説明

静電荷像現像用トナー及びその製造方法

【課題】低温定着性を確保するとともに、優れた折り目定着性を有し、ドキュメントオフセット性に優れた静電荷像現像用トナー及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも樹脂と離形剤とを含有する静電荷像現像用トナーであって、該樹脂が、一般式(1)または一般式(2)で表されるN−ビニルラクタム構造を有する重合性単量体の共重合体を含むことを特徴とする静電荷像現像用トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成に用いられる静電荷現像用トナー及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンタなどの電子写真方式による画像形成技術分野においても、デジタル技術が導入され、高画質化が進む中で、1200dpi(dpiとは、2.54cmあたりのドット数)レベルの微小なドット画像を、正確に画像再現する技術が必要になってきた。この様な微小なドット画像を正確に再現する有力手段としてトナーの小粒径化が検討され、製造工程において物性を制御することが可能な、いわゆる重合トナーが注目されてきている。又、近年の地球環境への配慮という観点から、画像形成装置の電力消費量を低減させる技術が検討され、この課題を解決する手段としても重合トナーが注目されている。その一例として、低融点のワックスを含有させた重合トナーにより、従来よりも低い温度で定着画像を形成することが可能な技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、低温定着が可能なトナーは熱的安定性に難点を有する傾向があり、保管時や輸送時にトナー同士がくっついてしまうブロック化などの現象を発生することがあった。安定した画像形成を行う上で、着色剤やワックスなどの成分がトナー表面に露出しないようにトナーを設計する必要もあった。
【0004】
この様なニーズから、着色剤、ワックスを低軟化点の樹脂中に含有したコア粒子の表面にシェル樹脂を被覆したいわゆるコアシェル構造のトナーが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、コアシェル構造のトナーを作製する技術としては、改良技術が種々開発され、例えば、樹脂粒子と着色剤とを会合融着して作製したコア粒子の表面に樹脂粒子を融着させてシェルの膜厚を制御したコアシェル構造を形成する技術や、コアのガラス転移温度をシェルのガラス転移温度より低くする技術が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
しかしながら、上記静電荷像現像用トナーを用いて低温定着した定着画像は、折り目定着性が劣る、即ち紙を折ると折り目部分の定着画像が破断したり、また、ドキュメントオフセットが発生したりする問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−275908号公報
【特許文献2】特開2002−116574号公報
【特許文献3】特開2004−191618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、低温定着性を確保するとともに、優れた折り目定着性を有し、ドキュメントオフセット性に優れた静電荷像現像用トナー及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0010】
1.少なくとも樹脂と離形剤とを含有する静電荷像現像用トナーであって、該樹脂が、一般式(1)または一般式(2)で表されるN−ビニルラクタム構造を有する重合性単量体の共重合体を含むことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、m1は6〜16の整数を表す。Rは炭素数(n)が1以上のアルキル基を表し、m2は3以上の整数を表し、かつm2+nは4〜17の整数を表す。)
2.前記一般式(1)または一般式(2)で表されるN−ビニルラクタム構造を有する重合性単量体において、m1が8〜12またはm2+nが9〜13であることを特徴とする、前記1に記載の静電荷像現像用トナー。
【0013】
3.前記N−ビニルラクタム構造を有する重合性単量体の含有比率が、前記静電荷像現像用トナーの固形分に対して、5〜25質量%であり、且つ、静電荷像現像用トナーのガラス転移温度が30〜45℃であることを特徴とする前記1または2に記載の静電荷像現像用トナー。
【0014】
4.前記静電荷像現像用トナーがコアシェル構造を有し、前記一般式(1)または一般式(2)で表されるN−ビニルラクタム構造を有する重合性単量体の共重合体が、前記コアシェル構造のコア粒子中に含有されることを特徴とする前記1から3のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0015】
5.前記トナーが着色剤を含有することを特徴とする前記1から4のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0016】
6.前記1〜5のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーの製造法であって、該静電荷像現像用トナーの製造工程が、水系媒体中で樹脂微粒子と着色剤粒子を凝集、融着させてコア粒子(会合粒子)を得る凝集・融着工程と、コア粒子分散液中にシェル用の樹脂粒子を添加してコア粒子表面にシェル用の樹脂粒子を凝集、融着させてコアシェル構造の着色粒子を形成するシェル化工程とを有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、低温定着性を確保するとともに、優れた折り目定着性を有し、ドキュメントオフセット性に優れた静電荷像現像用トナー及びその製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のトナーを使用することが可能な画像形成装置の一例で、その断面図を示すものである。
【図2】図1の画像形成装置に使用可能な定着装置17の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
従来技術では前述のように低温定着性と熱的安定性を両立させる観点から、低Tgコア/高Tgシェルのコアシェル構造等が提案されてきた。しかし耐ドキュメントオフセット性に関しては低Tg成分が起因するため十分な低温定着と耐ドキュメントオフセット性の両立は困難であった。
【0020】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、少なくとも樹脂と離形剤とを含有する静電荷像現像用トナーであって、該樹脂が、前記一般式(1)または一般式(2)で表されるN−ビニルラクタム構造を有する重合性単量体の共重合体を含むことを特徴とする静電荷像現像用トナーにより上記課題が解決することを見出した。従来のスチレンアクリル等の重合に見られる共有結合性の構造は硬くて脆い性質がある。定着された樹脂部分が硬くて脆い場合、曲げによるストレスを与えられた際に割れやすく定着部から剥がれてしまい、結果、定着温度の低温化が図れなくなる。本発明ではシクロ環構造を有するN−ビニルラクタム類を含有することで、トナーの定着部に曲げ等のストレスが与えられても変形しやすいシクロ環構造がストレスを緩和し、運動性に優れる物理的な構造を形成しているために優れた柔軟性を発揮でき、結果的に折りに対する耐性が向上し、折り目定着性が向上するものと考えられる。
