説明

非凝集性混床イオン交換体

【課題】非凝集性混床イオン交換体を提供する。
【解決手段】陽イオン交換成分との混合前または混合後に、陰イオン交換成分を10mg/リットル(樹脂)〜100g/リットル(樹脂)の適用濃度の1種以上の芳香族スルホン酸の縮合物で処理する。芳香族スルホン酸としては、フェノールスルホン酸、スルホン化ジトリルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、スルホン化ジフェニルメタン、スルホン化ビフェニル、スルホン化テルフェニル、ナフタレンスルホン酸、またはベンゼンスルホン酸が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非凝集性混床イオン交換体または非凝集性混床成分の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
混床イオン交換体の使用は、水溶液の脱塩に関する先行技術である。混合物の陽イオン性成分と陰イオン性成分との間の表面相互作用は、アグロメレートの形成(「クランピング」)を引き起こし、それにより、不十分な流動挙動をもたらす。さらに、そのような混床の性能は、不満足である。そのほか、凝集は、イオン交換樹脂の効果的な再生を妨害する。再生を行うには、混合物をその成分にできるかぎり完全に分別しなければならない。
【0003】
混床中における望ましくないクランピングを回避すべく、さまざまな方法が報告されている。たとえば、a)(特許文献1)に記載の水不溶性イオン交換粒子による処理(ただし、使用量が多く、過剰のイオン交換粒子を取り出して元の状態にするには、多量の洗浄水が必要である)、またはそのほかにb)(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、もしくは(特許文献6)に係る水溶性樹脂性高分子電解質による処理などである。陰イオン交換成分を処理するための水溶性高分子電解質は、高分子アクリル酸(誘導体)や高分子メタクリル酸(誘導体)のような水溶性樹脂性高分子電解質であるが、好ましくはスルホン化ポリビニル芳香族化合物、なかでもとくに好ましくはポリスチレンスルホン酸(PSS)である。PSSの平均モル重量に応じて、さまざまな基準に従って最適使用量を決定することが可能である。5000〜1,000,000g/molの平均モル重量の場合、好ましい使用量は、10〜800mg/リットル(陰イオン交換体)の範囲内である。
【0004】
しかしながら、混床の分離性は、たとえば、(特許文献6)に記載されるように、陽イオン交換成分との同時処理で達成されるにすぎない。この場合もまた、水溶性高分子電解質、たとえば、5000〜1,000,000g/molの平均モル重量を有するポリビニル芳香族第四級アンモニウム塩、ポリビニル芳香族アミノ酸塩、およびポリビニルピリジニウム塩が使用される。
【0005】
上記の方法はすべて、ある程度の困難を伴って好適なモル質量範囲内でポリビニル芳香族酸またはポリビニル芳香族アンモニウム化合物が利用可能であるにすぎず、しかも混床の良好な分離性を達成するには両電荷成分を処理しなければならないという欠点を有する。
【特許文献1】米国特許第4,347,328号明細書
【特許文献2】米国特許第2,961,417号明細書
【特許文献3】米国特許第3,168,486号明細書
【特許文献4】米国特許第5,902,833号明細書
【特許文献5】米国特許第6,060,526号明細書
【特許文献6】EP−A 1 291 083
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、以上に記載の欠点を克服することであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本目的の解決策つまり本発明の主題は、陽イオン交換成分との混合前または混合後に陰イオン交換成分を10mg/リットル(樹脂)〜100g/リットル(樹脂)の適用濃度の1種以上の芳香族スルホン酸の縮合物で処理することを特徴とする非凝集性易分離性混床イオン交換体または非凝集性易分離性混床成分の製造方法である。
【0008】
