説明

非対称性キャンセル・コンポーネント、ストレージ・ドライブ

【課題】ストレージ読取チャネルでの非対称性補償の動的方法を提供すること。
【解決手段】非対称性キャンセル・コンポーネントが、読取ヘッドによって記憶媒体から読み取られたデータを表すアナログ信号を受け取るアナログ・デジタル・コンバータと通信する。非対称性キャンセル・コンポーネントは、記憶媒体から読み取られたデータを表すアナログ・デジタル・コンバータからのデジタル信号を受け取り、デジタル信号の非対称性を示す誤差信号を計算する。計算された誤差信号が、係数の判定に使用される。デジタル信号が、係数を使用して調整されて、訂正されたデジタル信号が作られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレージ読取チャネルでの非対称性補償の動的方法のシステムおよびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
データ・ストレージ・デバイスでの読取プロセス中に、読取ヘッドが、事前に記録されたデータをアナログ信号に変換するために、データ・レコードの上を通る。例えば、磁気テープ・ドライブでは、磁気抵抗読取ヘッド(「MRRH」)が、磁気テープ上の磁束反転として書き込まれたデータ・レコードの上を通る。MRRHがテープの上を通る時に、MRRHは、磁束反転を、磁気テープに最初に記録されたデータを表す電気アナログ信号に変換する。アナログ・デジタル変換器(「ADC」)が、このアナログ信号を周期的にサンプリングし、サンプリングされたアナログ信号をデジタル入力信号に変換する。ADCは、通常、複数のアナログ入力信号をサンプリングし、変換して、デジタル波形を形成する。磁気媒体ストレージ・デバイスなどのデータ・ストレージ・デバイスは、このデジタル波形形を処理して、テープに最初に書き込まれたデータを再構成する。
【0003】
データ波形は、通常、磁気媒体上の磁束反転として記録され、対称であり、MRRHが完全に調整されているならば、受け取られるアナログ信号が、既知の基準レベルに関して対称になるはずである。例えば、アナログ信号は、0ボルト(0V)の基準レベルに関して対称とすることができる。残念ながら、製造の不整合および読取ヘッドの摩耗が、読取ヘッドに、磁気媒体から非対称アナログ信号を生成させる場合がある。この非対称アナログ信号は、複数のデジタル入力信号に変換され、非対称デジタル波形が形成される。デジタル波形の非対称性は、データ・ストレージ・デバイスが非対称デジタル入力信号を誤って解釈する確率を高め、データ・エラーの個数の増加をもたらす。
【0004】
読取ヘッドが非対称アナログ信号を生成することに起因するデータ・エラーは、その読取ヘッドを磁気媒体ストレージ・デバイス内で出荷するのに適さないものにし、故障率を高め、読取ヘッドの製造コストを高める可能性がある。さらに、読取ヘッドが経時的に摩耗した時に、これらの摩耗した読取ヘッドによって生成されるアナログ信号は、より非対称になる。これによって、読取ヘッドおよびデータ・ストレージ・デバイスの寿命が短くなり、訂正不能読取エラーの確率が高まり、保証コストが増える。
【0005】
同時係属であり本願と同一の譲受人に譲渡された2004年10月15日出願の"Apparatus,System, and Method for Mitigating Signal Asymmetry", by Evangelos S.Eleftheriou, Ernest S. Gale, Robert A. Hutchins, Glen A. Jaquette, and SedatOelcer, having U.S. Application Serial No. 10/966,531に、アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)からのサンプルをより少ない非対称性誤差を有する変更された信号に変換するのにルックアップ・モジュールを使用して非対称性を軽減する技法が記載されている。
【特許文献1】U.S. Application Serial No.10/966,531
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当技術分野に、非対称性関連エラーを減らすさらなる技法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ストレージ読取チャネルでの非対称性補償の方法を提供する。非対称性キャンセル・コンポーネントが、読取ヘッドによる記憶媒体からのデータ読取を表すアナログ信号を受け取るアナログ・デジタル・コンバータと通信する。非対称性キャンセル・コンポーネントは、記憶媒体から読み取られたデータを表すデジタル信号をアナログ・デジタル・コンバータから受け取り、デジタル信号の非対称性を示す誤差信号を計算する。計算された誤差信号が、係数の判定に使用される。デジタル信号が、係数を使用して調整されて、訂正されたデジタル信号が作られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を、次の説明で、図面を参照して好ましい実施形態において説明するが、図面では、類似する符号が同一のまたは類似する要素を表す。本発明を、本発明の目的を達成するための最良の態様に関して説明するが、当業者は、本発明の趣旨または範囲から外れずに、これらの教示に鑑みて変形形態を達成できることを諒解するであろう。
【0009】
