説明

非接触型ICカード用リーダライタ

【課題】 ICカードのインピーダンスが変動した場合であっても、ICカードと確実に通信することができる非接触型ICカード用リーダライタを提供する。
【解決手段】 搬送波をテスト用変調信号で変調した状態で、ICカード3が接近すると、当該ICカード3のインピーダの影響を受けて送信信号の振幅が変化する。リーダライタは、ICカードを検出したときは(S4:YES)、送信信号の振幅を検出し(S5)、その変調度を算出する(S6)。ここで、変調度が規定範囲であったときは(S7:YES)、通常の通信を実行し(S9)、変調度が規定範囲から外れていたときは(S7:NO)、変調度を変更する(S8)。これにより、送信信号の変調度を適切に調整した状態でICカード3と通信することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送信号を変調してなる送信信号をアンテナから非接触型ICカードに送信する非接触型ICカード用リーダライタに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触リーダライタは、電磁結合によりICカードとの通信を行い、送信を行う際は、送信信号を変調させて行うようになっている。ISO14443−2で規定されているタイプBの変調は振幅変調であり、その振幅変調度は8〜14%と規定されている。従来のリーダライタが発生する振幅変調度は、この規定範囲になるように、またはICカードの受信しやすい振幅変調度になるように設定している。
【特許文献1】特開2004−88506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、リーダライタにICカードが接近した場合、リーダライタとの電磁結合が大きくなり、その結果、リーダライタのインピーダンスマッチングがくずれ、振幅変調度が規定値から外れる場合がある。このように、振幅変調度が変わった場合は、ICカードがリーダライタの送信信号を受信できないことがある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ICカードが接近して電磁結合が大きく変動した場合であっても、ICカードと確実に通信することができる非接触型ICカード用リーダライタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明によれば、搬送信号を送信符号に応じて振幅変調すると、送信符号に応じて送信信号の振幅が変化することから、非接触型ICカードは送信信号に重畳した送信符号を読取ることができる。
ここで、振幅変調度が変動して規定範囲外になった場合は、非接触型ICカードが送信符号を正しく読取ることができない虞があることから、補正手段は、変調度変更手段により振幅変調度を変更する。これにより、送信信号の振幅変調度を規定範囲となるように補正した状態で非接触型ICカードと通信することができる。
【0005】
請求項2の発明によれば、非接触型ICカードの種別が変更となった場合は、外部指令を与えることにより新規の非接触型ICカードと正しく通信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の一実施例について図面を参照して説明する。
図1は、非接触型ICカード用リーダライタの構成を示す機能ブロック図である。この図1において、リーダライタ1は、例えばパーソナルコンピュータなどの上位装置(ホスト)2とシリアルインターフェイス等を介して接続されており、上位装置2側のアプリケーションプログラムの指示に基づいてICカード3と電波信号により通信を行うようになっている。
【0007】
即ち、リーダライタ1は、自身の通信エリアにICカード3が接近したことを検知するために、ICカード3に対する呼出しコードを間欠的に送信するポーリングを行っており(リクエスト)、ICカード3が通信エリア内に位置すると、ICカード3は、リーダライタ1が送信する信号から動作用の電力により動作し、応答信号を生成して返信するようになっている。
【0008】
CPU(変調度演算手段、補正手段に相当)4は、上位装置2とシリアル通信を行うようになっている。送信符号生成回路5は、CPU4よりシリアルに与えられる送信データを例えばNRZ(Non Return to Zero)方式で符号化して論理和回路6を介して変調信号発生回路7に出力する。
