説明

非燃焼式線香器

【課題】実際の線香と同様な太さの疑似線香細管の上端部より、実際の線香の燃焼時と同様な白煙を発生されることができ、しかも疑似線香細管が過熱することもなく、仏具としても興趣に富んだ電熱加熱式の非燃焼式線香器を提供すること。
【解決手段】線香立てとなる香炉状容器(2)と、香炉状容器の上面に立設された線香状細管(3)と、不燃性保湿体(41)に含ませた香料液体を電熱加熱によって気化させることにより、香気を含む白煙状水蒸気(V)を発生させる気化器(4)と、所定風量の送風が可能なモータ式送風機(6)と、気化器上方の所定容量の空間を囲むように形成され、気化器から発生する白煙状水蒸気を閉じこめると共に、その下部には前記送風機の送風口と連通する流入口(51)が、またその上部には前記線香状細管と連通する流出口(3b)がそれぞれ設けられた水蒸気チャンバ(5)とを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、着火燃焼によることなく、線香の燃焼時と同様な白煙と香気とを生成できる非燃焼式線香器に関する。
【背景技術】
【0002】
着火燃焼によることなく、線香の燃焼時と同様な白煙と香気とを生成できるようにして、防火安全性や使い勝手を向上させた非燃焼式線香器は、従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。この非燃焼式線香器は、香炉状容器内に収容された香料瓶から突出する吸い上げ軸の上端部を香炉灰中に臨ませ、これを電熱加熱することにより白煙状の水蒸気を発生させるものである。
【0003】
しかしながら、上述の非燃焼式線香器にあっては、白煙それ自体は、疑似線香の先端からではなく、香炉の灰中に置かれた水蒸気発生源から立ち昇るものであるから、実際の線香燃焼時とは白煙発生の様子が幾分異なり、今ひとつ、仏事における趣に欠けると言う問題点があった。
【0004】
そこで、実際の線香燃焼時と同様に、線香の燃焼時と同様な白煙が、疑似線香の先端から立ち昇るようにした非燃焼式線香器も、既に、開発されている(例えば、特許文献2参照)。この非燃焼式線香器は、疑似線香となる細管内に線状導液部材を挿入すると共に、その下端を香炉状容器内に収容された香料瓶内の香料液体中に浸漬させ、その状態で線状導液部材の上端部又は疑似線香細管そのものを電熱加熱することにより、疑似線香となる細管の先端から水蒸気の白煙を発生されるものである。
【0005】
しかしながら、上述の細管内加熱方式による非燃焼式線香器にあっては、線状導液媒体の上端部を電熱線にて加熱又は疑似線香細管それ自体を電熱加熱するものであるから、疑似線香細管そのものの温度も、相当に高い温度にまで達することとなって、使用者に火傷を負わせる危険があり、また内部に線状導液媒体を挿入する関係から、疑似線香細管の太さが実際の線香よりもかなり太いものとなり、仏具として趣に欠けると言う問題点があった。
【0006】
なお、線香の燃焼時と同様な白煙が、疑似線香の先端から立ち昇るようにした非燃焼式線香器としては、超音波振動子を用いて水を霧化させるものも提案されている(例えば、特許文献3参照)。この非燃焼式線香器は、香炉状容器内に収容された超音波発生装置にて香料液体を霧化させると共に、こうして得られた霧を、香炉上に立設された線香状細管中を下から上へと流しつつ、上端開口から外部へと放出するようにしたものである。
【0007】
しかしながら、上述の超音波利用の非燃焼式線香器にあっては、超音波振動子により霧化された霧は、加熱により得られた水蒸気とは異なり、それ自体では上昇気流を生じにくいことから、線香状細管内に下から上へと流し込むことが難しく、加えて、線香状細管の上端開口より放出した際の煙がたなびく様子も実際の線香からの煙とはかなり趣が異なる他、線香状細管から放出された霧は直ぐに水滴化して周囲を濡らすと言った様々な問題点があった。
【0008】
なお、加熱型芳香器において、芳香成分の発散力を強めるためにファンを発散孔の内側に設けることは従来より知られている(例えば、特許文献4、第16頁、第7〜10行参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−80054号公報
