説明

非接触通信装置、通信方法及びロボット装置

【課題】連続する光通信を安定して行える通信方法を提供する。
【解決手段】非接触通信装置40は、送信信号を光信号20に変換し第1の方向20aに発光する発光素子7と、第1の方向20aと交差する第2の方向2aに相対移動可能に設けられ、光信号20を受信し受信信号を出力する複数の受光素子2と、複数の受光素子2からの受信信号を合成する合成部3と、を備え、光信号20が受光素子2のうち少なくとも1つに受光される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触通信装置、通信方法、及びロボット装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボットや生産装置において多機能化やインテリジェント化が求められている。多機能化やインテリジェント化には高速通信機能が不可欠だが、これら装置は回転部や直動部といった可動部を備えており、この可動部の制約が高速通信実現への妨げとなっている。
【0003】
例えば、同軸ケーブルや差動ケーブルを可動部に用いると特性変動や劣化、断線等の問題が生じる。またスリップリングを使った可動部での通信では、滑り接触に伴う雑音や摩耗による寿命の短さが問題となっている。
【0004】
これに対して、非接触通信により可動部での通信を実現しようとする試みが従来からなされている。例えば、光ロータリーコネクターや特許文献1では光軸と回転軸を一致させることで連続した通信を実現している。しかしこの手法は、回転軸中空構造にしてモーターシャフトや電力配線を通すことができなくなるため構造上の課題がある。
【0005】
これに対して、レーザー素子やLED素子等の発光素子とフォトダイオード等受光素子を複数組み合わせたることによる中空構造可能な非接触通信が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平8−508096号公報
【特許文献2】特開2002−75760号公報
【特許文献3】特開2005−302964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2や特許文献3に記載の回転型の非接触通信方法が開示されている。この非接触通信方法では通信相手となる発光素子と受光素子のペアが次々と切り替わっている。しかし、発光素子と受光素子のペアが次々と切り替る際の課題について考慮されていない。例えば、受発光素子のペアが切り替わる際に信号が途切れたり、信号レベルが変動するために、安定した通信ができないという課題がある。そこで、連続する光通信を安定して行える方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]本適用例にかかる非接触通信装置は、送信信号を光信号に変換し第1の方向に発光する発光素子と、前記第1の方向と交差する第2の方向に相対移動可能に設けられ、前記光信号を受信し受信信号を出力する複数の受光素子と、前記複数の受光素子からの前記受信信号を合成する合成部と、を備え、前記光信号が前記受光素子のうち少なくとも1つに受光されることを特徴とする。
【0010】
本適用例によれば、発光素子が送信信号を光信号に変換し第1の方向に発光する。そして、複数の受光素子が第1の方向と交差する第2の方向に相対移動可能に設けられ、光信号を受信し受信信号を出力する。光信号は受光素子のうち少なくとも1つに受光される。そして、合成部が複数の受光素子からの受信信号を合成している。つまり、複数の受光素子が受光して出力する受信信号を合成部が合成している。従って、次々と発光素子と受光素子のペアが切り替わっても光信号が途切れないように通信することができる。その結果、連続する光通信を安定して行うことができる。
【0011】
[適用例2]上記適用例に記載の非接触通信装置において、前記発光素子に対する前記受光素子の相対位置を検出する位置センサーと、前記位置センサーが出力する位置情報を用いて前記発光素子の出力レベルを制御するための制御信号を生成する制御部と、前記制御信号に基づいて前記発光素子の出力レベルを変える可変利得部と、を備えることが好ましい。
【0012】
本適用例によれば、位置センサーが発光素子に対する受光素子の相対位置を検出する。そして、制御部は、位置センサーが出力する位置情報を用いて発光素子の出力レベルを制御するための制御信号を生成する。次に、可変利得部が制御信号に基づいて発光素子の出力レベルを変えている。つまり、発光素子に対する受光素子の位置情報に基づいて可変利得部が発光素子の出力レベルを調整している。これにより、次々と発光素子と受光素子のペアが切り替わっても所定の出力レベルの信号にて通信を行うことができる。