キャリア発振器8は、13.56MHzの発振信号を送信符号生成回路5及び変調部9に搬送波信号として、また、CPU4にクロック用の信号として供給する。変調部9は、搬送波を符号化された送信データによってASK(Amplitude Shift Keying)変調するようになっており、その場合の振幅変調度を後述するように調整できるように構成されている。
【0009】
CPU4は、論理和回路6を介して変調信号発生回路7と接続されている。
以上のような構成により、変調信号発生回路7には、送信符号生成回路5に加えてCPU4から送信符号が直接与えられるようになっている。この場合、CPU4から送信符号が与えられる場合は、後述するように新規のICカード3と通信開始するときである。
変調部9で変調された被変調信号は、送信フィルタ10を介してアンテナ11に出力され、電波信号として外部に送信される。
【0010】
ここで、送信フィルタ10の出力側は振幅検出回路(振幅検出手段に相当)12と接続されている。この振幅検出回路12は、後述するように送信フィルタ10から出力される送信信号の振幅を求めてCPU4へ出力する。
さて、変調度変更回路(変調度変更手段に相当)13は、CPU4からの指令に応じて後述するように変調信号発生回路7による振幅変調度を変更する。
【0011】
一方、ICカード3側より送信された信号をアンテナ11が受信すると、その受信信号は受信回路14に出力されるようになっている。受信回路14で復調され、復号化された受信データはCPU4に出力される。
【0012】
図2は、変調信号発生回路7及び変調度変更回路13の一例を示す電気回路図である。この図2において、変調度変更回路13は、マルチプレクサ15の複数の入力端子に異なる抵抗値の抵抗16を接続し、CPU4からの指令に応じてマルチプレクサ15で複数の抵抗16のうちから所定の抵抗16を択一的に選択するようになっている。変調信号発生回路7は、抵抗17とトランジスタ18との直列回路からなり、変調部9として機能するトランジスタ18のベースが変調度変更回路13のマルチプレクサ15の出力端子と接続され、変調度変更回路13により選択された抵抗16によりトランジスタ18のベース電流を制御するようになっている。
【0013】
さて、リーダライタ1のキャリア発振器8が発生する搬送波に対して変調信号で振幅変調させることにより送信信号をアンテナ11から送信することができる。
ところで、送信信号の振幅変調度は、所定の規定範囲内となっている必要があるものの、ICカードのインピーダンスがICカード3の種別毎に異なっているという事情下では、規定範囲から外れていることがある。
【0014】
このように搬送波の変調度が規定範囲から外れた場合は、ICカード3との通信に支障が生じることから、本実施例では、次のようにして変調度が規定範囲となるように調整した状態でICカード3と通信するようにした。
図3は、リーダライタ1の動作のうち、本発明に関連した動作を示している。尚、この図3は、上位装置2からの指令に応じて変調度を調整する場合のフローチャートを示している。
【0015】
リーダライタ1のキャリア発振路8は搬送波を発生してから(S1)、変調度変更回路13の初期変調度を設定する(S2)。この初期変調度とは、変調度変更回路13のマルチプレクサ15の入力側に接続された複数の抵抗16のうち中間の抵抗16を選択することである。つまり、送信信号の変調度を調整可能な範囲の中間に調整することを意味する。
【0016】
次に、CPU4はテスト用変調信号を出力する(S3)。このテスト用変調信号は、送信符号生成回路5から出力される通常の変調信号(106KHz、図4参照)に比較して周波数が低くなっており(図5参照)、送信符号生成回路5に代えてCPU4から直接出力されるようになっている。これは、後述するように送信信号の振幅に基づいて変調度を検出するために時間を要することから、CPU4の自己の検出能力に合わせて変調信号を出力するようになっているからである。
一方、振幅検出回路12は送信信号の振幅を検出している。
【0017】
さて、ICカード3をリーダライタ1に接近すると、ICカード3がCPU4からのポーリングに対して応答するので、CPU4は、その応答に基づいてICカード3が通信エリアに位置したことを検出することができる(S4:YES)。このようにリーダライタ1とICカード3とが通信状態となったときは、送信信号の変調度は、ICカード3のインピーダンスの影響を受けた値となる。
【0018】
