説明

非共沸混合冷媒を使用するヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システム

【課題】 外気温が低い場合でも、未蒸発の液相の非共沸混合物冷媒を含む非共沸混合物冷媒が圧縮機へ送られることのないように、ヒートポンプの効率を低下させることを防止することができる、ヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムを提供する。
【解決手段】 非共沸混合冷媒を使用するヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムであって、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、蒸発器および圧縮機に接続され、蒸発器から出力される未蒸発の液相の非共沸混合冷媒の蒸発を促進する蒸発促進手段とを備え、蒸発促進手段が、圧縮機から出力される高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒が有する熱の一部を利用して、非共沸混合冷媒の蒸発を促進または非共沸混合冷媒を過熱する熱交換器であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非共沸混合冷媒を使用するヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムに関し、特に、蒸発器から出力される非共沸混合冷媒の蒸発を促進または非共沸混合冷媒を過熱する蒸発促進手段を備えるヒートポンプシステムまたは空調機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、二酸化炭素は、オゾン破壊係数がゼロであり、地球温暖化係数が1であり、環境への負荷が極めて小さく、かつ毒性、可燃性が無く安全で安価であること、臨界温度が31.1℃と低く、空調や給湯用では、サイクルの高圧側が容易に超臨界になることから冷媒と被冷却流体との温度差が小さい加熱を行うことができるので、給湯のように昇温幅が大きい加熱プロセスでは、高い成績係数(COP)が得られること、圧縮機の単位流入体積当たりの加熱能力が大きく、熱伝導率が高いことから、エコキュート(登録商標)の名称でヒートポンプ給湯機用冷媒として普及利用されている。
【0003】
図1に、二酸化炭素を冷媒として利用する従来のヒートポンプシステム100の代表的な構成図を示す。図1に示されるヒートポンプシステムは、圧縮機101、凝縮器102、膨張弁103、蒸発器104、二酸化炭素冷媒用の配管105、および加熱されるべき水用の配管106を備える。図1の矢印で示されるように、二酸化炭素冷媒は、配管105を介して、圧縮機101、凝縮器102、膨張弁103、および蒸発器104の順番で循環する。また加熱されるべき水は、水用の配管106を介して凝縮器102に導入され、凝縮器102で加熱された後で暖房用/給湯用として使用される。なお空調機若しくは冷凍機システムの場合には、水用の配管106は無い。
【0004】
図2に、二酸化炭素を冷媒として利用した従来のヒートポンプシステム100におけるサイクルを、横軸がエンタルピーを表しかつ縦軸が温度を表す線図を用いて示す。なお、図2における5は外気温を表し、6は造温水過程を表す線である。
【0005】
図1および図2を参照して、従来のヒートポンプのサイクルを、各構成部品の動作および各構成部品における冷媒の状態に基づいて以下に簡単に説明する。
【0006】
蒸発器104で外部から熱を奪いながら蒸発した低圧低温の気相の二酸化炭素は、圧縮機101へ送られる。この蒸発器104における状態は、図2の4〜1に対応する。二酸化炭素冷媒は、温度は低温で一定のままであるが、外部から熱を奪うことによってエンタルピーは増大して、液相から気化し続けて飽和蒸気線に近付く。
【0007】
この低圧低温の気相の二酸化炭素は、圧縮機101で断熱圧縮されて高圧高温の気相の二酸化炭素になり、凝縮器102へ送られる。この圧縮機101における状態は、図2の1〜2に対応する。二酸化炭素冷媒は、温度が上昇した過熱状態の気相の二酸化炭素になる。
【0008】
温度が上昇した過熱状態の気相の二酸化炭素は、凝縮器102において放熱し冷却される。この凝縮器102における状態は、図2の2〜3に対応する。過熱状態の気相の二酸化炭素(図2の2)から、超臨界圧の状態で冷却されてエンタルピーが減少し、液相の二酸化炭素になる(図2の3)。この凝縮器102において、気相の二酸化炭素冷媒から放出される熱を利用して、水用の配管106から導入される水を加熱して、暖房または給湯に用いる。
【0009】
高圧で温度が低下した液相の二酸化炭素は、凝縮器102から膨張弁103へ送られる。膨張弁103で、液相の二酸化炭素は、圧力が急激に低下しかつ温度が急激に低下して、低圧低温の気相および液相の二酸化炭素になる。この膨張弁104における状態は、図2の3〜4に対応する。二酸化炭素は、エンタルピーが同一で温度が急激に低下する。
【0010】
低圧低温の気相および液相の二酸化炭素は、再び蒸発器104で外部から熱を奪い蒸発して、図2の4〜1に対応する状態になり、低圧低温の気相の二酸化炭素になる。
【0011】
二酸化炭素冷媒がこのようなサイクルを繰り返すことによって、ヒートポンプシステム100が動作して、凝縮器102において水を加熱する。
【0012】
このように動作するヒートポンプシステムにおいて冷媒として二酸化炭素を用いることは、普及利用されているが、二酸化炭素冷媒の作動圧が、約10MPaと他の冷媒と比べると非常に高く、そのため、ヒートポンプシステムにおける各構成部品を超高圧仕様にしなければならない問題があった。そのため、作動圧が低い冷媒の開発が大きな課題となっている。
【0013】
二酸化炭素超臨界冷媒に代わる、オゾン層破壊の危険性がなく、地球温暖化に及ぼす悪影響が小さく、かつ不燃性ないし難燃性で、低圧において作動する等の優れた性能を有する、安全で毒性のない給湯/暖房用冷媒組成物として、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒が提案されている。
【0014】
すなわち、物性的に伝熱効果の高い二酸化炭素(0.02W/mK)とより高い比熱を有するジメチルエーテル(138J/molK)とを混合することによって、極めて高い熱効率を示す物性になり、低圧で作動する成績係数(COP)の優れた暖房用/給湯用冷媒となる。このジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を利用した暖房用/給湯用ヒートポンプは、外気温5℃程度の条件下で、数値シミュレーションと実証実験の結果、3.5MPa以下の低圧で作動し、かつ高い成績係数(COP)が得られる。