【0013】
[適用例3]上記適用例に記載の非接触通信装置において、前記光信号が照射される範囲より狭い範囲に前記受光素子が複数配置されることが好ましい。
【0014】
本適用例によれば、特定の発光素子が照射する光信号の範囲より狭い範囲に受光素子が複数配置されている。従って、特定の発光素子に対してペアとなる受光素子が次々と切り替わる際に、少なくとも1つの受光素子が光信号を受信する。従って、通信を途切れなく継続することができる。
【0015】
[適用例4]上記適用例に記載の非接触通信装置において、前記受光素子は1列に配置され、前記発光素子は複数設置され、隣り合う前記発光素子の距離は、前記受光素子の列の長さと前記光信号が照射される範囲の幅とを加えた長さより短い距離であることが好ましい。
【0016】
本適用例によれば、受光素子は一列に配置されている。そして、発光素子は複数設置されている。隣り合う発光素子の距離は、受光素子の列の長さと光信号が照射される範囲の幅とを加えた長さより短い距離である。このとき、少なくとも1個の発光素子が照射する光信号を受光素子が受光することができる。
【0017】
[適用例5]上記適用例に記載の非接触通信装置において、前記受光素子は回転軸を中心とした第1の円周上に配置され、前記発光素子は前記回転軸を中心とし前記第1の円周と同じ直径の第2の円周上に配置されることが好ましい。
【0018】
本適用例によれば、受光素子と発光素子はそれぞれ同じ回転軸と同じ直径を有する別々の円周上に配置されている。従って、受光素子と発光素子とが互いに回転しあっていても確実に対向する場所に位置できる為、確実に通信することができる。
【0019】
[適用例6]上記適用例に記載の非接触通信装置において、前記受光素子に受光されない前記発光素子は発光を停止されることが好ましい。
【0020】
本適用例によれば、受光素子とペアになっていない発光素子での発光を停止している。従って、発光素子の消費電力を低減させることができる。
【0021】
[適用例7]本適用例にかかる通信方法は、発光素子が出力する光信号を受光素子が受信する通信方法であって、前記発光素子が前記光信号を出力する工程と、複数の前記受光素子が前記光信号を受光し前記光信号を電気信号に変換した受信信号を出力する工程と、複数の前記受信信号を合成した合成信号を生成する工程と、を有することを特徴とする。
【0022】
本適用例によれば、まず、発光素子が前記光信号を出力する。次に、複数の受光素子が光信号を受光して光信号を電気信号に変換した受信信号を出力する。次に、複数の前記受信信号を合成した合成信号を生成している。つまり、複数の光信号を合成することにより合成信号を生成している。従って、複数の受光素子が受光する光信号を用いて途切れることなく通信を継続することができる。その結果、連続する光通信を安定して行うことができる。
【0023】
[適用例8]本適用例にかかるロボット装置は、上記記載の非接触通信装置と、可動部と、を備えることを特徴とする。
【0024】
本適用例によれば、ロボット装置は可動部と非接触通信装置とを備えている。そして、上記適用例に記載の非接触通信装置を用いて可動部において途切れのない安定した通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態1にかかる非接触通信装置の構成を示すブロック図。
【図2】非接触通信装置の構成を示す概略斜視図。
【図3】発光素子と受光素子の配置構成を示す模式図。
【図4】実施形態2にかかる非接触通信装置の構成を示すブロック図。
【図5】発光素子と受光素子の配置関係を説明するための模式図。
【図6】第1発光素子〜第4発光素子と受光素子の配置を説明するための模式図。
【図7】相対位置検出センサーによって発光素子の出力レベルを制御する方法を説明するためのタイムチャート。
【図8】通信工程を示すフローチャート。
【図9】アーム先端に撮影カメラ装置を備えたロボットの構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の特徴的な実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下の各図においては、や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0027】
(実施形態1)
