説明

非加圧式直接転写染色方法及びその染色装置

熱転写または昇華転写技術を用いて染色対象上に柄、図案または絵などを染色する方法及び装置を提供する。非加圧式直接転写染色方法において、薬品処理層を染色対象内に形成し、薬品処理層内に転写像が染み込むことを可能にするために、薬品処理層上へ液体昇華染料をスプレイし、薬品処理層内へ染み込んだ液体昇華染料を固化することにより、薬品処理層内へ固体昇華染料を保持する。染色対象を加熱することによって、薬品処理層内に保持された染料を昇華させ、染色対象の繊維の拡大された孔内へ昇華した染料を染み込ませて、染色対象上に転写像を染色する。非加圧式直接転写染色装置は、中間転写媒体を押圧する工程に欠かせなかった押圧板、サーモスタット、及び他の関連する部品を無くすことにより簡単な構造で、小型に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写又は昇華転写技術を使用して、染色対象にパターン、装飾的意匠あるいは絵柄を染色する装置に関し、特に、中間転写媒体(転写紙)を用いることなしに、また、染色対象上に中間転写媒体を押圧する工程なしに、染色品質や効率を顕著に改善でき、また、小型で、簡単な構造に設計されることによって安価に製造でき、それによって初期投資を低減できる非加圧式直接転写染色装置に関する。本発明は、さらに非加圧式直接転写染色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱転写または昇華転写技術を使用する従来の染色方法には、二つの代表的な方法、プレスローラー法(図1参照)と、プレート型転写法(図2参照)が、よく知られている。プレスローラー法は、一対の加熱/押圧ローラー120を使用して、染色対象へ中間転写媒体110の表面に保持(擔持)された像を転写することによって、ポリエステル繊維のような染色対象100上に、写真、装飾的意匠やパターンのような像を、染色するように設計されている。
中間転写媒体110の表面に像を写すために、被覆層112が中間転者媒体の表面に形成され、転写インクから形成される昇華染料が、転写像を形成するために被覆層112上にスプレイされる。昇華染料から形成される転写像は、通常の温度で固体状態にあり、加熱/押圧ローラー120を通過しながら昇華されて、中間媒体から染色対象へ転写され、それによって、染色対象上に、絵柄、装飾的意匠あるいは種々のパターンのような像が染色される。
【0003】
ところで、図2は、プレート型転写方法を使用する他の染色方法である。プレートタイプ転写は、下部基盤205に染色対象を配置して、染色対象上に染料から形成される転写像222を保持した前面を備える中間媒体220を配置し、そして、染色対象210へ転写像を転写するために加熱−押圧プレート230を使用して、約180−230℃の温度で中間転写媒体220の後面を押圧することによって、染色対象上に像を染色するように設計されている。
【0004】
上記従来の染色方法において、必要以上のサーマルストレスを染色対象上に招き、染色の欠陥を引き起こす。韓国公開特許2003−00929885号は、過剰なサーマルストレスを防止できる染色方法を開示している。すなわち、染色物を加熱し、押圧している間の過剰な熱偏差(thermal deviation)の発生を防止するため、上部および下部加熱プレートを具備して、染色対象の下部部分から加熱を始めることによって転写像を実現する。
【0005】
しかしながら、図3に示すように、上述の従来技術はいずれも、同一のあるいは類似の工程を必要とすることが、原則であるように設計されている。すなわち、すべての上記従来技術は、原則として、染色対象300に転写される転写像染料312が保持される表面に、中間転写媒体310が必要である。それゆえ、染色対象300の方へ、中間転写媒体310を押圧する工程が、中間転写媒体310から染色対象300へ像を転写するために、基本的に必要とされる。
【0006】
すなわち、転写像染料(転写インク)は、中間転写媒体の被覆層320内に保持される。転写像染料は、常温では固体状態にあり、また、180−230℃で、0.5−5分間、加熱される時、昇華する。図3の矢印に示すように、昇華の過程で、昇華した転写像染料312は、ポリエステル繊維のような染色対象300の生地の拡大された孔に染み込み、それによって、染色対象300上に像を染色する。