【0015】
このように、二酸化炭素冷媒と比べて低圧で作動するジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒を用いた場合のサイクルを、図3を参照して説明する。図3は、図2と同様に、横軸がエンタルピーを表しかつ縦軸が温度を表す線図である。図3が、図2と大きく異なる点は、蒸発器104における冷媒の状態である14〜11が、温度が一定ではなく、ある傾斜を持った直線で表されていることである。これは、ジメチルエーテルおよび二酸化炭素からなる混合物冷媒は、非共沸特性を有し、蒸発するにつれて蒸発温度が上昇する性質を持っているからである。
【0016】
図3の14〜11で示される温度範囲を、温度勾配ΔTと表現する。この温度勾配ΔTは、ジメチルエーテルと二酸化炭素との組成比、および蒸発温度などに応じて変化する。蒸発温度20℃、10℃、−10℃のときに、他の混合物冷媒の一例であるハイドロフルオロカーボン(HFC)からなる混合物冷媒407C、ジメチルエーテル5%と二酸化炭素95%との混合物冷媒、およびジメチルエーテル15%と二酸化炭素85%との混合物冷媒における、それぞれの温度勾配ΔTの値は、以下のようになる。407Cの温度勾配ΔTの値は、蒸発温度20℃、10℃、および−10℃のときに、それぞれ5.7℃、6.0℃、および6.4℃である。ジメチルエーテル5%と二酸化炭素95%との混合物冷媒の温度勾配ΔTの値は、蒸発温度20℃、10℃、および−10℃のときに、それぞれ8℃、10℃、および12℃である。また、ジメチルエーテル15%と二酸化炭素85%との混合物冷媒の温度勾配ΔTの値は、蒸発温度20℃、10℃、および−10℃のときに、それぞれ20℃、22℃、および26℃である。このように、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物冷媒は、大きな温度勾配ΔTの値を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
大きな温度勾配ΔTの値を示すジメチルエーテルと二酸化炭素との非共沸混合物冷媒の特性によって、特に外気温が低いときに、蒸発器において非共沸混合物冷媒が完全に蒸発せず、未蒸発の非共沸混合物冷媒が蒸発器内に残留する問題が発生する。
【0018】
この問題について、図3を参照してさらに詳しく説明する。
【0019】
寒冷地など外気温が低い場合には、図3で外気温を示す線15が、点17において、14〜11で示される蒸発器104での非共沸混合物冷媒の温度の線と交差することがある。この点17で、蒸発器104における非共沸混合物冷媒の温度と、外気温とが等しくなり、点17より右側では、非共沸混合物冷媒の温度が外気温より高い状態になる。このように、蒸発器104内での非共沸混合物冷媒の温度が外気温より高くなると、非共沸混合物冷媒の蒸発過程の途中で外気から熱を得ることができなくなる。そのため、非共沸混合物冷媒の蒸発が蒸発器104で完了せず、未蒸発の液相の混合物冷媒を含む非共沸混合物冷媒が圧縮機101へ送られて、ヒートポンプシステムの効率を低下させる。
【0020】
この問題を解決する1つの方法として、蒸発器104における非共沸混合物冷媒の蒸発温度が、蒸発の最終過程においても外気温より常に低くなるように、蒸発圧力をさらに低下させて、非共沸混合物冷媒の温度を低下させる方法が考えられる。このサイクルを図4に示す。この図4も、図2および図3と同様に横軸がエンタルピーを表しかつ縦軸が温度を表す線図で表す。図4における24〜21が、蒸発器104での非共沸混合物冷媒の蒸発過程での温度であり、外気温15より低くなっている。
【0021】
しかしながら、この方法は、圧縮機101における圧縮仕事を増大させ、成績係数(COP)が低下するという他の問題を生じる。さらに、蒸発器104全体がより低圧になると、蒸発過程での圧力損失でさらに成績係数(COP)が低下する。また、寒冷地で外気温が低下している状態では、非共沸混合物冷媒の蒸発圧力が低下して、圧縮機101が循環できる非共沸混合物冷媒の流量の低下も招くことになる。以上のように、蒸発器104における非共沸混合物冷媒の蒸発温度が、蒸発の最終過程においても外気温より低くなるように、蒸発圧力をさらに低下させる方法は、他の問題を生じるために好ましい方法ではない。
【0022】
なお、外気温が低い場合に、蒸発器104における冷媒の蒸発温度と外気温との温度差が小さくなり蒸発効率が悪くなることを防止するために、蒸発圧力を低下させなければならない問題は、単一冷媒、例えば、二酸化炭素の単一冷媒を用いる場合にも生じる。
【0023】
さらに、外気温が低く、蒸発器104における冷媒の蒸発温度と外気温との温度差が小さいときに、外気水分の氷結が生じ易い問題もある。また外気温が低く、蒸発器104における冷媒の蒸発温度と外気温との温度差が小さいときに、未蒸発の冷媒を生じないように蒸発伝面を増大すると、蒸発器104の寸法が増大してしまう問題もあった。
【0024】
本発明は、外気温が低い場合であっても、未蒸発の液相の非共沸混合物冷媒を含む非共沸混合物冷媒が圧縮機へ送られて、ヒートポンプシステムの効率を低下させることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
請求項1に係る発明によれば、非共沸混合冷媒を使用するヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムであって、
低圧低温の気相の非共沸混合冷媒を吸入圧縮して、高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒にする圧縮機と、
圧縮機に接続され、かつ高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒を液相に凝縮し放熱させて、液相の非共沸混合物冷媒にする凝縮器と、
凝縮器に接続され、かつ液相の非共沸混合物冷媒を減圧膨張させて、低圧低温の気相および液相の非共沸混合物冷媒にする膨張弁と、
膨張弁に接続され、かつ低圧低温の気相および液相の非共沸混合物冷媒を気相に蒸発し吸熱させて、低圧低温の気相の非共沸混合物冷媒にする蒸発器と、
蒸発器および圧縮機に接続され、蒸発器から出力される未蒸発の液相の非共沸混合冷媒の蒸発を促進または非共沸混合冷媒を過熱する蒸発促進手段とを備え、
蒸発促進手段が、圧縮機から出力される高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒が有する熱の一部を利用して、非共沸混合冷媒の蒸発を促進する熱交換器であることを特徴とする。
【0026】