意外なことに、本発明に従って陰イオン交換成分の単独処理を行うと、優れた脱塩性能を有する非凝集性易分離性混床が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る方法は、たとえば鞣し剤や液化剤として使用されるようなオリゴマー性芳香族スルホン酸縮合物による陰イオン交換成分の単独処理を提供する。これらのスルホン酸縮合物は、EP−A 0 037 250またはDE−A 2 934 980によりすでに開示されている。本発明に関連する芳香族スルホン酸はまた、スルホメチル化芳香族化合物をも意味するものと解釈される。好ましいスルホン化芳香族化合物は、フェノールスルホン酸、スルホン化ジトリルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、スルホン化ジフェニルメタン、スルホン化ビフェニル、スルホン化テルフェニル、ナフタレンスルホン酸、またはベンゼンスルホン酸である。特許請求された生成物群を構成するさらなる処方物については、EP−A 816 406(その内容は結果として本出願に組み入れられるものとする)に記載されている。スルホン酸の縮合は、この場合、アルデヒドまたはケトンを用いて行われる。この際、とくに、脂肪族、環状脂肪族、さらには芳香族の代表的化合物が考慮の対象になる。好ましいのは、脂肪族アルデヒドであり、とくに好ましくは、ホルムアルデヒドさらには3〜5個の炭素原子を有する他の脂肪族アルデヒドが使用される。
【0010】
これらの縮合物は、一般的には、それらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、またはアンモニウム塩の形態をとり、合成特異的中和反応から生じる「中性塩」を伴う。これらの縮合物の使用は、それらの低塩処方物(その製造については、たとえば、EP−A 0 816 406に記載されている)の形態で行われるが、ただし、それが必要というわけではない。これとはきわめて対照的に、塩添加により、縮合物の取込み挙動を明確に改良することが可能であり、このことは、測定可能に改良される脱塩性能により実証される(実施例5、図3)。したがって、好ましい実施形態では、塩、とくに好ましくはアルカリ土類金属塩が、陰イオン交換成分に添加される。とくに好ましくは、塩化カルシウムが使用される。
【0011】
より広義には、縮合芳香族スルホン酸はまた、リグニンスルホネートおよびそれと芳香族ヒドロキシル化合物との縮合物をも意味するものと解釈される。
【0012】
本発明に記載されるようなイオン交換樹脂は、典型的には0.15〜1.20mmの直径を有する、好ましくは0.25〜1.00mmの直径を有する球状ポリマービーズである。
【0013】
この場合とくに興味深いのは、架橋性モノマーと共重合されたモノビニル芳香族化合物(好ましくはスチレンまたはそのアルキル置換誘導体)をベースとする強酸性陽イオン交換体および強塩基性陰イオン交換体である。この意味での架橋剤としては、好ましくは、ジビニルベンゼン(もしくはそのアルキル置換関連化合物)、オクタジエン、トリビニルシクロヘキサン、およびエチレングリコール架橋ジビニルエーテル、またはジビニルアクリレートおよびジビニルメタクリレートが使用される。
【0014】
とくに好ましいのは、上記のポリマーからスルホン化により得られる強酸性陽イオン交換体およびアミノメチル化(クロロメチル化法もしくはフタルイミド法)により上記のポリマーから合成された第四級アンモニウム基を有する強塩基性陰イオン交換体である。上記のイオン交換樹脂がいわゆるゲル状もしくはマクロポーラス状(不活性溶媒/沈殿剤の存在下における上記の出発材料の重合)の種の形態をとるかどうかは、この場合には重要でない。そのほか、活性は、処理される陰イオン交換成分の塩形(たとえば、塩化物、硫酸塩、水酸化物)に依存しない。本発明に係る方法を用いて好適に処理されるイオン交換体は、以下のとおりである。
− 強酸性ゲル型陽イオン交換体、たとえば、レバチット(登録商標)モノプラスS200(LEWATIT(登録商標)MonoPlus S200)
− 強酸性マクロポーラス型陽イオン交換体、たとえば、レバチット(登録商標)モノプラスSP112(LEWATIT(登録商標)MonoPlus SP 112)
− 強塩基性ゲル型陰イオン交換体、たとえば、レバチット(登録商標)モノプラスM500(LEWATIT(登録商標)MonoPlus M500)
− 強塩基性マクロポーラス型陰イオン交換体、たとえば、レバチット(登録商標)モノプラスMP500(LEWATIT(登録商標)MonoPlus MP 500)
【0015】
本発明に係る方法に供される前記スルホン酸縮合物のとくに好ましい代表的化合物は、次のとおりである。
レチンガン(登録商標)ZN(RETINGAN(登録商標)ZN)、タモール(登録商標)NN4501(TAMOL(登録商標)NN4501)、タモール(登録商標)NH7519(TAMOL(登録商標)NH7519)−メチレン縮合ナフタレンスルホン酸[NSSK=ナフタレンスルホン酸縮合物またはNSS=メチレン縮合ナフタレンスルホン酸]
ベイカノール(登録商標)SL(BAYKANOL(登録商標)SL)−メチレン縮合スルホン化ジトリルエーテル
タニガン(登録商標)BN(TANIGAN(登録商標)BN)−メチレン縮合されたナフタレンスルホン酸および4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン。
