説明

非水電解質電池及び電池パック

【課題】入出力特性が向上された非水電解質電池及び電池パックを提供する。
【解決手段】実施形態によれば、集電体と、集電体上に配置される活物質層とを含む非水電解質電池用電極が提供される。活物質層は、単斜晶系β型チタン複合酸化物を含む。電極は、Cu−Kα線源を用いた粉末X線回折法によって得られるピークの強度比I(020)/I(001)が下式(I)を満たす。
0.6≦I(020)/I(001)≦1.2 (I)
式中、I(020)は単斜晶系β型チタン複合酸化物の(020)面に由来するピークの強度であり、I(001)は単斜晶系β型チタン複合酸化物の(001)面に由来するピークの強度である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、非水電解質電池及び電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高容量負極材料として、単斜晶系β型構造を有するチタン酸化物が注目されている。従来、実用されているスピネル構造のチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)は、単位化学式あたりの挿入・脱離可能なリチウムイオンの数が3であり、このときスピネル構造のチタン酸リチウムの理論容量は、約170 mAh/gである。
【0003】
これに対して、単斜晶系β型構造を有するチタン酸化物は、チタンイオン1つあたりに挿入・脱離可能なリチウムイオンの数が最大で1.0である。このとき、約330 mAh/gという高い理論容量を有するが、その可逆容量は240 mAh/g程度である。よって、単斜晶系β型構造を有するチタン酸化物を用いた、高容量の電池の開発が期待されている。
【0004】
しかしながら、単斜晶系β型構造を有するチタン酸化物を用いた非水電解質電池は、入出力特性が低いという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-117259号公報
【特許文献2】再表2009-028530号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】G. Armstrong, A. R. Armstrong, J. Canales, P. G. Bruce, Electrochem. Solid-State Lett., 9, A139 (2006)
【非特許文献2】R. Marchand, L. Brohan, M. Tournoux, Material Research Bulletin 15, 1129 (1980)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
入出力特性が向上された非水電解質電池及び電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの実施形態によれば、集電体と、前記集電体上に配置される活物質層とを含む非水電解質電池用電極が提供される。前記活物質層は単斜晶系β型チタン複合酸化物を含む。前記電極は、Cu−Kα線源を用いた粉末X線回折法によって得られるピークの強度比I(020)/I(001)が下式(I)を満たす。
【0009】
0.6≦I(020)/I(001)≦1.2 (I)
式中、I(020)は、前記電極を前記粉末X線回折法により測定した時に得られる、単斜晶系β型チタン複合酸化物の(020)面に由来するピークの強度であり、I(001)は、前記電極を前記粉末X線回折法により測定した時に得られる、単斜晶系β型チタン複合酸化物の(001)面に由来するピークの強度である。
【0010】
他の実施形態によれば、上記電極を負極として含み、さらに、正極と、非水電解質とを含む非水電解質電池が提供される。
【0011】
他の実施形態によれば、上記非水電解質電池を含む電池パックが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第2実施形態の非水電解質二次電池の断面図。
【図2】図1のA部の拡大断面図。
【図3】第3実施形態の電池パックの分解斜視図。
【図4】図3の電池パックの電気回路を示すブロック図。
【図5】電極密度とエネルギー密度の関係を示すグラフ。
【図6】実施例1及び比較例1の粉末X線回折図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る非水電解質電池用電極は、単斜晶系β型チタン複合酸化物を含み、Cu−Kα線源を用いた粉末X線回折法によって得られるピークの強度比I(020)/I(001)が下式(I)を満たす。
【0014】
0.6≦I(020)/I(001)≦1.2 (I)
本明細書において、単斜晶系β型チタン複合酸化物とは、単斜晶系二酸化チタンの結晶構造を有するチタン複合酸化物を指す。単斜晶系二酸化チタンの結晶構造は、主に空間群C2/mに属し、トンネル構造を示す。なお、単斜晶系二酸化チタンの詳細な結晶構造に関しては、非特許文献1に記載されているものを対象とする。
【0015】
上記式(I)において、I(020)は、電極をCu−Kα線源を用いた粉末X線回折法により測定した時に得られる、単斜晶系β型チタン複合酸化物の(020)面に由来するピークの強度である。粉末X線回折図において、(020)面に由来するピークは、2θ=48.5°付近に現れる。ここで、2θ=48.5°付近とは、2θ=48.5°±0.5°の範囲、即ち、2θ=48°〜49°の範囲を意味するように意図される。
【0016】
上記式(I)において、I(001)は、電極をCu−Kα線源を用いた粉末X線回折法により測定した時に得られる、単斜晶系β型チタン複合酸化物の(001)面に由来するピークの強度である。粉末X線回折図において、(001)面に由来するピークは、2θ=14.3°付近に現れる。ここで、2θ=14.3°付近とは、2θ=14.3°±0.5°の範囲、即ち、2θ=13.8°〜14.8の範囲を意味するように意図される。
