説明

非接触駆動型表示装置

【課題】本発明は、製造及びメンテナンスが容易で、低コストで構成可能な非接触駆動型表示装置1を提供する。
【解決手段】非接触駆動型表示装置1は、所定の共振周波数を有する直列共振回路25と表示素子23とを備える表示回路21が形成された表示基板2と、表示回路21を駆動する駆動信号を出力する駆動回路31と、駆動回路31が生成した駆動信号を出力する駆動側インダクタ3Lとが形成された駆動基板3と、表示基板2及び駆動基板3を保持する保持部材50とを備え、表示基板2と駆動基板3とを離間して対面させると共に駆動回路31から表示回路21に駆動信号を電磁誘導で伝える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動回路から表示回路に駆動信号を電磁誘導で伝える非接触駆動型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な種類のディスプレイが研究及び開発されている。これらのディスプレイは、大きく2つに分類することができる。一方としては、例えば、PDP(Plasma Display Panel)、有機EL(Electro Luminescence)、無機EL、LED(Light Emitting Diode)、FED(Field Emission Display)、CRT(Cathode Ray Tube)等の表示素子自体が発光するものがあげられる。他方としては、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、DMD(Digital Mirror Device)、電子ペーパー等の表示素子自体が発光せず、別の光源が必要となるものがあげられる。
【0003】
ここで、LCD及びPDP等を用いたテレビ用ディスプレイは、大画面化が進み、例えば、100インチ以上の大型ディスプレイも開発されている(例えば、非特許文献1参照)。また、有機ELを用いたディスプレイは、例えば、携帯電話端末や小型モバイル機器に搭載されている(例えば、非特許文献2参照)。また、LEDを用いたディスプレイは、例えば、駅等の屋外での様々な情報(例えば、電車の時刻)を表示する電光掲示板として広く利用されている。さらに、無機ELを用いたディスプレイは、例えば、シート状の安値な面光源として広く利用されている。
【0004】
これらのディスプレイは、発光体及び光シャッターを備える表示素子と、この表示素子を駆動する駆動回路とを積層して一枚の基板とする構造が主流である。また、これらのディスプレイは、表示素子を備える基板と駆動回路を有する基板との二枚の基板で構成し、表示素子と駆動回路とを配線で物理的に接続する構造も可能である(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の発明は、発光層TFTを有する表示回路を有する基板と、駆動回路を有する基板とを別々に製造し、両回路を電極で接続して駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−281986号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】R.Murai et al.:Proc.IDW07,2007 pp.783-786
【非特許文献2】M.Kobayashi et al.:Proc.IDW07,2007 pp.221-224
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記したような表示素子と駆動回路とを一枚の基板に積層した構造、及び、二枚の基板を配線で物理的に接続した構造では、以下のような問題が生じる。表示素子と駆動回路の何れか一方のみが故障又は破損した場合、これらを分離できないことから、基板全体を修理又は交換する必要があり、メンテナンスが容易ではなく、メンテナンスコストが高くなるという問題がある。
【0008】