【0021】
本発明では、定着画像部の樹脂自身が優れた柔軟性を示すことで樹脂のガラス転移温度Tg設計を従来より下げることなく、耐折り目定着性を向上させことが出来る。
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0023】
〔樹脂〕
本発明の静電荷像現像用トナーは、少なくとも樹脂と離形剤とを含有し、該樹脂が、下記一般式(1)または一般式(2)で表されるN−ビニルラクタム構造を有する重合性単量体の共重合体を含んでいる。
【0024】
【化2】

【0025】
式中、m1は6〜16の整数を表す。Rは炭素数(n)が1以上のアルキル基を表し、m2は3以上の整数を表し、かつm2+nは4〜17の整数を表す。
【0026】
一般式(1)または一般式(2)で表わされるN−ビニルラクタム構造を有する重合性単量体のm1、及びm2とnの値は、該重合性単量体の疎水性度と折り評価に対する向上度合いで決まってくる。置換基nが1以上の場合は、m2は3以上であれば疎水性度を確保することが可能になり、乳化重合の際に水に溶けにくくなるので確実に他のモノマーとの共重合が進行する。m2が3より小さい場合は水に溶けやすいため共重合体の中に入りにくい。同様にm1が6以上でなければ共重合とスムーズに進行させるために必要な疎水性度が得られない。
【0027】
また、m1またはm2の値は大きくなる程、トナー中で折り曲げ時に受ける物理的な力を緩和する力が大きくなるが、m1が16を超えてくると、またはm2+nが17を越えてくると分子自身の立体障害が大きくなりすぎて、折り曲げ向上に対する所望の効果が得られなくなってくる。
【0028】
疎水性度と折り評価に対する向上度合いのバランスを考慮するとm1は8〜12またはm2+nは9〜13が好ましい。
【0029】
更に、Rは窒素原子に隣接するカルボニル基とは反対側の炭素に置換することが、立体障害の面から好ましい。なお、Rにおける炭素数nは1以上でm2+nが4〜17を満たす整数であれば良い。
【0030】
具体的に本発明の共重合体の製造に好ましく用いられるN−ビニルラクタム構造を有する重合性単量体としては、例えば、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−ζ−エナントラクタム、N−ビニル−η−カプリルラクタム、N−ビニル−9−エチル−η−カプリルラクタム、N−ビニルウンデカラクタムN−ビニルラウロラクタム等を挙げることができる。
【0031】
これらの化合物は公知の方法で合成することができる。
【0032】
〔本発明に係るN−ビニルラクタム構造を有する重合性単量体以外の重合性単量体〕
本発明の共重合体の製造方法において、本発明に係るN−ビニルラクタム構造を有する重合性単量体と共重合できる重合性単量体は、本発明に係るN−ビニルラクタム構造を有する重合性単量体と共重合可能であれば、特に制限は無いが、ビニル系重合性単量体であることが好ましい。ビニル系重合性単量体のなかでもスチレン系誘導体及びアクリレ−ト系誘導体が好ましい。
【0033】
スチレン系誘導体及びアクリレ−ト系誘導体としては、t−ブドキシカルボニルオキシスチレン、スチレン、テトラヒドロピラニルオキシスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、3−メチル−4−ヒドロキシスチレン、4−(t−ブトキシカルボニルオキシ)−1−ビニルシクロヘキサン、3,5−(ジ−t−ブトキシカルボニルオキシ)−l−ビニルシクロヘキサン、4−(テトラヒドロピラニルオキシ)−l−ビニルシクロヘキサン、4−(テトラヒドロピラニルオキシ)−l−ビニルシクロヘキサン、3,5−(ジテトラヒドロピラニルオキシ)l−ビニルシクロヘキサン、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタアクリレート、アダマンチルアクリレート、アダマンチルメタアクリレート等を用いることができる。
【0034】
本発明の共重合体は、通常の重合方法に従い製造することができる。
【0035】
静電荷像現像用トナーを構成する固形分に対して、本発明に係るN−ビニルラクタム構造を有する重合性単量体の含有比率は5〜25質量%であり、且つ、静電荷像現像用トナーのガラス転移温度が30〜45℃であることが低温定着性を確保しつつ、耐熱性や外部からの外圧に対する強度向上が効果的に発揮できる好ましい。
【0036】
本発明に係るN−ビニルラクタム構造を有する重合性単量体の含有比率はNMR等で測定することができる。
【0037】
なお、本発明においてトナーを構成する固形分とは樹脂を構成する重合性単量体、離型剤及び後述する着色剤の総量(質量)をいう。
【0038】
(トナーのガラス転移温度Tg)
本発明のトナーのガラス転移温度Tgは、30〜45℃であることが好ましい。Tgが30℃以上で耐熱保存性が好ましく、45℃以下のとき低温定着性が良好である。好ましくは、静電荷像現像用トナーのガラス転移温度が35〜40℃である。
【0039】
ガラス転移温度Tgは示差走査熱量分析方法により測定することができ、例えばDSC−7示差走査カロリメーター(パーキンエルマー社製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラー(パーキンエルマー社製)を用いて行うことができる。
【0040】
測定手順としては、トナー4.5〜5.0mgを0.01mgまで精秤しアルミニウム製パン(KITNO.0219−0041)に封入し、DSC−7サンプルホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。測定条件としては、測定温度0〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−Cool−Heatの温度制御で行い、その2nd Heatにおけるデータをもとに解析を行うことができる。
【0041】
Tgは第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1の吸熱ピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をTgとする。
【0042】
(樹脂の軟化点)
本発明トナーの軟化点は80〜110℃が好ましい。80℃以上ではドキュメントオフセットが良好で、110℃以下で低温定着性が良好である。
【0043】
本発明トナーの軟化点の測定方法について説明する。
【0044】
20℃±1℃、50±5%RH環境下において、トナー1.1gをシャーレに入れ平らにならし、12時間以上放置した後、成型器SSP−10A(島津製作所製)にて3820kg/cmの力で30秒間加圧し、直径1cmの円柱型の成型サンプルを作成する。
【0045】
24℃±5℃、50±20%RH環境下において、フローテスタ CFT−500D(島津製作所製)により、上記成型サンプルを、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出し、溶融温度測定方法(昇温法)のオフセット法にて、オフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度Toffsetを、トナーの軟化点とする。なお、Toffsetとは、オフセット法にて測定した温度Tのことである。
【0046】
(樹脂の分子量)
