説明

非水電解質二次電池

【課題】安全性及び電池性能が向上された非水電解質二次電池を提供することである。
【解決手段】実施形態の非水電解質二次電池1は、正極3と、負極4と、セパレータ5と、非水電解質とを含む。前記セパレータ5は、平均直径R1を有する繊維を含む一以上の第1の不織布層9と、平均直径R2を有する繊維を含む一以上の第2の不織布層10とを含む。前記一以上の第1の不織布層9と前記一以上の第2の不織布層10は、交互に、且つ、前記第1の不織布層9の繊維の方向と前記第2の不織布層10の繊維の方向が角度を有するように積層される。前記R1は前記R2と異なる値である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータ等の小型の携帯電子機器のための電源として、高エネルギー密度を有するリチウムイオン電池が広く用いられている。リチウムイオン電池の電極は、一般に、正極と負極がセパレータを介して積層された構成を有する。リチウムイオン電池をさらに高容量化するためには、セパレータは薄い方が望ましい。しかし、セパレータを薄くし過ぎると強度が低下し、内部短絡が生じる恐れがある。また、例えば、ポリオレフィン樹脂からなるシートを高倍率延伸して製造されたセパレータは、内部短絡による異常昇温のような高温環境下において著しく収縮し、電極間の隔壁として機能しなくなる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−012756号公報
【特許文献2】特開平05−310989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、安全性及び電池性能が向上された非水電解質二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の非水電解質二次電池は、正極と、負極と、セパレータと、非水電解質とを含む。前記セパレータは、平均直径R1を有する繊維を含む一以上の第1の不織布層と、平均直径R2を有する繊維を含む一以上の第2の不織布層とを含む。前記一以上の第1の不織布層と前記一以上の第2の不織布層は、交互に、且つ、前記第1の不織布層の繊維の方向と前記第2の不織布層の繊維の方向が角度を有するように積層される。前記R1は前記R2と異なる値である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1実施形態の非水電解質二次電池の部分切欠斜視図。
【図2】図1の電池に備えられる電極群を示す模式図。
【図3】第1実施形態の電池に用いられるセパレータの側面を示す模式図。
【図4】第2実施形態の電池に用いられるセパレータの側面を示す模式図。
【図5】第3実施形態の電池に用いられるセパレータの側面を示す模式図。
【図6】第4実施形態の電池に用いられるセパレータの側面を示す模式図。
【図7】放散熱量の変化を示すグラフ。
【図8】セル温度の変化を示すグラフ。
【図9】放電時間を示すグラフ。
【図10】セパレータの層数と体積エネルギー密度の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態に係る非水電解質二次電池を、図面を参照して詳細に説明する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、薄型非水電解質二次電池1の部分切欠斜視図である。図2は、図1の電池に備えられる捲回電極群2を展開した模式図である。
【0009】
本実施形態による非水電解質二次電池1は、捲回電極群2を備える。捲回電極群2は、正極3、負極4、及びセパレータ5から構成される。正極3と負極4は、間にセパレータ5を挟んで積層される。この積層体を扁平形状に捲回することにより捲回電極群2が形成される。正極3には帯状の正極タブ6が電気的に接続される。負極4には帯状の負極タブ7が電気的に接続される。
【0010】
捲回電極群2は、外装部材8内に、正極タブ6及び負極タブ7の端部を外部に延出させた状態で収容される。外装部材8の内部には、さらに、非水電解液(図示せず)が収容される。外装部材8には、ラミネートフィルム製外装袋が用いられる。ラミネートフィルム製外装袋の開口部を、正極タブ6及び負極タブ7が延出した状態でヒートシールすることにより、電極群2及び非水電解液が密封される。なお、外装部材はラミネートフィルム製に限らず、例えば金属製の缶などを用いることもできる。
【0011】
以下、セパレータ、正極、負極、非水電解質及び外装部材について詳述する。
【0012】
1)セパレータ
セパレータは、正極と負極の間に配置され、正極と負極が接触するのを防止する。セパレータは、絶縁性材料で構成される。また、セパレータは、正極及び負極の間を電解質が移動可能な形状を有する。
【0013】
本実施形態による非水電解質二次電池1に用いられるセパレータ5を図3に示す。図3は、セパレータ5の側面図であり、セパレータ5を厚さ方向から見た模式図である。セパレータ5は、平均直径R1を有する繊維を含む一以上の第1の不織布層9と、平均直径R2を有する繊維を含む一以上の第2の不織布層10とを含む。一以上の第1の不織布層9と一以上の第2の不織布層10は、交互に、且つ、第1の不織布層9の繊維の方向と第2の不織布層10の繊維の方向が角度を有するように積層されて、積層構造体を形成する。さらに、R1はR2と異なる値である。
