説明

非水系二次電池用セパレータ、その製造方法および非水系二次電池

【課題】耐熱性、シャットダウン機能、熱収縮率、耐久性等の優れた物性と性能を有すると共に、成形性にも優れた非水系二次電池用セパレータ提供すること。
【解決手段】ポリオレフィン微多孔膜と、耐熱性樹脂にて形成され前記微多孔膜の片面又は両面に積層された耐熱性多孔質層と、を備えた非水系二次電池用セパレータであって、該耐熱性多孔質層には、無機フィラーが含まれており、該無機フィラーは、粒子径が0.01〜0.05μmの範囲と0.1〜1.0μmのそれぞれの範囲において、粒度分布の極大値を少なくとも一つずつ有し、かつ、該無機フィラーは、該耐熱性多孔質層中に重量分率で40〜95重量%含まれていることを特徴とする非水系二次電池用セパレータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非水系二次電池用セパレータに関し、特に、シャットダウン機能、耐熱性、熱寸法安定性、突刺強度、耐熱性多孔質層の成形性、耐はがれ性等の諸特性において優れた非水系二次電池用セパレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等に代表される非水系二次電池は、高エネルギー密度であり、携帯電話・ノートパソコンといった携帯用電子機器の主電源として広範に普及している。このリチウムイオン二次電池は、更なる高エネルギー密度化が求められているが、安全性の確保が技術的な課題となっている。リチウムイオン二次電池の安全性確保においてセパレータの役割は重要であり、シャットダウン機能を有するという観点から、現状ではポリオレフィン、特にポリエチレン微多孔膜が用いられている。ここで、シャットダウン機能とは、電池の温度が上昇したときに、微多孔膜の孔が閉塞し電流を遮断する機能のことを言い、電池の熱暴走を食い止める働きがある。
【0003】
一方、リチウムイオン二次電池は、年々高エネルギー密度化がなされており、安全性確保のためシャットダウン機能に加えて耐熱性も要求されてきている。しかしながら、シャットダウン機能は、ポリエチレンの溶融による孔の閉塞をその作動原理としているので耐熱性と相反するものである。このため、シャットダウン機能が作動した後、さらに電池がシャットダウン機能が作動する温度以上に曝され続けることで、セパレータの溶融(いわゆるメルトダウン)が進行してしまう場合がある。このメルトダウンの結果、電池内部で短絡が生じ、これに伴って大きな熱が発生してしまい、電池は発煙・発火・爆発といった危険に曝されることになる。このため、セパレータにはシャットダウン機能に加えて、シャットダウン機能が作動する温度近傍でメルトダウンが生じない程度の、十分な耐熱性が要求される。
【0004】
この点において、従来、耐熱性とシャットダウン機能を両立させるために、ポリオレフィン微多孔膜の片面又は両面(表面と裏面)に耐熱性多孔質層を被覆させたり、耐熱性繊維からなる不織布を積層させるという技術が提案されている。例えば、ポリエチレン微多孔膜の片面又は両面に、湿式塗工法により芳香族アラミド等の耐熱性高分子からなる耐熱性多孔質層を積層した非水電解質電池セパレータが知られている(特許文献1〜4参照)。このような非水電解質電池セパレータは、ポリエチレンの融点近傍(140℃程度)でシャットダウン機能が作動すると共に、耐熱性多孔質層が十分な耐熱性を示すことにより200℃以上においてもメルトダウンが発生しないため、優れた耐熱性及びシャットダウン機能を発揮する。
【0005】
中でも、特許文献4には、耐熱性含窒素芳香族重合体及びセラミック粉末を含む多孔質層を、ポリエチレン微多孔膜上に成形した発明が開示されている。このように耐熱性多孔質層中に無機フィラーを含む構成であれば、材料自体の耐熱性がより向上するため、メルトダウンの防止という観点ではより高い効果が期待できる。しかしながら、材料自体の耐熱性が高くても、高温下においてセパレータが顕著に熱収縮する場合もあり、このように熱寸法安定性に劣るセパレータを電池に用いた場合、高温下での短絡を十分に防止することが困難となる。この点、特許文献4では、高温下においてフィルム形状を維持できる旨の記載はあるものの、具体的な熱収縮率について何ら触れられておらず、場合によっては十分な熱寸法安定性が得られないおそれがある。
【0006】
また、特許文献4では、セラミック粉末の粒径および含有量の好適範囲について触れられている。すなわち、セパレータ強度および塗工面の平滑性の観点からセラミック粉末の一次粒子の平均粒径は1.0μmが好ましいこと、イオン透過性等の観点からセラミック粉末の含有量は1重量%以上が好ましいこと、セパレータの脆化防止等の観点からセラミック粉末の含有量は95重量%以下が好ましいことについて記載されている。しかしながら、かかる好適範囲は広範なものであり、この範囲内であっても、熱寸法安定性や突刺強度、耐熱性多孔質層の成形性、粉落ちを含むはがれ性等の観点からは、実用的でないものが含まれているおそれがある。
【0007】
【特許文献1】特開2002−355938号公報
【特許文献2】特開2005−209570号公報
【特許文献3】特開2005−285385号公報