本発明のトナーを構成する樹脂の重量平均分子量(Mw)は10,000〜100,000、数平均分子量(Mn)は5,000〜50,000、Mw/Mnは2〜4であることが好ましい。
【0047】
重合性単量体の種類とその量を調整、及び重合性単量体を重合して得られた樹脂の分子量をこれらの範囲に調整することで、本発明で規定するTgを有するトナーを得ることができる。又、分子量分布の狭いものを用いるとし易くなり、定着性も良好である。
【0048】
樹脂の分子量はGPCにて下記の方法により測定できる。
【0049】
GPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフ)による樹脂の分子量の測定方法としては、1mg/mlになるように試料をテトラヒドロフランに溶解する。溶解条件としては、室温にて超音波分散機を用いて5分間行う。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理した後、GPCへ10μl試料溶解液を注入する。
【0050】
GPCの測定条件を下記に示す。
【0051】
装置:HLC−8220(東ソー社製)
カラム:TSKguardcolumm+TSKgelSuperHZM−M 3連(東ソー社製)
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.2ml/分
検出器:屈折率検出器(RI検出器)
試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて算出する。検量線測定用のポリスチレンは10点用いた。
【0052】
(トナーの粒子径)
本発明のトナーは、その粒子径が体積基準におけるメディアン径(D50)で5.0〜7.0μmであるものが好ましい。この粒子径範囲のトナーを用いると、高画質に対応した高画質の画像が再現できる。
【0053】
トナーの体積基準におけるメディアン径(D50)は、下記の測定方法にて測定して得られる。
【0054】
具体的には、コールターマルチサイザー3(コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(コールター社製)を接続した装置を用いて測定、算出する。
【0055】
測定手順としては、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20ml(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を作製する。このトナー分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(コールター社製)の入ったビーカーに、測定器表示濃度が5%〜10%になるまでピペットにて注入する。この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値が得られる。測定機において、測定粒子カウント数を25000個、アパチャ−径を50μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出する。体積積算分率が大きい方から50%の粒子径を体積基準メディアン径とする。
【0056】
(トナー円形度)
本発明に係るトナーの円形度は、0.93〜0.97であることが好ましい。上記範囲内では、トナーの搬送性とクリーニング性の両立が得られやすいからである。好ましくは0.94〜0.96である。
【0057】
トナーの円形度は、「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定した値である。
【0058】
具体的には、市販されている専用シース液に界面活性剤を溶液さてたものに試料をなじませ、超音波分散を1分行い分散した後、「FPIA−2100」を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000〜10000個の適正濃度で測定を行う。この範囲であれば、再現性のある同一測定値が得られる。下記式にて定義された円形度を測定した。
【0059】
円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
また、平均円形度は、各粒子の円形度を足し合わせ、全粒子数で割り算して算出した値である。
【0060】
〔離型剤〕
本発明のトナーに使用可能な離型剤(以下ワックスともいう)としては、従来公知のものが挙げられる。具体的には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、サゾールワックス等の長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトン等のジアルキルケトン系ワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等のエステル系ワックス、エチレンジアミンジベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミド等のアミド系ワックス等が挙げられる。
【0061】
ワックスの融点は、通常40〜160℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点を上記範囲内にすることにより、トナーの耐熱保存性が確保されるとともに、低温で定着を行う場合でもコールドオフセット等を起こさずに安定したトナー画像形成が行える。又、トナー中のワックス含有量は、トナー中の樹脂に対して1〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは5〜20質量%である。またワックスは後述するコアコアシェル構造を有するトナーのコア粒子に含まれることが好ましい。
【0062】
〔樹脂、離型剤以外の材料〕
本発明のトナーは、重合性単量体、離型剤以外に、着色剤、重合開始剤、連鎖移動剤、界面活性剤(分散安定剤)等を用いて作製した着色粒子に、外添剤を混合して作製されたものが好ましい。
【0063】
〔着色剤〕
本発明のトナーに使用する着色剤としてはカーボンブラック、アニリンブラック、磁性体、染料、顔料等を任意に使用することができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が使用される。磁性体としては鉄、ニッケル、コバルト等の強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、マグネタイト等の強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理することにより強磁性を示す合金、例えばマンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−錫等のホイスラー合金と呼ばれる種類の合金、二酸化クロム等を用いることができる。
【0064】
染料としてはC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等を用いることができ、又これらの混合物も用いることができる。顔料としてはC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、同48:3、同63:1、同186、同146、同185、同31、同150、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同156、同158、同180、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同60、ナフトール顔料等(PR269、238)を用いることができ、これらの混合物も用いることができる。数平均一次粒子径は種類により多様であるが、概ね10〜200nm程度が好ましい。