また、表示素子と駆動回路とを一枚の基板に積層した構造では、製造工程において、表示素子又は駆動回路の何れか一方に不良が発生するだけで、基板全体を不良品として扱うこととなり、製造の歩留まりを向上させることが難しい。さらに、有機ELやLCDを表示素子として用いる場合、駆動用のTFTをこの表示素子の近くに形成する必要があり、製造工程が複雑になり、製造コストが高くなるという問題もある。特に、基板に電極を蒸着するといった高熱処理を含む場合、表示素子への悪影響を防ぐために、製造工程が余計に複雑になってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、製造及びメンテナンスが容易で、低コストで構成可能な非接触駆動型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するため、本願第1発明に係る非接触駆動型表示装置は、所定の共振周波数を有する共振回路と表示素子とを備える表示回路が形成された表示基板と、当該表示回路を駆動する駆動信号を出力する駆動回路が形成された駆動基板とを離間して対面させると共に、前記駆動回路から前記表示回路に前記駆動信号を電磁誘導で伝える非接触駆動型表示装置であって、前記駆動基板は、前記駆動回路が生成した駆動信号を出力する駆動側インダクタを備え、前記表示回路は、前記駆動側インダクタから入力された前記駆動信号の周波数が、当該表示回路が備える前記共振回路の前記共振周波数に一致するときは、前記表示素子に前記駆動信号を出力することを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、非接触駆動型表示装置は、互いに非接触な駆動回路と表示回路との間で、電磁誘導によって駆動信号を伝えることができる。これによって、非接触駆動型表示装置は、表示基板と駆動基板とを別々に製造できるので、駆動基板製造工程での高熱処理による表示素子への悪影響が殆ど無い。また、非接触駆動型表示装置は、完成後においても表示基板と駆動基板とを容易に分離できるので、表示基板と駆動基板の何れか一方のみを交換又は修理することができる。
【0012】
また、本願第2発明に係る非接触駆動型表示装置は、前記共振回路が、前記駆動側インダクタから前記駆動信号が入力される表示側インダクタとコンデンサとを直列に接続した直列共振回路であり、前記表示回路が、前記表示素子と前記直列共振回路とを直列に接続したことを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、非接触駆動型表示装置は、駆動信号の周波数が直列共振回路の共振周波数に一致するときは、直列共振回路のインピーダンスが略ゼロになることで、駆動信号が直列共振回路を伝わって表示素子に出力される。
【0014】
また、本願第3発明に係る非接触駆動型表示装置は、前記共振回路が、表示側インダクタとコンデンサとを並列に接続した並列共振回路であり、前記表示回路が、前記駆動側インダクタから前記駆動信号が入力される入力用インダクタをさらに備え、前記入力用インダクタに対して前記表示素子と前記並列共振回路とを直列に接続したことを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、非接触駆動型表示装置は、駆動信号の周波数が並列共振回路の共振周波数に一致するときは、並列共振回路のインピーダンスが無限大になることで、駆動信号が並列共振回路を伝わらずに表示素子に出力される。
【0016】
また、本願第4発明に係る非接触駆動型表示装置は、前記表示側インダクタが、比透磁率が10以上10000以下の芯材を備え、前記コンデンサが、厚さが0.01マイクロメートル以上5マイクロメートル以下の厚さで、かつ、比誘電率が10以上5000以下の誘電体を備えることを特徴とする。
【0017】
かかる構成によれば、非接触駆動型表示装置は、表示側インダクタ及びコンデンサを小型化できる。この場合、芯材としては、例えば、鉄、コバルト又はニッケルを用いることができる。また、誘電体としては、例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム又はチタン酸ジルコニウム酸鉛(PZT)を用いることができる。
【0018】
また、本願第5発明に係る非接触駆動型表示装置は、予め設定された間隔で前記表示基板と前記駆動基板とを保持する保持部材を備えることを特徴とする。かかる構成によれば、非接触駆動型表示装置は、電磁誘導が発生する間隔で表示基板と駆動基板とを保持することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
