説明

非接触給電装置、受電モジュールおよび携帯型電子機器

【課題】受電モジュールの2次コイルとコア部材とを限られたスペースにバランスよく配置し、効率のよい電力の伝送を行うことができる非接触給電装置、この非接触給電装置に用いられる受電モジュール、および受電モジュールを備える携帯型電子機器を提供する。
【解決手段】2次コイル23の1次コイルに対する対向面とは逆側の面に磁性体コア24を配設する。2次コイル23の1次コイルに対する対向面に対して垂直な方向を高さ方向とし、2次コイル23の高さをh1、磁性体コア24の高さをh2としたときに、2次コイル23の高さh1と磁性体コア24の高さh2の比率(h1/h2)が、h1/h2>1.2の関係を満足するように、受電モジュール21を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのコイル間の電磁誘導作用により非接触で電力を供給する非接触給電装置、この非接触給電装置に用いられる受電モジュール、および受電モジュールを備える携帯型電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2つのコイル間の電磁誘導作用により、送電側から受電側へと非接触で電力を供給する非接触給電装置が知られている。非接触給電装置は、1次コイルを有する送電モジュールに対して2次コイルを有する受電モジュールを近づけて1次コイルと2次コイルとを所定の空隙を介して対向させることで、両コイル間の電磁誘導作用により送電モジュールから受電モジュールへと電力を供給するものである。このような非接触給電装置は、近年、様々な産業分野で広く利用されており、特に、電気的接点を外部に露出させる必要がなく、高い防水性を実現できることから、携帯端末や携帯時計(腕時計)などの携帯型電子機器を充電する用途で有用な技術として注目されている。
【0003】
この種の非接触給電装置では、送電側の1次コイルにより発生した磁束を、いかにして受電側の2次コイルに効率よく伝達するかが、その性能を左右する極めて重要な課題とされている。このような観点から、下記の特許文献1や特許文献2においては、少なくとも受電側の2次コイルの1次コイルとの対向面とは逆側の面上に軟磁性体よりなるコア部材を配設し、1次コイルへの通電により誘起される磁束をこのコア部材により吸引することによって漏れ磁束を低減させて、効率のよい非接触給電を実現するという技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−231586号公報
【特許文献2】特許第3432317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば携帯端末や携帯時計などの携帯型電子機器を充電する用途で非接触給電装置を利用する場合、2次コイルを有する受電モジュールが携帯型電子機器に内蔵されることになるが、携帯型電子機器は近年ますます小型化される傾向にあるため、受電モジュールを携帯型電子機器内部の限られたスペースに収めることが求められる場合が多い。したがって、受電モジュールが2次コイルに加えてコア部材を有する構成の場合には、2次コイルとコア材とをこの限られたスペースに配置する必要があり、2次コイルを配置できるスペースとコア部材を配置できるスペースとがトレードオフの関係となる。
【0006】
このため、1次コイルからの磁束を吸引する機能を高めるべくコア部材のサイズを過度に大きくすると、限られたスペースの大部分をコア部材が占有して2次コイルを配置するスペースが大幅に制限され、巻数低下による2次コイルの電圧低下や磁気結合力の欠損が生じて、コア部材を用いない場合よりも却って効率が低下してしまう場合があった。つまり、2次コイルとコア部材とを限られたスペース内にバランスよく配置しないと、コア部材を設けることによって逆に電力伝送の効率低下を招いてしまうことになる。