説明

非磁性トナー

【課題】優れた擦り定着性を有するとともに、長期耐刷においても帯電量が安定し良好な画質を維持する非磁性トナーを提供すること。
【解決手段】少なくとも、結着樹脂、着色剤、ポリテトラフルオロエチレン粒子及び磁性粉を含んでなる非磁性トナーであって、前記磁性粉を前記結着樹脂100重量部に対して0.5〜15重量部含有してなる非磁性トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる非磁性トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のプリントオンデマンドの発達により、トナーの定着工程後にメール・シーラー、バースター、折り機、ブックレットフィニッシャー、ステープルフィニッシャー等の印刷物加工工程が広く行なわれるようになったが、この後処置工程は、印刷物にかかるストレスが強く、特に紙同士が擦り合わせにより、画像品質が低下しやすい。そこで、この課題を解決するために、外添剤にフッ素系樹脂微粉末を用いるトナーが開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、プリントオンデマンドのニーズから高速印刷を行うために非接触加熱定着方式が提案されている。しかしながら、非接触加熱定着方式は接触加熱定着方式に比べ、定着工程後の印刷面が平滑にならないために、擦り定着性が劣る。そこで、この課題を解決するために、トナー母粒子にフッ素系樹脂粉末を内添したトナーが開示されている(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−116666公報
【特許文献2】特開2008−139851公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようにフッ素系樹脂粒子を、外添剤として用いたトナーやトナー粒子に内添したトナーは、長時間にわたる連続印刷時にトナーの帯電量が大きく変化するため、安定な画像品質を得ることが困難である。
【0006】
本発明の課題は、優れた擦り定着性を有するとともに、長期耐刷においても帯電量が安定し良好な画質を維持する非磁性トナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも、結着樹脂、着色剤、ポリテトラフルオロエチレン粒子及び磁性粉を含んでなる非磁性トナーであって、前記磁性粉を前記結着樹脂100重量部に対して0.5〜15重量部含有してなる非磁性トナーに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の非磁性トナーは、優れた擦り定着性を有するとともに、長期耐刷においても帯電量が安定し良好な画質を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、試験例1で測定した、実施例A1〜A3及び比較例1のトナーを用いて得られた二成分現像剤の帯電量と印刷枚数との関係を示すグラフである。
【図2】図2は、試験例1で測定した、比較例1、2のトナーを用いて得られた二成分現像剤の帯電量と印刷枚数との関係を示すグラフである。
【図3】図3は、試験例1で測定した、実施例A4〜A6及び比較例3のトナーを用いて得られた二成分現像剤の帯電量と印刷枚数との関係を示すグラフである。
【図4】図4は、試験例1で測定した、実施例A7〜A10及び比較例5、6のトナーを用いて得られた二成分現像剤の帯電量と印刷枚数との関係を示すグラフである。
【図5】図5は、試験例1で測定した、実施例B1〜B4及び比較例7のトナーを用いて得られた二成分現像剤の帯電量と印刷枚数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の非磁性トナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤、ポリテトラフルオロエチレン粒子及び特定量の磁性粉からなり、ポリテトラフルオロエチレン粒子により擦り定着性が向上し、さらに磁性粉との組み合わせにより、耐刷時の帯電安定性が向上する。なお、本発明において、非磁性トナーとは、795.8kA/mの印加磁場における飽和磁化が10.0Am2/kg以下のトナーである。
【0011】
本発明における結着樹脂は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、ポリエステルを主成分とすることが好ましく、さらに低温定着性と保存安定性を両立させる観点から、結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルとを含有することがより好ましい。ここで、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち(軟化点/吸熱の最高ピーク温度)比で定義される結晶性指数によって表わされる。結晶性ポリエステルは、結晶性指数が0.6〜1.4、好ましくは0.7〜1.2、より好ましくは0.9〜1.2であり、非晶質ポリエステルは1.4を超えるか、0.6未満である。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。最高ピーク温度が軟化点に対して20℃以内の差であれば、最高ピーク温度を融点とし、軟化点との差が20℃を超える場合はガラス転移点とする。
【0012】
結晶性ポリエステルの原料モノマーとしては、結晶性を高める観点から、炭素数が2〜6、好ましくは4〜6の脂肪族ジオールを含有したアルコール成分と、炭素数が2〜8、好ましくは4〜6、より好ましくは4の脂肪族ジカルボン酸化合物、又は炭素数が8の芳香族ジカルボン酸化合物を含有したカルボン酸成分が好ましい。なお、ジカルボン酸化合物とは、ジカルボン酸、その無水物及びそのアルキル(炭素数1〜8)エステルを指す。また、好ましい炭素数とは、ジカルボン酸化合物のジカルボン酸部分の炭素数を意味する。
【0013】
炭素数2〜6の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール等が挙げられ、なかでも、結晶性を高める観点から、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールが好ましい。
