説明

非平滑面用撥水処理組成物

【課題】コンクリート製のブロックやタイル,木材,布等の、非平滑面に対し、十分な撥水性能を付与しうる、撥水処理組成物を提供すること。
【解決手段】下記(1)及び(2)を含有することを特徴とする、非平滑面用撥水処理組成物である。
(1)平均粒径が100nm以下の微粒子
(2)アルキル基含有アルコキシシラン

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製のブロックやタイル,木材,布等の、非平滑面に対し、十分な撥水性能を付与しうる、撥水処理組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、撥水処理組成物としては、処理面に対して、水の浸透を防ぐための撥水防水層を作り、水滴と処理面の接触面積を減らすもの等が開発されている(特許文献1)。
【0003】
このようなものとしては、アルコキシシラン等が、良く用いられており、これは、例えば非平滑面においても、その凹部にまで浸透し、撥水防水層を形成することから、処理面に対して、均一に撥水性能を付与することができるという点で優れている。
【0004】
しかしながら、アルコキシシランによる撥水防水層は、厳密に言えば、撥水性能を付与するものでは無く、水が処理面に浸透することを防ぐ、防壁として機能するに過ぎないため、完全に水が弾かれることは無く、水滴が、当該防水層上に残ってしまい、必ずしも十分な撥水性を付与し得るものでは無かった。水滴が、弾かれずに防水層上に残ることによって、水滴中の砂や埃等の不純物が、非平滑面中に残存し、カビや藻の繁殖の原因ともなるほか、また水滴が残っていることから、防水層の劣化も早くなり、実質的な撥水処理には、なっていないからである。
【0005】
一方、二酸化ケイ素(シリカ)等の微粒子を施与することによって、施与面に水滴が接触する面積を減らし、撥水性を付与する塗料が開発されている(特許文献2)。
【0006】
しかしこれは、ガラス等の平滑面に用いられるものであり、また、撥水持続性にも劣るものであった。
【0007】
また、微粒子を、非平滑面の処理に用いる方法も、開発されている(特許文献3)。
【0008】
しかしながら、これは、撥水性では無く防汚性の付与を目的とする処理剤であり、また、粒子を用いた場合、粒子の積載位置にムラができ易く、特に非平滑面においては、凹部に完全に積載することが困難であるため、非平滑面に、均一に撥水性を付与することは難しいと考えられる。
【0009】
尚、上記の従来技術等から、微粒子と、撥水防水層形成成分を同時に施与することも考えられるかもしれないが、これでは、微粒子が撥水防水層中に埋もれてしまい、十分な撥水性能を発揮できないおそれがあった。
【0010】
【特許文献1】特開平6―172677号公報
【特許文献2】特開平11−29722号公報
【特許文献3】特願2007−210484号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、(1)平均粒径が100nm以下の微粒子と(2)アルキル基含有アルコキシシランの両方を、非平滑面に対して施与することによって、意外にも、非平滑面が、一種の毛細管現象あるいは濾過作用を発揮し、撥水防水層成分が硬化する前に、微粒子と撥水防水層成分を適度に分離し、微粒子と撥水防水層成分の本来有する防水・撥水効果を、それぞれ十分に発揮し得ることを見出し、本発明に到達したものであって、その目的とするところは、コンクリート製のブロックやタイル,木材,布等の、非平滑面に対し、十分な撥水性能を付与しうる、撥水処理組成物を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的は、下記第一の発明から第五の発明によって、達成される。
【0013】
<第一の発明>
下記(1)及び(2)を含有することを特徴とする、非平滑面用撥水処理組成物。
(1)平均粒径が100nm以下の微粒子
(2)アルキル基含有アルコキシシラン
【0014】
<第二の発明>
アルキル基含有アルコキシシランが、アルコキシ基が3個,アルキル基が1個のものであることを特徴とする、第一の発明記載の、非平滑面用撥水処理組成物。
【0015】
<第三の発明>
平均粒径が100nm以下の微粒子が、多孔質構造を有するものであることを特徴とする、第一の発明又は第二の発明記載の、非平滑面用撥水処理組成物。
【0016】
<第四の発明>
平均粒径が100nm以下の微粒子が、撥水性粒子であることを特徴とする、第一の発明乃至第三の発明のいずれかに記載の、非平滑面用撥水処理組成物。