【0016】
好ましくは、本発明によれば、ポリアニオン性成分は、バッチ方式で陰イオン交換体に適用される。
【0017】
好ましくは、本発明によれば、混床の製造時、陰イオン交換体は、陰イオン交換体の再生前かつ陽イオン交換成分との混合前に処理される。しかしながら、他の選択肢として、レトロスペクティブ処理も同様に可能である。
【0018】
本発明によれば、なかでもとくに好ましくは、スルホン酸縮合物としてメチレン架橋ナフタレンスルホン酸[NSSK]が使用される。とくに好ましくは、スルホン酸縮合物は、1000g/l超、好ましくは5000g/l超、なかでもとくに好ましくは20,000g/mol超のモル重量を有する。
【実施例】
【0019】
実施例1
濃度0.1%の溶液として指定量の縮合物の入ったガラスビーカーに、処理される陰イオン交換樹脂(レバチット(登録商標)モノプラスM500(LEWATIT(登録商標) MonoPlus M 500))を投入する。混合物を20分間攪拌してから、さらに10分間静置する。その後、水抜きを行い、2BV(床体積)の脱イオン水で洗浄する。
【0020】
このように処理された50mlの陰イオン交換樹脂を一定体積になるまで振動台上で水中振盪し、そしてガラスビーカー内に攪拌導入することにより同一体積(水中振盪)の強酸性陽イオン交換体(レバチット(登録商標)モノプラスS200(LEWATIT(登録商標) MonoPlus S 200))と混合する。続いて、混合物を振動台上で水中振盪する。混合物の体積を決定する。さまざまな適用量でさまざまな縮合物を用いた結果は、表1中に見いだしうる。
【0021】
実施例2
攪拌しながら脱塩水中に溶解された1.5g/リットル(樹脂)のNSS縮合物2の入ったガラスビーカー内で、処理される陰イオン交換樹脂(レバチット(登録商標)モノプラスM500(LEWATIT(登録商標) MonoPlus M 500))を混合する。次に、混合物を10分間静置する。その後、水抜きを行い、2BVの脱イオン水で洗浄する。300g/l(樹脂)のNaOH(100%)を濃度5%の溶液として床に通して処理することにより再生を行う。
【0022】
このように処理された250mlの陰イオン交換樹脂を一定体積になるまで振動台上で水中振盪し、そしてガラスビーカー内に攪拌導入することにより160ml(水中振盪)の強酸性陽イオン交換体(レバチット(登録商標)モノプラスS200(LEWATIT(登録商標) MonoPlus S 200))と混合する。続いて、混合物を交換カラムに移し、そして10BVの飲料水を投入する。
【0023】
次に、カラムの底に水を流入させることにより、再生のために床をその高さの約3倍になるまで増大させる。約2分後、流入水の流れをゼロの値になるまで連続的に減少させる。その後、イオン交換床よりもわずかに上になるまで、注意深くカラムの水抜きを行う。陰イオン交換体は上部に、陽イオン交換体は底部に観察されうる。二者の体積分率を決定する。陰イオン交換部の分率が61%であれば、非常に良好な分離である。
【0024】
混床上に静置された液体中にNSSK添加剤(1g/l(陰イオン交換成分))を導入する。次に、液体レベルを低下させて床レベルに戻す。10分後、底から水を流入させることにより、床の増大を開始する。
【0025】
実施例3
濃度0.1%の溶液として1.5g/リットル(樹脂)のナフタレンスルホン酸縮合物1の入ったまたは1.25g/リットル(樹脂)のスルホン化ポリスチレン(バーサ(登録商標)TL130(Versa(登録商標)TL130))の入ったガラスビーカー内に、処理される陰イオン交換樹脂(レバチット(登録商標)モノプラスMP500(LEWATIT(登録商標)MonoPlus MP500))を投入する。混合物を20分間攪拌してから、さらに10分間静置する。その後、水抜きを行い、10BVの脱イオン水で洗浄する。
【0026】
実施例4
【0027】
【表1】

【0028】
実施例3のサンプルの前処理:
非再生樹脂混合物を試験する場合、300g/lのHCl/NaOH(100%)による再生を行う。[KR/OH再生:NaOH−HSO−NaHCO−NaOH → 90%超の再生度]
【0029】
完全混合物の場合、実験開始前に樹脂を十分に混合しなければならない。
【0030】
試験開始前、10BVでサンプルを徹底的に洗浄する。
【0031】
測定機器:
アナテル(登録商標)1000(Anatel(登録商標)1000)全容量測定用
ソーントン(登録商標)770PC(Thornton(登録商標)770PC)抵抗測定用
【0032】
試験工程:
1.流出物が最大抵抗値に達成するまで洗浄する(約1時間)。