【0014】
第1の不織布層9には、平均直径R1を有する繊維によって構成された不織布が用いられる。第2の不織布層10には、平均直径R2を有する繊維によって構成された不織布が用いられる。不織布を構成する繊維の平均直径は、例えば、断面電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)によって測定することができる。
【0015】
第1の不織布層9は、その繊維の方向が、第2の不織布層10の繊維の方向と角度を有するように積層される。即ち、積層構造体において、各不織布層は、隣接する不織布層と繊維の方向が平行にならないように配置される。
【0016】
図3の例では、第1の不織布層9は繊維の直径方向が見える向きに配置されており、一方、第2の不織布層10は繊維の繊維長方向が見える向きに配置されている。従って、第1の不織布層9と第2の不織布層10とは、それらの繊維方向がほぼ直交するように積層されている。
【0017】
ここで、不織布層に含まれる繊維の方向とは、不織布層に含まれる繊維の繊維長方向を意味するように解される。不織布層に含まれる繊維は、全ての繊維が同一方向に向けて配置されていてもよいが、無秩序に配置されていることがより好ましい。繊維が無秩序に配置されている場合、基体となる第1の不織布領域の主方向を、不織布層に含まれる繊維の方向とする。
【0018】
なお、第1の不織布層9と第2の不織布層10とは、図3に示すように、それらの繊維の方向がほぼ直交するように積層される場合に限らず、繊維の方向がほぼ平行に成らない限り、その角度は任意であってよい。第1の不織布層9の繊維の方向と第2の不織布層10の繊維の方向とがなす鋭角は、例えば10°以上であることが好ましい。
【0019】
さらに、第1の不織布層9と第2の不織布層10は、太さの異なる繊維で形成されることを特徴とする。即ち、第1の不織布層9に含まれる繊維の平均直径R1と、第2の不織布層10に含まれる繊維の平均直径R2は異なる値である。
【0020】
第1の不織布層9に含まれる繊維の平均直径R1は、特に限定されないが、例えば5〜10μmの範囲であることが好ましい。第2の不織布層10に含まれる繊維の平均直径R2は、特に限定されないが、例えば1〜5μmの範囲であることが好ましい。
【0021】
第1の不織布層9及び第2の不織布層10に含まれる繊維の長さは、特に限定されず、任意の長さであってよい。
【0022】
上記のようなセパレータは、繊維直径が異なる不織布層が、繊維の方向が平行にならないように積層されていることにより、空隙率が確保されながらも貫通孔が生じる恐れがなく、且つ、高い強度を有する。このようなセパレータは、リチウムイオンの透過性が高いために充放電レートを向上させることができるとともに、強度が高いために短絡を防止し、電池の安全性を向上させることができる。さらに、セパレータの強度が高いため、セパレータの厚さをより薄くすることが可能であり、電池の高容量化に貢献することができる。またさらに、セパレータが複数の部材から構成され、構造的に不連続であるため、単一の部材から構成されるセパレータよりも収縮率が低く、異常高温下における収縮が低減されるという利点も有する。
【0023】
セパレータの材料の例には、合成樹脂及びセルロースが含まれる。例えば、合成樹脂製不織布、ポリエチレン多孔質フィルム、ポリプロピレン多孔質フィルム、又は、セルロース系のセパレータを用いることができる。特に、セルロースから形成されるセパレータは、過充電や内部短絡に起因する異常高温下においても収縮し難い。
【0024】
セパレータの厚さは、1〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。上記範囲内の厚さにすることにより、十分な強度を有し、且つ、リチウムイオンの透過性を向上させることができる。
【0025】
本実施形態において用いられるセパレータ5に含まれる不織布は、例えば、乾式法、スパンボンド法、ウォーターニードル法、スパンレース法、湿式抄造法、及びメルトブロー法のような、公知の方法により製造可能である。特に、均一で薄い不織布を得やすい湿式抄造法が好適に用いられる。不織布は、電解液に膨潤し、これを保持する有機高分子からなる多孔膜であることが好ましく、平均膜厚10〜20μm、目付け6〜20g/m2、透気度10秒以下、25℃におけるマクミラン数10以下であることが望ましい。
【0026】
不織布を構成する材料は特に限定されないが、ポリエチレン・ポリプロピレン等のポロオレフィン系材料、ポリエチレンテレフタレート・ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系材料、ポリフェニリンスルフィド、及び、芳香族ポリアミド、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0027】
