説明

非接触式磁性体検知装置

【課題】清掃や詰まった被検知媒体の除去等のメインテナンスを容易に行うことが可能な非接触式磁性体検知装置を提供する。
【解決手段】非接触式磁性体検知装置は、ベース12と、ベースに固定された基端部と開放した先端部を有した固定ブロック13と、ベースに回動自在に支持された基端部と開放した先端部を有し、固定ブロックと対向する閉塞位置と固定ブロックから離間する開放位置との間を回動可能な可動ブロック14と、固定ブロックに対して可動ブロックを位置決めする位置決め部と、を備えている。固定ブロックには第1磁気センサを有した第1検知ユニット10aが支持され、可動ブロックには第2磁気センサを有した第2検知ユニット10bが支持されている。閉塞位置において、第2検知ユニットは被検知媒体Pが通過する間隙Gを持って第1検知ユニットと対向している。閉塞位置に位置した可動ブロックの先端部と固定ブロックの先端部とを着脱可能に連結する連結部28が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、紙葉類等の印刷に使用するインキに含まれる微量の磁性体を非接触で検知する非接触式磁性体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、紙葉類の印刷に使用する印刷インキに含まれる磁性体を検知することにより、紙葉類を識別する方法は広く知られている。このような磁性体を検知する非接触の磁性体検知装置として、例えば、特許文献1に開示された装置は、間隙を置いて対向配置された2つのU字形状のコアと、各コアに巻装された巻線とを有し、これらの巻線は直列に接続されている。そして、この装置は、コア間の間隙を磁性体が通過する際のインピーダンスの変化を検出する。
【0003】
また、特許文献2に開示された磁性体検知装置は、長手方向両端部にそれぞれコイルが巻回された一対のJ字型のコアを備え、これらのコアは一端同士が間隙をもって対向した状態で配置されている。一対のコアの一端側端部に設けられたコイル同士、および一対のコアの反対側端部に設けられらコイル同士を直列に接続し、これらのコイルのインピーダンスの差を検出することにより、コア間を通過する磁性体を検出している。
【0004】
特許文献3に開示された磁性体検知装置は、長手方向両端部にそれぞれコイルが巻回された一対のI字型のコアを備え、これらのコアは一端同士が間隙をもって対向した状態で配置されている。一対のコアの一端側端部に設けられたコイル同士、および一対のコアの反対側端部に設けられらコイル同士を直列に接続し、これらのコイルのインピーダンスの差を検出することにより、コア間を通過する磁性体を検出している。
【0005】
前述したいずれの磁性体検知装置においても、対向したコア間の間隙の変動は磁性体検出信号に大きく影響する。そのため、コアは、大きな剛性を有した支持部に支持されているとともに、ねじ止め等により支持部に締結されている。また、紙葉類をベルトで挟持してコア間の間隙を搬送する場合、ベルトをコア間の間隙に入れ易いように、支持部は、各コアの一端部を支持した片持ち支持構造とし、コアの他端側を開放した構造としている。そして、ベルトをコア間の間隙に差し込んだ後、コアの開放端側を固定金具で固定する等の方法が取られている。
【特許文献1】特開昭59−141058号公報
【特許文献2】特開平9−236642号公報
【特許文献3】特開2000−220992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
磁性体検知装置においては、対向するコア間を通して多数枚の紙葉類を搬送することにより、コア間の間隙に磁性粉等のゴミが徐々に滞留する。そのため、定期的にコア間の間隙に滞留したゴミを清掃する必要がある。また、ベルト搬送により高速で多量の紙葉類の検査を行う場合、破損した紙葉類が搬送されてコア間の間隙を通過できずに詰まると、以後に送られてくる紙葉類が間隙に詰まり、硬く固まった状態となる。しかしながら、前述した従来の磁性体検知装置では、対向配置されたコア間の間隙を開放することが困難であり、清掃作業、詰まった紙葉類の取り除き作業が面倒で時間が掛かるという問題がある。
