説明

非水系電解液及び非水系電解液電池

【課題】過充電時の安全性を高めながら、高容量で、高温保存特性、特に連続充電特性に優れた非水系電解液及び電池を提供する。
【解決手段】(a)下記一般式(1)で表される化合物を、0.001〜5重量%含有し、
R−CO−O−Ph ・・・(1)
(式中、Rは炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基又はフェニル基を表し、これらはフッ素置換されていてもよい。Phはフェニル基を表す。)
(b)炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物、フッ素原子を有する環状カーボネート化合物、モノフルオロリン酸塩又はジフルオロリン酸塩のいずれかの化合物を0.001〜30重量%含有し、
更に、所定の環状カーボネート化合物と鎖状カーボネート化合物との合計割合が90容量%以上である非水系電解液と電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液、及びそれを用いた非水系電解液電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコンなどのいわゆる民生用の電源から自動車用などの駆動用車載電源まで広範な用途に、リチウム二次電池などの非水系電解液電池が実用化されつつある。しかしながら、近年の非水系電解液電池に対する高性能化の要求はますます高くなっており、電池特性の改善が要望されている。
非水系電解液電池に用いる電解液は、通常、主として電解質と非水溶媒とから構成されている。非水溶媒の主成分としては、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネート等の環状カーボネート;ジメチルカーボネートやジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状カルボン酸エステルなどが用いられている。
【0003】
また、こうした非水系電解液電池の負荷特性、サイクル特性、保存特性等の電池特性を改良したり、過充電時の電池の安全性を高めるために、非水溶媒や電解質について種々の検討がなされている。
特許文献1には、電解液中に電池の最大動作電圧以上の電池電圧で重合する添加剤を混合することによって電池の内部抵抗を高くして電池を保護することが提案されている。特許文献2には、電解液中に電池の最大動作電圧以上の電池電圧で重合することによって気体及び圧力を発生させる添加剤を混合することにより、過充電保護のために設けた内部電気切断装置を確実に動作させることが提案されており、それらの添加剤としてビフェニル、チオフェン、フラン等の芳香族化合物が開示されている。さらに、特許文献3には、ビフェニルやチオフェンを用いた場合の、電池特性の低下を抑制するために、非水系電解液中にフェニルシクロヘキサンを0.1〜20重量部の範囲で添加した非水系電解液二次電池と、電池温度の上昇を感知して、充電の回路を切断する充電制御システムとを含む非水系電解液二次電池システムが提案されている。
【0004】
また、特許文献4には、炭素電極への親和性を向上させるためにフェニル基を有するエステル類を含有する電解液が提案され、特許文献5には、高温条件下で保存した際のガス発生を抑制するために、ベンゼン環に炭化水素基を有する芳香族エステル化合物を含有する電解液を用いることが提案されている。
特許文献6には、安全性が高く、かつ負荷特性およびサイクル特性が優れた非水電解液二次電池を提供するために、電解液の構成溶媒中に、リン酸エステルを体積比で15%以上含有し、かつ電解液中に酸素原子を間に介することなく芳香族基とカルボニル基とを併せ持つ有機化合物を含有するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−106835号公報
【特許文献2】特開平9−171840号公報
【特許文献3】特開2002−50398号公報
【特許文献4】特開平8−293323号公報
【特許文献5】特開2003−243026号公報
【特許文献6】特開2000−173650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年の電池に対する高性能化への要求は、ますます高くなっており、高容量、高温保存特性、サイクル特性を高い次元で達成することが求められている。
高容量化する方法として、限られた電池体積の中にできるだけ多くの活物質を詰めることが検討されており、例えば、電極の活物質層を加圧して高密度化する方法や、電池内部の活物質以外の占める体積を極力少なくする設計が一般的となっている。しかし、電極の活物質層を加圧して高密度化したり、電解液量を少なくすることにより、活物質を均一に使用することができなくなる。これにより、不均一な反応により一部リチウムが析出したり、活物質の劣化が促進されたりして、十分な特性が得られないという問題が発生しやすくなる。さらに高容量化によって電池内部の空隙は減少し、電解液の分解で少量のガスが発生した場合でも電池内圧は顕著に上昇してしまうという問題も発生してくる。とくに、非水系電解液二次電池において、停電時のバックアップ電源や、ポータブル機器の電源として用いるほとんどの場合、電池の自己放電を補うために常に微弱電流を供給して、絶えず充電状態にしている。こうした連続充電状態では、電極活物質の活性が常に高い状態であるのと同時に、機器の発熱により、電池の容量低下が加速されたり、電解液が分解してガスが発生しやすくなる。多量のガスが発生すると、過充電等の異常により内圧が異常に上昇したときにこれを感知して安全弁を作動させる電池では、安全弁が作動してしまうことがある。また、安全弁のない電池では、発生したガスの圧力により電池が膨張して、電池自体が使用不能になる場合がある。
【0007】
特許文献1〜6に記載されている電解液を用いた非水系電解液二次電池では、上記のような高温での連続充電状態において電池特性が低下してしまい未だ満足しうるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために種々の検討を重ねた結果、特定の2種以上の化合物を電解液中に含有させることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、下記に示すとおりである。
[1]電解質及び非水溶媒を含む非水系電解液において、該非水系電解液が、
(a)下記一般式(1)で表される化合物を、該非水系電解液中に0.001〜5重量%含有し、
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(1)中、Rは、炭素数1〜12の鎖状若しくは環状のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、又は、フェニル基を表し、これらの基はフッ素原子で置換されていてもよい。)
(b)炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物、フッ素原子を有する環状カーボネート化合物、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を、該非水系電解液中に0.001〜30重量%含有し、
更に、非水溶媒において、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物、及びフッ素原子を有する環状カーボネート化合物から選ばれる少なくとも一つ以上の環状カーボネート化合物並びに鎖状カーボネート化合物との合計の非水溶媒中における割合が90容量%以上であることを特徴とする非水系電解液。
【0011】
[2]非水系電解液中における(a)の一般式(1)で表される化合物の割合が0.001〜2.5重量%であることを特徴とする上記[1]に記載の非水系電解液。
[3]一般式(1)においてRが炭素数1〜4の鎖状アルキル基、又は炭素数5〜7の環状アルキル基であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の非水系電解液。
[4]非水溶媒において、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物、及びフッ素原子を有する環状カーボネート化合物から選ばれる環状カーボネート化合物並びに鎖状カーボネート化合物との合計の非水溶媒中における割合が95容量%以上であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の非水系電解液。
【0012】
[5]非水溶媒がエチレンカーボネートとジアルキルカーボネートを含有することを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の非水系電解液。
[6]非水溶媒がエチレンカーボネート、対称鎖状アルキルカーボネート及び非対称鎖状アルキルカーボネートを含有することを特徴とする上記[5]記載の非水系電解液。
[7]電解質がリチウム塩であることを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれかに記載の非水系電解液。
【0013】
[8]リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極及び正極、並びに非水系電解液を含む非水系電解液電池であって、該非水系電解液が上記[1]〜[7]のいずれかに記載の非水系電解液であることを特徴とする非水系電解液電池。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、過充電時の安全性を高めながら、高容量で、高温保存特性、特に連続充電特性に優れた非水系電解液及び非水系電解液電池を提供することができ、非水系電解液電池の小型化、高性能化を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定はされない。
<非水系電解液>
本発明の非水系電解液は、常用の非水系電解液と同じく、電解質及びこれを溶解する非水溶媒を含有するものであり、通常、これらを主成分とするものである。
(電解質)