なお、上記では、第1の不織布層と第2の不織布層の2種の不織布層を交互に積層して積層構造体を形成する例を説明したが、これに限定されず、3種以上の不織布層を交互に積層して積層構造体を形成してもよい。この場合、3種以上の不織布は、何れも平均直径の異なる繊維から形成されたものであることが好ましい。また、3種以上の不織布層は、互いに、繊維の方向が隣接する不織布層の繊維の方向と平行にならないように配置される。
【0028】
また、セパレータに含まれる不織布層の総数は4層に限定されず、5層以上の不織布層が含まれてもよい。
【0029】
さらに、セパレータには熱可塑性樹脂を含浸させてもよい。熱可塑性樹脂は、過充電や内部短絡によって電池が異常高温状態になった場合に溶融する。熱可塑性樹脂が溶融すると、セパレータの空隙が閉塞され、リチウムイオンの透過が制限される。よって、セパレータに熱可塑性樹脂を含有させることにより、異常高温状態において電流を遮断することができる。
【0030】
熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、及び、アクリル樹脂などを用いることができる。好ましくはPP樹脂及びPE樹脂が用いられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で用いてもよく、或いは、複数種類を混合して用いてもよい。
【0031】
2)正極
正極は、集電体及び正極層を備える。正極層は、集電体の片面又は両面に形成される。正極層は、正極活物質、導電剤及び結着剤を含む。
【0032】
正極活物質の例には、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLiMn又はLiMnO)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLiNiO)、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1−xCo、0<x≦1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiMnCo1−x2、0<x≦1)、リチウムリン酸鉄(LiFePO)、及びリチウム複合リン酸化合物(例えばLiMnFe1−xPO4、0<x≦1)が含まれる。
【0033】
導電剤の例には、アセチレンブラック、カーボンブラック、及び黒鉛が含まれる。
【0034】
結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、エチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、及びカルボキシメチルセルロース(CMC)が含まれる。
【0035】
活物質、導電剤及び結着剤の配合割合は、例えば、活物質80〜95重量%、導電剤3〜20重量%、結着剤2〜7重量%にすることが好ましい。
【0036】
一例として、正極活物質としてリチウムコバルト酸化物(LiCoO)粉末91重量%、導電剤としてアセチレンブラック2.5重量%及びグラファイト3重量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)3.5重量%を、ノルマルメチルピロリドン(NMP)溶液に加えて混合してスラリーを調製し、該スラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗布し、乾燥後、プレスすることにより正極を作製することができる。このとき、プレス圧を調整することにより、電極密度を調整することができ、例えば3.0g/cmとすることができる。
【0037】
3)負極
負極は、集電体及び負極層を備える。負極層は、集電体の片面又は両面に形成される。負極層は、負極活物質、導電剤及び結着剤を含む。
【0038】
負極活物質として、リチウムイオンを吸蔵放出可能な物質が用いられる。負極活物質の例には、炭素物質、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物及び金属合金が含まれる。
【0039】
炭素物質の例には、コークス、炭素繊維、熱分解気相炭化物、黒鉛及び樹脂焼成体が含まれる。
【0040】
金属酸化物の例には、チタン酸リチウム(Li4+xTi12)が含まれる。
金属硫化物の例には、硫化鉄及び硫化リチウムが含まれる。
金属窒化物の例には、リチウムコバルト窒化物が含まれる。
金属合金の例には、アルミニウム及びアルミニウム合金、リチウム及びリチウム合金が含まれる。
負極活物質には、上記の物質を単独で用いてもよいが、二種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
負極層に含まれる導電剤には、炭素材料を用いることができる。炭素材料の例には、アセチレンブラック及びカーボンブラックが含まれる。
【0042】
結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、及びカルボキシメチルセルロース(CMC)が含まれる。
【0043】
活物質、導電剤及び結着剤の配合割合は、例えば、負極活物質70〜95重量%、導電剤0〜25重量%、結着剤2〜10重量%であることが好ましい。
【0044】