【0007】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、清掃や詰まった被検知媒体の除去等のメインテナンスを容易に行うことが可能な非接触式磁性体検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、この発明の態様に係る非接触式磁性体検知装置は、ベースと、前記ベースに固定された基端部と開放した先端部とを有した固定ブロックと、磁性コアおよびこの磁性コアに巻装されたコイルを含む第1磁気センサを有し、前記固定ブロックに取り付けられた第1検知ユニットと、前記ベースに回動自在に支持された基端部と開放した先端部とを有し、前記固定ブロックと対向する閉塞位置と前記固定ブロックから離間する開放位置との間を回動可能な可動ブロックと、磁性コアおよびこの磁性コアに巻装されたコイルを含む第2磁気センサを有しているとともに前記可動ブロックに取り付けられ、前記閉塞位置において、被検知媒体が通過する間隙を持って前記第1検知ユニットと対向した第2検知ユニットと、前記閉塞位置に回動した前記可動ブロックを前記固定ブロックに対して位置決めする位置決め部と、前記閉塞位置に位置した前記可動ブロックの先端部と前記固定ブロックの先端部とを着脱可能に連結する連結部と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、清掃や詰まった被検知媒体の除去等のメインテナンスを容易に行うことが可能な非接触式磁性体検知装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図面を参照しながら、この発明の実施形態に係る非接触式磁性体検知装置について詳細に説明する。
図1は非接触式磁性体検知装置の全体を示す断面図であり、図2は非接触式磁性検知装置の平面図である。図1および図2に示すように、非接触式磁性体検知装置は、例えば、印刷物などの紙葉類の印刷に使用する印刷インキに含まれる微量の磁性体を非接触で検知する非接触式磁性体検知装置として構成されている。この非接触式磁性体検知装置は第1磁気検知ユニット10aおよび第2磁気検知ユニット10bを備え、これら第1および第2磁気検知ユニットは、磁性体を検知するための例えば、2〜3mmの検知間隙Gを置いて対向している。第1および第2磁気検知ユニット10a、10bは、検知間隙Gを通る非検知媒体中の磁性体を検知する。被検知媒体として、例えば、磁性体粉末を含有した印刷インキで印刷された印刷物、有価証券などの紙葉類Pは、搬送機構により、検知間隙Gを通りY方向と平行な移動方向Eに沿って搬送される。搬送機構は、検知間隙Gを通って延びる2対の搬送ベルト15を有し、これら搬送ベルト15により紙葉類Pの両端部を挟持して搬送する。
【0011】
非接触式磁性体検知装置は、それぞれ金属等によって形成されたベース12、第1磁気検知ユニット10aを支持した固定ブロック13、および第2磁気検知ユニット10bを支持した可動ブロック14を備えている。固定ブロック13はほぼ直方体形状に形成され、その長手方向一端部、つまり基端部はベース12に固定されている。固定ブロック13はベース12から水平に、かつ、紙葉類Pの搬送方向であるY方向と直交するX方向に延出し、その長手方向他端部、つまり、先端部は開放している。
【0012】
固定ブロック13は、ほぼ水平に延びているとともに上方に向かって開放した当接面13aを有している。固定ブロック13は、当接面13aに開口した矩形状の凹所13bを有し、この凹所13bに第1磁気検知ユニット10aが着脱可能に装着されている。なお、第1磁気検知ユニット10aは、当接面13aよりも僅かに凹んで位置している。固定ブロック13内において、第1磁気検知ユニット10aの下方には、第1磁気検知ユニットによって検知された信号を処理する信号処理回路16aが設けられている。
【0013】