電解質としては、通常、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、この用途に用いることが知られているものであれば特に制限がなく、任意のものを用いることができ、具体的には以下のものが挙げられる。
【0016】
例えば、LiPF6及びLiBF4、Li21212等の無機リチウム塩;LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CF3SO2)(C49SO2)、LiC(CF3SO23、LiPF4(CF32、LiPF4(C252、LiPF4(CF3SO22、LiPF4(C25SO22、LiBF2(CF32、LiBF2(C252、LiBF2(CF3SO22、LiBF2(C25SO22等の含フッ素有機リチウム塩;及びリチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート等の(オキサラト)ボレートリチウム塩が挙げられる。
【0017】
これらのうち、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22又はLiN(C25SO22が電池性能向上の点から好ましく、特にLiPF6又はLiBF4が好ましい。
これらのリチウム塩は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
2種以上を併用する場合の好ましい一例は、LiPF6とLiBF4との併用であり、サイクル特性を向上させる効果がある。この場合には、両者の合計に占めるLiBF4の含有割合は、下限としては、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上であり、上限としては、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下である。この下限を下回る場合には所望する効果が得づらい場合があり、上限を上回る場合は高負荷放電特性等の電池の特性が低下する場合がある。
【0018】
また、他の一例は、無機リチウム塩と含フッ素有機リチウム塩との併用であり、この場合には、両者の合計に占める無機リチウム塩の含有割合は、70重量%以上、99重量%以下であることが望ましい。無機リチウム塩はLiPF6が好ましい。含フッ素有機リチウム塩としては、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、及びリチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミドからなる群から選ばれる一種以上が好ましい。この両者の併用は、高温保存による劣化を抑制する効果がある。
【0019】
非水系電解液中のこれらの電解質の濃度は、本願発明の効果を発現するためには、特に制限はないが、通常0.5モル/リットル以上、好ましくは0.8モル/リットル以上、より好ましくは1.0モル/リットル以上であるが、1.1モル/リットル以上が更に好ましく、1.2モル/リットル以上が特に好ましい。また、その上限は、通常3モル/リットル以下、好ましくは2モル/リットル以下、より好ましくは1.8モル/リットル以下、更に好ましくは1.6モル/リットル以下である。濃度が低すぎると、電解液の電気伝導度が不十分の場合があり、一方、濃度が高すぎると、粘度上昇のため電気伝導度が低下する場合があり、電池性能が低下する場合がある。
(非水溶媒)
非水溶媒も、従来から非水系電解液の溶媒として公知のものの中から適宜選択して用いることができる。例えば、炭素−炭素不飽和結合やフッ素原子を有さない環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、環状エーテル類、鎖状エーテル類、環状カルボン酸エステル類、鎖状カルボン酸エステル類、含硫黄有機溶媒、含燐有機溶媒等が挙げられる。
【0020】
炭素−炭素不飽和結合とフッ素原子のいずれをも有さない環状カーボネート類としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の炭素数2〜4のアルキレン基を有するアルキレンカーボネート類が挙げられ、これらの中では、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートが電池特性向上の点から好ましく、特に、エチレンカーボネートが好ましい。
鎖状カーボネート類としては、ジアルキルカーボネートが好ましく、構成するアルキル基の炭素数は、それぞれ、1〜5が好ましく、特に好ましくは1〜4である。また、アルキル基の水素の一部をフッ素で置換していてもよい。
【0021】
具体的には例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート等の対称鎖状アルキルカーボネート類;エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート等の非対称鎖状アルキルカーボネート類等のジアルキルカーボネートが挙げられる。中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが電池特性向上の点から好ましい。
【0022】
環状エーテル類としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等及びこれらの化合物の水素の一部をフッ素で置換した化合物等が挙げられるが挙げられる。
鎖状エーテル類としては、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン等、及び、これらの化合物の水素の一部をフッ素で置換した化合物として、ビス(トリフルオロエトキシ)エタン、エトキシトリフルオロエトキシエタン、メトキシトリフルオロエトキシエタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ―3―メトキシ―4―トリフルオロメチル−ペンタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ―3―エトキシ―4―トリフルオロメチル−ペンタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ―3―プロポキシ―4―トリフルオロメチル−ペンタン、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル、2,2−ジフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル等が挙げられる。
【0023】
環状カルボン酸エステル類としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等及びこれらの化合物の水素の一部をフッ素で置換した化合物が挙げられる。
鎖状カルボン酸エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、吉草酸メチル、吉草酸エチル等及びトリフルオロ酢酸プロピル、トリフルオロ酢酸ブチル等のこれらの化合物の水素の一部をフッ素で置換した化合物等が挙げられ、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、吉草酸メチルがより好ましい。
【0024】
含硫黄有機溶媒としては、スルホラン、2−メチルスルホラン、3−メチルスルホラン、ジエチルスルホン等及びこれらの化合物の水素の一部をフッ素で置換した化合物が挙げられる。
含燐有機溶媒としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸ジメチルエチル、リン酸メチルジエチル、リン酸エチレンメチル、リン酸エチレンエチル等及びこれらの化合物の水素の一部をフッ素で置換した化合物が挙げられる。
【0025】
これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよいが、2種以上の化合物を併用するのが好ましい。例えば、アルキレンカーボネート類や環状カルボン酸エステル類等の高誘電率溶媒と、ジアルキルカーボネート類や鎖状カルボン酸エステル類等の低粘度溶媒とを併用するのが好ましい。
非水溶媒の好ましい組合せの一つは、エチレンカーボネートとジアルキルカーボネートを主体とする組合せである。なかでも、非水溶媒に占めるエチレンカーボネートとジアルキルカーボネートとの合計が、70容量%以上、好ましくは80容量%以上、より好ましくは90容量%以上であり、かつエチレンカーボネートとジアルキルカーボネートとの合計に対するエチレンカーボネートの割合が5容量%以上、好ましくは10容量%以上、より好ましくは15容量%以上であり、通常50容量%以下、好ましくは35容量%以下、より好ましくは30容量%以下、更に好ましくは25容量%以下のものである。これらの非水溶媒の組み合わせを用いると、これを用いて作製された電池のサイクル特性と高温保存特性(特に、高温保存後の残存容量及び高負荷放電容量)のバランスが良くなるので好ましい。
【0026】
エチレンカーボネートとジアルキルカーボネートの好ましい組み合わせの具体例としては、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート等が挙げられる。
【0027】
これらのエチレンカーボネートとジアルキルカーボネート類との組み合わせに、更にプロピレンカーボネートを加えた組み合わせも、好ましい組み合わせとして挙げられる。
プロピレンカーボネートを含有する場合には、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの容量比は、99:1〜40:60が好ましく、特に好ましくは95:5〜50:50である。更に、非水溶媒全体に占めるプロピレンカーボネートの割合は、下限は、通常0.1容量%以上、好ましくは1容量%以上、より好ましくは2容量%以上、また上限は、通常20容量%以下、好ましくは8容量%以下、より好ましくは5容量%以下である。この濃度範囲でプロピレンカーボネートを含有すると、エチレンカーボネートとジアルキルカーボネートとの組み合わせの特性を維持したまま、更に低温特性が優れるので好ましい。
【0028】
