説明

非接触式データキャリアにおいて電力供給中断時間情報を生成する方法

RFIDタグのようなデータキャリア(1)の集積回路(2)の不適切な電力供給に関して重要な切断時間情報(DTI)を決定する方法が開示される。切断時間情報(DTI)は、第1の蓄積キャパシタ(C1)の放電性質に基づいて決定され、これはIC材料及び放射により影響を受け、決定された切断時間情報(DTI)は、IC材料の効果及び/又は少なくとも1つの放射効果に依存して補正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、切断期間に関して重要である切断時間情報を決定する方法であって、前記切断期間において通信パートナ装置との非接触式通信用に設計されたデータキャリアの集積回路が電力供給フィールド(power supply field)によって電力を適切に供給されておらず、前記集積回路が適切に電力供給されている間に前記集積回路の少なくとも1つの第1の蓄積キャパシタが充電され、前記少なくとも1つの蓄積キャパシタが、前記集積回路がこの後にもはや適切に電力供給されなくなる第1の開始時間から放電される当該方法に関する。
【0002】
本発明の分野は更に、通信パートナ装置との非接触式通信用に設計されたデータキャリアの集積回路であって、前記集積回路が電力供給フィールドによって電力を適切に供給されている間に前記集積回路の少なくとも1つの第1の蓄積キャパシタを充電する第1の充電回路を有し、かつ前記集積回路がもはや適切に電力供給されない第1の開始時間から前記蓄積キャパシタを放電する第1の放電回路を有する当該集積回路に関する。
【0003】
本発明の分野は更に、通信パートナ装置との非接触式通信用のデータキャリアであって、前の段落に記載された集積回路を備えた当該データキャリアに関する。
【背景技術】
【0004】
このタイプの方法、集積回路及びデータキャリアは、例えば米国特許公開公報US2003/0112128(Littlechild他)から既知である。しばしばトランスポンダ又はタグと称される既知のデータキャリアは、リーダ端末(reader station)との非接触式通信用のパッシブデータキャリアとして設計され、前記リーダ端末は、ここでいわゆる“トンネルリーダプログラマ(tunnel reader programmer)”(TRP)として設計され、前記データキャリア又は前記集積回路をそれぞれ電力供給するのに使用される電力供給フィールドを備える。前記データキャリアは、更に、タイムスタンプ番号、識別番号、構成情報又は少なくとも前記データキャリアの電力又は電圧供給の一時的な切断の間持続するべきである規定の期間に対する他の一時データを記憶するように更に設計される。このような一時的な切断は、例えば、前記データキャリアが第1のTRPから第2のTRPに切り替える場合に生じる可能性がある。
【0005】
複数のこのタイプのデータキャリア又はトランスポンダが同時にTRPの通信領域内にある場合、いわゆるインベントリプロセスにおいて通信衝突が起こり得、前記データキャリアの多くが同時に応答する場合に−前記インベントリプロセスにおいて前記TRPは、各データキャリアに記憶された識別番号IDを前記TRPに送信するように前記データキャリアに指示する。この問題に対抗するため、前記TRPが、既にインベントリされたデータキャリアをいわゆるミュート状態に切り替えることができ、これによりミュートコマンドが前記既にインベントリされたデータキャリアに送信され、この場合、ミュートビットが前記既にインベントリされたデータキャリアにセットされ、記憶されることが与えられる。ミュートビットがセットされた場合、前記既にインベントリされたデータキャリアは、もはや前記TRPによる新たなインベントリ試行に反応しない。
【0006】
前記データキャリアが適切に電力を供給されていない切断期間に関して重要である切断時間情報を決定するためにここで使用される方法は、前記データキャリア又は前記データキャリアの前記集積回路に組み込まれた蓄積キャパシタの放電プロセスに基づく。通常動作において、即ち前記パッシブデータキャリアの中断されない電力又は電圧供給を用いて、前記蓄積キャパシタは、充電トランジスタを介して連続的に充電され、前記蓄積キャパシタは、したがって、前記充電トランジスタを介して前記パッシブデータキャリアの電源又は電圧源に連続的に接続される。前記電圧源の電圧が前記電力供給フィールドの一時的な切断のために減少される場合、前記充電トランジスタによる前記蓄積キャパシタの電力供給は中断され、前記蓄積キャパシタの放電が、放電回路を介する規定の放電電流で開始される。蓄積キャパシタの放電を支配する既知の物理法則を使用して、前記切断情報は、前記電力供給フィールド及びしたがって前記電圧供給が回復される場合に前記蓄積キャパシタにおける電圧が論理状態“1”又は論理状態“0”に対応するかどうかを監視することにより、容易に得られることができる。これに依存して、識別番号、ステータスビット等のようなデータであるRAMに一時的に記憶されたデータは、前記蓄積キャパシタにおける電圧が論理状態“1”と論理状態“0”との間の境界に達するのに必要とする時間より長くステータス情報が前記RAMに記憶されるという規定によって有効又は無効である。
