説明

非接触型電子タグ集合体とその使用方法

【課題】 工程、物品などのトレーサビリティ管理の一元化、効率化を図ることができる非接触型電子タグ集合体を提供する。
【解決手段】 非接触型電子タグ集合体は、アンテナ2a、2b、2c、2dとICチップ3a、3b、3c、3dを各々有する電子タグA、B、C、Dと遮蔽板4b、4c、4dを基材1上に積層配置して構成し、該電子タグおよび該遮蔽板は分離・剥離することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型電子タグに関するもので、工程管理、商品管理、物流管理などに特に好適な非接触型電子タグの構造とその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工程管理、商品管理、物流管理などでは、製造工程の途中の製品、販売用に仕入れた製品、物流での物品等にはバーコードや荷札をつけて、トレーサビリティや在庫の管理を行っていた。
【0003】
また近年では、履歴情報の記録と書換えが自由に行え、また大量の情報を保有することができるICチップとアンテナを併せ持つ非接触型電子タグ(以下、単に「電子タグ」とも呼ぶ)が注目され、実証試験や実用化が試み始められている。
【0004】
図6は、従来の電子タグによる物品管理システムを説明する図であり、物品10a、10b、10cにはそれぞれ電子タグ9a、9b、9cが貼付されている。また、物品10a、10b、10cの輸送路上の基点には制御部12を有するリーダライタ11が配置されており、リーダライタ11を通過した物品10aの電子タグ9aから物品情報を確認照合するものであり、このような物品管理システムは例えば特許文献1に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−274647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の場合、輸送路の途中で、物品に取り付けられた電子タグが脱落、破損した場合や万一、物品自体を紛失した場合は、物品情報が全て失われてしまい、追跡が不可能になるという危険性があった。
【0007】
また、工程や物品の全ての情報を1つの電子タグに一括して記録するので、それらの工程状況や履歴情報を確認・追跡する際は、リーダライタで初回工程から順次読出し照合しなければならず、工数が増加するという問題があった。
【0008】
また、その際、電子タグのICチップに履歴・処理データを入力したり、記録データを読出し照合したりする為のリーダライタを各工程あるいは各場所毎に設置しなければならず、膨大な設備投資も必要で管理コストが上がるという欠点もあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題を解消すべく、裏面に粘着層を有するシール状の電子タグを複数配置又は積層した電子タグ集合体を用いることで、管理対象とする各工程毎に該電子タグ集合体の最上層電子タグから順次、リーダライタで履歴情報を入出力し、その記録した電子タグを分離・剥離し、記録表に貼り付けなどして、各工程単位に履歴情報を確保することを可能にするものである。
【0010】
また、上記電子タグ集合体の外観は工程とともに変化することにより、また必要に応じて各電子タグの上面に文字、図柄等の可視情報を表示することにより、電子タグのICチップのデータを読出し照合しなくても電子タグ集合体の外観を目視確認するだけで工程の処理状況、進捗状況を判別可能とする。
【0011】
本発明は、アンテナと該アンテナに電気的に接続するICチップとを有する電子タグを、同一基材上に複数配置又は積層し、また該電子タグ間の通信相互干渉を防ぐため、少なくともアンテナを遮蔽する様に遮蔽板を形成することで、管理対象とする全ての処理や工程および物品の状況・履歴情報は1個の電子タグ集合体に集約し一元化管理できると共に、履歴情報の書込み、読出し照合する為のリーダライタの設置箇所を削減することが可能となり、管理の簡素化、省コスト化、効率化を図ることができる。
【0012】
本発明によれば、アンテナと、該アンテナと電気的に接続されたICチップとを有する電子タグを同一基材上に複数配置した非接触型電子タグ集合体であって、前記電子タグの少なくとも1つは、上面または下面に遮蔽板が配されてなることを特徴とする非接触型電子タグ集合体が得られる。
