説明

非水電解質二次電池、及びその製造方法

【課題】内部抵抗の上昇を抑制可能な耐熱層を具備する非水電解質二次電池、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁性フィラー及び結着剤を溶媒に分散させてペーストを作製する分散工程S11と、分散工程S11にて作製されたペーストを乾燥させて、前記絶縁性フィラーと前記結着剤とが複合した複合粒子を造粒する造粒工程S12と、造粒工程S12にて作製された複合粒子を、負極合剤層12を覆うように成型して、多数の複合粒子からなる粒子層を形成する成型工程S13と、成型工程S13にて形成された粒子層に対してプレス加工を施し、粒子層を耐熱層へと変化させるプレス工程S14と、を具備する製造工程を経てリチウムイオン二次電池を製造する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池、及びその製造方法に関し、特に電極合剤層上に耐熱層を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、リチウムイオン二次電池、及びニッケル・水素蓄電池等の非水電解質二次電池は、シート状に形成された一対の電極(正極及び負極)をセパレータを介して積層し、捲回して成る電極体を具備している。
このような非水電解質二次電池においては、電極体への異物の混入等によって正負極間でショートが発生し、セパレータが溶融するおそれがある。
【0003】
従来、セパレータの溶融等に起因する内部短絡を防止するために、電極合剤層の表面に耐熱層を形成する技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
当該耐熱層は、絶縁性フィラー及び結着剤を溶媒に分散させて成るペーストを、ダイコータ等の塗工機を用いて、電極合剤層の表面に塗布した後、乾燥させることで形成される。
【0004】
しかしながら、上記の耐熱層が形成された非水電解質二次電池においては、ペースト中の溶媒及び結着剤が電極合剤層内に浸透するため、電極合剤層中の活物質が結着剤によって被覆され、内部抵抗が上昇するという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−120604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、内部抵抗の上昇を抑制可能な耐熱層を具備する非水電解質二次電池、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る非水電解質二次電池の製造方法は、シート状の集電体、及び当該集電体の表面に形成される電極合剤層を備える一対の電極を具備する非水電解質二次電池の製造方法であって、絶縁性フィラー及び結着剤を溶媒に分散させてペーストを作製する分散工程と、前記分散工程にて作製されたペーストを乾燥させて、前記絶縁性フィラーと前記結着剤とが複合した複合粒子を造粒する造粒工程と、前記造粒工程にて作製された複合粒子を、前記一対の電極の少なくとも一方の電極合剤層を覆うように成型して、多数の複合粒子からなる粒子層を形成する成型工程と、前記成型工程にて形成された粒子層に対してプレス加工を施し、当該粒子層を耐熱層へと変化させるプレス工程と、を具備する。
【0008】
本発明に係る非水電解質二次電池の製造方法において、前記成型工程では、前記電極合剤層の表面及び側面を覆うように前記粒子層を形成することが好ましい。
【0009】
本発明に係る非水電解質二次電池の製造方法において、負極のみに前記耐熱層を形成することが好ましい。
【0010】
本発明に係る非水電解質二次電池は、シート状の集電体、及び当該集電体の表面に形成される電極合剤層を備える電極を具備する非水電解質二次電池であって、絶縁性フィラーと結着剤とが複合した複合粒子からなる耐熱層が前記電極合剤層上に形成され、前記耐熱層は、前記電極合剤層の表面及び側面を覆うように形成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る非水電解質二次電池、及びその製造方法によれば、電極合剤層の表面に耐熱層を形成する場合における内部抵抗の上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る非水電解質二次電池の負極を示す図。
【図2】本発明に係る非水電解質二次電池の製造工程を示す図。
【図3】負極合剤層上に形成された粒子層を示す図。
【図4】従来の耐熱層が形成された電極を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、図1を参照して、本発明に係る非水電解質二次電池の一実施形態であるリチウムイオン二次電池について説明する。
【0014】
前記リチウムイオン二次電池は、外装を成す容器と、当該容器に収納される電極体とを具備する。
【0015】
前記容器は、アルミニウム又は、ステンレス鋼等から成る金属缶であり、内部に前記電極体を収納可能に構成される。前記容器に前記電極体が収納された状態で、前記容器の内部に電解液が充填されることで、当該電解液が前記電極体に含浸する。
【0016】
前記電極体は、正極及び負極10(一対の電極)をセパレータを介して積層し、捲回することで所定の形状に成形された捲回体である。前記電極体は、前記電解液が含浸することで発電要素となる。
【0017】
前記正極は、シート状の正極集電体と、当該正極集電体の表面に形成された正極合剤層とを備える電極である。