【0007】
転写像染料312が染み込む染色対象300が、常温で冷却される時、染色対象物の生地の孔は、染み込んだ染料が孔から放出されるのを防止するように縮小し、その結果、染色状態を固定する。上記従来技術によれば、中間転写媒体は基本的に必要であり、加熱および押圧工程は、必ず実行されねばならない。
【0008】
しかしながら、押圧工程は、中間転写媒体310が、所定位置および所定間隙で、染色対象物300と接触している状態で、所定時間の間、実行されねばならず、染色機械は複雑になり、自動化の観点でオンライン染色工程を準備することは困難である。そのため、染色効率は低下し、もし大きなサイズの染色機械が用意されなければ、その生産性の改善には制限がある。
【0009】
さらに、像が、中間転写媒体310から染色対象300へ転写された後、中間転写媒体は、中間転写媒体310の被覆層312内に染料が多く残ったままの状態で、廃棄される。これは、過剰で不必要な染料の損失となっている。
【0010】
さらに、図3に示すように、加熱/押圧工程において、昇華された染料が染色対象300の孔に染み込みむ過程で、染料は、染色対象300内ばかりでなく、中間転写媒体310内へも染み込み、その結果、染色対象300の染色品質を劣化させる。
【0011】
従来技術の構成の特徴として、染色対象300へ中間転写媒体310を押圧するための、付加的な加熱/押圧プレート330が要求される。それゆえ、染色対象のサイズが比較的大きい時、加熱/押圧プレート330は、その大きさに応じて拡大されねばならない。これは、染色機械のサイズの増大をもたらす。
すなわち、従来の染色機械は、大きなサイズの構造とされねばならず、そのため、設備投資費が増大する。
【0012】
さらに、中間転写媒体310から染色対象300への染料の転写は、均一に実現されねばならないので、中間転写媒体310と染色対象300との間の間隔と配置は、染色対象300上の特定の場所の染色品質偏差を最小にするために、一様に維持されなければならない。そのため、間隙維持装置や、サーモハイドロスタットのような、さらなる付加的なユニットが装備されねばならない。これは、染色機械の製造コストのさらなる増大をもたらす。
【0013】
一方、韓国特許第0340241号は、繊維上への防水インクジェットインクでの染色の技術を開示しており、それによると、中間転写媒体や押圧工程なしで、生産した染色物を屋外広告に使用できる。この技術によれば、更なる防水被覆工程を行う必要はない。しかし、厚い被覆層が、インクジェットを受けるために繊維上に被覆されねばならず、このため繊維の品質や通気性は劣化する。さらに、染色された繊維の後面では染色効果を得ることは期待できない。さらに、染色された繊維に剥離現象が生じ、染色された像は、雨水等によって取り除かれ、その結果、染色された繊維からなる商品の品質を低下させる。さらに、この技術を使用する生産方法は、商品の不良率を増加させる。さらに、シリカの混合物、バインダー及び表面活性剤が、繊維に適用されるため、剥離現象が起こり易い。結果として、染色された繊維に染みが形成され、それによって染色された繊維の価値を悪化させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の一目的は、中間転写媒体を省くことによって安価に製造できる非加圧式直接転写染色装置を提供することであり、また、そのような染色装置を使用する染色方法を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、染色対象へ中間転写媒体を押圧する工程(従来技術では特別な工程であった)を省き、また、染色対象への連続的なオンライン染色作業を可能とすることによって、染色作業の生産性を改善することができる非加圧式直接転写染色装置や方法を提供することである。
【0016】
本発明の更なる他の目的は、中間転写媒体を押圧する工程に要求される押圧プレートや、他の関連部分を省くことによって、簡易な構造で、また小さなサイズで製造できる非加圧式直接転写染色装置を提供することであり、それによって、設備コストや初期投資コストを減少させるものであり、また、そのような染色装置を使用する染色方法を提供することである。
【0017】
