説明

非接触電波認識用電磁波吸収布帛

【課題】たとえば非接触ICタグおよびリーダライタ複合周辺装置を用いて物品管理を行う物流倉庫等において、空間を仕切るカーテン、物品を覆うカバー等に用いて、書込み及び読取り等のために認識したい非接触ICタグと既に読取り済みなどの理由で認識したくない非接触ICタグとを適切に区分したり、不慮または故意による第三者からの電磁波放射によって非接触ICタグの回路破壊やデータの改ざんを防止することが可能な電磁波吸収布帛を提供する。
【解決手段】基布の少なくとも片面に導電性樹脂層を有して、1GHzにおける透過減衰量が3〜20dBであることを特徴とする非接触電波認識用電磁波吸収布帛である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ICタグおよびリーダライタ複合周辺装置を用いて物品管理を行う物流倉庫等において、書込み及び読取りのために認識したい非接触ICタグと既に読取りがすんだ等の理由で認識したくない非接触ICタグとを適切に区分したり、不慮または故意による第三者からの電磁波放射によって非接触ICタグの回路が破壊されたりデータが改ざんされるのを防止するにあたり好適に用いることができる非接触電波認識用電磁波吸収布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency Identification)と称される非接触型ICタグに関する技術が急速に進歩してきており、物流業界では、バーコードに代わる商品識別・在庫管理技術として、早くから適用範囲の拡大が期待されてきた。
【0003】
しかしながら、国内の多くの店舗や物流倉庫は限られたスペースで大量の商品を取り扱うため、例えば、出入庫時、非接触ICタグおよびリーダライタ複合周辺装置を用いて、商品情報の読取りを行う際、近くに置いてある、既に読取りの済んだ別の商品を意図せず読んでしまう、あるいは過って情報を書換えてしまうといった問題があった。
【0004】
また、システムが立ち上がるにつれ、不慮または故意による第三者の電磁波放射によって非接触ICタグの回路破壊やデータの改ざんが行われる場合も想定され、安全面からその対策が急がれていた。
【0005】
これまで、電磁波ノイズから人体、あるいは測定器や検査機器等の精密機器を防護する目的のために、例えば、特許文献1、2で開示されるような、導電性布帛を用いた電磁波シールドカーテンが提案されている。しかしながら、このような電磁波シールド性カーテンは、電磁波を反射する性質を持つため、リーダライタからの電磁波とカーテンからの反射波が逆位相で打ち消しあい、リーダライタと非接触ICタグが通信可能な距離であるにもかかわらず、読み書きができない位置、いわゆるヌル点が、電磁波長のλ/4間隔で多数発生するといった問題があった。また、これとは逆に、リーダライタからの電磁波とカーテンからの反射波が同位相となって強め合い、通常読みとれない場所にある別の非接触ICタグを意図せず読んでしまうといった問題もあった。
【0006】
このような反射波の発生しない電磁波吸収カーテンとして、半導電性セラミクス繊維で構成されたカーテンが特許文献3に開示されている。しかし、セラミクス繊維は剛性が高く柔軟性に欠け、高価であるため価格アップを招いていた。
【0007】
さらに、特許文献4には、導電性カーボンを塗布した電磁波遮蔽用壁紙が開示されている。その実施例においては、2〜18dBの電磁波シールド性が開示されている。しかしながら、特許文献4は、電磁波雑音から人体を防護するための電磁波遮蔽用壁紙であり、非接触ICタグおよびリーダライタ複合周辺装置におけるヌル点発生や非接触ICタグの認識、区分等、非接触ICの実用化に際する今日の技術的課題に対して何らかの解決策を示唆するものではなかった。また、このような壁紙は、カーテンや覆いとして用いるための基本的要求特性であるソフトさ、ドレープ性、フクラミなどが十分ではなかった。
【特許文献1】特開2006−118260号公報
【特許文献2】登録実用新案第3010147号公報
【特許文献3】特開2001−135135号公報
【特許文献4】特開2001−348787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、たとえば非接触ICタグおよびリーダライタ複合周辺装置を用いて物品管理を行う物流倉庫等において、リーダライタと非接触ICタグが通信可能な距離であるにもかかわらず読み書きができない位置、いわゆるヌル点の発生を防ぎ、書込み及び読取り等のために認識したい非接触ICタグと既に読取りが済んだ等の理由から認識したくない非接触ICタグとを適切に区分したり、不慮または故意による第三者からの電磁波放射によって非接触ICタグの回路破壊やデータの改ざんを防止することが可能な電磁波吸収布帛を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、次の(1)〜(5)のいずれかの構成を特徴とするものである。