【0017】
本実施形態における非水電解質電池用の電極は、集電体と活物質層を含む。活物質層は、活物質、導電剤及び結着剤を含む。活物質は、単斜晶系β型チタン複合酸化物を含む。活物質層は、集電体の片面若しくは両面に形成される。
【0018】
電極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、集電体の片面又は両面に塗布し、乾燥して、活物質層を形成する。その後、プレスを施すことにより、電極が得られる。或いは、負極は、活物質、導電剤及び結着剤をペレット状に形成して負極層とし、これを集電体上に形成することにより作製されてもよい。
【0019】
単斜晶系β型チタン複合酸化物を含む電極において、粉末X線回折法によって測定されたピークの強度比I(020)/I(001)が0.6未満であると、入出力特性が悪い。これは、単斜晶系β型チタン複合酸化物へのリチウムイオンの挿入、及びそれからのリチウムイオンの脱離が、スムーズに進まないためであると考えられる。
【0020】
リチウムイオンは、単斜晶系β型チタン複合酸化物の結晶構造の(020)面と垂直方向に出入りする。そのため、(020)面はリチウムイオンが出入りしやすい面である。よって、電極表面と平行方向に配向している(020)面が多いほど、入出力特性が良好である。また、電極表面と平行方向に配向した(020)面が多いほど、ピーク強度I(020)が大きくなり、従って、ピーク強度比I(020)/I(001)が大きくなる。このため、ピーク強度比I(020)/I(001)が大きい電極は入出力特性が良好である。
【0021】
ピーク強度比I(020)/I(001)が0.6以上である電極は、電極作製時のプレス処理において、プレス圧を調整し、電極密度を過剰に上昇させないことによって得られる。これは、単斜晶系β型チタン複合酸化物の一次粒子が繊維状の形状を有することが多く、その繊維長と垂直方向の面が(020)面であるためである。電極作製時のプレス処理において、プレス圧が大きすぎると、一次粒子の繊維長方向が電極表面と平行方向に配向されやすく、これによって電極表面と平行方向に配向した(020)面が減少する。そのため、リチウムイオンが単斜晶系β型チタン複合酸化物の結晶構造中に出入りし難くなり、抵抗が増大し、入出力特性が悪化すると考えられる。また、この場合、電極表面と平行方向に配向した(020)面が減少するため、ピーク強度I(020)が小さくなり、ピーク強度比I(020)/I(001)も低下する。
【0022】
以上のように、電極作製時のプレス処理において、プレス圧を調整することによってピーク強度比I(020)/I(001)を0.6以上にすることができる。また或いは、ピーク強度比I(020)/I(001)が0.6以上である電極は、(020)面が多い単斜晶系β型チタン複合酸化物の結晶を用いることによっても得られる。
【0023】
ピーク強度比I(020)/I(001)の上限は、理論的には限定されないが、実質的には1.5程度である。しかしながら、ピーク強度比I(020)/I(001)が高すぎる電極は、電極密度が低いため、エネルギー密度が低い。また、電極密度が低すぎると、活物質と導電剤などの接触が悪く、入出力特性が悪化する要因となる。そのため、ピーク強度比I(020)/I(001)は1.2以下であることが好ましい。
【0024】
プレス処理後の電極密度は2.0 g/cm3以上2.5 g/cm3以下であることが好ましい。なお、電極密度とは、集電体上に形成された、電極活物質、電極導電剤及び結着剤を含む活物質層の密度である。
【0025】
電極密度の測定方法を説明する。はじめに電極を2cm×2cmに打ち抜き、重量を測定する。集電箔の重量を差し引き、電極のみの重量を求め、単位面積あたりの電極量(g/cm)を算出する。膜厚計により電極厚さを5点測定し、5点の算術平均より平均電極厚さを求める。単位面積あたりの電極量と平均電極厚さから、電極密度を算出する。なお、電池から電極を取り出して測定する場合は、電極をメチルエチルカーボネート溶媒で洗浄して十分に乾燥させた後、重量測定および電極厚さ測定を行う。
【0026】
電極密度が2.0 g/cm3以上であれば、電極のエネルギー密度を確保することができ、単斜晶系β型チタン複合酸化物を用いることによる高容量化効果を得ることができる。電極密度が2.5 g/cm3以下であれば、ピーク強度比I(020)/I(001)を0.6以上にすることができ、また、電極内への電解液の含浸が阻害されず、入出力特性(レート特性)が低下しない。
【0027】
(粉末X線回折測定方法)
粉末X線回折の測定方法について説明する。まず、対象となる電極を、ガラス試料板上に貼り付ける。このとき、両面テープなどを用い、電極が剥がれないことや浮かないことに留意する。また、必要であれば、電極をガラス試料板に貼り付けるのに適切な大きさに切断してもよい。また、ピーク位置を補正するためSi標準試料を電極上に加えてもよい。次いで、電極が貼り付けられたガラス板を粉末X線回折装置に設置し、Cu−Kα線を用いて回折パターンを取得する。
【0028】
(結着剤)
電極に含まれる結着剤は、活物質と導電剤を結着させるために用いられる。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、及び、スチレンブタジエンゴムが含まれる。本実施形態における電極は、結着剤としてスチレンブタジエンゴムを含むことがより好ましい。スチレンブタジエンゴムは、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)などよりも柔軟性が高いため、単斜晶系β型チタン複合酸化物の粒子の配向を偏らせずに電極密度を上昇させることができる。よって、スチレンブタジエンゴムを用いた電極は、ピーク強度比I(020)/I(001)をあまり変化させずに電極密度を上昇させることができる。
【0029】
(導電剤)