【特許文献2】特開2002−272830号公報
【特許文献3】特開2005−177230号公報
【特許文献4】実開昭61−130234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、従来の非燃焼式線香器における上述の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、実際の線香と同様な太さの疑似線香細管の上端部より、実際の線香の燃焼時と同様な白煙を発生されることができ、しかも疑似線香細管が過熱することもなく、仏具としても興趣に富んだ電熱加熱式の非燃焼式線香器を提供することにある。
【0011】
この発明のさらに他の目的、並びに、作用効果については、明細書の以下の記述を参照することにより、当業者で有れば容易に理解される筈である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の技術的な課題は、以下の構成を有する非燃焼式線香器により解決することができるものと考えられる。
【0013】
すなわち、本発明の非燃焼式線香器は、線香立てとなる香炉状容器と、前記香炉状容器の上面に立設された線香状細管と、前記香炉状容器内にあって、不燃性保湿体に含ませた香料液体を電熱加熱によって気化させることにより、香気を含む白煙状水蒸気を発生させる気化器と、前記香炉状容器内にあって、所定風量の送風が可能なモータ式送風機と、前記香炉状容器内にあって、前記気化器上方の所定容量の空間を囲むように形成され、前記気化器から発生する白煙状水蒸気を閉じこめると共に、その下部には前記送風機の送風口と連通する流入口が、またその上部には前記線香状細管と連通する流出口がそれぞれ設けられた水蒸気チャンバとを包含し、それにより、前記水蒸気チャンバ内に、前記下部流入口から前記上部流出口へと向かう空気の流れを形成しつつ、前記気化器から白煙状水蒸気を発生させることにより、前記白煙状水蒸気を前記空気の流れに乗せて、前記線香状細管の上端開口より外部へと放出する、ことを特徴とするものである。
【0014】
このような構成によれば、気化器から発生する白煙状水蒸気は、下部流入口から上部流出口へと向かう空気の流れに乗って水蒸気チャンバ内を運ばれつつ、白煙状態を維持したままで、上部流出口から線香状細管内へとスムーズに送り込まれる結果、実際の線香と同様な太さの線香状細管であっても、白煙状水蒸気はその内部をスムーズに通過するから、線香状細管の上端部からは、実際の線香の燃焼時と同様な白煙が絶え間なく放出されることとなり、しかも熱源は線香状細管側には存在しないため、線香状細管が過熱することもなく、仏具としても極めて興趣に富んだ電熱加熱式の非燃焼式線香器を実現することができる。
【0015】
また、気化器から発生する白煙状の水蒸気は、香炉状容器内に広く拡散することなく、水蒸気チャンバ内に閉じ込められて白煙状態を維持したままで、線香状細管へと送り込まれるため、送風機の制御により下部流入口から流入する空気量を増減して、白煙状水蒸気と流入空気との混合比を調整することにより、流入空気量を少なめにして白煙濃度を増加させたり、逆に、流入空気量を多めにして香気拡散量を増加させる等の制御を容易に行うことができる。
【0016】
本発明にあっては、前記香料液体が適宜に満たされ、かつ吸い上げ軸が内部に挿入された香料瓶と、前記香料瓶の口から突出する吸い上げ軸と、前記気化器の不燃性保湿体との間に介在され、前記吸い上げ軸から前記不燃性保湿体へと、前記香料液体を毛細管現象により導くための導液媒体とをさらに有し、それにより、前記香料瓶から前記気化器へと香料液体を前記導液媒体を介して連続的に供給する、ようにしてもよい。
【0017】
このような構成によれば、香料液体を必要量だけ香料瓶に満たしておくことにより、気化器からの水蒸気の発生を所望の期間だけ継続させることができ、また香料瓶への香料液体の補給や香料瓶単位での香料交換により、水蒸気発生期間の延長乃至香料種類の変更などにも容易に対応可能となる。