本願第1発明によれば、表示基板と駆動基板とを別々に製造すると共に、完成後においても表示基板と駆動基板とを容易に分離できる。これによって、本願第1発明によれば、駆動基板製造工程での高熱処理による表示素子への悪影響が殆ど無く、表示基板と駆動基板の何れか一方のみを交換又は修理することができ、製造及びメンテナンスが容易で、低コストである。
【0020】
本願第2,3に係る発明によれば、駆動信号の周波数が共振回路の共振周波数に一致するときのみ表示素子が発光するので、何れの表示素子を発光させるか制御(選択)できる。
【0021】
本願第4に係る発明によれば、表示側インダクタ及びコンデンサを小型化できるので、非接触駆動型表示装置を高精細化できる。
【0022】
本願第5に係る発明によれば、電磁誘導が発生する間隔で表示基板と駆動基板とを保持できるので、駆動回路から表示回路に駆動信号を伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る非接触駆動型表示装置の概略図である。
【図2】図1の非接触駆動型表示装置において、動作原理を説明する説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態における保持部材の第1例を説明する説明図であり、(a)は非接触駆動型表示装置の斜視図であり、(b)は非接触駆動型表示装置のA−A´断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態における保持部材の第2例を説明する説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る非接触駆動型表示装置において、動作原理を説明する説明図である。
【図6】本発明の実施例1を説明する説明図である。
【図7】本発明の実施例2における共振回路において、容量を一定にしたときのインダクタンスと共振周波数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
第1実施形態:直列共振回路)
[非接触駆動型表示装置の構成]
【0025】
本発明の各実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態において、同一の部材には同一の符号を付し、説明を省略した。
【0026】
以下、図1,図2を参照して、本発明の第1実施形態に係る非接触駆動型表示装置の構成について説明する。図1に示すように、非接触駆動型表示装置1は、離間して対向させた表示基板2と駆動基板3とを備える。また、非接触駆動型表示装置1は、後記する保持部材(図3,図4参照)によって、表示基板2と駆動基板3とを一定の間隔に保持する。なお、保持部材の詳細は、後記する。
【0027】
表示基板2は、後記する表示回路21が形成されたものである。この表示基板2は、例えば、プリント基板、ガラス基板又はシリコン基板等の一般的な基板である。ここで、表示基板2は、縦方向及び横方向にそれぞれ所定の数の表示回路21がマトリクス状に形成されている。なお、表示回路21の個数及び表示基板2における配置は、これに制限されない。
【0028】
表示回路21は、それぞれ、図2(a)に示すように、表示素子23と直列共振回路25とを直列に接続した閉回路である。ここで、表示素子23は、電気信号(駆動信号)によって光を変調するLED、有機EL、無機EL、LCD、電子ペーパー、FED、DMD等の電気−光素子であれば良い。また、表示素子23は、後記する直列共振回路25の共振周波数と駆動信号の周波数とが一致しないときの駆動信号の電力で発光せずに、直列共振回路25の共振周波数と駆動信号の周波数とが一致するときの駆動信号の電力で発光することが好ましい。言い換えると、表示素子23は、その発光開始電圧が、直列共振回路25の共振周波数と駆動信号の周波数とが一致しないときの駆動信号の電圧を超え、かつ、直列共振回路25の共振周波数と駆動信号の周波数とが一致するときの駆動信号の電圧未満であることが好ましい。
【0029】
ここで、表示回路21を積層して形成する場合、表示回路21の膜厚は、10nm以上1mm以下にすることが好ましい。さらに、この膜厚は、フォトリゾグラフィー等の微細加工技術で積層して非接触駆動型表示装置1を高精細化できることから、1μm以下とすることがより好ましい。
【0030】