本発明の更なる他の目的は、中間転写媒体によって引き起こされる不必要な染料損失を防止することによって、少量の染料を使用して優れた染色効果を提供でき、また、カラー固定特性(発色性)を改善でき、それによって、染色品質を改善する非加圧式直接転写染色装置及びその方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、染色対象内に薬品処理層を形成するステップと、上記薬品処理層内に転写像が染み込むことを可能にするために、薬品処理層上へ液体昇華染料をスプレイし、上記薬品処理層内へ染み込んだ上記液体昇華染料を固化することにより、薬品処理層内へ固体昇華染料を保持(擔持)させるステップと、染色対象を加熱することによって、薬品処理層内に保持された染料を昇華させ、染色対象の繊維の拡大された孔内へ昇華した染料を染み込ませて、染色対象上に転写像を染色するステップとを含む非加圧式直接転写染色方法を提供する。
【0019】
本発明の他の特徴によれば、薬品処理層を備えた染色対象が周囲に巻かれている供給リールと、上記供給リールから上記染色対象を開放する(引き出す)一対のピンチロールとを有する染色対象供給ユニットと、薬品処理層内に染料を保持する、供給ユニットの下流側に配置された染料貯蔵ユニットと、染色対象を加熱することによって、薬品処理層内に保持された染料を昇華させ、染色対象の繊維の拡大された孔内に昇華した染料を染み込ませ、染色対象上に転写像を染色する、染料貯蔵ユニットの下流側に配置された転写ユニットとを有する非加圧式直接転写染色装置が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の非加圧式直接転写染色方法の発明によれば、加熱転写あるいは昇華転写技術を使用して、ポリエステルのような繊維織物の染色対象へ、パターン、装飾的意匠あるいは絵柄を染色する場合、転写紙のような中間転写媒体を押し付ける工程は、必要ない。したがって、その方法を使用する装置は、簡単で、小型の構造に製造でき、作業工程は単純化できる。結果として、設備コストおよび初期投資コストは、低減される。さらに、染色対象に対して、連続的に、オンライン染色作業で実施でき、それによって染色作業の生産性を顕著に改善できる。
【0021】
さらに、本発明は、高価な転写紙のような、中間転写媒体を必要としないので、染色コストが削減できる。さらに、染料は、中間転写媒体に残留することなく、完全に染色対象に転写されるので、不必要な染料の損失が防止できる。結果として、高品質の染色効果が、少量の染料でも得られ、その結果、染色コストが節約される。
【0022】
さらに、染色対象の生地の孔は、染料で完全に満たされるので、より明瞭で、高解像度の像が染められた染色対象上に維持され、高品質の染色製品が得られる。さらに、染色対象への染色操作は、染料貯蔵ユニットの前面に取り外し可能に配置されている小さな転写ユニットによってなされため、染色装置は最小化でき、設備および投資コストは節約できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の非加圧式直接転写染色方法は、熱転写あるいは昇華転写技術を使用して、染色対象10上に、パターン、装飾的意匠あるいは絵柄を染色するための方法である。
【0024】
本発明の非接触型直接昇華印刷方法は、印刷対象10内に昇華染料を直接、保持(擔持)し、中間転写媒体を使用せずに染料を昇華させるために、印刷対象を加熱することによって、印刷対象10上に像を印刷するように設計されている。
【0025】
それゆえ、転写紙のような中間転写媒体が使われないので、染色コストが節減される。さらに、中間転写媒体を染色対象10に押し付けるための特別な工程を必要としないので、染色対象10への連続的オンライン染色が可能になり、その結果、染色作業の生産性の改善が顕著である。
【0026】
本発明の非加圧式直接転写染色方法は、染色対象10に薬品処理層12を形成する工程を含む。
【0027】
薬品処理層12を形成する工程は、ポリエステル繊維のような染色対象に対して、処理剤を染み込ませることによって達成される。すなわち、薬品処理層12を形成する工程は、混合物を被覆することによって達成され、該混合物は、染料が流れてにじむことを防止するバインダーのような増粘剤、色止め特性を改善する酸のような発色改善剤、色止め特性を維持するための酸化防止剤、比較的、低温度で転写(transfer)を可能にし、色止め特性を改善するキャリヤ(carrier)、および浸漬工程あるいはナイフ被覆工程中、所定の割合で水のような溶剤を混合することによって形成される。