(1)基布の少なくとも片面に導電性樹脂層を有し、1GHzにおける透過減衰量が3〜20dBである非接触電波認識用電磁波吸収布帛。
(2)前記導電性樹脂層が、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維ミルドファイバーから選ばれる少なくとも1種の導電性成分を含むものである、前記(1)記載の非接触電波認識用電磁波吸収布帛。
(3)前記導電性樹脂層を30〜120g/mの範囲内で有している、前記(1)または(2)記載の非接触電波認識用電磁波吸収布帛。
(4)前記基布の織組織が平織またはメッシュ織である、前記(1)〜(3)いずれか記載の非接触電波認識用電波吸収布帛。
(5)厚みが500μm〜1mmの範囲内である、前記(1)〜(4)いずれか記載の非接触電波認識用電磁波吸収布帛
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下に説明するとおり、たとえば非接触ICタグおよびリーダライタ複合周辺装置を用いて物品管理を行う物流倉庫等において、書込み及び読取り等のために認識したい非接触ICタグと既に読取り済みなどの理由から認識したくない非接触ICタグとを適切に区分したり、不慮または故意による第三者からの電磁波放射によって非接触ICタグの回路破壊やデータの改ざんを防止することが可能な電磁波吸収布帛を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の電波吸収布帛は、基布の少なくとも片面に導電性樹脂層を有し、かつ1GHzにおける透過減衰量が3〜20dBであることが重要である。
【0012】
透過減衰量が20dB(すなわち入射電磁波1に対して透過電磁波が0.1)より大きいと、電磁波を主に反射するため、リーダライタからの入射波と電波吸収布帛からの反射波が逆位相で打ち消しあい、リーダライタと非接触ICタグとが通信可能な距離であるにもかかわらず読み書きができない位置、いわゆるヌル点が多数発生してしまう。一方、透過減衰量が3dB(すなわち入射電磁波1に対して透過電磁波が0.7)より小さいと、電磁波を主に透過するため、認識したくないタグまで同時に読んでしまう。ヌル点は1〜2点程度発生しても、実用上、さしつかえないことが多いが、ヌル点の数を極力少なくして、通信領域の信頼性をより高めたい場合などには、より好ましい透過減衰量として、上限を10dB(すなわち入射電磁波1に対して透過電磁波が0.32)、下限を5dB(すなわち入射電磁波1に対して透過電磁波が0.56)とするのが好ましい。
【0013】
導電性樹脂層は、バインダー樹脂に導電性成分を分散させたものから形成され、さらに、潤滑性成分、顔料、硬化促進剤、流動調整剤、難燃材、増粘剤、発泡剤、架橋剤、紫外線吸収剤、防汚剤、抗菌剤、その他、各種添加剤を任意の適当量含有させることができる。導電性成分としては、カーボンブラック、グラファイト、金属粉、金属酸化物等の導電性粉体や、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、硫化銅結合繊維、金属繊維、金属メッキ繊維等の導電性繊維を使用することができる。なかでも、バインダー樹脂へ均一分散しやすいという点から、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維ミルドファイバーから選ばれる少なくとも1種の導電性成分であるのが望ましい。さらに、カーボンブラック、グラファイト等の導電性粉体に炭素繊維ミルドファイバーを少量添加し併用するのが望ましい。炭素繊維ミルドファイバーは、表面積が大きく、他の導電性成分と接触しやすく、さらに、繊維内部に導電パスを有するので、導電性成分間のつなぎとして、少量で十分な導電性を得ることができるからである。
【0014】
バインダー樹脂としては、熱可塑性、熱硬化性、或いは紫外線、電子線などの放射線硬化性のいずれでもよい。また、ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリビニルアクリレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレン−ビニルアルコール共重合体等)、ポリエステル、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、メラミン樹脂、ポリブチラール、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリオレフィン、ポリフェニレンオキサイド、セルロース系ポリマー(酢酸セルロース等)、シリコーン系ポリマーなどの有機ポリマー、ならびにこれらのポリマーの誘導体、共重合体、ブレンドおよび前駆物(モノマー、オリゴマー)を併用してよい。
