説明

非線形推定装置、方法及び受信機

【課題】チャンネル内の非線形性を推定する非線形推定装置、方法及び受信機を提供する。
【解決手段】かかる装置は、送信端の入力パルス信号のシンボル情報シーケンスを取得するユニットと、現在時刻に対する1つ又は複数の時刻におけるパルス相互作用項の重み付け和を計算し、所定長さの伝送リンクに発生の加算摂動量及び乗算摂動量を取得するユニットであって、前記加算摂動量は、前記現在時刻における現在偏波状態のパルス相互作用項の重み付け和を含まず、前記乗算摂動量は、前記現在時刻における現在偏波状態のパルス相互作用項の重み付け和を含む、ユニットと、前記シンボル情報シーケンス、前記加算摂動量、及び前記乗算摂動量に基づいて、受信端の受信信号を推定するユニットと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信分野に関し、特に、チャンネル内の非線形性(Intra-channel Nonlinearity)を推定する非線形推定装置、方法及び受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバー内の非線形性がカー効果に起因するものであり、即ち、伝送時に光の位相がパワーの変化に伴って変化することがある。この非線形性による効果は、他の線形効果(例えば、分散(Dispersion)、偏波モード分散など)と互いにカップリングされて、受信機端の光信号の波形に歪みを生じさせてしまう。
【0003】
研究によれば、非線形シュレーディンガー方程式は、光ファイバー中の上述の2種類の効果のカップリングを述べ表すことができる。分析に便利なように、波長分割多重通信(WDM: Wavelength Division Multiplex)では、若干の数学的変形により、非線形作用が、複数のチャンネル(異なる波長)の相互影響と、自チャンネル(同じ補償)の相互影響との2つの部分からなると看做され得る。長距離伝送では、送信信号が偏波多重化信号であれば、光ファイバー中のランダム双屈折の統計的効果を考慮して、Manakov方程式が非線形シュレーディンガー方程式に取って代わってもよい。
【0004】
シングルチャンネルの転送レートが高くなるにつれて、自チャンネルからのチャンネル内の非線形性がシステムパフォーマンスに与える影響は、次第に、人々が関心を持つ問題となっている。シングルチャンネルの転送レートが40〜60Gbits/s以上に達する時に、分散の効果により、同一チャンネル内のパルスは、大きく広がり、また互いに重なり合うこともあるので、非線形作用により、互いに重なり合ったパルスの間は、エネルギー交換が生じることがある。この場合、受信端では、リンク(Link;伝送路)中の残留分散に対して補償を行っても、システムは、依然として、非線形性による重大な損傷を受けることがある。チャンネル内の非線形性によるシステムへの影響は、タイミングジッタ、信号振幅変動、及びゴーストパルスの発生を含む。
【0005】
長距離光通信システムでは、如何にチャンネル内の非線形性による損失を補償又は抑制するかは、重要な研究課題となっている。関連する研究は、リンク設計、受信機のディジタル信号処理、及び送信信号のエンコーディングなどの多くの面において行われている。従来技術では、非特許文献1に開示のように、送信機端で非線形摂動を引いた方法によって非線形性を軽減する方法が既に開示されている。この方法は、1倍オーバーサンプリングに基づくものであり、そのうち、摂動項が一系列の三項(3つの時刻のシンボル情報データ)の積の重み付け和に等しく、重み付け値がリンクの分散、利得/減衰、及び非線形係数により決定される。この方法の利点は、複雑度を軽減することにあり、特に、PSKシステムでは、波形を予め補償することが完全に加減算により実現され得る。
【0006】
非線形シュレーディンガー方程式は、通常の条件で解析解を持たないので、非線形性による波形歪みを取得し得るために、数値解析(数値シミュレーション)を行う必要がある。最も常用の数値解析方法は、スプリットステップフーリエ法であり、ステップが十分小さいときに、この方法は、真の解に無限に近づくことができる。しかし、この方法の欠点は、複雑すぎて、一つのリンクの配置(Link Configuration)をシミュレーションするのに数時間を要することにある。また、この方法は、物理的直観解釈を与えることができない。
【0007】
非特許文献2には、一次摂動モデルを用いて非線形シュレーディンガー方程式に対して数学的変換を行う方法が開示されている。この方法では、非線形性による波形歪みは、複数の乗積項の重み付け和と看做され、各乗積項は、3つの時刻における送信パルス振幅の積であり、係数は、リンクにおける分散分布により決定される。従来の数値解析により非線形シュレーディンガー方程式を解く方法に比べ、この方法は、チャンネル内の非線形性を単純加算の効果としてモデル化し、且つリンクによる影響と、送信信号による影響とを区別する。
【0008】
非特許文献3には、非線形性を単純乗算の効果としてモデル化する方法が開示されている。この方法では、同様に一次摂動理論を用いる。この方法による乗算モデルは、非特許文献2に開示の方法による加算モデルに比べ、一部のリンクの配置で、より大きい入力パワー(Launch Power)(非線形性)を許容し得るが、非線形性が小さいときに、両者により得られた結果は、同じである。
【0009】