前記正極集電体は、アルミニウム、チタン、又はステンレス鋼等の金属箔から成る集電体である。
前記正極合剤層は、正極活物質を導電助剤及び結着剤等と共に溶媒に分散させた正極合剤からなる電極合剤層である。前記正極合剤層は、前記正極集電体の表面にダイコータ等の塗工機によって塗工されたペースト状の前記正極合剤を乾燥させた後、当該正極合剤に対してプレス加工を施すことによって形成される。
【0018】
図1に示すように、負極10は、シート状の負極集電体11と、負極集電体11の表面に形成された負極合剤層12と、負極合剤層12上に形成された耐熱層(HRL:Heat Resistance Layer)13とを備える電極である。
負極集電体11は、銅、ニッケル、又はステンレス鋼等の金属箔から成る集電体である。
負極合剤層12は、負極活物質を導電助剤及び結着剤等と共に溶媒に分散させた負極合剤からなる電極合剤層である。負極合剤層12は、負極集電体11の表面にダイコータ等の塗工機によって塗工されたペースト状の前記負極合剤を乾燥させた後、当該負極合剤に対してプレス加工を施すことによって形成される。
耐熱層13は、前記セパレータの溶融等に起因する内部短絡を抑制するための層であり、負極合剤層12の表面(図1における上面)及び側面(図1における左右両面)を覆うように形成されている。耐熱層13は、絶縁性フィラーと結着剤とが複合した多数の粒子に対してプレス加工を施すことによって形成される。
なお、本発明に係る電極合剤層(負極合剤層12)の表面とは、本発明に係る集電体(負極集電体11)の表面(電極合剤層が形成される面)に対して略平行となる面であり、本発明に係る電極合剤層(負極合剤層12)の側面とは、本発明に係る集電体(負極集電体11)の表面に対して略垂直となる面である。
【0019】
前記セパレータは、ポリエチレン、ポリプロピレンといったポリオレフィン樹脂等から成る絶縁体であり、前記正極と負極10との間に介装されている。
【0020】
以下では、図2〜図4を参照して、本発明に係る非水電解質二次電池の製造方法の一実施形態である、前記リチウムイオン二次電池の製造工程について説明する。
【0021】
前記リチウムイオン二次電池の製造工程は、前記正極を作製する正極作製工程と、負極10を作製する負極作製工程とを具備する。
【0022】
前記正極作製工程においては、まず、ダイコータ等の塗工機を用いて、前記正極集電体の表面に前記正極合剤を塗工した後、当該正極合剤を乾燥させる。
次に、前記正極集電体の表面上の前記正極合剤に対してプレス加工を施すことで、前記正極集電体の表面に前記正極合剤層を形成する。
こうして、前記正極を作製する。
【0023】
前記負極作製工程は、負極10を作製する工程であり、負極合剤層12上に耐熱層13を形成する耐熱層形成工程S10を具備する。
前記負極作製工程においては、負極集電体11の表面に負極合剤層12を形成する工程を行った後に、耐熱層形成工程S10を行う。
なお、負極集電体11の表面に負極合剤層12を形成する工程は、前記正極作製工程と略同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0024】
図2に示すように、耐熱層形成工程S10は、分散工程S11と、造粒工程S12と、成型工程S13と、プレス工程S14とを具備する。
【0025】
分散工程S11は、前記絶縁性フィラー及び前記結着剤を溶媒に分散させてペーストを作製する工程である。
分散工程S11においては、適宜の分散機を用いて、粉末状の前記絶縁性フィラー及び前記結着剤を溶媒に分散させ、ペーストを作製する。
前記絶縁性フィラーとしては、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化ケイ素等を採用することが可能であり、それらのうちの一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記結着剤としては、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等を採用することが可能であり、それらのうちの一種を単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)等を採用することが可能である。
例えば、前記絶縁性フィラーとして酸化マグネシウム(MgO)、前記結着剤としてポリアクリロニトリル(PAN)、溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP)を採用し、混合比をMgO:PAN=96:4(wt%)として、固形分率が35wt%となるようにペーストを作製する。
【0026】
造粒工程S12は、分散工程S11にて作製されたペーストを乾燥させて、前記絶縁性フィラーと前記結着剤とが複合した粒子(以下、「複合粒子」と記す)を造粒する工程である。
造粒工程S12においては、スプレードライ、フリーズドライ、又は流動層造粒等により、前記ペーストを乾燥させて、前記絶縁性フィラーと前記結着剤とが複合した複合粒子を造粒する。この時、造粒された複合粒子に対して、適宜、分級を行うことが好ましい。
【0027】
図3に示すように、成型工程S13は、造粒工程S12にて作製された複合粒子を負極合剤層12を覆うように成型し、多数の複合粒子からなる粒子層14を形成する工程である。
成型工程S13においては、スキージ法、ロール間プレス法、又は静電スクリーン法等により、負極集電体11の表面に形成された負極合剤層12上に複合粒子を成型することで粒子層14を形成する。