可動ブロック14は、固定ブロック13に対応した寸法のほぼ直方体形状に形成され、その長手方向一端部、つまり基端部はベース12に回動自在に支持されている。可動ブロック14はベース12から水平に、かつ、紙葉類Pの搬送方向であるY方向と直交するX方向に延出し、その長手方向他端部、つまり、先端部は開放している。
【0014】
可動ブロック14はその基端部から長手方向に突出した支持部17を一体に有し、この支持部には、Y方向と平行な方向に延びた貫通孔17aが形成されている。貫通孔17aには支持軸18が遊びを持って挿通され、この支持軸の両端部はベース12に一体的に設けられた一対の軸受部19によって支持されている。これにより、可動ブロック14は、図1に実線で示すように、固定ブロック13と対向する閉塞位置と、図1に2点鎖線で示すように、固定ブロックから離間する開放位置との間を支持軸18の回りで回動可能に支持されている。
【0015】
可動ブロック14は、閉塞位置において、ほぼ水平に延びているとともに下方に向かって開放した当接面14aを有している。可動ブロック14は、当接面14aに開口した矩形状の凹所14bを有し、この凹所14bに第2磁気検知ユニット10bが着脱可能に装着されている。第2磁気検知ユニット10bは、当接面14aよりも僅かに凹んで位置している。可動ブロック14内において、第2磁気検知ユニット10bの上方には、第2磁気検知ユニットによって検知された信号を処理する信号処理回路16bが設けられている。
【0016】
可動ブロック14が図1に示す閉塞位置に回動した状態において、当接面14aは、固定ブロック13の当接面13aと当接し、第1および第2磁気検知ユニット10a、10b間に検知間隙Gを規定する。可動ブロック14が開放位置に回動されると、当接面14aは固定ブロック13の当接面13aから上方に離間する。これにより、検知間隙Gが開放される。なお、固定ブロック13と可動ブロック14との間に、可動ブロックを開放位置に保持するばね等の保持部材、および可動ブロックが開放位置から閉塞位置へ回動した際の衝突を防止するダンパー等の緩衝機構を設けてもよい。
【0017】
非接触式磁性体検知装置は、可動ブロック14が開放位置から閉塞位置へ移動した際に、固定ブロックに対して可動ブロックを所定の位置に位置決めする複数の位置決め部と、閉塞位置に位置した可動ブロックの先端部と固定ブロックの先端部とを着脱可能に連結する連結部28と、を備えている。
【0018】
位置決め部は、固定ブロック13および可動ブロック14の基端部側に設けられた基端側位置決め部と、固定ブロック13および可動ブロック14の先端部側に設けられた先端側位置決め部と、を有している。本実施形態において、基端側位置決め部は、固定ブロック13の当接面13aと平行で、かつ、紙葉類Pの搬送方向と平行なY方向における可動ブロック14の位置を規制する第1位置決め部20と、当接面13aと平行でY方向と直交するX方向における可動ブロック14の位置を規制する第2位置決め部22と、を有している。先端側位置決め部は、当接面13aと平行なY方向における可動ブロックの位置を規制する第3位置決め部24と、X方向における可動ブロックの位置を規制する第4位置決め部26と、を有している。
【0019】
図3および図4は第1位置決め部20を示し、図5は第2、第3、第4位置決め部を示し、図6および図7は、第3位置決め部および連結部を示している。
図3および図4に示すように、可動ブロック14のY方向の位置決めを行う第1位置決め部20は、固定ブロック13の上面に設けられた一対の第1位置決め駒20aと、可動ブロック14の下面に設けられた第2位置決め駒20bとを有している。一対の第1位置決め駒20aは、それぞれX方向に延びた傾斜面21aを有し、これら傾斜面21aが対向した状態で所定の隙間を置いて配置されている。各第1位置決め駒20aは、固定ブロック13側に突出した突出部23aを有し、また、固定ブロック13の上面にはY方向に延びたガイド溝25aが形成されている。各第1位置決め駒20aはその突出部23aがガイド溝25aに係合した状態で固定ブロック13に取り付けられている。そして、各第1位置決め駒20aはガイド溝25aに沿ってY方向に位置調整可能であり、位置調整後、ビス等によって固定ブロック13に固定されている。