【特許文献4】特開2000−030686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、シャットダウン機能および耐熱性に加えて、熱寸法安定性や突刺強度、耐熱性多孔質層の成形性、耐はがれ性等の諸特性においても優れた非水系二次電池用セパレータ提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用する。
(1) ポリオレフィン微多孔膜と、耐熱性樹脂にて形成され前記微多孔膜の片面又は両面に積層された耐熱性多孔質層と、を備えた非水系二次電池用セパレータであって、該耐熱性多孔質層には、無機フィラーが含まれており、該無機フィラーは、粒子径が0.01〜0.05μmの範囲と0.1〜1.0μmのそれぞれの範囲において、粒度分布の極大値を少なくとも一つずつ有し、かつ、該無機フィラーは、該耐熱性多孔質層中に重量分率で40〜95重量%含まれていることを特徴とする非水系二次電池用セパレータ。
(2) 前記無機フィラーは、0.01〜0.05μmの範囲に粒度分布の極大値を有する粒子群を5〜50体積%含み、0.1〜1.0μmの範囲に粒度分布の極大値を有する粒子群を50〜95体積%含むことを特徴とする上記(1)に記載の非水系二次電池用セパレータ。
(3) 前記無機フィラーが、金属酸化物、金属水酸化物、金属窒化物、炭酸塩、硫酸塩及び粘土鉱物からなる群から選ばれた1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の非水系二次電池用セパレータ。
(4) 前記耐熱性多孔質層を形成する耐熱性樹脂が、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン及びポリエーテルイミドからなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の非水系二次電池用セパレータ。
(5) 上記(1)〜(4)のいずれかに記載の非水系二次電池用セパレータの製造方法であって、(i)前記耐熱性樹脂の水溶性有機溶剤溶液に前記無機フィラーが分散した塗工用スラリーを作製する工程と、(ii)得られた塗工用スラリーを、前記ポリオレフィン微多孔膜の片面又は両面に塗工する工程と、(iii)塗工された前記微多孔膜を、水又は水と前記有機溶剤の混合液からなる凝固液中に浸漬して耐熱性樹脂を凝固させる工程と、(iv)凝固工程後の前記微多孔膜を水洗し乾燥する工程と、を実施することを特徴とする非水系二次電池用セパレータの製造方法。
(6) リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池において、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の非水系二次電池用セパレータを用いることを特徴とする非水系二次電池。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シャットダウン機能および耐熱性に加えて、熱寸法安定性や突刺強度、耐熱性多孔質層の成形性、耐はがれ性等の諸特性においても優れた非水系二次電池用セパレータ提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[非水系二次電池用セパレータ]
本発明の非水系二次電池用セパレータは、ポリオレフィン微多孔膜と、耐熱性樹脂にて形成され前記微多孔膜の片面又は両面に積層された耐熱性多孔質層と、を備えた非水系二次電池用セパレータであって、該耐熱性多孔質層には、無機フィラーが含まれており、該無機フィラーは、粒子径が0.01〜0.05μmの範囲と0.1〜1.0μmのそれぞれの範囲において、粒度分布の極大値を少なくとも一つずつ有し、かつ、該無機フィラーは、該耐熱性多孔質層中に重量分率で40〜95重量%含まれていることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、無機フィラーは、粒子径が0.01〜0.05μmの範囲と0.1〜1.0μmのそれぞれの範囲において、粒度分布の極大値を少なくとも一つずつ有することが必要である。このように少なくとも大小2種類のサイズ分布を有する無機フィラーを用いることで、セパレータの熱寸法安定性や突刺強度、耐熱性多孔質層の成形性、耐はがれ性等の諸特性を向上することができる。すなわち、無機フィラーのうち粒子径が0.01〜0.05μmの範囲の範囲において粒度分布の極大値を有する小さな粒子群は、セパレータの熱収縮率、突刺強度、耐はがれ性の向上に寄与する。しかし、この小さな粒子群を単独で用いた場合、耐熱性ポリマーに対する無機フィラーの含有率が高くなるにつれ、ポリオレフィン微多孔膜に耐熱性多孔質層を積層する際に使用する塗工用スラリーの粘度が上昇し、均質な耐熱性多孔質層を形成することが困難となり、成形性の点で劣るようになる。また、一次粒子の凝集によって塗工用スラリーの分散性が低下する傾向があり、塗工用スラリーの安定性の点でも好ましくない。一方、無機フィラーのうち粒子径が0.1〜1.0μmの範囲の範囲において粒度分布の極大値を有する大きな粒子群は、小さな粒子群に比較して塗工用スラリーの粘度上昇を抑制する効果がある。しかし、この大きな粒子群を単独で用いた場合、熱寸法安定性の効果が不十分であったり、耐熱性多孔質層における含有率が高くなると粉落ちといった耐はがれ性が低下し、含有率を高めることが困難であった。以上のことを鑑み鋭意検討した結果、これら大小2種類のサイズ分布の無機フィラーを併用することで、セパレータの熱寸法安定性や突刺強度、耐はがれ性を向上させることができ、さらに耐熱性多孔質層の成形性も向上させることができた。また、大きな粒子同士の間に小さな粒子が充填される細密充填効果も得られるようになるため、耐熱性等の特性もより向上させることができた。