電極に含まれる導電剤は、集電性能を高め、集電体との接触抵抗を抑えるために用いられる。導電剤の例には、アセチレンブラック、カーボンブラック、及び黒鉛が含まれる。鱗片状黒鉛を用いると、単斜晶系β型チタン複合酸化物の粒子の配向を偏らせずに電極密度を上昇させることができるので好ましい。鱗片状黒鉛を用いた電極は、ピーク強度比I(020)/I(001)をあまり変化させずに電極密度を上昇させることができる。
【0030】
(比表面積)
単斜晶系β型チタン複合酸化物の比表面積は、5m/g以上100m/g以下であることが好ましい。比表面積を5m/g以上にすることにより、リチウムイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保することができ、高い容量を得ることができる。比表面積を100m/g以下にすることにより、充放電中のクーロン効率の低下を抑制できる。比表面積は10m/g以上20m/g以下であることがより好ましい。比表面積は例えばBET法により測定することができる。
【0031】
(粒径)
単斜晶系β型チタン複合酸化物の凝集粒子の平均粒径は、5μm以上20μm以下であることが好ましい。ここで、平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定法によるD50(粒度分布結果における累積50%の値)のことを示す。平均粒径が5μm以上20μm以下であれば、粒子表面での過剰な副反応量を抑えることができる。また、上記平均粒径の範囲であればスラリーおよび電極が作製しやすい。
【0032】
(単斜晶系β型チタン複合酸化物)
単斜晶系β型チタン複合酸化物は、Na2Ti3O7、K2Ti4O9、及びCs2Ti5O11のようなチタン酸アルカリ化合物をプロトン交換に供し、それらのアルカリ金属をプロトンに交換し、得られたプロトン交換体を加熱処理することによって合成することができる。
【0033】
単斜晶系β型チタン複合酸化物は、プロトン交換時に残存したNa、K及びCsのようなアルカリ金属を含んでいてもよい。但し、これらのアルカリ金属は少ない方が好ましく、単斜晶系β型チタン複合酸化物に対して、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0034】
以上の実施形態によれば、入出力特性が向上された非水電解質電池を実現できる非水電解質電池用電極を提供することができる。
【0035】
(第2実施形態)
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は発明の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0036】
図1に、本実施形態に係る非水電解質電池の一例を示す。図1は、扁平型非水電解質二次電池の断面模式図である。図2は、図1のA部の拡大断面図である。電池1は、外装部材2、偏平形状の捲回電極群3、正極端子7、負極端子8、及び非水電解質を備える。
【0037】
外装部材2はラミネートフィルムからなる袋状外装部材である。捲回電極群3は、外装部材2に収納されている。捲回電極群3は、図3に示すように、正極4、負極5、及びセパレータ6を含み、外側から負極5、セパレータ6、正極4、セパレータ6の順で積層した積層物を渦巻状に捲回し、プレス成型することにより形成される。
【0038】
正極4は、正極集電体4aと正極層4bとを含む。正極層4bには正極活物質が含まれる。正極層4bは正極集電体4aの両面に形成されている。
【0039】
負極5は、負極集電体5aと負極層5bとを含む。負極層5bには負極活物質が含まれる。負極5は、最外層においては、負極集電体5aの内面側の片面にのみ負極層5bが形成され、その他の部分では負極集電体5aの両面に負極層5bが形成されている。
【0040】
図2に示すように、捲回電極群3の外周端近傍において、帯状の正極端子7が正極4の正極集電体4aに接続されている。また、帯状の負極端子8が最外層の負極5の負極集電体5aに接続されている。正極端子7及び負極端子8は、外装部材2の開口部を通って外部に延出されている。外装部材2の内部には、さらに、非水電解液が注入される。外装部材2の開口部を、正極端子7及び負極端子8を挟んだ状態でヒートシールすることにより、捲回電極群3及び非水電解質が完全密封される。
【0041】
以下、本実施形態の非水電解質電池に用いられる負極、正極、非水電解質、セパレータ、外装部材、正極端子、負極端子について詳細に説明する。
【0042】
(負極)
負極は、負極集電体及び負極活物質層を含む。負極活物質層は、負極活物質、導電剤及び結着剤を含む。負極活物質層は、負極集電体の片面若しくは両面に形成される。
【0043】
本実施形態における非水電解質電池は、負極として上記第1実施形態に係る電極を用いる。負極活物質としては、単斜晶系β型チタン複合酸化物を用い、その他、スピネル構造のチタン酸リチウム及びラムスデライド型チタン酸リチウムのようなチタン含有酸化物を用いてもよい。
【0044】
負極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、負極活物質は70質量%以上96質量%以下、負極導電剤は2質量%以上28質量%以下、結着剤は2質量%以上28質量%以下の範囲であることが好ましい。導電剤が2質量%未満であると、負極活物質層の集電性能が低下し、非水電解質電池の大電流特性が低下する恐れがある。また、結着剤が2質量%未満であると、負極活物質層と負極集電体の結着性が低下し、サイクル特性が低下する恐れがある。一方、高容量化の観点から、導電剤及び結着剤は各々28質量%以下であることが好ましい。
【0045】
負極集電体は、1.0 Vよりも貴である電位範囲において電気化学的に安定であるアルミニウム箔若しくはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiのような元素を含むアルミニウム合金箔から形成されることが好ましい。
【0046】