【0020】
第2位置決め駒20bは、それぞれX方向に延びた一対の傾斜面21bを有し、先細の楔形状に形成されている。一対の傾斜面21bは第1位置決め駒20aの傾斜面21aとそれぞれ当接可能に形成されている。第2位置決め駒20bは、可動ブロック14側に突出した突出部23bを有し、また、可動ブロック14の下面にはX方向に延びたガイド溝25bが形成されている。第2位置決め駒20bはその突出部23bがガイド溝25bに係合した状態で可動ブロック14に取り付けられている。第2位置決め駒20bはガイド溝25bに沿ってX方向に位置調整可能であり、位置調整後、ビス等によって可動ブロック14に固定されている。また、第2位置決め駒20bは、ガイド溝25bに係合した突出部23bにより、Y方向の移動が規制されている。
【0021】
第1および第2位置決め駒20a、20bの位置調整は、可動ブロック14を閉塞位置に移動させ、可動ブロックの当接面14aを固定ブロックの当接面13aに接触させた状態、つまり、所定の検知間隙Gを保った状態で行う。この状態で、第1および第2位置決め駒20a、20bを傾斜面21a、21b同士が当接するように位置調整し、ビスにより固定する。ビスの締め付けは、ビスの軸中心線延長線上の可動ブロックに貫通させた穴を設け、ドライバーで締め付けるものである。
【0022】
図5に示すように、X方向の位置決めを行う第2位置決め部22は、ベース12に取り付けられた第1位置決め駒22aおよび可動ブロック14の基端側の側面に設けられた第2位置決め駒22bを有している。第1および第2位置決め駒22a、22bは直方体形状に形成され、それぞれY方向に延びているとともに互いに当接可能な傾斜面32a、32bを有している。第1位置決め駒22aはベース12側に突出した突出部33aを有し、また、ベースにはY方向に延びた溝33bが形成されている。第1位置決め駒22aは、突出部33aを溝33bに差し込んだ状態でベース12にねじ止めされ、Z方向の力を溝33bで受けて変位を規制している。
【0023】
第2位置決め駒22bは、可動ブロック14にX方向に沿って位置調整可能に設けられ、ビス等により可動ブロックに固定されている。第2位置決め駒22bは、可動ブロック14が閉塞位置に回動した際、その傾斜面32bが第1位置決め駒22aの傾斜面32aと当接するように位置調整されている。この調整は、第2位置決め駒22bと可動ブロック14との間に例えば、薄い金属板34を挟んで第2位置決め駒の位置を変えて行う。接触により第2位置決め駒22bに作用する力は、可動ブロック14で受けるため、第2位置決め駒の位置ズレは生じない。
【0024】
また、図5に示すように、X方向の位置決めを行う第4位置決め部26は、固定ブロック13の上面に取り付けられた第1位置決め駒26aおよび可動ブロック14の下面に設けられた第2位置決め駒26bを有している。第1および第2位置決め駒26a、26bは直方体形状に形成され、それぞれY方向に延びているとともに互いに当接可能な傾斜面36a、36bを有している。
【0025】
第1位置決め駒26aは、図5において右方向、すなわち、固定ブロック13の先端部方向にずれないように固定ブロックの肩部に当接した状態でねじ止めされている。
第2位置決め駒26bは、X方向に沿って位置調整可能であるとともに、図5において左方向、すなわち、可動ブロック14の基端部方向にずれないように可動ブロックの肩部に当接した状態でねじ止めされている。第2位置決め駒26bは、可動ブロック14が閉塞位置に回動した際、その傾斜面36bが第1位置決め駒26aの傾斜面36aと当接するように位置調整されている。この調整は、第2位置決め駒26bと可動ブロック14との間に例えば、薄い金属板35を挟んで第2位置決め駒の位置を変えて行う。接触により第2位置決め駒26bに作用する力は、可動ブロック14で受けるため、第2位置決め駒の位置ズレは生じない。
【0026】
このように、第2位置決め部22の第1位置決め駒22aにより可動ブロック14のX方向左側への変位とX方向上側への変位を抑制し、第4位置決め部の第1位置決め駒26bにより可動ブロックのX方向右側への変位を抑えることにより、固定ブロック13に対する可動ブロックの位置決めの再現性を実現する。