このような構成によって、圧縮機から出力される高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒が有する熱の一部を利用して、未蒸発の液相の非共沸混合冷媒の蒸発を促進または非共沸混合冷媒を過熱するので、外気温が低い場合でも、未蒸発の液相の非共沸混合物冷媒を含む非共沸混合物冷媒が圧縮機へ送られて、ヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムの効率を低下させることを防止することができる。
【0027】
請求項2に係る発明によれば、蒸発促進手段が、蒸発器の出力部と圧縮機の吸入部との間に設けられ、蒸発器から出力される非共沸混合物冷媒と圧縮機から出力される非共沸混合物冷媒との間で熱交換し、
圧縮機の吐出管から分岐部で分岐され、蒸発促進手段へ非共沸混合物冷媒の一部を導く第1の配管と、該第1の配管を介して蒸発促進手段に導かれた非共沸混合物冷媒を凝縮器へ戻すために、凝縮器の吸入管への合流部に接続された第2の配管と、蒸発器から出力される非共沸混合物冷媒を蒸発促進手段に導く第3の配管と、該第3の配管を介して蒸発促進手段に導かれた非共沸混合物冷媒を圧縮機に送る第4の配管とを備えることを特徴とする。
【0028】
このような構成によって、蒸発促進手段が、第1の配管によって導かれた高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒の熱を利用して、第3の配管によって熱交換器に導かれた未蒸発の液相の非共沸混合物冷媒の蒸発を促進または非共沸混合冷媒を過熱することができる。
【0029】
請求項3に係る発明によれば、蒸発促進手段が、蒸発器の出力部と圧縮機の吸入部との間に設けられ、蒸発器から出力される非共沸混合物冷媒と圧縮機から出力される非共沸混合物冷媒との間で熱交換し、
圧縮機の吐出管から分岐部で分岐され、蒸発促進手段へ非共沸混合物冷媒の一部を導く第1の配管と、該第1の配管を介して蒸発促進手段に導かれた非共沸混合物冷媒を膨張弁へ送るために、凝縮器と膨張弁との間の合流部に接続された第5の配管と、蒸発器から出力される非共沸混合物冷媒を蒸発促進手段に導く第3の配管と、該第3の配管を介して蒸発促進手段に導かれた非共沸混合物冷媒を圧縮機に送る第4の配管とを備えることを特徴とする。
【0030】
このような構成によって、第1の配管を介して蒸発促進手段に導かれ温度が低下した非共沸混合物冷媒を、第5の配管を介して凝縮器をバイパスして膨張弁へ送ることによって、圧縮機の吐出温度がより上昇し、ヒートポンプまたは空調機若しくは冷凍機システムの利用がし易くなる。また蒸発器の出口温度の方が、凝縮器の出口温度より低いため、適性流量により凝縮も促進される。凝縮が促進されると、圧縮機の吐出圧力が低下し、動力が低下する。
【0031】
請求項4に係る発明によれば、蒸発促進手段が、蒸発器の出力部に直接組み込まれることを特徴とする。
【0032】
このような構成によって、第3の配管を不要とするより簡単な構成を実現することができる。
【0033】
請求項5に係る発明によれば、蒸発促進手段が、蒸発器から出力される非共沸混合冷媒を、蒸発した気相の非共沸混合冷媒と未蒸発の液相の非共沸混合冷媒とに分離する気液分離手段をさらに備え、圧縮機から出力される高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒が有する熱の一部と、気液分離手段によって分離された液相の非共沸混合冷媒との間で熱交換することを特徴とする。
【0034】
このような構成によって、気液分離手段で分離された未蒸発の液相の非共沸混合冷媒だけに、圧縮機から出力される非共沸混合物冷媒が有する熱の一部を与えて、蒸発を効率的に促進することができる。
【0035】
請求項6に係る発明によれば、圧縮機から蒸発促進手段に導かれる非共沸混合物冷媒の流量を制御する可変流動抵抗手段をさらに備えることを特徴とする。
【0036】
このような構成によって、可変流動抵抗手段を用いて、圧縮機から蒸発促進手段に導かれる非共沸混合物冷媒の流量を、必要に応じて適切に制御することができる。特に、蒸発促進手段および関連する配管を設置することで、ヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システム全体を循環する非共沸混合物冷媒の総量は低下するが、圧縮機に送られる非共沸混合物冷媒は、蒸発促進手段によって熱が伝達されその温度が上昇するので、圧縮機から出力される非共沸混合物冷媒の温度も上昇し、ポンプ動力が大きくなる。そこで、可変流動抵抗手段によって、圧縮機から蒸発促進手段に導かれる非共沸混合物冷媒の流量を、適切に設定することができる。
【0037】
請求項7に係る発明によれば、蒸発器から出力される非共沸混合物冷媒の温度を検知する第1の検知手段と、可変流動抵抗手段の流動抵抗を制御する流動抵抗制御手段とをさらに備え、
該流動抵抗制御手段が、第1の検知手段が検知した非共沸混合物冷媒の温度に基づいて、可変流動抵抗手段の流動抵抗を制御することを特徴とする。
【0038】
このような構成によって、蒸発器から出力される非共沸混合物冷媒の温度が高く、十分に蒸発していると考えられる場合には、蒸発促進手段に導かれる非共沸混合物冷媒の流量を減らし、蒸発器から出力される非共沸混合物冷媒の温度が低く、未蒸発の液相を含むことが予想される場合には、蒸発促進手段に導かれる非共沸混合物冷媒の流量を増やすなど、必要に応じた非共沸混合物冷媒の流量制御を可能にする。そのため、ヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムの効率を最大限に維持することができる。
【0039】
請求項8に係る発明によれば、外気温を検知する第2の検知手段をさらに備え、
流動抵抗制御手段が、第1の検知手段が検知した非共沸混合物冷媒の温度、および第2の検知手段が検知した外気温に基づいて、可変流動抵抗手段の流動抵抗を制御することを特徴とする。
【0040】
このような構成によって、第1の検知手段が検知した非共沸混合物冷媒の温度と、第2の検知手段が検知した外気温との両方に基づいて、蒸発促進手段に導かれる非共沸混合物冷媒のより最適な流量制御を行うことができる。また、蒸発器から出力される非共沸混合物冷媒の温度を適切に制御することによって、氷結防止を行うこともできる。
【0041】
請求項9に係る発明によれば、非共沸混合物冷媒を送る蒸発器内の伝熱管と第4の配管とに接続される第6の配管と、蒸発器内の伝熱管から第6の配管への非共沸混合物冷媒の流れを切り換える切換手段とをさらに備え、