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、受電モジュールの2次コイルとコア部材とを限られたスペースにバランスよく配置し、効率のよい電力の伝送を行うことができる非接触給電装置、この非接触給電装置に用いられる受電モジュール、および受電モジュールを備える携帯型電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、1次コイルを有する送電モジュールと、2次コイルを有する受電モジュールとを備え、前記1次コイルと前記2次コイルとの間の電磁誘導作用により前記送電モジュールから前記受電モジュールへと非接触で電力を供給する非接触給電装置において、前記受電モジュールは、前記2次コイルの前記1次コイルに対する対向面とは逆側の面上に配設されたコア部材をさらに有し、前記2次コイルの前記1次コイルに対する対向面に対して垂直な方向を高さ方向とし、前記2次コイルの高さをh1、前記コア部材の高さをh2としたときに、h1/h2>1.2の関係を満足することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、2次コイルを有し、該2次コイルと送電モジュールの1次コイルとの間の電磁誘導作用により前記送電モジュールから非接触で電力が供給される受電モジュールにおいて、前記2次コイルの前記1次コイルに対する対向面とは逆側の面上に配設されたコア部材をさらに有し、前記2次コイルの前記1次コイルに対する対向面に対して垂直な方向を高さ方向とし、前記2次コイルの高さをh1、前記コア部材の高さをh2としたときに、h1/h2>1.2の関係を満足することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる携帯型電子機器は、本発明にかかる受電モジュールと、2次電池と、前記受電モジュールにより受電された電力を前記2次電池に充電する充電回路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、2次コイルとコア部材とを配置するスペース内で2次コイルの高さとコア部材の高さとの割合が最適化されるので、限られたスペースに2次コイルとコア部材とをバランスよく配置して、効率のよい電力の伝送を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、充電システムの概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、充電式腕時計の内部構造を模式的に示した縦断面図である。
【図3】図3は、充電式腕時計に内蔵される受電モジュールの斜視図である。
【図4】図4は、受電モジュールの2次コイルと磁性体コアとの関係を説明する要部拡大断面図である。
【図5】図5は、シミュレーションのパラメータとして用いた2次コイルの高さh1と磁性体コアの高さh2との関係を一覧表として示す図である。
【図6】図6は、シミュレーション結果を示すグラフ図である。
【図7】図7は、実機試験のパラメータとして用いた2次コイルの高さh1と磁性体コアの高さh2との関係を一覧表として示す図である。
【図8】図8は、実機試験の結果を示すグラフ図である。
【図9】図9は、2次コイルと磁性体コアの幅方向のレイアウトについての複数パタンの概要を模式的に示す図である。
【図10】図10は、シミュレーションのパラメータとして用いたコイル幅w1とコア幅w2との関係を一覧表として示す図である。
【図11】図11は、シミュレーション結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる非接触給電装置、受電モジュールおよび携帯型電子機器の最良な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下では、携帯型電子機器としての充電式腕時計(携帯時計)を充電する充電システムに本発明を適用した実施形態を例示するが、本発明は、以下で説明する例に限らず、非接触で電力を供給するシステムに対して広く適用可能である。
【0014】
(充電システム)
まず、充電式腕時計を充電する充電システムの概要について、図1を参照して説明する。図1は、本実施の形態にかかる充電システムの概略構成を示す模式図である。この充電システムは、送電モジュール11を有する充電ステーション10と、受電モジュール21を有する充電式腕時計20とで構成され、充電ステーション10に備えられている電源プラグ12を家庭用AC100Vのコンセント(図示せず)に装着し、充電式腕時計20を充電ステーション10の所定の装着位置にセットすることで、送電モジュール11から受電モジュール21へ非接触給電によって電力供給を行い、充電式腕時計20内部の2次電池22を充電するものである。
【0015】
