部であることが必要である。
10重量部未満では巻き付きが発生してしまう。また、50重量部を超えると臭気が生じるなどして、環状ポリオレフィン系樹脂の特徴を十分に発揮できない。
なお、より好ましくは15〜33重量部、もっとも好ましくは25重量部程度である。
【0018】
[相溶化剤]
本発明のトナーは、さらに相溶化剤を含有することが好ましい。
相溶化剤は、環状オレフィン系樹脂と極性樹脂を相溶化させるものならば特に制限されることはないが、無極性セグメントと極性セグメントを有するブロック共重合体であることが好ましい。
【0019】
そして、無極性セグメントはオレフィン系セグメントであることが好ましい。
オレフィン系セグメントは、オレフィン系モノマーが重合またはオレフィン系モノマーとスチレン系モノマーとが共重合したセグメントである。
オレフィン系モノマーとしては、エチレン、プロピレン、メチルペンテン、ブタジエン、ノルボルネン誘導体などが挙げられる。
オレフィン系モノマーは、1種類だけ用いてもよいし、2種類以上用いてもよい。
【0020】
また、極性セグメントはエステル系セグメントまたはスチレン系セグメントであることが好ましい。
エステル系セグメントは、アルコール系モノマーと酸系モノマーが縮重合したセグメントである。
アルコール系モノマーとしては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等のα,ω−アルキレンジオール(C2〜C12)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族二価アルコール類、グリセリン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、単糖類、二糖類、開環糖、変性糖などの糖類等の多価アルコール類、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン等のビスフェノール類、これらビスフェノール類の水酸基をポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等アルキレングリコールにより変性したもの、これらビスフェノール類の芳香環を水素添加したものなどが用いられる。
酸系モノマーとしては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、オクチルコハク酸等の飽和脂肪族カルボン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸等の不飽和脂肪族カルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ビシクロ[2,2,1]ジカルボン酸等の環状脂肪族カルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、無水1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、無水1,2,4−ブタントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、無水1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等の三価以上の多価カルボン酸などが用いられる。
ここでカルボン酸は、酸ハライド、エステル、酸無水物であってもよい。
【0021】
また、スチレン系セグメントは、スチレン系モノマーが重合またはスチレン系モノマーとアクリル系モノマーとが共重合したセグメントである。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルステレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、P−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレンなどがある。
アクリル系モノマーとしては、たとえばn−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート−N−(エトキシメチル)アクリルアミド、エチレングリコールメタクリレート、4−ヘキサフルオロブチルメタクリレートなどが挙げられる。
これらのアクリル系モノマーは1種類だけ用いてもよいし、2種類以上用いてもよい。
なお、上記モノマーは変性されたものであってもよい。
このような相溶化剤として、例えばペトロライト社製、CERAMERシリーズなどが挙げられる。
【0022】
また、相溶化剤にはその他のモノマーが重合されていてもよい。
その他のモノマーとしては、ビニル系モノマー、例えば、ビニルエステル系モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル、ビニルエーテル系モノマーとしては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニルケトン系モノマーとしては、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン、ジエン系モノマーとしては、イソプレン、2−クロロブタジエン等のジエン系モノマー等を用いることができる。
相溶化剤の配合量は、環状ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して1〜15重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜5重量部である。
【0023】
[着色剤]
本発明のトナーに用いられる着色剤は、黒トナー用としては、ブラック用顔料、カラートナー用としては、マゼンタ用顔料、シアン用顔料、イエロー用顔料等が使用できる。