負極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、負極活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、負極集電体の片面又は両面に塗布し、乾燥して、負極活物質層を形成する。その後、プレスを施す。或いは、負極活物質、導電剤及び結着剤をペレット状に形成し、負極活物質層として用いることもできる。
【0047】
(正極)
正極は、正極集電体及び正極活物質層を含む。正極活物質層は、正極活物質、導電剤及び結着剤を含む。正極活物質層は、正極集電体の片面若しくは両面に形成される。
【0048】
正極活物質として、種々の酸化物、硫化物及びポリマーを使用することができる。
【0049】
酸化物の例には、リチウムを吸蔵する二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えば、LixMn2O4又はLixMnO2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えば、LixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(例えば、LixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えば、LiNi1-yCoyO2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えば、LixMnyCo1-yO2)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えば、LiNi1-y-zCoyMnzO2)、リチウムニッケルコバルトアルミ複合酸化物(例えば、LiNi1-y-zCoyAlzO2)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えば、LixMn2-yNiyO4)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えば、LixFePO4、LixFe1-yMnyPO4、LixCoPO4)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、及びバナジウム酸化物(例えば、V2O5)が含まれる。上記において、0<x≦1であり、0≦y≦1であり、0≦z≦1であることが好ましい。活物質として、これらの化合物を単独で用いてもよく、或いは、複数の化合物を組合せて用いてもよい。
【0050】
また、ポリアニリン及びポリピロールのような導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料、イオウ(S)、フッ化カーボンのような有機材料及び無機材料を正極活物質として用いることもできる。
【0051】
正極活物質は、上記の化合物を単独で又は組合せて用いることができる。
【0052】
高い正極電圧が得られる活物質がより好ましく、その例には、リチウムマンガン複合酸化物(LixMn2O4)、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物(LixMn2-yNiyO4)、リチウムニッケル複合酸化物(LixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(LixNi1-yCoyO2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(LixMnyCo1-yO2)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えばLiNi1-y-zCoyMnzO2)及びリチウムリン酸鉄(LixFePO4)が含まれる。上記において、0<x≦1であり、0≦y≦1であり、0≦z≦1であることが好ましい。
【0053】
導電剤は、集電性能を高め、且つ活物質と集電体との接触抵抗を抑える。導電剤の例には、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノファイバー、及びカーボンナノチューブのような炭素質物が含まれる。
【0054】
結着剤は、活物質、導電剤、及び集電体とを結着させる。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、及びフッ素系ゴムが含まれる。
【0055】
正極層中の活物質、導電剤及び結着剤は、それぞれ80質量%以上95質量%以下、3質量%以上18質量%以下、及び2質量%以上17質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤は、3質量%以上の量にすることにより上述した効果を発揮することができる。導電剤は、18質量%以下の量にすることにより高温保存下での導電剤表面での非水電解質の分解を低減することができる。結着剤は、2質量%以上の量にすることにより十分な正極強度が得られる。結着剤は、17質量%以下の量にすることにより、正極中の絶縁材料である結着剤の配合量を減少させ、内部抵抗を減少できる。
【0056】
正極集電体は、アルミニウム箔、又は、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
【0057】
正極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、正極活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、正極集電体の片面又は両面に塗布し、乾燥して、正極活物質層を形成する。その後、プレスを施す。或いは、正極活物質、導電剤及び結着剤をペレット状に形成し、正極活物質層として用いることもできる。
【0058】
(非水電解質)