【0065】
着色剤の添加方法としては、樹脂粒子を凝集剤の添加にて凝集させる段階で添加し重合体を着色する。尚、着色剤は表面をカップリング剤等で処理して使用することができる。
【0066】
次に、トナーの作製で用いられる重合開始剤、連鎖移動剤及び界面活性剤について説明する。
【0067】
(重合開始剤)
本発明のトナーを構成する樹脂は、前述の重合性単量体を重合して生成されるが、本発明に使用可能な重合開始剤には以下のものがある。
【0068】
具体的には、油溶性の重合開始剤としては、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジン等の過酸化物系重合開始剤や過酸化物を側鎖に有する高分子開始剤等を挙げられる。
【0069】
又、乳化重合法で樹脂粒子を形成する場合は水溶性の重合開始剤が使用可能である。水溶性の重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等を挙げることができる。
【0070】
(連鎖移動剤)
樹脂の分子量を調整することを目的として、連鎖移動剤を用いることができる。
【0071】
連鎖移動剤としては、特に限定されるものではなく、例えばオクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、ターピノーレン、四臭化炭素及びα−メチルスチレンダイマー等が使用される。
【0072】
(界面活性剤)
又、反応系中に重合性単量体等を適度に分散させておくために分散安定剤を使用することも可能である。分散安定剤としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等を挙げることができる。さらに、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、エチレンオキサイド付加物、高級アルコール硫酸ナトリウム等の界面活性剤として一般的に使用されているものを分散安定剤として使用することができる。
【0073】
本発明に用いられる界面活性剤について説明する。
【0074】
前述の重合性単量体を使用して重合を行うためには、界面活性剤を使用して水系媒体中に油滴分散を行う必要がある。この際に使用することのできる界面活性剤としては特に限定されるものではないが、下記のイオン性界面活性剤を好適なものの例として挙げることができる。
【0075】
イオン性界面活性剤としては、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等)が挙げられる。
【0076】
又、ノニオン性界面活性剤も使用することができる。具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル等を挙げることができる。
【0077】
(外添剤)
本発明のトナーは、流動性、帯電性の改良及びクリーニング性の向上などの目的で、いわゆる外添剤を着色粒子に混合して使用しても良い。これら外添剤としては特に限定されるものでは無く、種々の無機微粒子、有機微粒子及び滑剤を使用することができる。
【0078】
無機微粒子としては、従来公知のものを使用することができる。具体的には、シリカ、チタニア、アルミナ、チタン酸ストロンチウム微粒子等が好ましく用いることができる。これら無機微粒子としては必要に応じて疎水化処理したものを用いても良い。具体的なシリカ微粒子としては、例えば日本アエロジル社製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト社製のHVK−2150、H−200、キャボット社製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
【0079】
チタニア微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の市販品T−805、T−604、テイカ社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
【0080】
アルミナ微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業社製の市販品TTO−55等が挙げられる。
【0081】
又、有機微粒子としては数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。具体的には、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体を使用することができる。
【0082】
これら外添剤の添加量は、トナー全体に対して0.1〜10.0質量%が好ましい。
【0083】
〔トナーの製造方法〕
次に、本発明のトナーの製造方法について説明する。
【0084】
トナーの製造方法としては、請求項を満足するトナーが得られれば特に限定されるものではなく、例えば、懸濁重合法、乳化会合法、分散重合法、溶解懸濁法、混練粉砕法などにより着色粒子を作製した後、該着色粒子に外添剤を混合する方法を挙げることができる。
【0085】
本発明に係るトナーは、コアシェル構造を有することが好ましい。このような樹脂の合成法としては、シェルの組成の選択性、膜厚の制御性の観点より、乳化重合法が好ましい。
【0086】
本発明のトナーは、例えば、以下のような工程を経て作製されたコアシェル構造を有することが好ましい。
(1)離型剤を重合性単量体に溶解或いは分散する溶解/分散工程
(2)樹脂微粒子の分散液を調製するための重合工程
(3)水系媒体中で樹脂微粒子と着色剤粒子を凝集、融着させてコア粒子(会合粒子)を得る凝集・融着工程
(4)コア粒子を熱エネルギーにより熟成して形状を調整する第1の熟成工程
(5)コア粒子分散液中に、シェル用の樹脂粒子を添加してコア粒子表面にシェル用の樹脂粒子を凝集、融着させてコアシェル構造の着色粒子を形成するシェル化工程
(6)コアシェル構造の着色粒子を熱エネルギーにより熟成して、コアシェル構造の着色粒子の形状を調整する第2の熟成工程
(7)冷却された着色粒子分散液から着色粒子を固液分離し、当該着色粒子から界面活性剤などを除去する洗浄工程
(8)洗浄処理された着色粒子を乾燥する乾燥工程
又、必要に応じて乾燥工程の後に、
(9)乾燥処理された着色粒子に外添剤を添加する工程
を有する場合もある。
【0087】
本発明のトナーを製造する場合、先ず樹脂微粒子と着色剤粒子とを会合融着させてコアとなるコア粒子を作製し、次に、コア粒子の分散液中にシェル用樹脂粒子を添加して、コア粒子表面にこのシェル用樹脂粒子を凝集、融着させることによりコア粒子表面をシェル用樹脂粒子で被覆してコアシェル構造を有する着色粒子を作製することが好ましい。
【0088】
このように、本発明のトナーは、例えば上記のような製法で作製されたコア粒子の分散液中に、シェル用樹脂粒子を添加してコア粒子に融着させてコアシェル構造のトナーを作製することが好ましい。
【0089】
本発明のトナーを構成するコア粒子は、例えば、樹脂を形成する重合性単量体に離型剤成分を溶解或いは分散させた後、水系媒体中に機械的に微粒分散させ、ミニエマルジョン重合法により重合性単量体を重合させる工程を経て形成した複合樹脂微粒子と着色剤粒子とを後述する塩析/融着させる方法が好ましく用いられる。重合性単量体中に離型剤成分を溶かすときは、離型剤成分を溶解させて溶かしても溶融して溶かしてもよい。