【0013】
本発明によれば、前記電子タグの少なくとも1つは、下面に粘着層を有することを特徴とする請求項1記載の非接触型電子タグ集合体が得られる。
【0014】
本発明によれば、前記基材または前記電子タグの少なくとも1つは、上面に可視情報が表示されていることを特徴とする請求項1または2記載の非接触型電子タグ集合体が得られる。
【0015】
本発明によれば、少なくとも管理対象処理の数と同数の前記電子タグを備えた前記非接触型電子タグ集合体を用いて、前記管理対象処理毎に、前記電子タグに電子情報を入出力して前記電子情報を一元管理すると共に、前記電子情報を入出力した電子タグを前記電子タグ集合体から分離して、個別に管理することを特徴とする非接触型電子タグ集合体の使用方法が得られる。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように本発明により、積層されたシール状の電子タグの最上層から順次、工程毎に分離・剥離していくことで、従来は物品とともに移動していた履歴情報を工程単位ごとに確実に保管でき、また、従来はICチップの履歴データを工程毎にリーダライタで読出し照合していたが、電子タグ集合体の残層状態や個々の電子タグ表面の文字、図柄表示の外観のみを目視あるいは画像処理等で確認するだけで、各工程の進捗状況や物品の処理状況が即座に判別できる。従って、物品情報の維持・管理の簡素化と、履歴・追跡調査の迅速化と共に、工程、物品などのトレーサビリィティ管理が容易かつ確実になり、管理の効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0018】
図1は、本発明の非接触型電子タグ集合体の構造を説明する図である。図1(a)〜図1(d)は、印刷工法等で形成したアンテナ2a、2b、2c、2dとICチップ3a、3b、3c、3dを各々併せ持つ電子タグA、B、C、Dと、斜線部で示す遮蔽板4b、4c、4dの外観及び基材1上への配置場所を示しており、図1(a)は最下層の電子タグA、図1(b)は下から2番目の電子タグBと遮蔽板4b、図1(c)は下から3番目の電子タグCと遮蔽板4c、図1(d)は最上層の電子タグDと遮蔽板4dをそれぞれ示す。また、図1(b)の斜線部で示す遮蔽板4b、図1(c)の斜線部で示す遮蔽板4c、及び図1(d)の斜線部で示す遮蔽板4dは、それぞれ直下層の電子タグA、電子タグB、電子タグCを電磁遮蔽するためのものである。ここでは上記の全ての電子タグ及び遮蔽板は、基材1を4等分した形状としている。
【0019】
図2は本発明の非接触型電子タグ集合体を説明する図である。図2(a)は、基材1上に上記各電子タグA→B→C→Dの順に、また上記各遮蔽板4b→4c→4dの順に積層配置した電子タグ集合体の上面図であり、電子タグ集合体の上面から見た時に電子タグA、B、C、Dは各々が互いに重ならない様に、かつ遮蔽板4b、4c、4dは他の電子タグと通信相互干渉しない様に積層配置したものである。
【0020】
本発明では、基材1上に、該基材1を4等分した形状の4枚の電子タグと3枚の遮蔽板を積層配置しているが、あらかじめ電子タグとその上面に遮蔽板を覆ったものを基材上1に上記同様に配置させてもよい。また、あらかじめ電子タグと遮蔽板を平面上に配設させた、基材1と同一サイズの一体形電子タグシートを順次積層してもよい。このように構成することにより、1回の分離・剥離作業によって電子タグと遮蔽板を同時に剥がすことが可能となる。
【0021】
更に、別の方法として、基材1、電子タグ、遮蔽板を全て同一サイズとして基材1上に電子タグと遮蔽板とを交互に重なり合う様に積層しても良く、この場合は電子タグの裏面に遮蔽板を形成しておくことで、1回の分離・剥離作業によって次層の電子タグを露出させることが可能となる。また、ベースとなる上記基材1の大きさも更に小さくできるのでより小型の電子タグ集合体が実現可能となる。
【0022】
本発明の非接触型電子タグ集合体は複数の電子タグと遮蔽板を配置している為、初期状態は図2(a)に示す通り、電子タグDが露出されていて、電子タグA、B、Cは斜線で示す電磁干渉防止用の遮蔽板4b、4c、4dでそれぞれ覆われている。なお、構造を模式的に示すため、各電子タグシートを透過して描いているが、表面には工程などを判別するための、文字あるいは図柄等の可視情報が描かれていて直下層の電子タグが透けて見えなくても良い。また、基材そのものにも文字あるいは図柄等をあらかじめ印刷しておき、各電子タグに対応する製品名や工程名を表記しておいても良い。
