説明

非接触給電装置

【課題】非接触給電装置において大電流に起因する騒音を低減する。
【解決手段】給電盤31は、非接触給電の給電制御機器(35,37,39,41)と、筐体33と、磁気遮蔽プレート(43,45,47,49,51,53)とを備えている。給電制御機器は、給電線に沿って移動する移動体に非接触で給電を行う給電システムに用いられる、給電線に電流を供給する電源装置に設けられている。筐体33は、給電制御機器(35,37,39,41)を収納する。磁気遮蔽プレート(43,45,47,49,51,53)は、給電制御機器(35,37,39,41)に対応して筐体33に設けられており、非磁性かつ導電性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触給電装置に関し、特に、大電流が流れる機器を有する非接触給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工場等のクリーンルームでは、物品を搬送する搬送台車を駆動するために、非接触給電システムが知られている。
【0003】
非接触給電システムは、電源として機能する給電装置および給電線からなる一次側回路と、搬送台車のモータ等を含む二次側回路とを有している。給電線は、搬送台車の軌道に沿って架設されており、電磁誘導によって二次側回路に電力を供給する。
【0004】
具体的には、給電線は、軌道に沿って設けられた給電レールの給電線ホルダに保持されている。搬送台車の電力受電ユニットには、断面がほぼ「E」字型したフェライト製のコアが固定されている。コアの中央の突出片は、コイルが巻かれており、給電線の間に非接触で挿入されている。給電線に電流を流すことで、そこに発生する磁界がコアに巻かれたコイルに作用して、その結果、コイルに誘導電流が流れる。以上のようにして、給電線から搬送台車の電力受電ユニットに非接触で電力が供給され、その電力がモータや制御機器で利用される。
一次側回路の給電装置は、具体的には、地面等に置かれた給電盤からなる。給電盤内には、インバータ、コンデンサ、リアクター等の給電制御機器が多数配置されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−218681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の給電装置では、動作中に可聴領域の高音が発生しているという問題がある。この高音は、作業者にとっては耳障りであり、そのため工場での作業性に悪影響を与える。
【0007】
本発明の発明者はこの現象に着目し、その原因を追及した。その結果、発明者は、実験を繰り返すことで、下記のような原因を発見することができた。
給電装置では、一般に、交流(例えば、5〜10kHz)の大電流をコンデンサやリアクター等の給電制御機器に流している。また、これ機器の近傍には、筐体を構成する鋼等のプレートが配置されており、高周波とは言えないが大電流であるので、機器からは磁界が発生している。この磁界が鋼製のプレートに作用して、プレートを振動させている。この結果、筐体が発音体となって、給電装置全体が騒音を発生している。特に、交流の周波数が可聴領域の場合には、作業者にとって耳障りである。
【0008】
本発明の課題は、非接触給電装置において大電流に起因する騒音を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る非接触給電装置は、給電制御機器と、筐体と、遮蔽材とを備えている。給電制御機器は、給電線に沿って移動する移動体に非接触で給電を行う給電システムに用いられる、給電線に電流を供給する電源装置に設けられる。筐体は、給電制御機器を収納する。遮蔽材は、給電制御機器に対応して筐体に設けられており、非磁性かつ導電性である。
この装置では、遮蔽材が、給電制御機器から発生する磁界を遮蔽することで、筐体の振動を防止する。なお、「遮蔽材が給電制御機器に対応して筐体に設けられている」とは、遮蔽材が給電制御機器を囲ったり、覆ったり、機器と磁性金属との間に配置されたりしている状態を含む。また、本発明は、筐体そのものが遮蔽材となっている場合も含む。
【0010】
遮蔽材は、電源装置内に設けられた給電制御機器のうち、比較的大電流が流れる機器に対応して配置されていることが好ましい。