【0014】
炭素数2〜6の脂肪族ジオールは、結晶性を高める観点から、アルコール成分中に、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%含有されているのが望ましい。
【0015】
アルコール成分には、炭素数2〜6の脂肪族ジオール以外の多価アルコール成分が含有されていてもよく、式(I):
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、1,4-ソルビタン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
【0018】
炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸が挙げられ、結晶性を高める観点から、フマル酸及びアジピン酸が好ましく、フマル酸がより好ましい。炭素数8の芳香族ジカルボン酸化合物としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸が挙げられ、結晶性を高める観点から、テレフタル酸が好ましい。ジカルボン酸化合物の中では、ジカルボン酸が好ましい。
【0019】
炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸化合物、炭素数8の芳香族ジカルボン酸は、結晶性を高める観点から、カルボン酸成分中に、好ましくは60モル%以上、より好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%含有されているのが望ましい。特に、その中の1種の脂肪族ジカルボン酸化合物が、カルボン酸成分中の好ましくは60モル%以上、より好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは80〜100モル%を占めているのが望ましい。なかでも、フマル酸が、カルボン酸成分中、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは80〜100モル%含有されているのが望ましい。
【0020】
カルボン酸成分には、炭素数2〜8の脂肪族ジカルボン酸化合物、炭素数8の芳香族ジカルボン酸化合物以外の多価カルボン酸成分が含有されていてもよく、該多価カルボン酸成分としては、セバシン酸、アゼライン酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸;及びこれらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜8)エステル等が挙げられる。
【0021】
さらに、樹脂の分子量調整等の観点から、1価のアルコールがアルコール成分に、1価のカルボン酸化合物がカルボン酸成分に、本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有されていてもよい。
【0022】
なお、結晶性ポリエステルにおけるカルボン酸成分とアルコール成分のモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、製造安定性の観点から、さらにアルコール成分が多い場合には、減圧反応時に蒸発により樹脂の分子量を容易に調整できる観点から、0.9〜1.0が好ましく、0.95以上1.0未満がより好ましい。
【0023】
結晶性ポリエステルとしては、非晶質ポリエステルとの相溶性の観点から、ワックスの存在下で原料モノマーを重合させて得られる結晶性ポリエステルが好ましい。
【0024】
結晶性ポリエステルの原料モノマー重合時に使用されるワックスとしては、炭化水素系ワックス、エステル系ワックス、アミド系ワックス等のいずれでもよいが、結晶性ポリエステルとの相溶性及び離型性の観点から、炭化水素系ワックスが好ましい。炭化水素系ワックスは、一般に-(CH2-CH(R))n-(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を示す)で表される主骨格を有し、具体的には、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレン−ポリプロピレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスが挙げられ、これらの中では、結晶性ポリエステルの粉砕性向上の観点から、ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックスが好ましく、ポリプロピレンワックスがより好ましい。
【0025】
結晶性ポリエステルの原料モノマー重合時に使用されるワックスの量は、結晶性ポリエステルの原料モノマー100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜15重量部がより好ましく、1〜12重量部がさらに好ましい。
【0026】
結晶性ポリエステルは、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じてエステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、180〜250℃程度の温度で縮重合させて製造することができる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分100重量部に対して、0.01〜1重量部が好ましく、0.1〜0.6重量部がより好ましい。
【0027】
結晶性ポリエステルの吸熱の最高ピーク温度は、トナーの保存性、耐久性を向上させる観点から、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、150℃以下が好ましく、140℃以下がよりに好ましく、130℃以下がさらに好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、結晶性ポリエステルの吸熱の最高ピーク温度は、60〜150℃が好ましく、80〜140℃がより好ましく、100〜130℃がさらに好ましい。