【0007】
幾つかの重要な応用例において、データキャリアが前記電力供給フィールドの短い一時的な切断時にセットされたミュートビット又は前記ミュート状態を“覚えている”ことが必要であるが、しかしながら、前記ミュートビットは、あるリーダ端末から他のリーダ端末への切り替えの後にもはや記憶され又は覚えられているべきでなく、前記切り替えは、前記電力供給フィールドの比較的長い切断を含み、この結果、前記データキャリアが前記他のリーダ端末のインベントリプロンプトに応答することができる。前記既知のデータキャリアは、この応用例において効率的に使用されることができず、これは重大な欠点である。
【0008】
前記既知のデータキャリアの他の不利点は、前記蓄積キャパシタの容量が、前記電力供給フィールドの一時的な切断のより長い期間を監視するために比較的高くなければならず、したがって前記蓄積キャパシタがより大きくなくてはならず、これは前記データキャリア又は前記データキャリアの前記集積回路内の前記蓄積キャパシタの空間要件に対して特に不利な効果を持つという事実にある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述の不利な状態を取り除き、通信パートナ装置との非接触式通信用に設計されたデータキャリアに対する改良された方法、及び改良された集積回路、並びに通信パートナ装置との非接触式通信用に設計された改良されたデータキャリアを作製することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するために、本発明によるフィーチャが本発明による方法に備えられ、この結果、本発明による方法は、以下のように特徴付けられることができる。
【0011】
本発明による方法は、通信パートナ装置との非接触式通信用に設計されたデータキャリアの集積回路が電力供給フィールドによって電力を適切に供給されていない切断期間に関して重要である切断時間情報を決定する方法であり、前記集積回路が適切に電力供給されている間に前記集積回路の少なくとも1つの第1の蓄積キャパシタが充電され、前記集積回路がこの後にもはや適切に電力供給されなくなる第1の開始時間から前記第1の蓄積キャパシタが放電され、前記切断時間情報が、IC材料及び放射(radiation)により影響を受ける、前記少なくとも1つの蓄積キャパシタの放電性質に基づいて決定され、前記決定された切断時間情報が、前記IC材料の効果及び/又は少なくとも1つの放射効果に依存して補正される。
【0012】
上述の目的を達成するために、本発明によるフィーチャが本発明によるデータキャリア用の集積回路に備えられ、この結果、本発明による集積回路は、以下のように特徴付けられることができる。
【0013】
通信パートナ装置との非接触式通信用に設計されたデータキャリアの集積回路は、前記集積回路が電力供給フィールドによって電力を適切に供給されている間に前記集積回路の少なくとも1つの第1の蓄積キャパシタを充電する第1の充電回路を有し、前記集積回路がもはや適切に電力供給されなくなる第1の開始時間から前記少なくとも1つの蓄積キャパシタを放電する第1の放電回路を有し、前記少なくとも1つの蓄積キャパシタの放電性質が、IC材料及び少なくとも1つの放射効果により影響を受け、前記集積回路が、前記集積回路が電力を適切に供給されていない切断期間に関して重要である切断時間情報を決定する手段を有し、前記切断時間情報が、前記IC材料及び放射により影響を受ける前記少なくとも1つの第1の蓄積キャパシタの放電性質に基づいて決定され、この結果、前記切断時間情報が決定時間から得られることができ、前記集積回路は、前記IC材料の効果及び/又は前記少なくとも1つの放射効果に依存して前記決定された切断時間情報を補正する手段を有する。
【0014】
上述の目的を達成するために、本発明によるフィーチャが本発明によるデータキャリアに備えられ、この結果、本発明によるデータキャリアは、以下のように特徴付けられる。
【0015】
通信パートナ装置との非接触式通信用のデータキャリアは、本発明による集積回路を備える。
【0016】