この時、負極合剤層12の表面(図3における上面)及び側面(図3における左右両面)を覆うように、粒子層14を形成することが好ましい。詳細には、粒子層14の表面(図3における上端面)と、負極集電体11の表面との距離が略均一となるように、負極合剤層12の表面、及び負極合剤層12の側面近傍における負極集電体11の表面に複合粒子を成型する。つまり、負極合剤層12の表面に成型される複合粒子の量を、負極合剤層12の側面近傍における負極集電体11の表面に成型される複合粒子の量よりも少なくなるように(負極合剤層12の表面に成型される複合粒子の厚み寸法が負極合剤層12の側面近傍における負極集電体11の表面に成型される複合粒子の厚み寸法よりも小さくなるように)、複合粒子の成型を制御する。複合粒子は、粉体であるため堆積し、粒子層14を容易に所望の形状とすることができる。
【0028】
プレス工程S14は、成型工程S13にて形成された粒子層14に対してプレス加工を施す工程である。
プレス工程S14においては、平板プレス機、又はロールプレス機等を用いて、粒子層14に対してプレス加工を施すことで、粒子層14を耐熱層13へと変化させる。
【0029】
以上のように、耐熱層形成工程S10を経て、負極合剤層12上に耐熱層13が形成される(図1参照)。
耐熱層13は、従来の耐熱層とは異なり、溶剤が存在していない多数の複合粒子から作製されるため、当該溶剤と共に前記結着剤が負極合剤層12内に浸透することがない。
これにより、前記結着剤が負極合剤層12中の負極活物質を被覆することに起因する、前記リチウムイオン二次電池の内部抵抗の上昇を抑制することができる。
【0030】
また、負極合剤層12の表面及び側面を覆うように粒子層14が形成されるため、負極合剤層12の表面のみならず、負極合剤層12の側面も覆うように耐熱層13が形成される。
これにより、負極合剤層12の側面における異物による短絡を抑制することができる。
図4に示すように、従来の非水電解質二次電池においては、電極合剤層の側面(図4の左右両面)を覆う耐熱層が形成できないという問題が生じていた。これは、従来の非水電解質二次電池においては、前記絶縁性フィラー及び前記結着剤を所定の溶媒に分散させて成るペーストを、ダイコータ等の塗工機を用いて塗布することによって耐熱層を形成するためである。ダイコータ等の塗工機は、平坦面に対して均一の厚みでペーストを塗工するように構成されているため、塗工対象に段差が存在すると、当該段差部分に対するペーストの塗布量が不足してしまう。
しかしながら、本発明によれば、このような問題を解決することができるのである。
【0031】
前記正極作製工程及び前記負極作製工程の後は、前記電極体を前記容器に収納する収納工程、及び前記電極体が収納された前記容器の内部に前記電解液を注液する注液工程等を経て、前記リチウムイオン二次電池が製造されることとなる。
【0032】
なお、本実施形態においては、負極10のみに耐熱層13を形成したが、前記正極のみに本発明に係る耐熱層を形成すること、又は前記正極及び負極10の双方に本発明に係る耐熱層を形成することも可能である。
ただし、負極10におけるデンドライト析出等を考慮すると、少なくとも負極10に耐熱層13を形成することが好ましく、前記リチウムイオン二次電池の製造に要する時間及びコスト等を考慮すると、負極10のみに耐熱層13を形成することが更に好ましい。
【符号の説明】
【0033】
10 負極(電極)
11 負極集電体(集電体)
12 負極合剤層(電極合剤層)
13 耐熱層
14 粒子層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の集電体、及び当該集電体の表面に形成される電極合剤層を備える一対の電極を具備する非水電解質二次電池の製造方法であって、
絶縁性フィラー及び結着剤を溶媒に分散させてペーストを作製する分散工程と、
前記分散工程にて作製されたペーストを乾燥させて、前記絶縁性フィラーと前記結着剤とが複合した複合粒子を造粒する造粒工程と、
前記造粒工程にて作製された複合粒子を、前記一対の電極の少なくとも一方の電極合剤層を覆うように成型して、多数の複合粒子からなる粒子層を形成する成型工程と、
前記成型工程にて形成された粒子層に対してプレス加工を施し、当該粒子層を耐熱層へと変化させるプレス工程と、を具備する、
ことを特徴とする、非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記成型工程では、前記電極合剤層の表面及び側面を覆うように前記粒子層を形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項3】
負極のみに前記耐熱層を形成する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項4】
シート状の集電体、及び当該集電体の表面に形成される電極合剤層を備える電極を具備する非水電解質二次電池であって、
絶縁性フィラーと結着剤とが複合した複合粒子からなる耐熱層が前記電極合剤層上に形成され、
前記耐熱層は、前記電極合剤層の表面及び側面を覆うように形成される、
ことを特徴とする、非水電解質二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−101867(P2013−101867A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245485(P2011−245485)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】