ブラック用顔料としては、通常、カーボンブラックが使用できる。カーボンブラックとしては、個数平均粒子径、吸油量、PH等に制限されることなく使用できるが、市販品として以下のものが挙げられる。例えば、米国キャボット社製 商品名:リーガル(REGAL)400、660、330、300、SRF−S、ステリング(STERLING)SO、V、NS、R、コロンビア・カーボン日本社製 商品名:ラーベン(RAVEN)H20、MT−P、410、420、430、450、500、760、780、1000、1035、1060、1080、三菱化学社製 商品名:#5B、#10B、#40、#2400B、MA−100等が使用できる。これらのカーボンブラックは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
本発明のトナー中のカーボンブラックの割合は0.1〜20重量%の範囲から選択でき、好ましくは1〜10重量%、さらに好ましくは1〜5重量%(特に1〜3重量%が好ましい)である。カーボンブラックの割合が少なすぎると画像濃度が低下し、多すぎると画質が低下しやすく、トナー成形性も低下する。ブラック用顔料としてはカーボンブラックの他、酸化鉄やフェライトなどの黒色の磁性粉も使用できる。
【0024】
マゼンタ用顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50,51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207、209;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレット1、2,10、13、15、23、29、35等が使用できる。これらのマゼンタ用顔料は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
シアン用顔料としてはC.I.ピグメントブル−2、3、15、16、17;C.I.バットブル−6;C.I.アシッドブル−45等が使用できる。これらのシアン用顔料は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
イエロ−用顔料としてはC.I.ピグメントイエロ−1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、74、83、93、94、97、155、180等が使用できる。これらのイエロ−用顔料は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
フルカラー用のカラー用顔料としては、混色性および色再現性の観点から、マゼンタ用顔料はC.I.ピグメントレッド57、122が、シアン用顔料は、C.I.ピグメントブルー15が、イエロー用顔料は、C.I.ピグメントイエロー17、93、155、180が好適に使用できる。
カラー用顔料の割合は、本発明のトナー中に、1〜20重量%の範囲から選択でき、好ましくは3〜10重量%、さらに好ましくは4〜9重量%(特に4.5〜8重量%が好ましい)である。これらの顔料の割合が上記範囲より少な過ぎると画像濃度が低下し、多過ぎると帯電安定性が悪化して画質が低下しやすい。またコスト的にも不利である。
また、カラー用顔料は、予め結着樹脂となり得る樹脂中に高濃度で分散させた、いわゆるマスターバッチを使用してもよい。
【0025】
本発明のトナーには必要に応じて、帯電制御剤を添加してもよい。
本発明に適用される帯電制御剤は、その用途に応じて、正帯電性帯電制御剤と負帯電性帯電制御剤とがある。
正帯電性の帯電制御剤としては、例えばニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の第四級アンモニウム塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド、ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート、ピリジウム塩、アジン、トリフェニルメタン系化合物及びカチオン性官能基を有する低分子量ポリマー等が挙げられる。
これらの正帯電性の帯電制御剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの正帯電性の帯電制御剤は、ニグロシン系化合物、第四級アンモニウム塩が好ましく用いられる。
負帯電性の帯電制御剤としては、例えばアセチルアセトン金属錯体、モノアゾ金属錯体、ナフトエ酸あるいはサリチル酸系の金属錯体または塩等の有機金属化合物、キレート化合物、アニオン性官能基を有する低分子量ポリマー等が挙げられる。
これらの負帯電性の帯電制御剤は、単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
これらの負帯電性の帯電制御剤は、サリチル酸系金属錯体、モノアゾ金属錯体が好ましく用いられる。
帯電制御剤の添加量は、樹脂組成物100重量%に対して、通常、0.1〜5重量%の範囲で選択でき、好ましくは0.5〜4重量%、さらに好ましくは1〜4重量%である。
また、帯電制御剤は、カラートナー用には無色あるいは淡色であることが好ましい。
【0026】
本発明のトナーは、離型剤としてワックスを含有することが好ましい。
ワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、変性ポリエチレンワックスなどのポリオレフィン系ワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、硬化ひまし油などが挙げられる。
これらのワックスは、単独で又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
ワックスの含有量は、トナー中に、0.1〜10重量%の範囲で選択でき、好ましくは0.5〜7重量%、さらに好ましくは1〜5重量%である。
ワックスの添加量が前記範囲内であると、耐融着性、トナー成形性、離型性のバランスがよい。
【0027】
本発明のトナーには、さらに必要に応じて磁性粉、例えば、コバルト、鉄、ニッケル等の金属、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、マグネシウム、スズ、亜鉛、金、銀、セレン、チタン、タングステン、ジルコニウム、その他の金属の合金、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ニッケル等の金属酸化物、フェライト、マグネタイトなどが使用できる。