また、例えば、駅等の屋外での電光掲示板等、高精細化を要求されない場合、表示回路21は、後記するように、市販されているLED等の表示素子、及び、インダクタとコンデンサとのパッケージを用いて形成することもできる。
【0031】
直列共振回路25は、表示側インダクタ25Lとコンデンサ25Cとを直列に接続したものであり、所定の共振周波数を有する。また、表示側インダクタ25Lは、直列共振回路25を構成すると共に、後記する駆動側インダクタ3Lからの駆動信号を電磁誘導によって表示回路21に入力するものである。この表示側インダクタ25Lは、導電性を有する材料で形成されており、Al、Cu、Au、Ag、Cr等の抵抗値の低い材料であることが好ましい。
【0032】
図1の駆動基板3は、駆動回路31と、表示回路21に対応する駆動側インダクタ3Lとを備える。この駆動基板3は、例えば、プリント基板、ガラス基板又はシリコン基板等の一般的な基板である。ここで、駆動基板3は、所定数の駆動側インダクタ3Lが横方向に直列に接続されたものが、行単位に複数配置される。また、駆動基板3は、駆動回路31側(図1では右側)に位置する先頭の駆動側インダクタ3Lのそれぞれと、駆動回路31とが接続される。そして、駆動基板3は、最後尾(図1では左側)の駆動側インダクタ3Lのそれぞれと、接地した抵抗3Rとが接続される。
【0033】
駆動回路31は、各表示回路21を駆動する駆動信号を生成する信号源40に接続され、この駆動信号を、各表示回路21に対応する駆動側インダクタ3Lに出力するものである。ここでは、図1に示すように、駆動側インダクタ3Lが横方向の行単位で配置されているため、信号源40は、この行単位で駆動信号を順次生成する。また、駆動回路31は、この駆動信号に対応する駆動側インダクタ3Lが含まれる行に対して、駆動信号を出力する。そして、駆動側インダクタ3Lは、駆動信号が入力されると、電磁誘導によって、この駆動信号を表示側インダクタ25Lに出力する。
【0034】
なお、駆動回路31と駆動側インダクタ3Lとの接続方法は、図1のように行単位で行わず、駆動信号の周波数帯域等の条件に応じて任意にできる。ここで、駆動基板3は、全ての駆動側インダクタ3Lと駆動回路31とを直接接続しても良い。また、駆動基板3は、全ての駆動側インダクタ3L同士を接続すると共に、何れか1個の駆動側インダクタ3Lと駆動回路31とを一箇所だけ接続しても良い。
【0035】
なお、駆動回路31及び駆動側インダクタ3Lは、表示回路21と同様にフォトリゾグラフィー等の微細加工技術で積層しても良い。また、駆動側インダクタ3Lは、表示側インダクタ25Lと同様のものを用いても良い。さらに、表示回路21と駆動側インダクタ3Lとが一対一で対応させたが、N対一で対応させても良い(但し、Nは2以上の整数)。
【0036】
<非接触駆動型表示装置の動作原理>
以下、図2を参照し、非接触駆動型表示装置1の動作原理について説明する(適宜図1参照)。なお、図2(a)〜(c)では、上側が表示基板2に相当し、下側が駆動基板3に相当する。また、図2(a)〜(c)では、説明のため、1個の表示回路21と、これに対応する駆動側インダクタ3Lと信号源4とを図示し、駆動回路31の図示を省略した。
【0037】
図2(a)に示すように、駆動側インダクタ3Lは、信号源40からの駆動信号が入力されると、この駆動信号に応じた磁界Bを発生させる。そして、表示側インダクタ25Lでは、この磁界Bに応じて、起電力(駆動信号)を発生させる。つまり、非接触駆動型表示装置1は、電磁誘導によって、互いに非接触な駆動側インダクタ3Lと表示側インダクタ25Lとの間で駆動信号を伝える。
【0038】
図2(b)に示すように、直列共振回路25の共振周波数と駆動信号の周波数とが一致する場合、直列共振回路25が共振する。このとき、直列共振回路25のインピーダンスが略ゼロになることで、起電力(駆動信号)Eの電力が最大となり、駆動信号に応じて表示素子23が発光する。
【0039】
一方、図2(c)に示すように、直列共振回路25の共振周波数と駆動信号の周波数とが一致しない場合、直列共振回路25が共振しない。このとき、起電力(駆動信号)Eが直列共振回路25にほとんど流れず、表示素子23は、発光しない。つまり、非接触駆動型表示装置1は、駆動信号の周波数と直列共振回路25の共振周波数との関係によって、発光させる表示素子23を制御(選択)することができる。従って、非接触駆動型表示装置1は、直列共振回路25同士が、異なる共振周波数を有することが好ましい。