非水電解質としては、液状非水電解質又はゲル状非水電解質を用いることができる。液状非水電解質は、電解質を有機溶媒に溶解することにより調製される。電解質の濃度は、0.5〜2.5 mol/lの範囲であることが好ましい。ゲル状非水電解質は、液状電解質と高分子材料を複合化することにより調製される。
【0059】
電解質の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及び、ビストリフルオロメチルスルホニルイミトリチウム[LiN(CF3SO2)]のようなリチウム塩が含まれる。これらの電解質は、単独で又は2種類以上を組合せて用いることができる。電解質は、LiN(CF3SO2)2を含むことが好ましい。
【0060】
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネートのような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、ジオキソラン(DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(DME)、ジエトエタン(DEE)のような鎖状エーテル;γ−ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(AN)、及び、スルホラン(SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で又は2種類以上を組合せて用いることができる。
【0061】
より好ましい有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、及びメチルエチルカーボネート(MEC)よりなる群から選択される2種以上を混合した混合溶媒、及び、γ−ブチロラクトン(GBL)を含む混合溶媒が含まれる。このような混合溶媒を用いることによって、低温特性の優れた非水電解質電池を得ることができる。
【0062】
高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、及びポリエチレンオキサイド(PEO)が含まれる。
【0063】
(セパレータ)
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)のような材料から形成された多孔質フィルム、合成樹脂製不織布等を用いることができる。中でも、ポリエチレン又はポリプロピレンからなる多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能であり、安全性向上の観点から好ましい。
【0064】
(外装部材)
外装部材としては、ラミネートフィルム製の袋状容器又は金属製容器が用いられる。
【0065】
形状としては、扁平型、角型、円筒型、コイン型、ボタン型、シート型、積層型等が挙げられる。なお、無論、携帯用電子機器等に積載される小型電池の他、二輪乃至四輪の自動車等に積載される大型電池でも良い。
【0066】
ラミネートフィルムとしては、樹脂フィルム間に金属層を介在した多層フィルムが用いられる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔もしくはアルミニウム合金箔が好ましい。樹脂フィルムには、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、及びポリエチレンテレフタレート(PET)のような高分子材料を用いることができる。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行って外装部材の形状に成形することができる。ラミネートフィルムは、肉厚が0.2mm以下であることが好ましい。
【0067】
金属製容器は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成されることができる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛及びケイ素のような元素を含むことが好ましい。一方、鉄、銅、ニッケル、クロム等の遷移金属の含有量は100 ppm以下にすることが好ましい。これにより、高温環境下での長期信頼性、放熱性を飛躍的に向上させることが可能となる。金属製容器は、肉厚が0.5mm以下であることが好ましく、肉厚が0.2mm以下であることがより好ましい。
【0068】
(正極端子)
正極端子は、リチウムイオン金属に対する電位が3.0V以上4.5V以下の範囲において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成される。アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiのような元素を含むアルミニウム合金から形成されることが好ましい。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
【0069】
(負極端子)
負極端子は、リチウムイオン金属に対する電位が1.0V以上3.0V以下の範囲において電気的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成される。アルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,Siのような元素を含むアルミニウム合金から形成されることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
【0070】
上記の実施形態によれば、入出力特性が向上された非水電解質電池を提供することができる。
【0071】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る電池パックについて、図面を参照して説明する。電池パックは、上記第2実施形態に係る非水電解質電池(単電池)を1個又は複数有する。複数の単電池を含む場合、各単電池は、電気的に直列もしくは並列に接続して配置される。
【0072】