本発明によるフィーチャの提供は、前記データキャリアが、例えば、リーダ端末としてセットアップされた通信パートナ装置の電力供給フィールドの短い一時的な切断の間にセットされたミュートビット又は前記ミュート状態を記憶し、前記ミュートビットが、あるリーダ端末から他のリーダ端末への切り替えの後にもはや記憶されず、前記切り替えが前記電力供給フィールドの比較的長い切断を含み、この結果、前記データキャリアが、例えば、前記他のリーダ端末のインベントリプロンプトに反応及び応答することができるという有利かつ容易に達成される結果を持つ。これは、前記データキャリアが電力を適切に供給されていない切断期間に関して重要である切断時間情報の決定により達成される。本発明による方策の更に特定の利点は、前記少なくとも1つの第1の蓄積キャパシタが比較的低い放電電流により放電され、したがって比較的低い容量のみを要し、したがって集積回路に実装される場合に小さな空間のみを要するという事実、及び前記切断期間が非常に正確に決定されることができるという事実にある。
【0017】
このような切断時間情報は、決定時間においてアナログ/デジタル変換器によって前記少なくとも1つの第1の蓄積キャパシタの放電電圧をデジタルで測定し、前記決定時間の後に前記データキャリアがもう一度適切に電力を供給され、次いで、前記IC材料の効果が前記データキャリアに記憶されたICプロセスパラメータの形式で考慮に入れられ、加えて現在のIC温度が必要であれば測定され、考慮に入れられることができる場合に、前記蓄積キャパシタの放電性質を支配する既知の物理法則により前記切断期間を計算することにより決定されることができる。
【0018】
請求項2又は請求項6による方策がそれぞれ追加で備えられる場合に特に有利であることが見いだされている。これらは、前記切断時間情報が特に単純な様式で得られることができるという利点と、特に、前記放電プロセスを決定するオーム抵抗値の変化を生じる規定の温度変化のような少なくとも1つの放射効果及び前記IC材料の効果に依存する前記切断時間情報の補正が、前記効果が前記第1の蓄積キャパシタ及び第2の蓄積キャパシタの両方に影響を与え、したがって平均化し、この結果、補正された切断時間情報が直ちに得られるので、自動的に達成されるという利点とを提供する。
【0019】
請求項3又は請求項7による方策がそれぞれ追加で備えられる場合に特に有利であることが見いだされている。これらは、1つの蓄積キャパシタのみを用いて“短い”又は“長い”切断期間に対して前記切断時間情報を決定する特に単純な機会を提供し、これは、前記集積回路の適切な電力供給が回復された比較的すぐ後に実際に達成されることができる。
【0020】
請求項4による方策の結果として、前記データキャリアの通信性質が、例えば通信端末又はリーダ端末を介するインベントリプロセスにおいて改良される。
【0021】
請求項8による方策は、前記集積回路の適切な電力供給が回復された比較的すぐ後に前記切断時間情報が決定されることができるという利点を提供する。
【0022】
請求項9による方策は、特に、上で言及された効果が、前記第1の蓄積キャパシタ及び前記第2の蓄積キャパシタの両方に同じように影響を与えることを好都合に保証する。
【0023】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施例を参照して説明され、明らかにされる。
【0024】
本発明は、図面に示された実施例を参照して以下に更に記載されるが、しかしながら、本発明は前記実施例に限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、単純化した形でデータキャリア1を示し、データキャリア1は、ここに図示されていない通信パートナ装置又はリーダ端末との非接触式通信用のパッシブデータキャリアとして設計される。これに関して、このようなデータキャリア1が複数の他の機能ブロックを組み込むことが専門家の中で広く知られていることは指摘されるべきであり、前記他の機能ブロックは明確化及び単純化のために図示されないが、それでもデータキャリア1の動作には必要とされる。
【0026】
データキャリア1は、集積回路2と転送手段3とを有する。集積回路2は、送受信手段4を有し、送受信手段4は、転送手段3に接続され、前記リーダ端末と通信する、即ちデータを送受信するのに不可欠な全ての要素を含む。送受信手段4のより詳細な説明は、前記リーダ端末との通信のモードと一緒に、国際特許出願公開公報WO02/11054Aにおいて見つけられることができ、これの開示は、この点に関して含まれると見なされる。
【0027】
集積回路2は、送受信手段4に接続され、かつ前記公報WO02/11054Aから既知のように供給電圧Vを生成及び出力するように設計された整流器手段5を更に有する。
【0028】