切換手段が、ヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムの運転条件に応じて、非共沸混合物冷媒を、第6の配管を通過させることなく蒸発器から蒸発促進手段を介して圧縮機へ送るか、または、非共沸混合物冷媒を、蒸発促進手段を通過させることなく第6の配管を介して蒸発器から圧縮機へ送るかを制御することを特徴とする。
【0042】
このような構成によって、非共沸混合物冷媒の温度勾配が大きいまたは小さい場合、あるいは夏場と冬場など環境温度の差が大きいなどの場合に、運転条件を変えてヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムを作動させるときに、蒸発器において過度の加熱により圧縮機の吸い込み性能が低下され、冷凍能力が低下することを防止することができる。
【0043】
請求項10に係る発明によれば、非共沸混合冷媒を使用するヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムであって、
低圧低温の気相の非共沸混合冷媒を吸入圧縮して、高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒にする圧縮機と、
圧縮機に接続され、かつ高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒を液相に凝縮し放熱させて、液相の非共沸混合物冷媒にする凝縮器と、
凝縮器に接続され、かつ液相の非共沸混合物冷媒を減圧膨張させて、低圧低温の気相および液相の非共沸混合物冷媒にする膨張弁と、
膨張弁に接続され、かつ低圧低温の気相および液相の非共沸混合物冷媒を気相に蒸発し吸熱させて、低圧低温の気相の非共沸混合物冷媒を圧縮機に送る蒸発器と、
蒸発器から出力される未蒸発の液相の非共沸混合冷媒の蒸発を促進または非共沸混合冷媒を過熱する蒸発促進手段とを備え、
蒸発促進手段が、凝縮器の周囲に存在する高温の空気を送るための送風手段と、送風手段によって送られる空気を蒸発器に向けるダクトとを備え、凝縮器において非共沸混合物冷媒が凝縮するときに放熱される熱の一部を蒸発器に導き、蒸発器における非共沸混合冷媒の蒸発を促進または非共沸混合冷媒を過熱することを特徴とする。
【0044】
このような構成によって、蒸発促進手段が、凝縮器において非共沸混合物冷媒を凝縮するときに放熱される熱を用いて、蒸発器から出力される未蒸発の液相の非共沸混合冷媒の蒸発を促進するので、ヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムを循環する非共沸混合冷媒の流量に影響を及ぼさずに、非共沸混合冷媒の蒸発を促進または非共沸混合冷媒を過熱することができる。
【0045】
請求項11に係る発明によれば、蒸発器が、互いに面して隣接して配置される第1の蒸発器部分および第2の蒸発器部分と、第1の蒸発器部分と第2の蒸発器部分とを接続する接続部分とから構成され、
第1の蒸発器部分が、非共沸混合物冷媒が送られる流入口に接続される流入口端部と接続部分に接続される第1の端部とを有する伝熱管を備え、第2の蒸発器部分が、蒸発器から非共沸混合物冷媒を圧縮機に送る流出口に接続される流出口端部と接続部分に接続される第2の端部とを有する伝熱管を備え、第1の蒸発器部分の伝熱管の流入口端部および第2の蒸発器部分の伝熱管の流出口端部と、第1の蒸発器部分の伝熱管の第1の端部および第2の蒸発器部分の伝熱管の第2の端部とが、それぞれ同一の側に配置され、
送風手段から送られる空気の流れ方向と、第1および第2の蒸発器部分が備える伝熱管が延在する方向とが交差することを特徴とする。
【0046】
このような構成によって、蒸発器内の非共沸混合物冷媒における蒸発温度勾配の中間部分の温度を利用することができ、液相の非共沸混合物冷媒をより効率に蒸発させて、蒸発器をより安定して動作させることができる。
【0047】
請求項12に係る発明によれば、非共沸混合物冷媒が、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物であることを特徴とする。
【0048】
このような構成によって、大きな温度勾配の値を示すジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物からなる非共沸混合物冷媒を、外気温が低い場合でも、ヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムに効率を低下させることなく使用することができる。
【0049】
以下、本発明を、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態に基づいて詳細に記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
図5は、本発明の第1の実施形態である、圧縮機から出力される高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒が有する熱の一部を用いて、蒸発器から出力される非共沸混合冷媒の蒸発を促進する蒸発促進手段を備える、ヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムの構成図を示す。なお、図5において、図1に示されるヒートポンプシステムと同一の構成部分には、同一の参照符号が付けられている。
【0051】
図5に示されるヒートポンプシステム1000は、圧縮機101、分岐部221、合流部222、凝縮器102、膨張弁103、蒸発器104、蒸発促進手段200、第1の配管211、第2の配管212、第3の配管213、第4の配管214、非共沸混合冷媒用の配管105、水用の配管106、可変流動抵抗手段250、第1の検知手段260、流動抵抗制御手段270、および第2の検知手段280を備える。なお空調機若しくは冷凍機システムの場合には、水用の配管106は無い。
【0052】
図5の矢印で示されるように、例えばジメチルエーテルおよび二酸化炭素からなる非共沸混合物冷媒は、配管105、または第1の配管211〜第4の配管214を通って以下のように循環する。
【0053】
低圧低温の気相の非共沸混合物冷媒は、圧縮機101で断熱圧縮されて高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒になり、吐出管から分岐部221へ送られる。分岐部221へ送られた高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒は、配管105および合流部222を介して凝縮器102へ送られる部分と、第1の配管211を介して蒸発促進手段200へ送られる部分とに分けられる。可変流動抵抗手段250は、流動抵抗を変化させることによって、非共沸混合物冷媒の流量を変更する。図5において、可変流動抵抗手段250は、分岐部221と合流部222との間の配管105に設けられているが、可変流動抵抗手段250の位置は、図5に示される位置に限定されず、第1の配管211または第2の配管212などに設けられることもできる。