【0018】
このとき、前記導液媒体が、不燃性材料から成る円筒状枠体と、前記円筒状枠体の底面と周面とを覆うようにして被着された導液性シートとからなると共に、その底面を前記香料瓶から突出する吸い上げ軸の上端面に接触させるようにして配置されており、かつ前記気化器の不燃性保湿体が直棒状であって、前記円筒状枠体の上面に、その直径方向に延在させて、相対向する上縁部間に架け渡されており、それにより、前記香料瓶から吸い上げられた香料液体は、前記吸い上げ軸と接する底面の導液性シートを介して前記底面を放射状に伝ったのち、同周面の導液性シートを介して前記周面の全周を下から上へと伝って、円筒体の上縁部全周へと至り、しかるのち、気化器を構成する直棒状保湿体の全体へとその両端部から染み渡る、ようにしてもよい。
【0019】
このような構成によれば、毛細管現象による導液経路の路幅増大により、香料瓶から気化器への香料伝達効率を向上させることができると共に、気化器を構成する直棒状保湿体に対する香料液体の補充については最適化され、白煙状水蒸気の発生を効率よく継続することができる。
【0020】
なお、前記円筒状枠体の底面及び周面に被着される導液性シートが金属製メッシュテープとすれば、十分な毛細管現象を生じさせることができると共に、前記円筒状枠体周囲への被覆作業が容易となる。
【0021】
また、前記気化器の直棒状保湿体が、紙縒状のガラス繊維を束ねて直棒状に整形してなるものとすれば、十分な不燃性を確保しつつ、導液媒体から到来する香料液体を効率よく取り込んでその内部に保持することができる。
【0022】
本発明の非燃焼式線香器にあっては、前記気化器及び前記送風機の運転時間を制御するタイマをさらに有する、ものであってもよい。
【0023】
このような構成によれば、香気を含んだ白煙状水蒸気の発生開始から発生終了に至る動作を自動的に管理することできる。
【0024】
このとき、前記タイマの運転時間を2以上の運転時間に切り換えるためのスイッチをさらに有する、ものであってもよい。
【0025】
このような構成によれば、自動管理される運転継続時間を予め設定された2以上の運転時間から選択することができる。
【0026】
本発明の非燃焼式線香器にあっては、前記送風機の風量を2以上の風量に切り換えるためのスイッチをさらに有する、ものであってもよい。
【0027】
このような構成によれば、送風機の風量を予め設定された2以上の風量から選択することができる。特に、このとき、風量を少なめに設定して、白煙状水蒸気に対する混入空気量を少なめとすれば、線香状細管から放出される白煙状水蒸気の濃度(白さ)は増すこととなり、逆に、風量を多めに設定して、白煙状水蒸気に対する混入空気量を多めとすれば、線香状細管から放出される白煙状水蒸気は濃度は減じるものの量は増すこととなり、結果として、香気の拡散が増すこととなる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、気化器から発生する白煙状水蒸気は、下部流入口から上部流出口へと向かう空気の流れに乗って水蒸気チャンバ内を運ばれつつ、白煙状態を維持したままで、上部流出口から線香状細管内へとスムーズに送り込まれる結果、実際の線香と同様な太さの線香状細管であっても、白煙状水蒸気はその内部をスムーズに通過するから、線香状細管の上端部からは、実際の線香の燃焼時と同様な白煙が絶え間なく放出されることとなり、しかも熱源は線香状細管側には存在しないため、線香状細管が過熱することもなく、仏具としても極めて興趣に富んだ電熱加熱式の非燃焼式線香器を実現することができる。
【0029】
また、気化器から発生する白煙状の水蒸気は、香炉状容器内に広く拡散することなく、水蒸気チャンバ内に閉じ込められて白煙状態を維持したままで、線香状細管へと送り込まれるため、送風機の制御により下部流入口から流入する空気量を増減して、白煙状水蒸気と流入空気との混合比を調整することにより、流入空気量を少なめにして白煙濃度を増加させたり、逆に、流入空気量を多めにして香気拡散量を増加させる等の制御を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】非燃焼式線香器の外観斜視図である。