【0040】
<保持部材:第1例>
以下、図3を参照し、非接触駆動型表示装置1の保持部材50の第1例について説明する(適宜図1参照)。なお、図3では、保持部材50は、非接触駆動型表示装置1の筐体としている。
【0041】
図3(a)に示すように、保持部材50は、表示基板2で表示回路が形成された表示面2aが露出するような開口部が形成され、表示基板2及び駆動基板3より少し大きい長方体状である。また、図3(b)に示すように、保持部材50は、表示基板2の表示面2aに突出した縁部51が形成され、表示基板2が外れないようにしている。そして、保持部材50は、内側面に突出した凸部53が形成され、表示基板2及び駆動基板3の間隔を一定に保持すると共に、表示基板2及び駆動基板3を筐体内部に固定する。さらに、保持部材50は、何れか一つの側面を開放可能とし、表示基板2や駆動基板3を取り外し可能とする。
【0042】
<保持部材:第2例>
以下、図4を参照し、非接触駆動型表示装置1の保持部材50の第2例について説明する(適宜図1参照)。図4では、表示基板2及び駆動基板3は、それぞれ、回路等が形成されていない四隅に貫通穴を形成する。そして、保持部材50は、各貫通穴に挿入され、表示基板2及び駆動基板3の間隔を一定に保持する。なお、保持部材50は、円筒状の部材としたが、表示基板2及び駆動基板3の確実に保持固定するため、ボルト及びナットの組み合わせとしても良い。
【0043】
<製造方法の具体例>
以下、図1に戻り、非接触駆動型表示装置1の製造方法の具体例について簡単に説明する。この例は、屋外用のLEDディスプレイとして用いる非接触駆動型表示装置1を製造するものである。まず、非接触駆動型表示装置1は、プリント基板等の表示基板2の表面に配線パターンを印刷する。そして、非接触駆動型表示装置1は、配線パターンが印刷された表示基板2において、配線パターン上の所定位置にLED、コンデンサ及びインダクタを配置する。
【0044】
また、非接触駆動型表示装置1は、プリント基板等の駆動基板3の表面に配線パターンを印刷する。そして、非接触駆動型表示装置1は、配線パターンが印刷された駆動基板3において、配線パターン上の所定位置にインダクタを配置する。なお、駆動回路31としては、例えば、プログラム可能なIC(Integrated Circuit)を用いることができる。その後、非接触駆動型表示装置1は、表示基板2と駆動基板3とを形成した後、保持部材に両基板を装着する。このように、非接触駆動型表示装置1は、表示基板2と駆動基板3とを電極等を用いて電気的に接続する必要がないため、両基板を別々に製造できると共に、一方の基板のみを容易に交換又は修理できる。
【0045】
なお、非接触駆動型表示装置1は、一般的なフォトリゾグラフィー等の微細加工技術で表示基板2と駆動基板3とを製造することもできる。このとき、非接触駆動型表示装置1は、図1に示すような平面回路に限定されず、積層回路としても良い。
【0046】
以上のように、非接触駆動型表示装置1は、互いに非接触な駆動回路31と表示回路21との間で、電磁誘導によって駆動信号を伝えることができる。これによって、非接触駆動型表示装置1は、表示基板2と駆動基板3とを別々に製造できるので、駆動基板製造工程での高熱処理による表示素子23への悪影響が殆ど無い。また、非接触駆動型表示装置1は、完成後においても表示基板2と駆動基板3とを容易に分離できるので、表示基板2と駆動基板3の何れか一方のみを交換又は修理することができる。さらに、非接触駆動型表示装置1は、駆動用のTFTを必要としない。このように、非接触駆動型表示装置1は、製造及びメンテナンスが容易で、低コストである。
【0047】
また、非接触駆動型表示装置1は、駆動側インダクタ3Lが、直列共振回路25を構成するだけでなく、電磁誘導によって駆動信号を入力する機能も備える。これによって、非接触駆動型表示装置1は、部品数を少なくでき、コストがより低くなる。
【0048】
(第2実施形態:並列共振回路)
[非接触駆動型表示装置の構成]
以下、図5を参照して、本発明の第2実施形態に係る非接触駆動型表示装置の構成について、第1実施形態と異なる点を主に説明する(適宜図1参照)。第2実施形態に係る非接触駆動型表示装置1Bは、表示回路21に、直列共振回路25の代わりに、入力用インダクタ27と並列共振回路29とが含まれる点が大きく異なる。