エチレンカーボネートとジアルキルカーボネートとの組み合わせの中で、ジアルキルカーボネートとして非対称鎖状アルキルカーボネート類を含有するものが更に好ましく、特に、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートといったエチレンカーボネートと対称鎖状アルキルカーボネート類と非対称鎖状アルキルカーボネート類を含有するものが、サイクル特性と大電流放電特性のバランスが良いので好ましい。中でも、非対称鎖状アルキルカーボネート類がエチルメチルカーボネートであるのが好ましく、又、アルキルカーボネートのアルキル基は炭素数1〜2が好ましい。
【0029】
また、非水溶媒中にジエチルカーボネートを含有する場合は、全非水溶媒中に占めるジエチルカーボネートの割合が、下限は、通常10容量%以上、好ましくは20容量%以上、より好ましくは25容量%以上、更に好ましくは30容量%以上であり、また、上限は、通常90容量%以下、好ましくは80容量%以下、より好ましくは75容量%以下、更に好ましくは、70容量%以下となる範囲で含有させると、高温保存時におけるガス発生が抑制されるので好ましい。
【0030】
また、非水溶媒中にジメチルカーボネートを含有する場合は、全非水溶媒中に占めるジメチルカーボネートの割合が、下限は、通常10容量%以上、好ましくは20容量%以上、より好ましくは25容量%以上、更に好ましくは30容量%以上であり、また上限は、通常90容量%以下、好ましくは80容量%以下、より好ましくは75容量%以下、更に好ましくは、70容量%以下となる範囲で含有させると、電池の負荷特性が向上するので好ましい。
【0031】
中でも、ジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを含有し、ジメチルカーボネートの含有割合をエチルメチルカーボネートの含有割合よりも多くすることにより、電解液の電気伝導度を確保しながら、高温保存後の電池特性が向上するので好ましい。
全非水溶媒中に占めるジメチルカーボネートのエチルメチルカーボネートに対する容量比(ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート)の下限値は、電解液の電気伝導度の向上と保存後の電池特性を向上させるため、1.1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.5以上が更に好ましい。容量比(ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート)の上限値は、低温での電池特性を向上させるため、40以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましく、8以下が特に好ましい。
【0032】
また、上記アルキレンカーボネート類とジアルキルカーボネート類を主体とする組合せにおいては、他の溶媒を混合してもよい。
好ましい非水溶媒の他の例は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートよりなる群から選ばれた1種の有機溶媒、又は該群から選ばれた2以上の有機溶媒からなる混合溶媒を全体の60容量%以上を占めるものである。この混合溶媒を用いた非水系電解液は、高温で使用しても溶媒の蒸発や液漏れが少なくなる。中でも、非水溶媒に占めるエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの合計が、70容量%以上、好ましくは80容量%以上、更に好ましくは90容量%以上であり、かつエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの容量比が30:70〜60:40であるものを用いると、一般にサイクル特性と高温保存特性等のバランスがよくなる。
【0033】
なお、本明細書において、非水溶媒の容量は25℃での測定値であるが、エチレンカーボネートのように25℃で固体のものは融点での測定値を用いる。
<本発明の特徴>
本発明に係る非水系電解液は、
(a)下記一般式(1)で表される化合物を、該非水系電解液中に0.001〜5重量%含有し、
【0034】
【化1】

【0035】
(一般式(1)中、Rは、炭素数1〜12の鎖状若しくは環状のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、又は、フェニル基を表し、これらの基はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【0036】
(b)炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物、フッ素原子を有する環状カーボネート化合物、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を、該非水系電解液中に0.001〜30重量%含有し、
更に、非水溶媒において、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物、及びフッ素原子を有する環状カーボネート化合物から選ばれる少なくとも一つ以上の環状カーボネート化合物並びに鎖状カーボネート化合物との合計の非水溶媒中における割合が90容量%以上であることを特徴とする。
【0037】
更に、非水溶媒に占めるエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物、フッ素原子を有する環状カーボネート化合物から選ばれる少なくとも一つ以上の環状カーボネート化合物と鎖状カーボネートとの合計の割合が95容量%以上であることが好ましい。
(一般式(1)で表される化合物)
一般式(1)のRにおいて、炭素数1〜12の鎖状若しくは環状アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは1〜4の鎖状アルキル基、又は炭素数5〜7の環状アルキル基が挙げられる。
【0038】
炭素数2〜12のアルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基等が挙げられ、好ましくは2〜8、特に好ましくは2〜4のものが挙げられる。
また、上記アルキル基、アルケニル基およびフェニル基はフッ素原子で置換されていてもよく、フッ素置換されている基としては、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等のフッ化アルキル基、2−フルオロビニル基、3−フルオロ−2−プロペニル基等のフッ化アルケニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基等のフッ化フェニル基が挙げられる。
【0039】
Rはフッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜12の鎖状又は環状のアルキル基が好ましく、特には1〜4の鎖状アルキル基、又は炭素数5〜7の環状アルキル基が好ましい。
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、酪酸フェニル、イソ酪酸フェニル、吉草酸フェニル、イソ吉草酸フェニル、シクロヘキサンカルボン酸フェニル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、クロトン酸フェニル、アンゲリカ酸フェニル、安息香酸フェニル、フルオロ酢酸フェニル、ジフルオロ酢酸フェニル、トリフルオロ酢酸フェニル、2−フルオロプロピオン酸フェニル、3−フルオロプロピオン酸フェニル、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸フェニル、ペンタフルオロプロピオン酸フェニル、2−フルオロ酪酸フェニル、3−フルオロ酪酸フェニル、4−フルオロ酪酸フェニル、ヘプタフルオロ酪酸フェニル等が挙げられ、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、酪酸フェニル、イソ酪酸フェニル、吉草酸フェニル、イソ吉草酸フェニル、シクロヘキサンカルボン酸フェニル、フルオロ酢酸フェニル、ジフルオロ酢酸フェニル、トリフルオロ酢酸フェニル、2−フルオロプロピオン酸フェニル、3−フルオロプロピオン酸フェニル、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸フェニル、ペンタフルオロプロピオン酸フェニル、2−フルオロ酪酸フェニル、3−フルオロ酪酸フェニル、4−フルオロ酪酸フェニル、ヘプタフルオロ酪酸フェニルがより好ましく、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、酪酸フェニル、イソ酪酸フェニル、吉草酸フェニル、イソ吉草酸フェニル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルが更に好ましく、酢酸フェニル、酪酸フェニル、イソ酪酸フェニル、吉草酸フェニル、イソ吉草酸フェニル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルが特に好ましい。
【0040】
一般式(1)で表される化合物は単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
非水系電解液中の一般式(1)で表される化合物の含有量は、0.001重量%以上であり、0.1重量%以上が好ましく、0.2重量%以上がより好ましく、特に0.3重量%以上が好ましい。これより低濃度では本発明の効果がほとんど発現しない場合がある。逆に濃度が高すぎると電池の保存特性が低下する傾向があるので、上限は5重量%以下であり、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2.5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.8重量%以下である。
(炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物)
炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物としては、例えば、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、トリフルオロメチルビニレンカーボネート等のビニレンカーボネート化合物;ビニルエチレンカーボネート、4−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−エチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−n−プロピル−4−ビニルエチレンカーボネート、5−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート等のビニルエチレンカーボネート化合物;4,4−ジメチル−5−メチレンエチレンカーボネート、4,4−ジエチル−5−メチレンエチレンカーボネート等のメチレンエチレンカーボネート化合物などが挙げられる。これらのうち、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4−メチル−4−ビニルエチレンカーボネートまたは4,5−ジビニルエチレンカーボネートがサイクル特性や高温保存後の容量維持特性向上の点から好ましく、なかでもビニレンカーボネートまたはビニルエチレンカーボネートがより好ましく、特にビニレンカーボネートが好ましい。これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0041】
2種類以上を併用する場合は、ビニレンカーボネートとビニルエチレンカーボネートとを併用するのが好ましい。
(フッ素原子を有する環状カーボネート化合物)
フッ素原子を有する環状カーボネート化合物としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,4,5−トリフルオロエチレンカーボネート、4,4,5,5−テトラフルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4,4,5−トリフルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。これらのうち、フルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルエチレンカーボネートがサイクル特性向上や高温保存特性向上の点から好ましい。これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0042】
また、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物や次に記載するモノフルオロリン酸塩およびジフルオロリン酸塩と併用しても良く、サイクル特性向上や高温保存特性向上の点から、併用するのが好ましい。
(モノフルオロリン酸塩およびジフルオロリン酸塩)
モノフルオロリン酸塩およびジフルオロリン酸塩のカウンターカチオンとしては特に限定はないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、及び、NR1234(式中、R1〜R4は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜12の有機基を表わす。)で表されるアンモニウム等が例示として挙げられる。
【0043】
上記アンモニウムのR1〜R4で表わされる炭素数1〜12の有機基としては特に限定はないが、例えば、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環基等が挙げられる。中でもR1〜R4として、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は窒素原子含有複素環基等が好ましい。
【0044】
モノフルオロリン酸塩およびジフルオロリン酸塩の具体例としては、モノフルオロリン酸リチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸ナトリウム、ジフルオロリン酸カリウム等が挙げられ、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウムが好ましく、ジフルオロリン酸リチウムがより好ましい。
これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
また、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物やフッ素原子を有する環状カーボネート化合物と併用して用いても良く、サイクル特性向上や高温保存後の特性向上の点から併用するのが好ましい。
非水系電解液中における炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物、フッ素原子を有する環状カーボネート化合物、モノフルオロリン酸塩およびジフルオロリン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物の合計の割合は、0.001重量%以上、好ましくは0.01重量%以上、更に好ましくは0.05重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上である。濃度が低すぎると、電池のサイクル特性や高温保存特性を向上させるという効果を十分に発揮できない場合がある。逆に濃度が高すぎると、高温保存時にガス発生量が増大したり、低温での放電特性が低下する場合があるので、上限は30重量%以下である。
【0046】
非水系電解液が炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物を含有する場合、非水系電解液中におけるその割合は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは0.3重量%以上、最も好ましくは0.5重量%以上である。炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物が少なすぎると、電池のサイクル特性や高温保存後の容量維持特性を向上させるという効果を十分に発揮できない場合がある。しかし、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物の含有量が多すぎると、高温保存時にガス発生量が増大したりする場合があるので、その上限は、通常8重量%以下、好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3重量%以下である。
【0047】
非水系電解液がフッ素原子を有する環状カーボネート化合物を含有する場合、非水系電解液中におけるその割合は、下限は0.001重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは0.3重量%以上、最も好ましくは0.5重量%以上であり、その上限は、30重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、特に好ましくは3重量%以下である。
非水系電解液がモノフルオロリン酸塩および/またはジフルオロリン酸塩を含有する場合、非水系電解液中におけるその割合は、下限が0.001重量%以上、好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.1重量%以上、最も好ましくは0.2重量%以上であり、その上限は、通常5重量%以下、好ましくは3重量%以下、特に好ましくは2重量%以下である。
(他の化合物)
本発明に係る非水系電解液は、本発明の効果を損ねない範囲で、従来公知の過充電防止剤などの種々の他の化合物を助剤として含有していてもよい。
【0048】
過充電防止剤としては、ビフェニル、2−メチルビフェニル、2−エチルビフェニル等のアルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、シス−1−プロピル−4−フェニルシクロヘキサン、トランス−1−プロピル−4−フェニルシクロヘキサン、シス−1−ブチル−4−フェニルシクロヘキサン、トランス−1−ブチル−4−フェニルシクロヘキサン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジフェニルカーボネート、トリフェニルホスフェート、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(3−t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(4−t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(2−t−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(3−t−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(4−t−アミルフェニル)ホスフェート、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、トリス(3−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、トリス(4−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、3−フルオロビフェニル、4−フルオロビフェニル、4,4'−ジフルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等が挙げられる。
【0049】