【0054】
第1の配管211を介して蒸発促進手段200へ送られた高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒は、蒸発促進手段200において、蒸発器104から出力される非共沸混合物冷媒に含まれる未蒸発の液相の非共沸混合物冷媒に熱を伝達して蒸発を促進または非共沸混合冷媒を過熱してから、第2の配管212を介して合流部222へ送られる。
【0055】
合流部222において、配管105を介して分岐部221から直接送られた高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒と、第2の配管212を介して蒸発促進手段200から送られる高圧で温度が低下した気相の非共沸混合物冷媒とが合流される。合流部222において合流された気相の非共沸混合物冷媒は、凝縮器102へ送られる。
【0056】
気相の非共沸混合物冷媒は、凝縮器102において放熱し冷却されて、高圧の液相の非共沸混合物冷媒になる。凝縮器102において、高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒から放出される熱を利用して、水用の配管106から導入される水を加熱して、暖房または給湯に用いる。
【0057】
高圧の液相の非共沸混合物冷媒は、凝縮器102から膨張弁103へ送られる。膨張弁103で、高圧の液相の非共沸混合物冷媒は、圧力が急激に低下しかつ温度が急激に低下して、低圧低温の気相および液相の非共沸混合物冷媒になる。
【0058】
蒸発器104へ送られた低圧低温の気相および液相の非共沸混合物冷媒は、外気から熱を奪って蒸発する。その際、外気温が低い場合には、蒸発器104において低圧低温の液相の非共沸混合物冷媒の全てが蒸発せず、未蒸発の液相の非共沸混合物冷媒を含む気相の非共沸混合物冷媒が、第3の配管213を介して蒸発促進手段200へ送られる。
【0059】
蒸発促進手段200において、未蒸発の液相の非共沸混合物冷媒は、第1の配管を介して送られる圧縮機101から出力された高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒から熱を奪って蒸発して、気相の非共沸混合物冷媒になり圧縮機101へ送られる。
【0060】
このように、圧縮機101から出力される高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒が有する熱の一部を用いて、蒸発器104から出力される非共沸混合冷媒の蒸発を促進または非共沸混合冷媒を過熱する蒸発促進手段200を備える構成により、外気温が低い場合でも、未蒸発の液相の非共沸混合物冷媒を含む非共沸混合物冷媒が圧縮機へ送られて、ヒートポンプシステムの効率を低下させることを防止することができる。
【0061】
第1の検知手段260は、蒸発器104から蒸発促進手段200へ非共沸混合物冷媒を送る第3の配管260、または蒸発器104の出力部に設けられ、蒸発器104から出力される非共沸混合物冷媒の温度を検知する。流動抵抗制御手段270は、第1の検知手段260と可変流動抵抗手段250とに接続され、第1の検知手段260によって検知された蒸発器104から出力される非共沸混合物冷媒の温度に基づき、可変流動抵抗手段250の流動抵抗を変化させる。例えば、蒸発器104から出力される非共沸混合物冷媒の温度が高く、十分に蒸発していると考えられる場合には、第1の配管211を介して蒸発促進手段200に導かれる非共沸混合物冷媒の流量を減らし、蒸発器104から出力される非共沸混合物冷媒の温度が低く、未蒸発の液相を含むことが予想される場合には、第1の配管104を介して蒸発促進手段200に導かれる非共沸混合物冷媒の流量を増やすなど、必要に応じて適切な非共沸混合物冷媒の流量制御を可能にする。特に、蒸発促進手段200および関連する第1および第2の配管211、212を設置することで、ヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システム1000全体を循環する非共沸混合物冷媒の総量は低下するが、圧縮機101に送られる非共沸混合物冷媒は、蒸発促進手段200によって熱が伝達されその温度が上昇するので、圧縮機101から出力される非共沸混合物冷媒の温度も上昇し、ポンプ動力が大きくなる。そこで、可変流動抵抗手段250によって、圧縮機101の吐出管から分岐部221および第1の配管211を介して蒸発促進手段200に導かれる高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒の流量を、適切に設定することができる。
【0062】
流動抵抗制御手段270は、さらに外気温を検知する第2の検知手段280に接続されることができ、第1の検知手段260が検知した蒸発器104から出力される非共沸混合物冷媒の温度、および第2の検知手段280が検知した外気温に基づいて、第1の配管211を介して蒸発促進手段200に導かれる高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒の流量を変更するために、可変流動抵抗手段250の流動抵抗を制御することができる。これによって、より効率的な蒸発促進手段200の動作が可能となる。また、蒸発器から出力される非共沸混合物冷媒の温度を適切に制御することによって、氷結防止を行うこともできる。
【0063】
図6は、第1の配管を介して蒸発促進手段に導かれ温度が低下した非共沸混合物冷媒を、第5の配管を介して凝縮器をバイパスして膨張弁へ送る蒸発促進手段の構成を示す。蒸発促進手段200は、蒸発器104の出力部と圧縮機101の吸入部との間に設けられ、蒸発器104から出力される非共沸混合物冷媒と圧縮機101から出力される非共沸混合物冷媒との間で熱交換する。第1の配管211は、圧縮機101の吐出管から分岐部221で分岐され、蒸発促進手段200へ非共沸混合物冷媒の一部を導き、第5の配管215は、第1の配管211を介して蒸発促進手段200に導かれた非共沸混合物冷媒を膨張弁103へ送るために、凝縮器102と膨張弁103との間の合流部223に接続され、第3の配管213は、蒸発器104から出力される非共沸混合物冷媒を蒸発促進手段200に導き、第4の配管214は、第3の配管213を介して蒸発促進手段200に導かれた非共沸混合物冷媒を圧縮機101に送る。
【0064】