この装置では、遮蔽材が大電流が流れる機器に対応して配置されているので、少ない部材で効果的に給電制御機器から発生する磁界を遮蔽することができる。なお、「遮蔽材は、電源装置内に設けられた給電制御機器のうち、比較的大電流が流れる機器に対応して配置されている」とは、遮蔽材が給電制御機器のうち比較的大電流が流れる機器を囲ったり、覆ったり、機器と磁性金属との間に配置されたりしている状態を含む。
【0011】
筐体は平面部を有しており、遮蔽材は平面部に取り付けられている平面板状部材であることが好ましい。
この装置では、簡単な形状の部材によって、給電制御機器から発生する磁界を遮蔽することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る非接触給電装置では、非接触給電装置において大電流に起因する騒音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例が採用された非接触給電システムの模式図。
【図2】本発明の一実施例としての非接触給電システムの電力供給装置の模式図。
【図3】給電盤の内部正面図。
【図4】第1リアクターおよび第2リアクターの側面図。
【図5】図3のV矢視図であり、コンデンサ集合体の側面図。
【図6】給電盤の外部正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1)非接触給電システム
以下、本発明の一実施例である非接触給電システム1について説明する。非接触給電システム1は、例えば、給電線を用いた非接触電力供給方式を用いた有軌道台車システムに採用される。
【0015】
図1は、本発明の一実施例が採用された非接触給電システムの模式図である。図において、非接触給電システム1は、給電回路3と、受電回路5を有している。給電回路3は、一次側回路である電力供給装置7と、給電線9とを有している。電力供給装置7を構成する各回路の機能については後述する。
【0016】
受電回路5は、図示しない搬送車に設けられている。受電回路5は、搬送車の駆動モータおよび制御回路により構成される駆動制御機構11に接続されており、共振回路13と、インピーダンス変換回路15と、二次側整流回路17とを有している。これら回路の機能は公知であるので、説明を省略する。
【0017】
(2)電力供給装置
図2は、本発明の一実施例としての非接触給電システム1の電力供給装置7の模式図である。
【0018】
電力供給装置7は、主に、交流電源21と、一次側整流回路23と、電圧制御回路25と、インバータ回路27と、フィルタ回路29を有している。
【0019】
一次側整流回路23は、交流を直流に変換する整流機能を有している。一次側整流回路23は、例えば、三相ブリッジ整流回路や平滑用コンデンサを有している。
【0020】
電圧制御回路25は、出力電圧を制御する機能を有している。
【0021】
インバータ回路27は、直流電圧を交流電圧に変換する機能を有している。また、インバータ回路27は、含有出力周波数の成分を制御する機能も有している。インバータ回路27は、複数の半導体スイッチング素子、例えば、IGBT、バイポーラトランジスタまたはFETを備えている。インバータ回路27のスイッチング素子は、直流電圧を交流電圧に変換する。
【0022】
フィルタ回路29は、フィルタ回路29は電圧を電流に変換する機能および所定の周波数成分のみを通過させる機能を有している。フィルタ回路29は、同調フィルタであり、インダクタとキャパシタで構成されるLC共振器を用いている。
【0023】
(3)給電盤
図3〜図6を用いて、給電盤31について説明する。図3は給電盤の内部正面図である。図4は第1リアクターおよび第2リアクターの側面図である。図5は、図3のV矢視図であり、コンデンサ集合体の側面図である。図6は、非接触給電盤の外部正面図である。
【0024】
給電盤31は、電力供給装置7を実現するための具体的な装置である。なお、以下の説明では、発明の説明に必要な部品や構造のみを説明する。
【0025】
図6に示すように、給電盤31は、筐体33と、扉34とを有している。これらは鋼製である。筐体33は、背面部33aと、右側面部33bと、左側面部33cと、上面部33dと、底面部33eとを有している。なお、この実施形態の説明では、給電盤31は扉34側を正面として説明する。
【0026】
筐体33内には、第1リアクター35と、第2リアクター37と、端子台39と、コンデンサ集合体41とが設けられている。
【0027】
また、給電盤31は、アルミニウム製の複数の磁気遮蔽プレートを有している。複数の磁気遮蔽プレートは、非磁性体でかつ導電性の材料からなる磁気遮蔽材として機能する。また、複数の磁気遮蔽プレートは磁界を遮蔽するための所定の厚みを有している。具体的には、第1磁気遮蔽プレート43、第2磁気遮蔽プレート45、第3磁気遮蔽プレート47、第4磁気遮蔽プレート49、第5磁気遮蔽プレート51、第6磁気遮蔽プレート53が設けられている。