本実施形態における非接触通信装置について、図1〜図3に従って説明する。図1は、実施形態1にかかる非接触通信装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、非接触通信装置40は発光素子7と複数の受光素子2の組み合わせを備えている。発光素子7と接続して送信部8を備えている。送信部8は送信データ9を外部の装置から入力し、送信データ9を送信信号に変換する。そして、送信部8は送信信号を発光素子7に出力する。発光素子7は送信信号を光信号20に変換して第1の方向20aへ射出する。光信号20が照射される範囲には2つの受光素子2の幅より広い幅となっている。受光素子2は第1の方向20aと直交する第2の方向2aへ移動可能となっている。従って、光信号20は1〜2個の受光素子2を照射するようになっている。つまり、光信号20は少なくとも1つの受光素子2に受光される。複数の受光素子2は光信号20を受光し受信信号に変換する。合成部3は複数の受信信号を合成して1つの合成信号を生成し、受信部4に出力する。受信部4は合成信号を受信データ5に変換して外部の装置へ出力する。
【0028】
図2は、本実施形態の非接触通信装置の構成を示す概略斜視図である。図2に示すように、非接触通信装置40は円盤状の固定部1を備え、固定部1には複数の受光素子2が配置されている。一方、中心軸11を中心に回転する回転軸10と一緒に回転する円盤状の回転部6には発光素子7が配置されている。この斜視図では、発光素子7は受光素子2と相対する場所に位置し、回転部6の裏面側に隠れている。
【0029】
図3は、本実施形態の発光素子と受光素子の配置構成を示す模式図である。図3(a)では固定部1に受光素子2が配置された面を示し、図3(b)では回転部6に発光素子7が設置された面を示している。受光素子2と発光素子7とはそれぞれ同じ直径を有する第1の円周12と第2の円周13との上に配置されている。そして、第1の円周12の中心と第2の円周13の中心とは同一の中心軸11上に設置されている。これにより、回転部6が回転しても発光素子7が移動する軌道は第1の円周12と対向する場所になっている。そして、光信号20は少なくとも1つの受光素子2に受光されるので、常に1つ以上の発光素子7と受光素子2のペアが次々と切り替わるように発光素子7と受光素子2との位置関係が維持される。
【0030】
以上に述べたように、本実施形態にかかる非接触通信装置によれば、以下の効果を得ることができる。
発光素子7が送信信号を光信号20に変換し第1の方向20aに発光する。そして、複数の受光素子2が第1の方向20aと直交する第2の方向2aに相対移動可能に設けられている。受光素子2は光信号20を受信し受信信号を出力する。光信号20は受光素子2のうち少なくとも1つに受光される。そして、合成部3が複数の受光素子2からの受信信号を合成している。つまり、複数の受光素子2が受光して出力する受信信号を合成部3が合成している。従って、回転部6が回転して、次々と発光素子7と受光素子2のペアが切り替わっても光信号20が途切れないように通信することができる。その結果、連続する光通信を安定して行うことができる。
【0031】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、本実施形態では回転部6側に発光素子7を、固定部1側に受光素子2を配置したが、この組み合わせは逆であって構わない。さらに、発光素子7と受光素子2を混合して配置することで容易に双方向通信を実現することができる。双方向通信を実現する場合に、発光素子7と受光素子2を同一の円周上に配置する方法の他に、直径の異なる同心円上に配置する方法も取ることができる。また、本実施形態では回転部6での非接触通信を例として挙げたが、例えば、水平移動する移動体同士での非接触通信にも適用することができる。
【0032】
(実施形態2)
次に、さらなる本実施形態における特徴的な非接触通信装置について、図4〜図7に従って説明する。本実施形態が実施形態1と異なる点は受光素子2と発光素子7との相対位置を検出して発光を制御する点にある。尚、実施形態1と同様な部材についての説明は実施形態1と同じであり、説明を省略する。
【0033】
