説明

非水系電解液二次電池及びそれに用いる非水系電解液二次電池用電解液

【目的】高温におけるサイクル特性、容量維持特性に優れ、かつ広い温度範囲で各種電池特性、安全性に優れた高エネルギー密度の非水系電解液二次電池及びこれに用いる非水系電解液を提供する。
【構成】金属リチウム、リチウム合金又はリチウムを吸蔵及び放出することが可能な材料を含む負極と、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な材料を含む正極と、非水溶媒にリチウム塩を溶解してなる電解液とを含む非水系電解液二次電池において、該非水溶媒がラクトン化合物を含有しており、かつその非水溶媒に占める割合が60重量%以上であり、該リチウム塩がLiBF4及びLiPF6を含有しており、リチウム塩に占めるLiBF4の割合が65重量%以上99重量%以下であり、LiPF6の割合が1重量%以上35重量%以下であることを特徴とする非水系電解液二次電池。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水系電解液二次電池に関する。詳しくは、高温におけるサイクル特性、容量維持特性に優れ、かつ広い温度範囲で各種電池特性、安全性に優れた高エネルギー密度の非水系電解液二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の電気製品の軽量化、小型化に伴い、高いエネルギー密度を持つリチウム二次電池の開発が以前にもまして望まれており、また、リチウム二次電池の適用分野の拡大に伴い電池特性の改善も要望されている。
現在、正極には、LiCoO2、LiMn24、LiNiO2等の金属酸化物塩が、負極には、金属リチウム、リチウム合金の他、コークス、人造黒鉛、天然黒鉛等の炭素質材料や、Sn、Si等の金属の酸化物などのリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な物質を用いた非水系電解液二次電池が提案されている。
【0003】
非水系電解液二次電池の電解液の溶媒としては、誘電率の高いエチレンカーボネートが多用されている。しかし、エチレンカーボネートは、凝固点が高いため室温では固体であり、また液体状態では粘度が高いため扱いづらい。そこで、エチレンカーボネートを用いた電解液には、副溶媒としてエチルメチルカーボネートやジエチルカーボネート等の低粘度溶媒が混合されている。しかし、低粘度溶媒は、一般的に沸点が低く、誘電率も低いため、大量に添加すると、リチウム塩の解離度が低下して電解液の性能が低下する。また、溶媒の揮発による塩の析出や、引火点が低下する等安全性面でも問題がある。逆に、少量しか添加しないと、低温での電気伝導率及び粘度の面で問題がある。
【0004】
一方、γ−ブチロラクトン等のラクトン化合物は、エチレンカーボネートよりは劣るものの誘電率が十分に高い上に、凝固点も低く、粘性も低いため、前述した低粘度溶媒と混合しなくても十分な電解液性能を発揮することができ、結果としてエチレンカーボネートと低粘度溶媒を混合した溶媒を用いた電解液と比較しても遜色ない性能を示す優れた溶媒である。
【0005】
このため、主溶媒としてγ−ブチロラクトンを用いた電解液において、副溶媒として15〜35容量%程度のエチレンカーボネートを含む電解液と、それを用いた非水系電解液二次電池が提案されている(特開平11−31525号公報)。
しかしながら、γ−ブチロラクトンを用いた電解液は、エチレンカーボネートと低粘度溶媒との混合溶媒を用いた電解液と比較すると、電気化学的な耐酸化性、耐還元性に劣るため高温時の電池の容量維持率等に問題があり、更なる改良が望まれていた。
【0006】
特開平3−110765号公報には、γ−ブチロラクトンを用いた電解液の電解質としてLiBF4を用いることが提案されている。しかしながら、本発明者らの研究によると、LiPF6よりも高温特性の改善は認められるものの、不十分であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、非水溶媒としてラクトン化合物が大部分を占める非水系電解液二次電池において、高温時の電池の容量維持率等を向上させ、かつ広い温度範囲で各種電池特性に優れ、発火性が低い等安全性の高い、高エネルギー密度の非水系電解液二次電池を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
γ−ブチロラクトンを主溶媒とする電解液に用いた非水系電解液二次電池の高温時における電池の容量維持率を向上させるべく鋭意検討を重ねた結果、LiBF4を主電解質として、LiPF6を副電解質として用いることにより高温特性が改善されることを見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、金属リチウム、リチウム合金又はリチウムを吸蔵及び放出することが可能な材料を含む負極と、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な材料を含む正極と、非水溶媒にリチウム塩を溶解してなる電解液とを含む非水系電解液二次電池において、該非水溶媒がラクトン化合物を含有しており、かつその非水溶媒に占める割合が60重量%以上であり、該リチウム塩がLiBF4及びLiPF6を含有しており、リチウム塩に占めるLiBF4の割合が65重量%以上99重量%以下であり、LiPF6の割合が1重量%以上35重量%以下であることを特徴とする非水系電解液二次電池に存する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるラクトン化合物としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