【0028】
結晶性ポリエステルの軟化点は、トナーの保存性及び耐久性を向上させる観点から、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、90℃以上がさらに好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、160℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、結晶性ポリエステルの軟化点は、50〜160℃が好ましく、70〜140℃がより好ましく、90〜130℃がさらに好ましい。
【0029】
結晶性ポリエステルの含有量は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂中、1〜40重量%が好ましく、3〜20重量%がより好ましい。
【0030】
非晶質ポリエステルも、結晶性ポリエステルと同様に、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、180〜250℃程度の温度で縮重合させて製造することができる。ただし、非晶質ポリエステルとするためには、
(1) 炭素数2〜6の脂肪族ジオール、炭素数2〜8の脂肪族カルボン酸化合物等の樹脂の結晶化を促進するモノマーを用いる場合は、これらのモノマーをそれぞれ2種以上併用して結晶化を抑制すること、即ちアルコール成分及びカルボン酸成分のいずれにおいても、これらのモノマーの1種が各成分中10〜70モル%、好ましくは20〜60モル%を占め、かつこれらのモノマーが2種以上、好ましくは2〜4種用いられていること、又は
(2) 樹脂の非晶質化を促進するモノマー、好ましくはアルコール成分ではビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が、またはカルボン酸成分ではアルキル基もしくはアルケニル基で置換されたコハク酸が、それぞれアルコール成分中又はカルボン酸成分中、少なくとも一方の成分において、好ましくは両成分のそれぞれにおいて、30〜100モル%、好ましくは50〜100モル%用いられていることが好ましい。
【0031】
非晶質ポリエステルの酸価は、高温高湿環境での帯電安定性の観点から、30mgKOH/g以下が好ましく、20mgKOH/g以下がより好ましく、10mgKOH/g以下がさらに好ましい。
【0032】
本発明において、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステル成分を有する非晶質ポリエステルには、ポリエステルのみならず、その変性樹脂も含まれる。
【0033】
ポリエステルの変性樹脂としては、例えば、ポリエステルがウレタン結合で変性されたウレタン変性ポリエステル、ポリエステルがエポキシ結合で変性されたエポキシ変性ポリエステル、ポリエステル成分を含む2種以上の樹脂成分を有するハイブリッド樹脂等が挙げられる。
【0034】
非晶質ポリエステルの軟化点は、トナーの保存安定性及び耐久性を向上させる観点から、70℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点から180℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、非晶質ポリエステルの軟化点は、70〜180℃が好ましく、100〜160℃がより好ましい。また、ガラス転移点は、トナーの保存安定性及び耐久性を向上させる観点から、45℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、80℃以下が好ましく、75℃以下がより好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、非晶質ポリエステルのガラス転移点は、好ましくは45〜80℃、より好ましくは55〜75℃である。なお、ガラス転移点は非晶質樹脂に特有の物性であり、吸熱の最高ピーク温度とは区別される。
【0035】
結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステルの重量比(結晶性ポリエステル/非晶質ポリエステル)は、低温定着性と耐久性の両立の観点から1/99〜50/50が好ましく、3/97〜45/55がより好ましく、5/95〜40/60がさらに好ましい。
【0036】
結着樹脂には、結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステル以外の結着樹脂が、本発明の効果を損なわない範囲で含まれていてもよい。結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステル以外の結着樹脂としては、ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等が挙げられる。
【0037】
本発明のトナーの着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができる。
【0038】
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体メチン化合物、アリルアミド化合物等が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー3、7、10、12〜15、17、23、24、60、62、74、75、83、93〜95、99、100、101、104、108〜111、117、123、128、129、138、139、147、148、150、166、168〜177、179、180、181、183、185、191:1、191、192、193、199等が挙げられる。
【0039】
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物等が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5〜7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254、C.I.ピグメントバイオレッド19等が挙げられる。