【0090】
以下、本発明のトナーの各製造工程について説明する。
【0091】
(1)溶解/分散工程
この工程では、重合性単量体に離型剤化合物を溶解させて、離型剤化合物を混合した重合性単量体溶液を調製する工程である。
【0092】
(2)重合工程
この重合工程の好適な一例においては、臨界ミセル濃度(CMC)以下の界面活性剤を含有した水系媒体中に、ワックスを溶解或いは分散含有した単量体溶液を添加し、機械的エネルギーを加えて液滴を形成させ、次いで水溶性のラジカル重合開始剤を添加し、当該液滴中において重合反応を進行させる。なお、前記液滴中に油溶性重合開始剤が含有されていてもよい。このような重合工程では、機械的エネルギーを付与して強制的に乳化(液滴の形成)処理が必須となる。かかる機械的エネルギーの付与手段としては、クレアミクス、ホモミキサー、超音波、マントンゴーリンなどの強い撹拌又は超音波振動エネルギーの付与手段を挙げることができる。この重合工程により、ワックスと結着樹脂とを含有する重合体微粒子が作製される。
【0093】
(3)凝集・融着工程
融着工程における凝集、融着の方法としては、重合工程により得られた樹脂微粒子(着色又は非着色の樹脂微粒子)を用いた塩析/融着法が好ましい。
【0094】
尚、ここでいう「塩析/融着」とは、凝集と融着を並行して進め、所望の粒子径まで成長したところで、凝集停止剤を添加して粒子成長を停止させ、さらに、必要に応じて粒子形状を制御するための加熱を継続して行うことをいう。
【0095】
着色剤粒子は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理は、水中で界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われる。着色剤の分散処理に使用する分散機は特に限定されないが、好ましくは超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリンや圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、サンドグラインダー、ゲッツマンミルやダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。又、使用される界面活性剤としては、前述の界面活性剤と同様のものを挙げることができる。尚、着色剤(微粒子)は表面改質されていてもよい。着色剤の表面改質法は、溶媒中に着色剤を分散させ、その分散液中に表面改質剤を添加し、この系を昇温することにより反応させる。反応終了後、着色剤を濾別し、同一の溶媒で洗浄濾過を繰り返した後、乾燥することにより、表面改質剤で処理された着色剤(顔料)が得られる。
【0096】
好ましい凝集、融着方法である塩析/融着法は、樹脂微粒子と着色剤粒子とが存在している水中に、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩及び3価の塩等からなる塩析剤を臨界凝集濃度以上の凝集剤として添加し、次いで、前記樹脂微粒子のガラス転移温度以上であって、且つ前記混合物の融解ピーク温度(℃)以上の温度に加熱することで塩析を進行させると同時に融着を行う工程である。ここで、塩析剤であるアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は、アルカリ金属として、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属として、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられ、好ましくはカリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムが挙げられる。
【0097】
(4)第1の熟成工程
そして、本発明では、凝集・融着工程の加熱温度や特に第1の熟成工程の加熱温度と時間の制御することにより、粒径が一定で分布が狭く形成したコア粒子表面が平滑だが均一な形状を有するものになるように制御する。具体的には、凝集・融着工程で加熱温度を低めにして樹脂粒子同士の融着の進行を抑制させて均一化を促進させ、第1の熟成工程で加熱温度を低めに、且つ、時間を長くしてコア粒子の表面が均一な形状のものに制御する。
【0098】
(5)シェル化工程
シェル化工程では、コア粒子分散液中にシェル用の樹脂粒子分散液を添加してコア粒子表面にシェル用の樹脂粒子を凝集、融着させ、コア粒子表面にシェル用の樹脂粒子を被覆させて着色粒子を形成する。
【0099】
具体的には、コア粒子分散液は上記凝集・融着工程及び第1の熟成工程での温度を維持した状態でシェル用樹脂粒子の分散液を添加し、加熱攪拌を継続しながら数時間かけてゆっくりとシェル用樹脂粒子をコア粒子表面に被覆させて着色粒子を形成する。加熱攪拌時間は、1時間〜7時間が好ましく、3時間〜5時間がより好ましい。
【0100】
(6)第2の熟成工程
シェル化により着色粒子が所定の粒径になった段階で塩化ナトリウムなどの停止剤を添加して粒子成長を停止させ、その後もコア粒子に付着させたシェル用樹脂粒子を融着させるために数時間加熱攪拌を継続する。そして、シェル化工程ではコア粒子表面に厚さが100〜300nmのシェルを形成する。このようにして、コア粒子表面にシェル用樹脂粒子を固着させてシェルを形成し、丸みを帯び、しかも形状の揃った着色粒子が形成される。
【0101】
本発明では、第2の熟成工程の時間を長めに設定したり、熟成温度を高めに設定することで着色粒子の形状を真球方向に制御することが可能である。
【0102】
(7)冷却工程・固液分離・洗浄工程
この工程は、前記着色粒子の分散液を冷却処理(急冷処理)する工程である。冷却処理条件としては、1〜20℃/minの冷却速度で冷却する。冷却処理方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法を例示することができる。
【0103】
この固液分離・洗浄工程では、上記の工程で所定温度まで冷却された着色粒子の分散液から当該着色粒子を固液分離する固液分離処理と、固液分離されたトナーケーキ(ウエット状態にある着色粒子をケーキ状に凝集させた集合物)から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。ここに、濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法など特に限定されるものではない。
【0104】
(8)乾燥工程
この工程は、洗浄処理されたケーキを乾燥処理し、乾燥された着色粒子を得る工程である。この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などを使用することが好ましい。乾燥された着色粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは2質量%以下とされる。尚、乾燥処理された着色粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
【0105】
(9)外添処理工程
この工程は、乾燥された着色粒子に必要に応じ外添剤を混合し、トナーを作製する工程である。
【0106】
外添剤の混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル等の機械式の混合装置を使用することができる。