図1に、磁気テープ・ドライブ10の実施形態を示す。磁気テープ・ドライブは、磁気テープ・カートリッジ11の磁気テープ14に関して情報を読み取り、書き込む手段を提供する。磁気テープ・カートリッジに、保存され、後の時に読み取られるデータを保管するための磁気テープ記憶媒体が含まれる。さらに、磁気テープ・カートリッジをテープ・ドライブの間で交換することができ、あるテープ・ドライブで書き込まれたある磁気テープが、別のテープ・ドライブによって読み取られる。磁気テープ・カートリッジ11に、1つまたは2つのリール15および16に巻き付けられた、ある長さの磁気テープ14が含まれる。
【0010】
単一リールの磁気テープ・カートリッジ11が図示されているが、その例が、LinearTape Open(LTO)フォーマットに従う磁気テープ・カートリッジである。磁気テープ・ドライブ10の例が、LTOテクノロジに基づくIBM 3580 Ultrium磁気テープ・ドライブである。単一リール・磁気テープ・ドライブおよび関連するカートリッジのさらなる例が、IBM 3592 TotalStorage Enterprise磁気テープ・ドライブおよび関連する磁気テープ・カートリッジである。二重リール・カートリッジの例が、IBM 3570磁気テープ・カートリッジおよび関連するドライブである。代替実施形態では、使用できる追加のテープ・フォーマットに、DigitalLinear Tape(DLT)、Digital Audio Tape(DAT)などが含まれる。
【0011】
磁気テープ・ドライブ10に、インターフェース21で受け取られたホスト・システム20から受け取られたコマンドに従って磁気テープ・ドライブを動作させるための記録システムの1つまたは複数のコントローラ18が含まれる。コントローラに、通常、ロジックまたは1つもしくは複数のマイクロプロセッサあるいはその両方が、情報およびマイクロプロセッサを動作させるプログラム情報を保管するメモリ19と共に含まれる。プログラム情報は、フロッピ・ディスクまたは光ディスクなどのコントローラ18への入力によって、磁気テープ・カートリッジからの読取によって、または他の適当な手段によって、インターフェース21を介してメモリに供給することができる。磁気テープ・ドライブ10に、独立型ユニットを含めることができ、あるいは、テープ・ライブラリの一部または他のサブシステムを含めることができる。磁気テープ・ドライブ10は、ホスト・システム20に直接に、ライブラリを介して、またはネットワークを介して結合することができ、インターフェース21でSmall Computer Systems Interface(SCSI)、光ファイバ・チャネル相互接続などを使用することができる。磁気テープ・カートリッジ11を、磁気テープ・ドライブ10に挿入し、磁気テープ・ドライブによってロードすることができ、その結果、記録システムの1つまたは複数の読取ヘッド23または書込ヘッドあるいはその両方が、リール15および16を回転させる2つのモータ25によってテープが縦に移動される時に磁気テープ14に関して信号の形の情報を読み取り、または書き込み、あるいはその両方を行うようになる。磁気テープに、通常は、複数の平行のトラックまたはトラックのグループが含まれる。当業者に既知のように、LTOフォーマットなど、ある種のテープ・フォーマットでは、トラックが、別々のラップの前後に蛇行するパターンに配置される。また、記録システムに、読取ヘッドまたは書込ヘッドあるいはその両方の別の組に電子的に切り替え、または磁気テープの横方向に読取ヘッド23または書込ヘッドあるいはその両方をシークし、移動し、所望の1つまたは複数のラップにヘッドを位置決めし、いくつかの実施形態で所望の1つまたは複数のラップにトラック追従し、あるいはその両方を行うために、ラップ制御システム27を含めることができる。ラップ制御システムは、モータ・ドライバ28を介してモータ25の動作も制御することができ、これらの両方が、コントローラ18による指示に応答して行われる。
【0012】
コントローラ18は、当業者に既知のように、バッファ30および記録チャネル32を使用して、磁気テープから読み取られ、書き込まれるデータのデータ・フローおよびフォーマッタも提供する。
【0013】
磁気テープ・ドライブ10に、さらに、読取ヘッドが磁気テープ上の磁気信号を検出できるように、読取ヘッド23に関して磁気テープ14を移動するモータ25とリール15および16が含まれる。記録チャネル32の読取チャネルは、読取ヘッドによって検出された磁気信号をデジタル・サンプリングして、さらなる処理のために磁気信号のデジタル・サンプルを供給する。
【0014】
図2に、読取ヘッド23によって検出された磁気信号のデジタル・サンプルを供給する非対称性キャンセル回路52の実施形態を含む、図1の記録チャネル32の読取チャネル50のコンポーネントの、すべてではなく一部の実施形態を示す。読取チャネルが複数の平行トラックを同時に読み取ることができる実施形態では、記録チャネル32に複数の読取チャネルを含めることができ、そのコンポーネントの一部を共用することができる。
【0015】
図2に関して、アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)54が、テープから読み取られたアナログ信号56を、読取チャネル50のコンポーネントによって処理できるデジタル・サンプルに変換する。ADC 54のデジタル信号出力(Z)が、非対称性キャンセル回路52に入力され、非対称性キャンセル回路52は、このデジタル信号を処理して、下で説明する形で非対称性の影響および読取エラーの可能性を下げる。非対称性キャンセル回路52からの調整されたデジタル信号(
【0016】
【数1】