集積回路2は、プロセス制御手段6及び記憶手段7を更に有し、プロセス制御手段6は、既知の様式のマイクロコンピュータ(図示されない)により表され、既知の様式で記憶手段7と協働し、これにより記憶手段7のコンテンツは、前記マイクロコンピュータの助けで処理されることができる制御コマンドを含む。プロセス制御手段6が配線論理回路により表されることができるとここで述べられることができる。
【0029】
プロセス制御手段6は、更に送受信手段4に接続され、受信されたデータを処理し、生成又は処理されたデータを送受信手段4に出力するように設計される。
【0030】
集積回路2は、第1の充電回路8と、第1の蓄積キャパシタC1と、第1の放電回路9と、第2の充電回路10と、第2の蓄積キャパシタC2と、第2の放電回路11と、比較器手段12と、電源オン・リセット段13とを更に有し、これらの要素は、後の段落でより詳細に説明される。
【0031】
上述のように、データキャリア1は、パッシブデータキャリアとして設計され、したがって、整流器手段5に関連して上で説明されたように前記リーダ端末の電力供給フィールドから供給電圧を生成する。
【0032】
本発明による切断時間情報を決定するプロセスは、図3を参照して以下に説明される。
【0033】
データキャリア1が前記リーダ端末の前記電力供給フィールドに配置され、例えば前記公報WO02/11054に記載されたようなインベントリプロセスに関与すると仮定する。データキャリア1が記憶手段7に記憶されたデータを前記リーダ端末に既に送信したと更に仮定する。この場合、前記リーダ端末がミュートコマンド又は静粛コマンドを送信すると、データキャリア1は記憶手段7においてミュートビット14をセットする。ミュートビット14をセットした結果として、データキャリア1は、もはや前記リーダ端末のインベントリプロンプトに応答せず、前記インベントリプロンプトは、この他のデータキャリアに回答し、インベントリを完了するように指示するために、前記リーダ端末により送信される。
【0034】
この場合、プロセス制御手段6は、ミュートビット14がセットされる間に、第1の充電回路8に第1の蓄積キャパシタC1を充電させ、ここで第1の充電回路8は、この場合、バイポーラトランジスタ回路により表され、第1の蓄積キャパシタC1を供給電圧Vから電圧U0に充電する。第1の充電回路8がCMOS回路又はFET回路により代替的に表されることができることが、ここで述べられるべきである。供給電圧Vが整流器手段5により一定に保たれることが更に述べられるべきである。
【0035】
データキャリア1に対する電力供給フィールドが、例えばフィールド消滅(field extinction)のため、短時間だけ機能しなくなり、したがって、もはや適切な電力供給が存在せず、図4における第1の時間図に示されるように、集積回路2がもはや適切に電力を供給されない第1の切断期間DT1が、第1の開始時間t1から第2の開始時間t2まで持続すると仮定する。このような切断期間は、例えば1秒だけ持続することができ、しかしながら、より短く、例えば100ミリ秒であってもよく、又はより長く、例えば10秒であってもよい。
【0036】
第2の開始時間t2から、電力供給はもう一度適切になり、再び確立された供給電圧Vにより反映された状態である。第2の開始時間t2における供給電圧Vの上昇は、整流手段5に接続された電源オン・リセット段13にリセット信号PORをプロセス制御手段6に出力させ、とりわけ、プロセス制御手段6に第2の充電回路10を作動させる。第1の充電回路8と同様に、第2の充電回路10はここでバイポーラトランジスタ回路により表され、プロセス制御手段6により作動されると、第2の蓄積キャパシタC2を供給電圧Vから電圧U0に充電することができる。第2の蓄積キャパシタC2は、図3における第2の時間図に示されるように、第3の開始時間t3まで充電される。第2の蓄積キャパシタC2の充電プロセスが比較的速いことが可能であり、この結果、第3の開始時間t3が仮想的に直ちに第2の開始時間t2の後に続くことが、更に述べられるべきである。
【0037】
第1の開始時間t1から、第1の蓄積キャパシタC1は、第1の放電回路9によって放電され、第1の放電回路9は、ここでリーク電流回路又はリーク電流ドレインにより表される。第1の蓄積キャパシタC1は、したがって、リーク電流の助けで放電される。この場合、前記リーク電流ドレインは、FETのゲートにより表される。
【0038】
プロセス制御手段6は、同様に、第1の蓄積キャパシタC1が第2の開始時間t2においてリセット信号PORの発生の後に続いて第1の充電回路8によって再び充電されないように構成され、これは、第1の蓄積キャパシタC1が着実に放電され続けることを意味する。
