説明

非接触センサ

【課題】誘電体等の被検出物の位置を検出する静電容量型などの非接触センサにおいて、短時間で確実に所望の検出位置における最適なゲインとオフセットに調整できるようにする。
【解決手段】被検出物20がない第1の状態と、所定の距離に被検出物20がある第2の状態で、それぞれ同様に検出ゲインを変化させ、各ゲインにおいて所定の出力値となるようにオフセット値を調整し、当該オフセット値を格納し、第1の状態のオフセット値と第2の状態のオフセット値が最も近くなったときの当該ゲインおよびオフセット値を調整値とするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体等の被検出物の位置を検出する静電容量型の非接触センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の非接触センサの調整では、被検出物との距離等の所定の検出範囲を有効に利用するための設定を容易に行い、かつオフセットなどの調整を容易にする方法として、センサ出力値が線形性を有する検出範囲の限界位置であることを検出する限界検出手段と、当該限界検出手段が限界位置であることを検出する表示手段を設け、当該限界位置にてセンサ出力値がゼロとなるように調整する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−332312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来のセンサ調整方法では、検出範囲の限界位置におけるオフセットの調整は容易となるものの、検出範囲全体のオフセットの最適化については、考慮されておらず、ゲインとオフセットを最適に調整することはでなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、前述の課題を解決するために次の手段を採用する。すなわち、被検出物を検出する静電容量型の非接触センサにおいて、所定の範囲でゲインを変化させるゲイン調整手段と、第1の所定の位置に被検出物を配置した第1の状態と、第2の所定の位置に被検出物を配置した第2の状態についてあらかじめ決めた出力値となるように前記各ゲインにおいてオフセット値を調整するオフセット調整手段と、前記ゲインごとに前記オフセット値を保持するオフセット保持手段を設け、前記保持した第1の状態のオフセット値と第2の状態のオフセット値が最も近いゲインを求め、当該ゲインと、当該ゲインに対応したオフセット値を調整値とするようにした。
【発明の効果】
【0005】
本発明の非接触センサによれば、所定の範囲でゲインを変化させるゲイン調整手段と、第1の所定の位置に被検出物を配置した第1の状態と、第2の所定の位置に被検出物を配置した第2の状態についてあらかじめ決めた出力値となるように前記各ゲインにおいてオフセット値を調整するオフセット調整手段と、前記ゲインごとに前記オフセット値を保持するオフセット保持手段を設け、前記保持した第1の状態のオフセット値と第2の状態のオフセット値が最も近いゲインを求め、当該ゲインと、当該ゲインに対応したオフセット値を調整値とするようにしたので、短時間で確実に所望の検出位置における最適なゲインとオフセットに調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明に係る実施の形態例を、図面を用いて説明する。なお、図面に共通する要素には同一の符号を付す。
【実施例1】
【0007】
(構成)
図1は、実施例1の非接触式センサの構成図である。同図のように、1はセンサ部であり、5は信号周波数f(Hz)の交流電圧E(V)を出力する発振回路であり、6はバッファ回路であり電流検出抵抗7を介して発振回路5の交流電圧を送信電極2aに印加する。
【0008】
7は電流検出抵抗であり、バッファ回路6と送信電極2aの間を流れる電流I0を電圧に変換する。8はシールドケーブルであり、その芯線側が電流検出抵抗7および送信電極2aに接続され、シールド線側がバッファ回路6の出力と、シールド電極2bに接続されている。
【0009】
9は電流検出抵抗7の両端に発生する電位差を増幅するための第1の差動増幅回路であり、電流検出抵抗7により変換された電圧を所定のゲインで増幅する。10はフィルタ回路であり、信号周波数f(Hz)のみを通過させるバンドパスフィルタ回路を構成している。11は検波回路であり、第1の差動増幅回路9からの交流信号を直流信号に変換する。
【0010】