【0017】
)が、等化器58への入力として供給される。一実施形態で、等化器58に、調整可能なタップを有する有限インパルス応答(FIR)フィルタを含めることができる。等化器58は、デジタル・サンプルを変更して、書込ヘッド、磁気テープ、および読取ヘッドの磁気記録特性に起因する信号の差を補償する。この変更は、一連の特定の関数に基づき、この関数の係数は、等化器58によって適合させることができる。等化器58によって出力された変更されたデジタル・サンプルは、補間器60に供給され、補間器60には、この信号を1ビット間隔または1シンボル間隔だけ離隔した信号サンプルに離隔させるタイミング回路が含まれる。
【0018】
磁気信号の情報内容の判定は、磁気信号の磁気推移のタイミングまたは位置を判定することを必要とする。通常、アナログ信号56は、磁気テープ上にデータを書き込むのに使用されるクロックに関して非同期にとられる。補間器60は、非同期サンプルを、書込クロックまたは磁気記録推移のクロックと同期していると考えることのできるサンプルのセットに補間する。可変利得増幅器回路(VGA)62は、カスタム設計のロジック回路を含めることができるが、補間器60からの信号に対する利得を調整して、同期サンプルを最適レベルにスケーリングする。
【0019】
ビタビ検出器などの検出器64が、VGA 62から利得調整された同期デジタル・サンプルを受け取って、デジタル・サンプルによって表されるデータ情報すなわち0または1を判定する。判定されたデータ情報が、さらなる処理のために信号66として出力され、信号66は、テープに書き込まれたデータを表す2進データである。一実施形態で、データ情報の判定のほかに、検出器64は、同期化され利得調整された等化器出力を所望の値と比較し、最も近い所望の値を判定し、次に、その最も近い所望の値を、検出器出力(y)67として示された検出器64出力(y)として選択することができる。この出力(y)が、検出器からのもう1つの出力である。検出器出力(y)67に、VGA 62の出力での理想的な信号の推定値であるデジタル化された8ビット・ワードを含めることができる。
【0020】
一実施形態で、非対称性キャンセル回路52は、入力されたデジタル信号(Z)に係数αを適用して、この信号の非対称性を減らすように変更された出力デジタル信号(
【0021】
【数2】