そして、CPU4は、ICカード3の存在を検出したときは、振幅検出回路12が検出した振幅に基づいて変調度を算出する(S6)。つまり、図4に示すように送信信号の最大振幅V1と最小振幅V2とから、(V1−V2)/(V1+V2)より変調度を求めるのである。尚、このテストモード時は、図5に示すように周波数が小さな変調信号で変調された送信信号の変調度を求めていることになる。
【0019】
このようにして求めた変調度が規格範囲(8〜14%)である場合には(S7:YES)、送信符号生成回路5から変調信号を生成してICカード3との通信を実行する(S9)。つまり、CPU4は、送信符号を送信符号生成回路5に出力するので、送信符号生成回路5からは所定周波数の変調信号が論理和回路6を通じて変調信号発生回路7に出力される。これにより、搬送波が変調信号により変調されるので、所定の変調度の送信信号としてアンテナ11から送信され(図4参照)、ICカード3と正常に通信することができる。
【0020】
一方、変調度が規定範囲を外れた場合は(S8:NO)、変調度変更回路13に対して変調度を変更するように指示する(S8)。この場合、変調度が規定範囲を上回っているのか、下回っているのかにより、変調度を低下させるのか、高めるのかを決定することができ、それに基づいて送信信号の変調度を適切に変更することができる。これにより、変調信号発生回路7により変調度が適切となるように変更されるので、ステップS5に移行することにより振幅を検出すると共に、その振幅に基づいて変調度を算出し(S6)、変調度が規定範囲かを再度判断し(S7)、その判断結果に応じて上述のように通常の通信を実行したり、変調度を変更したりする。
【0021】
このような実施例によれば、ICカード3に対する送信信号の変調度が規定範囲から外れている場合は、変調度を変更することにより変調度が規定範囲となるようにしたので、ICカード3と正常に通信することができる。従って、ICカード3は、リーダライタ1からの送信信号を確実に受信することができる。
しかも、送信信号の変調度を検出する場合は、通常の送信符号の周波数よりも小さな周波数で搬送波を変調するようにしたので、CPU4の検出能力が低くとも、送信信号の振幅を確実に検出することができる。
【0022】
本発明は、上記実施例に限定されることなく、次のように変形または拡張できる。
上記実施例では、CPU4によりテスト用の送信符号を出力するのに代えて、テスト用の送信符号を出力する送信符号生成回路を設けるようにしてもよい。
CPU4で送信信号の変調度を演算するのに代えて、送信信号の変調度を求める演算回路を設け、論理和回路6を省略するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例を示すリーダライタの機能ブロック図
【図2】変調信号発生回路及び変調度変更回路を示す電気回路図
【図3】CPUの動作を示すフローチャート
【図4】通常状態時の送信信号波形を示す図
【図5】テストモード時における図4相当図
【符号の説明】
【0024】
図面中、1はリーダライタ、4はCPU(変調度演算手段、補正手段)、12は振幅検出回路(振幅検出手段)、13は変調度変更回路(変調度変更手段)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送信号を送信符号に応じて振幅変調してなる送信信号を非接触型ICカードに送信する非接触型ICカード用リーダライタにおいて、
前記送信信号の振幅を検出する振幅検出手段と、
この振幅検出手段が検出した振幅に基づいて前記送信信号の振幅変調度を演算する変調度演算手段と、
前記送信信号の振幅変調度を変更する変調度変更手段と、
前記変調度演算手段が演算した振幅変調度が所定の規定範囲を外れた場合は、当該規定範囲となるように前記変調度変更手段を変更することにより振幅変調度を補正する補正手段とを備えたことを特徴とする非接触型ICカード用リーダライタ。
【請求項2】
前記補正手段は、外部からの指令に応じて振幅変調度を補正することを特徴とする請求項1記載の非接触型ICカード用リーダライタ。
【請求項3】
前記所定条件は、振幅変調度が8〜14%であることを特徴とする請求項1または2記載の非接触型ICカード用リーダライタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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