図3及び図4に、扁平型電池を複数含む電池パックの一例を示す。図3は、電池パック20の分解斜視図である。図4は、図3の電池パック20の電気回路を示すブロック図である。
【0073】
複数の単電池21は、外部に延出した正極端子18及び負極端子19が同じ向きに揃えられるように積層され、粘着テープ22で締結することにより組電池23を構成している。これらの単電池21は、図4に示すように互いに電気的に直列に接続されている。
【0074】
プリント配線基板24は、正極端子18及び負極端子19が延出する単電池21側面と対向して配置されている。プリント配線基板24には、図4に示すようにサーミスタ25、保護回路26及び外部機器への通電用端子27が搭載されている。なお、組電池23と対向するプリント配線基板24の面には組電池23の配線と不要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
【0075】
正極側リード28は、組電池23の最下層に位置する正極端子18に接続され、その先端はプリント配線基板24の正極側コネクタ29に挿入されて電気的に接続されている。負極側リード30は、組電池23の最上層に位置する負極端子19に接続され、その先端はプリント配線基板24の負極側コネクタ31に挿入されて電気的に接続されている。これらのコネクタ29,31は、プリント配線基板24に形成された配線32,33を通して保護回路26に接続されている。
【0076】
サーミスタ25は、単電池21の温度を検出するために用いられ、その検出信号は保護回路26に送信される。
【0077】
保護回路26は、所定の条件で保護回路26と外部機器への通電用端子27との間のプラス側配線34a及びマイナス側配線34bを遮断できる。所定の条件とは、例えばサーミスタ25の検出温度が所定温度以上になったときである。或いは、所定の条件とは、単電池21の過充電、過放電、過電流等を検出したときである。この過充電等の検出は、個々の単電池21について行われてもよく、或いは、複数の単電池21全体について行われてもよい。個々の単電池21を検出する場合、電池電圧を検出してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検出してもよい。後者の場合、個々の単電池21中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。図3及び図4の場合、単電池21それぞれに電圧検出のための配線38を接続し、これら配線38を通して検出信号が保護回路26に送信される。本実施形態の電池パックに備えられる電池は、電池電圧の検知による正極又は負極の電位の制御に優れるため、電池電圧を検知する保護回路が好適に用いられる。
【0078】
正極端子18及び負極端子19が突出する側面を除く組電池23の三側面には、ゴムもしくは樹脂からなる保護シート35がそれぞれ配置されている。
【0079】
組電池23は、各保護シート35及びプリント配線基板24と共に収納容器36内に収納される。すなわち、収納容器36の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の一方の内側面それぞれに保護シート35が配置され、短辺方向の他方の内側面にプリント配線基板24が配置される。組電池23は、保護シート35及びプリント配線基板24で囲まれた空間内に位置する。蓋37は、収納容器36の上面に取り付けられている。
【0080】
なお、組電池23の固定には粘着テープ22に代えて、熱収縮テープを用いてもよい。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて組電池を結束させる。
【0081】
図3、図4では単電池21を直列接続した形態を示したが、電池容量を増大させるためには並列に接続しても、又は直列接続と並列接続を組み合わせてもよい。組み上がった電池パックをさらに直列、並列に接続することもできる。
【0082】
上記の実施形態によれば、入出力特性が向上された電池パックを提供することができる。電池パックの態様は用途により適宜変更される。電池パックの用途は、大電流を取り出したときに優れたサイクル特性を示すものが好ましい。具体的には、デジタルカメラの電源用や、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車等の車載用が挙げられる。特に、車載用が好適である。
【実施例】
【0083】
(実施例1)
<電極の作製>
単斜晶系β型チタン複合酸化物と、カーボンブラックと、黒鉛と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、N−メチルピロリドン(NMP)に溶解して電極作製用スラリーを調製した。単斜晶系β型チタン複合酸化物、カーボンブラック、黒鉛、PVdFはそれぞれ、100質量部、5質量部、2.5質量部、7.5質量部の割合で配合した。このスラリーを、アルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより電極を作製した。
【0084】
単斜晶系β型チタン複合酸化物は、一次粒子の平均粒径が1 μm以下であり、凝集粒子の平均粒径が約10 μmである粉末を用いた。
【0085】
作製した電極を、Cu−Kα線源を用いた粉末X線回折法によって測定した。測定は次のように行う。電池から電極を取り出す際には、はじめに電池を放電状態とする。放電状態とは例えばその電池の推奨下限電圧に達するまで電池を放電した状態である。放電状態の電池を不活性雰囲気(例えばアルゴン雰囲気)で電池の外装部材から電極群を取り出す。電極群を解体し電極だけをとりだし、取り出した電極をX線回折パターンの測定に用いるガラス板の大きさに合うように所定の大きさに切り取る。切り取った電極を例えばメチルエチルカーボネート溶媒で洗浄して電極中のLi塩を溶かし、洗浄後の電極を減圧乾燥し溶媒をとばす。乾燥後の電極を測定用ガラス板にとりつけX線回折測定を実施する。