【0040】
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が挙げられる。
【0041】
黒トナー用着色剤としては、カーボンブラック、アニリンブラック、マグネタイト、Ti/Fe系の複合酸化物等が挙げられる。
【0042】
着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。
【0043】
ポリテトラフルオロエチレン粒子としては、分子量が高く、耐刷性が向上する観点から、乳化重合により製造された球形に近い形状のものが好ましい。
【0044】
ポリテトラフルオロエチレン粒子の平均粒径は、トナーの擦り定着性を向上させる観点から、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。また、耐刷時のトナーの帯電安定性を向上させる観点から、1.0μm以下が好ましく、0.8μm以下がより好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、ポリテトラフルオロエチレン粒子の平均粒径は、0.01〜1.0μmが好ましく、0.1〜0.8μmがより好ましい。
【0045】
このような形状及び平均粒径を有するポリテトラフルオロエチレン粒子の市販品としては、「ルブロン L2」(ダイキン工業社製、平均粒径0.3μm)、「ルブロン L5F」(ダイキン工業社製、平均粒径0.2μm)、「KTL-500F」(喜多村社製、平均粒径0.5μm)等が挙げられる。
【0046】
本発明のトナーは、少なくとも、結着樹脂、着色剤、ポリテトラフルオロエチレン粒子及び磁性粉を溶融混練する工程を含む方法により得られるもの(ポリテトラフルオロエチレン粒子がトナー粒子(トナー母粒子)中に内添された態様)でもよいし、結着樹脂、着色剤及び磁性粉を含むトナー母粒子の表面に、ポリテトラフルオロエチレン粒子が外添されたものであってもよいが、トナーの耐刷時の帯電安定性と擦り定着性を両立させる観点から、前者の態様が好ましい。
【0047】
ポリテトラフルオロエチレン粒子をトナー粒子中に内添させる場合、ポリテトラフルオロエチレン粒子の含有量は、トナーの擦り定着性を向上させる観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上が好ましく、1重量部以上がより好ましく、2重量部以上がさらに好ましい。また、トナーの耐刷時の帯電安定性及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100重量部に対して、10重量部以下が好ましく、6重量部以下がより好ましく、4重量部以下がさらに好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、ポリテトラフルオロエチレン粒子の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、0.5〜10重量部が好ましく、1〜6重量部がより好ましく、2〜4重量部がさらに好ましい。
【0048】
ポリテトラフルオロエチレン粒子をトナー粒子に表面に外添させる場合、ポリテトラフルオロエチレン粒子の含有量は、トナーの擦り定着性を向上させる観点から、トナー母粒子100重量部に対して、0.1重量部以上が好ましく、0.2重量部以上がより好ましく、0.3重量部以上がさらに好ましい。また、トナーの耐刷時の帯電安定性を向上させる観点から、トナー母粒子100重量部に対して、2重量部以下が好ましく、1.5重量部以下がより好ましく、1重量部以下がさらに好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、ポリテトラフルオロエチレン粒子の含有量は、トナー母粒子100重量部に対して、0.1〜2重量部が好ましく、0.2〜1.5重量部がより好ましく、0.3〜1重量部がさらに好ましい。
【0049】
本発明において磁性粉とは、磁場の中に置かれて磁化される物質であり、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末や、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト、γ-酸化鉄のような、酸化鉄を主成分とする化合物等が挙げられる。酸化鉄を主成分とする化合物は、リン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、珪素等の元素を含んでいてもよい。磁性粉の形状は、球状、定形及び不定形のいずれであってもよい。トナーの耐刷時の帯電安定性を向上させる観点から、酸化鉄を主成分とする化合物が好ましく、酸化鉄を30重量%以上含有する化合物がより好ましく、マグネタイト及びフェライトがさらに好ましい。
【0050】
磁性粉の平均粒径は、結着樹脂中への分散性を向上させ、トナーの耐刷時の帯電安定性を向上させる観点から、0.02μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましい。また、トナーの擦り定着性を向上させる観点から、2.0μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましく、0.5μm以下がさらに好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、磁性粉の平均粒径は、0.02〜3.0μmが好ましく、0.02〜2.5μmがより好ましく、0.05〜2.0μmがさらに好ましい。
【0051】