【0027】
図5ないし図7に示すように、Y方向の位置決めを行う第3位置決め部24は、固定ブロック13の先端部中央付近に取り付けられた第1位置決め駒24aおよび可動ブロック14の先端部中央付近に設けられた第2位置決め駒24bを有している。第1位置決め駒24aには可動ブロック14側に向かって開放したV字形状の凹所38aが形成され、第2位置決め駒24には、凹所28aに係合可能なV字形状の突起38bが一体に形成されている。
【0028】
可動ブロック14を閉塞位置に回動させると、第1位置決め駒24aおよび第2位置決め駒24bは、V字の傾斜面で互いに接触し、可動ブロック先端部のY方向の位置を規制し、第2位置決め駒24bを第1位置決め部20の第1位置決め駒20aとY方向に沿って同一軸上に再現性良く位置決めすることができる。
【0029】
閉塞位置に位置した可動ブロック14の先端部と固定ブロック13の先端部とを着脱可能に連結する連結部28は、固定ブロック13の先端部からX方向に突出した一対の突出部40a、および可動ブロック14の先端部からX方向に突出した一対の突出部40bを有している。一対の突出部40aは、第1位置決め駒24aの両側に位置し、一対の突出部40bは第2位置決め駒24bの両側に位置しているとともに突出部40aと対向している。突出部40a、40bは、固定ボルト41或いはファスナ金具のような締め付け金具で互いに締め付けられ、固定ブロック13に対して可動ブロック14の先端部を締め付けている。締め付け具としては、ファスナ金具のほか、固定ブロックおよび可動ブロックの一方に設けられた回動自在なフックを他方に引っ掛ける構造としてもよい。いずれの場合も、固定ブロックと連結ブロックとを確実に連結できるとともに、容易に締め付けを解除可能な連結機構であることが望ましい。
【0030】
次に、第1および第2磁気検知ユニット10a、10bについて説明する。
【0031】
図8および図9に示すように、第1磁気検知ユニット10aは、X方向に所定のピッチPで並んで設けられた複数、例えば7個の第1磁気センサ30と、これら第1磁気センサの下方および側方を覆った磁気カバー9と、を備えている。各第1磁気センサ30は、例えば、軟磁性体のアモルファス箔を積層して構成された矩形板状の磁性コア3、磁性コアの長手方向中間部に巻装された励磁コイル7、磁性コアの一端部に巻装された検出コイル4b、磁性コアの他端に巻装されたダミーコイル5bを有している。
【0032】
7個の第1磁気センサ30は、各磁性コアの相対向する端部を結ぶ線がほぼ平行になるように、紙葉類Pの搬送方向と直交する方向、すなわち、X方向に並設されている。磁気カバー9は7つの磁性コア3のダミーコイル5bおよび励磁コイル7を包囲するように設けられている。磁性コア3と磁気カバー9との間には、磁性コアを支持する図示しない支持具あるいは樹脂などが設けられている。
【0033】
第2磁気検知ユニット10bは第1磁気検知ユニット10aとほぼ同一に形成され、第1磁気検知ユニットと逆向きに配置されている。すなわち、第2磁気検知ユニット10bは、X方向に所定のピッチPで並んで設けられた複数、例えば7個の第2磁気センサ32と、これら第2磁気センサの上方および側方を覆った磁気カバー8と、を備えている。各第2磁気センサ32は、第1磁気センサ30と同様に、矩形板状の磁性コア2、磁性コアの長手方向中間部に巻装された励磁コイル6、磁性コアの一端部に巻装された検出コイル4a、磁性コアの他端に巻装されたダミーコイル5aを有している。
【0034】
7個の第2磁気センサ32は、各磁性コアの相対向する端部を結ぶ線がほぼ平行になるように、紙葉類Pの搬送方向と直交する方向、すなわち、X方向に並設されている。磁気カバー8は7つの磁性コア3のダミーコイル5aおよび励磁コイル6を包囲するように設けられている。磁性コア2と磁気カバー8との間には、磁性コアを支持する図示しない支持具あるいは樹脂などが設けられている。
【0035】