【0013】
ここで、小さな粒子群の粒子径のピークが0.01μmよりも小さいと、塗工用スラリーの粘度が著しく増大するばかりか、かかる微小な無機フィラーは非常に高価であるため経済的な観点からも好ましくない。また、小さな粒子群の粒子径のピークが0.05μmよりも大きいと、大きな粒子群との関係で細密充填効果が得られ難くなり、セパレータの熱収縮率、突刺強度、耐はがれ性の向上効果も得られ難くなるため、好ましくない。一方、大きな粒子群の粒子径のピークが0.1μmよりも小さいと、塗工用スラリーの粘度の低減効果が得られ難くなるとともに、小さな粒子群との関係で細密充填効果が得られ難くなるため、好ましくない。また、大きな粒子の粒子径のピークが1.0μmよりも大きいと、耐熱性多孔質層の高温時の耐短絡性が低下する傾向にあり、耐熱性多孔質層を適切な厚みで成形し難くなるため、好ましくない。
【0014】
また、本発明においては、無機フィラーは、耐熱性多孔質層中に重量分率で40〜95重量%含まれていることが必要であり、50〜90重量%であればより好ましい。無機フィラーの重量分率が40%より低いと、セパレータの耐熱性や熱寸法安定性が低下してしまうため、好ましくない。また、95重量%より高いと、耐熱性多孔質層の強度が不足し、粉落ちの問題から耐はがれ性も悪化するため、好ましくない。
【0015】
前記無機フィラーは、0.01〜0.05μmの範囲に粒度分布の極大値を有する粒子群を5〜50体積%、好ましくは10〜40体積%含み、0.1〜1.0μmの範囲に粒度分布の極大値を有する粒子群を50〜95体積%、好ましくは60〜90体積%含むことが好ましい。このような範囲であれば、大小異なるサイズの無機フィラーがバランス良く配合されるため、上述したようなセパレータの熱寸法安定性や突刺強度、耐はがれ性の向上効果、耐熱性多孔質層の成形性の向上効果、細密充填による耐熱性等の向上効果がより確実に得られるようになる。なお、無機フィラーが0.1〜1.0μmの範囲に粒度分布の極大値を有する粒子群のみからなる場合は、0.01〜0.05μmの範囲に粒度分布の極大値を有する粒子群のみからなる場合よりも、耐熱性多孔質層の成形性は良好なものの、本発明の大小2種類のサイズ分布を有する無機フィラーを用いる場合よりも成形性は劣るだけでなく、セパレータの熱寸法安定性や突刺強度の向上効果は不十分であり、耐はがれ性が著しく低下してしまうおそれがあるため、含有率を高めることが困難である。
【0016】
本発明で用いられる無機フィラーとしては、例えば、金属酸化物、金属水酸化物、金属窒化物、炭酸塩、硫酸塩、粘土鉱物等を用いることができる。金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、 酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化錫、酸化鉄、ジルコニア等、金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化クロム、水酸化ジルコニウム、水酸化ニッケル、水酸化ホウ素、ベーマイト等、金属窒化物としては、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタニウム等、炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等、硫酸塩としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等、粘土鉱物としては、ケイ酸カルシウム、タルク、マイカ、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、ベントナイト、ゼオライト、セピオライト、カオリン、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、バイデライト等が挙げられ、もしくはこれらの2種以上の組合せが挙げられる。これら無機フィラーの中では、難燃性、耐酸化性の点で、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、ジルコニア等の金属酸化物も好ましい。また、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物が好ましい。
【0017】
本発明で用いられる無機フィラーの製法は特に限定されるものではないが、例えば、大小異なる粒度を有する2種以上の無機フィラーを混合する方法が挙げられる。また、例えば、1つの粒子径ピークを有する無機フィラーをふるいにかけて幾つかの分画に分級し、平均粒子径の異なる2種以上を選別し、それらを混合することによって、本発明の要件を満足させることもできる。これらの場合は、各無機フィラーについてレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて体積粒度分布を測定し、各無機フィラーの体積粒度分布における中心粒子径(D50)を粒度分布の極大値として扱うことができるし、また、混合後の状態の無機フィラーについて体積粒度分布を測定して、その粒度分布中のピークの最頂点に対応する粒子径を粒度分布の極大値として扱うこともできる。その他、1つの粒子径ピークを有する無機フィラーをビーズミル、ボールミル等の装置を用いて粉砕して、本発明の要件を満足させる方法も採用できる。この場合は、混合した状態の無機フィラーについて体積粒度分布を測定して、その粒度分布中のピークの最頂点に対応する粒子径を粒度分布の極大値として扱えばよい。なお、2種以上の無機フィラーの粒度分布が連続している場合は、各ピーク同士間の最小点を閾値として、粒子群を区分すればよい。