磁性粉の含有量は、トナーの耐刷時の帯電安定性を向上させる観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上が好ましく、1重量部以上がより好ましく、3重量部以上がさらに好ましく、4重量部以上がよりさらに好ましい。また、トナーの擦り定着性及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100重量部に対して、15重量部以下が好ましく、12重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましく、8重量部以下がよりさらに好ましい。すなわち、これらの観点を総合すると、磁性粉の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、0.5〜15重量部が好ましく、1〜12重量部がより好ましく、3〜10重量部がさらに好ましく、4〜8重量部がよりさらに好ましい。
【0052】
ポリテトラフルオロエチレン粒子の含有量により、トナーの耐刷時の帯電安定性の程度が大きく異なる。また、詳細は明らかではないが、ポリテトラフルオロエチレン粒子と磁性粉の相互作用によって、トナーの耐刷時の帯電安定性が向上すると推定される。かかる観点から、ポリテトラフルオロエチレン粒子と磁性粉の重量比を制御することが好ましい。
【0053】
ポリテトラフルオロエチレン粒子と磁性粉の重量比(ポリテトラフルオロエチレン粒子/磁性粉)は、ポリテトラフルオロエチレン粒子をトナー母粒子に内添させる場合は、トナーの耐刷時の帯電安定性を向上させる観点、及びトナーの擦り定着性を向上させる観点から、70/30〜10/90が好ましく、50/50〜15/85がより好ましく、40/60〜20/80がさらに好ましい。
【0054】
また、ポリテトラフルオロエチレン粒子をトナー母粒子に外添させる場合、ポリテトラフルオロエチレン粒子と磁性粉の重量比(ポリテトラフルオロエチレン粒子/磁性粉)は、トナーの耐刷時の帯電安定性を向上させる観点、及びトナーの擦り定着性を向上させる観点から、30/70〜1/99が好ましく、15/85〜2/98がより好ましく、8/92〜3/97がさらに好ましい。
【0055】
本発明のトナーは、さらに離型剤及び荷電制御剤を含有していることが好ましい。
【0056】
離型剤としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナウバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられる。これらのなかでは、トナーの低温定着性及び保存安定性を向上させる観点から、脂肪族炭化水素系ワックス及びエステル系ワックスが好ましく、同様の観点から、エステル系ワックスでは、カルナウバワックスがさらに好ましく、脂肪族炭化水素系ワックスでは、ポリプロピレンワックスが好ましい。これらは単独で又は2種以上を混合して用いられていてもよく、脂肪族炭化水素系ワックスとエステル系ワックスを併用するのが好ましい。
【0057】
離型剤の含有量は、トナーのオフセット防止の観点と、トナーの流動性低下の防止の観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.5〜4.0重量部が好ましく、1.0〜3.0重量部がより好ましく、1.8〜2.8重量部がさらに好ましい。
【0058】
荷電制御剤としては、特に限定されないが、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「ボントロンS-28」(オリエント化学工業社製)、「T-77」(保土谷化学工業社製)、「ボントロンS-34」 (オリエント化学工業社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」(保土谷化学工業社製)等;銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、例えば「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-304」(以上、オリエント化学工業社製)等;ニトロイミダゾール誘導体;ベンジル酸ホウ素錯体、例えば、「LR-147」(日本カーリット社製)等;無金属系荷電調整剤、例えば「ボントロンF-21」、「ボントロンE-89」(以上、オリエント化学工業社製)、「T-8」(保土ヶ谷化学工業社製)、「FCA-2521NJ」、「FCA-2508N」(以上、藤倉化成社製)等が挙げられる。
【0059】
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」(以上、オリエント化学工業社製)、「CHUO CCA-3」(中央合成社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料;4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業社製)、「TP-415」(保土谷化学工業社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPYCHARGEPXVP435」(ヘキスト社製)等が挙げられる。
【0060】
荷電制御剤の含有量は、トナーの耐刷時の帯電安定性を向上させる観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.3重量部以上が好ましく、より好ましくは0.5重量部以上である。また、耐刷時の画像濃度を安定させる観点から、結着樹脂100重量部に対して、5重量部以下が好ましく、より好ましくは3重量部以下である。すなわち、これらの観点を総合すると、荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、0.3〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。
【0061】
本発明のトナーには、さらに、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が適宜含有されていてもよい。
【0062】
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。具体的には、結着樹脂、着色剤、磁性粉、荷電制御剤、離型剤等の原料、さらにポリテトラフルオロエチレン粒子を内添させる場合には、ポリテトラフルオロエチレン粒子をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却後、所定の体積中位粒径(D50)、粒度分布になるように、粉砕、分級を行ってトナー母粒子を製造することができる。一方、トナーの小粒径化の観点からは、重合法によるトナーが好ましい。
