説明

静電霧化装置

【課題】高電圧印加部の結露水生成制御回路への影響を抑制し、且つ、小型化が可能となる。
【解決手段】放電極1と、空気中の水分を冷却することで結露水として生成して前記放電極1に水を供給する結露水生成部2と、前記放電極1に供給された水を静電霧化する高電圧を印加するための高電圧印加部3と、前記結露水生成部2の冷却制御を行うための結露水生成制御回路4とを備えた静電霧化装置5である。前記高電圧印加部3と前記結露水生成制御回路4との間に外郭が金属である電気部品6を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電霧化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、放電極と、結露水を生成して放電極に水を供給する結露水生成部と、放電極に供給された水を静電霧化する高電圧を印加するための高電圧印加部と、結露水生成部の冷却制御を行うための結露水生成制御回路とを備えた静電霧化装置が開示してある。
【0003】
特許文献1の結露水生成部は、空気の水分を冷却することで結露水として生成して放電極に供給する。
【0004】
この特許文献1において、高電圧印加部と結露水生成制御回路を隣接して配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−117971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
結露水生成制御回路は、微小信号回路により構成される。したがって、特許文献1のように高電圧印加部と結露水生成制御回路を隣接して配置するものにおいては、高電圧印加部が発生するノイズの影響を結露水生成制御回路が受けるおそれがある。
【0007】
このため、従来は、高電圧印加部からのノイズの影響を受けないように、高電圧印加部と結露水生成制御回路の間に可能な限り距離を取って、結露水生成制御回路を保護する必要がある。
【0008】
もし、小型化を目的として高電圧印加部と結露水生成制御回路を近づけると、高電圧印加部が、微小信号を処理している結露水生成制御回路に影響を及ぼすことがある。このように結露水生成制御回路に影響が及ぼされると、結露水生成部の正常な制御が行われず、結露水の生成が安定して行われない。このため、静電霧化が安定して行われなくなるおそれがある。
【0009】
したがって、従来は、前記のように高電圧印加部からのノイズの影響を受けないように、高電圧印加部と結露水生成制御回路の間に可能な限り距離を取る必要があり、静電霧化装置の小型化を阻害する要因となっている。
【0010】
本発明は、上記の従来例の問題点に鑑みて発明したものであって、高電圧印加部の結露水生成制御回路への影響を抑制し、且つ、小型化が可能となる静電霧化装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、放電極と、空気中の水分を冷却することで結露水として生成して前記放電極に水を供給する結露水生成部と、前記放電極に供給された水を静電霧化する高電圧を印加するための高電圧印加部と、前記結露水生成部の冷却制御を行うための結露水生成制御回路とを備えた静電霧化装置であって、前記高電圧印加部と前記結露水生成制御回路との間に外郭が金属である電気部品を配置することを特徴とする。
【0012】
また、前記高電圧印加部と前記結露水生成制御回路との間に配置される前記外郭が金属である電気部品が、前記静電霧化装置の電源ライン安定用の電界コンデンサであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、高電圧印加部と結露水生成制御回路との間に外郭が金属である電気部品を配置するので、結露水生成制御回路への高電圧印加部の影響を抑制し、且つ、小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の概略構成図である。
【図2】同上に用いる静電霧化発生部の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0016】
静電霧化装置5は、放電極1と、空気中の水分を結露水として生成して放電極1に水を供給する結露水生成部2と、放電極1に供給された水を静電霧化する高電圧を印加する高電圧印加部3と、結露水生成部2の冷却制御を行う結露水生成制御回路4とを備える。
【0017】
高電圧印加部3と、結露水生成制御回路4は、共通の基板8に保持され、高電圧印加部3と結露水生成制御回路4との間に外郭が金属である電気部品6が配置される。
【0018】
図1は、基板8を構成する回路基板に、高電圧印加部3を備えた高圧トランス10、結露水生成制御回路4を備えた微弱信号回路部9、外郭が金属である電気部品6がそれぞれ実装されている例を示す。また、基板8は、外部から電源を入力するための電源入力部(図示を省略する)を備え、電源入力部から静電霧化装置5の電源ラインに電力を供給する。
【0019】
微弱信号回路部9には、結露水生成制御回路4に加え、更に高圧出力検出回路、放電電流検出回路等の他の微弱信号回路11を備える。
【0020】
また、図1の実施形態では、基板8は、更にインダクタ12、コネクタ13、14等の他の電気部品を備える。
【0021】
高電圧印加部3と結露水生成制御回路4との間に配置される外郭が金属である電気部品6としては、例えば、静電霧化装置5の電源ライン安定用の電界コンデンサ7である。
【0022】
放電極1と、結露水生成部2は、霧化ケーシング16に組み込んであって、一つのブロック化された静電霧化発生部17が構成される。
【0023】
霧化ケーシング16は合成樹脂により構成され、図1、図2の実施形態では、対向電極18を備えている例が示されている。
【0024】
対向電極18は環状に形成され、環状の中心が放電極1の軸芯の延長線上に位置する。
【0025】
結露水生成部2は熱交換手段で構成され、図2の実施形態では、複数の熱電素子19を備える。
【0026】