【0028】
バインダーには、アルギン酸、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルローズ等があり、ナチュラルウオータあるいは人工ウオータに溶解するポリマーの内の一つである。発色改善剤には、酢酸、ギ酸エステル等がある。酸化防止剤には、過酸化水素、ニトロベンゼンスルホンサン塩等がある。他にもそれぞれ機能別に様々な薬品(functional agent)が使用可能である。
【0029】
キャリヤには、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、パラフェニルフェノール等がある。これらの物質は、非イオン表面活性剤や、乳化剤として使用される水のような溶剤と混合される。
薬品処理層12を形成するための工程は公知であり、詳細な説明は、ここでは省略する。
上述のように、一様な厚さを有する薬品処理層12が、染色対象10上に形成される。
【0030】
次に、転写像を保持するために、染料14が、薬品処理層12上にスプレイされる。この工程で、インクジェットプリンタが、染料14をスプレイするために使用される。
すなわち、薬品処理層12上に液体染料14を蓄積することによって、転写像が薬品処理層12内に形成される。液体染料14は、通常温度で固化して固体状態となる。
【0031】
この工程で、液体染料14は、薬品処理層12にスプレイされ、内部に染み込む。結果として、上記染料14は、染色対象10内に染み込み、固体状態の形式で存在する。この場合、染料14は、流れたり、混合されたりすることなく、薬品処理層12内に確実に保持される。
【0032】
その後、薬品処理層12は、染料14を昇華させて染色工程を実行するために加熱される。すなわち、薬品処理層12を加熱することによって、薬品処理層12内にある染料は昇華され、染色対象10の拡大された孔内に染み込み、それによって、染色対象上に転写像を染色する。
【0033】
この工程において、薬品処理層12に染料14を保持した染色対象10は、セラミック放射ヒータあるいは電気抵抗ヒータのような加熱ユニットによって、160〜250℃に加熱される。結果として、染色対象10の生地の孔は拡大され、薬品処理層12内に支えられている染料14は昇華する。昇華した染料14は、染色対象10の生地の孔内に染み込み、その結果、染色対象10の生地上に転写像を染色する。
【0034】
したがって、染色対象上に像を明瞭に染色する工程は、容易に実現される。すなわち、染料14は、あらかじめ染色対象10の薬品処理層12内に支えられている状態で、染色対象10の拡大された孔に染み込むので、染料10は、染色対象10の生地中に、容易に、深く染み込むことができる。
【0035】
さらに、本発明の非加圧式直接転写染色方法は、高価な転写紙のような中間転写媒体を必要としないので、染色コストを節約でき、作業工程のステップを減少させることができる。さらに、染料14が、中間転写媒体上に残る可能性がないので、不必要な染料の損失を防止できる。すなわち、優れた染色効果が少量の染料14であっても実現できる。
【0036】
染色対象10上に蓄えられる薬品処理層12内の染料14は、昇華により染色対象10内に染み込むので、孔内への染み込みは従来技術と比較して、容易であり、一様に実現できる。結果として、高解像度の染色像を維持でき、それによって高品質の製品を提供できる。
【0037】
図7は、本発明の非加圧式直接転写染色方法によって染められた繊維の生地の写真である。
図7は、本発明が適用されるポリエステル織物の染色対象10を示す写真であり、ポリエステル織物の生地は複数のヤーンP1から構成されている。
【0038】
図8は、薬品が処理された織物の断面を示す写真であり、ヤーンP1上の付着されている薬品は、写真内において白色で示されている。
【0039】
次に、染料14がスプレイされると、染料14はヤーンP1を囲む薬品処理層12内に保持される。
ここで、染料14が流れるのを防止し、高解像度を維持し、そして、色止め特性を改善するために、薬品処理層12は、増粘剤、発色改善剤、および酸化防止剤を含んでもよい。
【0040】