【0063】
トナー母粒子の体積中位粒径(D50)は、画像品質を向上させる観点から、3〜15μmが好ましく、4〜12μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0064】
ポリテトラフルオロエチレン粒子をトナー母粒子の表面に外添させる場合は、粉砕、分級工程後、トナー母粒子とポリテトラフルオロエチレン粒子を混合し、トナー母粒子に樹脂粒子を付着させる。
【0065】
また、ポリテトラフルオロエチレン粒子をトナー母粒子の表面に外添する際に、外添剤として無機粒子等をともに用いてもよい。
【0066】
無機粒子としては、二酸化ケイ素(シリカ)、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化スズ等が挙げられ、帯電性付与の観点から、シリカ及び二酸化チタンが好ましく、シリカがより好ましい。また、無機粒子は、単独で、又は2種類以上を混合してもよく、帯電安定性の観点から2種類以上のシリカを混合するのが好ましい。
【0067】
トナー母粒子とポリテトラフルオロエチレン粒子等の外添剤を混合する際に用いられる混合機としては、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌機、V型ブレンダー等の乾式混合に用いる攪拌装置が好ましい。外添剤は、あらかじめ混合して高速攪拌機やV型ブレンダーに添加してもよく、また別々に添加してもよい。
【0068】
本発明のトナーは、非磁性一成分現像用トナーとして、もしくはキャリアと混合される二成分現像用トナーとして、特に限定されることなく、いずれの現像方法にも用いることができる。
【0069】
キャリアのコア材としては、公知の材料からなるものを特に限定することなく用いることができ、例えば、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト、銅-亜鉛-マグネシウムフェライト、マンガンフェライト、マグネシウムフェライト等の合金や化合物、ガラスビーズ等が挙げられ、これらの中では、帯電性の観点から、マグネタイト、フェライト、銅-亜鉛-マグネシウムフェライト及びマンガンフェライトが好ましい。
【0070】
キャリアの表面は、スペント防止の観点から樹脂で被覆されていてもよい。キャリア表面を被覆する樹脂としては、トナー材料により異なるが、例えばポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン樹脂、ポリエステル、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、アミノアクリレート樹脂等が挙げられ、これらは単独であるいは2種以上を併用して用いることができるが、樹脂によるコア材の被覆方法は、例えば、樹脂等の被覆材を溶剤中に溶解もしくは懸濁させて塗布し、コア材に付着させる方法、単に粉体で混合する方法等、特に限定されない。
【0071】
トナーとキャリアとを混合して得られる二成分現像剤において、トナーの含有量は、現像剤の流動性及びカブリやダスト低減の観点から、キャリア100重量部に対して、0.5〜10重量部が好ましく、2〜8重量部がより好ましい。
【実施例】
【0072】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0073】
〔樹脂のガラス転移点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて25℃から120℃まで昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
【0074】
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度及び融点〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、Q-100)を用いて、室温から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料をそのまま1分間静止させ、その後昇温速度10℃/分で測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。最高ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば融点とし、軟化点との差が20℃を超えるピークはガラス転移に起因するピークとする。
【0075】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
【0076】
〔トナー母粒子の体積中位粒径(D50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)を5重量%の濃度となるよう前記電解液に溶解させて分散液を得る。
分散条件:前記分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mlに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0077】
〔ポリテトラフルオロエチレン粒子及び磁性粉の平均粒径〕
平均粒径とは、個数平均粒径のことである。
個数平均粒径は、走査型電子顕微鏡にて撮影倍率5000〜50000倍の適切な倍率で、粒径(長径と短径の平均値)を100個の粒子について測定し、それらの平均値を平均粒径とする。
【0078】
非晶質ポリエステルの製造例1