非水溶媒に占めるラクトン化合物の割合は、通常60重量%以上、好ましくは75重量%以上、更に好ましくは80重量%以上である。
【0011】
ラクトン化合物としては、γ−ブチロラクトンが好ましく、ラクトン化合物全体の60重量%以上がγ−ブチロラクトンであるのが好ましい。
非水溶媒には、ラクトン化合物に加えて、他の溶媒を併用する。
このような溶媒としては、高誘電率溶媒であるエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネートや、スルホラン、3−メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は2種以上を併用してもよい。このうち、サイクル特性等の電池特性を改良するためには、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートが好ましい。一方、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート系溶媒は、粘度が高くて扱いづらいという欠点があり、また、これらを多量に含む非水系電解液はガスが発生しやすいので密閉型のリチウムイオン二次電池には適さない。したがって、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートなどのアルキレンカーボネートは、通常は非水溶媒中に30重量%以下となるように含有させる。20重量%以下、特に15重量%以下の含有量が好ましい。
【0012】
非水溶媒には更に、高誘電率溶媒以外の溶媒を併用することもできる。このような溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル;ジメトキシエタン、ジメトキシメタン等の鎖状エーテル;酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の鎖状エステル等を用いることができる。ジアルキルカーボネートのアルキル基は、炭素数1〜4であることが好ましい。
【0013】
非水溶媒には、溶媒以外の作用を奏するものも併用することができる。その好ましい例は、電極の表面に皮膜を生成して、電極における溶媒の分解を阻止すると考えられている皮膜生成剤である。皮膜生成剤としては、ビニレンカーボネート、エチレンサルファイト、ビニルエチレンカーボネート、プロパンスルトン、フェニルエチレンカーボネート、環状カルボン酸無水物などを用いるのが好ましい。環状カルボン酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸などが用いられる。皮膜生成剤は、非水溶媒中に0.1重量%〜5重量%含有させることにより、電池の容量維持特性、サイクル特性が良好となる。
【0014】
リチウム塩としては、少なくともLiBF4とLiPF6の両者を併用する。リチウム塩に占めるLiBF4の割合は、65重量%以上であることが必要である。LiBF4の割合がこれよりも小さいと所望の高温特性が得られない。LiBF4の割合は、70重量%以上、特に75重量%以上であるのが好ましい。LiBF4の上限値は99重量%であるが、97重量%以下、特に95重量%以下であるのが好ましい。
【0015】
リチウム塩に占めるLiPF6の割合は、1重量%以上である。3重量%以上、特に5重量%以上となるように用いるのが好ましい。また、LiPF6の上限値は35重量%であり、30重量%、特に25重量%以下となるように用いるのが好ましい。リチウム塩に占めるLiPF6の割合が多くても少なくても所望の高温特性が得られなくなる。なお、所望ならば、LiBF4及びLiPF6に加えて、他のリチウム塩を併用することもできる。このようなリチウム塩としては、次のようなものが挙げられる。
無機リチウム塩:LiAsF6、LiTaF6、LiAlF4、LiAlF6、LiSiF6等の無機フッ化物塩、LiClO4等の過ハロゲン酸塩
有機リチウム塩:LiCF3SO3等の有機スルホン酸塩、LiN(CF3SO22 、LiN(C25SO22、LiN(CF3SO2)(C49SO2)等のパーフルオロアルキルスルホン酸イミド塩、LiC(CF3SO23等のパーフルオロアルキルスルホン酸メチド塩、LiPF3(C253、LiBF2(CF32、LiBF3(CF3)等の無機フッ化物塩の一部のフッ素をパーフルオロアルキル基で置換した塩、LiB(CF3COO)4、LiB(OCOCF2COO)2、LiB(OCOC24COO)2、等のリチウムテトラキス(パーフルオロカルボキシレート)ボレート塩
なお、これらのリチウム塩のうち、一般式LiMFnで表される無機リチウム塩は、電解液中でのMFn-部分の加水分解物の電気化学的耐酸化性還元性が劣るため、できる限り少ないほうが好ましい。加水分解物の電解液中における含有量は、1000ppm以下、特に100ppm以下であるのが好ましい。
【0016】
電解液中におけるリチウム塩の濃度は、0.5〜3モル/リットルであることが望ましい。濃度が低いと電解液の電気伝導率が不十分となり、濃度が高いと粘度が上昇するため電気伝導率が低下したり、低温で析出しやすくなるため、電池の性能が低下する。
本発明に係る非水系電解液には、更に、過充電防止剤、脱水剤、脱酸剤等の公知の助剤を含有させることができる。
【0017】
例えば、過充電防止剤としては、特開平8−203560号、特開平7−302614号、特開平9−50822号、特開平8−273700号、特開平9−17447号各公報等に記載されるベンゼン誘導体、特開平9−106835号、特開平9−171840号、特開平10−321258号、特開平7−302614号、特開平7−302614号、特開平11−162512号、特許2939469号号、特許2963898号各公報等に記載されているビフェニル及びその誘導体、特開平9−45369号、特開平10−321258号各公報等に記載されているピロール誘導体、特開平7−320778号、特開平7−302614号各公報等に記載されているアニリン誘導体等の芳香族化合物や特許2983205号公報等に記載されているエーテル系化合物、その他特開平2001−15158号公報に記載されているような化合物を含有させることができる。