【0023】
また、本発明の非接触型電子タグ集合体では、4枚の電子タグと3枚の遮蔽板は下面に粘着層を有するシール状になっていて、最上層の電子タグD及び遮蔽板4dを剥がした状態を図2(b)に、上から2番目の電子タグC及び遮蔽板4cを剥がした状態を図2(c)に、上から3番目の電子タグB及び遮蔽板4bを剥がした状態を図2(d)に示す。
【0024】
図2(a)で示す初期状態では、電子タグDのみがリーダライタでデータ読み取りや書き換えが可能である。以下同様に、最上層の電子タグDと遮蔽板4dを剥がした図2(b)の状態では電子タグCのみが、上から2番目の電子タグCと遮蔽板4cを剥がした図2(c)の状態では電子タグBのみが、上から3番目の電子タグBと遮蔽板4bを剥がした図2(d)の状態では電子タグAのみが、それぞれデータ通信が可能である。
【0025】
なお、本発明の非接触型電子タグ集合体の構造では、印刷工法等で形成したアンテナと該アンテナに接続されたICチップからなる電子タグ4枚と遮蔽板3枚をあらかじめ用意し、順次積層配置した構造としたが、管理対象とする工程箇所、工程数、製品種別やデータ照合する時点等により電子タグと遮蔽板の積層数は適宜調整するのが好ましい。
【0026】
また、各電子タグの下面に仮固定用の粘着層を付加したが、本機能は本発明の効果を高めるためであり、必ずしも不可欠な機能ではない。また、該粘着層の接着剤は、例えば工程の途中、自重や衝撃等で容易に剥がれ落ちない程度の粘着力を有するものであればどんな材質でもよく、例えば両面テープを用いてもよい。
【0027】
更に、本発明では通信相互干渉防止のための遮蔽板の材質として、アルミ板を用いたが、電気的あるいは磁気的な遮蔽効果が得られるものであればどんな材質でもよく、例えば銅、ステンレス等の金属や、磁性体、誘電体などの非金属や、金属粉末を混合した樹脂等を用いてもよい。また、該遮蔽材は、少なくとも他の電子タグとの通信相互干渉を起こすことなく、個々の電子タグ内のアンテナ2a、2b、2c、2dを覆うのに足りる大きさと任意の形状、厚みを有していればよい。
【0028】
図3、図4、図5は、本発明の非接触型電子タグ集合体の使用方法を説明する図である。ここでは、例えば数千、数万個のロット単位で製造する電子部品の製造工程管理用として非接触型電子タグ集合体を用いた使用例を示している。従って、電子タグ集合体は個々の部品ではなくロット毎に添付されている。
【0029】
図3は製造工程フローチャートを示す図であり、管理対象が4工程から成る製造工程であることを示している。図4は各工程単位での作業フローチャートを示す図である。図5は各工程における電子タグ集合体の外観状態を説明する図である。
【0030】
図4に示すように、まず電子タグ集合体の初期状態では、例えばリーダライタを用いて各電子タグにロットNo.や工程名等の電子情報を必要に応じて入出力する。これと同時に、各電子タグ上面には工程名を表記して識別するのが望ましい。その後、管理対象とした各工程毎に、工程終了を確認後、実施した作業内容や数量等の履歴情報を各電子タグにリーダライタを用いてそれぞれ記録し、必要に応じて履歴情報等の電子情報をホストコンピュータに送信する。続いて、記録した電子タグを分離・剥離して工程毎に個別保管し、その後、次工程に進む。
【0031】
図5に示すように、履歴情報の入力は任意の1箇所に設置されたリーダライタで行い、(1)部材受入・部材払出工程では電子タグ5に、(2)製造工程A工程では電子タグ6に、(3)製品検査工程では電子タグ7に、(4)包装・出荷工程では電子タグ8にそれぞれ記録した後、各々の電子タグを剥がして工程毎に個別保管する。また、工程と共に非接触型電子タグ集合体の外観状態は変わっていくのでその外観を目視確認することでリーダライタでの照合確認をしなくても工程状況が即座に把握できる。なお、前工程の履歴情報を確認する際は、工程毎に個別保管された電子タグと任意の1箇所に設置された1台のリーダライタとで、いつでも容易に読出し確認することができる。
【0032】
上述の使用実施例では、管理工程数と電子タグの集合数は同一の4工程、4枚としたが、必ずしも各々を一致させる必要はなく、1枚の電子タグに複数の管理工程の履歴・情報を記録してもよい。なお、その際は各電子タグには管理対象とする工程名を表示して識別するのが望ましい。以下、実施例を用いて詳述する。
