説明

非水溶性ポリマー界面活性剤

非水溶性ポリマー界面活性剤は、重合/高粘性不飽和油を無水マレイン酸と反応させ、次いでさらに部分的にまたは完全に、アミンと反応させてアミドを生成するか、またはアルコールと反応させてエステルを生成することにより調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(先行出願)
本願は、2006年10月13日出願の米国仮出願第60/829,413号、および2006年11月3日出願の米国仮出願第60/853,329号の利益を主張する。これらの特許仮出願の内容を、参照により本願明細書に援用する。
【0002】
本発明は、エマルジョンヒートセット印刷用インキを安定化するために使用される非水溶性ポリマー界面活性剤に関する。
【背景技術】
【0003】
歴史的に見て、平版用オフセット輪転印刷用ヒートセットインキは、30%〜45%の揮発性有機化合物(VOC)を含有する。環境にとって有害であるだけでなく、VOCは可燃性でもあり印刷機を操作する印刷労働者にとっても有害である。従って、平版用オフセット輪転印刷用ヒートセットインキ中のVOC含有量をできるだけ小さくすることが望ましい。この問題を解決しようとする初期の試みは、印刷機オーブンの中で開始される化学反応を使用することに関するものであった。しかしながら、かかるオーブンで硬化されるインキシステムは、貯蔵安定性が非常に悪かった。
【0004】
それゆえに、ヒートセットオフセット輪転印刷用インキは、通常、以下の主要成分、(a)顔料を分散しかつ乾燥時にそのインキが必要とする靭性および光沢を提供するための高分子量インキ樹脂、(b)インキが印刷用紙に印刷されオーブン中で乾燥されるまで、インキに流動性を提供するための溶剤、(c)顔料、ならびに(d)ゲル化剤(これはインキに構造をもたらす)、可塑剤(不揮発性溶剤)、ワックス、増粘剤、および酸化防止剤などの他の少量成分、を含有する。従来のヒートセットインキは、250〜300°F(約121℃〜約149℃)で加熱してインキ油を蒸発させることにより、そしてある程度はインキ油が紙に染み込むことにより、硬化または乾燥され、硬いポリマーフィルムを残す。
【0005】
特許文献1および特許文献2は、固体樹脂、乾性油アルキド樹脂、高粘性(bodied)乾性油、植物油、脂肪酸、多官能性不飽和ポリエステル、還元剤および有機酸の遷移金属塩を含む高速熱硬化性低VOCのオフセット輪転印刷用平版インキシステムを記載している。このインキシステムは、インキのラジカル重合を促進する過酸化物を含有する湿し水をも含んでいてもよい。
【0006】
特許文献3、特許文献4、および特許文献5、1996、はそれぞれ不揮発性溶剤を用いる平版インキを記載しているが、それらは不揮発性溶剤が印刷用紙に染み込むことにより硬化する。
【0007】
特許文献6は、ラテックスポリマーを含有する低VOCのオフセット輪転印刷用ヒートセットインキを記載している。その生来的な非相溶性に起因して、印刷されたフィルムの光沢は劇的に低下し、かつ高速度ではパイリング(piling)が発生する。
【0008】
特許文献7は、水、215〜235℃の沸点を有する炭化水素留分、および10以下の親水性親油性バランス指数を有する界面活性剤を含むエマルジョン組成物を記載している。しかしながら、特許文献7に記載されている界面活性剤は単量体であり、エマルジョン組成物の安定性が非常に良好というわけではない。
【0009】
特許文献8は、水がインキの重量に対して約5〜20重量%の量で存在する油中水型マイクロエマルジョンを含む、「水無し」印刷プロセスに有用な印刷用インキを記載している。水相は、インキの重量に対して約0.5〜3重量%の、(室温で測定した場合には)インキの表面張力を低下させない水溶性界面活性剤を含有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第731150号明細書
【特許文献2】欧州特許第960911号明細書
【特許文献3】国際公開第96/34922号パンフレット
【特許文献4】米国特許第5,431,721号明細書
【特許文献5】米国特許第5,545,741号明細書
【特許文献6】米国特許第7,018,453号明細書
【特許文献7】国際公開第2005/113694号パンフレット