【図2】非燃焼式線香器のII-II線断面図である。
【図3】気化器と導液媒体との関係を示す分解斜視図である。
【図4】香料瓶の吸い上げ軸から気化器へ至る香料液体の伝わる経路を説明するための模式図である。
【図5】回路構成の全体を示すハードウェアブロック図である。
【図6】マイクロプロセッサに組み込まれる制御プログラムの構成を概略的に示すフローチャート(その1)である。
【図7】マイクロプロセッサに組み込まれる制御プログラムの構成を概略的に示すフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明に係る非燃焼式線香器の好適な実施の一形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
図1及び図2に示されるように、本発明に係る非燃焼式線香器1は、線香立てとなる香炉状容器2と、香炉状容器2の上面に立設された線香状細管3とを有する。
【0033】
図示の香炉状容器2は、3本の脚を有する円形の壺状に形成されているが、勿論、その形状はこれに限定されるものではなく、角形、楕円形等々、線香立てと成り得る任意の香炉形状を採用することができる。この香炉状容器2は、図2に示されるように、内部は中空であって、天板2bを僅かに凹ませることにより灰受け皿が形成され、この灰受け皿には疑似灰12が満たされている。
【0034】
線香状細管3は、この例では、1本とされているが、その本数は2本以上でもよいことは勿論である。また、線香状細管3の太さ及び長さは、実際の線香の太さとほぼ同径のものであってもよく、例えば外径1.6mm〜2.8mm、長さ100mm〜180mmの範囲のものを使用することができる。その材質は、耐熱性や不燃性を要求されないことから、金属でもプラスチックでもよく、この例では、外径2mm、肉厚0.4mm、長さ14mmのアルミ管が使用されている。
【0035】
一方、香炉状容器2の内部には、図2に示されるように、不燃性保湿体に含ませた香料液体を電熱加熱によって気化させることにより、香気を含む白煙状水蒸気を発生させる気化器4と、所定風量の送風が可能なモータ式送風機6と、気化器4上方の所定容量の空間を囲むように形成され、気化器4から発生する白煙状水蒸気を閉じこめると共に、その下部には送風機の送風口と連通する流入口51aが、またその上部には線香状細管3と連通する流出口3bがそれぞれ設けられた水蒸気チャンバ5とが存在する。
【0036】
気化器4は、この例にあっては、外部から香料液体が常に補給される形式のものが採用されている。すなわち、気化器4の下方には、香料液体が適宜に満たされ、かつ吸い上げ軸(一般に「メルト」とも称する)71が内部に挿入された香料瓶7と、香料瓶7の口7aから突出する吸い上げ軸71と、気化器4の不燃性保湿体41との間に介在され、吸い上げ軸71から不燃性保湿体41へと、香料液体を毛細管現象により導くための導液媒体8とが存在し、それにより、香料瓶7から気化器4へと香料液体を導液媒体8を介して連続的に供給するように構成されている。
【0037】
香料瓶7は、この例では、交換が容易なように、容器2の外部から底板2aに明けた孔へとねじ7bによるネジ込み式で装着されると共に、円形断面を有する縦型瓶が採用され、その材質としては、香料液体の残量確認を容易とするためには、透明なガラスやプラスチック等が好ましい。これに合わせて、吸い上げ軸71の断面も円形とされている。また、香料瓶7の容量は、少なくとも予定の使用期間(例えば、7日〜90日)の間、香料液体の補充乃至瓶交換が不要なように、5ml〜35ml程度の大きさとすることが好ましい。さらに、これに挿入される吸い上げ軸71としては、十分な吸い上げ量を確保するために、外径3mm〜10mmとすることが好ましい。
【0038】
導液媒体8は、この例にあっては、図3に示されるように、例えばセラミック等の不燃性材料から成る有底の円筒状枠体81と、円筒状枠体81の底面81aと周面81bとを覆うようにして被着された導液性シート82とからなると共に、その底面を香料瓶7から突出する吸い上げ軸71の上端面に密に接触させるようにして配置されている。