【0039】
第3の開始時間t3から前方へ、第2の蓄積キャパシタC2も第2の放電回路11によって放電され、第2の放電回路11はここで同様にリーク電流回路又はリーク電流ドレインにより表される。第2の蓄積キャパシタC2は、したがって、リーク電流の助けで放電される。この場合、第2の蓄積キャパシタC2に対する前記リーク電流ドレインもFETのゲートにより表される。
【0040】
これに続いて、プロセス制御手段6は、期間TPRだけ第3の開始時間t3から離れた決定時間t4において切断時間情報DTIの決定を開始し、切断時間情報DTIは、切断期間DT1に関して重要である。この場合、比較器手段12は決定時間t4において作動され、比較器手段12は、決定時間t4に存在する第1の蓄積キャパシタC1の放電電圧と第2の蓄積キャパシタC2の放電電圧とを比較し、比較の結果に依存して切断時間情報DTIを決定し、プロセス制御手段6に組み込まれた決定手段15に切断時間情報DTIを出力する。図3の第2の時間図が示すように、第1の蓄積キャパシタC1の放電電圧は、決定時間t4において第2の蓄積キャパシタC2の放電電圧より高い。決定手段15に送られた切断時間情報DTIは、したがって、“短い”切断期間DT1が存在したという情報を含み、この結果、決定手段15は、データキャリア1が前記リーダ端末のインベントリ要求に応答又は反応することを防ぐ。
【0041】
他の応用例は、データキャリア1に対する欠陥のない電力供給が、例えば1つのリーダ端末から他のリーダ端末へのデータキャリア1の局所的転送のため、比較的長い期間利用可能でなく、したがって、もはや適切な電力供給が存在せず、図4の第3の時間図に示されるように、集積回路2がもはや適切に電力を供給されない第2の切断期間DT2が、第1の開始時間t1から第2の開始時間t2まで持続するという仮定に基づく。このような切断期間は、例えば、10秒間持続することができるが、しかしながら、大幅に長く、例えば数分又は数時間持続してもよい。
【0042】
この場合、切断時間情報DTIは、切断期間DT1の識別に対して直ぐ上に記載されたプロセスとの類推により決定される。
【0043】
図3における第4の時間図が示すように、第1の蓄積キャパシタC1の放電電圧は、決定時間t4において第2の蓄積キャパシタC2の放電電圧より低い。結果として、決定手段15に出力された切断時間情報DTIは、“長い”切断期間DT2が存在したという情報を含み、この結果、決定手段15は、データキャリア1が前記他のリーダ端末のインベントリプロンプトに応答又は反応することを可能にする。
【0044】
切断期間DT1及びDT2に関する上述の2つの場合に、第1の蓄積キャパシタC1は約10ピコファラッド(pF)の容量を持ち、第2の蓄積キャパシタC2は第1の蓄積キャパシタC1の容量の10分の1のみ、即ち1ピコファラッド(pF)を持つ。前記リーク電流ドレインは、両方の場合において、第1の蓄積キャパシタC1及び第2の蓄積キャパシタC2の両方を同じリーク電流レベルで放電するように設計される。第1の蓄積キャパシタC1及び第2の蓄積キャパシタC2が同じ容量を持つことができ、この場合、前記リーク電流ドレインが第1の蓄積キャパシタC1及び第2の蓄積キャパシタC2を異なるリーク電流レベルで放電するように設計されなければならないことが述べられるべきである。異なるリーク電流ドレインは、例えば、それぞれ1つのFETの上述のゲートの異なるサイジングにより実施されることができる。
【0045】
図2は、データキャリア1と同様なデータキャリア16を示し、データキャリア16は、大部分について集積回路2と同じ参照番号により識別される同じ要素を組み込んだ集積回路17を有する。比較器手段12は、ここで図4における第4の時間図に示される交差時間t5を決定するように設計又は構成され、交差時間t5において第1の蓄積キャパシタC1の放電電圧が、第2の蓄積キャパシタC2の放電電圧に等しい。プロセス制御手段6は、測定手段18及び計算手段19を追加で備える。交差時間t5が到達される場合、比較器手段12は、、トリガ信号TSを測定手段18に出力し、トリガ信号TSは第3の開始時間t3から測定手段18により開始された時間測定を終了又は停止し、測定手段18に測定期間TBを決定させ、この測定期間TBが第3の開始時間t3において開始し、交差時間t5において終了する。測定期間TBは、測定手段18により計算手段19に出力される。計算手段19は、第1の蓄積キャパシタC1及び第2の蓄積キャパシタC2の放電プロセスの関係から及び既知の物理法則からそれぞれ切断期間DT1又はDT2を、第2の蓄積キャパシタC2の容量に対する第1の蓄積キャパシタC1の容量の−ユニティ(1)だけ減少された−比と測定時間TBとの積として計算するように構成される。この場合、決定手段15は、それぞれ切断期間DT1又はDT2の計算された値を記憶手段7に記憶された比較値と比較し、これに依存して、“長い”期間が存在するか又は“短い”期間が存在するかを決定するように設計される。