12はローパスフィルタ回路であり、検波回路11からの出力に含まれるリップル成分を除去する。13はオフセット調整機能を有する第2の差動増幅回路であり、14はアナログ信号をデジタルデータに変換するD/A変換器であり、15はゲインを調整するゲイン調整回路であり、16はデジタルデータをアナログ信号に変換するA/D変換器であり、17はオフセット値やゲイン調整回路のゲインを制御する制御部であり、18は出力値Voutである。第2の差動増幅回路13は、ローパスフィルタ回路12からの出力とD/A変換器14からの出力の差分を所定の倍率で増幅する。
【0011】
A/D変換器16は、出力値18をゲイン調整回路15にて増幅しA/D変換し、制御部17に出力する。制御部17はゲイン調整回路15のゲインの設定を行い、D/A変換器14にデジタルデータを出力し、D/A変換器14でアナログ信号に変換し、オフセット調整として第2の差動増幅器13に出力される。
【0012】
なお、出力値18は、同図に示したようにアナログ信号のまま図示しない次段の処理回路に出力する構成としてもよいし、A/D変換器16により変換されたデジタルデータを出力値として次段の処理回路に出力するようにしてもよい。
【0013】
図2は、センサ部1の電極部の詳細な構成図である。同図において、2は2層のプリント基板の構造となっており、テフロン(登録商標)などの基材を送信電極2aと補助電極2bで挟み込んだ構造となっている。
【0014】
3はスペーサでテフロン(登録商標)樹脂等の絶縁性があり、かつ誘電率の小さい材質で作られている。4はアース電極であり、銅板等の金属や導電性ゴム或いは導電性布等の導電性のある材料で作られている。また、プリント基板2とアース電極4は各々間隔が変動しないようにスペーサ3に接着された構造となっている。
【0015】
(動作)
以上の構成により実施例1の非接触センサは、以下のように動作する。この動作を図3、図4の動作説明図および図5の動作フローチャート図を用いて以下詳細に説明する。
【0016】
図3において、I0は、被検出物20がない場合に電流検出抵抗7に流れる電流であり、I1はシールドケーブル8のシールド線側に流れる電流である。まず、センサ1の周囲に誘電体である被検出物20がない場合について説明する。
【0017】
(被検出物がない場合)
送信電極2aと補助電極2bは、バッファ回路6により同電位に保ち、コンデンサとして働かないようにしている。このため、送信電極2aと補助電極2b間の距離を小さくすることが可能となる。
【0018】
一方、補助電極2bとアース電極4は、アース電極4側を接地して対向しているため静電容量Cbのコンデンサとして働き、発信回路5より印加される電圧(発振周波数f、電圧E)と静電容量Cbに応じた電流I1がバッファ回路6からシールドケーブル8、補助電極2b、アース電極4を介してグランドに流れる。
【0019】
前述の電流I0が流れるとシールドケーブル8の抵抗分により、送信電極2aと補助電極2b間に非常にわずかながらではあるが電位差が発生する。
【0020】
この電位差により、送信電極2aと補助電極2b間に電流が流れる。この電流は、電流検出抵抗7に流れる電流I0と等しくなる。そして、この電流I0は、電流検出抵抗7により電圧に変換され、第1の差動増幅回路9により所定のゲインで増幅される。
【0021】
その後、図1の検波回路11で交流信号から直流信号に変換され、さらに、第2の差動増幅回路13にて所定のゲインで増幅され、ゲイン調整回路15により制御部17により設定される後述のゲインA0ないしAnで増幅され、A/D変換器16によりデジタルデータとして制御部17に入力される。なお、ゲイン調整回路15の増幅率の初期値はA0とし、D/A変換器14の初期値はオフセット調整することなく、0にセットする。
【0022】
この場合の出力値18は、センサ部1の周囲に被検出物20がない状態であるので、0Vとなることが望ましい。従って、ゲイン調整回路15にて増幅された出力値18をA/D変換器16でデジタルデータに変換して制御部17に送り、制御部17によりこのデジタルデータと目標値である0Vとの差に応じたデータをオフセット値D00としてD/A変換器14に設定する。このとき、オフセット調整した後の出力値が0Vとなることを確認するようにすると高精度のオフセットデータを得ることができる。
【0023】
設定されたデジタルデータは、D/A変換器14でアナログ信号に変換され、第2の差動増幅回路13に入力される。その結果、出力値18は0Vに調整される。
【0024】
そして、ゲイン調整回路のゲインをA0〜Anまでn回変化させ、各ゲインで0Vに調整し、各オフセット値D00〜D0nを同様の方法で求める。
【0025】