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン2450g、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン975g、テレフタル酸963g、ドデセニル無水コハク酸343g、無水トリメリット酸289g及びジブチル錫オキシド10gを、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、8.3kPaにて反応を行い、軟化点が150℃に達するまで反応させ、非晶質ポリエステル(樹脂A)を得た。樹脂Aの軟化点は150℃、吸熱の最高ピーク温度は72.1℃、(軟化点/吸熱の最高ピーク温度)比は2.08、ガラス転移点は64℃、酸価7.8mgKOH/gであった。なお、反応率とは、反応水量(mol)/理論生成水量(mol)×100の値をいう。
【0079】
非晶質ポリエステルの製造例2
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン3812g、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン35g、テレフタル酸546g、及びジブチル錫オキシド10g、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で反応率が90%に達するまで反応させた後、8.3kPaにて1時間反応を行った。その後、185℃に冷却し、フマル酸826g及びターシャリブチルカテコール2.4gを投入し、210℃まで常圧で4時間かけて反応させた後、8.3kPaにて反応を行い、軟化点が104℃に達するまで反応させ、非晶質ポリエステル(樹脂B)を得た。樹脂Bの軟化点は104℃、吸熱の最高ピーク温度は70.3℃、(軟化点/吸熱の最高ピーク温度)比は1.48、ガラス転移点は60℃、酸価は11.5mgKOH/gであった。
【0080】
結晶性ポリエステルの製造例1
1,6-ヘキサンジオール2407g(20.4モル)、フマル酸2320g(20モル)、ハイドロキノン2.5g、及びジブチル錫オキシド10gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、130℃から160℃まで4時間かけて反応させた後、ポリプロピレンワックス(ハイワックスNP-105、三井化学社製)400gを添加し、200℃まで3時間かけて昇温し、200℃にて30分反応させた後、さらに8.3kPaにて反応を行い、軟化点が116℃に達するまで反応させ、結晶性ポリエステル(樹脂a)を得た。樹脂aの軟化点は116℃、吸熱の最高ピーク温度は111℃、(軟化点/吸熱の最高ピーク温度)比は1.05であった。
【0081】
実施例A1〜A10及び比較例1〜6、8、9
樹脂A 60重量部、樹脂B 35重量部、樹脂a 5重量部、カーボンブラック「Regal 330R」(キャボット社製)7重量部、正帯電性荷電制御剤「ボントロン N-04」(オリエント化学工業社製)2重量部、ポリプロピレンワックス「NP-055」(三井化学社製)1重量部及びカルナバワックス「カルナバワックス C1」(加藤洋行社製)1.5重量部、表1に示す量のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子(比較例8、9以外の実施例及び比較例)、磁性粉(比較例1〜3、5以外の実施例及び比較例)及び負帯電性荷電制御剤(負CCA)(比較例2のみ)を、ヘンシェルミキサーを用いて1分間予備混合した後、二軸押出機「PCM-87」(池貝鉄工社製)を用いて、原料のフィード量を2.5kg/min、スクリュー混練部の回転数を180r/minに調整し、溶融混練した。得られた溶融混練物をドラムフレーカーにより冷却し、カッターミルで体積中位粒径(D50)1.5〜2.5mmに粗紛砕した後、ジェットミルで微粉砕し、気流分級機で分級を行い、体積中位粒径(D50)が10μmのトナー母粒子を得た。
【0082】
得られたトナー母粒子100重量部と、シリカ「HDK3050」(クラリアント社製)0.35重量部とシリカ「TS720」(キャボット社製)0.1重量部とをヘンシェルミキサーで、1500r/minで3分間混合して、トナーを得た。
【0083】
実施例B1〜B4及び比較例7
樹脂A 60重量部、樹脂B 35重量部、樹脂a 5重量部、カーボンブラック「Regal 330R」(キャボット社製)7重量部、正帯電性荷電制御剤「ボントロン N-04」(オリエント化学工業社製)2重量部、ポリプロピレンワックス「NP-055」(三井化学社製)1重量部及びカルナバワックス「カルナバワックス C1」(加藤洋行社製)1.5重量部及び表1に示す量の磁性粉(実施例のみ)を、ヘンシェルミキサーを用いて1分間予備混合した後、二軸押出機「PCM-87」(池貝鉄工社製)を用いて、原料のフィード量を2.5kg/min、スクリュー混練部の回転数を180r/minに調整し、溶融混練した。得られた溶融混練物をドラムフレーカーにより冷却し、カッターミルで体積中位粒径(D50)1.5〜2.5mmに粗紛砕した後、ジェットミルで微粉砕し、気流分級機で分級を行い、体積中位粒径(D50)が10μmのトナー母粒子を得た。
【0084】
得られたトナー母粒子100重量部と、シリカ「HDK3050」(クラリアント社製)0.35重量部及びシリカ「TS720」(キャボット社製)0.1重量部と、及び表1に示す量のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子とをヘンシェルミキサーで、1500r/minで3分間混合して、トナーを得た。
【0085】
【表1】

【0086】
実施例及び比較例で得られたトナー39重量部と、キャリア1261重量部とをナウターミキサーで混合し、二成分現像剤を得た。なお、キャリアは、Infoprint4100用現像剤(P/N:17R7726)からトナーとキャリアを分離しキャリアのみを得た。
【0087】
試験例1〔耐刷後の帯電量〕
接触現像方式の「Infoprint4000IS1」(日本アイビーエム株式会社:線速1066mm/sec、解像度240dpi、現像システム:3本マグネットロール、セレン感光体、反転現像)に、二成分現像剤を実装し、2.5cm四方のベタ画像を含む、黒化率が8%のプリントパターンを11×18インチの連続紙に、常温常湿(24℃・50RH%)の環境下で3000枚印刷した。3000枚印刷後の現像剤の帯電量を測定し、このときの帯電量を3000枚の帯電量とした。