【特許文献8】米国特許第5,417,749号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
要約すると、慣用的なオフセットインキは高い揮発性有機化合物含有量(VOC)レベルを有する。製造の際に水をインキに添加することは、VOCレベルを低下させるための1つの方法である。しかしながら、水を乳化させてVOC含有量を低下させようとするこれまでの試みは、乳化インキの安定性の低さに阻まれてきた。従って、良好な貯蔵安定性および高い乾燥速度を有する低VOCオフセット輪転印刷用ヒートセットインキおよびオフセットインキ中の予め乳化した水を安定化するためのより良好な技術を開発したいという要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、重合/高粘性不飽和油を無水マレイン酸と反応させ、次いでさらに部分的にまたは完全に
(i)アミンと反応させてアミドを生成するか、または
(ii)アルコールと反応させてエステルを生成する
ことにより調製される、非水溶性ポリマー界面活性剤を提供する。
【0013】
本発明の他の目的および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【0014】
特許または出願ファイルは、カラーで製作された少なくとも1つの図面を含む。カラーの図面(複数個の場合もある)を伴う特許または特許出願公報のコピーは、要望を提出し必要な手数料を支払うことで事務局から入手できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】標準的なインキおよび実施例8の新しい一組のインキについての、50%スクリーンにおけるドットゲイン値を示す図である。これは、エマルジョンインキの印刷適性が標準的なインキに等しいことを証明する。
【図2】印刷機の複数のキーわたって得た、標準品の組のインキの濃度に対してプロットした、2種のブラックおよびシアンの標準的インキおよび実施例8の実験的インキの印刷濃度を示す図である。これは、エマルジョンインキの操作性(runnability)が標準的なインキと等しいことを証明する。
【図3】印刷機の複数のキーわたって得た、標準品の組のインキの濃度に対してプロットした、2種のマゼンタおよびイエローの標準的インキおよび実施例8の実験的インキの印刷濃度を示す図である。これは、エマルジョンインキの操作性が標準的なインキと等しいことを証明する。
【図4】ブラックの標準的インキおよび実施例8の実験的インキ(WM)について、2,500s−1で時間に対してDuke Viscometerにより測定した、高せん断粘度を示す図である。これは、この実験的なインキが高せん断速度でも等しく経時的に安定であることを証明する。
【図5】シアンの標準的インキおよび実施例8の実験的インキについて、2,500s−1で時間に対してDuke Viscometerにより測定した、高せん断粘度を示す図である。これは、この実験的なインキが高せん断速度でも等しく経時的に安定であることを証明する。
【図6】マゼンタの標準的インキおよび実施例8の実験的インキについて、2,500s−1で時間に対してDuke Viscometerにより測定した、高せん断粘度を示す図である。これは、この実験的なインキが高せん断速度でも等しく経時的に安定であることを証明する。
【図7】イエローの標準的インキおよび実施例8の実験的インキについて、2,500s−1で時間に対してDuke Viscometerにより測定した、高せん断粘度を示す図である。これは、この実験的なインキが高せん断速度でも等しく経時的に安定であることを証明する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
エマルジョン、特にマイクロエマルジョンによって水を組み込むと、VOCを最高50%も低下させることができることが驚きをもって見出された。このマイクロエマルジョンは、新規なポリマー界面活性剤を用いて成し遂げられた。
【0017】
この新しい種類の非水溶性ポリマー界面活性剤は、予め乳化したヒートセットオフセットインキについての油中水型エマルジョンの安定性を促進する。重合/高粘性不飽和油は、無水マレイン酸(4〜5重量%が好ましい)との反応に供され、続いて部分的にまたは完全に、アミンまたはアルコールとの反応に供され、それぞれアミドまたはエステルが生成される。
【0018】
