説明

静電霧化装置

【課題】帯電微粒子ミストが生成された際に発生したオゾンを減らすことができる静電霧化装置を提供する。
【解決手段】静電霧化装置10には、放電電極13と対向するように対向電極22が設けられるとともに、対向電極22は活性炭より形成されている。そして、放電電極13から生成された帯電微粒子ミストは対向電極22側に向かって移送されるとともに、対向電極22の孔を通過する。このとき、帯電微粒子ミストが生成された際に発生したオゾンは、オゾン中の分子が対向電極22の表面に引き付けられるため、対向電極22に吸着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電微粒子ミストを生成するための静電霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、帯電微粒子ミストを生成するための静電霧化装置が、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1の静電霧化装置は、高電圧印加部と、高電圧印加部で発生させた高電圧が印加される放電電極と、放電電極に霧化させるべき液体を供給する液体供給手段とを備えている。
【0003】
上記構成の静電霧化装置において、帯電微粒子ミストを生成させるメカニズムとしては、まず、放電電極に印加された高電圧により、放電電極の先端部に供給された液体が帯電するとともに、帯電した液体にクーロン力が作用する。さらに、放電電極の先端に供給保持された液体の液面が、局所的に先端が尖った錐状に盛り上がってテーラーコーンとなり、このテーラーコーンの先端部に電荷が集中して高密度化されるとともに、高密度化された電荷の反発力による液体の分裂・飛散(レイリー分裂)を繰り返して静電霧化が行われる。そして、電気分解によりラジカルを有する帯電微粒子ミスト(マイナスイオンミスト)が生成される。
【0004】
この帯電微粒子ミストは、帯電により被対象物に引き寄せられる付着機能のほかに、脱臭、除菌などの効果を有している。この脱臭、除菌などの発現は、帯電微粒子ミスト中に含まれるラジカルが主な効果要因として作用していると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−313460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記構成の静電霧化装置によれば、帯電微粒子ミストを生成する際に、帯電微粒子ミストとともにオゾンが発生してしまうという問題があった。
本発明は、上記問題点に着目してなされたものであり、その目的は、帯電微粒子ミストが生成された際に発生したオゾンを減らすことができる静電霧化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、一次側電極への電圧印加に基づく電気−機械−電気変換により二次側電極にて高電圧を発生させる圧電振動子と、前記圧電振動子にて発生した高電圧に基づいて放電を行う放電電極と、前記放電電極と対向するように設けられるとともに前記放電電極との間で放電を行う対向電極と、前記放電電極に液体を供給する液体供給手段とを備え、前記液体供給手段から前記放電電極に供給された液体を前記放電電極の放電により霧化させて帯電微粒子ミストを生成する静電霧化装置において、前記対向電極に、前記帯電微粒子ミストとともに発生したオゾンを減少させる機能を持たせたことを要旨とする。
【0008】
この発明によれば、帯電微粒子ミストの生成によりオゾンが発生しても、対向電極の機能により発生したオゾンを減らすことができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記対向電極が活性炭より形成されていることを要旨とする。
【0009】
この発明によれば、活性炭は複数の孔が形成されており、この孔をオゾンが通過する際に、オゾン中の分子が活性炭の表面に引き付けられる。このため、対向電極を活性炭で形成することにより、オゾンを対向電極に吸着させ、発生したオゾンを減らすことができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記対向電極がオゾン分解触媒より形成されていることを要旨とする。
この発明によれば、オゾン分解触媒にオゾンが吸着されるとともに、オゾン分解触媒に吸着されたオゾンがオゾン分解触媒により分解される。このため、対向電極をオゾン分解触媒で形成することにより、発生したオゾンを減らすことができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記対向電極には電力供給手段が電気的に接続されるとともに、前記対向電極は、前記電力供給手段から供給される電力を熱に変換可能な発熱体であることを要旨とする。
【0012】
この発明によれば、オゾンは、発熱体である対向電極からの熱を受けて温度が上昇すると熱分解される。その結果、発生したオゾンを減らすことができる。
請求項5に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記対向電極は格子状またはハニカム形状に構成されていることを要旨とする。
【0013】
この発明によれば、帯電微粒子ミストは対向電極を通過させることができる一方で、オゾンは対向電極に吸着させることができる。よって、対向電極を放電電極に対向配置しても、帯電微粒子ミストの大気への放出が妨げられることがない。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記放電電極から前記対向電極に向かって移動する前記オゾンに向かってUVを照射するUV照射手段をさらに備えたことを要旨とする。
【0015】