【0039】
一方、気化器4の不燃性保湿体41は、この例にあっては、図3に示されるように、直棒状であって、円筒状枠体81の上面に、その直径方向に延在させて、相対向する上縁部81c,81c間に切欠81d.81dに嵌合するようにして、架け渡されている。この直棒状の不燃性保湿体41の周囲には、電熱加熱のための電熱線42が巻き付けられている。
【0040】
そのため、図4に示されるように、香料瓶7から吸い上げられた香料液体は、吸い上げ軸71と密に接する底面の導液性シート82aを介して前記底面を毛細管現象にて放射状に伝ったのち(矢印L1参照)、同周面の導液性シート82bを介して前記周面の全周を下から上へと毛細管現象にて伝って、円筒体の上縁部81c全周へと至り(矢印L2参照)、しかるのち、気化器4を構成する直棒状保湿体41の全体へとその両端部から毛細管現象にて効率よく染み渡り(矢印L3参照)、しかるのち、電熱線42への通電による発熱により加熱されて、香気を含んだ白煙状の水蒸気に変換される。
【0041】
この例にあっては、円筒状枠体81の底面及び周面に被着される導液性シート82としては、金属製メッシュテープが採用されているので、強度並びに弾性に優れ、吸い上げ軸71との密着性が良好となる利点がある。
【0042】
また、この例にあっては、気化器4の直棒状保湿体41としては、紙縒状のガラス繊維を束ねて断面ほぼ円形の直棒状に整形してなるものが採用されているので、不燃性を満足させると共に、十分な量の香料液体を含浸させることができる。
【0043】
このようにして気化器41を一体に取り付けられた導液媒体8は、図示しない、接着剤又はビス等の結合具等の固着手段を介して、後述する水蒸気チャンバのチャンバ壁51の下端部に取り付けられている。
【0044】
なお、図4においては、円筒状枠体81と導液性シート82との関係を誇張するために、チャンバ壁51と導液媒体8との間には隙間が存在するように描かれているが、実際には、送風機6からの流入空気Aや気化器4から発生する水蒸気Vが水蒸気チャンバ5から漏れ出すことがないように、両者間は密に接合される。
【0045】
本発明の要部である水蒸気チャンバ5は、この例にあっては、香炉状容器2の天板2aの下面に垂直下向きに取り付けられた金属製の円筒状チャンバ壁51の下端開口を、気化器41を一体に取り付けられた導液媒体8により塞ぐことにより構成されている。すなわち、気化器4の上方空間は、円筒状チャンバ壁51により囲まれることとなり、これにより所定容量の水蒸気チャンバ5が出現することとなる。
【0046】
水蒸気チャンバ5の上部には、この例では、天板2bを貫通して線香状細管3の下端部が挿入されており、この下端部がそのまま本発明の空気流出口3bとして機能することとなる。また、水蒸気チャンバ5の下部チャンバ壁51には、この例では、送風機6の送風口に連通する送風管61の接続孔が設けられており、この接続孔がそのまま本発明の空気流入口51aとして機能することとなる。
【0047】
水蒸気チャンバ5の容量は、気化器4から発生する白煙状水蒸気Vの発生量や送風機6から流入する空気量、並びに、線香状細管3の上端開口3aから発生する白煙状水蒸気の濃度(白色度)を考慮して決定される。この例にあっては、水蒸気チャンバ5の容量は1ml〜2ml程度に設定されている。
【0048】
いずれにしても、このような水蒸気チャンバ5が存在しなければ、送風機6から香炉状容器2内へと送風機6で空気を流入させると、気化器4から発生する白煙状水蒸気Vは、香炉状容器2内の広い空間内を滞留する間に、白色度が薄れて霞んでしまい、線香状細管3の上端開口3aから十分なる濃度(白色度)を有する白煙状水蒸気を放出させることが困難となる。
【0049】
なお、送風機6としては、気化器4から発生する白煙状水蒸気Vと適度に混合され、かつ実際の線香燃焼時に発生する白煙と同様な白煙を線香状細管3の上端開口3aから立ち昇らせる程度の適度の微風を送出できるファンモータを採用することができる。
【0050】