【0022】
)を作る。一実施形態で、出力デジタル信号(
【0023】
【数3】

【0024】
)は、下の式(1)に従って計算される。
【0025】
【数4】

【0026】
この式(1)は、入力されたデジタル信号(Z)から、係数(α)に入力されたデジタル信号(Z)の二乗をかけたものを引く。非対称性キャンセル回路52に、入力されたデジタル信号(Z)を二乗する回路68と、係数(α)72に二乗された入力デジタル信号(Zをかける乗算回路70を含めることができる。
【0027】
係数(α)は、入力されたデジタル信号に、獲得フェーズ中に読み取られるデータ・セット・セパレータ(data set separator、DSS)などの初期化情報が含まれるかどうかに応じて変化する可能性がある。一実施形態で、DSSが、読取チャネル50を初期化するのに使用される。テープに保管された情報の最初の読取の際に、ヘッド非対称性は未知である。係数(α)は、入力されたデジタル信号に、トラッキング・フェーズ中に読み取られたユーザ・データが含まれる時にも変化する可能性がある。
【0028】
非対称性キャンセル回路52に、獲得情報、例えばDSSが読み取られている時に係数(α)を計算する獲得係数エスティメータ80と、ヘッドの非対称性の推定値が判定される初期化の後のトラッキング・フェーズ中にデータが読み取られている時に係数(α)を計算するトラッキング係数エスティメータ90とが含まれる。
【0029】
獲得係数エスティメータ80に、誤差計算回路82が含まれ、誤差計算回路82は、等化器出力(U)84と、等化器出力(U)84が正のピーク(δ=1)または負のピーク(δ=−1)のどちらであるかを判定するのに使用されるトラッキング閾値信号86とに基づいて誤差信号を計算する。誤差計算回路82は、獲得利得(gACQ)88が適用される誤差信号を計算する。誤差信号は、正のトラッキング閾値信号86によって資格を与えられる最後の正のピークおよび負のトラッキング閾値信号86によって資格を与えられる最後の負のピークを加算することによって判定される。獲得利得(gACQ)88を調整された誤差信号が、時刻kに遅延レジスタ89の現在の値に加算されて、係数(α)72の新しい値が作られる。係数(α)72は、動作のモードに応じて、遅延レジスタ89の出力から、および遅延レジスタ98の出力からも判定される。下の式(2)は、誤差計算回路82が、獲得利得(gACQ)88が適用される誤差信号(e)を推定する一実施形態を提供し、ここで、
【0030】
【数5】

【0031】
は、等化器出力uが正のトラッキング閾値より大きいピークである(δ=1)最後の正の等化器ピークであり、
【0032】
【数6】

【0033】
は、等化器出力uが負のトラッキング閾値より小さいピークである(δ=−1)最後の負の等化器ピークである。
【0034】
【数7】

【0035】
したがって、式(2)を用いると、誤差信号は、最後の正のピーク
【0036】
【数8】

【0037】
および最後の負のピーク
【0038】
【数9】

【0039】
について等化器出力を合計することによって計算される。そうではなく、サンプリングされた等化器出力が負のピークでない場合に、誤差信号は0である。
【0040】
トラッキング係数エスティメータ90に、検出器64への入力(y)94と検出器出力(y)67(読取信号の推定された所望の値を含む)とに基づいて誤差信号を計算する誤差計算回路92が含まれる。誤差計算回路92は、トラッキング利得(gTRK)96が適用される誤差信号を計算する。トラッキング利得(gTRK)96を調整された誤差信号が、時刻kに遅延レジスタ98の現在の値と加算されて、係数(α)72の新しい値が作られる。
【0041】
図2では、Partial Response 4(PR4)またはExtendedPartial Response 4(EPR4)の最尤検出器を、検出器64として使用することができる。理想的なEPR4波形は、5つの理想的なサンプル値、−2、−1、0、1、2を有する。理想的なPR4波形は、3つの理想的なサンプル値−2、0、2を有する。したがって、+2は、各チャネルでの最大の可能な正のピークを示し、−2は、最大の可能な負のピークを示す。さらに、信号の2対を使用して、誤差計算回路92によって生成される誤差を生成することができ、y=−2の時には入力(y)94および検出器出力(y)67であり、yk−d=2の時には入力(y)94およびyである。入力(y)94は、検出器入力での信号であり、検出器出力(y)67は、その信号がそうであると思われる検出器64による推定値、例えばEPR4の場合に{−2,−1,0,+1,+2}である。検出器64を介する遅延があるので、入力(y)94は、検出器出力(y)67と一致するように遅延されなければならない。y=+2の場合に、正のピークが発生しており、yがレジスタに保管される。y=−2の場合に、負のピークが発生しており、誤差信号(e)が、正ピーク・レジスタに保管された検出器出力(y)67の最後の値と、負のピークに関連する検出器出力(y)67の現在の値とを加算することによって計算される。例えば、受け取られた信号が0 0 0 1.1 2.2 1.1 0 0 0 −0.9 −1.8 −0.9 0 0 0であり、期待される理想的な波形が0 0 0 1 2 1 0 0 0 −1 −2 −1 0 0 0であると仮定する。最初の正のピークは、理想的な波形が+2と等しい時に発生し、2.2の受け取られた値が、遅延レジスタに保管される。誤差信号(e)は、次の負のピークが発生した時すなわち、理想的な波形が−2と等しく、受け取られた値が−1.8である時に生成される。したがって、誤差は、2.2−1.8=0.4である。さらに、EPR4またはPR4以外の最尤検出器について多数のターゲット・チャネルがある。
【0042】
式(3)は、誤差計算回路92が、トラッキング利得(gTRK)96が適用される誤差信号を計算する上の実施形態の全般的な数学的記述である。
【0043】
【数10】