これらの中でビフェニル、2−メチルビフェニル等のアルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、シス−1−プロピル−4−フェニルシクロヘキサン、トランス−1−プロピル−4−フェニルシクロヘキサン、シス−1−ブチル−4−フェニルシクロヘキサン、トランス−1−ブチル−4−フェニルシクロヘキサン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン、メチルフェニルカーボネート、ジフェニルカーボネート、トリフェニルホスフェート、トリス(4−t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(4−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、3−フルオロビフェニル、4−フルオロビフェニル、4,4'−ジフルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物が好ましく、ターフェニルの部分水素化体、シクロペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、シス−1−プロピル−4−フェニルシクロヘキサン、トランス−1−プロピル−4−フェニルシクロヘキサン、シス−1−ブチル−4−フェニルシクロヘキサン、トランス−1−ブチル−4−フェニルシクロヘキサン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、メチルフェニルカーボネート、ジフェニルカーボネート、トリフェニルホスフェート、トリス(4−t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリス(4−シクロヘキシルフェニル)ホスフェート、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼンがより好ましく、ターフェニルの部分水素化体およびシクロヘキシルベンゼンが特に好ましい。
【0050】
これらは2種類以上併用して用いてもよい。2種以上併用する場合は、特に、ターフェニルの部分水素化体やシクロヘキシルベンゼンとt−ブチルベンゼンやt−アミルベンゼンとの組み合わせや、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン等の酸素を含有しない芳香族化合物から選ばれるものと、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の含酸素芳香族化合物から選ばれるものとを併用するのが過充電防止特性と高温保存特性のバランスの点から好ましい。
【0051】
非水系電解液中におけるこれらの過充電防止剤の含有割合は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、特に好ましくは0.3重量%以上、最も好ましくは0.5重量%以上であり、上限は、通常5重量%以下、好ましくは3重量%以下、特に好ましくは2重量%以下である。濃度が低すぎると所望する過充電防止剤の効果がほとんど発現しない場合がある。逆に濃度が高すぎると高温保存特性などの電池の特性が低下する傾向がある。
【0052】
他の助剤としては、エリスリタンカーボネート、スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート、メトキシエチル−メチルカーボネート、メトキシエチル−エチルカーボネート、エトキシエチル−メチルカーボネート、エトキシエチル−エチルカーボネート等のカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物及びフェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジアリル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジアリル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ビス(トリフルオロメチル)、マレイン酸ビス(ペンタフルオロエチル)、マレイン酸ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)等のジカルボン酸ジエステル化合物;2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のスピロ化合物;エチレンサルファイト、プロピレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロペンスルトン、1,4−ブテンスルトン、メチルメタンスルホネート、エチルメタンスルホネート、メチル−メトキシメタンスルホネート、メチル−2−メトキシエタンスルホネート、ブスルファン、ジエチレングリコールジメタンスルホネート、1,2−エタンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)、1,4−ブタンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)、スルホラン、3−スルホレン、2−スルホレン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジビニルスルホン、ジフェニルスルホン、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド等の含硫黄化合物;1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びN−メチルスクシイミド等の含窒素化合物;ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、t−ブチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシル等の炭化水素化合物;フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン等のフッ化ベンゼン;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル等のニトリル化合物;メチルジメチルホスフィネート、エチルジメチルホスフィネート、エチルジエチルホスフィネート、トリメチルホスホノフォルメート、トリエチルホスホノフォルメート、トリメチルホスホノアセテート、トリエチルホスホノアセテート、トリメチル−3−ホスホノプロピオネート、トリエチル−3−ホスホノプロピオネート等の含リン化合物等が挙げられる。これらの中で、高温保存後の電池特性向上の点からエチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロペンスルトン、1,4−ブテンスルトン、ブスルファン、1,4−ブタンジオールビス(2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート)等の含硫黄化合物;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル等のニトリル化合物が好ましい。
【0053】
これらは2種類以上併用して用いてもよい。
非水系電解液中におけるこれらの助剤の含有割合は、本願発明の効果を発現するためには、特に制限はないが、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは0.2重量%以上であり、上限は、通常8重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。これらの助剤を添加することにより、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させることができる。この下限より低濃度では助剤の効果がほとんど発現しない場合がある。また、逆に濃度が高すぎると高負荷放電特性などの電池の特性が低下する場合がある。
【0054】
(電解液の調製)
本発明に係る非水系電解液は、非水溶媒に、電解質、一般式(1)で表される化合物、および炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物、フッ素原子を有する環状カーボネート化合物、モノフルオロリン酸塩およびジフルオロリン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物と、必要に応じて他の化合物を溶解することにより調製することができる。非水系電解液の調製に際しては、各原料は、電解液とした場合の水分を低減させるため予め脱水しておくのが好ましい。通常50ppm以下、好ましくは30ppm以下、特に好ましくは10ppm以下までそれぞれ脱水するのがよい。また、電解液調製後に、脱水、脱酸処理等を実施してもよい。
本発明の非水系電解液は、非水系電解液電池の中でも二次電池用、即ち非水系電解液二次電池、例えばリチウム二次電池用の電解液として用いるのに好適である。以下、本発明の電解液を用いた非水系電解液二次電池について説明する。
【0055】
<非水系電解液二次電池>
本発明の非水系電解液二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極及び正極、並びに非水系電解液を含む非水系電解液電池であって、該非水系電解液が上記した電解液であることを特徴とするものである。
【0056】
(電池構成)
本発明に係る非水系電解液二次電池は、上記本発明の電解液を用いて作製される以外は従来公知の非水系電解液二次電池と同様、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極及び正極、並びに非水系電解液を含む非水系電解液電池であり、通常、正極と負極とを本発明に係る非水系電解液が含浸されている多孔膜を介してケースに収納することで得られる。従って、本発明に係る二次電池の形状は特に制限されるものではなく、円筒型、角型、ラミネート型、コイン型、大型等のいずれであってもよい。
【0057】
(負極)
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限はない。その具体例としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。
これらの負極活物質は、単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。なかでも好ましいものは炭素質材料、合金系材料である。
炭素質材料のなかでは、特に、黒鉛や黒鉛の表面を黒鉛に比べて非晶質の炭素で被覆したものが好ましい。