【0046】
この時点で、第2の蓄積キャパシタC2の容量が小さいほど、結果として第1の蓄積キャパシタC1の放電曲線と第2の蓄積キャパシタC2の放電曲線との“より傾きの大きい”交差(交点)を生じるので、交差時間t5及びしたがって測定期間TBがより正確に確立又は決定されることができることは記載されるべきである。これに加えて、図2を参照して上で述べられた前記切断期間の識別は、前記IC材料の影響及び例えば温度又は光のような少なくとも1つの放射の効果と独立に高度に好都合に行われ、したがって比較的正確である。異なるリーク電流の効果のこのような相互関係は、図6及び図7により図示される。図6は、図4の第2の時間図と同様な第1の蓄積キャパシタC1及び第2の蓄積キャパシタC2の放電の計算された時系列順の電圧曲線を示す。この計算は、5のC1/C2比に基づく。単位は任意である。
【0047】
これに加えて、図6及び図7は、リーク電流I1、I2及びI3の電圧曲線に対する異なるリーク電流の依存性又は効果をそれぞれ示す。図6は“短い”切断期間DT1を示し、図7は“長い”切断期間DT2を示す。前記電圧曲線の交差時間t5が各リーク電流において常に同じ時点であることは、特に指摘されるべきである。
【0048】
データキャリア1の集積回路2及びデータキャリア16の集積回路17が、それぞれ異なる容量の第1の蓄積キャパシタC1及び第2の蓄積キャパシタC2を有する異なるキャパシタ対を含むことができ、この結果、前記異なるキャパシタ対は異なる切断期間DTを確立又は決定するのに使用されることができることが、更に述べられることができる。これは、このような切断期間DTを確立又は決定する精度を更に向上し、より大きな時間範囲をカバーすることができる。この場合、プロセス制御手段6は、決定されるべき各切断期間DTに対して適切なキャパシタ対を選択するように設計され、この場合、このキャパシタ対を用いて、切断期間DTが、図1を参照して上で述べられたように決定される。
【0049】
図3は、データキャリア1と同様なデータキャリア20を示し、データキャリア20は、大部分について集積回路2と同じ参照番号により識別される同じ要素を組み込んだ集積回路21を有する。これに加えて、A/D変換器22及び温度センサ23が備えられる。プロセス制御手段6は、決定手段24及び補正手段25を更に組み込んでいる。A/D変換器22は、第1の蓄積キャパシタC1に接続され、第1の蓄積キャパシタC1の電圧を測定し、デジタル化された電圧レベル信号を決定手段24に出力するように設計される。
【0050】
切断時間情報DTIの決定のために、少なくとも1つの蓄積キャパシタC1の放電電圧が、決定時間t2においてA/D変換器22によってデジタルで測定され、決定時間t2の後に、データキャリア20は、もう一度適切に電力を供給され、この後に前記切断期間が、前記蓄積キャパシタの放電性質を支配する既知の物理法則により決定手段24の助けで計算される。このように決定された切断時間情報DTIは、次いで、記憶手段7の補正値メモリ領域26に記憶された補正値を使用して、補正手段25において補正され、前記補正値は前記IC材料の効果、したがって第1の蓄積キャパシタC1の放電性質を考慮に入れる。必要であれば、現在のIC温度が温度センサ23を用いて更に測定されることができ、前記測定された温度値は、補正手段25に出力されることができ、これにより補正手段25は、切断時間情報DTIを補正する場合にこの温度値を考慮に入れる。この場合、決定手段15は、この切断時間情報DTIを記憶手段7に記憶された比較値と比較し、これに依存して、データキャリア20の通信性質に影響を与える作用をセットする又は更なる決定を行うように設計される。
【0051】
図1を参照して説明されたものと同様な、“短い”又は“長い”切断期間に関する1つの情報アイテムのみを有する比較的単純な切断時間情報DTIは、ここで図5を参照して図示されるデータキャリア20における修正された形式でも可能である。単純化のため、図5に示される時間図は、図4のものと同じ時間又は開始時間を特徴とする。
【0052】
