説明

非水電解質二次電池用電極活物質およびそれを用いた非水電解質二次電池

【課題】電池特性バランスに優れた非水電解質二次電池用電極活物質を提供する。
【解決手段】
本発明の非水電解質二次電池用電極活物質は、Li(1+α)[ NixMnyCozWβ]O2(0.105<α<0.333、x+y+z+β=1、0.075<z<0.330、0.935<x/y<0.978、0.005≦β)で表わされることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用電極活物質およびそれを用いた非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポータブル機器や自動車などの電源として、小型・軽量であって高いエネルギー密度を有する二次電池が望まれており、非水電解質二次電池の需要が急速に伸びている。中でも、負極にリチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素材料などを、正極にリチウム遷移金属複合酸化物を用いたリチウムイオン二次電池は、単位電気量当たりの重量が小さく、エネルギー密度が高いため急速に普及している。
【0003】
現在、リチウム遷移金属複合酸化物としてはコバルト酸リチウムが広く使用されている。しかし、コバルトは非常に高価な金属であり、資源的な面でも制限がある。そのため、コバルトの含有量を減らした活物質の開発や活物質の代替が望まれている。
【0004】
近年では、マンガン酸リチウムやニッケル酸リチウム、これらの酸化物の一部を他の金属元素で置換したリチウム遷移金属複合酸化物が注目されている。ニッケルやマンガンはコバルトに比べ比較的安価な金属であり、かつ安定した供給が可能である。
【0005】
中でも、コバルト酸リチウムと同じ結晶構造をとるニッケル酸リチウムは、コバルト酸リチウムよりも低い電気化学的ポテンシャルを示すため高容量化が期待できる。特許文献1に酸化リチウムと酸化ニッケルとを不活性ガス―酸素混合雰囲気下で焼成して、大容量の充放電が可能な組成式Li2NiO2+yで表されるリチウムニッケル複合酸化物が得られることが記載されている。
【0006】
しかし、ニッケル酸リチウムは、リチウムイオンの吸蔵・放出時の結晶構造の変化が大きいため、電池寿命が短いという問題がある。
【0007】
そこで、ニッケル酸リチウムの一部をマンガンなどの金属元素で置換したリチウムニッケル遷移金属複合酸化物が提案されている。ニッケル酸リチウムの一部をマンガンなどの金属元素で置換することによって結晶構造が安定し、長寿命の電極活物質が得られることが報告されている。特許文献2には、一般式Li1+x+αNi(1-x-y+δ)/2Mn(1-x-y-δ)/2y2〔ただし、0≦x≦0.05、−0.05≦x+α≦0.05、0≦y≦0.2、−0.1≦δ≦0.1であって、MはCo、またはCoとTi、Cr、Fe、Cu、Zn、Al、GeおよびSnからなる群から選択された1種以上の元素〕で表されるリチウムニッケル遷移金属複合酸化物が記載されている。特許文献2に記載されている組成のリチウムニッケル遷移金属複合酸化物の場合、層状の結晶構造が安定化され、4V付近の電位領域での充放電の可逆性や充放電サイクルに対する耐久性に優れたリチウムニッケル遷移金属複合酸化物が得られることが開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載されている組成のリチウムニッケル遷移金属複合酸化物では、NiとMnの比率を1:1(モル比)とした場合、LiとMeの比(Li/Me)を大きくすると放電容量が低下すると言う問題がある、さらには、Li/Meを一定とした場合、NiとMnの比(Ni/Mn)を変化させるとレート特性やサイクル特性に影響してしまう。
【0009】
そこでこれらの問題を解決すべく、特許文献3に記載されているようにタングステンやモリブデンなどの添加物の検討が盛んに行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−241027号公報
【特許文献2】特開2003−238165号公報
【特許文献3】特開2008−305777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら特許文献3に記載されているように、タングステンやモリブデンなどの添加元素を加えることにより、単位重量当たりの初回放電容量が減少してしまう等の問題がある。現在のところ、希少元素であるコバルトの含有量を低減しつつ、高い放電容量を有する電極活物質は未だ得られていない。そこで、本発明では、コバルト含有量を低減しつつ高い放電容量を有する電極活物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る非水電解質二次電池用電極活物質は、Li(1+α)[ NixMnyCozWβ]O2(0.105<α<0.333、x+y+z+β=1、0.075<z<0.330、0.935<x/y<0.978、0.005≦β)で表わされることを特徴としている。
【0013】