この重合/高粘性不飽和油は、亜麻仁油、重合亜麻仁油、大豆油、大豆油脂肪酸エステル、脱水ひまし油脂肪酸エステルからなる群から選択されることが好ましい。不飽和油は重合亜麻仁油であることが最も好ましい。
【0019】
アミンは、エタノールアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、オクチルアミン、モルホリン、ベンジルアミンおよびアニリンからなる群から選択されることが好ましい。また、アルコールはトリデシルアルコールであることが好ましい。
【0020】
好ましくは、本発明の安定化されたエマルジョンヒートセット印刷用インキは、20重量%より多い水、より好ましくは約5〜約50重量%の水、さらにより好ましくは約5〜約20重量%の水、最も好ましくは約5〜約15重量%の水を含む。
【0021】
また好ましくは、本発明のポリマー界面活性剤を含有する印刷用インキは、約30〜約300ポアズの粘度および約35重量%未満、より好ましくは約20重量%未満のVOC含有量を有する平版用油中水型マイクロエマルジョン印刷用インキである。この印刷用インキ中に存在する非水溶性ポリマー界面活性剤の量は、約5重量%未満であることが好ましく、約1〜3重量%であることがより好ましい。また、本発明の印刷用インキはラテックスポリマーを含有しないことが好ましい。
【0022】
上記非水溶性ポリマー界面活性剤は、任意の重合/高粘性不飽和油が使用され、下記のものの少なくとも1つが使用されるのであれば、上述の手順によって製造することができる:
(1)2級モノアミンまたは2級モノアルコール、
(2)1級モノアミンまたは1級モノアルコール、
(3)環状2級モノアミンが使用されるか、あるいは
(4)芳香族1級モノアミンまたは芳香族1級モノアルコール。
【0023】
非水溶性ポリマー界面活性剤を添加することは、凸版印刷インキで使用する際に別の利点を有する。凸版印刷インキは、紙の上に直接印刷される。つまり、そのままのインキが紙に塗布される。このインキに添加した水は、紙の中へと吸収され、これにより紙の繊維が膨潤するということが起こる。紙の繊維のこの膨潤は、インキ/紙の相互作用に影響を及ぼし、その結果、印刷された画像は、オフセット印刷されたインキに似て、より滑らかかつシャープに見えるであろう。非水溶性ポリマー界面活性剤の目的は、インキがローラートレインに沿って移動するにつれて、水が蒸発することを防ぐことである。
【0024】
(水溶性ポリマー)
非水溶性ポリマー界面活性剤を含有する印刷用インキは、必要に応じて水溶性ポリマーを含有していてもよい。水相のpHにかかわらずインキの水相に可溶な適切な変性ポリマーの例としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ポリ(C1−C4)アルキレンオキシド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルオキサゾリドンおよびポリアクリルアミドポリマーが挙げられる。
【0025】
ガムは、広く使用される水溶性ポリマーの一種である。ガムは、様々な重合度をもつ多糖類からなる。それらは、多糖類親水コロイドを含む。この多糖類親水コロイドは通常ガムから調製され、そしてそれらは、より水溶性のものかつ/または液体媒体中の他の成分の存在下でより安定なものとするために、例えば部分的アセチル化によって化学的に変性されているかも知れない。生体高分子もこの種の多糖類親水コロイドに属する。市販されているガム種の増粘剤の代表的な例は、キサンタンガムおよびそれらの誘導体である。これらには、米国、ニュージャージー州のKelco Companyからの部分的アセチル化キサンタンガムであるKELZAN、Shell Chemicals Ltd.からのキサンタンガムであるSHELLFLO−XAおよびENORFLO−XA、Rhone−Poulenc SAからのキサンタンガムであるRhodapolが含まれる。別の例は、Shell Chemicals Ltd.からのスクシノグルカンである生体高分子Shellflo Sである。さらに他のガム種の増粘剤は、グァーガムから誘導されたもの、例えばStein,Hall and Co Inc.の製品であるJAGUAR(登録商標)である。さらに、本発明者らは、Rhodiaによって提供される、水/溶剤混合物に対しても同様に良好な溶解性を有するAgent AT 2001、Rhodopol 23および23 P、Jaguar 8600および418を含める。Jaguar 308 NB、Jaguar 2700、Jaguar 8000、Jaguar HP−120などの他の種類も挙げられる。