【0017】
<第五の発明>
(1)と(2)の含有比率が、質量比で1:19〜10:10であることを特徴とする、第一の発明乃至第四の発明のいずれかに記載の、非平滑面用撥水処理組成物。
【発明の効果】
【0018】
本発明の非平滑面用撥水処理組成物は、コンクリート製のブロックやタイル,木材,布等の、非平滑面に対し、十分な撥水性能を付与しうる、撥水処理組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[本発明の非平滑面用撥水処理組成物]
本発明の非平滑面用撥水処理組成物は、下記(1)及び(2)を含有することを特徴とするものである。
【0020】
(1)平均粒径が100nm以下の微粒子
(2)アルキル基含有アルコキシシラン
【0021】
以下、各成分について、詳述する。
【0022】
《(1)平均粒径が100nm以下の微粒子》
本発明の微粒子に用いられる粒子としては、有機,無機いずれでも使用可能であるが、使用後の変性が少ない,環境への影響が少ない,安価に入手し易い等の理由で、無機粒子が好ましい。
【0023】
具体的には、二酸化ケイ素(シリカ),ケイ酸マグネシウム,ケイ酸カルシウム等のケイ素を含む粒子,酸化チタン,酸化亜鉛,酸化アルミニウム(アルミナ),酸化マグネシウム,酸化ジルコニウム(ジルコニア),酸化スズ,酸化インジウム,スズドープ酸化インジウム,インジウムドープ酸化スズ,アンチモンドープ酸化スズ,炭酸マグネシウム,炭酸カルシウム,リン酸カルシウム,ホウ酸アルミニウム,ホウ酸マグネシウム,ケイ酸ジルコニウム,窒化アルミニウム,等の、金属系粒子,窒化ケイ素,窒化ホウ素等の窒化物,真珠岩,シリコーン樹脂製粒子,ナイロンパウダー等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0024】
これらの中でも、二酸化ケイ素(シリカ),酸化チタン,リン酸カルシウムが、本発明の撥水処理組成物の撥水効果が高くなる点で好ましく、特に、二酸化ケイ素(シリカ)>酸化チタン>リン酸カルシウムの順で、その効果が顕著である。
【0025】
また、これらの粒子は、更にアルキル基含有アルコキシシランと反応することによって、撥水性能を補完され得るが、アルキル基含有アルコキシシランとの反応性の高い順も、二酸化ケイ素(シリカ)>酸化チタン>リン酸カルシウムの順である。
このアルキル基含有アルコキシシランによる撥水性能の向上は、粒子自身が、もともと撥水性を有する場合,及び疎水化等によって撥水性を付与されている場合のいずれの場合にも、有用である。
【0026】
二酸化ケイ素の微粒子の製法としては、湿式と乾式が挙げられる。
【0027】
(1)湿式法とは、ケイ酸ナトリウムと酸を反応させる方法であるが、中でも、高純度の硅砂を原料としたケイ酸ソーダと、硫酸を混合して得られるケイ酸ゾルを重合して一次粒子とし、三次元的な凝集体を形成し、ゲル化し、得られたシリカを微粉化したものが、多孔質化し易く、比表面積の大きなものが得られる点で好ましい。
【0028】
(2)乾式法とは、四塩化ケイ素の分解による方法であるが、内部比表面積を持たない、コンパクトなシリカが得られやすい。
【0029】
尚、酸化チタンには、様々な結晶構造のものがあり、いずれであっても、又はこれらの混合物であっても良いが、好ましい具体例としては、ブルッカイト型結晶,ルチル型結晶,又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0030】
本発明に用いられる微粒子としては、撥水性粒子が好ましい。
撥水性粒子には、もともと撥水性を有するものの他、疎水化処理等によって、撥水性を付与したもの等が含まれる。
【0031】
上述のシリカ,酸化チタン,リン酸カルシウム等は、疎水化処理することによって、より好ましい微粒子として用いることができる。
【0032】
ここで言う「撥水性を付与したもの」としては、粒子の表面積当たりの撥水成分が被覆されている面積の割合(疎水化度)が、15%以上のものであることが好ましい。
【0033】
疎水化処理方法としては、各種の公知の方法が挙げられるが、例えば、湿式シリカ(無水シリカ)の場合、親水性のシリカ(表面にOH基を有するシリカ)を、シランまたはシロキサン等で化学的に処理する方法が挙げられる。
【0034】
疎水化処理したシリカとしては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0035】
シリル化シリカ(日本アエロジル社製):
アエロジル(登録商標)R812(表面処理剤:トリメチルシリル基)