本発明者等は、前記組成を有するタングステン含有リチウムニッケル遷移金属複合酸化物を電極活物質に使用することにより、低抵抗で、かつ高い放電容量を有する非水電解質二次電池が得られることを見出した。また、本発明ではLiの割合1モル以上と多くした場合においても、Liが他の金属元素との置換を起こさず、定サイトに存在しやすいため、抵抗値の増加を抑制することが可能である。また、Liの割合を多くした場合に、余剰のLiが固溶せずに酸化物として電極活物質中に存在し、単位体積あたりの放電容量が減少してしまう問題があるが、前記Ni(x)とMn(y)の比を0.935<x/y<0.978にすることにより、反応性の高いMnの割合を増加させ、固溶できないLiを減少させることで、高い放電容量を有する電極活物質を得ることができる。さらの、タングステン(W)を含有していることで、粒成長が抑制され、拡散抵抗が低下し、レート特性が向上することを見出した。
【0014】
また、本発明は、前記非水電解質二次電池用電極活物質からなる正極と、負極と、電解質とを少なくとも備える非水電解質二次電池にも向けられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、電極活物質にLi(1+α)[ NixMnyCozWβ]O2(0.105<α<0.333、x+y+z+β=1、0.075<z<0.330、0.935<x/y<0.978、0.005≦β)で表わされるタングステン含有リチウムニッケル遷移金属複合酸化物を用いることによって、コバルト含有量を低減しつつ、高い放電容量を有する非水電解質二次電池用電極活物質を得ることができる。また、本発明の電極活物質を非水電解質二次電池の電極に使用することで、高い放電容量を有する非水電解質二次電池を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る非水電解質二次電池としてのコイン型非水電解質二次電池の一実施の形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
【0018】
本発明に係る非水電解質二次電池用電極活物質は、Li(1+α)[ NixMnyCozWβ]O2で表わされるタングステン含有リチウムニッケル遷移金属複合酸化物であることを特徴としている。本発明の電極活物質において、前記式におけるαが0.105<α<0.333、ニッケル、マンガン、コバルト、タングステンの含有比率の総和x+y+z+βが1、コバルトの含有比率が0.075<z<0.330、ニッケルとマンガンの含有比率が0.935<x/y<0.978、タングステンの含有率が0.005≦βである。
【0019】
本発明の組成では、Liの割合を1モル以上と多くした場合においても、Liが他の金属元素との置換を起こさず、定サイトに存在しやすいため、抵抗値の増加を抑制することが可能である。また、Liの割合を多くした場合、余分なLiが固溶せずに酸化物として電極活物質中に存在し、単位体積あたりの放電容量が減少してしまう問題があるが、前記Ni(x)とMn(y)の比を0.935<x/y<0.978とすることにより、反応性の高いMnの割合を増加させ、固溶できないLiを減少させることで、高い放電容量を有する電極活物質を得ることができる。さらに、Wを含有することで、粒成長が抑制され、拡散抵抗が低下し、放電容量維持率が向上する。また、通常、添加物が入ることで単位重量当たりの初回充放電容量が減少するが、本発明の組成にすることで、Wなどの添加による初回充放電容量の減少を抑制することが可能である。この理由は、前記Ni(x)とMn(y)の比を0.935<x/y<0.978としていることに起因すると考えられるが、未だ詳細は不明である。なお、Wの存在位置は限定されないが、固溶している方が好ましい。
【0020】
本発明の電極活物質を製造する方法は、特定の製法には限定させるものではないが、タングステン原料、ニッケル原料、コバルト原料、マンガン原料、リチウム原料とを液体媒体中で粉砕し、これらを均一に分散させたスラリーを得るスラリー調整工程と、得られたスラリーを噴霧乾燥する噴霧乾燥工程と、得られた噴霧乾燥粉体を焼成する焼成工程とを含む製造方法により好適に製造される。
【0021】
また、上記タングステン原料としては、三酸化タングステン、六塩化タングステン、炭化タングステン、タングステン酸などが挙げられ、具体的には、三酸化タングステンを使用することが好ましい。
【0022】
上記ニッケル原料としては、ニッケルの酸化物、炭酸塩、無機酸塩、有機酸塩や塩化物などが挙げられるが、具体的には、金属ニッケルを使用することが好ましい。
【0023】
コバルト原料としては、コバルトの酸化物、炭酸塩、無機酸塩、有機酸塩や塩化物などが挙げられるが、具体的には、水酸化コバルト、四三酸化コバルトから選ばれた少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0024】
マンガン原料としては、マンガンの酸化物、炭酸塩、無機酸塩、有機酸塩や塩化物などが挙げられるが、具体的には、二酸化マンガン、四三酸化マンガン、炭酸マンガンから選ばれた少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0025】