【0018】
本発明に係る電池を構成する負極の活物質としては、リチウムを吸蔵及び放出し得るものであれば特に限定されない。例えば、様々な熱分解条件での有機物の熱分解物や、人造黒鉛、天然黒鉛等の炭素質材料、金属酸化物材料、更にはリチウム金属や種々のリチウム合金が用いられる。
これらのうち、炭素質材料としては、種々の原料から得た易黒鉛性ピッチの高温熱処理によって製造された人造黒鉛及び精製天然黒鉛、又はこれらの黒鉛にピッチその他で表面処理を施したものが好ましい。
【0019】
黒鉛材料の学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)は、通常0.335〜0.34nm、好ましくは0.335〜0.337nmである。また、黒鉛材料の灰分は、通常1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下である。学振法によるX線回折で求めた結晶子サイズ(Lc)は、通常30nm以上、好ましくは50nm以上、更に好ましくは100nm以上である。
【0020】
黒鉛材料のレーザー回折・散乱法によるメジアン径は、通常1μm〜100μm、好ましくは3μm〜50μm、より好ましくは5μm〜40μm、更に好ましくは7μm〜30μmである。
黒鉛材料のBET法比表面積は、0.5m2/g〜25.0m2/gであり、好ましくは0.7m2/g〜20.0m2/g、より好ましくは1.0m2/g〜15.0m2/g、更に好ましくは1.5m2/g〜10.0m2/gである。
【0021】
黒鉛材料は、アルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析において、1580〜1620cm-1の範囲にピークPA(ピーク強度IA)及び1350〜1370cm-1の範囲にピークPB(ピーク強度IB)の強度比R=IB/IAが0〜0.5、1580〜1620cm-1の範囲のピークの半値幅が26cm-1以下、1580〜1620cm-1の範囲のピークの半値幅は25cm-1以下がより好ましい。
【0022】
また、これらの炭素質材料に、リチウムを吸蔵及び放出可能な他の負極材を混合して用いることもできる。
炭素質材料以外のリチウムを吸蔵及び放出可能な負極材としては、Ag、Zn、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、Cu、Ni、Sr、Ba等の金属とLiの合金、又はこれら金属の酸化物等の金属酸化物材料、リチウム金属が挙げられる。このうち、Sn酸化物、Si酸化物、Al酸化物、Sn、Si、Alのリチウム合金、金属リチウムが好ましい。
【0023】
これらの負極材は2種類以上混合して用いてもよい。
正極活物質としては、リチウムを吸蔵及び放出できる金属酸化物系化合物、カルコゲナイト系化合物等が挙げられ、このうち、LixCoO2、LixMnO2、LixMn24、Lix25、LixTiS2等が好ましく、LixCoO2、LixNiO2等が特に好ましい。なお、xは0<x≦1の数である。
【0024】
本発明で正極活物質として好ましく使用される層状構造を有するリチウムコバルト複合酸化物及びリチウムニッケル複合酸化物としては、基本的な組成式LiCox2,LiNiO2を有するものが一般的である。これらの複合酸化物は、Co及びNiの一部を他元素によって置換されていてもよい。Co又はNiの一部を置換できる元素としては、B、Al、Mg、Fe、Sn、Cr、Cu、Ti、Zn、Co、Mn等の金属元素を挙げることができる。複数の元素で置換することも可能である。特にはAl及び/又はMgが好ましい。なお、上記において、リチウム複合酸化物の酸素原子は不定比性を有してもよく、また酸素原子の一部がフッ素等のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0025】
本発明では、正極活物質としてスピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物を用いることもできる。スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物は、例えば、リチウム化合物とマンガン化合物及びMnサイトの一部を置換する1種類以上の典型元素の化合物とを混合し、大気中で焼成するか、又はリチウム化合物とマンガン化合物を混合し、大気中で焼成してスピネル型リチウムマンガン複合酸化物を製造し、次いで、1種以上の典型元素の化合物と反応させることによって得ることができる。このような、Mnサイトを置換する典型元素としては、Li、B 、Na、Mg、Al、Ca、Zn、Ga、Ge等が挙げられる。複数の元素でマンガンサイトを置換することも可能である。Mnサイトの置換元素としては、Li、Mg、Al、Gaが好ましく、特にAl、Mgが好ましい。典型元素の置換量は、Mn2モルの中の0.05モル以上、好ましくは0.06以上、更に好ましくは0.08モル以上である。
【0026】
好ましいリチウムマンガン複合酸化物は、一般式Li[Mn(2-x)AlyLiz]O4 (x、y及びzはそれぞれ0以上の数であり、x=y+zである。ただし、yとzは同時に0ではない。) で表わすことができる。ここで、yは、通常0.5以下、好ましくは0.25以下であり、更に好ましくは0.1以上である。また、zは、通常0.1以下、好ましくは0.08以下であり、また通常0.02以上である。yやzが小さいと高温特性が悪化することがあり、一方、大きいと容量が低下する傾向にある。