アエロジル(登録商標)R812S(表面処理剤:トリメチルシリル基)
アエロジル(登録商標)R805(表面処理剤:オクチルシラン)
アエロジル(登録商標)R8200
アエロジル(登録商標)NAX50
アエロジル(登録商標)NX90,
アエロジル(登録商標)RX200(表面処理剤:トリメチルシリル基)
アエロジル(登録商標)RX300
アエロジル(登録商標)RX50等
アエロジル(登録商標)R976(表面処理剤:ジメチルシリル基)
アエロジル(登録商標)R976S(表面処理剤:ジメチルシリル基)
アエロジル(登録商標)R974(表面処理剤:ジメチルシリル基)
アエロジル(登録商標)R972(表面処理剤:ジメチルシリル基)等
【0036】
デカメチルテトラシロキサン処理シリカ(日本アエロジル社製):
アエロジル(登録商標)R202
アエロジル(登録商標)NY50
アエロジル(登録商標)RY200
アエロジル(登録商標)RY200S
アエロジル(登録商標)RY300
アエロジル(登録商標)RY50等
【0037】
アルキルシラン表面処理疎水性シリカ(旭化成ワッカーシリコーン社製,WACKER HDK(登録商標)シリーズ):
シリカ表面の水酸基と、ポリジメチルシロキサンの両末端とを化学結合させることによって、シリカをほぼ完全に疎水化した、HDK(登録商標)H18
メチルクロロシランで疎水化した、HDK(登録商標)H20,HDK(登録商標)H2000,HDK(登録商標)H3004
等が挙げられる。
【0038】
尚、特に疎水化処理をしていないシリカとしては、アエロジル(登録商標)OX50等が挙げられる。
【0039】
本発明の非平滑面用撥水処理組成物に用いられる微粒子の平均粒径は、撥水効果を発揮するためには、100nm以下であることが必要であり、好ましくは80nm以下,より好ましくは50nm以下,更に好ましくは20nm以下である。
【0040】
平均粒子径が、100nmを超えると、非平滑面の内部にまで侵入できず、必要以上に表面に微粒子が留まり、白くなるなど色調の変化が著しいからである。また、100nmを超えると、(2)のアルキル基含有アルコキシシランとの分離のバランスが悪く、極端に分離されるので、目的とする「微粒子」と「アルキル基含有アルコキシシラン」との併用効果が出現しない。更に、粒子自身が大きすぎるため、定着性が悪く撥水性の付与がしにくいと考えられるからである。
【0041】
本発明の非平滑面用撥水処理組成物に用いられる微粒子は、優れた撥水効果を発揮するために、多孔質構造を有するものであることが好ましい。多孔質構造をとることによって、非平滑面や水滴との密着性が低くなると考えられるからである。
尚、多孔質構造とは、内部に、種々の大きさの孔を持つ固体の総称であり、孔の大きさは特に限定されるものでは無いが、例えば、下記のような方法で製造される。
【0042】
多孔質構造の微粒子は、例えば、上述の湿式法のような方法で製造することができるが、日本アエロジル(株),(株)トクヤマ,富士シリシア化学(株)等から入手することも可能である。
【0043】
本発明の非平滑面用撥水処理組成物に用いられる微粒子の比表面積は、撥水効果を発揮するためには、50m2/g以上であることが好ましく、より好ましくは80m2/g以上,更に好ましくは100m2/g以上,特に好ましくは200m2/g以上である。
【0044】
比表面積が大きい程、水滴との密着性が低くなると考えられ、また比表面積が大きい(同等の平均粒径のものの中で比重が小さい)場合、(2)のアルキル基含有アルコキシシランを含む溶液中で、より分散し易く沈降し難いため、保存安定性に特に優れるからである。
【0045】
本発明の非平滑面用撥水処理組成物中における、微粒子の含有量は、特に制限はされないが、確実な撥水効果を達成するためには、0.05質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上,更に好ましくは、1.0質量%以上である。
【0046】
上限は特にないが、撥水処理組成物自身の粘性,作業性,及び経済性等の観点からは、例えば40質量%以下が好ましく、より好ましくは、30質量%,特に好ましくは20質量%以下である。
【0047】
尚、微粒子の種類によって、同じ含有量であっても、撥水効果には、多少の差が出る場合もあり、例えば、微粒子として、(疎水化処理をしない)二酸化ケイ素(シリカ),酸化チタン,又はリン酸カルシウムを用いた場合、微粒子含有量10質量%では、ほぼ同等の撥水効果が得られるが、微粒子含有量1質量%の場合には、二酸化ケイ素(シリカ)>酸化チタン>リン酸カルシウムの順で撥水効果が高い。