【0015】
バインダー樹脂に対する導電性成分の配合割合としては、バインダー成分100重量部に対して、好ましくは10〜60重量部、より好ましくは20〜50重量部である。少なすぎると必要な導電性が得られない場合が生じ、多すぎると、樹脂皮膜形成性に問題を生じたり、コーティング工程上の不安定要因となったり、経済的に不利となる場合がある。
【0016】
さらに、導電性樹脂層は、前記導電性樹脂を30〜120g/m、より好ましくは30〜80g/mの範囲内で有しているのが望ましい。すなわち導電性樹脂を塗布して導電性樹脂層を形成する場合には、乾燥時固形分で30〜120g/m、より好ましくは30〜80g/mの範囲内となるように、導電性樹脂を塗布することが望ましい。塗布量が少なすぎると必要な導電性が得られない場合があり、多すぎると、導電性が高くなり過ぎて、反射波が強くなる傾向にある。布帛としての柔軟性を損なわないという観点からも、上記範囲であるのが望ましい。
【0017】
本発明において、基布を構成する繊維素材としては、ポリエステル、ポリアミド、ビニロン等の合成繊維や木綿、麻等の天然繊維を単独あるいは混合した混繊糸が好ましく使用できるが、繊維の強度、寸法安定性などからポリエステル繊維の長繊維が好ましい。 ポリエステル繊維とは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートあるいはこれらに第三成分、たとえばイソフタル酸、イソフタル酸スルホネート、アジピン酸、ポリエチレングリコールなどを共重合またはブレンドして得られるポリエステルからなる繊維であり、あらかじめ難燃化された繊維であってもよい。
【0018】
基布は、織物、編物、不織布等いずれであってもよく、織物としては、平織、朱子織、斜文織、もじり織、伯爵織、しころ織、琥珀織、三原織組織の変化織など適宜用いることができる。なかでも、薄材でありながら軽量性と強度を兼ね備えるという点から、平織またはメッシュ織、いずれかの織組織であるのが好ましい。一方、編物としてもよく、経編、緯編など適宜用いることができ、経糸および緯糸挿入ラッセル編なども好ましく使用できる。
【0019】
本発明の電磁波吸収布帛は、軽量性と取り扱い性の点から、厚みが500μm〜1mmの範囲であるのが好ましい。
【0020】
また、本発明の電磁波吸収布帛は、カーテンや覆いとして用いるための基本的要求特性であるソフトさ、ドレープ性、フクラミなどを満足するという点から、剛難度が1〜15mN、より好ましくは2〜4mNの範囲であるのが好ましい。1mN以上とすることで、カーテンや覆いとしての形状を良好に保つことができる。また、15mN以下とすることで、ソフトさ、ドレープ性、フクラミが良好となりハンドリング性が向上する。
【0021】
本発明の電磁波吸収布帛は、たとえば非接触ICタグおよびリーダライタ複合周辺装置を用いて物品管理を行う物流倉庫等において、入荷した物品に付された非接触ICタグの認識を行う空間と、既に認識済みの物品を保管している空間を仕切るカーテンとして好ましく使用することができる。カーテンの形態としては、ドレープカーテン、ブラインドカーテン、アコーディオンカーテン、ロールカーテンなど、いずれの形態でも好ましく使用でき、暖簾の形態でもよい。また、不慮または故意による第三者からの電磁波放射によって非接触ICタグの回路破壊やデータの改ざん防止を目的とした、保管してある物品を覆うカバーとしても好ましく使用できる。
【実施例】
【0022】
[測定方法]
(1)透過減衰量
透過減衰量の測定は、関西電子工業振興センター法(KEC法)に従い、周波数1GHz、n=3で測定を行い、1GHzの電界の透過減衰量(dB)の平均値を採用した。
【0023】
(2)非接触ICタグの認識試験
2.45GHzマイクロ波方式の据え置き型リーダライタを、アンテナ中央部が床から高さ85cmになるよう設置した。そこに、2.45GHzパッシブ型非接触ICタグ(大きさ1cm×5cm)を2枚用意し、書込み及び読取りなどの際、認識したくないタグをタグA、認識したいタグをタグBとした。このうち、タグAは、前記アンテナ中心から70cmの距離に固定、タグBは、タグAとアンテナ中心を結ぶ線上を移動可能とした。試料の大きさは、30cm×30cmとし、タグAとタグBの間に挿入、試料中心がタグAの中心に重なるよう、試料をタグA前面に設置した。尚、上記試験に係るアンテナ、タグ、試料の配置図を図1に示す。
【0024】
A.タグAの遮蔽
リーダライタから電磁波を放射し、タグAに書込み及び読取りを試み、いずれも成功しなかった場合を◎、片方が成功した場合を○、いずれも成功した場合を×とした。
【0025】
B.タグBの認識
リーダライタから電磁波を放射しながら、タグBを、試料中心からアンテナ中心に向かう線上を速度3cm/分で少しずつ移動させた。タグBを認識しない点(ヌル点)が0個の場合を◎、1〜2個の場合を○、3個以上の場合を×とした。