【0044】
他の実施形態で、+2、−2表記は、単にEPR4チャネルまたはPR4チャネルの表記上の便宜の問題である。EPR4チャネルは、係数{−128,−64,0,+64,+128}または同一の相対的関係を有する係数の任意の集合によって記述することができ、ピーク係数は、+2、−2に制限されない。同様に、PR4チャネルは、係数{−128,0,128}または同一の相対的関係を有する係数の任意の集合によって記述することができ、ピーク係数は、+2、−2に制限されない。
【0045】
式(3)を用いると、誤差信号(e)は、遅延(d)だけ分離された検出器64の信号出力(yおよびyk−d)が正および負のピークである時の、ある遅延だけ分離された検出器64の入力信号(yおよびyk−d)を合計することによって計算される。
【0046】
下の式(4)は、誤差計算回路92が、トラッキング利得(gTRK)96が適用される誤差信号を計算する代替実施形態を提供する。
【0047】
【数11】

【0048】
式(4)を用いると、誤差信号(e)は、入力信号(y)が理想的な正のピーク(+2)より大きい場合に正のピーク値(+2)から検出器64の入力(y)94を引くこと、入力信号(y)が理想的な負のピーク(−2)より小さい場合に負のピーク値(−2)から検出器64の入力(y)94を引くこと、または0と1の間の値「A」に入力信号(y)の符号{+1,−1}をかけることによって計算される。値「A」には、入力信号(y)がピークの間である場合にも小さい誤差訂正項(e)があるように、小さい値、例えば0.1をセットすることができる。
【0049】
説明されたアルゴリズムでは、誤差信号が基づく信号がピーク値でない場合に、係数(α)の計算に使用される誤差信号に、0または小さい値をセットすることができる。誤差信号がそれに基づいて計算される信号がピークである場合に、誤差信号は、ピークで計算されたものでない信号の場合より大きくなる。さらに、適用される獲得利得(gACQ)88およびトラッキング利得(gTRK)96は、(α)計算の反応時間にも影響し、したがって調整の時間にも影響する。ある実施形態で、(α)の安定した値を得るためのループの望ましい時間が短く、したがって、高速獲得により大きい利得を必要とするので、獲得利得(gACQ)88が、トラッキング利得(gTRK)96より大きい値を有する場合がある。さらに、データ読み取られている間のトラッキング中に、トラッキング利得(gTRK)96を、非対称性誤差が減る際に動的に調整することができる。
【0050】
ある点で、非対称性誤差が十分に小さい値まで減った時に、係数(α)72に、獲得係数エスティメータ80およびトラッキング係数エスティメータ90の論理による適応なしの固定値をセットすることができる。
【0051】
図3に、非対称性キャンセル回路52の論理および回路によって実行される動作を示す。記憶媒体、例えばテープ媒体から読み取られたデータを表すADC 54からのデジタル信号(Z)を受け取る時(ブロック200)。(ブロック202で)デジタル信号(Z)が、獲得モード中に読み取られる、DSSデータなどの初期化データを表す場合に、第1式を使用する(ブロック204で)。
【0052】
一実施形態で、この第1式に、上で述べた式(2)を含めることができる。この実施形態では、時刻値kでの等化器58からの等化されたデジタル信号(U)が、正のピークであり、正のトラッキング閾値より大きい(δ=1)、または負のトラッキング閾値より小さい負のピークである(δ=−1)であるかどうかに関する判定を行う(ブロック206で)。等化器58出力(U)がピークでない場合に、誤差信号は0であり、獲得係数エスティメータ80は更新されない(ブロック208で)。制御は、その後、ブロック208からブロック222に進み、
【0053】
【数12】

【0054】
である。(ブロック206で)、等化器出力(U)84が負のピークである場合に、誤差信号を、最後の正のピークの等化されたデジタル信号と遅延時間(D(k))だけ分離された現在の負のピークの等化されたデジタル信号との合計、例えば
【0055】
【数13】