非特許文献4には、他の非線形ノイズモデルとして、加算と乗算との混合に基づくモデルが開示されている。このモデルは、加算モデルを直接直すことにより得られたものであり、そのうち、乗算に対応する位相は、異なるシンボルについて言えば、定数である。
【0010】
しかし、従来技術には、加算摂動量及び乗算摂動量がともに現在シンボル及びその前後のシンボルに関連する状況を考慮せず、信号推定の正確性を更に向上することができないという欠点がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】L. Dou, Z. Tao, L. Li, W. Yan, T. Tamimura, T. Hoshida, and J. C. Rasmussen, “A low complexity pre-distortion method for intra-channel nonlinearity”, Proc. OFC/NFOEC2011 Conf., Los Angeles, USA, March 2011, paper OThF5
【非特許文献2】IEEE PTL Vol. 12, No.4, 2000, Antonio Mecozzi et al.
【非特許文献3】IEEE PTL Vol. 17, 2005, pp91, Ernesto Ciaramella et al.
【非特許文献4】IEEE JLT, 2002, pp1102, Bononi et al.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、受信端にて非線形信号を推定する正確性を更に向上することができる非線形推定装置、方法及び受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するために、本発明の実施例によれば、非線形推定装置が提供される。この非線形推定装置は、送信端の入力パルス信号のシンボル情報シーケンスを取得するための情報シーケンス取得ユニットと、現在時刻に対する1つ又は複数の時刻におけるパルス相互作用項の重み付け和を計算し、所定長さの伝送リンクに発生の加算摂動量及び乗算摂動量を取得するための摂動量生成ユニットであって、前記加算摂動量は、現在時刻における現在偏波状態のパルス相互作用項の重み付け和を含まず、前記乗算摂動量は、現在時刻における現在偏波状態のパルス相互作用項の重み付け和を含む、摂動量生成ユニットと、前記シンボル情報シーケンス、前記加算摂動量、及び前記乗算摂動量に基づいて、受信端の受信信号を推定するための信号推定ユニットと、を含む。
【0014】
本発明の実施例によれば、少なくとも、1つ又は複数の時刻におけるパルス相互作用の重み付け和を計算し、所定長さの伝送リンクに発生の加算摂動量及び乗算摂動量を取得し、また、このような時変的加算摂動量及び乗算摂動量に基づいて受信端にて非線形信号を推定することにより、推定の正確性を更に向上することができ、且つ、計算方法が簡単であるので、単一偏波及び偏波多重システムに応用され得るとともに、任意の変調フォーマットとの交換性をも有するとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の光通信システムを示す図である。
【図2】本発明の実施例による非線形推定装置の構成図である。
【図3】本発明の実施例による非線形推定装置の他の構成図である。
【図4A】チャンネル内の非線形性による干渉後に直接シミュレーションにより得られたコンステレイション図である。
【図4B】本発明の実施例による非線形推定により得られたコンステレイション図である。
【図4C】従来技術において全加算モデルにより得られたコンステレイション図である。
【図4D】従来技術において加算及び定数の回転により得られたコンステレイション図である。
【図5】本発明の実施例による非線形推定方法のフローチャートである。
【図6】本発明の実施例による摂動量生成ステップのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、説明の便宜のため、本発明の実施形態では、光通信システムを例として説明を行っているが、本発明の実施形態は、非線形性による損失が存在する全ての通信システムに適用できる。
【0017】
図1は、従来の光通信システムを示す図である。図1に示すように、送信機が送信した信号は、伝送リンク(伝送路)中の異なる部品(光ファイバー、光増幅器、分散補償ファイバーなど)を経由して受信機に到着する。本発明の実施例では、非線形補償装置により、送信端にて、入力されているパルス信号のシンボル情報シーケンス(系列)を補償し、これにより、送信端が、特定の変形を受けた後の信号を送信する。このような信号は、光ファイバー伝送の非線形効果を受けた後に、受信機において理想的な無損失の信号になる。
【0018】
図1に示すシステムにおける受信端の受信信号を推定できるように、本発明の実施例では、まず、チャンネル内の非線形モデルを築き上げ、そして、この非線形モデルに基づいて、入力端のオリジナルパルス信号により、受信端の受信信号を推定する。
【0019】
通常の場合、スペクトル効率を最大限に高めるために、送信機端は、しばしば、偏波多重方式を採用するので、以下は、双偏波の場合を例として、チャンネル内の非線形モデルの取得過程について説明する。
【0020】
まず、ベクトル信号について、伝送用光ファイバーは、下記「数1」に示すように、Manakov方程式によりモデル化され得る。
【数1】