【0026】
(3)剛軟度
JIS L 1096:1999に従い、(株)安田精機製作所製 ガーレー式柔軟度試験機を用いて測定した。幅2.5cm×長さ8.9cmの試験片を左右に移動できる支棹に締めつけ試験片の下端を前面ビーム先端に接触させた。支棹の移動によって試料はビームを押して行き、遂に外れた時の指示目盛を測定し、縦、横の平均値をとった剛軟度(mN)をソフトさの値として測定した。
【0027】
[実施例1]
(基布)
ポリエステル繊維平織物(織密度:縦55本×横55本/2.54cm、目付:150g/m)を基布とした。
(導電性樹脂)
ポリウレタン樹脂(固形分40重量%)100重量部にカーボンブラック20重量部を混合し、導電性樹脂とした。
(電磁波吸収布帛)
前記基布の片面に、前記導電性樹脂を付着量が30g/m(乾燥時固形分)となるようドクタナイフでコーティングし、170℃で2分乾燥を行い、厚さ600μmの電波吸収布帛を得た。
【0028】
この電波吸収布帛の透過減衰量は5dBであった。また、この電波吸収布帛を用いて非接触ICタグの認識試験を行った結果、タグAの遮蔽は◎、タグBの認識は◎であり、ヌル点が発生することなく、認識したい非接触ICタグと、認識したくない非接触ICタグを良好に区分することができた。
剛軟度は2.2mNであり、カーテンや覆いとして用いるためのソフトさを満足していた。
【0029】
[実施例2]
(基布)
実施例1と同様の基布を用いた。
(導電性樹脂)
実施例1と同様の導電性樹脂を用いた。
(電磁波吸収布帛)
前記導電性樹脂の付着量を55g/m(乾燥時固形分)とした以外は実施例1と同様にして、厚さ700μmの電波吸収布帛を得た。
【0030】
この電波吸収布帛の透過減衰量は8dBであった。また、この電波吸収布帛を用いて非接触ICタグの認識試験を行った結果、タグAの遮蔽は◎、タグBの認識は◎であり、ヌル点が発生することなく、認識したい非接触ICタグと、認識したくない非接触ICタグを良好に区分することができた。
剛軟度は3.1mNであり、カーテンや覆いとして用いるためのソフトさを満足していた。
[実施例3]
(基布)
ポリエステル繊維メッシュ織物(織密度:縦13本×横13本/2.54cm、目付:360g/m)を基布とした。
(導電性樹脂)
ポリウレタン樹脂(固形分40重量%)100重量部にカーボンブラック10重量部、平均繊維長500μmの炭素繊維ミルドファイバー5重量部を混合し、導電性樹脂とした。
(電磁波吸収布帛)
前記基布に、前記導電性樹脂を付着量が80g/m(乾燥時固形分)となるようディッピングし、180℃で4分乾燥を行い、厚さ800μmの電波吸収布帛を得た。
【0031】
この電波吸収布帛の透過減衰量は10dBであった。この電波吸収布帛を用いて非接触ICタグの認識試験を行った結果、タグAの遮蔽は◎、タグBの認識は◎であり、ヌル点が発生することなく、認識したい非接触ICタグと、認識したくない非接触ICタグを良好に区分することができた。
剛軟度は11mNであり、カーテンや覆いとして用いるためのソフトさを満足していた。
【0032】
[実施例4]
(基布)
実施例3と同様の基布を用いた。
(導電性樹脂)
実施例3と同様の導電性樹脂を用いた。
(電磁波吸収布帛)
前記導電性樹脂の付着量を120g/m(乾燥時固形分)とした以外は実施例3と同様にして、厚さ900μm電波吸収布帛を得た。
【0033】
この電波吸収布帛の透過減衰量は15dBであった。この電波吸収布帛を用いて非接触ICタグの認識試験を行った結果、タグAの遮蔽は◎、タグBの認識は○であり、電波吸収布帛の手前3cmのところにヌル点1点が発生したものの、認識したい非接触ICタグと、認識したくない非接触ICタグを区分することができた。
剛軟度は12mNであり、カーテンや覆いとして用いるためのソフトさを満足していた。
【0034】
[実施例5]
(基布)
実施例1と同様の基布を用いた。(導電性樹脂)
ポリウレタン樹脂(固形分40重量%)100重量部にカーボンブラック10重量部を混合し、導電性樹脂とした。
(電磁波吸収布帛)
前記基布の片面に、前記導電性樹脂を付着量が30g/m(乾燥時固形分)となるようドクタナイフでコーティングし、170℃で2分乾燥を行い、厚さ550μmの電波吸収布帛を得た。
【0035】
この電波吸収布帛の透過減衰量は3dBであった。また、この電波吸収布帛を用いて非接触ICタグの認識試験を行った結果、タグAの遮蔽は◎、タグBの認識は◎であり、ヌル点が発生することなく、認識したい非接触ICタグと、認識したくない非接触ICタグを良好に区分することができた。
剛軟度は2.0mNであり、カーテンや覆いとして用いるためのソフトさを満足していた。
【0036】
[実施例6]
(基布)
実施例3と同様の基布を用いた。