【0048】
これらの(1)は、1種類を用いても良いが、数種類の(1)を併用しても良い。
【0049】
《(2)アルキル基含有アルコキシシラン》
本発明に用いられるアルキル基含有アルコキシシランとは、ケイ素原子に、1乃至3個のアルコキシ基が,1乃至3個のアルキル基が結合しているものを言うが、撥水性の付与の点で、アルコキシ基が3個,アルキル基が1個のものが好ましい。
アルキル基が全く無い場合、撥水性が発揮されず、逆にアルコキシ基が全く無いと、層が形成されず、防水機能を発揮し得ないからである。
【0050】
アルコキシ基の炭素数に特に制限は無いが、炭素数が少ない程、反応性に富むため、好ましくは、炭素数1〜4程度(メトキシ,エトキシ,プロポキシ,ブトキシ等)であり、特に好ましくは1〜2(メトキシ,エトキシ),最も好ましくは1(メトキシ)である。
【0051】
アルキル基の炭素数に特に制限は無いが、撥水性の点で、好ましくは炭素数4〜12程度,より好ましくは6〜10,最も好ましくは10である。
【0052】
炭素数4以上で、より優れた撥水性を達成し、また、微粒子の凹凸部に侵入して微粒子の多孔質構造を損なう心配が殆ど無く、炭素数12以下で、(1)の微粒子と絡まって凝集を起こす恐れが少なく、組成物の保存安定性に優れ、また、非平滑面における凹部に物理的に侵入し易く、更に、非平滑面における(1)の微粒子との分離性にも、より優れているからである。
【0053】
また、本発明で用いるアルキル基を有するアルコキシシランは、基本となるアルコキシシランが1つの単量体(モノマー)の他、アルコキシシランの多量体(オリゴマー)であっても良い。
【0054】
アルキル基含有アルコキシシランとしては、具体的には、
アルキル基炭素数が6の
ヘキシルトリメトキシシラン(KBM−3063,信越化学社製)
ヘキシルトリエトキシシラン(KBE−3063,信越化学社製)
アルキル基炭素数が10の
デシルトリメトキシシラン(KBM−3103,又は3103C,信越化学社製)
デシルトリエトキシシラン(KBE−3103,信越化学社製)
等の、アルキル基の炭素数が炭素数4〜12のものが好ましく用いられるが、
アルキル基炭素数が3のトリフルオロプロピルトリメトキシシラン(KBM−7103,信越化学社製)
アルキル基炭素数が17のヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン(KBM−7803,信越化学社製)
等も使用することができる。
【0055】
これらの(2)は、1種類を用いても良いが、数種類の(2)を併用しても良い。
【0056】
非平滑面用撥水処理組成物中の、(2)の含有量としては、組成物全体を100質量%として、2〜40質量%が好ましく、より好ましくは、5〜30質量%,特に好ましくは、10〜20質量%である。
【0057】
2質量%以上の場合に、非平滑面の凹部にまで、より確実に撥水性を付与することができ、40質量%以下で、非平滑面の目詰まり(凹部が埋まること)の恐れが殆ど無く、本来の撥水性能がより発揮でき、また非平滑面に適用した際の、(1)の微粒子との分離スピードに富み、(2)による防水性を有する層が硬化しきる前に、微粒子が非平滑面の表面により確実に露出するからである。
【0058】
このアルキル基含有アルコキシシランを含有させることによって、(1)の微粒子の撥水性能を補完することができる。
【0059】
《(1):(2)の比率》
本発明の非平滑面用撥水処理組成物中における、(1)及び(2)の含有比率は、質量比で1:19〜10:10であることが好ましく、特に好ましくは、質量比で2:18〜8:12である。
【0060】
《本発明の非平滑面用撥水処理組成物の剤型》
尚、本発明の非平滑面用撥水処理組成物は、(1),(2)をそれぞれ別個に含む二剤型とすることもできる。二剤型の場合には、いずれを先に非平滑面に適用しても良いが、アルキル基含有アルコキシシランが非平滑面の内部奥深くまで浸透し易く、防水層を形成し易いと言う理由から、(2)のアルキル基含有アルコキシシランを含む方を先に適用する方が好ましい。
具体的な剤形としては、溶液,エマルジョン,ゲル状等が挙げられる。
【0061】
《その他の成分》
本発明の非平滑面用撥水処理組成物には、このほか、各種の溶媒,分散剤,増粘剤,上記の微粒子以外の無機充填剤,顔料,界面活性剤,pH調整剤,皮膜形成助剤,レベリング剤,その他の撥水剤,消泡剤,酸化防止剤,紫外線吸収剤,防錆剤,香料,着色剤,消臭剤,アレル物質抑制剤,防腐剤,除菌剤,帯電防止剤,艶出し剤,防カビ剤等の公知の添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で、適宜含有させることができる。