【0056】
として計算する(ブロック210で)。第1利得(獲得利得(gACQ)88)を誤差信号(e)に適用して(ブロック212で)、係数(α)72を調整する。一実施形態で、時刻kの係数(α)72に、第1利得(獲得利得(gACQ)88)と時刻kの誤差信号の積と時刻kの遅延レジスタ89の値の合計が含まれる。時刻k+1の遅延レジスタ89は、時刻kの係数(α)72の値を得る。ブロック212または208から、制御はブロック222に進んで、等化器への出力を作る。
【0057】
(ブロック202で)ADC 54の出力(Z)が、トラッキング・データ、例えばテープに書き込まれたフォーマットされた顧客データを表す場合に、第2式を使用して、時刻kの誤差信号(e)を計算する。トラッキング誤差信号の計算に第1方法1または第2方法2のどちらを使用するかに関する判定を行う(ブロック213で)。複数の方法のどちらを使用するかの表示は、管理者が構成することができ、読取チャネル50によって使用される構成設定でセットされる。方法1について、第2式を使用して(ブロック214で)時刻kの誤差信号(e)を計算する。一実施形態で、誤差信号を、上で述べた式(3)を使用して計算することができる。この実施形態では、第1時刻(k−d)および第2時刻(k)に検出器64によって出力されたデジタル信号、例えば出力信号(yおよびyk−d)が、ピークであるかどうかに関する判定を行う(ブロック216で)が、ここで、dは信号の間の遅延時間である。信号がピークでない場合には、(ブロック208で)誤差信号は0であり、トラッキング係数エスティメータ90は更新されない。ブロック208から、制御はブロック222に進んで、等化に従って変更された出力信号
【0058】
【数14】

【0059】
を作る。そうではなく、信号がピークである場合に、第1時刻および第2時刻に検出器64に入力されたデジタル信号(yおよびyk−d)を合計して(ブロック218で)、誤差信号を作る。第2利得(トラッキング利得(gTRK)96)を誤差信号(e)に適用して(ブロック220で)、遅延レジスタ98を調整する。一実施形態で、時刻kの係数(α)72に、第2利得(トラッキング利得(gTRK)96)と時刻kの誤差信号の積と時刻kの遅延レジスタ98の値との合計が含まれる。時刻k+1の遅延レジスタ98は、時刻kの係数(α)72の値を得る。
【0060】
係数(α)72を決定した(ブロック220で)ならば、ブロック222で、係数(α)72と入力デジタル信号の二乗との積すなわち(
【0061】
【数15】