リチウム原料としては、リチウムの酸化物、炭酸塩、無機酸塩、有機酸塩や塩化物などが挙げられるが、具体的には、炭酸リチウムを使用することが好ましい。
【0026】
また、上記のような原料を混合し焼成する際の焼成条件としては、原料混合物を、およそ800〜1100℃で5〜30時間焼成することにより合成することが可能である。焼成雰囲気としては、酸素を含む雰囲気、すなわち空気中や、アルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性ガスと酸素ガスとの混合雰囲気、あるいは酸素ガス中で行えばよい。上記焼成にあたって、酸素雰囲気中で900〜1000℃、15〜25時間焼成することがこのましい。
【0027】
次に、本発明の非水電解質二次電池用電極活物質を使用した非水電解質二次電池について記述する。
【0028】
図1は、本発明に係る非水電解質二次電池の一実施の形態としてのコイン型非水電解質二次電池を示す断面図である。本実施の形態では、本発明の電極活物質を正極として使用している。
【0029】
コイン型非水電解質二次電池1は、ケース11と封口板12とを有し、ケース11及び封口板12は、いずれも円盤状の薄板形状に形成されている。そして、ケース11の底部中央には、集電体(図示せず)上に形成された正極14が配されている。そして、正極14上には微多孔膜、織布、不織布などの多孔性のシートまたはフィルムで形成されたセパレータ16が積層され、さらにセパレータ16には負極15が積層されている。負極15としては、例えば、リチウムの金属箔や、黒鉛やハードカーボン等のリチウム吸蔵材料を銅箔に塗布したものを使用することができる。負極15には金属からなる集電体17が積層されるとともに、該集電体17には金属製のばね部材18が載置されている。そして、電解液が内部空間に充填されると共に、封口板12はばね部材18の付勢力に抗してケース11に固着され、ガスケット13を介して封止されている。
【0030】
次に、上記非水電解質二次電池の製造方法の一例を詳述する。
【0031】
まず、正極を形成する。例えば、電極活物質を結着剤、及び導電助剤と共に混合し、有機溶剤、もしくは水を加えて電極活物質スラリーとし、該電極活物質スラリーを集電体上に任意の塗工方法で塗工し、乾燥することにより正極を形成する。
【0032】
本発明において結着剤は特に限定されるものではなく、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンオキサイド、カルボキシメチルセルロース等の各種樹脂を使用することができる。
【0033】
尚、導電助剤としては、導電性を有する材料であれば特に限定されないが、炭素材料を用いることが好ましい。例えば、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等の炭素繊維、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等の導電性高分子やフラーレン、金属粉末などが利用できる。本発明では導電助剤を2種類以上混合して用いることもできる。尚、導電助剤の電極中の含有率も特に限定されないが、10〜80質量%が望ましい。
【0034】
また、有機溶剤についても、特に限定されるものではなく、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチル―2―ピロリドン、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン等の塩基性溶媒、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ニトロベンゼン、アセトン等の非水溶媒、メタノール、エタノール等のプロトン性溶媒等を使用することができる。また、有機溶剤の種類、有機化合物と有機溶剤との配合比、添加剤の種類とその添加量等は、二次電池の要求特性や生産性等を考慮し、任意に設定することができる。
【0035】
次いで、この正極14を電解液に含浸させて該正極14に前記電解液を染み込ませ、その後、ケース11の底部中央に正極14を載置する。その後、電解質を含浸させたセパレータ16を正極14上に積層し、さらに負極15及び集電体17を順次積層し、内部空間に電解液を注入する。そして、集電体17にばね部材18を載置すると共に、ガスケット13を周縁に配し、かしめ機等で封口板12をケース11に固着して外装封止することでコイン型非水電解質二次電池1が作製される。
【0036】
また、負極15に使用される負極活物質としては、炭素材料、シリコン(Si)、スズ(Sn)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、リチウム含有チタン酸化物などを用いることができる。いずれの材料を用いた場合においても本発明の効果を得ることができるが、コストの観点から負極活物質層の材料としては炭素材料を使うことが好ましい。炭素材料としては、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、コークスなどを用いることができる。
【0037】