【0049】
図5(a)に示すように、表示回路21は、表示素子23と、入力用インダクタ27と、並列共振回路29とを備える。入力用インダクタ27は、駆動側インダクタ3Lから駆動信号が入力されるものである。また、並列共振回路29は、表示側インダクタ29Lと、コンデンサ29Cとを並列に接続したものである。そして、表示素子23及び並列共振回路29は、入力用インダクタ27の反対側で、設置した抵抗に接続される。つまり、表示回路21は、入力用インダクタ27に対し、表示素子23と表示側インダクタ29Lとコンデンサ29Cとを直列に接続した回路である。
【0050】
表示側インダクタ29Lとコンデンサ29Cとは、それぞれ、図2の表示側インダクタ25Lとコンデンサ25Cと同様のものであるため、説明を省略する。また、第2実施形態における駆動基板は、図1の同様のものであるため、説明を省略する。さらに、第2実施形態における保持部材は、図3及び図4と同様のものであるため、説明を省略する。
【0051】
<非接触駆動型表示装置の動作原理>
以下、図5を参照し、非接触駆動型表示装置1Bの動作原理について説明する(適宜図1参照)
【0052】
図5(a)に示すように、駆動側インダクタ3Lは、信号源40からの駆動信号が入力されると、この駆動信号に応じた磁界Bを発生させる。そして、表示側インダクタ29Lは、この磁界Bに応じて、起電力(駆動信号)を発生させる。つまり、非接触駆動型表示装置1は、電磁誘導によって、互いに非接触な駆動側インダクタ3Lと表示側インダクタ29Lとの間で駆動信号を伝えることを可能としている。
【0053】
図5(b)に示すように、並列共振回路29の共振周波数と駆動信号の周波数とが一致する場合、並列共振回路29が共振する。このとき、並列共振回路29のインピーダンスが無限大になることで、起電力(駆動信号)Eが並列共振回路29を伝わらずに表示素子23に出力され、駆動信号に応じて表示素子23が発光する。
【0054】
一方、図5(c)に示すように、並列共振回路29の共振周波数と駆動信号の周波数とが一致しない場合、並列共振回路29が共振しない。このとき、起電力(駆動信号)Eは、並列共振回路29にほとんど流れてしまい、表示素子23は、発光しない。つまり、非接触駆動型表示装置1Bは、駆動信号の周波数と並列共振回路29の共振周波数との関係によって、発光させる表示素子23を制御(選択)することができる。従って、非接触駆動型表示装置1は、並列共振回路29同士が、異なる共振周波数を有することが好ましい。
【0055】
以上のように、非接触駆動型表示装置1Bは、互いに非接触な駆動回路31と表示回路21との間で、電磁誘導によって駆動信号を伝えることができる。これによって、非接触駆動型表示装置1Bは、表示基板2と駆動基板3とを別々に製造できるので、駆動基板製造工程での高熱処理による表示素子23への悪影響が殆ど無い。また、非接触駆動型表示装置1Bは、完成後においても表示基板2と駆動基板3とを容易に分離できるので、表示基板2と駆動基板3の何れか一方のみを交換又は修理することができる。さらに、非接触駆動型表示装置1Bは、駆動用のTFTを必要としない。このように、第2実施形態に係る非接触駆動型表示装置1Bは、製造及びメンテナンスが容易で、低コストである。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
以下、本発明の各実施例について説明する。実施例1では、本発明の第1実施形態に係る非接触駆動型表示装置1において、動作原理を検証した(適宜図1参照)。図6に示すように、実施例1に係る非接触駆動型表示装置1は、表示基板2に2個の表示回路21a,21bを形成すると共に、各表示回路21a,21bに対応する駆動側インダクタ3La,3Lbを駆動基板3に形成している。なお、図6では、上側が表示基板2に相当し、下側が駆動基板3に相当する。また、図6では、駆動回路31の図示を省略した。
【0057】
表示素子23a,23bは、それぞれ、緑色に発光するLEDであり、その発光開始電圧が2.6Vであった。また、表示側インダクタ25Laは、インダクタンスが3μHであった。そして、表示側インダクタ25Lbは、インダクタンスが2μHであった。さらに、コンデンサ25Ca,25Cbは、容量がともに30pFであった。