この発明によれば、UV照射手段から照射されるUVをオゾンに照射することで、放電電極から対向電極に向かって移動する途中でオゾンを分解させることができ、UV照射手段を備えない静電霧化装置と比べて、発生したオゾンをさらに減らすことができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、帯電微粒子ミストが生成された際に発生したオゾンを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態における静電霧化装置を模式的に示す断面図。
【図2】(a)は圧電振動子の断面図、(b)は接触部材を介して放電電極が設けられた圧電振動子の斜視図。
【図3】対向電極の一部正面図。
【図4】別の実施形態における静電霧化装置を模式的に示す断面図。
【図5】別の実施形態における静電霧化装置を模式的に示す断面図。
【図6】別の実施形態における対向電極の一部正面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。なお、以下に示す各図は、帯電微粒子ミストを生成するためのメカニズムを説明する上で必要な構成のみを図示した静電霧化装置10の模式図となっており、静電霧化装置10におけるその他の構成については図示及び説明を省略している。
【0019】
図1に示すように、静電霧化装置10には図示しないタンクホルダにタンク11が着脱可能に設けられている。タンク11内の水(液体)は、液体供給路12上に配設された給水ポンプPによって、液体供給路12を介して放電電極13へ供給されるようになっている。すなわち、タンク11、液体供給路12及び給水ポンプPは、放電電極13に水を供給する液体供給手段を構成する。また、静電霧化装置10はファン14を備えている。
【0020】
図2(a)及び(b)に示すように、チタン酸ジルコン亜鉛(PZT)系材料からなる矩形板状の圧電振動子(圧電トランス)15は、その長手方向(図2に示す矢印Xの方向)と厚み方向(図2に示す矢印Yの方向)の二方向に分極されて構成されている。圧電振動子15の長手方向における一方側であって、圧電振動子15の厚み方向における両面には、電力供給面を構成する一次側電極16,17がそれぞれ設けられている。また、圧電振動子15の長手方向における他方の端面側には、高電圧出力面18aを有する二次側電極18が設けられている。なお、圧電振動子15の厚み方向及び長さ方向の寸法比は、入力電圧及び出力電圧の略増幅比に相当し、本実施形態では10〜20倍程度に設定されている。
【0021】
図1に示すように、一次側電極16,17は電力(交流電圧)を供給する電力供給部19と電気的に接続されるとともに、電力供給部19により圧電振動子15の長手方向における長さに対応した共振周波数の交流電圧が一次側電極16,17に印加されるようになっている。
【0022】
電力供給部19により一次側電極16,17に交流電圧が印加されると、圧電振動子15の長手方向に強い機械振動が生じるとともに、図1に二点鎖線で示す波長1/2λを形成する定在波Wモードで振動する。なお、本来、定在波Wは縦波の振動であるが、図1においては説明の都合上、横波で図示している。
【0023】
この機械振動により二次側電極18では、圧電効果による電荷が発生するとともに、電力供給部19から一次側電極16,17に印加された電圧よりも昇圧された高電圧が発生する。昇圧された二次側電極18の高電圧出力面18aにおいても同様に昇圧された高電圧が発生している。二次側電極18に生じる高電圧は、一端が高電圧出力面18aの中央部に接触する接触部材20を介して、接触部材20の他端に接触する放電電極13に印加されるようになっている。
【0024】
また、圧電振動子15における定在波Wの節Fとなる位置には、圧電振動子15を保持する保持部材21が、圧電振動子15を厚み方向に挟むように設けられている。保持部材21は弾性体からなる。この保持部材21により、圧電振動子15において長手方向に機械振動が生じても、節Fに引張・圧縮応力が集中することが抑制される。
【0025】
また、静電霧化装置10には、放電電極13と対向するようにグランドに接続された対向電極22が設けられている。対向電極22は、放電電極13近傍であるとともに帯電微粒子ミスト雰囲気に位置するように設けられている。図3に示すように、対向電極22は、炭素物質を成形型を用いて射出成形される活性炭より形成されるとともに、正面視すると、矩形状の孔22aが複数形成された格子状になっており、帯電微粒子ミストの大部分がこの孔22aを介して対向電極22を通過できるようになっている。なお、孔22aのセル数は、1平方インチ当たり30〜300セルが望ましい。
【0026】
上記構成の静電霧化装置10において、帯電微粒子ミストを生成させるメカニズムとしては、まず、放電電極13と対向電極22との間に高電圧が印加されて放電電極13周りにコロナ放電を生じさせる。次に、タンク11から液体供給路12を介して放電電極13の先端に液体が供給されるとともに、放電電極13の先端に供給された液体が帯電し、この液体にクーロン力が作用する。さらに、放電電極13の先端に供給保持された液体の液面が、局所的に先端が尖った錐状に盛り上がってテーラーコーンとなり、このテーラーコーンの先端部に電荷が集中して高密度化される。そして、高密度化された電荷の反発力による液体の分裂・飛散(レイリー分裂)を繰り返して静電霧化が行われるとともに、静電霧化されたミストにおいて電気分解が行われ、ミストがラジカル状態になる。よって、ラジカルを有する帯電微粒子ミスト(マイナスイオンミスト)が生成される。このように生成された帯電微粒子ミストは、主にナノメータサイズからなり、ファン14によって対向電極22側に向けて効率良く移送できるようになっている。
【0027】
帯電微粒子ミストは、帯電により被対象物に引き寄せられる付着機能のほかに、脱臭、除菌などの効果を有しているため、この静電霧化装置10によれば、生成された帯電微粒子ミストを被対象物に効率良く付着させることで、被対象物に対して脱臭、除菌などの効果を得ることができる。
【0028】
