説明

静電霧化装置

【課題】低コストで高電圧値のフィードバック制御を精度良く行う。
【解決手段】霧化電極11に供給された水を高電圧の印加によって発生させた高電界で静電霧化させるものにおいて、高電圧発生回路12で発生させる高電圧に応じた電圧値をAD変換して取り込んでフィードバック制御する制御手段2を備え、該制御手段は外部から入力された基準電圧のAD変換値を基に上記フィードバック制御の補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧の印加によって発生させた高電界で水を静電霧化させる静電霧化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
霧化電極と、前記霧化電極に水を供給する水供給手段と、前記霧化電極に高電圧を印加する高電圧発生回路とを備えて、前記霧化電極に供給された水を前記高電圧の印加によって発生する高電界で静電霧化させる静電霧化装置が特許文献1などで知られている。
【0003】
この静電霧化装置においては、安定した静電霧化動作を得るために、高電圧発生回路で発生させた高電圧の電圧値をAD変換して取り込んでフィードバック制御する制御手段を設けるとともに、該制御手段による高電圧発生回路の動作制御を、PWM制御における周波数固定・デューティ比の変更で行って高電圧の電圧値が目標値を維持することが一般的になされている。
【0004】
この時、高電圧を検出して制御回路へ入力する高電圧検知について、安定した静電霧化の為にはかなりの高精度のものが要求されており、回路部品のばらつきを抑えることでこれを実現する為には非常に大きなコストがかかる。
【特許文献1】特開2005−131549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、低コストで高電圧値のフィードバック制御を精度良く行うことができる静電霧化装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係る静電霧化装置は、霧化電極と、前記霧化電極に水を供給する水供給手段と、前記霧化電極に高電圧を印加する高電圧発生回路とを備え、前記霧化電極に供給された水を前記高電圧の印加によって発生させた高電界で静電霧化させるものにおいて、上記高電圧発生回路で発生させる高電圧に応じた電圧値をAD変換して取り込んでフィードバック制御する制御手段を備えるとともに、該制御手段は外部から入力された基準電圧のAD変換値を基に上記フィードバック制御の補正を行うものであることに特徴を有している。
【0007】
外部から入力された基準電圧に応じて前記高電圧発生回路から出力される高電圧を補正することで、高電圧発生回路で発生させた高電圧の電圧値の検出手段及びADコンバータとによる入力誤差を含んだ補正値を得て、この補正値に基づいて補正を行うことができるようにしたものである。
【0008】
前記制御手段は、外部から入力された基準電圧のAD変換値に基づく補正値を記憶する記憶部を備えたものとするのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、外部から基準電圧を読み込んで補正値を求めるために、高電圧検出やAD変換の差異の誤差を見込んだ補正値を得ることができて、低コストであるものの高電圧値のフィードバック制御を精度良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明すると、この静電霧化装置は、図2に示すように、霧化電極11と、霧化電極11に対向する対向電極17とを備えており、霧化電極11には高電圧発生回路12が接続されている。また、上記霧化電極11に水を供給する水供給手段として、該霧化電極11を冷却して空気中の水分を霧化電極11上に結露させることで霧化電極11に対して水を供給するペルチェ素子13及びペルチェ用電源14を備えている。
【0011】
図中2は上記ペルチェ用電源14及び高電圧発生回路12を制御するためのマイクロコンピュータからなる制御回路であり、高電圧検出回路15及び放電電流検出回路16からの高電圧信号及び放電電流信号に応じて、ペルチェ11の冷却具合や高電圧発生回路12が霧化電極11に印加する電圧を制御する。この時、制御回路2による高電圧発生回路12の制御は、基本的に予め設定された目標範囲内の高電圧が霧化電極11に印加されるように制御するフィードバック制御であるとともにPWM制御による周波数固定・デューティ比の変更で高電圧値を変更するものであり、静電霧化が正常に行われておれば、霧化電極11に印加する電圧を目標電圧範囲に制御する。