【0018】
また、無機フィラーは、従来公知の方法により表面処理が施されていてもよい。表面処理することにより、塗工用スラリー中における無機フィラーの分散性を向上することができる。表面処理法としては、例えば、表面改質剤として、ステアリン酸といった飽和脂肪酸やオレイン酸、リノール酸といった不飽和脂肪酸を用いる方法、ココナッツ油、大豆油、アマニ油、サフラワー油といった油脂を用いる方法、アニオン性及び非イオン性界面活性剤を用いる方法、有機オニウムイオン、有機ホスホニウムイオン等を用いる方法、PE、PPワックス及びその酸化物、酸変性物を用いる方法、カルボン酸系カップリング剤、リン酸系カップリング剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等カップリング剤を用いる方法が挙げられる。無機フィラーの表面処理は、通常、無機フィラーを予め大過剰の溶媒に分散させておき、表面改質剤を溶解した溶液を添加、反応させることで表面処理を行うことができる。そして、その反応生成物を濾過・洗浄を繰り返し、未反応の表面改質剤を除去した後、乾燥させることで得ることができる。
【0019】
本発明で用いられる耐熱性樹脂は、融点200℃以上のポリマーあるいは融点を有しないが分解温度が200℃以上のポリマーが適当であり、好ましくは、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミドからなる群から選ばれる1種又は2種以上ものである。特に、耐高温酸化性及び耐久性の観点から芳香族ポリアミドが好適であり、多孔質層を形成し易いという観点から、ポリメタフェニレンイソフタルアミド等のメタ型全芳香族ポリアミドがさらに好適である。
【0020】
本発明において、耐熱性樹脂にて形成される耐熱性多孔質層とは、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった層を意味する。この耐熱性多孔質層の空孔率は、60〜90%の範囲が好適である。耐熱性多孔質層の空孔率が90%を超えると、耐熱性が不十分となる傾向にあり好ましくない。また、60%より低いとサイクル特性や保存特性、放電性が低下する傾向となり好ましくない。なお、耐熱性多孔質層を形成する耐熱性樹脂は、主として、即ち、約90重量%以上が耐熱性樹脂からなるものであれば良く、約10重量%以下の、電池特性に影響を与えない他の成分を含んでいても良い。
【0021】
本発明において微多孔膜に用いられるポリオレフィンとしては、シャットダウン機能が良好に得られる観点から、ポリエチレンが好ましい。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレンや、高密度ポリエチレンと超高分子量ポリエチレンの混合物が好適である。また、例えば、ポリエチレン以外に、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等の他のポリオレフィンを混合して用いても良い。微多孔膜とは、内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体あるいは液体が通過可能となった膜を意味する。なお、微多孔膜は、主として、即ち、約90重量%以上がポリオレフィンからなるものであれば良く、約10重量%以下の、電池特性に影響を与えない他の成分を含んでいても良い。
【0022】
ポリオレフィン微多孔膜の膜厚は、5μm以上であることが好ましい。この微多孔膜の膜厚が5μmより薄いと、引張強度や突刺強度といった機械物性が不十分となり好ましくない。また、耐熱性多孔質層の厚みは2μm以上が好適である。耐熱性多孔質層の厚みが2μmより薄くなると十分な耐熱性を得ることが困難となる。
【0023】
微多孔膜の空孔率は20〜60%のものが好ましい。微多孔膜の空孔率が20%未満となると、セパレータの膜抵抗が高くなり過ぎ、電池の出力を顕著に低下させるため好ましくない。また、60%を超えると、シャットダウン特性の低下が顕著となり好ましくない。この微多孔膜の透気度に関するガーレ値(JIS・P8117)は、10〜500sec/100cc以下が好ましい。微多孔膜のガーレ値が500sec/100ccより高いと、イオン透過性が不十分となりセパレータの抵抗が高くなるという不具合が生じる。微多孔膜のガーレ値が10sec/100ccより低いと、シャットダウン機能の低下が著しく実用的でない。
【0024】
本発明において前記耐熱性多孔質層は、前記微多孔膜の少なくとも一方の面に形成すればよいが、ハンドリング性、耐久性及び熱収縮の抑制効果の観点から、表裏両面に形成した方がより好ましい。
【0025】
