説明

非接触給電装置

【課題】固定側装置と可動側装置とが接近したときに非接触給電する装置を提供すること。
【解決手段】一対の磁気吸引部材111,211と、前記磁気吸引部材を有し、前記固定側装置と前記可動側装置とに取り付けられ、互いに磁気吸引して摺動する一対の磁気的作動手段110,210と、前記磁気的作動手段に対して前記磁気吸引部材による磁気吸引方向と反対方向に前記磁気吸引部材の磁気吸引力よりも小さい作用力を与える一対のバネ113,213と、前記一対の磁気的作動手段に各別に装着されて電磁エネルギーを授受する電磁結合手段120,220と、をそなえ、前記一対の磁気的作動手段が磁気吸引により接近したとき前記電磁結合手段を作動させることを特徴とする非接触給電装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定側装置と可動側装置とを有し、これら両装置間で電磁誘導により給電する装置に係わり、とくに固定側装置と可動側装置とが接近したときに給電するものに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の部屋入り口に設けられるドアには、セキュリティ用電子機器を取り付ける例が増えている。この場合、電源ライン、回路配線をドア枠からドアに接続する必要のあることが多く、適当なケーブルを用いて接続するか無線方式で連系するかして電源および信号の伝送を行っている。
【0003】
例えば、特許文献1には、給電部10から受電部8に対して無線方式で給電して二次電池7に充電し、IDカード9とカードリーダ3とが信号授受を行うセキュリティシステムが示されている。
【特許文献1】特開2006−138162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、無線方式の給電手段がどのような具体的構成であるかは示されていない。
【0005】
ここで、セキュリティとドアの施錠との関係に関して言えば、閉扉状態では閂を懸けておき、開扉するときに閂を外すことが行えればよい。そして、ドアチェッカにより自動的に閉扉状態になることを前提にすれば、開扉状態ではセキュリティ目的で給電する必要はないから電源、信号の授受を行わなくてよい。
【0006】
本発明は上述の点を考慮してなされたもので、固定側装置と可動側装置とが接近したときに給電する非接触給電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的達成のため、本発明では、
固定側装置と可動側装置とが接近したときに非接触給電する装置において、
少なくとも一方が磁石であって互いに磁気的に吸引し合う一対の磁気吸引部材と、
それぞれ前記磁気吸引部材を構成する一対の磁性部材を有し、前記固定側装置と前記可動側装置とに取り付けられ、互いに磁気吸引して摺動する一対の磁気的作動手段と、
それぞれ前記磁気的作動手段に組み込まれ、前記磁気的作動手段に対して前記磁気吸引部材による磁気吸引方向と反対方向に前記磁性部材の磁気吸引力よりも小さい作用力を与える一対のバネと、
それぞれ磁気鉄心およびこの磁気鉄心に巻装された巻線を有し、前記一対の磁気的作動手段に各別に装着されて電磁エネルギーを授受する電磁結合手段と、
をそなえ、前記一対の磁気的作動手段が磁気吸引により接近したとき前記電磁結合手段を作動させることを特徴とする非接触給電装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上述のように、閉扉状態になると、一対の磁気的作動手段が磁気吸引して摺動すると、この磁気的作動手段に装着された電磁結合手段が電磁エネルギーを授受して給電を行うため、良好に給電することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の一実施例の構成を示しており、ドアを閉めた状態であってドア100側に対してドア枠200側から給電するときの各要素の位置関係を示している。
【0011】
図1では、ドア100側の磁性部材である磁石111とドア枠200側の磁性部材である磁石211とが吸引し合って、一対の磁気的作動手段110,210が相互に最接近している。
【0012】
磁気的作動手段110は、磁石111の他に、磁石支持部材112、バネ113を有し、これに対向するもう一つの磁気的作動手段210は、磁石211の他に、磁石支持部材212、伸張性のバネ213を有する。そして、磁石111,211が吸引し合うことにより、バネ113,213を圧縮して磁気的作動手段110,210を相互に接近させる。
【0013】
この磁気的作動手段110,210には、電磁結合手段120,220が組み込まれており、磁気的作動手段120,220は、バネ113,213を圧縮する方向に、電磁結合手段120,220と一緒に摺動突起112,212により取付枠130,230内を摺動して最接近位置に達する。
【0014】
最接近位置では、電磁結合手段120,220における鉄心121,221によって両者が磁気的に結合し、コイル122,222の一方に入力が与えられると他方に出力が生じる。これら入、出力は、端子T1,T2を介して図示しない電源回路に流れる。
【0015】
鉄心121,221は、縦断面形状がほぼコ字型のものを例示したが、縦断面形状がC字型、U字型でもコ字型と同様に、コイル122,222を巻装することができ、磁気的作動手段110,210との関係も同様に構成することができる。素材は、とくに限定されないが、フェライトが適当である。
【0016】
図2は、図1の状態にあったドア100が開き始めた状態を示しており、ドア100がドア枠200から離隔し、磁気的作動手段110,210が相互に離間した上に、ドア100またはドア枠200内に収納された状態となっている。
【0017】
つまり、図1では、磁気的作動手段110,210はドア100の外周面またはドア枠200の内周面から突出していたが、図2では突出していない。これは、磁石111と磁石211との磁気吸引が行われなくなり、バネ113,213の伸張力により磁気的作動手段110,210が電磁結合手段120,220とともに引っ込んだ状態となっている。
【0018】
この状態では、電磁結合手段120,220相互間の電磁結合はないから、端子T1,T2間での給電は行われない。したがって、開扉状態で給電が必要であれば、例えばドア100側に二次電池を設けて閉扉状態で充電しておき、開扉状態では、二次電池から回路に対して給電する構成とすればよい。