2.破過(1MΩ未満)するまで原水を投入する。
【0033】
洗浄水の品質:
抵抗:18.2MΩ超
TOC:1〜3ppb
【0034】
投入水の品質:
導電率:450〜500μS/cm
塩含有量:5〜6meq/l
SiO含有量:3〜4ppm
【0035】
凝集の減少は、実施例1に記載されるような従来法を用いて測定可能である。分離樹脂の合計体積を超える混合後の陰イオン交換体と陽イオン交換体との組合せ(振盪)体積の量が20%以下、好ましくは10%以下、とくに好ましくは5%以下である場合、満足すべき程度の「非凝集」が達成される。
【0036】
実施例1に基づく結果を表1にまとめる。
【0037】
実施例5
陰イオン交換体の600mlサンプルをそれぞれガラスカラム中で600mlの溶液(a:脱塩水、b:脱塩水中の濃度1%のCaCl溶液)と混合し、底から空気を流入させることによりボルテックスする。45分間かけて、ボルテックスしながら脱塩水中のナフタレンスルホン酸縮合物2の濃度5%の溶液0.72gを添加する(陰イオン交換体1リットルあたり60mgのNSSK2に相当する)。添加終了後、さらに15分間にわたりボルテックスを継続する。その後、溶液を排液し、樹脂表面の1cm上までカラムを脱塩水で満たしてから2400gの硫酸(濃度3%)を用いて電荷交換を行う。続いて中性洗浄を行う。その後、濃度10%の水酸化ナトリウム溶液2395gを用いて、電荷を交換してOH形にする。最後に、それを洗浄して中性にし、レバチット(登録商標)モノプラスS200KR(LEWATIT(登録商標)MonoPlus S 200KR))と混合して測定に供する(図3)。
【0038】
【表2】

【0039】
再生を行うには、最初に混床を個別の成分に分別しなければならない。これは、一般的には、交換カラム中に底から水を注入する手段により行われる。水流の場合、成分は、それらの密度に従って秩序化される。すなわち、陰イオン交換体は、陽イオン交換体の上に位置する。分離層は、成分の色差に基づいて容易に特定可能である。混床のできるかぎり完全な再生(すなわち、その個別成分の再生)を行うための前提条件は、陰イオン交換成分および陽イオン交換成分への良好な分離である。しかしながら、この分離は、未処理の出発材料の場合、実質的に達成されず、事前に処理された陰イオン交換成分の場合、不適切に達成されるにすぎない。その場合、分離前に慣例に従って空気または窒素を注入することにより混合しながら少量の本発明に係る化合物を添加すれば、続いて、水をアップフローさせることにより混床を個別成分に実質的に完全に分別することが可能である(実施例2)。
【0040】
混床の分離性を試験するために、混床イオン交換体の製造、超純水を取得するためのその使用、およびそれに続くアップフロー法による混床のその成分への分離をシミュレートする方法を利用した(実施例2)。この方法では、61部の強塩基性陰イオン交換体を39部の強酸性陽イオン交換体と混合し、カラムに移し、続いて高純度水を製造すべく脱塩モードで操作する。特定の実動時間の後、水をアップフローさせることにより、成分を互いに分離する。材料を静置し、水抜きを行い、そして混合物の目視認識可能な百分率組成を決定する。完全な分離は、61%の陰イオン交換部の分率により与えられる。結果は、表2中に見いだしうる。
【0041】
【表3】

【0042】
混床性能に及ぼす処理の影響
この場合、陰イオン交換体に負荷しても、それに対応して製造される混床の性能になんら悪影響を及ぼさない。それどころか、一部の態様において、性能はさらに改良され(図1)、これはまた、米国特許第5,902,833号明細書と同じように作製されたサンプルと対比される(実施例3)。
【0043】
重要な分離特性に加えて、凝集の防止は、抽出性および交換速度挙動に関する樹脂混合物の性能にかなりの影響を及ぼす。クランピングは、マイクロ領域でさえも、床を貫通する流動チャネル形成を引き起こす。すなわち、一般的には流れが上部から底部に流動する樹脂床の個別領域は、湿潤されないため、交換に関与しない。
【0044】
チャネル形成よりも深刻な問題は、クランピングのエアボルテックスやエア攪拌などに起因する機械的破損により生じる材料移動である。陰イオン交換成分はより軟質の表面を有するので、一般的には、陰イオン交換材料が陽イオン交換体に移動する。機械的応力の作用が長時間になるほどかつ深刻ものになるほど、多くの材料が移動する。陰イオン交換体の官能基は陽イオンであるので、陽イオン交換樹脂の表面は、材料移動により陽イオンで負荷される。このため、この被覆層が原因で物質移動がより不十分になり、結果的にスリップに悪影響を及ぼす。被覆層が強靭に形成されるほど、陽イオンスリップは大きくなり、樹脂混合物の下流の流出物の溶液抵抗は低くなる。好適なコーティングによりクランピングを顕著に減少させるかまたはさらには完全に抑制しないかぎり、これを解消することはできない。