【0026】
さらに別の種類の水溶性ポリマーは、METHOCELおよびETHOCELセルロースエーテル製品である。これらは、2種の基本タイプ:メチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースで入手できる。両方のタイプのMETHOCELは、無水グルコース単位の基本繰り返し構造を含有する天然の炭水化物であるセルロースのポリマー骨格を有する。セルロースエーテルの製造の間、セルロース繊維は、塩化メチルで処理され、セルロースのメチルエーテルを与える。これらがMETHOCEL Aブランドの製品である。ヒドロキシプロピルメチルセルロース製品(METHOCEL E、F、J、およびKブランドの製品)については、塩化メチルに加えてプロピレンオキシドが使用され、無水グルコース単位上でヒドロキシプロピル置換したものが得られる。この置換基、−OCH2CH(OH)CH3−、は2番目の炭素上に2級ヒドロキシルを含み、またセルロースのプロピレングリコールエーテルを形成するとも考えられるかも知れない。これらの製品は、様々な比のヒドロキシプロピル置換およびメチル置換を有し、これは有機物への溶解性および水溶液の熱的ゲル化温度に影響を及ぼす要因である。
【0027】
ETHOCELエチルセルロースポリマーは、天然に存在するポリマーであるセルロースから誘導され、そのポリマー「骨格」を有する。この分子は、無水グルコースの繰り返し単位の構造を有する。各無水グルコース単位(環)は3つの反応性−OH(ヒドロキシル)部位を有することに留意されたい。セルロースは、アルカリ溶液で処理されアルカリセルロースを生成し、これは続いて塩化エチルとの反応に供されて、粗エチルセルロースを与える。種々のETHOCELポリマーの具体的特性は、ポリマー鎖中の無水グルコース単位の数およびエトキシル置換の程度によって決定される。
【0028】
CELLOSIZE HECポリマーは、その2つの構成要素:セルロースおよびヒドロキシエチル側鎖にちなんで名付けられた。セルロース自体は、無水グルコース繰り返し単位からなる水不溶性の、長鎖分子である。CELLOSIZE HECの製造においては、精製されたセルロースが水酸化ナトリウムとの反応に供され、膨潤したアルカリセルロースが生成される。このアルカリ処理したセルロースは、セルロースよりも化学的反応性がある。このアルカリセルロースをエチレンオキシドと反応させることによって、一連のヒドロキシエチルセルロースエーテルが生成される。この反応において、セルロースのヒドロキシル基の水素原子は、生成物に水溶性を付与するヒドロキシエチル基によって置き換えられている。
【0029】
最後に、別の群の周知の、適切な有機ポリマーとしては、アクリレートホモポリマーまたはコポリマーおよびそれらの誘導体が挙げられる。適切に架橋されたかかる材料の代表例は、商標名EP 1910およびPPE 1042またはUltrasperse StarchesでNational Starch and Chemical Ltdにより販売されているアクリル系コポリマーである。他の種類のかかる(メタ)アクリル系ホモポリマーおよびコポリマーは、B.F.Goodrich Co Ltd.からのCARBOPOL(登録商標)−940などの特定のCarbopol(登録商標)タイプの、架橋カルボキシビニルポリマーである。他の例は、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとのコポリマーのエマルジョンであるAllied ColloidsからのViscalex製品(例えばVISCALEX HV 30)、ACRYSOLS(Rohm & Haasから)およびUBATOLS(Stapolから)である。
【実施例】
【0030】
(せん断および引き続いての経時的な視覚による評価による非水溶性ポリマー界面活性剤の評価)