充電ステーション10の送電モジュール11は、例えば、マンガン−亜鉛の混合材質などからなる円柱状の磁性体コア13と、この磁性体コア13の周囲に巻回された1次コイル14とを有している。1次コイル14の両端は、発振回路15に接続されている。発振回路15は、家庭用AC100Vを所望の電圧に変換する電源回路16に接続されており、電源プラグ12が家庭用AC100Vのコンセントに装着されると、1次コイル14に交流電流を流す。1次コイル14に交流電流が通電されると、この交流電流に応じて1次コイル14が巻回中心軸に沿った方向の交番磁界を発生する。このとき、1次コイル14の巻回中心に磁性体コア13が配置されているので、コイル外周側を回り込んで短絡する磁束が低減され、1次コイル14から発生する交番磁界は、充電式腕時計20側へと効率よく伝播する。
【0016】
一方、充電式腕時計20に内蔵される受電モジュール21は、充電式腕時計20が充電ステーション10の所定の装着位置にセットされたときに充電ステーション10の1次コイル14に対して所定の空隙を介して対向するように設けられた2次コイル23と、この2次コイル23の1次コイル14に対する対向面とは逆側の面上に配設された、マンガン−亜鉛の混合材質などからなる磁性体コア24とを有している。具体的には、2次コイル23は例えば円形渦巻コイル、磁性体コア24は例えば2次コイル23と同心円状に配置された円環状コアとして構成されており、これら2次コイル23と磁性体コア24とが一体となってボビン(図1においては図示を省略している)に支持されている。
【0017】
充電式腕時計20が充電ステーション10の所定の装着位置にセットされると、上述したように、受電モジュール21の2次コイル23が充電ステーション10の1次コイル14に対して所定の空隙を介して対向配置されるため、1次コイル14から交番磁界が発生されると、2次コイル23には電磁誘導作用により1次コイル14からの交番磁界の磁束を打ち消す方向での交流電流が誘起される。このとき、2次コイル23の1次コイル14に対する対向面とは逆側の面上に磁性体コア24が配置されているので、1次コイル14から発生する交番磁界の磁束は磁性体コア24により吸引され、漏れ磁束が低減されることで、1次コイル14から発生する交番磁界が効率よく2次コイル23の交流電流に変換される。2次コイル23の両端は充電回路25に接続されており、2次コイル23を流れる交流電流は充電回路25に供給される。充電回路25は、2次コイル23からの交流電流を整流、平滑化して充電式腕時計20内の2次電池22に供給し、この2次電池22を充電する。
【0018】
(充電式腕時計)
次に、充電式腕時計20の具体的な構造の一例について、図2乃至図4を参照して説明する。図2は、本実施の形態にかかる充電式腕時計20の内部構造を模式的に示した縦断面図、図3は、充電式腕時計20に内蔵される受電モジュール21の斜視図、図4は、受電モジュール21の2次コイル23と磁性体コア24との関係を説明する要部拡大断面図である。この充電式腕時計20は、図2に示すように、リューズ26が設けられた胴27と、裏蓋28と、風防ガラス29とからなる時計ケースの内部に、機能モジュール30、受電モジュール21、2次電池22などを収容した構成である。
【0019】
機能モジュール30は、文字板、ムーブメント、集積回路搭載回路基板などを含むものである。上述した充電回路25は、例えば、この機能モジュールの集積回路搭載回路基板上に設けられている。これら機能モジュール30を構成する各部が必要とする電力は、2次電池22から供給される。なお、ここでは上記の各部を機能モジュール30の構成要素として示しているが、これらは必ずしもモジュールとして一体化されている必要はなく、個別の部品として時計ケース内部に設けられていてもよい。
【0020】
受電モジュール21は、図3に示すように、2次コイル23と磁性体コア24とをボビン31によって一体に支持した構成である。ボビン31は、合成樹脂などの非磁性材料よりなり、内部に2次電池22を収容可能な大きさの円筒部32の上端および下端に、外周側に張り出す一対のフランジ33,34が設けられた形状とされている。そして、このボビン31の一対のフランジ33,34間のスペースに、円形渦巻コイルとして構成された2次コイル23と、円環状コアとして構成された磁性体コア24とが同心円状に配置され、一体化されている。すなわち、2次コイル23はボビン31の円筒部32を巻回中心としてその外周側に巻回され、磁性体コア24は、2次コイル23が巻回されたボビン31における一対のフランジ33,34間の空きスペースを埋めるように、ボビン31の円筒部32の外周側に装着されている。なお、磁性体コア24は、ボビン31に装着される前は複数に分割されており、ボビン31の円筒部32の外周側に装着された状態で接合されて円環状コアを構成する。