一例として、負極活物質としてチタン酸リチウム粉末91重量%、導電剤としてアセチレンブラック3.5重量%及びグラファイト3重量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)2.5重量%を、ノルマルメチルピロリドン(NMP)溶液に加えて混合してスラリーを調製し、該スラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔からなる集電体に塗布し、乾燥後、プレスすることによりの負極を作製することができる。このとき、プレス圧を調整することにより、電極密度を調整することができ、例えば1.3g/cmとすることができる。
【0045】
4)非水電解質
非水電解液は、非水溶媒に電解質を溶解することにより調製される。
非水溶媒として、リチウム電池に用いられることが公知の非水溶媒を用いることができる。 非水溶媒の例には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)のような環状カーボネート;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート又はジエチルカーボネートのような鎖状カーボネート;γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル;テトラヒドロフラン又は2−メチルテトラヒドロフランのような環状エーテル;ジメトキシエタン又はジエトキシエタンのような鎖状エーテルが含まれる。
【0046】
電解質として、アルカリ塩を用いることができる。好ましくはリチウム塩が用いられる。リチウム塩の例には、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化硼酸リチウム(LiBF)、六フッ化ヒ素リチウム(LiAsF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、及びトリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCFSO)が含まれる。特に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化硼酸リチウム(LiBF)が好適に用いられる。非水溶媒中の電解質の濃度は、例えば、0.5〜2モル/Lであることが好ましい。
【0047】
5)外装部材
外装部材としては、ラミネート製フィルム、又は、金属性容器を用いることができる。
【0048】
ラミネート製フィルムには、樹脂層で被覆された金属層からなる多層フィルムが用いられる。樹脂層を形成する樹脂には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(PET)のような高分子を用いることができる。金属層は、電池を軽量化するために、アルミニウム箔又はアルミニウム合金であることが好ましい。
【0049】
ラミネートフィルム製外装部材は、内面をPP及びPEのような熱可塑性樹脂により形成し、例えば熱融着法によってシールを行うことにより成形できる。ラミネートフィルムの厚さは、体積エネルギー密度を向上させるために、0.2mm以下であることが好ましい。
【0050】
金属製容器としては、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成された容器を用いることができる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛及びケイ素から選択される元素を含む合金であることが好ましい。アルミニウム合金に、鉄、銅、ニッケル及びクロムなどの遷移金属が含まれる場合、100ppm以下であることが好ましい。
【0051】
容器の形状は、例えば、角型、コイン型又はボタン型であってよい。容器は、肉厚0.5mm以下であることが好ましい。
【0052】
本実施形態によれば、リチウムイオンの透過性が高く且つ強度が高いセパレータを用いることにより、安全性が高く且つ電池性能が向上された非水電解質二次電池を提供することができる。
【0053】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態による非水電解質二次電池について説明する。図4は、第2実施形態の電池に用いられるセパレータ11の側面図であり、セパレータ11の長辺を厚さ方向から見た模式図である。第2実施形態による非水電解質二次電池は、図4に示すような構成を有するセパレータを用いる以外は、第1実施形態と同様の構成を有する。
【0054】
セパレータ11は、平均直径R1を有する繊維を含む一以上の第1の不織布層9と、平均直径R2を有する繊維を含む一以上の第2の不織布層10とを含む。一以上の第1の不織布層9と一以上の第2の不織布層10は、交互に、且つ、第1の不織布層9の繊維の方向と第2の不織布層10の繊維の方向が角度を有するように積層されて、積層構造体を形成する。
【0055】
ここで、各不織布層を形成する繊維の直径、長さ、繊維の方向、隣接する不織布層の繊維の方向がなす角度などは第1実施形態において記載したとおりである。
【0056】