【0062】
溶媒としては、炭化水素系や芳香族系などの無極性溶媒や、アルコール,グリコール系溶媒,アセトン等のケトン類等,あるいはこれらの混合物等が挙げられるが、多少の水等が混入したものであっても良い。
【0063】
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール,繊維素エーテル,澱粉,マレイン化ポリブタジエン,マレイン化アルキッド樹脂,ポリアクリル酸(塩),ポリアクリルアミド,水性アクリル樹脂,水性ポリエステル樹脂,水性ポリアミド樹脂,水性ポリウレタン樹脂等の合成又は天然の水溶性高分子物質等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0064】
増粘剤としては、例えば、ベントナイト,モンモリロナイト,雲母等の無機系増粘剤の他、カルボキシルメチルセルロース(CMC),メチルセルロース,エチルセルロース,ヒドロキシルエチルセルロース等のセルロース系高分子,可溶性デンプン,カルボキシメチルデンプン,ジアルデヒドデンプン等のデンプン系高分子,ポリビニルアルコール,ポリアクリル酸ソーダ塩及びアンモニウム塩,ガラクタン,トラガントゴム,アラビアゴム,コラーゲン,ザンタンガム(ザンサンガム),水溶性ポリアクリル共重合体,ゼラチン,寒天,親水性基含有合成樹脂エマルジョン等の有機系増粘剤が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0065】
無機充填剤としては、例えば、上記の必須成分として用いられる以外のシリカ,ケイ酸カルシウム,酸化チタン,アルミナ,炭酸マグネシウム,炭酸カルシウムの他、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム,タルク,珪藻土,マイカ,カオリン,カーボンブラック,アタパルジャイト,シラスバルーン,パーライト等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用してもよい。
【0066】
《非平滑面》
本発明の非平滑面用撥水処理組成物の適用対象である「非平滑面」としては、無機系や有機系のものがある。
【0067】
具体的な「非平滑面」としては、例えば、タイル裏,セメント,ブロック,植木鉢,石,レンガ,テラコッタ,スレート板,砥石等のような硬質の多孔質体や、PVAスポンジを含むスポンジ類等の軟質の多孔質体等、各種の多孔質体や、木材,紙,布,不織布,パンチカーペット等のような比較的毛足の短いカーペット等の表面が挙げられるが、特に、多孔質体が好ましく、中でも、セメント,モルタル,コンクリート等の、硬質の多孔質体に最も有益である。
【0068】
多孔質体は、非平滑面用撥水処理組成物に含まれている微粒子の吸い込みが良く、少量で効果を発揮する点,及び多孔質体の内部まで微粒子が浸透するため、効果の持続性に優れている点で好ましい。
また、「非平滑面」が無機物の場合には、無機粒子を,有機物の場合には、有機粒子を用いると、風合いに変化が無いため、好ましい。
【0069】
《適用方法・適用量》
本発明の非平滑面用撥水処理組成物の適用方法は、適用対象である「非平滑面」に対して、塗布,含浸,スプレーする方法の他、流下式,グラビアなどの印刷機やバーコーター,ブレードコーター,ロールコーター,エアーナイフコーター,スクリーンコーター,カーテンコーターなどの各種コーターによる塗工方法や含浸機による含浸加工,又はスプレー加工等を用いることもできる。
非平滑面用撥水処理組成物の適用後に、乾燥させることが好ましい。乾燥は、自然乾燥で良い。但し、塗布した組成物の成分の損失を避けるためには、熱風乾燥等で、直ちに乾燥させても良い。
【0070】
本発明の非平滑面用撥水処理組成物を適用する際の塗布量は、含まれている粒子等の含有量にもよるため一概には言えないが、通常、組成物の重量として、好ましくは10〜400g/m2、より好ましくは25〜100g/m2の範囲である。
【実施例】
【0071】
尚、実施例に先立ち、本発明の性能を確認するための試験方法等を以下に記載する。
【0072】
[外観試験]
各種試験組成物のそれぞれ50〜200g/m2を、縦横10cmのタイル裏(多孔質体)や木材に塗布し、乾燥した。

乾燥後、表面の状態を目視で観察した。
結果は、下記の基準に基づいて評価した。
【0073】