【0021】
ここで、図4に示すように、2次コイル23の1次コイル14に対する対向面に対して垂直な方向(図4中の矢印Aの方向)を高さ方向とし、2次コイル23の高さをh1、磁性体コア24の高さをh2とすると、2次コイル23と磁性体コア24との双方がボビン31の一対のフランジ33,34間の所定スペース(このスペースの高さをHとする)内に配置されるため、2次コイル23の高さh1と磁性体コア24の高さh2とはトレードオフの関係となる。つまり、スペース高さHに対して2次コイル23の高さh1を大きくとると磁性体コア24の高さh2が小さくなり、逆に、磁性体コア24の高さh2を大きくとると2次コイル23の高さh1は小さくなる。なお、ボビン31の高さ方向の寸法、すなわち、ボビン31の一対のフランジ33,34間のスペース高さHは、充電式腕時計20の時計ケース内部のレイアウトに応じて定められ、充電式腕時計20の薄型化を実現するためにこの寸法は減少傾向にある。
【0022】
したがって、1次コイル14からの磁束を吸引する機能を高めるべく磁性体コア24の高さh2を過度に大きくして磁性体コア24のボリュームを増大させようとすると、ボビン31の一対のフランジ33,34間のスペースの大部分を磁性体コア24が占有してしまい、2次コイル23を配置するスペースが大幅に制限されることとなる。その結果、巻数低下による2次コイル23の電圧低下や磁気結合力の欠損が生じて、磁性体コア24を用いない場合よりも却って効率の低下を招いてしまう場合がある。すなわち、受電モジュール21に磁性体コア24を設けたことによる効果を発揮させるためには、ボビン31の一対のフランジ33,34間のスペース高さHに対して、2次コイル23の高さh1と磁性体コア24の高さh2とを最適化し、限られたスペース内に2次コイル23と磁性体コア24とをバランスよく配置することが重要である。
【0023】
本件発明者は、以上の知見に基づいて鋭意検討を重ねた結果、後述する第1実施例および第2実施例で説明するように、2次コイル23の高さh1と磁性体コア24の高さh2とが、h1/h2>1.2の関係を満足するように受電モジュール21を構成することにより、限られたスペースに2次コイル23と磁性体コア24とをバランスよく配置して、効率のよい電力の伝送を実現できることを見出すに至った。そこで、本実施の形態にかかる充電式腕時計20では、受電モジュール21を構成する2次コイル23と磁性体コア24とを、ボビン31の一対のフランジ33,34間のスペース高さHに適合させつつ、h1/h2>1.2の関係を満足するサイズに形成して、ボビン31の一対のフランジ33,34間のスペースに配置するようにしている。
【0024】
また、図4に示すように、2次コイル23の1次コイル14に対する対向面と平行な方向(図4中の矢印Bの方向)を幅方向とし、2次コイル23の内径部から外径部までの幅(以下、「コイル幅」という。)をw1、磁性体コア24の内径部から外径部までの幅(以下、「コア幅」という。)をw2としたときに、2次コイル23のコイル幅w1と磁性体コア24のコア幅w2との関係を最適化することも、受電モジュール21に磁性体コア24を設けたことによる効果を確実に発揮させる上で重要である。すなわち、2次コイル23のコイル幅w1に対して磁性体コア24のコア幅w2が過度に小さいと、磁性体コア24を設けたことによる電力伝送の効率アップの度合いが、磁性体コア24を設けたことで2次コイル23を配置するスペースが制限されることによる効率低下分を超えるまでに至らず、磁性体コア24を用いない場合よりも却って効率の低下を招いてしまうことになる。
【0025】