本実施形態で用いられるセパレータは、一以上の第1の不織布層と一以上の第2の不織布層が交互に積層された積層構造体に加えてさらに、該積層構造体を厚さ方向に貫く支持体12を含む。この支持体12は、セパレータ11の骨格として用いることができる。支持体12を用いることにより、セパレータ11の強度をさらに向上させることができる。
【0057】
支持体12は、例えば、第1の不織布層と第2の不織布層が交互に積層された積層構造体と同じ厚さを有し、セパレータ11の短辺方向の長さと同じ長さを有する柱状形状であってよい。このような支持体12は、セパレータ11内に、短辺方向と平行に等間隔に配置することができる。
【0058】
支持体12は、リチウムイオンが透過可能な多孔質体であることが好ましい。例えば、ポリオレフィン及びポリエチレンのような樹脂から形成された不織布を用いることができる。
【0059】
しかしながら、これらの樹脂から形成された支持体12は、第1及び第2の不織布層により形成された積層構造体よりもリチウムイオン透過性が低いため、支持体12の幅、即ち、セパレータ11の長辺方向と同じ方向の長さが大きすぎると、セパレータのリチウムイオン透過性が低下する。よって、支持体12の幅は適切に調整されることが必要である。例えば、図4に示すように、セパレータ11の断面積あたりの支持体12が占める面積が、50%以下であるように調整されることが好ましい。支持体12の面積が50%以下であれば、リチウムイオン透過性を損なうことなくセパレータ11の強度を向上させることができる。なお、支持体12が占める面積は、例えば、セパレータ11の断面積のうち、ある視野内において、第1及び第2の不織布層により形成された積層構造体と支持体の合計面積に対する支持体の面積の割合とすることができる。
【0060】
なお、他の実施例として、支持体は、例えば、第1の不織布層と第2の不織布層が交互に積層された積層構造体と同じ厚さを有し、セパレータの長辺方向の長さと同じ長さを有する柱状形状であってよい。このような支持体は、セパレータ内に、長辺方向と平行に等間隔に配置することができる。また、支持体は、格子形状又は網目形状に配置してもよい。
【0061】
本実施形態において用いられるセパレータ11は、例えば、支持体を等間隔に配置し、支持体同士の間に第1実施形態と同様に1の不織布層と第2の不織布層を交互に積層させることにより製造することができる。
【0062】
第2の実施形態によれば、リチウムイオンの透過性が高く且つ強度が高いセパレータを用いることにより、安全性が高く且つ電池性能が向上された非水電解質二次電池を提供することができる。
【0063】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態による非水電解質二次電池について説明する。図5は、第3実施形態の電池に用いられるセパレータ13の側面図であり、セパレータ13を厚さ方向から見た模式図である。第3実施形態による非水電解質二次電池は、図5に示すような構成を有するセパレータを用いる以外は、第1実施形態と同様の構成を有する。
【0064】
セパレータ13は、平均直径R1を有する繊維を含む一以上の第1の不織布層9と、平均直径R2を有する繊維を含む一以上の第2の不織布層10とを含む。一以上の第1の不織布層9と一以上の第2の不織布層10は、交互に、且つ、第1の不織布層9の繊維の方向と第2の不織布層10の繊維の方向が角度を有するように積層されて、積層構造体を形成する。
【0065】
本実施形態において、この積層構造体は、隣接する第1の不織布層と第2の不織布層の向かい合った表面が融合していることを特徴とする。ここで、不織布層の表面が融合しているとは、隣接する層が接触面付近において混合されており、隣接する不織布層の境界が明確に分離されないことを意味する。図5に示すように、隣接する第1の不織布層9と第2の不織布層10は、接触面近傍において、第1の不織布層9を形成する繊維が第2の不織布層10内に混入され、反対に、第2の不織布層10を形成する繊維が第1の不織布層9内に混入された状態である。
【0066】
本実施形態に従って、隣接する第1の不織布層の表面と第2の不織布層の表面が融合しているセパレータは、全体の厚みが減少されるという利点を有する。厚みが減少されると、正負極間の距離が短縮されるため、リチウムイオン透過性を向上させることができる。また、厚みが減少されると、電池のエネルギー密度を高めることができる。
【0067】
なお、各不織布層を形成する繊維の直径、長さ、繊維の方向などは第1実施形態において記載したとおりである。
【0068】
本実施形態において用いられるセパレータ13に含まれる不織布は、例えば、乾式法、スパンボンド法、ウォーターニードル法、スパンレース法、湿式抄造法、及びメルトブロー法のような、公知の方法により製造可能である。特に、均一で薄い不織布を得やすい湿式抄造法が好適に用いられる。不織布は、電解液に膨潤し、これを保持する有機高分子からなる多孔膜であることが好ましく、平均膜厚10〜20μm、目付け6〜20g/m2、透気度10秒以下、25℃におけるマクミラン数10以下であることが望ましい。
【0069】
不織布を構成する材料は特に限定されないが、ポリエチレン・ポリプロピレン等のポロオレフィン系材料、ポリエチレンテレフタレート・ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系材料、ポリフェニリンスルフィド、及び、芳香族ポリアミド、及びこれらの混合物から選択することができる。