【0062】
)を、入力デジタル信号(Z)から引いて、非対称信号の影響を減らすために調整された出力信号(
【0063】
【数16】

【0064】
)を作る。
【0065】
(ブロック213で)第2方法2が選択された場合に、制御は図4のブロック250に進んで、上で述べた式(4)を使用して、第2式について誤差信号を計算する。第2方法を用いると、第2式は、検出器64に入力された非対称性キャンセル回路からのデジタル信号すなわち入力(y)94が、理想的なターゲット最大正ピークy、例えば+2より大きかどうかを判定する(ブロック252で)ことによって計算される(ブロック250で)。そうである場合には、誤差信号に、理想的なターゲット・ピークy値から検出器への入力で受け取られたデジタル信号を引いた値、例えば+2−yをセットする(ブロック254で)。そうではなく、(ブロック256で)検出器64への入力yが、理想的なターゲット最小負ピーク値y、例えば−2より小さい場合に、誤差信号に、理想的なターゲット負ピーク値yから検出器の入力で受け取られたデジタル信号を引いた値、例えば−2−yをセットする(ブロック258で)。そうではなく、検出器64への入力yが、理想的なターゲット最大ピーク値と理想的なターゲット最小ピーク値の間にある場合には、誤差信号に、変数「A」とyの符号の積をセットする(ブロック260で)。ブロック254、258、または260で誤差信号を計算した後に、制御は、ブロック222に進んで、誤差信号を使用して係数(α)72を計算する。
【0066】
当業者は、本明細書に示されたコンポーネントに関して変更を行えることを理解するであろう。さらに、当業者は、本明細書に示されたものと異なる特定のコンポーネント配置を使用できることを理解するであろう。
【0067】
読取チャネルおよび非対称性キャンセル回路52の説明されたコンポーネントに、ディスクリート・ロジック、ASIC(特定用途向け集積回路)、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)、カスタム・プロセッサなどを含めることができる。回路での非対称性キャンセル動作の実装は、コントローラ18および磁気テープ・ドライブ10の他のプロセッサの処理の重荷を減らす。
【0068】
読取チャネルの説明されたコンポーネントと、図3および4に関して説明した非対称性キャンセル回路52の動作は、プロセッサによって実行されるプログラムのサブルーチンまたは他のソフトウェア実装で実装することもできる。図3および4に示された動作など、非対称性キャンセル回路52の動作を実装するそのようなプログラムは、磁気記憶媒体(例えば、ハード・ディスク・ドライブ、フロッピ・ディスク、テープなど)、光ストレージ(CD−ROM、DVD、光ディスクなど)、揮発性および不揮発性のメモリ・デバイス(例えば、EEPROM、ROM、PROM、RAM、DRAM、SRAM、フラッシュ・メモリ、ファームウェア、プログラマブル・ロジックなど)などのコンピュータ可読媒体で実装することができる。説明された動作を実装するコードは、さらに、ハードウェア・ロジック(例えば、集積回路チップ、プログラマブル・ゲート・アレイ(PGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)など)で実装することができる。
【0069】
図1および2で別々のコンポーネントとして図示されたコンポーネントを、単一回路デバイスで実装することができ、あるいは、1つの図示されたコンポーネントの機能を、別々の回路デバイスで実装することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】テープ・ドライブの実施形態を示す図である。
【図2】読取チャネルおよび非対称性キャンセル回路の実施形態を示す図である。
【図3】非対称性キャンセル・コンポーネントによって実行される動作の実施形態を示す図である。
【図4】非対称性キャンセル・コンポーネントによって実行される動作の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
10 磁気テープ・ドライブ
11 磁気テープ・カートリッジ
14 磁気テープ
15 リール
16 リール
18 コントローラ
19 メモリ
20 ホスト・システム
21 インターフェース
23 読取ヘッド
25 モータ
27 ラップ制御システム
28 モータ・ドライバ
30 バッファ
32 記録チャネル
50 読取チャネル
52 非対称性キャンセル回路
54 アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)
56 アナログ信号
58 等化器
60 補間器
62 可変利得増幅器回路(VGA)
64 検出器
66 信号
68 回路
67 検出器出力(y
70 乗算回路
72 係数(α)
80 獲得係数エスティメータ
82 誤差計算回路
84 等化器出力(U
86 トラッキング閾値信号
88 獲得利得(gACQ
89 遅延レジスタ
90 トラッキング係数エスティメータ
92 誤差計算回路
94 入力(y
96 トラッキング利得(gTRK
98 遅延レジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取ヘッドによって記憶媒体から読み取られたデータを表すアナログ信号を受け取るアナログ・デジタル・コンバータと通信する非対称性キャンセル・コンポーネントであって、前記コンポーネントは、
前記記憶媒体から読み取られたデータを表す前記アナログ・デジタル・コンバータからのデジタル信号を受け取ることと、
前記デジタル信号の非対称性を示す誤差信号を計算することと、
係数を判定するために前記計算された誤差信号を使用することと、
訂正されたデジタル信号を作るために前記係数を使用して前記デジタル信号を調整することと
を実行する、非対称性キャンセル・コンポーネント。
【請求項2】
前記デジタル信号を調整することが、
調整されたデジタル信号を作るために前記受け取られたデジタル信号に前記係数を適用することと、
前記訂正されたデジタル信号を作るために前記受け取られたデジタル信号から前記調整されたデジタル信号を減算することと