本件発明者は、以上の知見に基づいて鋭意検討を重ねた結果、後述する第3実施例で説明するように、2次コイル23のコイル幅w1と磁性体コア24のコア幅w2とが、1>w2/w1>0.54の関係を満足するように受電モジュール21を構成することにより、コイル幅w1とコア幅w2との関係をも最適化して、効率のよい電力の伝送を確実に実現できることを見出すに至った。そこで、本実施の形態にかかる充電式腕時計20では、受電モジュール21を構成する2次コイル23と磁性体コア24とを、1>w2/w1>0.54の関係を満足するように形成し、ボビン31の一対のフランジ33,34間のスペースに配置するようにしている。なお、1>w2/w1としているのは、空隙となる部分に配線を引き回して小型化を図るレイアウトを想定したものであり、単純に電力伝送の効率だけを考えた場合には、w2/w1=1とすることが最適である。したがって、受電モジュール21の周囲に配線を引き回さないレイアウトの場合には、2次コイル23のコイル幅w1と磁性体コア24のコア幅w2とを略等しくすることが望ましい。
【0026】
(第1実施例)
本件発明者は、所定スペース内での2次コイル23の高さh1と磁性体コア24の高さh2の比率の適正範囲を見出すべく、上述した充電ステーション10と充電式腕時計20とをモデル化し、解析シミュレータを用いた数値解析により、2次コイル23の高さh1と磁性体コア24の高さh2とを変化させたときに、2次コイル23に誘起される電流値がどのように変化するかの検証を行った。
【0027】
充電ステーション10側の送電モジュール11については、磁性体コア13は材質がマンガン−亜鉛の混合材であることを想定し、比透磁率は1000付近に設定し、磁気的な飽和は生じないものとしている。また、1次コイル14は線径φ0.18mmのマグネットワイヤ2種を525回巻回したものを想定している。そして、1次コイル14にAC100Vの交流電流を通電し、この1次コイル14への通電により発生した交番磁界の磁束が充電式腕時計20の裏蓋28(図2参照)を通過して、時計ケース内部の受電モジュール21に伝播する構成としている。
【0028】
一方、充電式腕時計20については、2次電池22、裏蓋28、胴27、リューズ26、機能モジュール30の文字板、ムーブメントなどの磁束に影響を与える金属が存在する、図2に示した構造を前提とし、これらの導電率は、純チタンの使用を想定して、2380952[1/Ω・m]であるものとしている。また、受電モジュール21は、ボビン31の材質が合成樹脂(磁束に影響を与えないためシミュレーション上では特に考慮する必要はない)であるものとし、一対のフランジ33,34間のスペース高さHを1.45mmに設定している。そして、このボビン31の一対のフランジ33,34間のスペースに、線径φ0.06mmのマグネットワイヤ3種を用いた円形渦巻コイルよりなる2次コイル23と、マンガン−亜鉛の混合材を用いた円環状コアである磁性体コア24とを、内径部および外径部の位置をそれぞれ一致させて同心円状に配置するものとしている。なお、2次コイル23は、ボビン31の一対のフランジ33,34間のスペース内で、磁性体コア24に占有されていないコイル用のスペースに巻回可能なだけ巻回する構成としている。
【0029】
以上のシミュレーション環境において、ボビン31の一対のフランジ33,34間の高さ1.45mmのスペース内に配置された2次コイル23の高さh1と磁性体コア24の高さh2とを相補的に変化させて、2次コイル23に誘起される電流値の変化を検証した。具体的には、2次コイル23の高さh1の値と磁性体コア24の高さh2の値を、図5の表で示すように変化させ、各々の条件下で2次コイル23を流れる電流値をそれぞれ取得していった。その結果、図6に示す結果が得られた。ここで、図6の横軸は、2次コイル23の高さh1と磁性体コア24の高さh2の比率(h1/h2)を示しており、図6の縦軸は2次コイル23を流れる電流値を示している。また、図6中の太線で示すラインは、2次コイル23の高さh2が1.45mm、磁性体コア24の高さh1が0.00mmの条件(図5の表の最下段の条件)、つまり、磁性体コア24を設けないことを想定して解析したときの2次コイル23に流れる電流値を示している。
【0030】
図6に示す結果から、2次コイル23の高さh1と磁性体コア24の高さh2の比率(h1/h2)が1.2を超えると、磁性体コア24を設けない場合よりも2次コイル23に流れる電流値が大きくなり、受電モジュール21に磁性体コア24を設けたことによる効果を発揮できることが確認できる。逆に、2次コイル23の高さh1と磁性体コア24の高さh2の比率(h1/h2)が1.2以下であると、磁性体コア24を設けない場合よりも2次コイル23に流れる電流値が小さくなり、却って電力伝送の効率低下を招いてしまうことが分かる。