【0086】
上記の方法によって測定した結果、ピーク強度比I(020)/I(001)は0.9であった。また、電極密度は2.05 g/cm3であった。
【0087】
<評価用セルの作製>
乾燥アルゴン中で評価用セルを作製した。上記で作製した電極を作用極として用い、Li金属を対極として用いた。これらを、グラスフィルター(セパレータ)を介して対向させ、作用極及び対極に接触しないように、リチウム金属からなる参照極を挿入した。
【0088】
上記の部材を3極式ガラスセルに入れ、作用極、対極、参照極の夫々をガラスセルの端子に接続し、電解液を注ぎ、セパレータと電極に充分に電解液が含浸された状態で、ガラス容器を密閉した。なお、電解液の溶媒にはエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)を体積比率1:2で混合した混合溶媒を用いた。電解質にはLiPF6を用いた。混合溶媒にLiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解させて電解液を調製した。
【0089】
(実施例2)
プレス圧を調整し、ピーク強度比I(020)/I(001)を0.69とし、電極密度を2.25 g/cm3とした以外は、実施例1と同様に評価用セルを作製した。
【0090】
(実施例3)
プレス圧を調整し、ピーク強度比I(020)/I(001)を0.60とし、電極密度を2.33 g/cm3とした以外は、実施例1と同様に評価用セルを作製した。
【0091】
(実施例4)
プレス圧を調整し、ピーク強度比I(020)/I(001)を1.17とし、電極密度を1.23 g/cm3とした以外は、実施例1と同様に評価用セルを作製した。
【0092】
(実施例5)
単斜晶系β型チタン複合酸化物と、カーボンブラックと、黒鉛と、カルボキシメチルセルロース(CMC)と、スチレンブタジエンゴム(SBR)を、水に溶解して電極作製用スラリーを調製した。単斜晶系β型チタン複合酸化物、カーボンブラック、黒鉛、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)はそれぞれ、
100質量部、5質量部、2.5質量部、3質量部、3質量部の割合で配合した。このスラリーを、アルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより電極を作製した。なお、CMCは増粘剤として用いた。
【0093】
作製した電極を、Cu−Kα線源を用いた粉末X線回折法によって測定したところ、ピーク強度比I(020)/I(001)は0.71であった。また、電極密度は2.30 g/cm3であった。
【0094】
(実施例6)
プレス圧を調整し、ピーク強度比I(020)/I(001)を0.61とし、電極密度を2.50 g/cm3とした以外は、実施例5と同様に評価用セルを作製した。
【0095】
(実施例7)
プレス圧を調整し、ピーク強度比I(020)/I(001)を1.20とし、電極密度を1.60 g/cm3とした以外は、実施例5と同様に評価用セルを作製した。
【0096】
(比較例1)
プレス圧を調整し、ピーク強度比I(020)/I(001)を0.52とし、電極密度を2.43 g/cm3とした以外は、実施例5と同様に評価用セルを作製した。
【0097】
(比較例2)
プレス圧を調整し、ピーク強度比I(020)/I(001)を0.56とし、電極密度を2.54 g/cm3とした以外は、実施例5と同様に評価用セルを作製した。
【0098】
(実施例8)
平均粒径が約10 μmである、一次粒子の状態の単斜晶系β型チタン複合酸化物を用いた以外は、実施例1と同様に評価用セルを作製した。ピーク強度比I(020)/I(001)は0.71であった。電極密度は2.00 g/cm3であった。
【0099】
(実施例9)
プレス圧を調整し、ピーク強度比I(020)/I(001)を1.02とし、電極密度を1.30 g/cm3とした以外は、実施例8と同様に評価用セルを作製した。
【0100】
(実施例10)
プレス圧を調整し、ピーク強度比I(020)/I(001)を0.60とし、電極密度を2.11 g/cm3とした以外は、実施例8と同様に評価用セルを作製した。
【0101】
(比較例3)
プレス圧を調整し、ピーク強度比I(020)/I(001)を0.48とし、電極密度を2.23 g/cm3とした以外は、実施例8と同様に評価用セルを作製した。
【0102】
<ガラスセルの充放電試験>
作製したセルを用いて、25℃環境において充放電試験を行った。0.2C放電容量と、3C放電容量を測定し、0.2C放電容量に対する3C放電容量の割合を3C/0.2C容量比(%)として表1に記載した。このとき充電はいずれも1Cで行った。ここで1Cとは活物質重量あたりの容量240mAh/gを1時間で充電および放電する電流値を表す。充電は定電流定電圧モードで行い、電圧が1.0 vs. Li/Li+となった時点で定電圧充電になり、電流値が0.05 Cの電流値となった点で充電を終了する。放電は定電流モードで行い、放電終止電圧は3.0 V vs. Li/Li+とした。また、表1には3C放電容量(mAh/cm3)を示した。
【表1】

【0103】
実施例1〜4は比較例1と比べて容量比が高かった。よって、実施例1〜4のように、ピーク強度比I(020)/I(001)が0.6以上であることにより、入出力特性に優れることが示された。一方、比較例1は、ピーク強度比I(020)/I(001)が0.52と小さく、単斜晶系β型チタン複合酸化物の(020)面が減少していることが示されている。その結果、リチウムの挿入脱離が起こりにくくなり、容量比が低下したものと考えられる。
【0104】
また、実施例1〜3は、電極密度が2.0 g/cm3未満である実施例4と比較して、3Cにおける体積あたりの放電容量が高かった。このことから、電極密度が2.0 g/cm3以上であると高いエネルギー密度が得られることが示された。
【0105】