図9は、染料が入り込んで染色されている織物を示す写真である。薬品処理層12に付着し、ヤーンP1を囲む染料14は、ヤーンP1中に染み込むので、ポリエステル織物のヤーンP1は、染色されて写真では濃く示されている。
【0041】
本発明の非加圧式直接転写染色方法によれば、染色対象10に中間転写媒体を押圧する工程を必要としない。すなわち、薬品処理層12が形成される染色対象10のそれぞれを連続的に供給する工程と、像が染色される染色対象のそれぞれを連続的に回収する工程を加えることによって、一連の連続する染色工程が実現される。
【0042】
本発明の非加圧式直接転写染色方法は、さらに、最善の染料スプレイおよび像転写を実現するために、染料スプレイ工程と染料昇華工程との間に、染料スプレイ速度と像転写速度とを分離する速度分離工程を含んでよい。
【0043】
すなわち、染色対象10が、染料スプレイユニット20から加熱ユニット30へ移動される前に、染料スプレイ速度と像転写速度間の相違によって、U形垂下部分10aが、染色対象10に形成される。ここで、像転写速度を制御することによって、U形垂下部分10aは、除去されてもよい。結果として、染料は、像転写速度に依存することなく、最適なスプレイ速度でスプレイされる。
【0044】
この過程を繰り返すことによって、染料スプレイユニット20の操作速度は、像転写ユニット80の操作速度と独立となる。すなわち、染料スプレイユニット20および像転写ユニット80は、それぞれの典型的動作を表すためにその最適速度で操作される。
【0045】
一方、本発明の非加圧式直接転写染色装置50は、図5に示されるように、簡単で小型の構造に設計されており、染色対象にパターン、装飾的意匠あるいは絵柄を染色するための染色操作を連続的に行うことができる。
【0046】
本発明の非加圧式直接転写染色装置50は、さらに薬品処理層が形成される染色対象10を供給するための、供給ユニット60を含んでいてもよい。
【0047】
供給ユニット60は、染色対象10が周囲に巻かれている供給リール62および供給リール62から染色対象64を解く一対のピンチロール64を含む。一対のピンチロール64は、インクジェットプリンタ20内に備えられてもよいし、インクジェットプリンタ20とは独立に備えられてもよい。すなわち、一対のピンチロール64の構造は、これらのケースに制限されない。すなわち、供給リール62から染色対象10を解くことができ、そして後述する染料貯蔵ユニット70のインクジェットヘッド70aに、解かれた染色対象を供給する何らかの構造であればよい。
【0048】
さらに、本発明の非加圧式直接転写染色装置50は、供給ユニット60の下流側に備えられる染料貯蔵ユニット70を含む。染料貯蔵ユニット70は、薬品処理層12内に染料14が保持されるように、薬品処理層12上に染料14をスプレイするように設計されている。
【0049】
染料貯蔵ユニット70は、転写紙に染料14を保持するために、転写紙上に染料14を貯蔵する従来のインクジェットプリンタから形成されてもよい。すなわち、インクジェットプリンタは、染色対象の薬品処理層12上に、所望のデザイン、パターン、あるいはペイントで、染料14を注入するインクジェットヘッド70aを備える。
【0050】
本発明の非加圧式直接転写染色装置50は、さらに、染料貯蔵ユニット70の下流側に備えられる転写ユニット80を含んでもよい。転写ユニット80は、染料14を昇華させるために染色対象10を加熱し、それによって、染色対象の織物の拡大された孔に薬品処理層12内に保持された染料14が染み込むようにする。転写ユニット80は、トンネル型加熱ハウジング84、あるいはセラミック放射ヒータや電気抵抗ヒータのような加熱ユニット82であって、加熱ハウジング84内に収容されるものを含んでよい。
【0051】
すなわち、加熱ハウジング84は、染色対象10が移動する経路Pを規定する。セラミック放射ヒータあるいは電気抵抗ヒータの加熱ユニット82は、160−250℃で染色対象の薬品処理層12を加熱するために、経路P上に備えられる。
【0052】
さらに、ベルトコンベアのような搬送ユニット90が、加熱ハウジング84内に、加熱ユニット82から所定距離だけ離れて配置されている。染色対象が配置され、搬送ユニット90によって搬送される。搬送ユニット90は、ピンチローラ(未図示)から形成されてもよい。ベルト搬送ユニット90は、第1および第2プーリ92a、92bに巻かれたエンドレスベルト94を含む。第1プーリ92aは、駆動モータ96に連結されている。駆動モータ96が駆動されると、プーリ92a、92bに巻かれたベルト94は、ベルト94に配置された染色対象10を搬送するために、エンドレストラックの形式で回転する。