【0058】
駆動側インダクタ3La,3Lbは、インダクタンスがともに60μHであった。また、表示回路21a,21bと駆動側インダクタ3La,3Lbとの距離が1mmとなるように、保持部材(不図示)が、表示基板2と駆動基板3とを保持した。そして、信号源40が、7Vppの正弦波の駆動信号を、徐々に周波数を変えながら駆動回路に出力した。このとき、表示素子23a,23bがどのように点灯するかを目視によって検証した。
【0059】
表示素子23aは、駆動信号の周波数が19MHz〜21MHzの間で発光した。一方、表示素子23bは、駆動信号の周波数が25MHz〜27MHzの間で発光した。このように、表示素子23a,23bが点灯する周波数が異なるのは、表示素子23a,23bに接続された表示側インダクタ25La,251bのインダクタンスが異なることで、これらの共振周波数が異なる結果と考えられる。
【0060】
次に、信号源40が、7Vppの正弦波の駆動信号を、15MHz〜25MHzまで、499msecの周期でスイープさせて出力した。このとき、表示素子23a,23bがどのように点灯するかを目視によって検証した。
【0061】
表示素子23aは、駆動信号の周波数が19MHz〜21MHzのときに発光した。また、表示素子23bは、駆動信号の周波数が25MHzのときに発光した。このことから、駆動信号の周波数を変えることによって、発光させる表示素子23a,23bを制御(選択)できることが分かった。
【0062】
さらに、駆動信号が電磁誘導によって伝えられていることを検証した。具体的には、表示素子23aが発光する周波数の駆動信号を入力した状態とし、表示基板2と駆動基板3との間隔を徐々に広げた。このとき、表示素子23a,23bの点灯状態を目視した。
【0063】
表示基板2と駆動基板3との間隔が5cmになったとき、表示素子23aが発光しなくなった。このことから、非接触駆動型表示装置1では、駆動信号が、互いに非接触な駆動回路31と表示回路21aとの間を、電磁誘導によって伝えられていることが分かった。
【0064】
(実施例2)
以下、実施例2について説明する(適宜図1,図2参照)。実施例2は、本発明の第1実施形態に係る非接触駆動型表示装置1を屋外用のLEDディスプレイに適用した例である。
【0065】
ここで、図7に示すように、コンデンサ25Cの容量を一定(885pF)とし、共振周波数の範囲を約5MHz〜17MHzとした場合、表示側インダクタ25Lは、そのインダクタンスが0.1μH〜1.1μHとなる。つまり、100ライン(QVGA)のLEDディスプレイに適用する場合、この0.1μH〜1.1μHの範囲を、0.01μH毎に100等分すれば、画素の選択性を確保できる。なお、図7に示すように、インダクタンスと共振周波数との関係は非線形になるので、インダクタンスに対する共振周波数の変化が大きい部分(図7で傾きの大きい部分)を、より細かく分割しても良い。
【0066】
屋外用のLEDディスプレイでは、例えば、画素ピッチが10mm〜20mm程度である。一般的に、共振回路では、キャパシタンスと直列抵抗とを小さくするほどQ値が高くなる。これらのことから、実施例2では、Q値が数十程度あれば十分なので、直列抵抗を1Ω以下とすれば良い。現在、μHオーダで直列抵抗が1Ωのインダクタは市販されている。つまり、本発明に係る非接触駆動型表示装置1は、屋外用のLEDディスプレイとして、市販されたパッケージを用いて、十分に実現可能である。
【0067】
なお、前記したように、市販されたパッケージを用いるとコストが高くなる場合がある。そこで、基板に共振回路を直接形成することを考える。具体的には、表示側インダクタ25Lは、平均半径が3mmで、コイル領域の幅が4mmで、14回巻きのらせん状のインダクタとすると、そのインダクタンスが1.0μHとなる。このとき、表示側インダクタ25Lは、電極間のピッチが0.28mmとなり、比較的容易に形成が可能である。また、コンデンサ25Cは、比誘電率が1で、誘電体の面積が10×10mmで、誘電体の厚みが10μmとすれば、容量が885pFとなる。このように、コンデンサ25Cは、十分に実現可能なサイズである。つまり、本発明に係る非接触駆動型表示装置1は、屋外用のLEDディスプレイとして、基板に共振回路を直接形成する方法によっても、十分に実現可能である。