【0107】
上記工程において、一般式(1)または一般式(2)の重合性単量体の導入方法としては、例えば下記の工程において導入することが可能である。
1.上記(2)重合工程において、一般式(1)または一般式(2)の重合性単量体を組成に含む共重合体の樹脂粒子を、予め、水系媒体中に添加しておき、ミニエマショション重合を開始することにより、ミニエマルジョン重合粒子中に、一般式(1)または一般式(2)の重合性単量体を組成に含む共重合体の樹脂粒子を取り込む方法。
2.上記(3)コア粒子を得る凝集・融着工程において、水系媒体中にてコア粒子の凝集が完了する前の凝集工程途中において、一般式(1)または一般式(2)の重合性単量体を組成に含む共重合体の樹脂粒子を添加し、コア粒子中に導入する方法。
【0108】
(現像剤)
本発明のトナーは、一成分現像剤、非磁性一成分現像剤、二成分現像剤として用いることができる。
【0109】
一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤或いはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤としたものが挙げられ、何れにも使用することができる。又、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の鉄含有磁性粒子に代表される、従来から公知の材料を用いることができるが、特に好ましくはフェライト粒子もしくはマグネタイト粒子である。上記キャリアの体積平均粒径は15〜100μmのものが好ましく、20〜80μmのものがより好ましい。
【0110】
キャリアの体積基準分布のメディアン径(D50)の測定は、レーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)を用いて測定することができる。
【0111】
キャリアは、磁性粒子がさらに樹脂により被覆されているコーティングキャリア、或いは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定はないが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。又、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては特に限定されず、公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0112】
又、キャリアとトナーの混合比は、質量比でキャリア:トナー=1:1〜50:1の範囲が好ましい。
【0113】
〔本発明のトナーを用いた画像形成方法及び画像形成装置〕
次に、本発明のトナーが使用可能な画像形成方法について説明する。本発明のトナーは、例えば、プリント速度が300mm/sec(A4用紙に換算して65枚/分の出力性能)レベル以上の高速のフルカラー画像形成装置に使用されることが好ましい。具体的には、短時間で大量の文書をオンデマンドに作成ことが可能なプリンタ等が挙げられる。又、本発明では、定着ローラの温度を150℃以下、好ましくは130℃以下の温度にする画像形成方法に適用することも可能である。
【0114】
図1は、本発明のトナーを使用することが可能な画像形成装置の一例で、その断面図を示すものである。
【0115】
画像形成ユニット9Y、9M、9C、9Kより形成された各色の画像は、回動する中間転写体6上に転写手段7Y、7M、7C、7Kにより逐次1次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。
【0116】
給紙手段である給紙カセット20内に収容された用紙Pは、給紙ローラ21により一枚ずつ給紙され、レジストローラ22を経て、転写手段7Aに搬送され、用紙P上に前記カラー画像が2次転写される。
【0117】
カラー画像が転写された前記用紙Pは、定着装置17により定着処理され、搬送手段である搬送ローラ23、24を経て、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
【0118】
図2は、図1の画像形成装置に使用可能な定着装置17の一例を示す断面図である。
【0119】
図2の定着装置17は、加熱ローラ17aとこれに当接する加圧ローラ17bとを備えている。尚、図2において、Tは転写紙(画像形成支持体)P上に形成されたトナー像である。
【0120】
加熱ローラ17aは、フッ素樹脂又は弾性体からなる被覆層171が芯金172の表面に形成され、線状ヒーターよりなる加熱部材173を内包している。
【0121】
芯金172は、金属から構成され、その内径は10〜70mmとされる。芯金172を構成する金属としては特に限定されるものではないが、例えば鉄、アルミニウム、銅等の金属或いはこれらの合金を挙げることができる。
【0122】
芯金172の肉厚は0.1〜15mmとされ、省エネルギーの要請(薄肉化)と、強度(構成材料に依存)とのバランスを考慮して決定される。例えば、0.57mmの鉄よりなる芯金と同等の強度を、アルミニウムよりなる芯金で保持するためには、その肉厚を0.8mmとする必要がある。
【0123】
被覆層171を構成するフッ素樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)及びPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等が挙げられる。
【0124】
フッ素樹脂からなる被覆層171の厚みは10〜500μmとされ、好ましくは20〜400μmである。又、被覆層171を構成する弾性体としては、LTV、RTV、HTV等の耐熱性の良好なシリコーンゴム及びシリコーンスポンジゴム等が挙げられる。被覆層171を構成する弾性体のアスカーC硬度は、80°未満とされ、好ましくは60°未満とされる。又、弾性体からなる被覆層171の厚みは0.1〜30mmとされ、好ましくは0.1〜20mmとされる。
【0125】
加熱部材173は、ハロゲンヒーターを好適に使用することができる。
【0126】
加圧ローラ17bは、弾性体からなる被覆層174が芯金175の表面に形成されてなる。被覆層174を構成する弾性体は特に限定されるものではなく、ウレタンゴム、シリコーンゴム等の各種軟質ゴム及びスポンジゴムを挙げられ、被覆層174を構成するものとして例示したシリコーンゴム及びシリコーンスポンジゴムを用いることが好ましい。被覆層174を構成する弾性体のアスカーC硬度は、80°未満とされ、好ましくは70°未満、さらに好ましくは60°未満とされる。又、被覆層220の厚みは0.1〜30mmとされ、好ましくは0.1〜20mmとされる。
【0127】
芯金175を構成する材料としては特に限定されるものではないが、アルミニウム、鉄、銅等の金属又はそれらの合金を挙げることができる。
【0128】
加熱ローラ17aと加圧ローラ17bとの当接荷重(総荷重)は、通常40〜350Nとされ、好ましくは50〜300N、さらに好ましくは50〜250Nである。この当接荷重は、加熱ローラ17aの強度(芯金110の肉厚)を考慮して規定され、例えば0.3mmの鉄よりなる芯金を有する加熱ローラにあっては、250N以下とすることが好ましい。
【0129】
又、耐オフセット性及び定着性の観点から、ニップ幅としては4〜10mmであることが好ましく、当該ニップの面圧は0.6×10〜1.5×10Paであることが好ましい。
【0130】
尚、本発明に係る画像形成装置は、加熱ロール方式の定着装置の代わりに誘導加熱方式の定着装置を使用することも可能である。