ところで、帯電微粒子ミストが生成される際には、帯電微粒子ミストとともにオゾンが発生する。帯電微粒子ミスト及びオゾンは、ファン14によって対向電極22側に向けて移送され、帯電微粒子ミストは対向電極22の孔22aを通過する。一方、オゾンは、その分子が対向電極22の表面に引き付けられ、オゾンが対向電極22に吸着される。その結果、オゾンが取り除かれた帯電微粒子ミストを被対象物に付着させることができる。
【0029】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)静電霧化装置10には、放電電極13と対向するように対向電極22が設けられ、この対向電極22は活性炭より形成されている。そして、帯電微粒子ミストが生成された際に発生したオゾンは、対向電極22(活性炭)の吸着作用により対向電極22に吸着される。その結果、静電霧化装置10によって帯電微粒子ミストを生成した際にオゾンが発生しても、対向電極22によりオゾンを吸着して大気に放出されるオゾンを減らすことができる。
【0030】
(2)対向電極22は、炭素物質を成形型を用いて射出成形されるとともに、正面視すると、矩形状の孔22aが複数形成された格子状になっている。よって、帯電微粒子ミストは孔22aを通過させることができる一方で、オゾンは対向電極22に吸着させることができる。よって、対向電極22を放電電極13に対向配置しても、帯電微粒子ミストの大気への放出が妨げられることがない。
【0031】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、対向電極22を活性炭により形成したが、これに限らず、対向電極22をシート状、格子状、ハニカム形状等に加工したオゾン分解触媒により形成してもよい。これによれば、発生したオゾンがオゾン分解触媒に吸着され、そのオゾン分解触媒により分解される。このため、対向電極22をオゾン分解触媒で形成することにより、発生したオゾンを減らすことができる。
【0032】
○ 図4に示すように、対向電極22には電力供給手段31が電気的に接続されるとともに、対向電極22は、電力供給手段31から供給される電力を熱に変換可能な発熱体であってもよい。これによれば、オゾンは発熱体である対向電極22からの熱を受けて温度が上昇すると熱分解される。その結果、帯電微粒子ミストとともにオゾンが発生しても、そのオゾンを減らすことができる。
【0033】
○ 図5に示すように、静電霧化装置10に放電電極13から対向電極22に向かって移動するオゾンに向かってUVを照射するUV照射手段としてのUVランプ41をさらに設けてもよい。これによれば、UVランプ41から照射されるUVをオゾンに照射することで、放電電極13から対向電極22に向かって移動する途中でオゾンを分解させることができ、UVランプ41を設けない静電霧化装置10と比べて、発生したオゾンをさらに減らすことができる。なお、UVの波長は200〜310nmであることが望ましい。
【0034】
○ 実施形態において、対向電極22は、矩形状の孔22aが複数形成された格子状になっていたが、これに限らず、例えば、図6に示すように、蜂の巣のような孔22aが複数形成されたハニカム形状になっていてもよい。
【0035】
○ 実施形態において、対向電極22は、炭素物質を成形型を用いて射出成形されたが、これに限らず、粉末活性炭を他の原料とともに抄紙して成形してもよい。
○ 実施形態において、放電電極13を複数設けてもよい。
【0036】
○ 実施形態において、液体供給手段として、毛細管現象により液溜め部に溜めた液体を放電電極13に供給するようにしたものや、空気中の水分をペルチェユニットなどにより冷却して結露水として生成することで、この結露水を放電電極13に供給するようにしたものであってもよい。
【符号の説明】
【0037】
P…液体供給手段を構成する給水ポンプ、10…静電霧化装置、11…液体供給手段を構成するタンク、12…液体供給手段を構成する液体供給路、13…放電電極、15…圧電振動子、16,17…一次側電極、18…二次側電極、22…対向電極、31…電力供給手段、41…UV照射手段としてのUVランプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側電極への電圧印加に基づく電気−機械−電気変換により二次側電極にて高電圧を発生させる圧電振動子と、前記圧電振動子にて発生した高電圧に基づいて放電を行う放電電極と、前記放電電極と対向するように設けられるとともに前記放電電極との間で放電を行う対向電極と、前記放電電極に液体を供給する液体供給手段とを備え、前記液体供給手段から前記放電電極に供給された液体を前記放電電極の放電により霧化させて帯電微粒子ミストを生成する静電霧化装置において、
前記対向電極に、前記帯電微粒子ミストとともに発生したオゾンを減少させる機能を持たせたことを特徴とする静電霧化装置。
【請求項2】
前記対向電極が活性炭より形成されていることを特徴とする請求項1に記載の静電霧化装置。
【請求項3】
前記対向電極がオゾン分解触媒より形成されていることを特徴とする請求項1に記載の静電霧化装置。
【請求項4】
前記対向電極には電力供給手段が電気的に接続されるとともに、前記対向電極は、前記電力供給手段から供給される電力を熱に変換可能な発熱体であることを特徴とする請求項1に記載の静電霧化装置。
【請求項5】
前記対向電極は格子状またはハニカム形状に構成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の静電霧化装置。
【請求項6】
前記放電電極から前記対向電極に向かって移動する前記オゾンに向かってUVを照射するUV照射手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の静電霧化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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