【0070】
第3の実施形態によれば、リチウムイオンの透過性が高く且つ強度が高いセパレータを用いることにより、安全性が高く且つ電池性能が向上された非水電解質二次電池を提供することができる。
【0071】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態による非水電解質二次電池について説明する。図6は、第4実施形態の電池に用いられるセパレータ14の側面図であり、セパレータ14の長辺を厚さ方向から見た模式図である。第4実施形態による非水電解質二次電池は、図6に示すような構成を有するセパレータを用いる以外は、第1実施形態と同様の構成を有する。
【0072】
セパレータ14は、平均直径R1を有する繊維を含む一以上の第1の不織布層9と、平均直径R2を有する繊維を含む一以上の第2の不織布層10とを含む。一以上の第1の不織布層9と一以上の第2の不織布層10は、交互に、且つ、第1の不織布層9の繊維の方向と第2の不織布層10の繊維の方向が角度を有するように積層されて、積層構造体を形成する。
【0073】
セパレータは、積層構造体に加えてさらに、該積層構造体を厚さ方向に貫く支持体12を含む。この支持体12は、第1の不織布層9と第2の不織布層10とを積層した積層構造体と同じ厚みを有し、セパレータ11の骨格として用いることができる。支持体12を用いることにより、セパレータ11の強度をさらに向上させることができる。
【0074】
ここで、各不織布層を形成する繊維の直径、長さ、繊維の方向、隣接する不織布層の繊維の方向がなす角度、支持体の形状や配置などは第2実施形態において記載したとおりである。
【0075】
図6に示すように、本実施形態ではさらに、積層構造体の外側にさらなる不織布層が積層される。図6の例では、第1の不織布層9の外側に第3の不織布層15が積層され、第2の不織布層10の外側に第4の不織布層16が積層されている。
【0076】
第3の不織布層15及び第4の不織布層16は、含まれる繊維の平均直径が、隣接する不織布層に含まれる繊維の平均直径と異なることが好ましい。また、第3の不織布層15及び第4の不織布層16は、それぞれ、その繊維の方向が、隣接する不織布層の繊維の方向と角度を有するように積層されることが好ましい。
【0077】
積層構造体の少なくとも一方の外側に、上記のようにさらなる不織布層を積層することによって、セパレータの強度をさらに向上させることができる。また、第1の不織布層又は第2の不織布層と支持体12との間に段差がある場合でも、セパレータ14の表面を平滑にすることができる。
【0078】
本実施形態において用いられるセパレータ14は、第2実施形態で記載した方法によって作製したセパレータの一方の表面又は両方の表面に、さらに不織布層を積層することによって製造することができる。
【0079】
第4の実施形態によれば、リチウムイオンの透過性が高く且つ強度が高いセパレータを用いることにより、安全性が高く且つ電池性能が向上された非水電解質二次電池を提供することができる。
【0080】
なお、上記の各実施形態による非水電解質二次電池は、携帯用電子機器等に積載される小型電池のほか、二輪ないし四輪の自動車等に積載される車載用電池として提供されることもできる。また、上記の各実施形態による非水電解質二次電池は、薄型に限定されず、円筒型、角型など任意の形態であってよい。また、非水電解質二次電池に備えられる電極群は、捲回電極群に限定されず、積層型電極群であってもよい。
【実施例】
【0081】
(実施例)
<セパレータの作製>
厚さ15μmのポリエチレン膜を、約20μmの間隔で配置して、セパレータ骨格を形成した。ポリエチレン膜の間に、第1の不織布層と第2の不織布層を順次積層してセパレータを作製した。第1の不織布層に含まれる繊維には、平均直径5μmのセルロース製の繊維を用いた。第2の不織布層に含まれる繊維には、平均直径2μmのセルロース製の繊維を用いた。第1の不織布層と第2の不織布層とは、繊維の方向がほぼ直角になるように積層した。第1の不織布層は一層あたり5μmの厚さであり、第2の不織布層は一層あたり2μmの厚さであり、それぞれ2層ずつ積層した。
【0082】
<正極の作製>
正極活物質としてリチウムコバルト酸化物(LiCoO)粉末91重量%、アセチレンブラック2.5重量%、グラファイト3重量%、及び、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)3.5重量%を、ノルマルメチルピロリドン(NMP)溶液に加えて混合し、ペースト状の正極用スラリーを調製した。このスラリーを、70メッシュの網を通過させて大きなものを取り除いた。次いで、厚さ12μmの帯状のアルミニウム箔の両面に均一に塗布し、乾燥した。次いで、プレス成形して所定の寸法に切断したのち、導電タブを溶接した。
【0083】
<負極の作製>