本発明の非水系二次電池用セパレータの膜厚は25μm以下が好ましく、さらに20μm以下が好ましい。セパレータの膜厚が25μmを超えると、これを適用した電池のエネルギー密度や出力特性が低下し好ましくない。非水系二次電池用セパレータの物性としては、ガーレ値(JIS・P8117)が10〜1000sec/100cc、好ましくは100〜500sec/100ccである。ガーレ値が10sec/100cc未満である場合は、微多孔膜のガーレ値が低過ぎ、シャットダウン機能の低下が著しく実用的でない。ガーレ値が1000sec/100ccを超えると、イオン透過性が不十分となり、セパレータの膜抵抗が増加して電池の出力低下を招くという不具合が生じる。膜抵抗は0.5〜10ohm・cmが好ましく、さらに1〜5ohm・cmであればより好ましい。突き刺し強度は10〜1000gが好ましく、さらに200〜600gであればより好ましい。
【0026】
[非水系二次電池用セパレータの製造方法]
本発明の非水系二次電池用セパレータの製造方法は特に限定されないが、例えば、以下の(i)〜(iv)の工程を経て製造することが可能である。即ち、(i)前記耐熱性樹脂の水溶性有機溶剤溶液に前記無機フィラーが分散した塗工用スラリーを作製する工程と、(ii)得られた塗工用スラリーを、前記ポリオレフィン微多孔膜の片面又は両面に塗工する工程と、(iii)塗工された前記微多孔膜を、水又は水と前記有機溶剤の混合液からなる凝固液中に浸漬して耐熱性樹脂を凝固させる工程と、(iv)凝固工程後の前記微多孔膜を水洗し乾燥する工程と、を実施することを特徴とする製造方法である。
【0027】
前記工程(i)では、耐熱性樹脂の水溶性有機溶剤溶液に、重量分率で40〜95重量%の無機フィラーを分散させ、塗工用スラリー(塗工液)を作製すれば良い。無機フィラーの分散性が良好でない場合は、微粒子をシランカップリング剤等で表面処理し、分散性を改善する手法も適用可能である。そして、得られた塗工用スラリーを、前記微多孔膜の片面又は両面に塗工すれば良い。
【0028】
前記工程(i)において、ポリアミドに対し良溶剤である有機溶剤又は水溶性有機溶剤としては、特に限定されないが、具体的には極性溶剤が好ましく、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。また、これらの極性溶剤に耐熱性樹脂に対して貧溶剤となる溶剤も、一部混合して用いることもできる。このような溶剤を適用することでミクロ相分離構造が誘発され、耐熱性多孔質層を形成する上で多孔化が容易となる。貧溶剤としては、アルコールの類が好適であり、特にグリコールのような多価アルコールが好適である。
【0029】
工程(ii)では、微多孔膜の少なくとも一方の表面に耐熱性樹脂の塗工液を塗工する。本発明においては、微多孔膜の両面に塗工するのが好ましい。塗工液の濃度は4〜9重量%程度が好ましい。塗工する方法は、ナイフコーター法、グラビアコーター法、スクリーン印刷法、マイヤーバー法、ダイコーター法、リバースロールコーター法、インクジェット法、スプレー法、ロールコーター法などが挙げられる。塗膜を均一に塗布するという観点において、特にリバースロールコーター法が好適である。より具体的には、例えば、ポリエチレン微多孔膜の両面に耐熱性樹脂の塗工液を塗工する場合は、一対のマイヤーバーの間を通してポリエチレン微多孔膜の両面に過剰に塗工液を塗布し、これを一対のリバースロールコーターの間を通し、過剰な塗工液を掻き落すことで精密計量するという方法が挙げられる。
【0030】
工程(iii)では、塗工された微多孔膜を、耐熱性樹脂を凝固させることが可能な凝固液中に浸漬することで、耐熱性樹脂を凝固させ、多孔質層を成形する。凝固の方法としては、凝固液をスプレーで吹き付ける方法や、凝固液の入った浴(凝固浴)中に浸漬する方法などが挙げられる。凝固液は、耐熱性樹脂を凝固できるものであれば特に限定されないが、水又は塗工液に用いた有機溶剤に水を適当量混合させたものが好ましい。ここで、水の混合量は凝固液に対して40〜80重量%が好適である。水の量が40重量%より少ないと耐熱性樹脂を凝固するのに必要な時間が長くなったり、凝固が不十分になるという問題が生じる。また、80重量%より多いと溶剤回収においてコスト高となったり、凝固液と接触する表面の凝固が速すぎ、表面が十分に多孔化されないという問題が生じる。
【0031】
工程(iv)は、工程(iii)に引き続き、得られたセパレータから水洗で凝固液を除去し、次いで乾燥する工程である。乾燥方法は特に限定されないが、乾燥温度は50〜80℃が適当であり、高い乾燥温度を適用する場合は、熱収縮による寸法変化が起こらないようにするためにロールに接触させるような方法を適用することが好ましい。
【0032】
[非水系二次電池]
非水系二次電池用セパレータが、前記のようなポリオレフィン微多孔膜と、その片面又は両面に積層された前記のような耐熱性樹脂を主として形成された耐熱性多孔質層とからなり、該耐熱性多孔質層に所定の無機フィラーの微粒子を含むものである限り、本発明の非水系二次電池用セパレータは、公知のいかなる構成の非水系二次電池にも適用することができ、各種の性能に優れた電池が得られる。
【0033】
適用される非水系二次電池の種類や構成は、何ら限定されるものではないが、本発明の非水系二次電池用セパレータは、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池に好適に応用することができる。中でも、リチウムイオン二次電池への適用が好ましい。