第1の配管211を介して蒸発促進手段200に導かれ温度が低下した非共沸混合物冷媒を、第5の配管215を介して凝縮器102をバイパスして膨張弁103へ送ることによって、圧縮機101の吐出温度がより上昇し、ヒートポンプまたは空調機若しくは冷凍機システムの利用がし易くなる。また蒸発器104の出口温度の方が、凝縮器102の出口温度より低いため、適性流量により凝縮も促進される。凝縮が促進されると、圧縮機101の吐出圧力が低下し、動力が低下する。
【0065】
図7は、蒸発促進手段が、圧縮機へ低圧低温の非共沸混合物冷媒を出力する蒸発器の出力部に直接組み込まれる構成を示す。
【0066】
図7において、蒸発促進手段230は、蒸発器104の出力部に直接組み込まれ、第3の配管213が不要となる。なお、図7には図示されてはいないが、図5に示されるような、可変流動抵抗手段、第1の検知手段、流動抵抗制御手段、および第2の検知手段を備えることもできる。
【0067】
図8は、蒸発促進手段が、気液分離手段をさらに備える構成を示す。
【0068】
図8において、気液分離手段240が、第3の配管213と第4の配管214との間に配置される。気液分離手段240は、蒸発器104から出力される非共沸混合冷媒を、蒸発した気相の非共沸混合冷媒と未蒸発の液相の非共沸混合冷媒とに分離し、気液分離手段240によって分離された未蒸発の液相の非共沸混合冷媒だけに対して、圧縮機101から出力される高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒の一部が有する熱を用いて蒸発を促進する。なお、図8には図示されてはいないが、図5に示されるような、可変流動抵抗手段、第1の検知手段、流動抵抗制御手段、および第2の検知手段を備えることもできる。
【0069】
図9は、非共沸混合物冷媒を送る蒸発器内の伝熱管と第4の配管とに接続される第5の配管と、蒸発器内の伝熱管から第5の配管への非共沸混合物冷媒の流れを切り換える切換手段とをさらに備える構成を示す。
【0070】
図9において、切換手段251が、ヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムの運転条件に応じて、非共沸混合物冷媒を、第5の配管215を通過させることなく蒸発器104から蒸発促進手段200を介して圧縮機101へ送るか、または、非共沸混合物冷媒を、蒸発促進手段200を通過させることなく第5の配管215を介して蒸発器102から圧縮機101へ送るかを制御する。
【0071】
このような構成によって、非共沸混合物冷媒の温度勾配が大きいまたは小さい場合、あるいは夏場と冬場など環境温度の差が大きいなどの場合に、運転条件を変えてヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムを作動させるときに、蒸発器104において過度の加熱により圧縮機101の吸い込み性能が低下され、冷凍能力が低下することを防止することができる。
【0072】
図10は、本発明の第2の実施形態である、凝縮器において非共沸混合物冷媒を凝縮するときに放熱される熱を蒸発器に導き、非共沸混合冷媒の蒸発を促進または非共沸混合冷媒を過熱する蒸発促進手段を備える、ヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムの構成図を示す。なお、図10において、図1に示されるヒートポンプシステムと同一の構成部分には、同一の参照符号が付けられている。
【0073】
図10に示されるヒートポンプシステム1100は、圧縮機101、凝縮器102、膨張弁103、蒸発器104、送風手段310、およびダクト300を備える。送風手段310は、凝縮器102の周囲に存在する高温の空気を送り、ダクト300は、送風手段310によって送られる空気を蒸発器104に向ける。なお、図10における矢印320は、ダクト300から蒸発器104へ向けられる高温の空気の流れを示すものである。また、ダクト300の代わりに、送風手段310によって送られる空気の熱を蒸発器に伝えるヒートパイプを備える構成を有することもできる。
【0074】
凝縮器102において高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒を液相に凝縮するときに放熱される熱の一部を用いて、蒸発器104から出力される未蒸発の液相の非共沸混合冷媒の蒸発を促進または非共沸混合冷媒を過熱するので、外気温が低い場合でもヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムの効率低下を防止することができる。
【0075】
図11は、送風手段から送られる空気の流れ方向と、第1および第2の蒸発器部分が備える伝熱管が延在する方向とが交差する構成を示す図である。なお、図11には、図10に示される凝縮器102、送風手段310、およびダクト300が省略されている。
【0076】
図11に示される蒸発器は、互いに面して隣接して配置される第1の蒸発器部分330および第2の蒸発器部分331と、第1の蒸発器部分330と第2の蒸発器部分331とを接続する接続部分334とから構成される。ここで、第1の蒸発器部分330が、非共沸混合物冷媒が送られる流入口に接続される流入口端部332と接続部分334に接続される第1の端部333とを有する伝熱管を備え、第2の蒸発器部分331が、非共沸混合物冷媒を圧縮機101に送る流出口に接続される流出口端部336と接続部分334に接続される第2の端部335とを有する伝熱管を備える。
【0077】
第1の蒸発器部分330の伝熱管の流入口端部332および第2の蒸発器部分331の伝熱管の流出口端部336が、同一の側に配置され、かつ第1の蒸発器部分330の伝熱管の第1の端部333と第2の蒸発器部分331の伝熱管の第2の端部335とが、同一の側に配置される。図11において矢印で示される、送風手段から送られる空気の流れ方向と、第1の蒸発器部分330および第2の蒸発器部分331が備える伝熱管が延在する方向とは交差する。さらに図11には、空気を流動させるためのファンなどのさらなる送風手段337、および空気を集める合流手段338とが示されている。
【0078】
図11に示される構成によって、第1の蒸発器部分330の伝熱管内を非共沸混合物冷媒が流れる方向と、第2の蒸発器部分331の伝熱管内を非共沸混合物冷媒が流れる方向とは逆であり、蒸発器において非共沸混合物冷媒が一番低い温度を有する可能性がある流入口端部332と、蒸発器において非共沸混合物冷媒が一番高い温度を有する可能性がある流出口端部336とが同一側に配置される。この構成の蒸発器を送風手段によって空気が送られて、その空気と第1の蒸発器部分330および第2の蒸発器部分331との間で熱交換される。そのため、蒸発器内の非共沸混合物冷媒における蒸発温度勾配の中間部分の温度を利用することができ、液相の非共沸混合物冷媒をより効率に蒸発させて、蒸発器をより安定して動作させることができる。