【0131】
本発明に使用される転写材Pは、トナー画像を保持する支持体で、通常画像支持体、記録材或いは転写紙と通常よばれるものである。具体的には薄紙から厚紙までの普通紙や上質紙、アート紙やコート紙等の塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布等の各種転写材を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0132】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0133】
《本発明に係るN−ビニルラクタム構造を有する重合性単量体の重合性単量体の準備》
コア部用樹脂微粒子を作製するのに用いる一般式(1)または、一般式(2)で表されるN−ビニルラクタム構造を有する重合性単量体1〜4の4種類及び比較の重合性単量体5を、公知の方法で作成した。
【0134】
重合性単量体1 N−ビニルラウロラクタム
重合性単量体2 N−ビニル−9−エチル−η−カプリルラクタム
重合性単量体3 N−ビニル−ζ−エナントラクタム
重合性単量体4 N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン
表1は、コア粒子用樹脂微粒子に使用する上記N−ビニルラクタム構造を有する重合性単量体のm1、n、m2を示す
【0135】
【表1】

【0136】
〈コア部用樹脂微粒子分散液1の作製〉
重合工程を、第1段重合と第2段重合とに分けて行った。
【0137】
(a)第1段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、界面活性剤ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸エステルナトリウム塩4.0質量部とイオン交換水3000質量部を投入して界面活性剤溶液を調製した。前記界面活性剤溶液を窒素気流下で230rpmの撹拌速度で撹拌しながら80℃に昇温した。
【0138】
次に、下記化合物を80℃に昇温後、前記界面活性剤溶液中に添加し、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(エム・テクニック社製)」により30分間分散処理を行って乳化粒子(油滴)分散液を調製した。
【0139】
スチレン 260質量部
アクリル酸ブチル 100質量部
重合性単量体1 220質量部
n−オクチルメルカプタン 18質量部
パラフィンワックス(離型剤)「HNP−0190(日本製蝋社製)」 126質量部
次に、上記乳化粒子分散液に、過硫酸カリウム(KPS)15質量部をイオン交換水400質量部に溶解させてなる開始剤水溶液を添加し、この反応系を80℃の下で1時間にわたり、230rpmの撹拌速度で処理することにより第1段重合を行った。
【0140】
(b)第2段重合
前記第1段重合実施後、さらに、過硫酸カリウム(KPS)5.45質量部をイオン交換水220質量部に溶解させてなる開始剤水溶液を添加し、前記反応系を80℃にして、下記化合物よりなる混合液を1時間かけて滴下した。
【0141】
スチレン 479質量部
アクリル酸ブチル 137質量部
n−オクチルメルカプタン 7.1質量部
滴下終了後、2時間にわたり加熱し、かつ、撹拌速度230rpmで撹拌処理を行って重合(第2段重合)を行い、その後反応系を28℃まで冷却することにより、コア部用樹脂微粒子分散液1を作製した。
【0142】
〈コア部用樹脂微粒子分散液2〜16の作製〉
表2に記載した重合性単量体組成に変更した以外はコア部用樹脂微粒子分散液1の作製と同様にして第1段重合と第2段重合をおこない、コア部用樹脂微粒子分散液2〜16を作製した。
【0143】
〈コア部用樹脂微粒子分散液17の作製〉
表2に記載した重合性単量体組成に変更した以外はコア部用樹脂微粒子分散液1の作製と同様にして第1段重合と第2段重合をおこない、本発明に係るN−ビニルラクタム構造を有さない、比較のコア部用樹脂微粒子分散液17を作製した。
【0144】
【表2】

【0145】
《シェル層用樹脂微粒子の作製》
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、予めアニオン系界面活性剤(ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム:SDS)2.0質量部をイオン交換水2900質量部に溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
【0146】
この界面活性剤溶液に重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)9.0質量部を添加し、内温を78℃とさせた後、
スチレン 576質量部
ブチルアクリレート 168質量部
メタクリル酸 56質量部
n−オクチルメルカプタン 16.4質量部
からなる単量体溶液を3時間かけて滴下し、滴下終了後、78℃において1時間わたって加熱・攪拌することによって、重合を行って「シェル層用樹脂微粒子1」の分散液を作製した。このシェル層用樹脂粒子1のガラス転移温度(Tg)は53.0℃であった。
【0147】
《着色剤粒子分散液の調製》
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に攪拌溶解させた溶液に、攪拌下、カーボンブラック「リーガル330R」(キャボット社製)210質量部を徐々に添加し、次いで攪拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、「着色剤粒子分散液」を調製した。この着色剤粒子分散液中の着色剤の粒径を電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定した結果、質量平均径で110nmであった。
【0148】
《トナー1の作製》
(コア粒子の形成(凝集・融着工程))
1260質量部のコア部用樹脂微粒子分散液1と、イオン交換水1890質量部と、着色剤粒子分散液166質量部を、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、攪拌装置を取り付けた反応容器に入れて攪拌した。容器内の温度を30℃に調整した後、この溶液に5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8〜11に調整した。
【0149】
次いで、塩化マグネシウムの50%水溶液103部を、攪拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて75℃まで昇温した。その状態で「コールターマルチサイザー3」(コールター社製)にてコア粒子の粒径を測定し、体積基準におけるメディアン系(D50)が6.5μmになった時点で、20%塩化ナトリウム水溶液150部を添加して粒径成長を停止させ、さらに、第1の熟成工程として液温度70℃にて1時間にわたり加熱攪拌することにより融着を継続させ、「コア粒子1」を形成した。
【0150】
(シェル層の形成(シェル化工程))
次いで、75℃において116質量部の「シェル層用樹脂微粒子」を添加し、「コア粒子1」の表面に、「シェル層用樹脂微粒子」の粒子を融着させた後、30分熟成処理を行い、シェル層を形成させた。
【0151】