【0031】
(第2実施例)
次に、実際に上述した充電式腕時計20の試作品を製作して、実機試験により、2次コイル23の高さh1と磁性体コア24の高さh2の比率(h1/h2)の適正範囲についての検証を行った。この試験では、ボビン31の一対のフランジ33,34間のスペース高さHを2.0mmとし、この高さ2.0mmのスペース内に配置された2次コイル23の高さh1と磁性体コア24の高さh2とを相補的に変化させて、2次コイル23に誘起される電流値の変化を検証した。具体的には、2次コイル23の高さh1の値と磁性体コア24の高さh2の値を、図7の表で示すように変化させ、各々の条件下で2次コイル23を流れる電流値をそれぞれ取得していった。なお、電流値の測定は、測定に必要なリード線を外部に引き出した充電式腕時計20の試作品を図1に示した構成の充電ステーション10の所定の装着位置にセットし、充電ステーション10を家庭用AC100Vの電源に接続したときに2次コイル23に流れる電流値を測定するという方法で行った。
【0032】
その結果、図8に示す結果が得られた。ここで、図8の横軸は、2次コイル23の高さh1と磁性体コア24の高さh2の比率(h1/h2)を示しており、図8の縦軸は2次コイル23を流れる電流値を示している。また、図8中の太線で示すラインは、2次コイル23の高さh2が2.00mm、磁性体コア24の高さh1が0.00mmの条件(図7の表の最下段の条件)、つまり、磁性体コア24を設けないことを想定して解析したときの2次コイル23に流れる電流値を示している。
【0033】
図8に示す結果から、実機試験においても、2次コイル23の高さh1と磁性体コア24の高さh2の比率(h1/h2)が1.2を超えると、磁性体コア24を設けない場合よりも2次コイル23に流れる電流値が大きくなっており、受電モジュール21に磁性体コア24を設けたことによる効果を発揮できることが確認できる。逆に、2次コイル23の高さh1と磁性体コア24の高さh2の比率(h1/h2)が1.2以下であると、磁性体コア24を設けない場合よりも2次コイル23に流れる電流値が小さくなり、却って電力伝送の効率低下を招いてしまうことが分かる。すなわち、受電モジュール21に磁性体コア24を設けたことによる効果を有効に発揮させるためには、単純に磁性体コア24を設けるだけでなく、限られたスペース内における2次コイル23の高さh1と磁性体コア24の高さh2の比率が重要であり、h1/h2が1.2を超えるように構成することで、電力伝送の効率を高めることが可能となることが分かった。
【0034】
なお、第1実施例のシミュレーションの結果や第2実施例の実機試験の結果からは、h1/h2を大きくするほど2次コイル23を流れる電流値が増加し、電力伝送の効率が向上していることが確認されるが、磁性体コア24の高さh2が過度に小さくなると、磁性体コア24が磁気飽和を起こして磁束を吸引できなくなり、また、磁性体コア24の耐久性が著しく低下することになる。したがって、磁性体コア24の耐久性を確保し、且つ、磁性体コア24が磁気飽和を起こさない範囲で、2次コイル23の高さh1と磁性体コア24の高さh2の比率(h1/h2)を大きくすることが望ましい。
【0035】
(第3実施例)
次に、2次コイル23のコイル幅w1と磁性体コア24のコア幅w2との関係が電力伝送の効率に対してどのように影響を及ぼすかについて、第1実施例と同様のシミュレーション環境を用いて検証を行った。ここでは、2次コイル23と磁性体コイル24の幅方向のレイアウトを下記の(1)〜(5)の5つのパタンに定め、それぞれのパタンについて電力伝送の効率に対する影響を各々検証した。図9は、下記(1)〜(5)のパタンの概要を模式に示している。
(1)2次コイル23の内径側に、コイル幅w1の1/3のコア幅w2の磁性体コア24を配置
(2)2次コイル23の内径側に、コイル幅w1の2/3のコア幅w2の磁性体コア24を配置
(3)2次コイル23の幅方向全域に亘り、コイル幅w1と等しいコア幅w2の磁性体コア24を配置
(4)2次コイル23の外径側に、コイル幅w1の2/3のコア幅w2の磁性体コア24を配置
(5)2次コイル23の外径側に、コイル幅w1の1/3のコア幅w2の磁性体コア24を配置
【0036】