図5の第2の時間図が示すように、第1の蓄積キャパシタC1は開始時間t1から放電される。上で言及された修正されたデータキャリア20において、プロセス制御手段6は、第2の開始時間t2において、即ちデータキャリア20の適切な電力供給の再確立の直ちに後に続いて、第1の蓄積キャパシタC1を再充電するように設計される。第3の時間t3から、充電された第1の蓄積キャパシタC1はもう一度放電され、このプロセスが決定時間t4まで行われる。決定手段24は、ここで、第2の開始時間t2及び決定時間t4においてA/D変換器22の助けで第1の蓄積キャパシタC1の放電電圧を決定及び比較するように設計される。図5において、第2の開始時間t2において決定された放電電圧はUxとして識別され、決定時間t4において決定された放電電圧はUyとして識別される。図5の第1及び第2の時間図に示される場合において、UxとUyとの間の比較は、UxがUyより大きいことを示す。結果として、切断期間DT1が“短い”という情報を切断時間情報DTIとして決定手段15に出力する。図5の第3及び第4の時間図に示される場合において、UxとUyとの間の比較は、UxがUyより小さいことを示す。結果として、決定手段24は、切断期間DT2が“長い”という情報を切断時間情報DTIとして決定手段15に出力する。
【0053】
前記蓄積キャパシタが充電されている時間におけるU0の変化又は変動が、関連した時間においてU0を測定することにより考慮に入れられることができ、これから前記切断期間に対する補正値が、必要であれば計算されることができることは、述べられるべきである。
【0054】
この点において、放射という用語が、熱放射、光放射、イオン放射、放射能の放射等のような異なるタイプの放射を含むことが、更に述べられるべきである。放射は本発明によるデータキャリア及び集積回路に外部から影響を与えることができる。放射は、内部損失により生じた熱放射のように内部で生成されることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明によるデータキャリア、本発明による集積回路を組み込んだデータキャリアの関連する部分の概略的なブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施例によるデータキャリアの関連する部分の概略的なブロック図である。
【図3】本発明の第3の実施例によるデータキャリアの関連する部分の概略的なブロック図である。
【図4】図1による蓄積キャパシタの電気的放電電圧の発生を時間に関して示し、前記放電電圧が本発明による電力供給切断時間情報の決定において使用される、概略的な信号/時間図である。
【図5】図3による蓄積キャパシタの電気的放電電圧の発生を時間において示し、前記放電電圧が本発明による電力供給切断時間情報の決定において使用される、概略的な信号/時間図である。
【図6】図4による詳細な信号/時間図である。
【図7】図4による詳細な信号/時間図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信パートナ装置との非接触式通信用に設計されたデータキャリアの集積回路が電力供給フィールドによって適切に電力を供給されていない切断期間に関して重要である切断時間情報を決定する方法において、前記集積回路が適切に電力供給されている間に前記集積回路の少なくとも1つの第1の蓄積キャパシタが充電され、前記少なくとも1つの第1の蓄積キャパシタが、前記集積回路がこの後にもはや適切に電力供給されない第1の開始時間から放電され、前記切断時間情報が、IC材料及び放射により影響を受ける前記少なくとも1つの第1の蓄積キャパシタの放電性質に基づいて決定され、前記決定された切断時間情報が、前記IC材料の効果及び/又は少なくとも1つの放射効果に依存して補正される方法。
【請求項2】
前記切断時間情報が、前記少なくとも1つの第1の蓄積キャパシタの放電性質に基づいて、及び前記集積回路の第2の蓄積キャパシタの放電性質に基づいて決定及び補正され、前記少なくとも1つの第1の蓄積キャパシタの新たな充電が、前記第1の開始時間の後に続く第2の開始時間から防止され、前記第2の開始時間から決定時間まで適切な電力供給が再確立され、前記第2の蓄積キャパシタが前記第2の開始時間から充電され、前記第2の蓄積キャパシタが前記第2の開始時間の後に続く第3の開始時間から放電され、前記少なくとも1つの第1の蓄積キャパシタの放電電圧が、前記第3の開始時間の後に続く前記決定時間において前記第2の蓄積キャパシタの放電電圧と比較され、前記切断時間情報が前記比較の結果に依存して決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記切断時間情報が、前記少なくとも1つの第1の蓄積キャパシタの放電性質に基づいて決定及び補正され、前記第1の蓄積キャパシタが前記第1の開始時間の後に続く第2の開始時間から充電され、前記第2の開始時間から適切な電力供給が再確立され、前記第1の蓄積キャパシタが前記第2の開始時間の後に続く第3の開始時間から放電され、前記第1の蓄積キャパシタの放電電圧が、前記第3の開始時間の後に続く前記決定時間において前記第2の開始時間に存在する前記第2の蓄積キャパシタの放電電圧と比較され、前記切断時間情報が前記比較の結果に依存して決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記切断時間情報が、前記データキャリアが前記通信パートナ装置の特定のプロンプトコマンドに応答すべきかどうかを決定するのに使用される、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