黒鉛は、学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が0.335〜0.338nm、特に0.335〜0.337nmであるものが好ましい。また、学振法によるX線回折で求めた結晶子サイズ(Lc)は、通常10nm以上、好ましくは50nm以上、特に好ましくは100nm以上である。灰分は、通常1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.1重量%以下である。
【0058】
黒鉛の表面を非晶質の炭素で被覆したものとして好ましいのは、X線回折における格子面(002面)のd値が0.335〜0.338nmである黒鉛を核材とし、その表面に該核材よりもX線回折における格子面(002面)のd値が大きい炭素質材料が付着しており、かつ核材と核材よりもX線回折における格子面(002面)のd値が大きい炭素質材料との割合が重量比で99/1〜80/20であるものである。これを用いると、高い容量で、かつ電解液と反応しにくい負極を製造することができる。
【0059】
炭素質材料の粒径は、レーザー回折・散乱法によるメジアン径で、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、最も好ましくは7μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、最も好ましくは30μm以下である。
炭素質材料のBET法による比表面積は、通常0.3m2/g以上、好ましくは0.5m2/g以上、より好ましくは0.7m2/g以上、最も好ましくは0.8m2/g以上であり、通常25.0m2/g以下、好ましくは20.0m2/g以下、より好ましくは15.0m2/g以下、最も好ましくは10.0m2/g以下である。
【0060】
また、炭素質材料は、アルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトルで分析し、1570〜1620cm-1の範囲にあるピークPAのピーク強度をIA、1300〜1400cm-1の範囲にあるピークPBのピーク強度をIBとした場合、IBとIAの比で表されるR値(=IB/IA)が、0.01〜0.7の範囲であるものが好ましい。また、1570〜1620cm-1の範囲にあるピークの半値幅が、26cm-1以下、特に25cm-1以下であるものが好ましい。
【0061】
合金系材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば特に限定はされず、リチウム合金を形成する単体金属及び合金、またはそれらの酸化物・炭化物・窒化物・珪化物・硫化物・燐化物等の化合物のいずれであってもよい。好ましくはリチウム合金を形成する単体金属及び合金を含む材料であり、13族及び14族の金属・半金属元素(即ち炭素を除く)を含む材料あることがより好ましく、さらにはアルミニウム、珪素、及び錫(これらを以下「特定金属元素」という場合がある。)の単体金属、及びこれらの原素を含む合金・化合物である事が好ましい。
【0062】
特定金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素を有する負極活物質の例としては、何れか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素からなる合金、1種又は2種以上の特定金属元素とその他の1種又は2種以上の金属元素とからなる合金、並びに、1種又は2種以上の特定金属元素を含有する化合物、及びその化合物の酸化物・炭化物・窒化物・珪化物・硫化物・燐化物等の複合化合物が挙げられる。負極活物質としてこれらの金属単体、合金又は金属化合物を用いることで、電池の高容量化が可能である。
【0063】
また、これらの複合化合物が、金属単体、合金、又は非金属元素等の数種の元素と複雑に結合した化合物も例として挙げることができる。より具体的には、例えば珪素や錫では、これらの元素と負極として動作しない金属との合金を用いることができる。また例えば錫では、錫と珪素以外で負極として作用する金属と、さらに負極として動作しない金属と、非金属元素との組み合わせで5〜6種の元素を含むような複雑な化合物も用いることができる。
【0064】
これらの負極活物質の中でも、電池にしたときに単位重量当りの容量が大きいことから、何れか一種の特定金属元素の金属単体、二種以上の特定金属元素の合金、特定金属元素の酸化物や炭化物、窒化物等が好ましく、特に、珪素及び/又は錫の金属単体、合金、酸化物や炭化物、窒化物等が、単位重量当りの容量が大きく好ましい。
また、金属単体又は合金を用いるよりは単位重量当りの容量には劣るものの、サイクル特性に優れることから、珪素及び/又は錫を含有する以下の化合物も好ましい。
【0065】
・珪素及び/又は錫と酸素との元素比が通常0.5以上であり、好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.1以下の珪素及び/又は錫の酸化物。
・珪素及び/又は錫と窒素との元素比が通常0.5以上であり、好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.1以下の珪素及び/又は錫の窒化物。
【0066】
・珪素及び/又は錫と炭素との元素比が通常0.5以上であり、好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.1以下の珪素及び/又は錫の炭化物。
また、これらの合金系材料は粉末のものでも薄膜状のものでもよく、結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
合金系材料の平均粒径は、本願発明の効果を発現するためには、特に制限はないが、通常50μm以下、好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm以下、通常0.1μm以上、好ましくは1μm以上、特に好ましくは2μm以上である。粒径が大きすぎる場合、電極の膨張が大きくなり、サイクル特性が低下してしまう可能性がある。また、小さ過ぎる場合、集電が取りにくくなり、容量が十分に発現しない可能性がある。
【0067】
負極活物質として用いられるリチウム含有金属複合酸化物材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、特に限定はされないが、チタンを含むリチウム含有複合金属酸化物材料が好ましく、リチウムとチタンの複合酸化物(以下、「リチウムチタン複合酸化物」と略記する)がより好ましい。
また、リチウムチタン複合酸化物のリチウムやチタンが、他の金属元素、例えば、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素で置換されているものも好ましい。
【0068】
さらに、LixTiyz4で表されるリチウムチタン複合酸化物であり、0.7≦x≦1.5、1.5≦y≦2.3、0≦z≦1.6であることが、リチウムイオンの吸蔵・放出の際の構造が安定であることから好ましい(Mは、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表わす。)。
なかでも、
(a)1.2≦x≦1.4、1.5≦y≦1.7、z=0
(b)0.9≦x≦1.1、1.9≦y≦2.1、z=0
(c)0.7≦x≦0.9、2.1≦y≦2.3、z=0
の構造が、電池性能のバランスが良好なため特に好ましく、特に好ましい代表的な組成は、(a)ではLi4/3Ti5/34、(b)ではLi1Ti24、(c)ではLi4/5Ti11/54である。
【0069】
また、Z≠0の構造については、例えば、Li4/3Ti4/3Al1/34が好ましいものとして挙げられる。
(正極)
正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限はない。リチウムと少なくとも1種の遷移金属を含有する物質が好ましく、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化合物が挙げられる。
【0070】
リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属としてはV、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、LiCoO2等のリチウム・コバルト複合酸化物、LiNiO2等のリチウム・ニッケル複合酸化物、LiMnO2、LiMn24、Li2MnO3等のリチウム・マンガン複合酸化物、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。置換されたものの具体例としては、例えば、LiNi0.5Mn0.52、LiNi0.85Co0.10Al0.052、LiNi0.33Co0.33Mn0.332、LiMn1.8Al0.24、LiMn1.5Ni0.54等が挙げられる。
【0071】
リチウム含有遷移金属リン酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、例えば、LiFePO4、Li3Fe2(PO43、LiFeP27等のリン酸鉄類、LiCoPO4等のリン酸コバルト類、これらのリチウム遷移金属リン酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Nb、Si等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
【0072】
これらの正極活物質は単独で用いても、複数を併用しても良い。
また、これら正極活物質の表面に、主体となる正極活物質を構成する物質とは異なる組成の物質が付着したものを用いることもできる。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩等が挙げられる。
【0073】