【0053】
染色対象検知ユニット97が、転写ユニット80と染料貯蔵ユニット70の間に配置される。染色対象検知ユニット97は、U形垂下部分10aを検出する上部および下部のリミットセンサ98a、98bを含む。
【0054】
すなわち、下部及び上部のリミットセンサ98a、98bは、互いに垂直方向に、所定間隙離れて配置されている。U形垂下部分10aは、下部及び上部のリミットセンサ98a、98bによって検出される。リミットセンサ98a、98bは、検出した信号を、ベルトコンベアの駆動モータ96および後述される(図示されない)コレクションリールモータを駆動させる制御器Cに送る。
【0055】
図5に示すように、染料貯蔵ユニット70からの染色対象10の供給速度が、転写ユニット80からの出力速度より早くなる時、染色対象のU形垂下部分10aが、染料貯蔵ユニット70と転写ユニット80との間に形成される。上記垂下部分10aが形成される時、リミットセンサ98a、98bは、これを検出する。すなわち、下部リミットセンサ98aが垂下部分10を検出する時、搬送ユニット90の駆動モータ96とコレクションリールの回転モータ99aの駆動速度が、染料貯蔵ユニット70からの染色対象供給速度より早く制御され、その結果、染色対象10は転写ユニット80を通って移動できる。
【0056】
この場合、転写ユニット80を通る染色対象10の移動速度は、上記貯蔵ユニット70を通る移動速度よりも早い。そのため、U形垂下部分10aの垂下部は、徐々に減少する。そのため、上記垂下部分10aは、下部リミットセンサ98bによっては検出されず、上部リミットセンサ98aによって検出される。
【0057】
垂下部分10aが、さらに減少し、上部リミットセンサ98bによっても検出されなくなると、センサ98bは、搬送ユニットの駆動モータ96と、コレクションリール99の回転モータ99aの駆動速度を減少させるための信号を制御器Cに送出する。この場合、搬送ユニットの駆動モータ96と、コレクションリール99の回転モータ99aによって決定される染色対象の移動速度は、染料貯蔵ユニット70から供給される上記染色対象の移動速度よりも遅く設定される。
【0058】
これにより、U形垂下部分10aが、染料貯蔵ユニット70と搬送ユニット80との間に、形成される。上述の工程によって、染料貯蔵ユニット70の操作速度は、搬送ユニット80のそれに対して独立である。すなわち、染料貯蔵ユニット70と搬送ユニット80は、それらの代表する最適速度で操作される。
【0059】
本発明において、加熱ユニット80の加熱ハウジング84は、約20秒から180秒で染色対象を通過させるように設定されている。それゆえ、染色対象が加熱ハウジング84を通過する間に、染料14は完全に昇華して染色対象内に十分に侵透する。
【0060】
さらに、搬送ユニット80が染料貯蔵ユニット70の前面に着脱自在に備えられる時、装置は、よりコンパクトに作ることができる。
【0061】
染色された染色対象10は、搬送ユニット80の下流側に配置されるコレクションリール99によって、ロールの形式でまとめられる。この時点で、供給リール62及びコレクションリール99の回転速度は、染色対象の染色及び搬送の速度を考慮して、適宜、調整される。
【0062】
上述のように、本発明の非加圧式直接転写染色装置は、中間転写媒体を押圧する工程に必要な押圧プレート、サーモスタット、及び他の関連部品を省くことによって、小型で、簡単な構造に製造できる。それによって、設備コスト、初期投資コストを減少させ、さらに、そのような染色装置を使う染色方法を提供する。
【0063】
特に、染色対象が、たとえば、インクジェットプリンタのような染料貯蔵ユニット70の前面に着脱自在に備えられるトンネル型搬送ユニット80を通過するとき、染料の昇華が行なわれるので、装置の全体の大きさは、減少できる。
【0064】
図6に描かれている本発明の他の実施形態によれば、上記染料貯蔵ユニットと搬送ユニットとは、装置内で独立に備えることができる。