ここで、2次コイル23および磁性体コア24が配置されるボビン31の一対のフランジ33,34間のスペース高さHは1.45mmとし、2次コイル23の高さh1は1.15mm、磁性体コア24の高さh2は0.3mmとしている。つまり、2次コイル23の高さh1と磁性体コア24の高さh2の比率(h1/h2)は3.8であり、これは第1実施例のシミュレーション結果で、2次コイル24の電流値が最も高い値を示した条件である。なお、図9においては、簡単のために2次コイル23と磁性体コア24とを同等の高さ(厚み)で図示している。
【0037】
上記の2次コイル23と磁性体コイル24の幅方向レイアウトのパタン(1)〜(5)において、コア幅w2とコイル幅w1の比率(w2/w1)は、それぞれ図10の表で示すようになる。なお、ここではコイル幅w1をRとしている。これらパタン(1)〜(5)の各々の条件下で、1次コイル14に通電したときに2次コイル23を流れる電流値をそれぞれ取得していった。その結果、図11に示す結果が得られた。ここで、図11の横軸は、磁性体コア24のコア幅w2と2次コイル23のコイル幅w1の比率(w2/w1)を示しており、図11の縦軸は2次コイル23を流れる電流値を示している。また、図11中の太線で示すラインは、2次コイル23の高さh1を1.45mmに設定して磁性体コア24を設けなかった場合に2次コイル23に流れる電流値を示しており、ボビン31の一対のフランジ33,34間に2次コイル23をできるだけ巻回した条件を想定した場合のシミュレーション結果を示している。
【0038】
図11に示す結果から、磁性体コア24のコア幅w2と2次コイル23のコイル幅w1の比率(w2/w1)に対して、2次コイル23を流れる電流値が線形に変化しており、磁性体コア24のコア幅w2と2次コイル23のコイル幅w1の比率(w2/w1)が0.54を超えると、磁性体コア24を設けない場合よりも2次コイル23に流れる電流値が大きくなり、受電モジュール21に磁性体コア24を設けたことによる効果を発揮できることが確認できる。逆に、磁性体コア24のコア幅w2と2次コイル23のコイル幅w1の比率(w2/w1)が0.54以下であると、2次コイル23の高さh1と磁性体コア24の高さh2の比率(h1/h2)を最適化したとしても、磁性体コア24を設けない場合よりも2次コイル23に流れる電流値が小さくなり、却って電力伝送の効率低下を招いてしまうことが分かる。
【0039】
なお、図11においては示されていないが、上記のパタン(1)のレイアウトの場合に2次コイル23を流れる電流値とパタン(5)のレイアウトの場合に2次コイル23を流れる電流値は同等の値となっており、また、パタン(2)のレイアウトの場合に2次コイル23を流れる電流値とパタン(4)のレイアウトの場合に2次コイル23を流れる電流値は同等の値となっている。つまり、磁性体コア24の幅方向の位置は2次コイル23の内径側でも外径側でもどちらでもよく、2次コイル23のコイル幅w1に対して、どの程度のコア幅w2で磁性体コア24が設けられているかが、電力伝送の効率向上を図る上で重要であることが確認できる。
【0040】
以上の結果から、2次コイル23の高さh1と磁性体コア24の高さh2の比率(h1/h2)を最適化した上で、さらに、磁性体コア24のコア幅w2と2次コイル23のコイル幅w1の比率(w2/w1)が0.54を超えるように構成することで、電力伝送の効率を確実に高められるようになることが分かった。また、磁性体コア24のコア幅w2と2次コイル23のコイル幅w1の比率(w2/w1)が、1>w2/w1>0.54の関係を満足するように構成すれば、受電モジュール21の磁性体コア24周囲に空隙を形成してその空隙に配線を引き回すことが可能となり、充電式腕時計20の小型化に寄与することができるとともに、磁性体コア24の重量低下による軽量化を図ることが可能となる。また、電力伝送の効率向上を重視する場合には、2次コイル23のコイル幅w1と磁性体コア24のコア幅w2とを略等しくする、つまり磁性体コア24のコア幅w2と2次コイル23のコイル幅w1の比率(w2/w1)を1とする(上記のパタン(3)のレイアウト)ことが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明にかかる非接触給電装置、受電モジュールおよび携帯型電子機器は、例えば、携帯端末や携帯時計(腕時計)などの携帯型電子機器を充電する用途での利用が可能である。