表面付着物質の量としては、本願発明の効果を発現するためには、特に制限はないが、正極活物質に対して質量で、下限として好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、上限として好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下で用いられる。表面付着物質により、正極活物質表面での非水系電解液の酸化反応を抑制することができ、電池寿命を向上させることができるが、その付着量が少なすぎる場合その効果は十分に発現せず、多すぎる場合には、リチウムイオンの出入りを阻害するため抵抗が増加する場合がある。
【0074】
(電極)
活物質を結着する結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安定な材料であれば、任意のものを使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等の不飽和結合を有するポリマー及びその共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等のアクリル酸系ポリマー及びその共重合体などが挙げられる。
【0075】
電極中には、機械的強度や電気伝導度を高めるために増粘剤、導電材、充填剤などを含有させてもよい。
増粘剤としては、カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、ガゼイン等が挙げられる。
導電材としては、銅又はニッケル等の金属材料、グラファイト又はカーボンブラック等の炭素材料などが挙げられる。
【0076】
電極の製造は、常法によればよい。例えば、負極又は正極活物質に、結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー化し、これを集電体に塗布、乾燥した後に、プレスすることによって形成することができる。
また、活物質に結着剤や導電材などを加えたものをそのままロール成形してシート電極としたり、圧縮成型によりペレット電極としたり、蒸着・スパッタ・メッキ等の手法で集電体上に電極材料の薄膜を形成することもできる。
【0077】
負極活物質に黒鉛を用いた場合、負極活物質層の乾燥、プレス後の密度は、通常1.45g/cm3以上であり、好ましくは1.55g/cm3以上、より好ましくは1.60g/cm3以上、特に好ましくは1.65g/cm3以上、である。
また、正極活物質層の乾燥、プレス後の密度は、通常2.0g/cm3以上であり、好ましくは2.5g/cm3以上、より好ましくは3.0g/cm3以上である。
集電体としては各種のものが用いることができるが、通常は金属や合金が用いられる。負極の集電体としては、銅、ニッケル、ステンレス等が挙げられ、好ましいのは銅である。また、正極の集電体としては、アルミニウム、チタン、タンタル等の金属又はその合金が挙げられ、好ましいのはアルミニウム又はその合金である。
【0078】
(セパレータ、外装体)
正極と負極の間には、短絡を防止するために多孔膜(セパレータ)を介在させる。この場合、電解液は多孔膜に含浸させて用いる。多孔膜の材質や形状は、電解液に安定であり、かつ保液性に優れていれば、特に制限はなく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布等が好ましい。
本発明に係る電池に使用する電池の外装体の材質も任意であり、ニッケルメッキを施した鉄、ステンレス、アルミニウム又はその合金、ニッケル、チタン、ラミネートフィルム等が用いられる。
上記した本発明の非水系電解液二次電池の作動電圧は通常2V〜4.9Vの範囲である。
【0079】
(作用原理)
本発明に係る非水系電解液が、過充電時の安全性に優れ、高温での連続充電特性にも優れる理由は明らかではなく、また、本発明は下記作用原理に限定されるものではないが、次のように推察される。
【0080】
一般式(1)で表される化合物は、カーボネート溶媒成分より酸化電位が低く、過充電時により早い段階で正極上で反応して、過充電時の安全性を高めることができる。更に、ベンゼン環にメチル基等のアルキル基を有していると、連続充電状態等の正極の活性が常に高い状態である場合には、反応点となり電池特性劣化を引き起こすが、一般式(1)で表される化合物はメチル基等のアルキル基を有していないために、連続充電状態での正極との副反応を抑制することができる。
【0081】
しかし、一般式(1)で表される化合物は還元されやすく、高温保存時において負極上で副反応を起こして、電池特性を低下させてしまう課題があった。
非水溶媒に占めるエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物、フッ素原子を有する環状カーボネート化合物から選ばれる少なくとも一つ以上の環状カーボネート化合物と鎖状カーボネートとの合計の割合を90容量%以上とし、負極の表面に安定な保護被膜を形成する炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物、フッ素原子を有する環状カーボネート化合物、モノフルオロリン酸塩およびジフルオロリン酸塩と併用することにより、これらの化合物が効率よく負極の表面に安定な保護被膜を形成し、一般式(1)で表される化合物の負極側での副反応を抑制することができると考えられる。
【0082】
また、モノフルオロリン酸塩およびジフルオロリン酸塩を含有する場合は、正極側にも保護皮膜を形成し、高温保存時の正極側での副反応も抑制できると考えられる。
更に、ビニレンカーボネートを含有する場合は、ビニレンカーボネートもカーボネート化合物の中では酸化電位が低く、一般式(1)で表される化合物と酸化電位が近いので、過充電時に、一般式(1)で表される化合物と共に反応することによって、過充電時の安全性を高めることができると考えられる。
【実施例】
【0083】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、下記実施例および比較例で得られた電池の各評価方法を以下に示す。
【0084】
[容量評価]
非水系電解液二次電池を、電極間の密着性を高めるためにガラス板で挟んだ状態で、25℃において、0.2Cに相当する定電流で4.2Vまで充電した後、0.2Cの定電流で3Vまで放電した。これを3サイクル行って電池を安定させ、4サイクル目は、0.5Cの定電流で4.2Vまで充電後、4.2Vの定電圧で電流値が0.05Cになるまで充電を実施し、0.2Cの定電流で3Vまで放電して、初期放電容量を求めた。
ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、例えば、0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
【0085】
[過充電特性評価]
容量評価試験の終了した電池を、エタノール浴中に浸して体積を測定した後、25℃において、0.2Cの定電流で5Vまで定電流充電を行い、5Vに達した時点で電流をカットして、過充電試験後の電池の開回路電圧(OCV)を測定した。
【0086】
次に、エタノール浴中に浸して体積を測定し、過充電の前後の体積変化から発生したガス量を求めた。
過充電試験後の電池のOCVが低い方が、過充電深度が低く、過充電時の安全性が高い。
また、過充電後のガス発生量が多いほど、過充電等の異常により内圧が異常に上昇したときにこれを感知して安全弁を作動させる電池では、安全弁を早めに作動させることができるので好ましい。
【0087】
また、過充電後のガス発生量と、次に記載する高温保存時等に発生するガス量の差が大きい方が、過充電時に安全弁を確実に作動させながら、高温保存時等における安全弁の誤作動を防ぐことができるので好ましい。
【0088】
[高温保存特性(連続充電特性)の評価]
容量評価試験の終了した電池を、エタノール浴中に浸して体積を測定した後、60℃において、0.5Cの定電流で定電流充電を行い、4.25Vに到達した後、定電圧充電に切り替え、1週間連続充電を行った。
【0089】
電池を冷却させた後、エタノール浴中に浸して体積を測定し、連続充電の前後の体積変化から発生したガス量を求めた。
発生ガス量の測定後、25℃において0.2Cの定電流で3Vまで放電させ、連続充電試験後の残存容量を測定し、初期放電容量に対する連続充電試験後の放電容量の割合を求め、これを連続充電試験後の残存容量(%)とした。
【0090】
(実施例1)
[負極の製造]
X線回折における格子面(002面)のd値が0.336nm、結晶子サイズ(Lc)が652nm、灰分が0.07重量部、レーザー回折・散乱法によるメジアン径が12μm、BET法による比表面積が7.5m2/g、アルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析から求めたR値(=IB/IA)が0.12、1570〜1620cm-1の範囲にあるピークの半値幅が19.9cm-1である天然黒鉛粉末94重量部とポリフッ化ビニリデン6重量部とを混合し、N−メチル−2−ピロリドンを加えスラリー状にした。このスラリーを厚さ12μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、負極活物質層の密度が1.7g/cm3になるようにプレスして負極とした。
【0091】
[正極の製造]
LiCoO2 90重量部、カーボンブラック4重量部及びポリフッ化ビニリデン(呉羽化学社製、商品名「KF−1000」)6重量部を混合し、N−メチル−2−ピロリドンを加えスラリーし、これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、正極活物質層の密度が3.2g/cm3になるようにプレスして正極とした。
【0092】
[電解液の製造]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートの混合物(容量比2:3:5)に、非水系電解液中の含有量としてビニレンカーボネート2重量%と酢酸フェニル1重量%を混合し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して電解液とした。
【0093】
[リチウム二次電池の製造]
上記の正極、負極、及びポリエチレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正極負極の端子を突設させながら挿入した後、上記電解液を袋内に注入し、真空封止を行い、シート状電池を作製し、過充電特性および連続充電特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0094】