【0027】
なお、上記において、リチウムマンガン複合酸化物の酸素原子は不定比性を有してもよく、また酸素原子の一部がフッ素等のハロゲン原子で置換されていてもよい。
負極は、負極活物質と結着剤(バインダー)とを溶媒でスラリー化したものを集電体に塗布し乾燥することにより形成できる。
【0028】
正極は、正極活物質と結着剤と導電剤とを溶媒でスラリー化したものを集電体に塗布し乾燥することにより形成できる。
負極及び正極に用いる結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース等が挙げられる。
【0029】
活物質層中の結着剤の割合は、下限値が通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、上限値が通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは40重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。結着剤の割合が小さいと、活物質を十分に保持できないので正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させることがあり、逆に大きすぎると電池容量や導電性を下げることになる。
【0030】
活物質層は、通常導電性を高めるため導電剤を含有する。導電剤としては、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛の微粒子や、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素微粒子等等の炭素質材料を挙げることができる。活物質層中の導電剤の割合は、下限値が通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上であり、上限値が通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは15重量%以下である。導電剤の割合が小さいと導電性が不十分になることがあり、逆に大きすぎると電池容量が低下することがある。
【0031】
スラリー化する溶媒としては、通常は結着剤を溶解する有機溶剤が使用される。例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン,N−N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等が用いられるがこれらに限定されない。また、水に分散剤、増粘剤等を加えてSBR等のラテックスで活物質をスラリー化することもできる。
【0032】
負極の集電体には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等が使用される。また、正極の集電体には、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等が使用される。
活物質層の厚さは、通常10〜200μm程度である。
なお、塗布・乾燥によって得られた活物質層は、活物質の充填密度を上げるためローラープレス等により圧密化するのが好ましい。
【0033】
正極と負極との間には、通常セパレータが設けられる。セパレータとしては、微多孔性の高分子フィルムが用いられ、ポリアミド、ポリエステル、セルロースアセテート、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンや、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等のポリオレフィン系高分子よりなるものを用いることができる。また、ガラス繊維等の不織布フィルター、更にはガラス繊維と高分子繊維の複合不織布フィルターを用いることもできる。セパレータの化学的及び電気化学安定性は重要な因子である。この点からポリオレフィン系高分子が好ましく、電池セパレータの目的の一つである自己閉塞温度の点からポリエチレン製であることが好ましい。
【0034】
ポリエチレン製セパレータの場合、高温形状維持性の点から超高分子量ポリエチレンであることが好ましく、その分子量の下限値は、通常50万、好ましくは100万、更に好ましくは150万である。分子量の上限値は、通常500万、好ましくは400万、更に好ましくは300万である。分子量が大きすぎると、流動性が低くなり、加熱されたときセパレータの孔が閉塞しない場合がある。
【0035】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
(正極の作製)
正極活物質としてのLiCoO2 85重量部に、カーボンブラック6重量部及びポリフッ化ビニリデンKF−1000(呉羽化学社製、商品名)9重量部を加えて混合し、N−メチルピロリドンで分散し、スラリー状とした。これを正極集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔上に均一に塗布し、乾燥後、直径12.5mmの円盤状に打ち抜いて正極とした。
【0036】
(負極の作製)
X線回折における格子面(002面)のd値が0.336nm、結晶子サイズ(Lc)が264nm、灰分が0.04重量%、レーザー回折・散乱法によるメジアン径が17μm、BET法比表面積が8.9m2/g、アルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析において1580〜1620cm-1の範囲のピークPA(ピーク強度IA)及び1350〜1370cm-1の範囲のピークPB(ピーク強度IB)の強度比R=IB/IAが0.15、1580〜1620cm-1の範囲のピークの半値幅が22.2cm-1である人造黒鉛粉末KS−44(ティムカル社製、商品名) 94重量部に蒸留水で分散させたスチレン−ブタジエンゴム(SBR)を固形分で6重量部となるように加えてディスパーザーで混合し、スラリー状とした。これを負極集電体である厚さ18μmの銅箔上に均一に塗布し、乾燥後、直径12.5mmの円盤状に打ち抜いて負極とした。