【0019】
そして、図1の閉扉状態を図2の開扉状態と対比すると判るように、磁気的作動手段110,210の位置関係、つまり磁気的作動手段110,210が互いに相手側に突出して電磁結合手段120,220が給電作用を行う。この閉扉状態では、磁石111,211が互いに磁気吸引することにより磁気的作動手段110,210が摺動して電磁結合手段120,220が電磁結合した状態となり、給電動作を行う。
【実施例2】
【0020】
図3(a),(b)は、図1および図2で簡略化して描いた結果、図示していなかった細部構造を付加して描いた、磁気的作動手段110,210および電磁結合手段120,220、取付枠130,230を示している。この場合、ドア100側とドア枠200側とを纏めて示しており、符号は両方につき共通するものとして示している。
【0021】
すなわち、磁気的作動手段110,210は、磁石111,211、鉄心121,221の端面、つまり相互対向面が、磁石支持部材112,212に固着された面部材124,224により保持されている。
【0022】
そして、磁気的作動手段110,210の摺動のために、取付枠230の内面には、バネ113,213の保持部材を兼ねる天井面および底面のガイドレール131,231および両側壁面のガイドレール132,232が設けられている。
【実施例3】
【0023】
図4(a),(b)は、電磁結合手段120,220の他の構成例を示したものである。すなわち、図4(a)は、縦断面形状がI字型をなすI型鉄心の121,221にコイル122,222を巻装して周囲に磁気的作動手段110,210の磁石111a,211aを配したものである。また、図4(b)は、周壁、底壁および底壁中心部に立てられた心柱を持ち、縦断面がE字型で横断面が同心円型の、いわゆるポット型鉄心121,221の内部空間にコイル122,222を巻装、収納して、周囲に磁石111a,211aを配したものである。このように、電磁結合手段110,210は、種々の構成とすることができる。
【適用例】
【0024】
図5は、本発明をドアのサムターン操作装置に適用したときの全体構成を示している。ドア100には、サムターン303aおよびサムターン操作装置303b付きの受電装置303が設けられ、ドア枠200には電源301に接続された送電装置302が設けられている。
【0025】
これにより、閉扉状態ではドア枠200側の送電装置302からドア100側の受電装置303に向けて非接触で給電が行われ、例えばRFIDと呼ばれる無線式IDカードによりサムターン操作装置303bによりサムターン303aを開閉操作することができる。
【0026】
操作後に開扉状態になると給電が停止するが、そのときはサムターンの操作を必要としないから不都合はない。そして、その後に再び閉扉状態になって給電可能となるからサムターンを操作することができる。
【他の実施例】
【0027】
上記実施例における磁石111,211は、その一方のみを磁石とし、他方は鉄などの磁性材の部材に置き換えてもよい。さらに、磁石111,211は、永久磁石の他に、閉扉状態で通電されて磁気吸着する電磁石を用いることもできる。
【0028】
また、上記実施例では、ドアとドア枠との間での給電を例に説明したが、これに類する設備における固定側装置と可動側装置との間の給電にも、同様に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例の構成を示す縦断面図であって、建物の閉扉状態を示す図。
【図2】本発明の一実施例の構成を示す縦断面図であって、建物の開扉状態を示す図。
【図3】本発明の他の実施例の構成を示す縦断面図。
【図4】本発明に用いる磁気的作動手段の他の構成例を示す斜視図。
【図5】本発明に係る非接触給電装置をドアのサムターン操作装置に適用した例を示す説明図。
【符号の説明】
【0030】
100 ドア、110,210 磁気的作動手段、111,210 磁石、
112,212 磁石支持部材、113,213バネ、
120,220 電磁結合手段、121,221 鉄心、
122,222 コイル、130,230 取付枠、
131,132,231,232 ガイドレール、301 電源、
302 送電装置、303 受電装置、303a サムターン、
303b サムターン駆動装置。T 端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側装置と可動側装置とが接近したときに非接触給電する装置において、
少なくとも一方が磁石であって互いに磁気的に吸引し合う一対の磁気吸引部材と、
それぞれ前記磁気吸引部材を有し、前記固定側装置と前記可動側装置とに取り付けられ、互いに磁気吸引して摺動する一対の磁気的作動手段と、
それぞれ前記磁気的作動手段に組み込まれ、前記磁気的作動手段に対して前記磁気吸引部材による磁気吸引方向と反対方向に前記磁気吸引部材の磁気吸引力よりも小さい作用力を与える一対のバネと、
それぞれ磁気鉄心およびこの磁気鉄心に巻装された巻線を有し、前記一対の磁気的作動手段に各別に装着されて電磁エネルギーを授受する電磁結合手段と、
をそなえ、前記一対の磁気的作動手段が磁気吸引により接近したとき前記電磁結合手段を作動させることを特徴とする非接触給電装置。
【請求項2】
請求項1記載の非接触給電装置において、
前記磁気的作動手段は、磁気吸引し合う方向に沿って移動可能であることを特徴とする非接触給電装置。
【請求項3】
請求項1記載の非接触給電装置において、
前記一対の磁気吸引部材は、ともに永久磁石である非接触給電装置。
【請求項4】
請求項1記載の非接触給電装置において、
前記磁気鉄心は縦断面がほぼコ字型であり、前記一対の磁気吸引部材は前記磁気鉄心の中央部に配されたことを特徴とする非接触給電装置。
【請求項5】
請求項1記載の非接触給電装置において、
前記磁気鉄心は縦断面がI型であり、前記磁気吸引部材は前記磁気鉄心の周囲に配されたことを特徴とする非接触給電装置。
【請求項6】
請求項1記載の非接触給電装置において、
前記磁気鉄心はポット型であり、前記磁気吸引部材は前記磁気鉄心の周囲に配されたことを特徴とする非接触給電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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