なお、以上の説明では、都度、オフセット値をD/A変換器にセットするように説明したが、第2の差分増幅回路の動作範囲が十分広い場合は、最初のゲインA0のときのオフセット値D00およびD10を基準とし、以降のゲインA1〜Anでは、これらを基準としてオフセットを検出し検出したオフセット値をD01〜D0n、D11〜D1nとするようにしてもよい。
【0026】
(被検出物を配置した場合)
次に、誘電体で接地された被検出物20がセンサ部1から所定の距離Lx離れた位置にあり、このときの出力を所定の電圧Vaに調整する場合について説明する。なお、ゲイン調整回路16の初期値は被検出物20がない場合と同様に、A0とする。
【0027】
この場合、センサ部1に被検出物20が近づくと送信電極2aと被検出物20を介したグランドとの間はコンデンサとして働くため、静電容量Csが発生する。このとき、電流検出抵抗7には、静電容量Csに応じた電流IsがI0に加算されて流れる。
【0028】
前述のように、初期状態で出力値は0Vに調整されているため、I0はキャンセルされていることになるため、静電容量Csに応じた電流Isのみが増幅され、出力値18として出力される。
【0029】
そして、出力値18をゲイン調整回路で増幅率A0にて増幅しA/D変換器16でデジタルデータに変換して制御部17に送り、制御部17で変換されたデジタルデータと目標値であるVaとの差を算出し、その差に応じたデータをオフセット値D10としてD/A変換器14に設定する。このとき、オフセット調整した後の出力値がVaとなることを確認するようにすると高精度のオフセットデータを得ることができる。
【0030】
設定されたデジタルデータはD/A変換器14でアナログ信号に変換され、第2の差動増幅回路13に入力される。その結果、出力値18はVaに調整される。
【0031】
そして、ゲイン調整回路のゲインをA0〜Anまでn回変化させ、各ゲインで出力値をVaに調整し、各オフセット値D10〜D1nを同様の方法で求める。
【0032】
以上の被検出物がない場合と、所定の距離Lxに配置した場合の結果をプロットした図が、図4であり、横軸をゲインAとし縦軸をオフセット値Dとしてプロットしたものである。
【0033】
同図において、プロット(a)は、被検出物20がない状態でゲイン調整回路のゲインをA0〜Anまでn+1回変化させ各ゲインで0Vに調整したときのオフセット値D00〜D0nを示しており、プロット(b)は、センサ部1から所定の距離Lx離れた位置に被検出物20を設置したときに、ゲイン調整回路のゲインをA0〜Anまでn+1回変化させ各ゲインで出力を所定の電圧Vaに調整したときのオフセット値D11〜D1nを示している。
【0034】
ここで、非接触センサの出力値18(Vout)としては、被検出物20がない場合でも、センサ部1から所定の距離Lx離れた位置に被検出物20を設置した場合でも、ゲインおよびオフセット値は同一である必要がある。この条件は、プロット(a)とプロット(b)の交点位置とすることであり、図4に示すP点が、求めるゲインとオフセット値となる。
【0035】
なお、交点を求めるには、オフセット値D00〜D01、D10〜D11を用いて、ゲインの小さい方からオフセット値を比較し、オフセット値が最も近くなるゲインとオフセット値を求めればよい。
【0036】
(詳細な動作フロー)
以上の制御部17の動作を図5の動作フローチャートを用いてさらに、詳細に説明する。同図に示したように、先ず、被検出物20を取り除き(ステップS10)、ゲインをA0、iカウンタ値を0とし(ステップS11)、出力値Voutを測定し(ステップS12)、被検出物20がない場合の目標出力0Vとの差となるオフセットD00をD/A変換器14にセットし出力値Voutが0Vとなるようにする。そして、ゲインA0に対応付けてオフセットD00を格納する(ステップS13)。
【0037】
次に、ゲインとしてセットしたA0にΔA値を加算し、次のゲインとする(ステップS14)。このΔA値は、初期値であるA0と最後のゲインAnの差を所定の数で除算して得られる値としてもよいし、所定の任意の小さな値としてもよい。
【0038】
次に、ゲインAがAmax以上かどうかを判定し(ステップS15)、ゲインAがAmaxより小さい場合は、iカウンタを1加算する(ステップS16)。そして、ステップS12に戻り、出力値Voutを測定し、被検出物20がない場合の目標出力0Vとの差となるオフセットD01をD/A変換器14にセットし出力値Voutが0Vとなるようにし、ゲインA1に対応付けてオフセットD01を格納する(ステップS13)。
【0039】
以上の動作を繰り返し、徐々にゲインを増加させながら、オフセットD0iを求めてゲインAiに対応付けて格納し、ゲインAがAmax以上となると被検出物なしの場合の動作を終了する。
【0040】