本発明の非水溶性ポリマー界面活性剤を、高速でミキサを使用して広口瓶の中で秤量した量のポリマー界面活性剤にせん断を加えることにより評価した。次いで、その混合溶液に秤量した量の水をピペットで加え、そしてさらに10分間せん断を加えた。このエマルジョンをバイアルに移し、蓋をした。水/油の分離および色について、定期的に視覚による評価を行った。これらのせん断を加え/混合したエマルジョンの等級付けは、そのエマルジョンが少なくとも1週間安定かどうか、および色に基づいて行った。より安定なエマルジョンを提供するより小さい粒径に起因して、白っぽい色をより望ましいと定めた。非水溶性ポリマー界面活性剤を、1週間後にエマルジョンの分離がなくかつ色が白色である場合、優れていると分類する。非水溶性ポリマー界面活性剤を、一週間後にエマルジョンの分離がなくかつ色が黄褐色または褐色である場合、良好と分類する。非水溶性ポリマー界面活性剤を、3〜5日後にエマルジョンの分離がない場合、許容できると分類する。3日を経過する前に起こるあらゆる分離を、劣悪と考えた。
【0031】
(顕微鏡を使用した乳化インキの試験)
乳化インキ(5mg)をスライドガラス上に置き、その上に別のスライドガラスを重ねた。このインキを450倍の倍率で観察した。数滴の水が観察されるかも知れない。
【0032】
【表1】

【0033】
(フーバーマラーを使用した乳化インキの試験)
乳化インキ(1.0g)をフーバーマラーに置いた。1.1kgの重量で、インキを100回転練肉した。練肉したインキをインキナイフでこすり取り、このインキを以下のように観察した。
【0034】
【表2】

【0035】
(実施例1)
非水溶性ポリマー界面活性剤を、重合亜麻仁油を無水マレイン酸(4〜5重量%)と反応させ、次いで化学量論量のジエチルアミンと反応させることにより調製した。
【0036】
(実施例2)
乳化インキを、以下の表1に示したようにして調製した。標準的なインキは乳化剤を含有していなかったが、実験的インキは実施例1に記載したとおりのポリマー界面活性剤を含有していた。
【0037】
【表3】

【0038】
乳化した水の液滴サイズの減少によって、エマルジョン安定性の改善を認めることができる。
【0039】
(実施例2:比較例)
ヒートセットインキを、油中水型エマルジョンを生成する、従来からの単量体の界面活性剤を用いて以下のように配合した。
【0040】
【表4】

【0041】
実施例2のインキは、1000fpmでのDidde輪転印刷機で、劣悪なインキ水バランスを有していた。
【0042】
(実施例3)
実施例1に記載したようにして調製したポリマー界面活性剤を用いて、3種のヒートセットインキを配合した。これらの3種の配合物(wohsイエロー#1、wohsシアンおよびwohsマゼンタ)は以下のとおりである。
【0043】
【表5】

【0044】
実施例3のすべての3種のインキは、1000fpmでのDidde印刷機で、良好なインキ水バランスを有していた。加えて、VOCレベルは、非乳化インキについての40% VOCと比べて、30%、20%および30%であった。
【0045】
(実施例4)
重合亜麻仁油(86.1部)を4口丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気下で205℃に加熱した。これに、無水マレイン酸(4.1部)を加えた。この混合物を1時間保持した。1時間後、この混合物のサンプルをフラスコから抜き取り、白い紙を下に敷いたガラスプレートの上に置いた。このサンプルに、2滴のN,N−ジメチルアニリンを加えた。このサンプルおよびN,N−ジメチルアニリンを混合した。赤色が現れた場合、遊離した無水マレイン酸は存在しており、その反応液をさらに保持した。色の変化がなかった場合、この反応液を次のステップに進めた。
【0046】
次いでこのバッチを120℃まで冷却し、ジエチルアミン(9.8部)を90分間かけて加え、添加後1時間保持した。1時間保持した後、温度を205℃まで上昇させた。アミン価がゼロになり、酸価が23〜27になるまで、このバッチをこの温度で保持した。アミン価がゼロになり、酸価が23〜27になったとき、このバッチを140℃まで冷却し、排出させた。
【0047】
調製した非水溶性ポリマー界面活性剤を、上に記載したように高速でミキサを使用して、広口瓶の中で秤量した量のポリマー界面活性剤にせん断を加えることにより評価した。それは良好〜優れた安定なエマルジョンを生成した。
【0048】
(実施例5)