図4は、本実施形態にかかる非接触通信装置の構成を示すブロック図である。非接触通信装置41は送信部8を備え、送信部8は外部の装置から送信データ9を入力する。送信部8は送信データ9を送信信号に変換し可変利得部31に出力する。送信信号は複数の可変利得部31に分配され、可変利得部31の出力は第1発光素子7a〜第4発光素子7dの各発光素子7に接続されている。発光素子7の個数は特に限定されないが分かりやすくするために4個としている。可変利得部31は、それぞれ制御部32と接続され、制御部32からの制御信号に基づいて利得を変更する。これにより、可変利得部31は発光素子7の出力レベルをかえる。制御部32は位置センサーとしての相対位置検出センサー33と接続されている。相対位置検出センサー33は発光素子7と受光素子2との相対位置を検出する。そして、制御部32は、相対位置検出センサー33が出力する受光素子2と発光素子7との位置情報を用いて制御信号を決定する。
【0034】
第1発光素子7a〜第4発光素子7dにより送信された光信号20を複数の受光素子2が受光する。そして、受光素子2は受信信号を合成部3に出力する。合成部3は受信信号を合成した合成信号を生成し、受信部4に出力する。合成部3の出力は受信部4によって受信データ5に変換される。
【0035】
尚、相対位置検出センサー33は、回転角や直線距離を検出できれば良く、特に限定されないが、相対位置検出センサー33にはエンコーダーやレゾルバー、ホール素子等を用いた装置を用いることができる。さらに、相対位置検出センサー33には超音波やレーザー、容量測定、画像処理等による距離センサーを用いることもできる。その他にも、回転部6を回転させるモーターにパルス信号によって所定の角度で回転するステッピングモーターを用いることで、回転角を知る方式も用いることができる。
【0036】
図5は、本実施形態にかかる発光素子と受光素子の配置関係を説明するための模式図である。図5(a)〜(c)はそれぞれ時系列に発光素子7と受光素子2の相対位置が移動している様子を示している。
【0037】
図5(a)に示すように、第1発光素子7aからの光信号20が照射される範囲の幅L1よりも、複数の受光素子2の各々の間隔L2の方が狭く配置されている。換言すれば、光信号20が照射される範囲より狭い範囲に受光素子2が複数配置されている。このように幅L1よりも間隔L2を狭くすることで、図5(b)に示すように、発光素子7と受光素子2の相対位置がずれた場合に、少なくとも1つ以上の受光素子2が光信号20の照射範囲内に存在することになり、途切れのない受光を実現することができる。このため、連続して安定した通信が可能となる。さらに受光素子2を狭い範囲に集めることができる。これにより、受光素子2と合成部3までの配線長を短くできる。
【0038】
さらに、図5(c)では、第1発光素子7aと受光素子2の相対位置がさらにずれて、第1発光素子7aの隣に位置する第2発光素子7bが受光素子2の列の一端先頭に現れている様子を示している。
【0039】
ここでは、複数の受光素子2が一列に配置され、その列の長さをL3とする。光信号20が照射される範囲の幅L1の半分の長さ(L1/2)まで第2発光素子7bが接近すると、受光素子2は光信号を受光することができることとする。その時に反対側の第1発光素子7aもL1/2の距離以内にあれば、受光素子2は光信号20を受光することができる。従って、受光素子2の列の長さL3に光信号20の照射領域の幅L1を加えた間隔より、隣り合う発光素子7同士の間隔が短くなるように配置されていれば通信を途切れることなく継続することができる。
【0040】
図6は、本実施形態の第1発光素子〜第4発光素子と受光素子の配置を説明するための模式図である。図6において、黒丸が発光素子7を表し、白丸が受光素子2を示している。回転部6と固定部1を重ねて描くことで発光素子7と受光素子2の相対位置関係をかわりやすく示している。また、発光素子7の周囲の図中ハッチングが施された照射領域20bは光信号20の照射される範囲を示している。
【0041】
3つの受光素子2の列の長さは第1発光素子7a〜第4発光素子7dの各々の距離より狭く、かつ複数の光信号の照射領域20bに同時に受光素子2が入る。このように配置することにより、通信を途切れることなく継続できる。さらに、発光素子7同士の距離や受光素子2列の長さを調整することで、できるだけ少ない数の受発光素子数で連続した通信を実現することができる。
【0042】
図7は、相対位置検出センサーによって発光素子の出力レベルを制御する方法を説明するためのタイムチャートである。図7(a)〜(e)の横軸は相対位置検出センサーによって検出された受光素子2と発光素子7との相対位置を表している。本実施形態では回転状の非接触通信を例示しているため、相対位置は回転角で表される。
【0043】
図7(a)〜(c)はそれぞれ、図6で例示した3つの受光素子2からの受信信号のレベルを示している。図7(d)は、比較例における発光素子7の出力レベルを制御しない場合での各受光素子2からの受信信号を合成した例を示している。図7(e)は、発光素子7の出力レベルを制御した場合での各受光素子2からの受信信号を合成した例を示している。