すなわち、この実施形態の装置は、第1の供給ユニット60'と、薬品処理層12に転写像を保持するために第1の供給ユニット60'の下流側に配置された染料貯蔵ユニット70'と、そして染料を保持した染色対象10を回収する第1の回収ユニット61'を有した前処理ユニット55aを含んでいる。
【0065】
第1の供給ユニット60'は、機能的面と構成的面において図5に描かれた供給ユニット60と同一である。染料貯蔵ユニット70'は、機能的面と構成的面において図5に描かれた染料貯蔵ユニット70と同一である。第1の回収ユニット61'は、図5に描かれている回収リール99及び回転モータ99aと機能的に同一である。
【0066】
さらに、この実施形態の装置は、第2の供給ユニット62'、転写ユニット80'、後処理ユニット55bを含んでもよい。第2の供給ユニット62'は、前処理ユニット55aから、染料を保持した染色対象10を供給する。転写ユニット80'は、染色対象10を加熱して薬品処理層に所持された染料を昇華するために第2の供給ユニット62'の下流側に配置され、染色対象10の生地の拡大された孔内に昇華した染料を染み込ませる。そして、後処理ユニット55bは、染色された染色対象を回収する第2の回収ユニット63'を有している。
【0067】
後処理ユニット55bにおいて、染料を保持した染色対象を供給リールの形式により供給する第2の供給ユニット62'は、図5に記載されている転写ユニット80の上流側に配置された染色対象検出ユニット97の代わりに備えられている。このように、染色対象10の垂下部分を検出する上部及び下部のリミットセンサ98a、98bは、この実施形態では必須のものではない。
【0068】
図6に描かれているように、この実施形態の特徴は、染料貯蔵ユニット70'と転写ユニット80'が、独立したユニットとして備えられていることである。しかしながら、染料貯蔵ユニット70'と転写ユニット80'の構造及び機能は、前記実施形態に描かれているその構造及び機能と同一であるため、詳細な説明はそちらを参照することとしここでは省略する。
【0069】
上記改良された構造により、前処理ユニット55aで生成された染料を保持する染色対象は、後処理ユニット55bによってオンライン工程として生産され得る。
【0070】
開示された本発明の好ましい実施形態は、例示を目的とするものであるが、当業者であれば、種々の改良、付加、代替は、発明の範囲と精神から逸脱することなく付随する請求項により規定されるものとして成し得ることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、中間転写媒体を押圧する工程に欠かせなかった押圧板、サーモスタット、及び他の関連する部品を無くすことにより簡単な構造で、小型の非加圧式直接転写染色装置を製造することができ、その結果、設備投資と初期投資を低減することができる。また、そのような染色装置に使用される染色方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】従来の加熱/押圧ローラ型の間接転写方法および装置を説明する側断面図である。
【図2】従来の加熱/押圧プレート型の間接転写方法および装置を説明する側断面図である。
【図3】従来の加熱/押圧プレート型の間接転写方法および装置の基本的原理を説明する側断面図である。
【図4】本発明の実施形態に従うステップによって、非加圧式直接転写染色方法を説明する図である。
【図5】本発明の実施形態に従う非加圧式直接転写染色装置の側断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に従う非加圧式直接転写染色装置の側断面図である。
【図7】本発明に従う非加圧式直接転写染色方法によって染められている繊維生地の写真である。
【図8】本発明に従う非加圧式直接転写染色方法によって染められている繊維生地を図示した写真であって、薬品処理層が繊維に形成された断面図である。
【図9】本発明に従う非加圧式直接転写染色方法によって染められている繊維生地を図示した写真であって、染料が生地に完全に転写され染色が行なわれた状態の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色対象内に薬品処理層を形成するステップと、
上記薬品処理層内に転写像が染み込むことを可能にするために、薬品処理層上に液体昇華染料をスプレイし、上記薬品処理層内に染み込んだ上記液体昇華染料を固化することにより、薬品処理層内に固体昇華染料を保持するステップと、