【0012】
ここにおいて、制御回路2は上記高電圧検出回路15で検出した高電圧値に応じた電圧値をADコンバータ(図示せず)でAD変換して取り込んでフィードバック制御しているが、前述のように、取り込んだAD変換後の電圧値の精度が問題となる。
【0013】
このために本静電霧化装置においては、外部の外部基準電圧発生器3から正確な基準電圧を取り込んで補正値を求める調整モードを設けて、この調整モードで次の処理を行っている。
【0014】
すなわち、外部からの基準電圧(たとえば4.5V)をADコンバータを通じてAD基準値として取り込み、このAD基準値が
867≦AD基準値≦977
の条件を満たしている場合(ちなみに(922±6%=4.5±0.27V))、
AD補正係数=922/ AD基準値
の式からAD補正係数を求め、該AD補正係数を制御回路2は自身が備える記憶部20に書き込む。図1(a)はこのフローを示している。
【0015】
次に正しく補正できるかを確認するために、外部から確認用電圧(たとえば4.0V)をADコンバータを通じてAD確認値として取り込むとともに、前記記憶部20からAD補正係数を読み出し、
AD補正値=AD確認値×AD補正係数
の式からAD補正値を求め、該AD補正値が
807≦AD補正値≦831
の条件を満たす場合(ちなみに(819±12bit=4.0±0.06V))、AD補正係数が適正であるとして調整モードを終了する。
【0016】
AD補正値が上記条件を満たさない場合は、「AD基準異常」の異常表示出力を行って、調整モードを維持する。
【0017】
また、前記AD基準値が前記範囲内でない場合で記憶部20に既にAD補正係数が格納されている場合は調整モードを終了する。
【0018】
さらに前記AD基準値が前記範囲内でない場合で記憶部20にAD補正係数が格納されていない場合は、異常表示を制御回路2のリセットまで継続する。なお、リセット迄にAD基準値が上記範囲内となっても書込みなどは行わない。
【0019】
そして制御回路2は、静電霧化のために高電圧発生回路12のフィードバック制御を行う通常モードに際し、高電圧検出回路15から出力される高電圧に応じた電圧値のADコンバータによるAD変換後のAD読込値に対して、上記調整モードによって得たAD補正係数を乗算することでAD補正値を求め(AD補正値=AD読込値×AD補正係数)、このAD補正値で高電圧発生回路12のPWM制御を行う。例えばAD読込値が200bit、AD補正係数が0.970の場合、AD補正値は(200×0.970)=194bitとなる。図1(b)はこのフローを示している。
【0020】
外部から読み込んだ基準電圧は、制御回路2にすれば入力誤差を含んだものとなっているために、この値に基づいてAD補正係数を作成して補正するために、高電圧発生回路12で発生させる高電圧を正確に目標電圧に保つことができるものである。
【0021】
AD補正係数を記憶部20に記憶させるようにしたが、前記AD基準値を記憶し、通常モードではAD基準値とAD読込値とからAD補正値を算出するものであってもよく、補正演算をどのようにするかは問わない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)(b)は本発明の実施の形態の一例における動作を示すフローチャートである。
【図2】同上のブロック回路図である。
【符号の説明】
【0023】
2 制御回路
11 霧化電極
12 高電圧発生回路
15 高電圧検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
霧化電極と、前記霧化電極に水を供給する水供給手段と、前記霧化電極に高電圧を印加する高電圧発生回路とを備え、前記霧化電極に供給された水を前記高電圧の印加によって発生させた高電界で静電霧化させる静電霧化装置において、上記高電圧発生回路で発生させる高電圧に応じた電圧値をAD変換して取り込んでフィードバック制御する制御手段を備えるとともに、該制御手段は外部から入力された基準電圧のAD変換値を基に上記フィードバック制御の補正を行うものであることを特徴とする静電霧化装置。
【請求項2】
前記制御手段は、外部から入力された基準電圧のAD変換値に基づく補正値を記憶する記憶部を備えていることを特徴とする請求項1記載の静電霧化装置。

【図1】
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【図2】
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