【0044】
図7(a)〜(c)に示すように、回転部6の回転角が進むに従って受信信号のレベルが変動する。受信信号のレベルは、発光素子7と受光素子2が正面に位置する回転角で極大になり、発光素子と受光素子が離れるに従って減衰する。すなわち、図7(a)では角度P1で,図7(b)では角度P2で,図7(c)では角度P3で、受信信号のレベルはそれぞれ極大になり、それが回転角に応じて繰り返される。
【0045】
図7(d)に示すように、一般に各受光素子2からの受信信号を合成したものは回転角と共に変動する。図7(d)の比較例では、角度P1、角度P2、角度P3等の回転角で極大となり、角度P4の回転角で極小となる。このように合成された受信信号が変動することは、受信信号が受信部4によって受信データ5に変換される際にジッターを増大させデータ誤りを引き起こす要因となる。
【0046】
ここで図7(d)の受信信号レベルの変動は回転角に依存している。従って、図4に示したように、相対位置検出センサー33で検出した回転角(受光素子2と発光素子7との相対角度)を基に制御部32で各第1発光素子7a〜第4発光素子7dが発する光信号20の利得を調整し、可変利得部31が受光素子2の出力レベルを変えることにより、合成後の受信信号レベルの変動を抑制することができる。
【0047】
図7に戻って、例えば、角度P1から角度P2の間の合成後の受信信号レベルの変動は、第1発光素子7a〜第4発光素子7dまでのうち2つの発光素子7からの光信号20から生成されるので、その2つの発光素子7からの送信信号に図7(d)の受信信号レベルの逆数に比例した利得を与えることで図7(e)に示すように平坦な受信信号特性を得ることができる。ここで、2つの発光素子7の送信信号に与える利得は必ずしも等しいものでなくともよいが、発光素子7の寿命バラツキを抑えるためには互いに等しい利得制御を行うことがより望ましい。
【0048】
また、上記で述べた通り総ての発光素子7からの光信号20が受信信号に合成される訳ではない。すなわち、残りの発光素子7は発光していなくともよい。従って、図4の相対位置検出センサー33で検出した回転角に応じて、合成後の受信信号に寄与しない発光素子7への送信信号レベルをゼロとする制御を行うことができる。
【0049】
以上に述べたように、本実施形態にかかる非接触通信装置によれば、実施形態1での効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0050】
受光素子2を狭い領域に集めることができるので、合成部3までの配線長を短くできるため、インピーダンスや遅延による不整合や、外乱の影響等を低減できるという効果がある。
【0051】
また、発光素子7と受光素子2の合計数を減らすことができるため、素子の個数と消費電力を削減することができる為省資源な非接触通信装置41にすることができる。さらに、発光素子7同士を互いに離して配置することができるため、発光素子7による発熱の影響を分散し効率よく放熱することができる。これにより、放熱機構を小型・軽量・低コストにできる。さらに、温度を低下させることにより、発光素子7の劣化を抑え寿命を延ばすことができる。
【0052】
さらに、通信に寄与しない発光素子7の発光を停止することにより、消費電力を低減することが可能となる。さらに、発光素子7の寿命を延ばすことができ、放熱のための構造部品を小型軽量化できる、といった効果がある。
【0053】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0054】
(受光信号を合成する通信方法)
次に、上述した複数の受信信号を合成する通信方法について、図8の通信工程を示すフローチャートにて説明する。
【0055】
図8のステップS1は、発光素子が光信号を送信し出力する工程を示している。次のステップS2は、ステップS1で発光した光信号を複数の受光素子が受信する工程を示している。受光素子2は光信号20を受信した後、光信号20を電気信号に変換した受信信号を出力する。ステップS3は、複数の受光素子から出力される受信信号を合成する工程を示している。このステップでは、合成部3が複数の受信信号を合成した合成信号を生成する。合成の方法としては、電圧や電流等の信号加算、受信信号のエネルギーの電力加算等や、論理和加算も用いることができる。ステップS4は、合成された合成信号をデジタル値である受信データに変換する工程である。このステップでは受信部4が合成信号を受信データに変換する。受信データ5への変換は二値化コンパレータを用いる方法や、符号化方式と組み合わせた軟判定方式等を用いることができる。