【0079】
ここで、空気の流れ方向は、第2の蒸発器部分331から第1の蒸発器部分330へ向かう方向が好ましく、非共沸混合物冷媒の蒸発が終了する側である第2の蒸発器部分331から熱交換させて、蒸発した非共沸混合物冷媒の再凝縮をより効率的に防止することができる。
【0080】
非共沸混合物冷媒は、大きな温度勾配の値を示すジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物であることが好ましいが、本発明のヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムで使用される非共沸混合物冷媒は、これに限定されるものではなく、任意の混合物冷媒を使用することができる。さらに、単一冷媒、例えば二酸化炭素の単一冷媒を用いるヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムであっても、外気温が低い場合には本発明の構成は有効である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】二酸化炭素を利用したヒートポンプシステムの代表的な構成図を示す。
【図2】二酸化炭素を冷媒として利用した従来のサイクルを示す、横軸がエンタルピーでありかつ縦軸が温度の線図である。
【図3】寒冷地において非共沸混合物冷媒を利用したサイクルでの効率低下を説明する、横軸がエンタルピーでありかつ縦軸が温度の線図である。
【図4】蒸発器における非共沸混合物冷媒の蒸発温度が、蒸発の最終過程においても外気温より低くなるように、蒸発圧力をさらに低下させる方法を示す、横軸がエンタルピーでありかつ縦軸が温度の線図である。
【図5】圧縮機から出力される高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒の一部が有する熱を用いて、蒸発器から出力される非共沸混合冷媒の蒸発を促進する蒸発促進手段を備える、ヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムの構成図を示す。
【図6】第1の配管を介して蒸発促進手段に導かれ温度が低下した非共沸混合物冷媒を、第5の配管を介して凝縮器をバイパスして膨張弁へ送る蒸発促進手段の構成を示す
【図7】蒸発促進手段が圧縮機へ低圧低温の非共沸混合物冷媒を出力する蒸発器の出力部に直接組み込まれる構成を示す。
【図8】蒸発促進手段が、気液分離手段をさらに備える構成を示す
【図9】非共沸混合物冷媒を送る蒸発器内の伝熱管と第4の配管とに接続される第5の配管と、蒸発器内の伝熱管から第5の配管への非共沸混合物冷媒の流れを切り換える切換手段とをさらに備える構成を示す。
【図10】本発明の第2の実施形態である、凝縮器において非共沸混合物冷媒を凝縮するときに放熱される熱を蒸発器に導き、非共沸混合冷媒の蒸発を促進する蒸発促進手段を備える、ヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムの構成図を示す。
【図11】送風手段から送られる空気の流れ方向と、第1および第2の蒸発器部分が備える伝熱管が延在する方向とが交差する構成を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
100 ヒートポンプシステム
101 圧縮機
102 凝縮器
103 膨張弁
104 蒸発器
105 冷媒用の配管
106 水用の配管
200、230 蒸発促進手段
211 第1の配管
212 第2の配管
213 第3の配管
214 第4の配管
215 第5の配管
216 第6の配管
221 分岐部
222、223 合流部
240 気液分離手段
250 流量制御手段
251 切換手段
260 第1の検知手段
270 流動抵抗制御手段
280 第2の検知手段
300 ダクト
310 送風手段
330 第1の蒸発器部分
331 第2の蒸発器部分
334 接続部分
1000、1100 ヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非共沸混合冷媒を使用するヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムであって、
低圧低温の気相の非共沸混合冷媒を吸入圧縮して、高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒にする圧縮機と、
圧縮機に接続され、かつ高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒を液相に凝縮し放熱させて、液相の非共沸混合物冷媒にする凝縮器と、
凝縮器に接続され、かつ液相の非共沸混合物冷媒を減圧膨張させて、低圧低温の気相および液相の非共沸混合物冷媒にする膨張弁と、
膨張弁に接続され、かつ低圧低温の気相および液相の非共沸混合物冷媒を気相に蒸発し吸熱させて、低圧低温の気相の非共沸混合物冷媒にする蒸発器と、
蒸発器および圧縮機に接続され、蒸発器から出力される未蒸発の液相の非共沸混合冷媒の蒸発を促進する蒸発促進手段とを備え、
蒸発促進手段が、圧縮機から出力される高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒が有する熱の一部を利用して、非共沸混合冷媒の蒸発を促進または非共沸混合冷媒を過熱する熱交換器であることを特徴とするヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システム。
【請求項2】
蒸発促進手段が、蒸発器の出力部と圧縮機の吸入部との間に設けられ、蒸発器から出力される非共沸混合物冷媒と圧縮機から出力される非共沸混合物冷媒との間で熱交換し、
圧縮機の吐出管から分岐部で分岐され、蒸発促進手段へ非共沸混合物冷媒の一部を導く第1の配管と、該第1の配管を介して蒸発促進手段に導かれた非共沸混合物冷媒を凝縮器へ戻すために、凝縮器の吸入管への合流部に接続された第2の配管と、蒸発器から出力される非共沸混合物冷媒を蒸発促進手段に導く第3の配管と、該第3の配管を介して蒸発促進手段に導かれた非共沸混合物冷媒を圧縮機に送る第4の配管とを備えることを特徴とする、請求項1に記載のヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システム。
【請求項3】
蒸発促進手段が、蒸発器の出力部と圧縮機の吸入部との間に設けられ、蒸発器から出力される非共沸混合物冷媒と圧縮機から出力される非共沸混合物冷媒との間で熱交換し、