尚、電解質は、正極14と対向電極である負極15との間に介在して両電極間の荷電担体輸送を行う。このような電解質としては、室温で10-5〜10-1S/cmのイオン伝導度を有するものを使用することができる。例えば、電解質塩を有機溶剤に溶解させた電解液を使用することができる。ここで、電解質塩としては、例えば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3、Li(CF3SO22、Li(C25SO22N、Li(CF3SO23C、Li(C25SO23C等を使用することができる。
【0038】
また、有機溶剤としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等を使用することができる。
【0039】
また、電解質には、固体電解質を使用してもよい。固体電解質に用いられる高分子化合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−モノフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体等のフッ化ビニリデン系重合体、アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ビニルアセテート共重合体等のアクリルニトリル系重合体、さらにはポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、及びこれらのアクリレート体やメタクリレート体の重合体等を挙げることができる。また、これらの高分子化合物に電解液を含ませてゲル状にしたものを電解質として使用してもよい。或いは電解質塩を含有させた高分子化合物のみをそのまま電解質に使用してもよい。
【0040】
また、上記実施の形態では、コイン型非水電解質二次電池1について説明したが、電池形状は特に限定されるものでないのはいうまでもなく、円筒型、角型、シート型等にも適用できる。また、外装方法も特に限定されず、金属ケースや、モールド樹脂、ラミネートフイルム等を使用してもよい。
【0041】
また、上記実施の形態では、電極活物質を正極に使用したが、負極に使用するのも有用である。
【0042】
また、上記実施の形態では、電極活物質を二次電池に使用した場合について述べたが、一次電池にも使用することが可能である。
【0043】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。尚、以下に示す実施例は一例であり、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の非水電解質二次電池用電極活物質を用いた非水電解質二次電池の実施例1〜4と比較例1〜5について説明する。
【実施例1】
【0045】
【電極活物質の合成】
【0046】
原料として三酸化タングステン、平均粒径0.5μmのニッケル金属粉、四三酸化マンガン、四三酸化コバルト、炭酸リチウムを使用し、これらをモル比でLi:1.149、Ni:0.436、Mn:0.455、Co:0.099、W:0.010となるように秤量した。次に、これらの原料粉末と溶媒として水を混合し原料スラリーを作製した。得られた原料スラリーを噴霧乾燥し、酸素雰囲気中、950℃、20時間熱処理を行うことによりタングステン含有リチウムニッケル遷移金属複合酸化物Li1.149Ni0.436Mn0.455Co0.0990.0102を合成した。
マックソーブを用いて、合成したタングステン含有リチウムニッケル遷移金属複合酸化物の比表面積(SSA)を測定した。
【非水電解質二次電池の作製】
【0047】
まず、前記方法で合成したタングステン含有リチウムニッケル遷移金属複合酸化物を用いた電極の作製方法を説明する。
電極活物質として、合成したタングステン含有リチウムニッケル遷移金属複合酸化物を使用し以下の方法で電極を作製する。電極活物質としてLi1.149Ni0.436Mn0.455Co0.0990.0102、導電助剤としてアセチレンブラック、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを重量比で81:7:12となるように混合した。これをN-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に分散させて電極スラリーを作製した。作製した電極スラリーを厚さ20μmのアルミ箔上に10mg/cm2となるように塗布し、140℃で乾燥後、1t/cm2の圧力でプレスすることにより電極シートを作製した。プレス後の電極シートを直径12mmに打ち抜き電極を作製した。
【0048】
次に、コイン型非水電解質二次電池の作製方法を説明する。
【0049】
図1に示すように、コイン型非水電解質二次電池1は、正極端子を兼ねたケース11と、負極端子を兼ねた封口板12と、ケース11と封口板12とを絶縁するガスケット13と、正極14と、負極15と、正極14と負極15との間に介在したセパレータ16と、負極15の上に配置された集電体17と、集電体17と封口板12との間に配置されたばね部材18とから構成され、ケース11の内部には電解液が充填されている。