(導電性樹脂)
実施例3と同様の導電性樹脂を用いた。
(電磁波吸収布帛)
前記導電性樹脂の付着量を120g/m(乾燥時固形分)とした以外は実施例3と同様にして、厚さ850μmの電波吸収布帛を得た。
【0037】
この電波吸収布帛の透過減衰量は12dBであった。この電波吸収布帛を用いて非接触ICタグの認識試験を行った結果、タグAの遮蔽は◎、タグBの認識は○であり、電波吸収布帛の手前3cmのところにヌル点1点が発生したものの、認識したい非接触ICタグと、認識したくない非接触ICタグを区分することができた。
剛軟度は15mNであり、カーテンや覆いとして用いるためのソフトさを満足していた。
【0038】
なお、上記実施例1〜6における条件、結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
[比較例1]
ポリエチレンテレフタレート長繊維に、直径12μmのステンレス繊維を混撚した繊維を使用して、金属繊維入り平織物(織密度:縦53本×横53本/2.54cm、目付:180g/m)とし、比較例1とした。この金属繊維入り平織物の透過減衰量は40dBであった。この平織物を用いて非接触ICタグの認識試験を行った結果、タグAの遮蔽は◎であったが、タグBの認識については、十分通信可能な距離であるにもかかわらず、電波吸収布帛の手前3cmのところから、約3cm間隔でヌル点が合計6点以上発生し、×であった。
剛軟度は20mNであった。
【0041】
[比較例2]
実施例1と同様の基布を用い比較例2とした。このポリエステル繊維平織物の透過減衰量は0dBであった。この平織物を用いて非接触ICタグの認識試験を行った結果、タグAの遮蔽は×であり、タグBの認識は◎であった。すなわち、認識したくないタグを適切に区分することができなかった。
剛軟度は0.8mNであった。
【0042】
[比較例3]
(基布)
実施例1と同様の基布を用いた。
(導電性樹脂)
実施例1と同様の導電性樹脂を用いた。
(電磁波吸収布帛)
前記導電性樹脂の付着量を6g/m(乾燥時固形分)とした以外は実施例1と同様にして、厚さ200μmの電波吸収布帛を得た。
この電波吸収布帛の透過減衰量は1dBであった。この平織物を用いて非接触ICタグの認識試験を行った結果、タグAの遮蔽は×であり、タグBの認識は◎であった。すなわち、認識したくないタグを適切に区分することができなかった。剛軟度は0.9mNであった。
【0043】
なお、上記比較例1〜3における条件、結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の電磁波吸収布帛は、薄材でありながら高度な電磁波吸収機能を備えるものであり、たとえば非接触ICタグおよび周辺リーダライタ装置を使用する店舗や物流倉庫、図書館、工場において、空間を間仕切るカーテンや、物品を覆うカバーに用いることにより、認識したい非接触ICタグと認識したくない非接触ICタグとを適切に区分したり、不慮または故意による第三者からの電磁波放射によって非接触ICタグの回路が破壊されたりデータが改ざんされるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例、比較例における非接触ICタグ認識試験に係るアンテナ、タグ、試料の配置図である。
【符号の説明】
【0047】
1:アンテナ
2:タグB
3:試料
4:タグA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布の少なくとも片面に導電性樹脂層を有し、1GHzにおける透過減衰量が3〜20dBの範囲内である非接触電波認識用電磁波吸収布帛。
【請求項2】
前記導電性樹脂層が、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維ミルドファイバーから選ばれる少なくとも1種の導電性成分を含むものである請求項1記載の非接触電波認識用電磁波吸収布帛。
【請求項3】
前記導電性樹脂層を30〜120g/mの範囲内で有している請求項1または2記載の非接触電波認識用電磁波吸収布帛。
【請求項4】
前記基布の織組織が平織またはメッシュ織である請求項1〜3いずれか記載の非接触電波認識用電波吸収布帛。
【請求項5】
厚みが500μm〜1mmの範囲内である請求項1〜4いずれか記載の非接触電波認識用電磁波吸収布帛。

【図1】
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【公開番号】特開2009−33129(P2009−33129A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164108(P2008−164108)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】