可動ブロック14が閉塞位置に保持された状態において、第1磁気検知ユニット10aの7つの第1磁気センサ30および第2磁気検知ユニット10bの7つの第2磁気センサ32は、それぞれ互いに隙間を置いて対向して位置している。各第1および第2磁気センサ30、32の磁性コア3、2は、検出コイル4B、4a側の一端部同士が検知間隙Gを持って対向した状態で配設されている。磁性コア3、2は、それぞれ紙葉類Pの表面と直交する方向に沿って、ここでは、鉛直方向に沿って配置されている。同時に、磁性コア3、2は、その幅方向が紙葉類Pの移動方向Yと直交し、かつ紙葉類の表面と平行に位置するように配設されている。これにより、一対の磁性コア3、2は、互いに平行に整列している。
【0036】
各組の第1および第2磁気センサ30、32において、検出コイル4a、4bは直列に接続され第1コイル100を構成し、他端部2b、3b側のダミーコイル5a、5bは直列に接続され第2コイル200を構成している。中間部の励磁コイル6、7は直列に接続され第3コイル300を構成している。
【0037】
磁気カバー8、9は、磁性体によって構成され、少なくとも磁性コア2、3の開放側の端部、ダミーコイル5a、5b、および励磁コイル6、7をそれぞれ包囲して設けられている。これにより、磁気カバー8、9は、外部からの磁力線の影響を防止している。
【0038】
第1および第2磁気検知ユニット10a、10bによる磁性体検知について説明する。
第1コイル100を付勢した際にコイル4a、4bに発生する磁力線は、磁性コア2、3が相対向する検知間隙Gでは、例えば、図8において矢印Aで示すように、紙葉類10を横切る方向に一致させている。第2コイル200および第3コイル300においても同様に、コイル5a、6では図示矢印B1、B2、コイル5b、7では図示矢印C1、C2の方向に一致させている。第3コイル300を付勢することにより、矢印A、矢印C1、磁気カバー9を通って図示矢印D1、さらに磁気カバー8を通って矢印B1の経路と、矢印A、矢印C2、磁気カバー9、図示矢印D2、磁気カバー8を通って矢印B2の経路で磁力線が通る環状磁路を形成する。
【0039】
磁性コア2、3の検知間隙G内に磁気インキで印刷された紙葉類Pが挿入されると、間隙G内の磁力線の分布が変化する。そのため、第1コイル100および第2コイル200の誘起電圧が変化する。ただし、磁力線D1、D2の磁路の間隙は、磁性コア2、3間の間隙Gよりも広く、磁束の漏洩が大きい。そのため、環状磁束の磁力線D1、D2の量が減少し、紙葉類Pによる磁力線への変化は少なく、第2コイル200の誘起電圧変化も小さい。したがって、紙葉類Pの磁気インキ内の磁性粉は、磁性コア2、3間の検知間隙G内にある部分が第1コイル100によって検知される。
【0040】
紙葉類Pが矢印Eの方向に移動すると、この移動方向Eに沿って分布する磁気インキは、検知間隙G内で磁気インキ量の変化に伴う第1コイル100の誘起電圧変化として検知される。
【0041】
一方、検知部1の周囲温度が変化すると、磁性コア2、3および磁気カバー8,9の透磁率が変化し、第1コイル100および第2コイル200の誘起電圧が変化する。第1コイル100および第2コイル200の周囲温度は概略同一であることから、温度変化による誘起電圧変化の増減も同じとなる。したがって、第1コイル100と第2コイル200との誘起電圧の差を第1および第2信号処理回路16a、16bにより取り出すと、温度による誘起電圧の変化分は消去され、磁性体による誘起電圧の変化分のみを検出信号として取出すことができる。
【0042】
以上のように構成された非接触式磁性体検知装置によれば、検知動作を行う際、図1に示すように、可動ブロック14は閉塞位置に回動され、その先端部は固定ボルト41により固定ブロック13に固定されている。これにより、固定ブロック13および可動ブロック14に支持された第1および第2磁気検知ユニット10a、10bは所定の検知間隙Gを置いて対向している。この状態で、検知間隙Gを通して紙葉類Pを移動方向Eに移動させ、紙葉類Pに含まれる磁性体を第1および第2検知ユニット10a、10bのセンサによって検知する。
【0043】