次に、被検出物20を所定の距離Lxに配置し(ステップS17)、ゲインをA0、iカウンタ値を0とし(ステップS18)、出力値Voutを測定し(ステップS19)、被検出物20を所定の距離Lxに配置した場合の目標出力Vaとの差となるオフセットD01をD/A変換器14にセットし出力値VoutがVaとなるようにする。そして、ゲインA0に対応付けてオフセットD10を格納する(ステップS20)。
【0041】
次に、ゲインとしてセットしたA0にΔA値を加算し、次のゲインとし(ステップS21)、ゲインAがAmax以上かどうかを判定し(ステップS22)、Amaxより小さい場合は、iカウンタを1加算する(ステップS23)。そして、ステップS19に戻り、出力値Voutを測定し、被検出物20を所定の距離Lxに配置した場合の目標出力Vaとの差となるオフセットD11をD/A変換器14にセットし出力値VoutがVaとなるようにし、ゲインA1に対応付けてオフセットD11を格納する(ステップS20)。
【0042】
以上の動作を繰り返し、徐々にゲインを増加させながら、オフセットD0iを求めてゲインAiと対応付けて格納し、ゲインAがAmax以上となると被検出物20を所定の距離Lxに配置した場合の動作を終了する。
【0043】
以上のようにゲインとオフセット値をD0i、D1iとして格納した後、D0iとD1iが最も近い値となるiを抽出し(ステップS24)、当該iカウンタ値のときのゲインAiとしオフセットD0iを抽出し、ゲインAi、オフセットD0iをゲイン調整回路15、D/A変換器14にそれぞれセットし(ステップS25)、調整処理を終了する。なお、オフセットをD0iとしたが、D1iをオフセット値としてもよいし、D0iとD1iを平均化した(D0i+D1i)/2をオフセット値としてもよい。
【0044】
(実施例1の効果)
以上のように、実施例1の非接触センサによれば、所定の範囲でゲインを変化させるゲイン調整手段と、被検出物を配置しない第1の状態と、所定の位置に被検出物を配置した第2の状態についてあらかじめ決めた出力値となるように前記各ゲインにおいてオフセット値を調整するオフセット調整手段と、前記ゲインごとに前記オフセット値を保持するオフセット保持手段を設け、前記保持した第1の状態のオフセット値と第2の状態のオフセット値が最も近いゲインを求め、当該ゲインと、当該ゲインに対応したオフセット値を調整値とするようにしたので、短時間で確実に、所望の検出位置における最適なゲインとオフセットに調整することができる。
【実施例2】
【0045】
(構成)
実施例2の非接触式センサの構成は、図1および図2に示した実施例1の構成と同様であるので、簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0046】
(動作)
以上の構成により実施例2の非接触センサは以下のように動作する。なお、 実施例2の非接触センサでは、測定回数を減らすために測定ポイントを所定の数としている。
【0047】
先ず、センサ部1の周囲に被検出物20がない状態で、順次、測定ポイントのゲインとし、目標値0Vとなるようにオフセット値を調整しながら、そのときのオフセット値を格納する。
【0048】
例えば、測定ポイントを5点とした場合では、被検出物20がない状態で、4分割したゲインをA0、A1、A2、A3、A4と順次変化させ、各ゲインにおけるオフセット値の測定結果をD00、D01、D02、D03、D04として格納する。
【0049】
同様に、被検出物20がセンサ部1から所定の距離Lx離れた位置に配置した状態で同様の測定を行い、ゲインをA0、A1、A2、A3、A4と順次変化させ、各ゲインにおけるオフセット値の測定結果をD10、D11、D12、D13、D14として格納する。
【0050】
図6は、以上の測定結果を、横軸をゲインAとし縦軸をオフセット値Dとしてプロットしたものである。
【0051】
同図において、直線a;D=f1(A)は、被検出物20がない状態の測定データから求めた近似直線を示しており、直線b;D=f2(A)は、センサ部1から所定の距離Lx離れた位置に被検出物20を設置した状態の測定データから求めた近似直線を示している。
【0052】
ここで、非接触センサの出力値18(Vout)としては、実施例1と同様、被検出物20がない場合でも、センサ部1から所定の距離Lx離れた位置に被検出物20を設置した場合でも、ゲイン、オフセット値は同一である必要がある。この条件は、直線aと直線bの交点位置とすることであり、図6に示すP点が求めるゲインとオフセット値となる。
【0053】
それぞれの測定データから近似直線を求める方法としては、最小二乗法による回帰直線近似により求めるのが一般的であるので、以下この方法により直線近似を行う例を説明する。