磁性粉の添加量は、樹脂組成物100重量%に対して、通常、1〜70重量%、好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜40重量%である。
磁性粉の平均粒子径は、0.01〜3μmのものが好適に使用できる。
【0028】
本発明のトナーには、さらに必要に応じて種々の添加剤、例えば、安定剤(例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤など)、難燃剤、防曇剤、分散剤、核剤、可塑剤(フタル酸エステル、脂肪酸系可塑剤、リン酸系可塑剤など)、高分子帯電防止剤、低分子帯電防止剤、相溶化剤、導電剤、充填剤、流動性改良剤などを添加してもよい。
【0029】
本発明のトナーは、流動性付与の観点から、無機微粒子が表面に付着していることが好ましい。
無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、カーボンブラック粉末、磁性粉等が挙げられる。
これらの無機微粒子は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの無機微粒子のうち、シリカが特に好適に使用できる。
シリカは、平均粒子径、BET比表面積、表面処理など特に制限されなく、用途に応じ適宜選択できるが、BET比表面積は50〜400m/gの範囲にあるのが好ましく、表面処理された疎水性シリカであるのが好ましい。
【0030】
前記無機微粒子に加えて、本発明のトナーには更に、ポリ4フッ化エチレン樹脂粉末、ポリフッ化ビニリデン樹脂粉末などの樹脂微粉末を付着してもよい。
トナーに対してこれらの無機微粒子や樹脂微粉末を添加する割合は、トナー100重量部対して、0.01〜8重量部の範囲から適宜選択でき、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜4重量部(特に0.3〜3重量部)である。
添加する割合が前記範囲から外れると、トナーの流動性や帯電安定性が低下して、均一な画像が形成しにくい。
【0031】
本発明のトナーは、現像方式によって特に使用が制限されるものではなく、非磁性一成分現像方式、磁性一成分現像方式、二成分現像方式、その他の現像方式に使用できる。
磁性一成分現像方式用トナーは、前記磁性粉を結着樹脂に混合し磁性トナーとして使用し、二成分現像方式用トナーはキャリアと混合して使用する。
装置の簡便性やコスト的な観点から、非磁性一成分現像方式用トナーとして使用されることが好ましい。
【0032】
二成分現像方式でのキャリアとしては、例えば、ニッケル、コバルト、酸化鉄、フェライト、鉄、ガラスビーズなどが使用できる。
これらのキャリアは単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
キャリアの平均粒子径は20〜150μmであるのが好ましい。
また、キャリアの表面は、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂などの被覆剤で被覆されていていてもよい。
【0033】
本発明のトナーは、モノクロ用トナーであってもよいがフルカラー用トナーとして好適に用いることができる。
モノクロ用トナーでは、着色剤として非磁性トナーには前記カーボンブラック、磁性系トナーには前記カーボンブラックの他、前記磁性粉の内黒色のものが使用できる。フルカラー用トナーでは、着色剤として、前記カラー用顔料が使用できる。
【0034】
[トナーの製造方法]
本発明のトナーの製造方法は、特に制限されないが、通常、環状ポリオレフィン系樹脂、極性樹脂、相溶化剤、着色剤およびその他の添加剤を乾式混合、熱溶融混練して混練物を作製し、ついで該混練物を粉砕・分級して所望の粒子径および粒子形状のトナーを得ることができる。
また、樹脂を重合しながらトナー粒子を得る方法であってもよい。
その中でも、環状ポリオレフィン樹脂および着色剤を溶融混練し、混練物を得る工程、該混練物を粉砕して着色粒子を得る工程、該着色粒子および極性樹脂を溶融混練し、粉砕、分級してトナーを得る工程、を有するトナーの製造方法が好ましい。
本発明では、結着樹脂として環状ポリオレフィン樹脂と極性樹脂を用いるが、環状ポリオレフィン樹脂と極性樹脂と着色剤とを一度に溶融混練すると極性樹脂のみが着色されて、まだら状になってしまうことが多い。
そこで、予め環状ポリオレフィン樹脂と着色剤を溶融混練し、しかも粉砕しておくことで極性樹脂と色の均一性を保ちやすくなるものである。
乾式混合方法としては、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンミキサーなどの攪拌機による方法を用いることができる。
熱溶融混練方法としては、種々の方法、例えば、2軸押出機による方法、バンバリーミキサーによる方法、加圧ローラによる方法、加圧ニーダーによる方法などの慣用の方法を用いることができる。
粉砕方法としては、ハンマーミル、カッターミルあるいはジェットミル等の粉砕機による粉砕方法が挙げられる。
分級方法としては、通常、乾式遠心分級機のような気流分級機が使用できる。
このようにして体積平均粒子径6〜10μm程度の分級トナーを得ることができる。体積平均粒子径はより好ましくは6〜9μm、さらに好ましくは6〜8μmである。
なお、体積平均粒子径は、粒度分布測定装置(マルチサイザーII、ベックマン・コールター社製)を用いて測定した体積50%径である。
また、分級トナー表面には、タービン型攪拌機、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の攪拌機を用いて前記無機微粒子および樹脂微粉末を付着させてもよい。
【実施例】
【0035】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、原材料の配合量は重量部である。
【0036】
<実施例1>
【0037】