一方、検知間隙Gに溜まった磁性体粉等を清掃する場合、あるいは、検知間隙Gに詰まった紙葉類Pを除去する場合、固定ボルト41を緩めて可動ブロック14の連結を解除した後、可動ブロック14の先端部を持ち上げ、支持軸18を支点として可動ブロックを矢印F方向に回動させる。これにより、可動ブロック14を開放位置に移動させ、検知間隙Gを大きく開放する。このように検知間隙Gを開放することにより、磁性体粉等の清掃、第1および第2磁気検知ユニット10a、10bの清掃、詰まった紙葉類Pの除去等のメインテナンス作業を容易に行うことができる。
【0044】
メインテナンス作業等が終了した後、可動ブロック14を開放位置から閉塞位置へ閉じると、可動ブロック14はその当接面14aが固定ブロック13の当接面13aに当接することにより、固定ブロックに対するZ方向の位置決めがなされる。また、可動ブロック14は、固定ブロック13に対し、第1および第3位置決め部20、24によりX方向の位置決めがなされ、第2および第4位置決め部22、26によりY方向の位置決めがなされる。これにより、可動ブロック14を固定ブロック13に対して所定位置に正確に、かつ、容易に位置決めし、第1磁気検知ユニット10aの第1磁気センサおよび第2磁気検知ユニット10bの第2磁気センサを互いに検知間隙Gを保って正確な相対位置に保持することができる。
【0045】
前述したように、所定の検知間隙Gを保った状態で、第1位置決め駒20a、第2位置決め駒22b、26b、第1位置決め駒24aの順にそれぞれの駒の傾斜面あるいはV字状斜面が対応する位置決め駒の傾斜面と接触するように位置調整することにより、回動支店となる支持軸18や貫通孔17aが磨耗してガタが生じた場合でも、可動ブロック14の先端部を固定ブロック13の先端部に締め付け固定することにより、可動ブロック14を固定ブロック13に対してガタ無く所定位置に固定することができる。
【0046】
以上のことから、ベース、固定ブロック、および可動ブロックを有し検知間隙の再現性の良い開閉機構部と、磁気検知ユニットとを組み合わせた構成とすることにより、清掃や詰まった紙葉類の除去等のメインテナンスを容易に行うことができるとともに、開閉機構部を閉じた際のガタ発生を防止し、正確な磁性体検知が可能な非接触の磁気検知装置を実現することができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、磁気検知ユニットのセンサを構成した各磁性コアの形状は板状に限定されることなく、棒状等、他の形状としてもよい。また、磁性コアの数は必要に応じて増減可能である。磁気検知ユニットを取り付け取り外しが可能な単体ユニットとして、検知ユニット内のセンサの数量が異なる他のユニットと交換とすることにより、紙葉類の磁性体の検知位置を変えることが可能である。
【0048】
また、被検知媒体の搬送方向に沿って、複数台の非接触式磁性体検知装置を並べて配置し、かつ、磁気検知ユニットにおけるセンサの配列位置を複数台の装置間でずらして設定してもよく、この場合、紙葉類の全領域に渡り高精細に磁性体検知を行うことができる。上述した実施形態では、X方向の位置決めを行う2つの位置決め部とY方向の位置決めを行う2つの位置決め部とを備えた構成としたが、X方向の位置決め部およびY方向の位置決め部は、それぞれ1つずつ設けられていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、この発明の実施形態に係る非接触式磁性体検知装置を概略的に示す図2の線J−Jに沿った断面図。
【図2】図2は、前記非接触式磁性体検知装置を概略的に示す平面図。
【図3】図3は、図1の線C−Cに沿った前記非接触式磁性体検知装置の第1位置決め部を示す断面図。
【図4】図4は、前記非接触式磁性体検知装置の第1位置決め部を図3と異なる方向から見た断面図。
【図5】図5は、前記非接触式磁性体検知装置の第2位置決め部および第4位置決め部を示す断面図。
【図6】図6は、前記非接触式磁性体検知装置の第3位置決め部を示す断面図。
【図7】図7は、前記非接触式磁性体検知装置の第3位置決め部を示す正面図。