送風機6から水蒸気チャンバ5の内部へと空気を送り込むための構造としては、この例では、ゴム製又はプラスチック製のフレキシブルチューブにより、送風機6の送風口とチャンバ壁51の接続孔との間を結ぶものが採用されているが、その他、送風機6の送風口とチャンバ壁51の接続孔とを直結する等の任意の構成を採用することができる。
【0051】
また、線香状細管3と水蒸気チャンバ5とを連通するための構成についても、線香状細管3bの下端部を天板2bに貫通させるものに限定されず、例えば、チャンバ壁51に設けた接続孔に線香状細管3の下端部と連通する管路又はチューブを介在させる等々、任意に構成を採用することができる。
【0052】
さらに、チャンバ壁51についても、上下が開放された円筒状のものに限らず、気化器を収容する密閉状の任意の箱体であって、その上下に、流入口と流出口が存在するものであれば、任意の形状のものを採用することができる。
【0053】
次に、電気的な構成について説明する。この例に示される非燃焼式線香器1の電気的な主たる要素部品としては、気化器4を構成するヒータである電熱線42と、送風機6のモータ104a(図5参照)と、香炉状容器2の側面に取り付けられた電源スイッチ10と、香炉状容器2の底面に取り付けられた4ビット(b1〜b4)のDIPスイッチ11とを挙げることができる。ここで、DIPスイッチ11は、運転時間の切り換えや送風強度の切り換えに使用される。これらの要素部品は、図示しない、リード線を介して、香炉状容器2に内蔵された電気ユニット9内の回路基板へと電気的に接続されている。電気ユニット9内には、電源手段が収容されている。電源手段としては、通常の乾電池等の一次電池、リチウム電池等の二次電池の他、商用電源からコードで交流給電する場合には、AC/DC変換器並びに直流安定化ユニット等が採用され、その他、AC/DCアダプタを介して直流電源をコードで給電する場合には、直流安定化ユニットで構成される。持ち運びの便からは、電源手段としては電池が好ましい。
【0054】
回路基板に搭載された回路構成の全体を示すハードウェアブロック図が、図5に示されている。同図に示されるように、回路構成の全体は、回路全体を統括制御するマイクロプロセッサ101と、マイクロプロセッサ101からの制御で電熱線42を駆動するヒータドライバ102と、マイクロプロセッサ101からの制御で所定の3種類のタイマ時間(短時間、中時間、長時間)をカウントするタイマ用カウンタ103と、マイクロプロセッサ101からの制御で送風機6の送風量を所定の3種類の送風量(強風、中風、弱風)に切り換えて送風機6を駆動することができる送風機ドライバ104と、タイマ時間の設定に割り当てられた2ビット(b1,b2)と送風量に割り当てられた2ビット(b3,b4)とを有するDIPスイッチ11とから構成されている。
【0055】
マイクロプロセッサに組み込まれる制御プログラムの構成を概略的に示すフローチャート(その1)が図6に、同(その2)が図7にそれぞれ示されている。
【0056】
図6において、電源スイッチ10の投入により処理が開始されると、先ず、イニシャライズ処理により、各種の制御用フラグやレジスタ等の初期設定が行われたのち(ステップ201)、DIPスイッチ11の出力を読み込み(ステップ202)、設定時間(b1,b2)のチェックを行う(ステップ203)。
【0057】
ここで、設定時間の内容が、長時間(b1,b2=0,1)、中時間(b1,b2=1,0)、又は短時間(b1,b2=1,1)と判定されると(ステップ204YES、205YES、又は206YES)、タイマカウンタの値は長時間(ステップ207)、中時間(ステップ208)、又は短時間(ステップ206)にそれぞれ設定される。
【0058】
続いて、図7に移って、DIPスイッチ11の出力に基づいて、設定風量(b3,b4)のチェックを行う(ステップ210)。
【0059】
ここで、設定風量の内容が、強風(b3,b4=0,1)、中風(b3,b4=1,0)、又は弱風(b3,b4=1,1)と判定されると(ステップ211YES、212YES、又は213YES)、送風機ドライバの送風強度の値は強風(ステップ214)、中風(ステップ215)、又は弱風(ステップ216)にそれぞれ設定される。