【0034】
一般に非水系二次電池とは、負極と正極がセパレータを介して対向している電池要素に電解液が含浸され、これが外装に封入された構造となっているものをいう。負極は、負極活物質、導電助剤、バインダーからなる負極合剤が集電体(銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔等)上に成形された構造となっている。負極活物質としては、リチウムを電気化学的にドープすることが可能な材料、例えば、炭素材料、シリコン、アルミニウム、スズが用いられる。正極は、正極活物質、導電助剤、バインダーからなる正極合剤が集電体上に成形された構造となっている。正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMn0.5Ni0.5、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiMn、LiFePOが用いられる。電解液は、リチウム塩、例えば、LiPF、LiBF、LiClOを非水系溶媒に溶解した構成である。非水系溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ビニレンカーボネートなどが挙げられる。外装材は金属缶またはアルミラミネートパック等が挙げられる。電池の形状は角型、円筒型、コイン型などがあるが、本発明のセパレータはいずれの形状においても好適に適用することが可能である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を詳述する。各種の物性値及び性能の測定方法は以下のとおりである。
【0036】
[無機フィラーの平均粒子径、粒度分布]
レーザー回折式粒度分布測定装置(シスメックス社製、マスターサイザー2000)を用いて測定を行った。分散媒としては水を用い、分散剤として非イオン性界面活性剤「Triton X−100」を微量用いた。なお、本実施例では、大小2種類のサイズの無機フィラーを混合して用いたときは、各無機フィラーの体積粒度分布における中心粒子径(D50)を粒度分布の極大値とし、1種類のサイズの無機フィラーを用いたときは、当該無機フィラーの体積粒度分布における中心粒子径(D50)を粒度分布の極大値とした。
【0037】
[熱収縮率]
サンプルを18cm(MD方向)×6cm(TD方向)に切り出す。TD方向を2等分する線上に上部から2cm、17cmの箇所(点A、点B)に印をする。また、MD方向を2等分する線上に左から1cm、5cmの箇所(点C、点D)に印をする。これにクリップをつけ(クリップをつける場所はMD方向の上部2cm以内の箇所)175℃に調整したオーブンの中につるし、無張力下で30分間熱処理をする。2点AB間、CD間の長さを熱処理前後で測定し、以下の式から熱収縮率を求めた。
MD方向熱収縮率={(熱処理前のABの長さ−熱処理後のABの長さ)/熱処理前のABの長さ}×100
TD方向熱収縮率={(熱処理前のCDの長さ−熱処理後のCDの長さ)/熱処理前のCDの長さ}×100
【0038】
[膜厚]
接触式の膜厚計(ミツトヨ社製)にて20点測定し、これを平均することで求めた。ここで接触端子は底面が直径0.5cmの円柱状のものを用い、接触端子に1.2kg/cmの荷重が印加されるような条件で測定した。
【0039】
[透気度]
透気度(秒/100cc)はJIS・P8117に従い測定した。
【0040】
[空孔率]
構成材料がa、b、c…、nからなり、構成材料の重量がWa、Wb、Wc…、Wn(g・cm)であり、それぞれの真密度がda、db、dc…、dn(g/cm)で、着目する層の膜厚をt(cm)としたとき、空孔率ε(%)は
ε={1−(Wa/da+Wb/db+Wc/dc+…+Wn/dn)/t}×100
より求めた。
【0041】
[シャットダウン(SD)特性]
まず、セパレータをΦ19mmに打ち抜き、非イオン性界面活性剤(花王社製;エマルゲン210P)の3重量%メタノール溶液中に浸漬して風乾する。そしてセパレータに電解液を含浸させSUS板(Φ15.5mm)に挟んだ。ここで電解液は1M LiBF プロピレンカーボネート/エチレンカーボネート(1/1重量比)を用いた。これを2032型コインセルに封入した。コインセルからリード線をとり、熱電対を付けてオーブンの中に入れた。昇温速度1.6℃/分で昇温させ、同時に振幅10mV、1kHzの周波数の交流を印加することでセルの抵抗を測定し、抵抗値が上昇することでシャットダウン機能の有無を○×で評価した。
【0042】
[突刺強度]
カトーテック社製KES−G5ハンディー圧縮試験器を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/secの条件で突刺試験を行い、最大突刺荷重を突刺強度とした。ここでサンプルはΦ11.3mmの穴があいた金枠(試料ホルダー)にシリコンゴム製のパッキンも一緒に挟み固定した。
【0043】
[実施例1]