重合亜麻仁油(90.4部)を4口丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気下で205℃まで加熱した。これに無水マレイン酸(4.1部)を加えた。この混合物を1時間保持した。1時間後、この混合物のサンプルをフラスコから抜き取り、白い紙を下に敷いたガラスプレートの上に置いた。このサンプルに、2滴のN,N−ジメチルアニリンを加えた。このサンプルおよびN,N−ジメチルアニリンを混合した。赤色が現れた場合、遊離した無水マレイン酸は存在しており、その反応液をさらに保持した。色の変化がなかった場合、この反応液を次のステップに進めた。
【0049】
次いでこのバッチを120℃まで冷却した。120℃で、イソブチルアミン(5.5部)を90分間かけて加え、添加後1時間保持した。1時間保持した後、温度を205℃まで上昇させた。アミン価がゼロになり、酸価が23〜27になるまで、このバッチをこの温度で保持した。アミン価がゼロになり、酸価が23〜27になったとき、このバッチを140℃まで冷却し、排出させた。
【0050】
調製した非水溶性ポリマー界面活性剤を、上に記載したように高速でミキサを使用して、広口瓶の中で秤量した量のポリマー界面活性剤にせん断を加えることにより評価した。それは良好〜優れた安定なエマルジョンを生成した。
【0051】
(実施例6)
重合亜麻仁油(91.7部)を4口丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気下で205℃まで加熱した。これに無水マレイン酸(4.3部)を加えた。この混合物を1時間保持した。1時間後、この混合物のサンプルをフラスコから抜き取り、白い紙を下に敷いたガラスプレートの上に置いた。このサンプルに、2滴のN,N−ジメチルアニリンを加えた。このサンプルおよびN,N−ジメチルアニリンを混合した。赤色が現れた場合、遊離した無水マレイン酸は存在しており、その反応液をさらに保持した。色の変化がなかった場合、この反応液を次のステップに進めた。
【0052】
次いでこのバッチを120℃まで冷却した。120℃で、モルホリン(4.0部)を90分間かけて加え、添加後1時間保持した。1時間保持した後、温度を205℃まで上昇させた。アミン価がゼロになり、酸価が23〜27になるまで、このバッチをこの温度で保持した。アミン価がゼロになり、酸価が23〜27になったとき、このバッチを140℃まで冷却し、排出させた。
【0053】
調製した非水溶性ポリマー界面活性剤を、上に記載したように高速でミキサを使用して、広口瓶の中で秤量した量のポリマー界面活性剤にせん断を加えることにより評価した。それは良好〜優れた安定なエマルジョンを生成した。
【0054】
(実施例7)
重合亜麻仁油(90.4部)を4口丸底フラスコに入れ、窒素雰囲気下で205℃まで加熱した。これに無水マレイン酸(4.1部)を加えた。この混合物を1時間保持した。1時間後、この混合物のサンプルをフラスコから抜き取り、白い紙を下に敷いたガラスプレートの上に置いた。このサンプルに、2滴のN,N−ジメチルアニリンを加えた。このサンプルおよびN,N−ジメチルアニリンを混合した。赤色が現れた場合、遊離した無水マレイン酸は存在しており、その反応液をさらに保持した。色の変化がなかった場合、この反応液を次のステップに進めた。
【0055】
このバッチを120℃まで冷却した。120℃で、ジエチルアミン(5.5部)を90分間かけて加え、添加後1時間保持した。1時間保持した後、温度を205℃まで上昇させた。アミン価がゼロになり、酸価が23〜27になるまで、このバッチをこの温度で保持した。アミン価がゼロになり、酸価が23〜27になったとき、このバッチを140℃まで冷却し、排出させた。
【0056】
調製した非水溶性ポリマー界面活性剤を、上に記載したように高速でミキサを使用して、広口瓶の中で秤量した量のポリマー界面活性剤にせん断を加えることにより評価した。それは良好〜優れた安定なエマルジョンを生成した。加えて、これをインキの中で実際に試用し、とても良好に機能することを見出した。
【0057】
(実施例8)
4色のヒートセットインキを、以下の表2に記載するようにして作製した。すべての4種のインキは、成功裏に、Miehle枚葉印刷機およびDidde輪転印刷機で平版印刷された。
【0058】
【表6】

【0059】