染色対象を加熱することによって、薬品処理層内に保持された染料を昇華させ、染色対象の繊維の拡大された孔内に昇華した染料を染み込ませて、染色対象上に転写像を染色するステップとを含むことを特徴とする非加圧式直接転写染色方法。
【請求項2】
上記固体昇華染料を保持するステップと上記転写像を染色するステップとの間に、染料スプレイ速度と像転写速度とを分けるステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の非加圧式直接転写染色方法。
【請求項3】
上記染料スプレイ速度と像転写速度とを分けるステップにおいて、
染料スプレイ速度と像転写速度間の相違により、染色対象が染料スプレイユニットに運ばれる前に垂下部分が染色対象上に形成され、
また、像転写速度の制御により、垂下部分が除去され、
その結果、染料スプレイ速度を像転写速度から独立させることによって最適な染料スプレイ速度が提供されることを特徴とする請求項2に記載の非加圧式直接転写染色方法。
【請求項4】
上記薬品処理層は、加熱ユニットによって加熱されることを特徴とする請求項1に記載の非加圧式直接転写染色方法。
【請求項5】
加熱ユニットは、セラミック放射ヒータ、電気抵抗ヒータ、ランプヒータから成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の非加圧式直接転写染色方法。
【請求項6】
薬品処理層を備えた染色対象が周囲に巻かれている供給リールと、上記供給リールから上記染色対象を開放する一対のピンチロールとを有する染色対象供給ユニットと、
薬品処理層内に染料が保持されるようにする、供給ユニットの下流側に配置された染料貯蔵ユニットと、
染色対象を加熱することによって、薬品処理層内にて染料を昇華させ、染色対象の繊維の拡大された孔内に昇華した染料を染み込ませ、染色対象上に転写像を染色する、染料貯蔵ユニットの下流側に配置された転写ユニットから構成されることを特徴とする非加圧式直接転写染色装置。
【請求項7】
上記転写ユニットは、トンネル型加熱ハウジングと加熱ハウジング内に収容される加熱ユニットを含んでいることを特徴とする請求項6に記載の非加圧式直接転写染色装置。
【請求項8】
上記加熱ユニットは、セラミック放射ヒータ、電気抵抗ヒータ、ランプヒータから成る群から選択されることを特徴とする請求項7に記載の非加圧式直接転写染色装置。
【請求項9】
上記加熱ユニットから所定距離を置いて配置され、所定の速度で染色対象を移動させる搬送ユニットがさらに含まれていることを特徴とする請求項7に記載の非加圧式直接転写染色装置。
【請求項10】
上記搬送ユニットは、ベルトコンベア又はピンチローラのいずれかであることを特徴とする請求項9に記載の非加圧式直接転写染色装置。
【請求項11】
染料貯蔵ユニットと転写ユニットの間に配置される染色対象検知ユニットがさらに含まれていることを特徴とする請求項6に記載の非加圧式直接転写染色装置。
【請求項12】
上記染色対象検知ユニットは、染色対象の垂下部分を検出するために垂直方向に配置された上部及び下部のセンサから構成されていることを特徴とする請求項11に記載の非加圧式直接転写染色装置。
【請求項13】
上記転写ユニットは、装置をよりコンパクトにするために、染料貯蔵ユニットの前側に接近して配置されていることを特徴とする請求項6に記載の非加圧式直接転写染色装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−534859(P2007−534859A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510621(P2007−510621)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【国際出願番号】PCT/KR2005/001226
【国際公開番号】WO2005/106109
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(506364123)コステック インコーポレイテッド (1)
【出願人】(307015471)ティ.ピー.エム カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】