(実施例2)
実施例1の電解液において、ビニレンカーボネートに代えて、フルオロエチレンカーボネートを使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、過充電特性および連続充電特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0095】
(実施例3)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートの混合物(容量比2:3:5)に、非水系電解液中の含有量としてビニレンカーボネート2重量%、ジフルオロリン酸リチウム0.5重量%及び酢酸フェニル1重量%を混合した。次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して調製した電解液を使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、過充電特性および連続充電特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
(実施例4)
実施例1の電解液において、酢酸フェニルに代えて、酪酸フェニルを使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、過充電特性および連続充電特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
(実施例5)
実施例1の電解液において、酢酸フェニルに代えて、シクロへキサンカルボン酸フェニルを使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、過充電特性および連続充電特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
(実施例6)
実施例1の電解液において、酢酸フェニルに代えて、トリフルオロ酢酸フェニルを使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、過充電特性および連続充電特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
(実施例7)
実施例1の電解液において、酢酸フェニル1重量%に代えて、酢酸フェニル0.5重量%となるように調製した電解液を使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、過充電特性および連続充電特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0096】
(比較例1)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートの混合物(容量比2:3:5)に、非水系電解液中の含有量としてビニレンカーボネート2重量%を混合した。次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して調製した電解液を使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、過充電特性および連続充電特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
(比較例2)
実施例1の電解液において、酢酸フェニルに代えて、フェニルシクロへキサンを使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、過充電特性および連続充電特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
(比較例3)
実施例1の電解液において、酢酸フェニルに代えて、酢酸p−トリルを使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、過充電特性および連続充電特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
(比較例4)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートとリン酸トリメチルの混合物(容量比2:3:3:2)に、非水系電解液中の含有量としてビニレンカーボネート2重量%と酢酸フェニル1重量%を混合し、次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して調製した電解液を使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、過充電特性および連続充電特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0097】
(比較例5)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートの混合物(容量比2:3:5)に、非水系電解液中の含有量として酢酸フェニル1重量%を混合した。次いで十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して調製した電解液を使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、過充電特性および連続充電特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
(比較例6)
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートの混合物(容量比2:3:5)に、十分に乾燥したLiPF6を1.0モル/リットルの割合となるように溶解して調製した電解液を使用した以外、実施例1と同様にしてシート状リチウム二次電池を作製し、過充電特性および連続充電特性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
各実施例、比較例における電解液の組成を表―1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
表2から明らかなように、比較例2の電池は過充電時の安全性は高いが、連続充電によるガス発生が多く、電池特性劣化も大きい。比較例3、4、5の電池の場合は、連続充電後の電池特性低下が大きい。比較例1、6の電池は連続充電後の電池特性には優れているが、過充電時の安全性が低い。
本発明に係る電池は、過充電時の安全性が高く、高温での連続充電特性にも優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質及び非水溶媒を含む非水系電解液において、該非水系電解液が、
(a)下記一般式(1)で表される化合物を、該非水系電解液中に0.001〜5重量%含有し、
【化1】


(一般式(1)中、Rは、炭素数1〜12の鎖状若しくは環状のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、又は、フェニル基を表し、これらの基はフッ素原子で置換されていてもよい。)
(b)炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物、フッ素原子を有する環状カーボネート化合物、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を、該非水系電解液中に0.001〜30重量%含有し、
更に、非水溶媒において、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物、及びフッ素原子を有する環状カーボネート化合物から選ばれる少なくとも一つ以上の環状カーボネート化合物並びに鎖状カーボネート化合物との合計の非水溶媒中における割合が90容量%以上であることを特徴とする非水系電解液。
【請求項2】
非水系電解液中における(a)の一般式(1)で表される化合物の割合が0.001〜2.5重量%であることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解液。
【請求項3】
一般式(1)においてRが炭素数1〜4の鎖状アルキル基、又は炭素数5〜7の環状アルキル基であることを特徴とする請求項1又は2記載の非水系電解液。
【請求項4】
非水溶媒において、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート化合物、及びフッ素原子を有する環状カーボネート化合物から選ばれる環状カーボネート化合物並びに鎖状カーボネート化合物との合計の非水溶媒中における割合が95容量%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非水系電解液。
【請求項5】
非水溶媒がエチレンカーボネートとジアルキルカーボネートを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の非水系電解液。
【請求項6】
非水溶媒がエチレンカーボネート、対称鎖状アルキルカーボネート及び非対称鎖状アルキルカーボネートを含有することを特徴とする請求項5記載の非水系電解液。
【請求項7】
電解質がリチウム塩であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の非水系電解液。
【請求項8】
リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極及び正極、並びに非水系電解液を含む非水系電解液電池であって、該非水系電解液が請求項1〜7のいずれかに記載の非水系電解液であることを特徴とする非水系電解液電池。

【公開番号】特開2011−23160(P2011−23160A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165557(P2009−165557)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】