【0060】
しかるのち、タイマの起動と共に(ステップ217)、ヒータを構成する電熱線への通電、及び設定風量による送風機の駆動が開始される(ステップ218)。この状態にて、タイマカウンタにおいて設定カウント値のカウントアップによりタイマがタイムアップすると(ステップ219)、ヒータを構成する電熱線への通電停止、及び送風機の駆動停止が行われる(ステップ220)。
【0061】
したがって、以上の構成によれば、電源スイッチ10の投入と共に、予め用意された強風、中風、又は弱風のいずれかの風量をもって、気化器4の電熱線42への通電並びに送風機6のモータ104aの駆動が行われ、この運転状態は、予め用意された長時間、中時間、又は短時間の経過と共に、停止状態へと自動的に切り替わる。
【0062】
そのため、例えば、強風設定状態においては、水蒸気白煙の濃度は多少犠牲にしつつも、香気拡散量を優先するように仕組んでおくことにより、法事の際等には強風かつ長時間を予め選択することで、焼香開始に先立って、仏間に十分な香気が漂う状態を作り出すことができる。また、例えば、弱風設定状態においては、水蒸気白煙の濃度を優先するように仕組んでおくことにより、焼香中にあっては、実際の線香燃焼時と同様な濃度の高い白煙を作り出して、仏事の雰囲気を高めることができる。しかも、上述の線香器によれば、白煙を発する線香状細管3と熱源である気化器4とは十分に離隔して配置されているため、水蒸気発生のための熱源により線香状細管3が高温に加熱される危険はなく、また線香状細管3それ自体は気体通過を許容するだけであるから、特別に太径化する必要もなく、そのため、仏事の興趣を損ねることがないと言う利点がある。
【0063】
なお、以上の実施形態にあっては、気化器4として、香料液体が常に外部から補給される形式としたが、これに代えて、予め所定量の香料液体を含浸させた不燃性保湿体を気密性シートに封入してなるカートリッジを用意し、その都度に、このカートリッジを開封して電熱式気化器にセットすると共に、使用完了の都度に使い捨てにすると言った形式を採用すれば、大掛かりな、香料液体の補給システムを構築する必要がないと言う利点がある。この際、気化器に採用するヒータは、電熱線に限らず、電熱セラミックヒータ等の任意の電熱加熱手段を採用し得ることは勿論である。
【0064】
さらに、以上の実施形態においては、運転時間の切り換えスイッチ、並びに、風量の切り換えスイッチとしてDIPスイッチ11を採用したが、これに代えて、それぞれ任意の構造を有する切換スイッチを採用することもでき、加えて電源スイッチ10とは別に任意の構造を有する運転スタートスイッチを設け、タイマの開始としてもよいことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の非燃焼式線香器は、実際の線香と同様な太さの疑似線香細管の上端部より、実際の線香の燃焼時と同様な白煙を発生されることができ、しかも疑似線香細管が過熱することもなく、仏具としても興趣に富んだ電熱加熱式の非燃焼式線香器を提供することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 非燃焼式線香器
2 香炉状容器
2a 裏蓋
2b 天板
3 線香状細管
3a 上端開口
3b 流出口
4 気化器
41 不燃性保湿体
42 電熱線
5 水蒸気チャンバ
51 チャンバ壁
51a 流入口
6 送風機
61 送風管
7 香料瓶
7a 瓶の口
7b ねじ部
71 吸い上げ軸
8 導液媒体
81 円筒状枠体
81a 底面部
81b 周面部
81c 上縁部
81d 切欠
82 導液性シート
82a 底面シート
82b 周面シート
9 電気ユニット
10 電源スイッチ
11 DIPスイッチ
12 疑似灰
101 マイクロプロセッサ
102 ヒータドライバ
103 タイマ用カウンタ
104 送風機ドライバ
104a 送風機モータ
105 DIPスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線香立てとなる香炉状容器(2)と、