【0045】
図1〜3に関する注釈:
樹脂混合物の性能は、以下の測定可能な特性により定義される。
洗浄時の調製水の抵抗
負荷時の調製水の抵抗
負荷時のSiOスリップ
使用可能容量
【0046】
eq/l単位で表される「使用可能容量」は、指定端点、たとえば、17MΩの最小残留抵抗などが破過するまで効果的に利用可能なイオン交換容量の尺度である。このために、eq/l単位の負荷水のイオン負荷にl/h単位の流量および破過点までのh単位の時間を掛け算する。これにより、リットル単位の樹脂量で割り算されるイオン負荷が得られる。
【0047】
図1 ブランクサンプルを含むさまざまな処理の施された樹脂サンプル(実施例3)および実施例4に基づく測定の実験結果の提示;NSSK=ナフタレンスルホン酸縮合物、PSS=ポリスチレンスルホン酸。
【0048】
原水の流量およびイオン負荷に関するパラメーターが同一である場合、図1の実験に見られるように、十分な比較指数として破過時間を使用することが可能である(実施例4の実験手順)。
【0049】
図1は、レバチット(登録商標)モノプラスMP500(LEWATIT(登録商標)MonoPlus MP500)を用いた一連の試験の結果を示している。これらは、NSSKまたはPSSと300gのNaOH(100%)/1とで処理し後に再生されたものであった。その後、1:1.5の陽イオン対陰イオン比でレバチット(登録商標)モノプラスSP112Hタイプ(LEWATIT(登録商標) MonoPlus SP112 H type)の未処理の陽イオン成分と混合した。より良好な比較が行えるように、陽イオン交換体を再生形で提供した。より良好な比較が行えるように、同一製造バッチの樹脂サンプルを使用した。
【0050】
図1は、ポリアニオンで占有された陰イオン交換成分を用いて製造された混床の容量がブランクサンプル(マゼンタ)と比較して数桁大きいことを示している。NSSKで処理されたサンプルは、PSSで処理されたサンプルよりも大きい容量を有する。
【0051】
未処理のサンプルは、洗浄しても17MΩ超の値にすることはできない(0分のグラフの出発点)。NSSK1で処理されたサンプルは、洗浄することにより純水の理論抵抗18.3MΩにすることが可能である。PSSで処理されたサンプルも同様に、許容レベルを達成した。
【0052】
負荷時にも同様に、NSSK1で処理されたサンプルは、17MΩの破過点までの最長時間に関して最良性能を達成した。
【0053】
未処理のサンプルは、速度論的に非常に劣るので十分な程度まで塩含有量を減少させることはできなかった。
【0054】
ゲル型混床交換体の試験でも、類似の描像が得られる(図2)。未処理のサンプルは、混床の性能が非常に劣るので塩含有量を十分に減少させることはできない。処理されたサンプルは、所要の抵抗値に達する。さまざまな有効性の再生法を用いると、さまざまな使用可能容量を生じる(実施例4)。
【0055】
図2 レバチット(登録商標)モノプラスS200KR(LEWATIT(登録商標) MonoPlus S200KR)との混床における同一バッチのレバチット(登録商標)モノプラスM500(LEWATIT(登録商標)MonoPlus M500)のさまざまな処理の施された樹脂サンプルの実験結果の提示。NSSK1の負荷量および再生のタイプは、符号の説明中に見いだしうる[実施例4に基づく測定;NSSK=ナフタレンスルホン酸縮合物]。
【0056】
コーティングに用いるべく選択される本発明に係る化合物の使用量を最小化する場合、塩を添加することにより取込み挙動を改良しうるので、非常に低い添加率を用いたときでさえも、混床の良好な脱塩性能を達成することが可能である。
【0057】
レバチット(登録商標)モノプラスM800(LEWATIT(登録商標)MonoPlus M800)へのナフタレンスルホン酸縮合物2の充填に及ぼす塩化カルシウム添加の作用は、図3に印象的に示される。すなわち、NSSK2の使用量が同程度に少ないにもかかわらず、塩化カルシウムの存在下で作製されたサンプルの脱塩性能は、「ブランクサンプル」よりも著しく良好である。使用されるアルカリ土類金属塩の悪影響は、いかなる時間点でも観測されえなかった。
【0058】
まとめ:
混床中の陰イオン交換成分にポリアニオンを添加することにより、効果的にクランピングを減少させることが可能であるかまたは完全に防止することが可能であり、それに従って処理された混合物では、より迅速に溶出液が所要の抵抗レベルに達し(すなわち、そのような混合物の場合のみ、いかなる理由にせよこのレベルが達成される)かつ添加剤の添加されていない対応する混合物よりも大きい使用可能容量を有するという効果が得られる。実験では、NSSKで処理された混合物は、PSSで処理された比較物よりも良好な測定値を示した。