比較例1は、電極密度が2.0 g/cm3以上であるものの、電極密度が近い実施例3と比べて3C放電容量が小さかった。これは、I(020)/I(001)が小さいことにより入出力特性が劣るためと考えられる。
【0106】
実施例5〜7は比較例2と比べて容量比が高かった。よって、実施例5〜7のように、ピーク強度比I(020)/I(001)が0.6以上であることにより、入出力特性に優れることが示された。一方、比較例2は、ピーク強度比I(020)/I(001)が0.56と小さく、単斜晶系β型チタン複合酸化物の(020)面が減少していることが示されている。その結果、リチウムの挿入脱離が起こりにくくなり、容量比が低下したものと考えられる。
【0107】
また、実施例5〜6は、電極密度が2.0 g/cm3未満である実施例7と比較して、3C放電容量が高かった。このことから、電極密度が2.0 g/cm3以上であると高いエネルギー密度が得られることが示された。
【0108】
比較例2は、電極密度が2.0 g/cm3以上であるものの、同程度の電極密度を有する実施例6と比べて3C放電容量が小さかった。これは、I(020)/I(001)が小さいことにより入出力特性が劣るためと考えられる。
【0109】
また、結着剤としてSBRを用いた実施例5〜7は、結着剤としてPVdFを用いた実施例1〜4と比較して、同程度のピーク強度比I(020)/I(001)を有する場合であっても電極密度が高かった。よって、結着剤としてSBRを用いることにより、ピーク強度比I(020)/I(001)に与える影響を低減しながら電極密度を上昇できることが示された。
【0110】
また、実施例8〜10は比較例3と比べて容量比が高かった。よって、一次粒子の形態である単斜晶系β型チタン複合酸化物を用いた場合においても、I(020)/I(001)が0.6以上であることで、高い入出力特性が得られることが示された。
【0111】
また、実施例8及び10は、電極密度が2.0 g/cm3未満である実施例9と比較して、3C放電容量が高かった。このことから、電極密度が2.0 g/cm3以上であると高いエネルギー密度が得られることが示された。
【0112】
比較例3は、電極密度が2.0 g/cm3以上であるものの、比較的近い電極密度を有する実施例10と比べて3C放電容量が小さかった。これは、I(020)/I(001)が小さいことにより入出力特性が劣るためと考えられる。
【0113】
<電極密度とエネルギー密度の関係>
実施例1〜10及び比較例1〜3の電極密度と3C放電容量(mAh/cm3)の関係を図5に示した。図5から、電極密度が高いほど3C放電容量が高い傾向があることが分かる。特に電極密度が2.0 g/cm3以上2.5 g/cm3以下の範囲において高い放電容量が得られることが示されている。
【0114】
<粉末X線回折測定>
図6に、実施例1で作製した電極と、比較例1で作製した電極の粉末X線回折図を示した。測定は、Cu−Kα線源を用い、上記で説明したように行った。図5において、(020)面に由来するピークは2θが48.0〜49.0°の範囲に表れており、(001)面に由来するピークは2θが13.8〜14.8°の範囲に表れている。実施例1は、比較例1よりも(020)面に由来するピークが大きく、これによって、比較例1よりも高いピーク強度比I(020)/I(001)が得られている。
【0115】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0116】
1…電池、2…外装部材、3…捲回電極群、4…正極、4a…正極集電体、4b…正極活物質層、5…負極、5a…負極集電体、5b…負極活物質層、6…セパレータ、7…正極端子、8…負極端子、20…電池パック、21…電池単体、22…組電池、23…粘着テープ、24…プリント配線基板、25…サーミスタ、26…保護回路、27…端子、28…正極側配線、29…正極側コネクタ、30…負極側配線、31…負極側コネクタ、31a…プラス側配線、31b…マイナス側配線、32,33…配線、35…保護シート、36…収納容器、37…蓋。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、前記集電体上に配置される活物質層と、を含む非水電解質電池用電極であって、
前記活物質層は単斜晶系β型チタン複合酸化物を含み、
前記電極は、Cu−Kα線源を用いた粉末X線回折法によって得られるピークの強度比I(020)/I(001)が下式(I)を満たす、非水電解質電池用電極:
0.6≦I(020)/I(001)≦1.2 (I)
式中、
I(020)は、前記電極を前記粉末X線回折法により測定した時に得られる、単斜晶系β型チタン複合酸化物の(020)面に由来するピークの強度であり、
I(001)は、前記電極を前記粉末X線回折法により測定した時に得られる、単斜晶系β型チタン複合酸化物の(001)面に由来するピークの強度である。
【請求項2】
電極密度が2.0 g/cm3以上2.5 g/cm3以下であること特徴とする請求項1に記載の非水電解質電池用電極。
【請求項3】
さらにスチレンブタジエンゴムを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の非水電解質電池用電極。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電極を負極として含み、さらに、正極と、非水電解質とを含むことを特徴とする非水電解質電池。
【請求項5】
請求項4に記載の非水電解質電池を含むことを特徴とする電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−69429(P2013−69429A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205304(P2011−205304)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】