【符号の説明】
【0042】
10 充電ステーション
11 送電モジュール
13 磁性体コア
14 1次コイル
20 充電式腕時計
21 受電モジュール
22 2次電池
23 2次コイル
24 磁性体コア
25 充電回路
31 ボビン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次コイルを有する送電モジュールと、2次コイルを有する受電モジュールとを備え、前記1次コイルと前記2次コイルとの間の電磁誘導作用により前記送電モジュールから前記受電モジュールへと非接触で電力を供給する非接触給電装置において、
前記受電モジュールは、前記2次コイルの前記1次コイルに対する対向面とは逆側の面上に配設されたコア部材をさらに有し、
前記2次コイルの前記1次コイルに対する対向面に対して垂直な方向を高さ方向とし、前記2次コイルの高さをh1、前記コア部材の高さをh2としたときに、
h1/h2>1.2
の関係を満足することを特徴とする非接触給電装置。
【請求項2】
前記2次コイルは円形渦巻コイルであり、前記コア部材は前記2次コイルと同心円状に配置された円環状コアであり、
前記2次コイルの前記1次コイルに対する対向面と平行な方向を幅方向とし、前記2次コイルの内径部から外径部までの幅をw1、前記コア部材の内径部から外径部までの幅をw2としたときに、
1>w2/w1>0.54
の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の非接触給電装置。
【請求項3】
前記2次コイルは円形渦巻コイルであり、前記コア部材は前記2次コイルと同心円状に配置された円環状コアであり、
前記2次コイルの前記1次コイルに対する対向面と平行な方向を幅方向としたときに、前記2次コイルの内径部から外径部までの幅と前記コア部材の内径部から外径部までの幅とが略等しくされていることを特徴とする請求項1に記載の非接触給電装置。
【請求項4】
前記受電モジュールは、前記2次コイルと前記コア部材とを一体に支持するボビンをさらに有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の非接触給電装置。
【請求項5】
2次コイルを有し、該2次コイルと送電モジュールの1次コイルとの間の電磁誘導作用により前記送電モジュールから非接触で電力が供給される受電モジュールにおいて、
前記2次コイルの前記1次コイルに対する対向面とは逆側の面上に配設されたコア部材をさらに有し、
前記2次コイルの前記1次コイルに対する対向面に対して垂直な方向を高さ方向とし、前記2次コイルの高さをh1、前記コア部材の高さをh2としたときに、
h1/h2>1.2
の関係を満足することを特徴とする受電モジュール。
【請求項6】
前記2次コイルは円形渦巻コイルであり、前記コア部材は前記2次コイルと同心円状に配置された円環状コアであり、
前記2次コイルの前記1次コイルに対する対向面と平行な方向を幅方向とし、前記2次コイルの内径部から外径部までの幅をw1、前記コア部材の内径部から外径部までの幅をw2としたときに、
1>w2/w1>0.54
の関係を満足することを特徴とする請求項5に記載の受電モジュール。
【請求項7】
前記2次コイルは円形渦巻コイルであり、前記コア部材は前記2次コイルと同心円状に配置された円環状コアであり、
前記2次コイルの前記1次コイルに対する対向面と平行な方向を幅方向としたときに、前記2次コイルの内径部から外径部までの幅と前記コア部材の内径部から外径部までの幅とが略等しくされていることを特徴とする請求項5に記載の受電モジュール。
【請求項8】
前記2次コイルと前記コア部材とを一体に支持するボビンをさらに有することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の受電モジュール。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれか一項に記載の受電モジュールと、
2次電池と、
前記受電モジュールにより受電された電力を前記2次電池に充電する充電回路と、を備えることを特徴とする携帯型電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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