前記香炉状容器の上面に立設された線香状細管(3)と、
前記香炉状容器内にあって、不燃性保湿体(41)に含ませた香料液体を電熱加熱によって気化させることにより、香気を含む白煙状水蒸気を発生させる気化器(4)と、
前記香炉状容器内にあって、所定風量の送風が可能なモータ式送風機(6)と、
前記香炉状容器内にあって、前記気化器上方の所定容量の空間を囲むように形成され、前記気化器から発生する白煙状水蒸気(V)を閉じこめると共に、その下部には前記送風機の送風口と連通する流入口(51a)が、またその上部には前記線香状細管と連通する流出口(3b)がそれぞれ設けられた水蒸気チャンバ(5)とを包含し、
それにより、前記水蒸気チャンバ内に、前記下部流入口から前記上部流出口へと向かう空気(A)の流れを形成しつつ、前記気化器から白煙状水蒸気(V)を発生させることにより、前記白煙状水蒸気を前記空気の流れに乗せて、前記線香状細管の上端開口より外部へと放出する、ことを特徴とする非燃焼式線香器。
【請求項2】
前記香料液体が適宜に満たされ、かつ吸い上げ軸が内部に挿入された香料瓶(7)と、
前記香料瓶の口から突出する吸い上げ軸(71)と、前記気化器の不燃性保湿体(41)との間に介在され、前記吸い上げ軸から前記不燃性保湿体へと、前記香料液体を毛細管現象により導くための導液媒体(8)とをさらに有し、
それにより、前記香料瓶から前記気化器へと香料液体を前記導液媒体を介して連続的に供給する、ことを特徴とする請求項1に記載の非燃焼式線香器。
【請求項3】
前記導液媒体(8)が、不燃性材料から成る円筒状枠体(81)と、前記円筒状枠体の底面(81a)と周面(81b)とを覆うようにして被着された導液性シート(82)とからなると共に、その底面を前記香料瓶(7)から突出する吸い上げ軸(71)の上端面に接触させるようにして配置されており、かつ前記気化器の不燃性保湿体(41)が直棒状であって、前記円筒状枠体の上面に、その直径方向に延在させて、相対向する上縁部(81c)間に架け渡されており、
それにより、前記香料瓶から吸い上げられた香料液体は、前記吸い上げ軸と接する底面の導液性シート(82a)を介して前記底面を放射状に伝ったのち、同周面の導液性シート(82b)を介して前記周面の全周を下から上へと伝って、円筒体の上縁部全周(81c)へと至り、しかるのち、気化器を構成する直棒状保湿体(41)の全体へとその両端部から染み渡る、ことを特徴とする請求項2に記載の非燃焼式線香器。
【請求項4】
前記円筒状枠体の底面及び周面に被着される導液性シート(82)が金属製メッシュテープである、ことを特徴とする請求項3に記載の非燃焼式線香器。
【請求項5】
前記気化器の直棒状保湿体(41)が、紙縒状のガラス繊維を束ねて直棒状に整形してなるものである、ことを特徴とする請求項3に記載の非燃焼式線香器。
【請求項6】
前記気化器及び前記送風機の運転時間を制御するタイマ(103)をさらに有する、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の非燃焼式線香器。
【請求項7】
前記タイマの運転時間を2以上の運転時間に切り換えるためのスイッチ(11)をさらに有する、ことを特徴とする請求項6に記載の非燃焼式線香器。
【請求項8】
前記送風機の風量を2以上の風量に切り換えるためのスイッチ(11)をさらに有する、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の非燃焼式線香器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−240042(P2011−240042A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116500(P2010−116500)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(303006743)株式会社マルマンプロダクツ (5)
【Fターム(参考)】