【0028】
第1磁気遮蔽プレート43は、筐体33の背面部33aに固定された平坦な部材である。第1磁気遮蔽プレート43の前面には、第1リアクター35および第2リアクター37がこの順番で上下に並んで配置されている。第1リアクター35および第2リアクター37は、第1磁気遮蔽プレート43上において、筐体33の右側面部33bに近接している。以上のようにして、第1磁気遮蔽プレート43が第1リアクター35および第2リアクター37の背面を覆っている。言い換えると、第1リアクター35および第2リアクター37と筐体33の背面部33aとの間には、第1磁気遮蔽プレート43が配置されている。
【0029】
第2磁気遮蔽プレート45は、第1ファン36および第2ファン38を固定するためのブラケットである。第2磁気遮蔽プレート45は、筐体33の右側面部33b側の面に設けられている。第2磁気遮蔽プレート45は、第1リアクター35および第2リアクター37に対応する主面部45aと、主面部45aの上端から内側に延びる上側延長部45bと、主面部45aの下端から内側に延びる下側延長部45cを有している。なお、主面部45aには、第1ファン36および第2ファン38が設けられている。以上より、主面部45aが第1リアクター35および第2リアクター37の側面を覆っている。言い換えると、第1リアクター35および第2リアクター37と右側面部33bとの間には、第2磁気遮蔽プレート45が配置されている。また、上側延長部45bが第1リアクター35の上面の一部を覆っており、下側延長部45cが第2リアクター37の下面の一部を覆っている。
【0030】
端子台39は外部から給電線が接続される構造である。端子台39は、筐体33の右側面部33bの下部に固定されている。第3磁気遮蔽プレート47は、端子台39の全体を覆うような形状を有している。
【0031】
コンデンサ集合体41は、図3および図5から明らかなように、多数のコンデンサが直列に接続されてなる。コンデンサ集合体41は、第1磁気遮蔽プレート43の前面に固定されている。図3に示すように、コンデンサ集合体41は、第1リアクター35および第2リアクター37の左側に配置されている。多数のコンデンサの両側方には、第4磁気遮蔽プレート49および第5磁気遮蔽プレート51が配置されている。第4磁気遮蔽プレート49および第5磁気遮蔽プレート51は、図5に示すように、上下方向に長い概ね矩形状であり、図3の紙面直交方向に所定の幅を有している。以上より、コンデンサ集合体41は、背面が第1磁気遮蔽プレート43に覆われ、両側面が第4磁気遮蔽プレート49および第5磁気遮蔽プレート51に覆われている。
【0032】
扉34の内面には、第6磁気遮蔽プレート53が設けられている。第6磁気遮蔽プレート53は、扉34を閉じた状態で、第1リアクター35,第2リアクター37、端子台39およびコンデンサ集合体41の前面に対応した形状及び位置を有している。したがって、扉34を閉じた状態で、第1リアクター35,第2リアクター37、端子台39およびコンデンサ集合体41と扉34の間には、第6磁気遮蔽プレート53が位置している。
【0033】
(4)本発明の効果
以上に述べた給電盤31では、動作中に各機器に電流が流れる。この場合、インバータ回路27には大電流は流れないが、第1リアクター35、第2リアクター37、端子台39、コンデンサ集合体41には数十Aといった大電流が流れる。そのため、これら部材から放射磁界が発生する。
【0034】
しかし、この実施形態では、磁界は各部品の周囲に配置されたアルミニウム製の磁気遮蔽プレートに流れ込み、筐体を構成する部材に作用しにくい。つまり、アルミニウム製の磁気遮蔽プレートが磁界を遮るシールド部材として機能している。したがって、筐体等の鋼プレートに作用する磁界が全く無くなっているか少なくとも弱くなっており、その結果、振動や騒音が少なくなっている。
具体的には、第1リアクター35および第2リアクター37は、第1磁気遮蔽プレート43、第2磁気遮蔽プレート45、第6磁気遮蔽プレート53によって覆われている。端子台39は、第3磁気遮蔽プレート47によって覆われている。コンデンサ集合体41は、第1磁気遮蔽プレート43,第4磁気遮蔽プレート49,第5磁気遮蔽プレート51、第6磁気遮蔽プレート53によって覆われている。
【0035】