【0054】
この最小二乗法による回帰直線近似では、D=a*A+bとして直線近似し、以下のように定数a、bが求められる。なお、nは、データ数−1であるので測定ポイントを5点とした場合ではn=4となる。すなわち、
【0055】
a=(ΣAi*Di)−b*ΣAi)/Σ(Ai^2) (1)
【0056】
b=(Di−a*ΣAi)/n (2)
【0057】
(1)、(2)式から下式によりa値が求められる。すなわち、
【0058】
a=(Σ(Ai*Di)−ΣAi*ΣDi/n)/(Σ(Ai^2)−ΣAi*ΣAi*ΣAi/n) (3)
【0059】
(3)式により求めたa値を(2)式に代入し、b値を算出する。
【0060】
次に、以上のように求めた近似直線D=f1(A)とD=f2(A)の交点をゲインAs、オフセットDsとして算出する。
【0061】
すなわち、次の(4)(5)式により交点(As、Ds)が求められる。
【0062】
As=−(a1−a2)/(b1−b2) (4)
【0063】
Ds=(−a1^2+b1^2+a1*a2−b1*b2)/(b1−b2)(5)
【0064】
(詳細な動作フロー)
以上の制御部17の動作を図7の動作フローチャートを用いてさらに、詳細に説明する。なお、ステップS30〜S34、S36、ステップS38〜S42、S44は、実施例1のステップS10〜S14、S16、ステップS17〜S21、S23と同様であるので、同様の部分は簡略化して説明する。
【0065】
同図に示したように、先ず、被検出物20を取り除き、ゲインをA0、iカウンタ値を0とし、出力値Voutを測定し、被検出物20がない場合の目標出力0Vとの差となるオフセットD00をD/A変換器14にセットし出力値Voutが0Vとなるようにする。そして、ゲインA0に対応付けてオフセットD00を格納する(ステップS30〜S33)。
【0066】
次に、ゲインとしてセットしたA0にΔAx値を加算し、次のゲインとする(ステップS34)。なお、このΔAx値は、ゲイン可変幅(An−A0)を測定データの数−1で除算してあらかじめ求めておく。測定データが5個の場合はn=4となり4で除算してあらかじめ求めることになる。
【0067】
次に、iがnより大きいかどうかを判定し、n以下の場合はiカウンタを1加算する。そして、ステップS32に戻り、出力値Voutを測定し、被検出物20がない場合の目標出力0Vとの差となるオフセットD01をD/A変換器14にセットし出力値Voutが0Vとなるようにし、ゲインA1に対応付けてオフセットD01を格納する(ステップS35、S36)。
【0068】
以上の動作を繰り返し、測定ポイントのオフセットD0iを求めてゲインAiと対応付けて格納し、測定データがnより大きくなったときは、ゲインAi、オフセットD0iから前述(1)〜(3)式によりD=a1*A+b1の近似直線のa1、b1の定数を求め(ステップS37)、被検出物なしの場合の動作を終了する。
【0069】
次に、被検出物20を所定の距離Lxに配置し、ゲインをA0、iカウンタ値を0とし、出力値Voutを測定し、被検出物20を所定の距離Lxに配置した場合の目標出力Vaとの差となるオフセットD01をD/A変換器14にセットし出力値VoutがVaとなるようにする。そして、ゲインA0に対応付けてオフセットD10を格納する(ステップS38〜S41)。
【0070】
次に、ゲインとしてセットしたA0にΔAx値を加算し、次のゲインとし、iカウンタ値がnより大きいかどうかを判定し、n以下の場合はiカウンタを1加算する(ステップS42〜S44)。そして、ステップS40に戻り、出力値Voutを測定し、被検出物20を所定の距離Lxに配置した場合の目標出力Vaとの差となるオフセットD11をD/A変換器14にセットし出力値VoutがVaとなるようにし、ゲインA1に対応付けてオフセットD11を格納する。
【0071】
以上の動作を繰り返し、測定ポイントのオフセットD0iを求めてゲインAiと対応付けて格納し、測定データが所定の数nとなったときは、これらの測定データから前述(1)〜(3)式を用いてD=a2*A+b2の近似直線のa2、b2の定数を求め(ステップS45)、被検出物20を所定の距離Lxに配置した場合の動作を終了する。
【0072】
そして、ステップS37およびS45にて求めたそれぞれの近似直線から、前述(4)(5)式によりその交点であるゲインAs、オフセットDsを求め、これらをゲイン調整回路15、D/A変換器14にセットし(ステップS25)、調整処理を終了する。
【0073】
なお、以上の説明では、測定データ数を5点として説明したが、4点以下としてもよいし、6点以上としてもよいことは言うまでもない。