を含む、請求項1に記載の非対称性キャンセル・コンポーネント。
【請求項3】
前記係数を判定するために前記計算された誤差信号を使用することが、
前記デジタル信号が、ヘッド非対称性が未知の時の獲得モード中に受け取られる獲得情報または初期化情報を表す場合に、前記係数を判定するために前記誤差信号に第1利得を適用することと、
前記デジタル信号が、トラッキング・モード中に受け取られるデータを表す場合に、前記係数を判定するために前記誤差信号に第2利得を適用することと、
を含む、請求項1に記載の非対称性キャンセル・コンポーネント。
【請求項4】
前記係数を判定するために前記計算された誤差信号を使用することが、
前記係数を判定するために前記誤差信号に利得を適用することと、
前記誤差信号の大きさに基づいて前記利得を調整することを含み、
前記利得が、前記誤差信号が減る時に減り、前記誤差信号が増える時に増える、請求項1に記載の非対称性キャンセル・コンポーネント。
【請求項5】
前記誤差信号を計算することが、
前記デジタル信号が、ヘッド非対称性が未知の時の獲得モード中に受け取られる獲得情報または初期化情報を表す場合に、前記誤差信号を計算するために第1式を使用することと、
前記デジタル信号が、トラッキング・モード中に受け取られるデータを表す場合に、前記誤差信号を計算するために第2式を使用することと、
を含む、請求項1に記載の非対称性キャンセル・コンポーネント。
【請求項6】
前記非対称性キャンセル・コンポーネントからの前記デジタル信号が、検出器によって処理され、前記第2式によれば、
第1時刻および第2時刻に前記検出器によって出力された前記非対称性キャンセル・コンポーネントからのデジタル信号がピークであるかどうかを判定することと、
前記第1時刻および前記第2時刻の前記デジタル信号が前記ピークであるとの判定に応答して、前記誤差信号を作るために前記第1時刻および前記第2時刻に前記検出器に入力された前記デジタル信号を合計することと、
前記第1時刻および前記第2時刻の前記デジタル信号が前記ピークでないとの判定に応答して、前記誤差信号に0をセットすることと
によって前記誤差信号が計算される、請求項5に記載の非対称性キャンセル・コンポーネント。
【請求項7】
前記非対称性キャンセル・コンポーネントからの前記デジタル信号が、検出器によって処理され、前記第2式によれば、
前記検出器に入力された前記非対称性キャンセル・コンポーネントからのデジタル信号が、正の理想的最大ピーク値を超えるまたは負の理想的最大ピーク値より小さいかどうかを判定することと、
前記検出器に入力されたデジタル信号が、前記正の理想的最大ピーク値を超えるとの判定に応答して、前記正のピーク値から前記検出器に入力された前記デジタル信号を引いたものを前記誤差信号にセットすることと、
前記検出器に入力されたデジタル信号が、前記理想的な最小の負のピーク値より小さいとの判定に応答して、前記負のピーク値から前記検出器に入力された前記デジタル信号を引いたものを前記誤差信号にセットすることと
によって前記誤差信号が計算される、請求項5に記載の非対称性キャンセル・コンポーネント。
【請求項8】
前記動作が、さらに、
前記デジタル信号が前記理想的な最大の正のピーク値と前記理想的な最小の負のピーク値との間にあるとの判定に応答して、前記検出器に入力された前記デジタル信号の関数を前記誤差信号にセットすること
を含む、請求項7に記載の非対称性キャンセル・コンポーネント。
【請求項9】
前記非対称性キャンセル・コンポーネントからの前記デジタル信号が、検出器によって処理され、前記第2式が、前記検出器に入力された前記デジタル信号を使用して前記誤差信号を計算する、請求項5に記載の非対称性キャンセル・コンポーネント。
【請求項10】
前記非対称性キャンセル・コンポーネントからの前記デジタル信号が、等化されたデジタル信号を作るために等化器によって処理され、前記第1式によれば、
ある時刻値での等化されたデジタル信号がピークであるかどうかを判定することと、
前記時刻値での前記等化されたデジタル信号が負のピークであるとの判定に応答して、遅延時間だけ分離された正のピークおよび負のピークの等化されたデジタル信号を合計することと
によって前記誤差信号が計算される、請求項5に記載の非対称性キャンセル・コンポーネント。
【請求項11】
前記第2式によれば、
前記時刻値での前記等化されたデジタル信号が負のピークでないとの判定に応答して、前記誤差信号に0をセットすること
によって前記誤差信号が計算される、請求項10に記載の非対称性キャンセル・コンポーネント。
【請求項12】
前記訂正されたデジタル信号を作るために前記係数を使用して前記誤差信号を調整することが、
前記受け取られたデジタル信号を二乗することと、
係数調整された値を作るために前記受け取られたデジタル信号に前記係数をかけることと、
前記訂正されたデジタル信号を作るために前記受け取られたデジタル信号から前記係数調整された値を減算することと
を含む、請求項1に記載の非対称性キャンセル・コンポーネント。
【請求項13】
記憶媒体に結合し、当該記憶媒体に関する入出力(I/O)動作を実行するストレージ・ドライブであって、
前記記憶媒体からデータを読み取るヘッドと、
前記読取ヘッドによって前記記憶媒体から読み取られたデータを表すアナログ信号を受け取るアナログ・デジタル・コンバータと、
非対称性キャンセル・コンポーネントとを含み、
前記コンポーネントは、
前記記憶媒体から読み取られたデータを表す前記アナログ・デジタル・コンバータからのデジタル信号を受け取ることと、
前記デジタル信号の非対称性を示す誤差信号を計算することと、
係数を判定するために前記計算された誤差信号を使用することと、
訂正されたデジタル信号を作るために前記係数を使用して前記デジタル信号を調整することとを実行する、ストレージ・ドライブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−102996(P2007−102996A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271101(P2006−271101)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【Fターム(参考)】