実施例8のマイクロエマルジョン化したインキを、以下に記載するように試験したところ、(1)市販のインキと等しい平版印刷性能、(2)同程度の湿し水消費量、(3)同程度のドットゲイン、(4)同程度のインキ転移、(5)同程度のインキフィードバック、インキ消費量を有していた。
【0060】
(インキおよび湿し水の使用量)
標準的なインキおよび4種の実験的インキのインキおよび湿し水の使用量を、以下の表3に記載する。
【0061】
【表7】

【0062】
(ドットゲイン値)
標準的インキおよび新しい組のインキについての50%スクリーンにおけるドットゲイン値を以下のグラフ(図1)に提示する。それらは、グラフ中の印刷機の複数のキーの開度によって示されるように、印刷機の複数のキーにわたって測定した。2組のインキの間に有意な差はないことは明らかである(図1を参照)。
【0063】
(印刷濃度値)
印刷濃度もまた、印刷機の複数のキーにわたって得た。それらを、標準的な組のインキの濃度に対して、以下にプロットした(図2および図3)。実際、キーの設定は、標準的な組のインキによって設定し、新しい組は同じ設定のもとで流した。2組のインキからの同じ色の間で印刷濃度に差がないことは明らかである(図2および図3を参照)。
【0064】
(レオロジー的安定性)
これらの試験を、凍結−解凍(0℃)および熱オーブン(40℃)のどちらかの条件下で数週間実施した。標準的なインキのサンプルを、同じ条件下での基準として使用した。高せん断粘度を、Duke Viscometerによって2,500s−1で測定した。ブラック、マゼンタおよびイエローのインキは、標準品と類似の挙動を示した。新しいシアンの安定性は、標準品の安定性よりも良好なようであった(図4〜図7を参照)。
【0065】
(実施例9)
ヒートセットインキを、実施例1に記載したようにして調製したポリマー界面活性剤を用いて、以下に示すようにして配合した。
【0066】
【表8】

【0067】
上記のインキの揮発性有機化合物含有量は20%であり、これは、標準的なインキにおける40%VOCと比べて50%の減少である。
【0068】
本発明をその好ましい実施形態によって説明してきたが、当業者が理解するように、本発明はもっと広範囲に適用できるものである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶性ポリマー界面活性剤であって、重合/高粘性不飽和油を無水マレイン酸と反応させ、次いでさらに部分的にまたは完全に、
(i)アミンと反応させてアミドを生成するか、または
(ii)アルコールと反応させてエステルを生成する
ことにより調製される、非水溶性ポリマー界面活性剤。
【請求項2】
前記重合/高粘性不飽和油が、亜麻仁油、重合亜麻仁油、大豆油、大豆脂肪酸エステル、脱水ひまし油脂肪酸エステルからなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー界面活性剤。
【請求項3】
前記アミンが、エタノールアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、オクチルアミン、モルホリン、ベンジルアミンおよびアニリンからなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー界面活性剤。
【請求項4】
前記アルコールがトリデシルアルコールである、請求項1に記載のポリマー界面活性剤。
【請求項5】
前記部分的または完全な反応が、アミドを生成するためのアミンとのものである、請求項1に記載のポリマー界面活性剤。
【請求項6】
前記部分的または完全反応が、エステルを生成するためのアルコールとのものである、請求項1に記載のポリマー界面活性剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−506969(P2010−506969A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532479(P2009−532479)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/022057
【国際公開番号】WO2008/045578
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(507385165)サン ケミカル コーポレイション (17)
【Fターム(参考)】