【0056】
以上に述べたように、本実施形態にかかる通信方法によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、まず、発光素子7が。光信号20を出力している。次に、複数の受光素子2が光信号20を受光して光信号20を電気信号に変換した受信信号を出力する。次に、複数の受信信号を合成した合成信号を生成している。つまり、複数の光信号20を合成することにより合成信号を生成している。従って、複数の受光素子2が受光する光信号20を用いて途切れることなく通信を継続することができる。その結果、連続する光通信を安定して行うことができる。
【0057】
(実施形態3)
次に、特徴的な非接触通信装置を活用したロボットの一実施形態について図9を用いて説明する。図9は、アーム先端に撮影カメラ装置を備えたロボットの構成を示す模式図である。
【0058】
図9に示すように、ロボット装置200は基台100を備え、基台100上に支持台102が設置されている。支持台102の内部には空洞が形成され、この空洞は支持板103により上下に分割されている。支持板103の下部には駆動部としての第1のモーター101が配置され、支持板103の上には第1のモーター101の出力軸に接続された第1減速機104が配置されている。本実施形態で用いる総てのモーターは、例としてステッピングモーターを採用することでモーターの出力軸の回転角度は判っているものとするが、ステッピングモーター以外のモーターとエンコーダーの組み合わせ等であっても構わない。
【0059】
第1減速機104の第1出力軸105は、支持台102に空いた穴を通じて可動部としての第1アーム110に接続されている。支持台102には第1の非接触通信装置固定部1aが固定され、第1非接触通信装置回転部6aは第1出力軸105に固定されている。これにより、第1出力軸105が回転するとき、第1の非接触通信装置固定部1aに対して第1非接触通信装置回転部6aが回転移動する。そして、第1の非接触通信装置固定部1a及び第1非接触通信装置回転部6a等により非接触通信装置としての第1非接触通信装置40aが構成されている。第1の非接触通信装置固定部1aと第1非接触通信装置回転部6aの相対位置は、第1のモーター101から得られた回転角を第1減速機の減速比で割り算することで得られる。
【0060】
第1アーム110には、バネ接触で回転機構に電力を供給できる第1のスリップリング106が固定されている。これによって通信だけでなく電力供給もケーブルを無くすことが可能となっている。
【0061】
第1アーム110の回転先端側には第2のモーター111及び第2減速機112が固定されている。第2減速機112の第2出力軸113は、第1アーム110に空けられた軸穴を通して可動部としての第2アーム120に接続されている。第1アーム110には第2の非接触通信装置固定部1bが固定され、第2出力軸113には第2非接触通信装置回転部6bが固定されている。これにより、第2出力軸113が回転するとき、第2の非接触通信装置固定部1bに対して第2非接触通信装置回転部6bが回転移動する。そして、第2の非接触通信装置固定部1b及び第2非接触通信装置回転部6b等により非接触通信装置としての第2非接触通信装置40bが構成されている。また、第2アーム120には第2のスリップリング114が固定されている。
【0062】
第2アーム120の回転先端には昇降機構122が接続され、昇降機構122は昇降軸121を上下に駆動させることができる。昇降軸121の下端には第3のモーター123が固定されている。第3のモーター123は第3出力軸127を通じて可動部としてのフランジ125に接続されている。第3のモーター123には第3の非接触通信装置固定部1cが固定され、第3出力軸127には第3非接触通信装置回転部6cが固定されている。これにより、第3出力軸127が回転するとき、第3の非接触通信装置固定部1cに対して第3非接触通信装置回転部6cが回転移動する。そして、第3の非接触通信装置固定部1c及び第3非接触通信装置回転部6c等により非接触通信装置としての第3非接触通信装置40cが構成されている。フランジ125には第3のスリップリング124が固定されている。第1非接触通信装置40a〜第3非接触通信装置40cが上記実施形態の非接触通信装置40と同様な装置となっている。
【0063】