ポリエチレンパウダーとしてTicona社製のGUR2126(重量平均分子量415万、融点141℃)とGURX143(重量平均分子量56万、融点135℃)を用いた。GUR2126とGURX143を1:9(重量比)となるようにして、ポリエチレン濃度が30重量%となるように流動パラフィンとデカリンの混合溶媒中に溶解させ、ポリエチレン溶液を作製した。該ポリエチレン溶液の組成はポリエチレン:流動パラフィン:デカリン=30:45:25(重量比)である。このポリエチレン溶液を148℃でダイから押し出し、水浴中で冷却して、60℃で8分、95℃で15分乾燥し、ゲル状テープ(ベーステープ)を作製した。該ベーステープを縦延伸、横延伸と逐次行う2軸延伸にて延伸した。ここで、縦延伸は5.5倍、延伸温度は90℃、横延伸は延伸倍率11.0倍、延伸温度は105℃とした。横延伸の後に125℃で熱固定を行った。次にこれを塩化メチレン浴に浸漬し、流動パラフィンとデカリンを抽出した。その後、50℃で乾燥し、120℃でアニール処理することでポリエチレン微多孔膜を得た。このポリエチレン微多孔膜の物性は、膜厚12.0μm、空孔率36%、透気度301秒/100cc、突刺強度380gであった。
【0044】
耐熱性樹脂として、メタ型全芳香族ポリアミドであるコーネックス(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製)を用いた。無機フィラーとして、平均粒子径が0.031μmのアルミナ(シーアイ化成社製)と、平均粒子径が0.8μmのアルミナ(岩谷化学工業社製SA−1)とを、体積比率で10:90の割合で混合したものを用いた。そして、メタ型全芳香族ポリアミドと無機フィラーを重量比で50:50となるように調整し、これらをメタ型全芳香族ポリアミド濃度が5.5重量%となるようにジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)が重量比50:50となっている混合溶媒に混合し塗工用スラリーを得た。
【0045】
一対のマイヤーバー(番手#6)を20μmのクリアランスで対峙させた。マイヤーバーに上記塗工用スラリーを適量のせ、一対のマイヤーバー間にポリエチレン微多孔膜を通すことでポリエチレン微多孔膜の両面に塗工用スラリーを塗工した。これを重量比で水:DMAc:TPG=50:25:25で40℃となっている凝固液中に浸漬した。次いで水洗・乾燥を行い、該ポリエチレン微多孔膜の表裏に耐熱性多孔質層を形成し、本発明の非水系二次電池用セパレータを得た。
【0046】
得られたセパレータの膜厚は18.0μmで、耐熱性多孔質層の厚みは6.0μm、耐熱性多孔質層の空孔率は62%、透気度422秒/100ccであった。セパレータはシャットダウン特性を有し、熱収縮率はMD30%、TD21%、突刺強度は430gであった。また、塗工用スラリーの状態は良好であったため耐熱性多孔質層を良好に成形することができ、無機フィラーの粉落ち等もなく耐はがれ性も良好であった。なお、本セパレータの構成および評価結果については表1に示し、以下の実施例および比較例についても同様に表1にまとめて示した。
【0047】
[比較例1]
無機フィラーとして、平均粒子径が0.031μmのアルミナ(シーアイ化成社製)のみ使用し、それ以外は実施例1と同様にして、非水系二次電池用セパレータの作製を試みた。得られた塗工用スラリーは粘度が高く、目視にてアルミナの凝集物が観察された。また、ポリエチレン微多孔膜の表裏に均一に耐熱性多孔質層を形成することが困難あり、セパレータを作製することはできなかった。
【0048】
[比較例2]
無機フィラーとして、平均粒子径が0.8μmのアルミナ(岩谷化学工業社製SA−1 )のみ使用し、それ以外は実施例1と同様にして、非水系二次電池用セパレータを製作した。
得られたセパレータの膜厚は18.0μmで、耐熱性多孔質層の厚みは6.0μm、空孔率は71%、透気度431秒/100ccであった。セパレータはシャットダウン特性を有し、セパレータの熱収縮率はMD51%、TD33%、突刺強度は410gであった。なお、塗工用スラリーの状態は良好であったため耐熱性多孔質層を良好に成形することができたものの、実施例1のものに比べて、熱収縮率が大きく、突刺強度はより低いものであった。
【0049】
[実施例2]
メタ型全芳香族ポリアミドと無機フィラーとの重量比が10:90となった塗工用スラリーを用い、それ以外は実施例1と同様にして、非水系二次電池用セパレータを製作した。
得られたセパレータの膜厚は18.4μmで、耐熱性多孔質層の厚みは6.4μm、空孔率は74%、透気度401秒/100ccであった。セパレータはシャットダウン特性を有し、セパレータの熱収縮率はMD18%、TD15%、突刺強度は455gであった。また、塗工用スラリーの状態は良好であったため耐熱性多孔質層を良好に成形することができ、無機フィラーの粉落ち等もなく耐はがれ性も良好であった。
【0050】
[実施例3]
無機フィラーとして、平均粒子径が0.031μmのアルミナ(シーアイ化成社製)と平均粒子径が0.8μmのアルミナ(岩谷化学工業社製SA−1)との体積比率が40:60となるように調整したものを用い、それ以外は実施例2と同様にして、非水系二次電池用セパレータを製作した。
得られたセパレータの膜厚は18.2μmで、耐熱性多孔質層の厚みは6.2μm、空孔率は71%、透気度421秒/100ccであった。セパレータはシャットダウン特性を有し、セパレータの熱収縮率はMD15%、TD12%、突刺強度は462gであった。また、塗工用スラリーの状態は良好であったため耐熱性多孔質層を良好に成形することができ、無機フィラーの粉落ち等もなく耐はがれ性も良好であった。
【0051】
[実施例4]