ここで、20%塩化ナトリウム水溶液150部を加え、90℃に昇温して60分間熟成処理を行った後、4℃10分の条件で30℃まで冷却し、生成した融着粒子を濾過し、40℃のイオン交換水で繰り返し洗浄し、その後、40℃の温風で乾燥することにより、コア粒子表面にシェル層を有する「着色粒子1」を作製した。
【0152】
(外添剤処理)
上記で作製した着色粒子1に、疎水性シリカ(数平均一次粒径=12nm、疎水化度=68)を1質量%及び疎水性酸化チタン(数平均一次粒径=20nm、疎水化度=63)を1.2質量%添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して「トナー1」を作製した。
【0153】
《トナー2〜17の作製》
トナー1の作製で用いたコア部用樹脂微粒子分散液1を、表3に記載のコア部用樹脂微粒子分散液2〜17に変更した以外は同様にして「トナー2〜17」を作製した。
【0154】
得られたトナー1〜17のそれぞれについて平均粒径、円形度、軟化点及びTgを前述した測定法により測定した。
【0155】
表3に平均粒径、円形度、軟化点及びTgの測定値を示す。なおトナー中における本発明に係るN−ビニルラクタム構造を有する重合性単量体の固形分に対する比率はN−ビニルラクタム含量と略記した。
【0156】
【表3】

【0157】
《評価》
作製したトナー1〜17のそれぞれについて以下の評価を行った。
【0158】
評価用のプリント画像は、デジタルカラー複合機bizhub PRO C500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ製)に、上記で作製したトナーと現像剤を順番に装填し、20℃、55%RHの環境でプリントして作成した。尚、プリントは、画素率が10%の画像(文字画像が7%、人物顔写真、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像)を用い、A4判上質紙(64g/m)に行った。
【0159】
〈低温定着性〉(コールドオフセット)
画像評価装置の加熱ローラの表面温度を90〜130℃の範囲内で5℃刻みで変化させ、それぞれの表面温度において定着オフセットに起因する画像汚染の発生状況を評価した。
【0160】
具体的には、搬送方向に対し転写紙上に垂直方向に5mm幅の帯状ベタ画像と20mm幅のハーフトーン画像を出力したA4判トナー画像を横送り搬送して、画像汚染が発生しない温度領域(非オフセット領域)を検出して評価を行った。
【0161】
◎:非オフセット領域の下限温度が110℃未満であり、且つ、非オフセット領域が15℃以上
○:非オフセット領域の下限温度が110℃以上115℃未満であり、且つ、非オフセット領域が15℃未満
△:非オフセット領域の下限温度が115℃以上125℃未満であり、且つ、非オフセット領域が15℃未満
×:非オフセット領域の下限温度が125℃以上。
【0162】
〈折り目定着性〉
折り目の定着性の評価は、下記のように折り目の定着率を測定して行った。ここで、折り目定着率とは、プリント画像面を内面にして折り曲げたとき、その折り曲げ部分でのトナーはがれの程度を定着率で示したものである。
【0163】
測定方法は、ベタ画像部(画像濃度が0.8)を内側にして折り、3回指で擦った後、画像を開いて「JKワイパー」(株式会社クレシア製)で3回ふき取り、ベタ画像の折り目箇所の折り曲げ前後の画像濃度から下記式により算出した値である。
【0164】
折り目定着率(%)=(折り曲げ後画像濃度)/(折り曲げ前画像濃度)×100
得られた折り目定着率から、下記のように折り目強度をランク評価した。
【0165】
尚、×は問題あるレベルである。
【0166】
評価基準
◎:95〜100%で、折り目定着性が優れている
○:90〜95%未満で、折り目定着性が良好
△:80〜90%未満で、折り目定着性が良好
×:80%未満で、折り目定着性が不良。
【0167】
〈ドキュメントオフセット性〉
ドキュメントオフセット性の評価は、加熱ベルトの温度を130℃に設定し、前記と同じテスト画像をプリントしたプリント画像を2枚、画像面(プリント面)と非画像面(裏面)を重ねてガラス板の上に置き、重ねた部分の上に7.8kPa相当の重りを載せ、60℃、50%RHの環境で1週間放置して行った。放置後、重ねた2枚を剥離し、目視により剥離したプリント画像の画像欠損度合いを、以下の4段階にランク付けして評価した。尚、○、◎を合格とする。
【0168】
◎:画像部、非画像部共に、画像欠陥や画像の移行が見られない良好なレベル
○:画像部のグロス低下が見られるが、画像としては画像欠陥(裏面に画像の移行)が殆ど無く許容レベル
△:2枚を剥離するとき、裏面に画像の移行が見られるレベル
×:2枚がくっつき、剥離が難しいレベル
表4に、トナー1から17の上記評価結果を示す。
【0169】
【表4】

【0170】
表4より、本発明の試料は優れた低温定着性、紙を折っても優れた折り目定着性を有し、かつドキュメントオフセット性に優れていることがわかる。
【符号の説明】
【0171】
1 画像形成装置
9Y、9M、9C、9K 画像形成ユニット
6 中間転写体
17 定着装置
17a 加熱ローラ
17b 加圧ローラ
T トナー
P 転写紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂と離形剤とを含有する静電荷像現像用トナーであって、該樹脂が、一般式(1)または一般式(2)で表されるN−ビニルラクタム構造を有する重合性単量体の共重合体を含むことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【化1】

(式中、m1は6〜16の整数を表す。Rは炭素数(n)が1以上のアルキル基を表し、m2は3以上の整数を表し、かつm2+nは4〜17の整数を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)または一般式(2)で表されるN−ビニルラクタム構造を有する重合性単量体において、m1が8〜12またはm2+nが9〜13であることを特徴とする、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記N−ビニルラクタム構造を有する重合性単量体の含有比率が、前記静電荷像現像用トナーの固形分に対して、5〜25質量%であり、且つ、静電荷像現像用トナーのガラス転移温度が30〜45℃であることを特徴とする請求項1または2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記静電荷像現像用トナーがコアシェル構造を有し、前記一般式(1)または一般式(2)で表されるN−ビニルラクタム構造を有する重合性単量体の共重合体が、前記コアシェル構造のコア粒子中に含有されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記トナーが着色剤を含有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーの製造法であって、該静電荷像現像用トナーの製造工程が、水系媒体中で樹脂微粒子と着色剤粒子を凝集、融着させてコア粒子(会合粒子)を得る凝集・融着工程と、コア粒子分散液中にシェル用の樹脂粒子を添加してコア粒子表面にシェル用の樹脂粒子を凝集、融着させてコアシェル構造の着色粒子を形成するシェル化工程とを有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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