尚、下記で言う「外観変化」とは、微粒子の凝集による「ダマの発生」や、粒子自身による「白ぼけ(表面の白化)」,あるいはアルコキシシランに起因する、「樹脂を塗ったような艶感の発生」,あるいは「濡れたような感じの樹脂色の発生」を意味する。
これらの外観変化は、必ずしも、好ましく無いものとは言えないが、撥水処理組成物の適用対象である非平滑面本来の持つ外観が変化してしまうという観点から評価した。
【0074】
◎ 塗布前と外観が全く変わらないもの
○ 塗布前と外観がほとんど変わらないもの
△ よく見ると外観の変化があるもの
× 明らかに外観に変化があるもの
【0075】
[初期撥水性試験]
各種試験組成物のそれぞれ50〜200g/m2を、縦横10cmのタイル裏(多孔質体)や木材に塗布し、乾燥させた。
乾燥後、接触角計(FTA社製 FTA125動的接触角計)を用い、そのプロトコルに従って接触角を測定した。
結果は、下記の基準に基づいて評価した。
【0076】
◎ 接触角が120度以上のもの
○ 接触角が110度以上の120度未満のもの
△ 接触角が100度以上110度未満
× 接触角が100度未満のもの
【0077】
[撥水持続性試験]
上記の初期撥水性試験と同様の適用対象に、毎分6Lの水量のシャワーを5分間かけ続けた後の接触角を、接触角計(FTA社製 FTA125動的接触角計)を用い、そのプロトコルに従って測定した。
結果は、下記の基準に基づいて評価した。
【0078】
◎ 接触角が120度以上のもの
○ 接触角が110度以上の120度未満のもの
△ 接触角が100度以上110度未満
× 接触角が100度未満のもの
【0079】
[防水層の厚さ確認試験]
実施例又は比較例の撥水処理組成物によって、どのくらいの厚みの防水層が出来ているかを調べるため、各撥水処理組成物を適用した非平滑面(タイル,木材)を、垂直にカットし、切断面から、わざと着色した水分を浸透させた。
切断面において、着色していない部分の厚みを測定し、これを防水層の厚みとして、評価した。
【0080】
[実施例1〜11,比較例1〜4]
表1の組成に従って、実施例及び比較例の、撥水処理組成物を製造した。
これらを用いて、上述の評価試験を行った結果を、併せて表1に記載する。
【0081】
表1から分かる通り、実施例の撥水処理組成物は、比較例と比べて、適用対象の外観を損ねることなく、撥水性を付与することができ、しかもその撥水性には、持続性があることが分かった。
また、実施例の撥水処理組成物は、比較例のものと比べて、厚い防水層を形成する傾向があることが明らかとなった。
【0082】
【表1】

【0083】
尚、比較例4で用いたKP−543とは、揮発成分の蒸発により、耐水性塗膜を形成する、アクリルポリマーとジメチルポリシロキサンからなるグラフト共重合体である。
【0084】
また、実施例及び比較例で用いた溶媒は、それぞれ下記のように入手することができる。
ペガゾール3040(石油系脂肪族溶剤):モービル石油株式会社販売
シェルソルTK(石油系脂肪族溶媒):シェルケミカルズジャパン株式会社製
キョウワゾールC-800(イソヘキサン):協和醗酵工業株式会社製
【0085】
尚、ケロシンとは、石油から、約150〜275℃で分留される、炭素数約12〜15の炭化水素である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の非平滑面用撥水処理組成物は、コンクリート製のブロックやタイル,木材,布等の、非平滑面に対し、十分な撥水性能を付与することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)及び(2)を含有することを特徴とする、非平滑面用撥水処理組成物。
(1)平均粒径が100nm以下の微粒子
(2)アルキル基含有アルコキシシラン
【請求項2】
アルキル基含有アルコキシシランが、アルコキシ基が3個,アルキル基が1個のものであることを特徴とする、請求項1記載の、非平滑面用撥水処理組成物。
【請求項3】
平均粒径が100nm以下の微粒子が、多孔質構造を有するものであることを特徴とする、請求項1又は2記載の、非平滑面用撥水処理組成物。
【請求項4】
平均粒径が100nm以下の微粒子が、撥水性粒子であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の、非平滑面用撥水処理組成物。
【請求項5】
(1)と(2)の含有比率が、質量比で1:19〜10:10であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の、非平滑面用撥水処理組成物。