通信パートナ装置との非接触式通信用に設計されたデータキャリアの集積回路において、前記集積回路が、前記集積回路が電力供給フィールドによって適切に電力供給されている間に前記集積回路の少なくとも1つの第1の蓄積キャパシタを充電する第1の充電回路を有し、第1の開始時間からの前記集積回路のもはや適切でない電力供給の後に続いて前記第1の蓄積キャパシタを放電する第1の放電回路を有し、前記少なくとも1つの蓄積キャパシタの放電性質がIC材料及び少なくとも1つの放射効果により影響を受け、前記集積回路が、前記集積回路が適切に電力を供給されていない切断期間に関して重要である切断時間情報を決定する決定手段を有し、前記切断時間情報が、前記IC材料及び少なくとも1つの放射効果により影響を受ける前記少なくとも1つの第1の蓄積キャパシタ放電性質に基づいて決定され、この結果、前記切断時間情報が決定時間から利用可能であり、前記集積回路が、前記IC材料の効果及び/又は前記少なくとも1つの放射効果に依存して前記決定された切断時間情報を補正する補正手段を有する集積回路。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1の蓄積キャパシタの新たな充電が、前記第1の開始時間の後に続く第2の開始時間から前記決定手段の助けで防止され、前記第2の開始時間から決定時間まで適切な電力供給が再確立され、第2の蓄積キャパシタが設けられ、第2の充電回路が、前記第2の開始時間から前記第2の蓄積キャパシタを充電するように設けられ、第2の放電回路が、前記第2の開始時間の後に続く第3の開始時間から前記第2の蓄積キャパシタを放電するように設けられ、前記第2の蓄積キャパシタの放電性質が前記IC材料及び前記少なくとも1つの放射効果により影響を受け、前記決定手段が、前記少なくとも1つの第1の蓄積キャパシタの放電電圧を前記第3の開始時間の後に続く前記決定時間において前記第2の蓄積キャパシタの放電電圧と比較し、前記比較の結果に依存して前記切断時間情報を決定するように設計される、請求項5に記載の集積回路。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1の蓄積キャパシタの新たな充電が、前記第1の開始時間の後に続く第2の開始時間から前記決定手段の助けで開始されることができ、前記第2の開始時間から適切な電力供給が再確立され、前記第1の充電回路が、前記第2の開始時間の後に続く第3の開始時間から前記第1の蓄積キャパシタを放電するように設けられ、前記決定手段が、前記第3の開始時間の後に続く前記決定時間において前記第1の蓄積キャパシタの放電電圧を前記第2の開始時間に存在する前記第1の蓄積キャパシタの放電電圧と比較し、前記比較の結果に依存して前記切断時間情報を決定するように設計される、請求項5に記載の集積回路。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1の蓄積キャパシタの容量が前記第2の蓄積キャパシタの容量の倍数に対応する、請求項6に記載の集積回路。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第1の蓄積キャパシタ及び前記第2の蓄積キャパシタが前記集積回路において互いに直接隣接して配置される、請求項6又は8に記載の集積回路。
【請求項10】
通信パートナ装置との非接触式通信用のデータキャリアにおいて、請求項5ないし9のいずれか一項に記載の集積回路を備えたデータキャリア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−516532(P2007−516532A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546428(P2006−546428)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052727
【国際公開番号】WO2005/064532
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】