【0059】
混床中の陰イオン交換成分への特許請求された化合物の単独添加により、成分再生のためのアップフロー法を用いて効果的な分離を行うことが可能である。
【0060】
図3は、レバチット(登録商標)モノプラスS200KR(LEWATIT(登録商標)MonoPlus S200KR)との混床における塩化カルシウムの存在下および不在下で同一バッチのレバチット(登録商標)モノプラスM800(LEWATIT(登録商標)MonoPlus M800)のナフタレンスルホン酸縮合物2で等しく処理された樹脂サンプル(実施例5)の実験結果を示したものである。実施例4の記載内容から逸脱して、「原水」を用いた測定は行わず、塩化ナトリウム溶液(500ppm)を用いた測定を行った。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】レバチット(登録商標)モノプラスMP500(LEWATIT(登録商標)MonoPlus MP500)を用いた一連の試験の結果を示している。
【図2】レバチット(登録商標)モノプラスS200KR(LEWATIT(登録商標) MonoPlus S200KR)との混床における同一バッチのレバチット(登録商標)モノプラスM500(LEWATIT(登録商標)MonoPlus M500)のさまざまな処理の施された樹脂サンプルの実験結果を示している。
【図3】レバチット(登録商標)モノプラスS200KR(LEWATIT(登録商標)MonoPlus S200KR)との混床における塩化カルシウムの存在下および不在下で同一バッチのレバチット(登録商標)モノプラスM800(LEWATIT(登録商標)MonoPlus M800)のナフタレンスルホン酸縮合物2で等しく処理された樹脂サンプル(実施例5)の実験結果を示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽イオン交換成分との混合前または混合後に、陰イオン交換成分を10mg/リットル(樹脂)〜100g/リットル(樹脂)の適用濃度の1種以上の芳香族スルホン酸の縮合物で処理することを特徴とする、非凝集性易分離性混床イオン交換体または非凝集性易分離性混床成分の製造方法。
【請求項2】
縮合物を製造するために、一連のフェノールスルホン酸、スルホン化ジトリルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、スルホン化ジフェニルメタン、スルホン化ビフェニル、スルホン化テルフェニル、ナフタレンスルホン酸、またはベンゼンスルホン酸のうちのスルホン酸を使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ナフタレンスルホン酸として、メチレン架橋ナフタレンスルホン酸[NSSK]を使用することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
スルホン酸をアルデヒドまたはケトンと縮合させることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ポリアニオン性成分をバッチ方式で陰イオン交換体に適用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
混床を製造するために、陰イオン交換体の再生前かつ陽イオン交換成分との混合前に陰イオン交換体を処理することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
スルホン酸縮合物が、1000g/lより大なるモル重量を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
陽イオン交換成分との混合前または混合後に陰イオン交換成分を処理することにより非凝集性易分離性混床イオン交換体または非凝集性易分離性混床成分を製造するための、10mg/リットル(樹脂)〜100g/リットル(樹脂)の適用濃度の1種以上の芳香族スルホン酸の縮合物の使用。
【請求項9】
陰イオン交換成分の処理時に塩を添加することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
添加される塩がアルカリ土類金属塩であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−24926(P2008−24926A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−178650(P2007−178650)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】