なお、この実施形態では、各磁気遮蔽プレートは各機器の全体を覆っていない場合でも、部品と少なくとも筐体等の鋼プレートとの間に配置されることで、鋼プレートへの磁界の影響を低減している。また、各磁気遮蔽プレートは比較的大電流が流れる機器のみに対応して設けられているので、使用量があまり多くなることがない。したがって、全体が安価になり、また強度低下のおそれがない。
また、各磁気遮蔽プレートは筐体の平面部に固定されている平面板状部材である。したがって、簡単な形状の部材によって、各機器から発生する磁界を遮蔽することができる。
【実施例1】
【0036】
アルミニウム製の磁気遮蔽プレートを用いていない従来技術と、アルミニウム製の磁気遮蔽プレートを前述の実施形態のように用いた本発明技術とで、騒音のレベルを比較した。
騒音計で10kHzの音圧を測定した。騒音計は、給電盤から1000mm離れており、床からは1200mmの高さにあり、盤中心から水平方向±500mm移動させた。
従来技術では、扉を開けた状態で給電を行うと、測定結果は平均65dBsplであった。また、扉を閉じた状態で給電を行うと、測定結果は平均55dBsplであった。
それに対して本発明の技術の場合は、扉を開けた状態で給電を行うと、測定結果は平均48dBsplであった。また、扉を閉じた状態で給電を行うと、測定結果は平均41dBsplであった。このようにして、本発明の技術によって、10kHzの音圧が大幅に減少することが分かった。また、作業者の聴覚においても、耳障りな状態から気にせずに作業できる状態に変化したことが分かった。
【0037】
(5)他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0038】
磁界をシールドするための材料としては、アルミニウムに限定されない。銅等の他の高導電率材料でもよい。
【0039】
特に、給電盤内の各種部品の種類、形状、配置等は前記実施形態に限定されない。
また、給電盤内の全ての大電流が流れる機器に磁気遮蔽プレートを設けなくてもよい。強い磁界を発生する機器にのみ磁気遮蔽プレートを設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、大電流が流れる部品を有する非接触給電装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 非接触給電システム
3 給電回路
5 受電回路
7 電力供給装置
9 給電線
11 駆動制御機構
13 共振回路
15 インピーダンス変換回路
17 二次側整流回路
21 交流電源
23 一次側整流回路
25 電圧制御回路
27 インバータ回路
29 フィルタ回路
31 給電盤(非接触給電装置)
33 筐体
33a 背面部
33b 右側面部
33c 左側面部
33d 上面部
33e 底面部
34 扉
35 第1リアクター(給電制御機器)
37 第2リアクター(給電制御機器)
39 端子台(給電制御機器)
41 コンデンサ集合体(給電制御機器)
43 第1磁気遮蔽プレート(遮蔽材)
45 第2磁気遮蔽プレート(遮蔽材)
45a 主面部
45b 上側延長部
45c 下側延長部
47 第3磁気遮蔽プレート(遮蔽材)
49 第4磁気遮蔽プレート(遮蔽材)
51 第5磁気遮蔽プレート(遮蔽材)
53 第6磁気遮蔽プレート(遮蔽材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電線に沿って移動する移動体に非接触で給電を行う給電システムに用いられる、給電線に電流を供給する電源装置に設けられた給電制御機器と、
前記給電制御機器を収納する筐体と、
前記給電制御機器に対応して前記筐体に設けられた、非磁性かつ導電性の遮蔽材と、
を備えた非接触給電装置。
【請求項2】
前記遮蔽材は、前記電源装置内に設けられた給電制御機器のうち、比較的大電流が流れる機器に対応して配置されている、請求項1に記載の非接触給電装置。
【請求項3】
前記筐体は平面部を有しており、
前記遮蔽材は前記平面部に取り付けられている平面板状部材である、請求項1または2に記載の非接触給電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−268530(P2010−268530A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115079(P2009−115079)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】