無機フィラーとして、平均粒子径が0.031μmのアルミナ(シーアイ化成社製)と平均粒子径が0.8μmのアルミナ(岩谷化学工業社製SA−1)との体積比率が60:40となるように調整したものを用い、それ以外は実施例2と同様にして、非水系二次電池用セパレータを製作した。
得られたセパレータの膜厚は18.6μmで、耐熱性多孔質層の厚みは6.6μm、空孔率は68%、透気度425秒/100ccであった。セパレータはシャットダウン特性を有し、セパレータの熱収縮率はMD16%、TD11%、突刺強度は453gであった。なお、無機フィラーの粉落ち等はなく耐はがれ性は良好であったものの、塗工用スラリーの粘度が高く、耐熱性多孔質層の一部にムラがあり実施例1〜3と比べて良好な耐熱性多孔質層を形成することができなかった。このため、実施例4については、表1では、成形性を△と評価し、耐はがれ性を○と評価した。
【0052】
[比較例3]
無機フィラーとして、平均粒子径が0.8μmのアルミナ(岩谷化学工業社製SA−1 )のみ使用し、それ以外は実施例2と同様にして、塗工用スラリーを得た。
一対のマイヤーバー(番手#6)を20μmのクリアランスで対峙させた。マイヤーバーに上記塗工用スラリーを適量のせ、一対のマイヤーバー間にポリエチレン微多孔膜を通すことでポリエチレン微多孔膜の両面に塗工用スラリーを塗工した。これを重量比で水:DMAc:TPG=50:25:25で40℃となっている凝固液中に浸漬した。次いで水洗・乾燥を行い、該ポリエチレン微多孔膜の表裏に耐熱性多孔質層を形成したが、耐熱性多孔質層は脆弱で、容易に粉落ちするものであった。
【0053】
[比較例4]
メタ型全芳香族ポリアミドと無機フィラーを重量比で70:30となるように調整した点以外は、実施例1と同様にして、非水系二次電池用セパレータを製作した。得られたセパレータの膜厚は18.3μmで、耐熱性多孔質層の厚みは6.3μm、空孔率は65%、透気度432秒/100ccであった。セパレータはシャットダウン特性を有し、セパレータの熱収縮率はMD45%、TD30%、突刺強度は415gであった。なお、塗工用スラリーの状態は良好であったため耐熱性多孔質層を良好に成形することができ、無機フィラーの粉落ち等もなく耐はがれ性も良好であったが、実施例1のものに比べて熱収縮率が大きく実用的ではなかった。
【0054】
[比較例5]
メタ型全芳香族ポリアミドと無機フィラーを重量比で3:97となるように調整した点以外は、実施例1と同様にしてセパレータの作製を試みた。しかし、得られた塗工用スラリーは、目視にてアルミナの凝集物が観察された。また、得られたセパレータの耐熱性多孔質層は脆弱で、容易に粉落ちするものであった。
【0055】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン微多孔膜と、耐熱性樹脂にて形成され前記微多孔膜の片面又は両面に積層された耐熱性多孔質層と、を備えた非水系二次電池用セパレータであって、
該耐熱性多孔質層には、無機フィラーが含まれており、
該無機フィラーは、粒子径が0.01〜0.05μmの範囲と0.1〜1.0μmのそれぞれの範囲において、粒度分布の極大値を少なくとも一つずつ有し、かつ、
該無機フィラーは、該耐熱性多孔質層中に重量分率で40〜95重量%含まれている
ことを特徴とする非水系二次電池用セパレータ。
【請求項2】
前記無機フィラーは、0.01〜0.05μmの範囲に粒度分布の極大値を有する粒子群を5〜50体積%含み、0.1〜1.0μmの範囲に粒度分布の極大値を有する粒子群を50〜95体積%含むことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項3】
前記無機フィラーが、金属酸化物、金属水酸化物、金属窒化物、炭酸塩、硫酸塩及び粘土鉱物からなる群から選ばれた1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項4】
前記耐熱性多孔質層を形成する耐熱性樹脂が、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン及びポリエーテルイミドからなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の非水系二次電池用セパレータの製造方法であって、
(i)前記耐熱性樹脂の水溶性有機溶剤溶液に前記無機フィラーが分散した塗工用スラリーを作製する工程と、
(ii)得られた塗工用スラリーを、前記ポリオレフィン微多孔膜の片面又は両面に塗工する工程と、
(iii)塗工された前記微多孔膜を、水又は水と前記有機溶剤の混合液からなる凝固液中に浸漬して耐熱性樹脂を凝固させる工程と、
(iv)凝固工程後の前記微多孔膜を水洗し乾燥する工程と、
を実施することを特徴とする非水系二次電池用セパレータの製造方法。
【請求項6】
リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池において、請求項1〜4のいずれかに記載の非水系二次電池用セパレータを用いることを特徴とする非水系二次電池。

【公開番号】特開2010−123383(P2010−123383A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295645(P2008−295645)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】