【図8】図8は、図1の線H−Hに沿った前記非接触式磁性体検知装置の磁気検知ユニットを示す断面図。
【図9】図9は、図2の線J−Jに沿った前記非接触式磁性体検知装置の磁気検知ユニットを示す断面図。
【符号の説明】
【0050】
2、3…磁性コア、 4a、4b…検出コイル、 5a、5b…ダミーコイル、
6、7…励磁コイル、 8、9…磁気カバー、 10a…第1磁気検知ユニット、
10b…第2磁気検知ユニット、 12…ベース、 13…固定ブロック、
14…可動ブロック、 13a、14a…当接面、 20…第1位置決め部、
22…第2位置決め部、 24…第3位置決め部、 26…第4位置決め部、
20a、22a、24a、24b…第1位置決め駒、
20b、22b、24b、26b…第2位置決め駒、 28…連結部、
30…第1磁気センサ、 32…第2磁気センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに固定された基端部と開放した先端部とを有した固定ブロックと、
磁性コアおよびこの磁性コアに巻装されたコイルを含む第1磁気センサを有し、前記固定ブロックに取り付けられた第1検知ユニットと、
前記ベースに回動自在に支持された基端部と開放した先端部とを有し、前記固定ブロックと対向する閉塞位置と前記固定ブロックから離間する開放位置との間を回動可能な可動ブロックと、
磁性コアおよびこの磁性コアに巻装されたコイルを含む第2磁気センサを有しているとともに前記可動ブロックに取り付けられ、前記閉塞位置において、被検知媒体が通過する間隙を持って前記第1検知ユニットと対向した第2検知ユニットと、
前記閉塞位置に回動した前記可動ブロックを前記固定ブロックに対して位置決めする位置決め部と、
前記閉塞位置に位置した前記可動ブロックの先端部と前記固定ブロックの先端部とを着脱可能に連結する連結部と、
を備えた非接触式磁性体検知装置。
【請求項2】
前記第1検知ユニットは前記固定ブロックに着脱可能に取り付けられ、前記第2検知ユニットは前記可動ブロックに着脱可能に取り付けられている請求項1に記載の非接触式磁性体検知装置。
【請求項3】
前記位置決め部は、前記固定ブロックおよび可動ブロックの基端部側に設けられた基端側位置決め部と、前記固定ブロックおよび可動ブロックの先端部側に設けられた先端側位置決め部と、を有している請求項1又は2に記載の非接触式磁性体検知装置。
【請求項4】
前記固定ブロックは、前記閉塞位置に位置した前記可動ブロックに当接する当接面を有し、前記基端側位置決め部は、前記当接面と平行な第1方向における前記可動ブロックの位置を規制する第1位置決め部と、前記当接面と平行で前記第1方向と直交する第2方向における前記可動ブロックの位置を規制す る第2位置決め部と、を含んでいる請求項3に記載の非接触式磁性体検知装置。
【請求項5】
前記先端側位置決め部は、前記当接面と平行な第1方向における前記可動ブロックの位置を規制する第3位置決め部と、前記当接面と平行で前記第1方向と直交する第2方向における前記可動ブロックの位置を規制する第4位置決め部と、を含んでいる請求項3又は4に記載の非接触式磁性体検知装置。
【請求項6】
前記基端部側位置決め部および先端部側位置決め部の各々は、前記固定ブロックに設けられた第1位置決め部材と、前記可動ブロックに設けられた第2位置決め部材とを有し、前記第1および第2位置決め部材は、前記可動ブロックの閉塞位置において互いに当接する傾斜面をそれぞれ有している請求項3ないし5のいずれか1項に記載の非接触式磁性体検知装置。
【請求項7】
前記第1位置決め部材および第2位置決め部材の少なくとも一方は位置調整可能に設けられている請求項6に記載の非接触式磁性体検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−309339(P2006−309339A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128376(P2005−128376)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】