フランジ125には、撮影装置126が固定されておりロボット装置200の動きに応じた画像を撮影する。撮影された画像はデジタルデータに変換され、第3非接触通信装置40c〜第1非接触通信装置40aを通じてロボット装置200の外部へと伝送される。第3非接触通信装置40c〜第1非接触通信装置40aは、互いに不連続通信を補償するための特別なメモリーや演算回路を用いずに連続通信を行うことができる。例えば、EtherPHY方式、RS−422方式、LVDS方式等を用いることができる。
【0064】
以上に述べたように、本実施形態にかかるロボット装置200によれば、以下の効果を得ることができる。
【0065】
ロボット装置200の可動部において、連続で安定した通信をより低コストに行うことができる。これにより、高速なデータ通信を必要とする撮影装置をアーム先端に取り付けた場合でも、配線量を減らすことができるためロボットアームを細く軽量にすることが可能となり、より高速にロボットアームを駆動することができる。
【0066】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0067】
2…受光素子、2a…第2の方向、3…合成部、7…発光素子、12…第1の円周、13…第2の円周、20…光信号、20a…第1の方向、31…可変利得部、32…制御部、33…位置センサーとしての相対位置検出センサー、40…非接触通信装置、40a…非接触通信装置としての第1非接触通信装置、40b…非接触通信装置としての第2非接触通信装置、40c…非接触通信装置としての第3非接触通信装置、110…可動部としての第1アーム、120…可動部としての第2アーム、125…可動部としてのフランジ、200…ロボット装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を光信号に変換し第1の方向に発光する発光素子と、
前記第1の方向と交差する第2の方向に相対移動可能に設けられ、前記光信号を受信し受信信号を出力する複数の受光素子と、
前記複数の受光素子からの前記受信信号を合成する合成部と、を備え、
前記光信号が前記受光素子のうち少なくとも1つに受光されることを特徴とする非接触通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触通信装置において、
前記発光素子に対する前記受光素子の相対位置を検出する位置センサーと、
前記位置センサーが出力する位置情報を用いて前記発光素子の出力レベルを制御するための制御信号を生成する制御部と、
前記制御信号に基づいて前記発光素子の出力レベルを変える可変利得部と、を備えることを特徴とする非接触通信装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の非接触通信装置において、
前記光信号が照射される範囲より狭い範囲に前記受光素子が複数配置されることを特徴とする非接触通信装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の非接触通信装置において、
前記受光素子は1列に配置され、
前記発光素子は複数設置され、隣り合う前記発光素子の距離は、前記受光素子の列の長さと前記光信号が照射される範囲の幅とを加えた長さより短い距離であることを特徴とする非接触通信装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の非接触通信装置において、
前記受光素子は回転軸を中心とした第1の円周上に配置され、
前記発光素子は前記回転軸を中心とし前記第1の円周と同じ直径の第2の円周上に配置されることを特徴とする非接触通信装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の非接触通信装置において、
前記受光素子に受光されない前記発光素子は発光を停止されることを特徴とする非接触通信装置。
【請求項7】
発光素子が出力する光信号を受光素子が受信する通信方法であって、
前記発光素子が前記光信号を出力する工程と、
複数の前記受光素子が前記光信号を受光し前記光信号を電気信号に変換した受信信号を出力する工程と、
複数の前記受信信号を合成した合成信号を生成する工程と、を有することを特徴とする通信方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の非接触通信装置と、可動部と、を備えることを特徴とするロボット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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