圧縮機の吐出管から分岐部で分岐され、蒸発促進手段へ非共沸混合物冷媒の一部を導く第1の配管と、該第1の配管を介して蒸発促進手段に導かれた非共沸混合物冷媒を膨張弁へ送るために、凝縮器と膨張弁との間の合流部に接続された第5の配管と、蒸発器から出力される非共沸混合物冷媒を蒸発促進手段に導く第3の配管と、該第3の配管を介して蒸発促進手段に導かれた非共沸混合物冷媒を圧縮機に送る第4の配管とを備えることを特徴とする、請求項1に記載のヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システム。
【請求項4】
蒸発促進手段が、蒸発器の出力部に直接組み込まれることを特徴とする、請求項1に記載のヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システム。
【請求項5】
蒸発促進手段が、蒸発器から出力される非共沸混合冷媒を、蒸発した気相の非共沸混合冷媒と未蒸発の液相の非共沸混合冷媒とに分離する気液分離手段をさらに備え、圧縮機から出力される高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒が有する熱の一部と、気液分離手段によって分離された液相の非共沸混合冷媒との間で熱交換することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システム。
【請求項6】
圧縮機から蒸発促進手段に導かれる非共沸混合物冷媒の流量を制御する可変流動抵抗手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システム。
【請求項7】
蒸発器から出力される非共沸混合物冷媒の温度を検知する第1の検知手段と、可変流動抵抗手段の流動抵抗を制御する流動抵抗制御手段とをさらに備え、
該流動抵抗制御手段が、第1の検知手段が検知した非共沸混合物冷媒の温度に基づいて、可変流動抵抗手段の流動抵抗を制御することを特徴とする、請求項6に記載のヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システム。
【請求項8】
外気温を検知する第2の検知手段をさらに備え、
流動抵抗制御手段が、第1の検知手段が検知した非共沸混合物冷媒の温度、および第2の検知手段が検知した外気温に基づいて、可変流動抵抗手段の流動抵抗を制御することを特徴とする、請求項7に記載のヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システム。
【請求項9】
非共沸混合物冷媒を送る蒸発器内の伝熱管と第4の配管とに接続される第6の配管と、蒸発器内の伝熱管から第6の配管への非共沸混合物冷媒の流れを切り換える切換手段とをさらに備え、
切換手段が、ヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムの運転条件に応じて、非共沸混合物冷媒を、第6の配管を通過させることなく蒸発器から蒸発促進手段を介して圧縮機へ送るか、または、非共沸混合物冷媒を、蒸発促進手段を通過させることなく第5の配管を介して蒸発器から圧縮機へ送るかを制御することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システム。
【請求項10】
非共沸混合冷媒を使用するヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システムであって、
低圧低温の気相の非共沸混合冷媒を吸入圧縮して、高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒にする圧縮機と、
圧縮機に接続され、かつ高圧高温の気相の非共沸混合物冷媒を液相に凝縮し放熱させて、液相の非共沸混合物冷媒にする凝縮器と、
凝縮器に接続され、かつ液相の非共沸混合物冷媒を減圧膨張させて、低圧低温の気相および液相の非共沸混合物冷媒にする膨張弁と、
膨張弁に接続され、かつ低圧低温の気相および液相の非共沸混合物冷媒を気相に蒸発し吸熱させて、低圧低温の気相の非共沸混合物冷媒を圧縮機に送る蒸発器と、
蒸発器から出力される未蒸発の液相の非共沸混合冷媒の蒸発を促進または非共沸混合冷媒を過熱する蒸発促進手段とを備え、
蒸発促進手段が、凝縮器の周囲に存在する高温の空気を送るための送風手段と、送風手段によって送られる空気を蒸発器に向けるダクトとを備え、凝縮器において非共沸混合物冷媒が凝縮するときに放熱される熱の一部を蒸発器に導き、蒸発器における非共沸混合冷媒の蒸発を促進することを特徴とするヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システム。
【請求項11】
蒸発器が、互いに面して隣接して配置される第1の蒸発器部分および第2の蒸発器部分と、第1の蒸発器部分と第2の蒸発器部分とを接続する接続部分とから構成され、
第1の蒸発器部分が、非共沸混合物冷媒が送られる流入口に接続される流入口端部と接続部分に接続される第1の端部とを有する伝熱管を備え、第2の蒸発器部分が、蒸発器から非共沸混合物冷媒を圧縮機に送る流出口に接続される流出口端部と接続部分に接続される第2の端部とを有する伝熱管を備え、第1の蒸発器部分の伝熱管の流入口端部および第2の蒸発器部分の伝熱管の流出口端部と、第1の蒸発器部分の伝熱管の第1の端部および第2の蒸発器部分の伝熱管の第2の端部とが、それぞれ同一の側に配置され、
送風手段から送られる空気の流れ方向と、第1および第2の蒸発器部分が備える伝熱管が延在する方向とが交差することを特徴とする、請求項10に記載のヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システム。
【請求項12】
非共沸混合物冷媒が、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合物であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のヒートポンプシステムまたは空調機若しくは冷凍機システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−155174(P2007−155174A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348816(P2005−348816)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000187149)昭和炭酸株式会社 (60)
【出願人】(397066627)エヌ・ケイ・ケイ株式会社 (18)