【0088】
その後、Driver Routineで現像ロールのモーターのみ20時間回転させた後、2.5cm四方のベタ画像を含む、黒化率が8%のプリントパターンを11×18インチの連続紙に、常温常湿(24℃・50RH%)の環境下で3000枚印刷した。このときの帯電量を6000枚の帯電量とした。同様に、さらに3回繰り返して、15,000枚まで帯電量測定を繰り返した。帯電量と印刷枚数との関係を図1〜5に示す。
【0089】
なお、帯電量の測定は、以下の方法により、実施例A1〜A10、実施例B1〜B4、比較例1〜3、5〜7のトナーを用いた二成分現像剤について行った。
【0090】
〔帯電量の測定〕
Q/Mメーター(エッピング社製)を用いて測定する。
Q/Mメーター付属のセルに規定量の現像剤を投入し、目開き32μmのメッシュ(ステンレス製、綾織、線径0.0035mm)を通してトナーのみを90秒間吸引する。そのとき発生するキャリア上の電圧変化をモニターし、90秒後の総電気量(μC)/吸引されたトナー量(g)の値を帯電量(μC/g)として算出する。
【0091】
かかる結果より、磁性粉を0.5重量部以上含有する実施例A1〜A10及び実施例B1〜B4のトナーは、磁性粉を含まない比較例1、3、5、7のトナーや磁性粉を0.5重量部以上含まない比較例6のトナーに比べ、耐刷時の帯電量の安定性に優れていることが分かる。磁性粉の代わりに、負帯電性荷電制御剤を含有する比較例2のトナーでは、耐刷時の帯電量が安定していない。また、ポリテトラフルオロエチレン粒子を内添した実施例A1〜A10のトナーの方が、ポリテトラフルオロエチレン粒子を外添した実施例B1〜B4のトナーよりも、耐刷時の帯電量の安定性に優れている。
【0092】
試験例2〔耐刷後の画像濃度〕
試験例1において、実施例A1〜A10、実施例B1〜B4、比較例1〜3、5〜7のトナーを用いた二成分現像剤を用いて得られた3000枚目と9,000枚目の印字物の画像濃度を測定し、3,000枚目の印字物の画像濃度と9,000枚目の印字物の画像濃度を比較した。結果を表2A、2Bに示す。なお、画像濃度は以下の方法で測定した。
【0093】
〔画像濃度の測定〕
「GretagSPM50」(Gretag社、絶対白キャリブレイション;Polフィルタ、観測視野:2℃、照明タイプ:+、Wbase:Abs、Dstd:DIN NB、Sampleモード)を用いて4個の2.5cm四方黒ベタ部に対して、1個につき、5箇所の画像濃度を測定し、合計20箇所の画像濃度の測定した後、その平均値を画像濃度とする。
【0094】
【表2】

【0095】
以上の結果より、磁性粉を0.5重量部以上含有する実施例A1〜A10、実施例B1〜B4のトナーは、磁性粉を含まない比較例1〜3、5、7のトナーや、磁性粉を0.5重量部以上含まない比較例6のトナーに比べ、耐刷時の画像濃度の安定性に優れていることが分かる。
【0096】
試験例3〔擦り定着性〕
実施例A1〜A10、実施例B1〜B4、比較例4、8、9のトナーを用いた二成分現像剤を用い、試験例1と同様にして3000枚の耐刷を行った。得られた3000枚目の印刷物を、金属ブレードを備えた擦り試験機にセットした。印刷用紙との接触面に日本アイ・ビー・エム株式会社製の高品質レーザー・プリンター専用連続用紙(HSP用紙 G 18×11インチ(連量55kg))の白紙を巻きつけ、3kgの荷重をかけた金属ブレードにより、黒ベタ部を20往復擦った。擦り前後の白紙の白色度を、「Gretag SPM50」(GretagMacbet社、絶対白キャリブレーション;Pol フィルタ、観察視野2℃、照明タイプ;+、Wbase;Abs、Dstd;DIN NB、Sampleモード)を用いて測定し、その差(擦り後の白紙の白色度−擦り前の白紙の白色度)を定着強度の指標として算出し、擦り定着性を評価した。結果を表3に示す。
【0097】
【表3】

【0098】
以上の結果から、ポリテトラフルオロエチレン粒子を内添した実施例A1〜A10のトナーは、ポリテトラフルオロエチレン粒子を含まない比較例8、9のトナーや、ポリテトラフルオロエチレン粒子を含むが15重量部を超える磁性粉を含有する比較例4のトナーに比べ、擦り定着性に優れていることが分かる。また、ポリテトラフルオロエチレン粒子を外添した実施例B1〜B4のトナーも、ポリテトラフルオロエチレン粒子を含まない比較例8、9のトナーに比べ、擦り定着性に優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の非磁性トナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、結着樹脂、着色剤、ポリテトラフルオロエチレン粒子及び磁性粉を含んでなる非磁性トナーであって、前記磁性粉を前記結着樹脂100重量部に対して0.5〜15重量部含有してなる非磁性トナー。
【請求項2】
少なくとも、結着樹脂、着色剤、ポリテトラフルオロエチレン粒子及び磁性粉を溶融混練する工程を含む方法により得られる、請求項1記載の非磁性トナー。
【請求項3】
ポリテトラフルオロエチレン粒子の含有量が、結着樹脂100重量部に対して0.5〜10重量部である、請求項2記載の非磁性トナー。
【請求項4】
ポリテトラフルオロエチレン粒子と磁性粉の重量比(ポリテトラフルオロエチレン粒子/磁性粉)が70/30〜10/90である、請求項2又は3記載の非磁性トナー。
【請求項5】
結着樹脂、着色剤及び磁性粉を含むトナー母粒子の表面に、ポリテトラフルオロエチレン粒子が外添されてなる、請求項1記載の非磁性トナー。
【請求項6】
ポリテトラフルオロエチレン粒子の含有量が、トナー母粒子100重量部に対して0.1〜2重量部である、請求項5記載の非磁性トナー。
【請求項7】
ポリテトラフルオロエチレン粒子と磁性粉の重量比(ポリテトラフルオロエチレン粒子/磁性粉)が30/70〜1/99である、請求項5又は6記載の非磁性トナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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