下記原材料をヘンシェルミキサーで均一に混合した後、二軸混練押出機で溶融混練し、混練物を放置冷却した。
・環状ポリオレフィン樹脂 100部
(ポリプラスチック社製、商品名:「TOPAS COC」)
・シアン顔料粉末 8.0部
(大日精化工業社製、商品名:「シアン No.4」)
次いで混練物をハンマーミルで粗粉砕し、着色粒子を得た。
そして、下記原材料をスーパーミキサーで均一に混合した後、二軸混練押出機で溶融混練し、混練物を放置冷却した。
・着色粒子 108部
・ポリエステル樹脂 25部
(三菱レイヨン社製、商品名:「FC−1142」)
・相溶化剤 2.0部
(ペトロライト社製、商品名:「CERAMER67」)
・帯電制御剤 1.0部
(日本カーリット社製、商品名:「LR−147」)
・エステルワックス 5.0部
(日本油脂社製、商品名:「WEP−8」)
【0038】
次いで混練物をハンマーミルで粗粉砕し、ジェットミルで微粉砕し、気流分級機で分級して、体積平均粒子径8.0μmの分級トナーを得た。
【0039】
そして、分級トナー100部と下記の外添剤とをヘンシェルミキサーで均一に混合して実施例1のトナーを得た。
・シリカ 0.2部
(日本アエロジル社製、平均一次粒子径30nm、BET比表面積48m/g)
・シリカ 0.8部
(キャボット社製、平均一次粒子径8nm、BET比表面積200m/g)
・酸化チタン 0.5部
(日本アエロジル社製、平均一次粒子径10nm、BET比表面積65±10m/g)
【0040】
<実施例2>
ポリエステル樹脂を10部とした。
それ以外は実施例1と同様にして実施例2のトナーを得た。
【0041】
<実施例3>
ポリエステル樹脂を50部とし、相溶化剤を4.0部とした。
それ以外は実施例1と同様にして実施例3のトナーを得た。
【0042】
<実施例4>
ポリエステル樹脂として市販のポリヒドロキシアルカノエート樹脂を用いた。
それ以外は実施例1と同様にして、実施例4のトナーを得た。
【0043】
<実施例5>
ポリエステル樹脂に代えてポリエステルエラストマー(東レデュポン社製、商品名:「Hytrel3548L」)を用いた。
それ以外は実施例1と同様にして、実施例5のトナーを得た。
【0044】
<実施例6>
ポリエステル樹脂に代えてスチレン−アクリル樹脂(藤倉化成社製、商品名:「TTR−1399」)を用いた。
それ以外は実施例1と同様にして、実施例6のトナーを得た。
【0045】
<比較例1>
ポリエステル樹脂を8部とした。
それ以外は実施例1と同様にして比較例1のトナーを得た。
【0046】
<比較例2>
ポリエステル樹脂を60部とし、相溶化剤を4.0部とした。
それ以外は実施例1と同様にして比較例2のトナーを得た。
【0047】
実施例および比較例の主な条件を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例および比較例のトナーについて、以下の評価をした。
【0050】
<巻き付き>
市販の非磁性一成分フルカラー用プリンタに15000枚分に相当するトナーを供給し、A4(タテ目)の転写紙(日本製紙社製PPC用紙64g/m)に印字率6%にて、10000枚印字した。
その後、トナーを補充せずにA4(タテ目)の転写紙(日本製紙社製PPC用紙64g/m)に縦横4mmの余白を残したベタ未定着画像を10枚作製した。
転写紙上のトナー付着量は、トナー濃度、感光体の表面電位、現像電位、露光量、転写条件等により、およそ2.0mg/cm(トナー3色、トナー厚さ約20μmに相当)に調整した。
ついで、表層がポリ4フッ化エチレンで形成された熱定着ローラと、表層がシリコーンゴムで形成された圧力定着ローラとが、対になって回転するオイルレス方式定着機を、ローラ圧力が1Kgf/cm、ローラスピードが125mm/secになるように調節した。
そして、熱定着ローラの表面温度を180℃として上記未定着画像の定着を行い、巻き付きが発生した回数をカウントした。
なお、回数が1回以下であれば実用に耐え得る。
【0051】
<臭気>
上記巻き付きの測定直後、10人にプリンタ周囲の臭気を嗅いでもらい、臭気が強いと感じた人数をカウントした。
なお、人数が3人以下であれば実用に耐え得る。
【0052】
結果を表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
<評価結果>
表2から明らかなように、実施例1〜実施例6のトナーは実用上問題なかった。
なお、実施例1ではわずかなポリエステル臭があり、実施例3では巻き付きが1回と若干のポリエステル臭があったものの、実用に耐え得るレベルであった。
これに対し、比較例1では巻き付きが8回で実用上問題があった。
また、比較例2ではポリエステル臭が強く実用上問題があった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状ポリオレフィン系樹脂と、極性樹脂とを含有し、
該環状ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して該極性樹脂が10〜50重量部であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
さらに、相溶化剤を含有することを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記相溶化剤は、無極性セグメントと極性セグメントを有する重合体であることを特徴とする請求項2記載の静電荷現像用トナー。
【請求項4】
前記極性樹脂は、スチレン−アクリル系樹脂またはポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
さらに、ワックスを含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
少なくとも、環状ポリオレフィン樹脂および着色剤を溶融混練し、混練物を得る工程、
該混練物を粉砕して着色粒子を得る工程、
該着色粒子および極性樹脂を溶融混練し、粉砕、分級してトナーを得る工程、
を有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。