図2においては、熱電素子19としてはP型のペルチェ素子とN型のペルチェ素子が1組又は複数組用いられる。そしてP型のペルチェ素子の端部と、N型のペルチェ素子の端部が、平板状の導電材よりなる連結部20の裏面に固着され、ペルチェ素子の連結部20側の端部が冷却側となり、ペルチェ素子の他方の端部が放熱側となる。
【0027】
連結部20の表面側には先端が尖った放電極1が突設され、結露水生成部2を構成する熱交換手段の冷却側が冷却されることで放電極1が冷却される。
【0028】
P型とN型で対をなす熱電素子19の放熱側の端部には、それぞれ通電と熱を放熱する放熱用通電部21が接合され、図2に示すように放熱用通電部21が霧化ケーシング16の外側に突出する。
【0029】
放熱用通電部21は、放熱の機能と、熱電素子19への通電の機能を備える。
【0030】
この放熱用通電部21は、通電ハーネス22を介してコネクタ13に接続される。
【0031】
放電極1又は対向電極18に高圧通電ハーネス23を介して高電圧印加部3からの高電圧を出力するコネクタ14に接続される。
【0032】
実施形態において、外郭が金属である電気部品6は、静電霧化装置5の電源ライン安定用の電界コンデンサ7である。
【0033】
前記構成の静電霧化装置5は、熱電素子19に対し通電すると、各熱電素子19内において同一方向への熱の移動が生じ、熱電素子19の冷却部側が冷却されて放電極1が冷却され、放熱側が高温となって放熱用通電部21が高温となる。
【0034】
放電極1が冷却されると放電極1の周囲の空気が冷却され、空気中の水分が結露等により液化されて放電極1の先端部に結露水が生成される。
【0035】
上記のようにして放電極1を冷却して放電極1の先端部に結露水が保持された状態で、高電圧印加部3により高電圧を印加して、放電極1の周りに強電界を発生させる。これにより放電極1の先端部に保持されている水がマイナス又はプラスに帯電し、帯電した水にクーロン力が働き、該水の液面が局所的に円錐形状に盛り上がってテイラーコーンが形成される。すると、円錐形状となった水の先端に電荷が集中して電荷の密度が高密度となり、高密度の電荷の反発力ではじけるようにして水が分裂・飛散(レーリー分裂)して静電霧化を行い、ラジカルを有するナノメータサイズの帯電微粒子水を発生させる。
【0036】
一方、放熱用通電部21から熱が放電される。
【0037】
ここで、結露水生成制御回路4は、熱電素子19への通電量を制御することで、結露水生成部2の冷却制御を行う。これにより、放電極1への結露水の生成量を略一定にして、安定してテイラーコーンを形成し、安定して静電霧化が行える。
【0038】
テイラーコーンの大小と、放電電流や放電電圧は相関関係があるので、放電電流検出回路や高圧出力検出回路により、放電電流や放電電圧を検出することで、テイラーコーンの状態が推定できる。テイラーコーンが小さい場合は、結露水の生成量が少ないと推定でき、テイラーコーンが大きい場合は、結露水の生成量が多いと推定できる。これに基づき、結露水生成制御回路4で熱伝素子19への通電量を制御して冷却制御をすることで、結露水の生成量が所定の生成量となるように制御され、安定した静電霧化が可能となる。
【0039】
上記例では放電電流や放電電圧の検出に基づいて結露水生成制御回路4で熱伝素子19への通電量を制御して冷却制御を行う例を示したが、放電極1の周囲環境を環境検出センサで検出し、環境検出センサの検出値に基づいて冷却制御を行ってもよい。
【0040】
つまり、周囲環境検出センサである温度センサや湿度センサにより、温度や湿度等の周囲環境のデータを検出し、これに基づいて、結露水生成制御回路4で熱伝素子19への通電量を制御して冷却制御を行ってもよい。この場合も、周囲環境のデータに応じて結露水生成制御回路4で熱伝素子19への通電量を制御して冷却制御をすることで、結露水の生成量が所定の生成量となるように制御され、安定した静電霧化が可能となる。
【0041】
本実施形態において、高電圧印加部3と結露水生成制御回路4との間に外郭が金属である電気部品6を配置するので、高電圧印加部3が発生するノイズが、結露水生成制御回路4に影響を与えるのを抑制することが可能となる。したがって、高電圧印加部3と結露水生成制御回路4を近づけて隣接配置でき、静電霧化装置5の小型化に寄与することが可能となる。
【0042】
また、実施形態においては、熱電素子19の放熱側の端部に通電と熱を放熱する放熱用通電部21を接合し、通電のための部材と放熱のための部材を兼用しているので、結露水生成部2の小型化が可能で、この点でも静電霧化装置5の小型化に寄与することができる。
【0043】
なお、高電圧印加部3、結露水生成制御回路4、外郭が金属である電気部品6を実装した基板8に、放電極1、結露水生成部2を霧化ケーシング16に組み込んで一つのブロック化された静電霧化発生部17を実装してもよい。このようにすると、静電霧化装置5のよりいっそうの小型化が可能となる。
【符号の説明】
【0044】
1 放電極
2 結露水生成部
3 高電圧印加部
4 結露水生成制御回路
5 静電霧化装置
6 電気部品
7 電界コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電極と、空気中の水分を冷却することで結露水として生成して前記放電極に水を供給する結露水生成部と、前記放電極に供給された水を静電霧化する高電圧を印加するための高電圧印加部と、前記結露水生成部の冷却制御を行うための結露水生成制御回路とを備えた静電霧化装置であって、前記高電圧印加部と前記結露水生成制御回路との間に外郭が金属である電気部品を配置することを特徴とする静電霧化装置。
【請求項2】
前記高電圧印加部と前記結露水生成制御回路との間に配置される前記外郭が金属である電気部品が、前記静電霧化装置の電源ライン安定用の電界コンデンサであることを特徴とする請求項1記載の静電霧化装置。


【図1】
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【図2】
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