【0068】
(参考例1)
以下、参考例1について説明する(適宜図1,図2参照)。参考例1は、本発明の第1実施形態に係る非接触駆動型表示装置1について、高精細なディスプレイへの適用を検討したものである。
【0069】
インダクタンスとキャパシタンスとの値が画素の面積に比例することから、画素の面積が0.1×0.1mmと小型化すると、インダクタンスとキャパシタンスとの値は、それぞれ、1/100と、1/10000とになってしまう。そこで、インダクタンスとキャパシタンスとの値を前記した実施例2と同程度に保つために、表示側インダクタ25Lは、その中心に、比透磁率が10以上10000以下の芯材(例えば、鉄、コバルト又はニッケル)を備える。また、コンデンサ25Cは、比誘電率が10以上5000以下と高い誘電体(例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム又はチタン酸ジルコニウム酸鉛)とし、この誘電体の厚さを0.01マイクロメートル以上5マイクロメートル以下と薄くする。前記した表示側インダクタ25L及びコンデンサ25Cは、問題なく形成できる。このことから、高精細化に問題はなく、本発明に係る非接触駆動型表示装置1は、高精細なディスプレイとしても、十分に実現可能と考えられる。
【符号の説明】
【0070】
1,1B 非接触駆動型表示装置
2 表示基板
21,21a,21b 表示回路
23,23a,23b 表示素子
25 直列共振回路
25C,25Ca,25Cb,29C コンデンサ
25L,25La,25Lb,29L 表示側インダクタ
27 入力用インダクタ
29 並列共振回路
3 駆動基板
3L,3La,3Lb 駆動側インダクタ
3R 抵抗
31 駆動回路
40 信号源
50 保持部材
51 縁部
53 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の共振周波数を有する共振回路と表示素子とを備える表示回路が形成された表示基板と、当該表示回路を駆動する駆動信号を出力する駆動回路が形成された駆動基板とを離間して対面させると共に、前記駆動回路から前記表示回路に前記駆動信号を電磁誘導で伝える非接触駆動型表示装置であって、
前記駆動基板は、前記駆動回路が生成した駆動信号を出力する駆動側インダクタを備え、
前記表示回路は、前記駆動側インダクタから入力された前記駆動信号の周波数が、当該表示回路が備える前記共振回路の前記共振周波数に一致するときは、前記表示素子に前記駆動信号を出力することを特徴とする非接触駆動型表示装置。
【請求項2】
前記共振回路は、前記駆動側インダクタから前記駆動信号が入力される表示側インダクタとコンデンサとを直列に接続した直列共振回路であり、
前記表示回路は、前記表示素子と前記直列共振回路とを直列に接続したことを特徴とする請求項1に記載の非接触駆動型表示装置。
【請求項3】
前記共振回路は、表示側インダクタとコンデンサとを並列に接続した並列共振回路であり、
前記表示回路は、前記駆動側インダクタから前記駆動信号が入力される入力用インダクタをさらに備え、前記入力用インダクタに対して前記表示素子と前記並列共振回路とを直列に接続したことを特徴とする請求項1に記載の非接触駆動型表示装置。
【請求項4】
前記表示側インダクタは、比透磁率が10以上10000以下の芯材を備え、
前記コンデンサは、厚さが0.01マイクロメートル以上5マイクロメートル以下の厚さで、かつ、比誘電率が10以上5000以下の誘電体を備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の非接触駆動型表示装置。
【請求項5】
予め設定された間隔で前記表示基板と前記駆動基板とを保持する保持部材を備えることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の非接触駆動型表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−243568(P2010−243568A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88941(P2009−88941)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】