負極活物質としてチタン酸リチウム粉末91重量%、アセチレンブラック3.5重量%、グラファイト3重量%、及び、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)2.5重量%を、ノルマルメチルピロリドン(NMP)溶液に加えて混合し、ペースト状の負極用スラリーを調製した。このスラリーを、70メッシュの網を通過させて大きなものを取り除いた。次いで、厚さ12μmの帯状のアルミ箔の両面に均一に塗布し、乾燥した。次いで、プレス成形して所定の寸法に切断したのち、導電タブを溶接した。
【0084】
<非水電解質二次電池の作製>
上記で作製した正極、セパレータ、負極をこの順で重ねて捲回し、プレス成形して捲回電極群を作製した。
【0085】
エチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを体積比1:2の割合で混合した溶媒に、LiPFを1mol/dmの濃度で溶解し、非水電解質を調製した。
【0086】
ラミネートフィルム製外装袋に、捲回電極群及び非水電解質を入れ、正極タブ及び負極タブが延出した状態でヒートシールして、捲回電極群と非水電解液を密封し、非水電解質二次電池を作製した。
【0087】
(比較例1)
単層構造のセパレータを用いた以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。セパレータは、平均直径10μmのセルロース製の繊維から形成され、厚さが15μmであった。
【0088】
(比較実験)
実施例及び比較例の電池をそれぞれ充電した後、放電を行ったときの性能を試験した。充放電条件はいずれも1Cとした。
【0089】
図7に、放散熱量の測定結果を示す。図7に示されているように、実施例の電池は、比較例の電池に比べて、放散熱量が大きく、熱放散能力が高いことが示された。
【0090】
図8に、セル温度の測定結果を示す。図8に示されているように、実施例の電池は、比較例の電池に比べて、セル温度の上昇開始が遅く、温度上昇が抑制されることが示された。
【0091】
図9に、放電時間の測定結果を示す。図9に示されているように、実施例の電池は、比較例の電池に比べて、電圧が高く、放電時間も長かった。
【0092】
(セパレータの層数と体積エネルギー密度の関係)
セパレータの層数と体積エネルギー密度の関係を図10に示した。比較例の電池では、セパレータの層数が増加するに従って体積エネルギー密度が著しく低下する。しかし、本実施形態に従うセパレータを用いた場合、体積エネルギー密度の低下が緩やかであった。本実施形態に従うセパレータは、体積エネルギー密度を向上させるために有利であることが示された。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
1…非水電解質二次電池、2…捲回電極群、3…正極、4…負極、5,11,13,14…セパレータ、6…正極タブ、7…負極タブ、8…外装部材、9…第1の不織布層、10…第2の不織布層、12…支持体、15…第3の不織布層、16…第4の不織布層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
負極と、
平均直径R1を有する繊維を含む一以上の第1の不織布層と、平均直径R2を有する繊維を含む一以上の第2の不織布層とを含むセパレータと、
非水電解質とを含み、
前記一以上の第1の不織布層と前記一以上の第2の不織布層は、交互に、且つ、前記第1の不織布層の繊維の方向と前記第2の不織布層の繊維の方向が角度を有するように積層され、
前記R1は前記R2と異なる値であることを特徴とする、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記セパレータが、前記一以上の第1の不織布層と前記一以上の第2の不織布層が交互に積層された積層構造体を厚さ方向に貫く支持体をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記積層構造体において、隣接する前記第1の不織布層と前記第2の不織布層の向かい合った表面が融合していることを特徴とする、請求項2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記支持体が多孔質体であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記積層構造体の外側にさらなる不織布層が積層されることを特徴とする、請求項2〜4の何れか一項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記さらなる不織布層は、その繊維の方向が、隣接する不織布層の繊維の方向と角度を有するように積層され、
前記さらなる不織布層に含まれる繊維の平均直径が、隣接する不織布層に含まれる繊維の平均直径と異なる値であることを特徴とする、請求項5に記載の非水電解質二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−174412(P2012−174412A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33441(P2011−33441)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】