具体的には、前述の方法で作製した電極を正極に、負極として金属リチウム、電解液として炭酸エチレン:炭酸ジエチル=3:7(重量比)混合溶媒に溶媒1リットル当り1molの6フッ化燐酸リチウムを溶解させた有機電解液、セパレーターとしてポリエチレン多孔膜を用いて直径20mm厚さ3.2mmのコイン型非水電解質二次電池を作製した。
作製したコイン型非水電解質二次電池を、25℃の恒温槽内で電圧範囲3.0〜4.3V、電流値200μAで3回充放電試験を行った。また、1Cでも充放電試験を行った。なお、電圧範囲は3.0〜4.3V、電流値は200μAで充放電試験を行った際の3サイクル目の放電容量にリチウムニッケル遷移金属複合酸化物の活物質量を掛けて1Cにおける電流値を算出した。また、1Cで20回充放電試験を繰り返し行い電池特性を測定した。
この時の200μAの初回の充放電容量、および充放電効率、1Cでの初回放電容量、200μAでの3サイクル目の放電容量に対する1Cでの初回放電容量維持率を求めた。
【比較例1】
【0050】
実施例1と同様に電極活物質を合成した。ただし、原料をモル比でLi:Ni:Mn:Co:W=1.15:0.44:0.46:0.10:0.00となるように秤量した。また、実施例1と同様にコイン型非水電解質二次電池を作製し電池特性を測定した。
【比較例2】
【0051】
実施例1と同様に電極活物質を合成した。ただし、三酸化タングステンではなく三酸化モリブデンを添加した。また、原料をモル比でLi:Ni:Mn:Co:Mo=1.149:0.436:0.455:0.099:0.010となるように秤量した。また、実施例1と同様にコイン型非水電解質二次電池を作製し電池特性を測定した。
【比較例3】
【0052】
実施例1と同様に電極活物質を合成した。ただし、原料をモル比でLi:Ni:Mn:Co:W=1.123:0.453:0.433:0.099:0.015となるように秤量した。また、実施例1と同様にコイン型非水電解質二次電池を作製し電池特性を測定した。
【実施例2】
【0053】
実施例1と同様に電極活物質を合成した。ただし、原料をモル比でLi:Ni:Mn:Co:W=1.149:0.438:0.458:0.100:0.005となるように秤量した。また、実施例1と同様にコイン型非水電解質二次電池を作製し電池特性を測定した。
【実施例3】
【0054】
実施例1と同様に電極活物質を合成した。ただし、原料をモル比でLi:Ni:Mn:Co:W=1.148:0.433:0.453:0.099:0.015となるように秤量した。また、実施例1と同様にコイン型非水電解質二次電池を作製し電池特性を測定した。
【実施例4】
【0055】
実施例1と同様に電極活物質を合成した。ただし、原料をモル比でLi:Ni:Mn:Co:W=1.146:0.429:0.449:0.098:0.024となるように秤量した。また、実施例1と同様にコイン型非水電解質二次電池を作製し電池特性を測定した。
【比較例4】
【0056】
実施例1と同様に電極活物質を合成した。ただし、原料をモル比でLi:Ni:Mn:Co:W=1.15:0.44:0.46:0.10:0.00となるように秤量した。また、酸素雰囲気中、1000℃、20時間焼成を行った。また、実施例1と同様にコイン型非水電解質二次電池を作製し電池特性を測定した。
【0057】
上記実施例1〜4および比較例1〜4の電極活物質の組成を表1に、200μAの初回充放電容量、1Cでの初回放電容量、200μAでの放電容量に対する1Cでの初回放電容量維持率を表2に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
この結果から、実施例1〜4の電極活物質を使用した非水電解質二次電池は200μAおよび1C時の初回放電容量が大きく、また、初回充放電効率、放電容量維持率が高い電池であることが分かる。しかしながら、比較例1〜4の電極活物質を使用した電池では、初回充電容量は高いものの、放電容量が小さく、また初回充放電効率および放電容量は比較的小さい電池である。
【符号の説明】
【0061】
1:コイン型非水電解質二次電池、11:ケース、12:封口板、13:ガスケット、14:正極、15:負極、16:セパレータ、17:集電体、18:ばね部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Li(1+α)[ NixMnyCozWβ]O2(0.105<α<0.333、x+y+z+β=1、0.075<z<0.330、0.935<x/y<0.978、0.005≦β)で表わされること特徴とする非水電解質二次電池用電極活物質。
【請求項2】
請求項1記載の電極活物質を電極に用いたことを特徴とする非水電解質二次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2011−165326(P2011−165326A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23058(P2010−23058)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】