【実施例】
【0033】
基材1として、大きさ60mm×50mm角、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートを用い、該基材1の4等分の大きさ30mm×25mm角でアンテナ2a、2b、2c、2dとICチップ3a、3b、3c、3dをそれぞれ併せ持つ各電子タグA、B、C、Dと、大きさ30mm×25mm角、厚さ50μmのアルミ材の遮蔽板4b、4c、4dをそれぞれ用意し、電子タグA→電子タグB→遮蔽板4b→電子タグC→遮蔽板4c→電子タグD→遮蔽板4dの順に順次積層・配置し、本発明の非接触型電子タグ集合体を得た。また、上記の各電子タグおよびアルミ材の遮蔽板の裏面には両面テープを用いた。
【0034】
上記、実施例で作製した非接触型電子タグ集合体を用いて、電子部品の製造工程履歴管理を行った所、工程毎の前工程処理の履歴データが保管・管理でき、データ入出力・照合操作は工程近傍の1箇所に設置された1台のリーダライタで可能となり、また電子タグ集合体の外観目視のみで工程状況が容易に把握でき、工程履歴管理の簡素化、効率化を図ることができた。
【0035】
以上、実施例を用いて、この発明の実施の形態を説明したが、この発明は、これらの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、当然なしえるであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の非接触型電子タグ集合体により、工程、商品、物流等のトレーサビリティや在庫管理方法の統一化が可能となり、簡素化及び効率化に寄与する管理システムの構築が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の非接触型電子タグ集合体の構造を説明する図。図1(a)は最下層の電子タグを示す図、図1(b)は下から2番目の電子タグと遮蔽板を示す図、図1(c)は下から3番目の電子タグと遮蔽板を示す図、図1(d)は最上層の電子タグと遮蔽板を示す図。
【図2】本発明の非接触型電子タグ集合体を説明する図。図2(a)は非接触型電子タグ集合体の上面図、図2(b)は最上層の電子タグ及び遮蔽板を剥がした状態図、図2(c)は上から2番目の電子タグ及び遮蔽板を剥がした状態図、図2(d)は上から3番目の電子タグ及び遮蔽板を剥がした状態。
【図3】製造工程フローチャートを示す図。
【図4】各工程単位での作業フローチャートを示す図。
【図5】各工程における電子タグ集合体の外観状態を説明する図。
【図6】従来の電子タグによる物品管理システムを説明する図。
【符号の説明】
【0038】
1 基材
2a、2b、2c、2d アンテナ
3a、3b、3c、3d ICチップ
4b、4c、4d 遮蔽板
5、6、7、8、A、B、C、D 電子タグ
9a、9b、9c 電子タグ
10a、10b、10c 物品
11 リーダライタ
12 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナと、該アンテナと電気的に接続されたICチップとを有する電子タグを同一基材上に複数配置した非接触型電子タグ集合体であって、前記電子タグの少なくとも1つは、上面または下面に遮蔽板が配されてなることを特徴とする非接触型電子タグ集合体。
【請求項2】
前記電子タグの少なくとも1つは、下面に粘着層を有することを特徴とする請求項1記載の非接触型電子タグ集合体。
【請求項3】
前記基材または前記電子タグの少なくとも1つは、上面に可視情報が表示されていることを特徴とする請求項1または2記載の非接触型電子タグ集合体。
【請求項4】
少なくとも管理対象処理の数と同数の前記電子タグを備えた前記非接触型電子タグ集合体を用いて、前記管理対象処理毎に、前記電子タグに電子情報を入出力して前記電子情報を一元管理すると共に、前記電子情報を入出力した電子タグを前記電子タグ集合体から分離して、個別に管理することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の非接触型電子タグ集合体の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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