【0074】
(実施例2の効果)
以上のように実施例の非接触センサによれば、測定ポイントを所定の数とし、被検出物がない場合と所定の距離にある場合について、各測定ポイントのゲインに対するオフセット値を測定し、当該測定した結果からそれぞれの直線近似をして交点を算出し、設定するゲインとオフセットを求めるようにしたので、実施例1の効果に加え、調整精度を維持したままで、測定に要する時間を短縮することができる。
【0075】
《その他の変形例》
なお、以上の実施例の説明では、ゲインA0と初期値として説明したが、ゲインAnを初期値として、ゲインAを徐々に減少させながらゲインA0までオフセット値を求めるようにしても勿論よい。
【0076】
また、以上の実施例の説明では、被検出物20を所定の距離Lxに配置したり、取り除く手段について説明しなかったが、この手段としては、被検出物20を所定の距離Lxに配置し上下方向に移動させる機構を設けることにより、所定の距離Lxに配置したり、取り除くようにしてもよいし、所定の距離Lxに配置した被検出物20を、被検出物20の影響がなくなる、すなわち容量Csがほぼ0となる距離まで被検出物20を移動させる機構を設けるようにすればよい。
【0077】
また、以上の実施例の説明では、被検出物20がない場合と、被検出物20が所定の距離Lxにある場合のそれぞれの状態でゲインを変化させてオフセット値を測定し、当該測定データを用いて調整値を求めるように説明したが、被検出物20がLx1にある状態と被検出物20がLx2にある状態とで、それぞれ同様に測定してこれらのゲイン、オフセットから調整値を求めるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、非接触センサを備え、被検出物の接近を検出して取引を行う自動取引装置などに広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施例1の非接触センサの構成図である。
【図2】実施例1の非接触センサ電極部の詳細構成図である。
【図3】実施例1の非接触センサの動作説明図である。
【図4】実施例1の非接触センサの動作説明図である。
【図5】実施例1の非接触センサの動作フローチャート図である。
【図6】実施例2の非接触センサの動作説明図である。
【図7】実施例2の非接触センサの動作フローチャート図である。
【符号の説明】
【0080】
1 センサ部
2a 送信電極
2b 補助電極
7 電流検出抵抗
9 第1の差動増幅回路
13 第2の差動増幅回路
14 D/A変換器
15 ゲイン調整回路
16 A/D変換器
17 制御部
20 被検出物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出物の位置を検出する静電容量型の非接触センサにおいて、
所定の範囲でゲインを変化させるゲイン調整手段と、
第1の所定の位置に被検出物を配置した第1の状態と、第2の所定の位置に被検出物を配置した第2の状態についてあらかじめ決めた出力値となるように前記各ゲインにおいてオフセット値を調整するオフセット調整手段と、
前記ゲインごとに前記オフセット値を保持するオフセット保持手段を設け、
前記保持した第1の状態のオフセット値と第2の状態のオフセット値が最も近いゲインを求め、当該ゲインと、当該ゲインに対応したオフセット値を調整値とすることを特徴とする非接触センサ。
【請求項2】
被検出物の位置を検出する静電容量型の非接触センサにおいて、
所定の範囲のゲインを所定の数で分割し、当該分割した各ゲインに順次変化させるゲイン調整手段と、
第1の所定の位置に被検出物を配置した第1の状態と、第2の所定の位置に被検出物を配置した第2の状態についてあらかじめ決めた出力値となるように前記各ゲインにおいてオフセット値を調整するオフセット調整手段と、
前記ゲインごとにオフセット値を保持するオフセット保持手段を設け、
前記第1の状態と第2の状態について保持したゲインおよびオフセット値から第1の近似直線と第2の近似直線を求める近似直線化手段と、
前記第1の近似直線と第2の近似直線の交点を算出する交点算出手段とを設け、
算出した交点のゲイン及びオフセットを調整値とすることを特徴とする非接触センサ。
【請求項3】
前記第1の状態を、被検出物を配置しない状態とし、
前記第2の状態を、被検出物を所定の距離離した位置に配置するようにしたことを特徴とする請求項1および請求項2記載の非接触センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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