(コイン型セルの作製)
アルゴン雰囲気のドライボックス内で、CR2032型のコイン型電池を作製した。すなわち、正極導電体を兼ねるステンレス鋼製の缶体に正極を収容し、その上に電解液を含浸させた厚さ25μm の多孔性ポリエチレン製のセパレータを介して負極を載置した。この缶体と負極導電体を兼ねる封口板とを、絶縁用のガスケットを介してかしめて密封し、コイン型セルを作製した。
【0037】
(コイン型セルの評価)
25℃において、充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3.0Vで0.5mA定電流で充放電試験を2サイクル行った。
3サイクル目に同一条件で充電し、充電状態で85℃で72時間保存した後、3サイクル目の放電を実施した。次いで、4サイクル目の充放電試験を実施した。
【0038】
4サイクル目の放電容量を2サイクル目の放電容量で割った値を保存特性と定義した。
実施例1〜5及び比較例1〜3
蒸留後のγ−ブチロラクトン98重量部に、蒸留後のビニレンカーボネート2重量部を加えて非水溶媒を調製した。これに乾燥アルゴン雰囲気下で、表1に示す組成となるようにホウフッ化リチウム(LiBF4)及びヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を溶解して電解液を調製した。この電解液を用い、上記の方法でコイン型セルを作製した。このセルの評価結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

(実施例6〜11)
表2の組成の非水溶媒にLiBF4を1.40M/L、LiPF6を0.10M/Lとなるように溶解した電解液を用いた以外は、実施例1と同様にしてコイン型セルを作製した。評価結果を表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
【発明の効果】
本発明により、高温時の保存特性が良好で、安全性が高い非水系電解液二次電池を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属リチウム、リチウム合金又はリチウムを吸蔵及び放出することが可能な材料を含む負極と、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な材料を含む正極と、非水溶媒にリチウム塩を溶解してなる電解液とを含む非水系電解液二次電池において、該非水溶媒がラクトン化合物を含有しており、かつその非水溶媒に占める割合が60重量%以上であり、該リチウム塩がLiBF4及びLiPF6を含有しており、リチウム塩に占めるLiBF4の割合が65重量%以上99重量%以下であり、LiPF6の割合が1重量%以上35重量%以下であることを特徴とする非水系電解液二次電池。
【請求項2】
非水溶媒がアルキレンカーボネートを含有しており、かつその非水溶媒に占める割合が30重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解液二次電池。
【請求項3】
ラクトン化合物が、γ−ブチロラクトンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水系電解液二次電池。
【請求項4】
非水溶媒に占めるラクトン化合物の割合が、75重量%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の非水系電解液二次電池。
【請求項5】
非水溶媒に占めるラクトン化合物の割合が、80重量%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の非水系電解液二次電池。
【請求項6】
非水溶媒が、ビニレンカーボネート、エチレンサルファイト、ビニルエチレンカーボネート、プロパンスルトン、フェニルエチレンカーボネート及び環状カルボン酸無水物から選ばれる化合物を含有しており、かつその非水溶媒に占める割合が、0.1重量%〜5重量%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の非水系電解液二次電池。
【請求項7】
リチウム塩に占めるLiBF4の割合が70重量%以上97重量%以下であり、LiPF6の割合が3重量%以上30重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の非水系電解液二次電池。
【請求項8】
リチウム塩に占めるLiBF4の割合が75重量%以上95重量%以下であり、LiPF6の割合が5重量%以上25重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の非水系電解液二次電池。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の非水系電解液二次電池に用いる非水系電解液二次電池用電解液。

【公開番号】特開2007−134047(P2007−134047A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−214638(P2001−214638)
【出願日】平成13年7月16日(2001.7.16)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】