【0021】
ただし、uH(t,z)及びuV(t,z)は、それぞれ、水平方向H及び垂直方向Vの偏波状態における信号の電場成分を表す。α(z)、β2(z)、及びγ(z)は、それぞれ、伝送距離における光ファイバーリンク中の減衰係数、分散係数、及び非線形係数の分布を表す。
【0022】
次に、送信機により生成された信号は、しばしば、光パルスで構成されるので、送信機端における電場成分は、下記「数2」で表してもよい。
【数2】

【0023】
ただし、AKH及びAKVは、それぞれ、水平方向H及び垂直方向Vの偏波状態におけるk番目のパルスのシンボル情報を表す。Tは、パルス間隔を表す。g(t)は、各パルスの波形を表す。なお、送信機の出力信号が任意の波形の光信号であっても、時間間隔Tを十分小さく設定すれば、出力されている光信号は、依然として、上記「数2」の形式と見なすことができる。
【0024】
最後に、「数2」の入力信号が「数1」に与えられる。ここで、入力パワーがさほど大きくない(即ち、光ファイバーリンクの非線形性がさほど強くない)ときは、摂動理論で「数1」を解いてもよく、この場合、下記「数3」が得られる。
【数3】

【0025】
上記「数3」において、受信機端のk番目のパルスサンプリング時刻における電場値は、送信端におけるk番目のパルスの電場値及び摂動量から構成される。摂動量は、複数の相互作用項の重み付け和であり、各項は、1つ又は複数の時刻における送信パルスのシンボル情報の積である。摂動理論で「数1」を解く処理においては、高次項を無視して低次項のみを利用して計算が行われている。
【0026】
よって、「数3」においては、例えば、k番目のパルスサンプリング時刻に対して、3つの異なる時刻、即ち第m+k時刻、第n+k時刻、及び第m+k+n時刻におけるパルス相互作用の重み付け和のみが、計算のために必要となる。ただし、計算処理で高次項も考慮する場合には、k番目のパルスサンプリング時刻に対して、3以上の異なる時刻におけるパルス相互作用の重み付け和が、計算のために必要となる。
【0027】
k番目のパルスについて採用される3つの時刻におけるパルスは、任意のものでなく、それらの間の時間関係は、(m+k)+(n+k)-(m+n+k)=kを満たす必要がある。そのうち、m、n及びkは、等しくてもよく、即ち、現在時刻に対しての1つ又は複数の時刻であってもよい。なお、本発明は、これに限られず、3つのパルスは、他の形式の組み合わせを有してもよく、この場合、その対応する係数は、適切に変更する必要がある。
【0028】
以下は、すべて、3つのパルス相互作用の重み付け和を例として説明を行うものである。なお、本発明は、これに限定されず、3よりも多くのパルスが存在する構成又は方法は、3つのパルスが存在する構成又は方法と類似するので、詳しい記載は省略する。
【0029】
上記「数3」から分かるように、現在偏波状態における摂動項は、2つの部分を含んでいる。一方は、自偏波状態から生成され、他方は、直交偏波状態から生成される。例えば、水平方向偏波状態については、自偏波状態から生成される部分は、Am+kHAn+KH(Am+n+kH)*であり、直交偏波状態から生成される部分は、Am+kHAn+KV(Am+n+kV)*である。なお、垂直方向偏波状態についての摂動項は、水平方向偏波状態と類似するので、記載を省略する。
【0030】
Manakov方程式「数1」においては、2つの偏波状態のシンボル情報は互いに対称であるので、水平方向及び垂直方向の偏波状態における摂動項の係数は、最終的に互いに一致することになる。ここで、これらの係数は、リンクの配置、及び、現在時刻におけるパルスの位置に対する相互作用のパルスの位置(m,n)のみに関係又は依存する。
【0031】
上述の非線形モデルによれば、送信端が特定の変形を受けた後の信号を送信し、これらの信号は、光ファイバー伝送の非線形効果を受けた後に、受信側で理想的な無損失の信号になる。ここで、チャンネルの線形損傷は、他の方法で補償されているとする。
【0032】
さらに、上記「数3」に対して処理を行うことにより、下記「数4」のような等価式を得ることができる。
【数4】

【0033】
「数4」では、等号の右側の2番目の項は、現在シンボル情報AkH又はAkVを含み、且つ現在シンボル情報に対して乗算演算を行う。係数C(m,n)は、mn=0のときに、虚部が実部より遥かに大きいので、近似的に純虚数と看做してもよい。また、exp(jθ)≒1+jθを考慮することにより、上記「数4」中の2番目の項は、一種の角度回転操作と看做してもよく、その後の2つの項は、現在シンボル情報を含まず、且つ加算摂動である。
【0034】
以上は、双偏波信号について詳細に説明したが、単一偏波信号については、同様に、下記「数5」を得ることができる。
【数5】

【0035】
上述の分析に基づき、以下は、図1に示す光通信システム、及び該光通信システムの非線形モデルを例とし、本発明の実施例による非線形推定装置、方法及び受信機について詳細に説明する。
【0036】
図2は、本発明の実施例による非線形推定装置の構成図である。図2に示すように、この非線形推定装置は、情報シーケンス取得ユニット201、摂動量生成ユニット202、及び信号推定ユニット203を含む。
【0037】
情報シーケンス取得ユニット201は、送信端の入力パルス信号のシンボル情報シーケンスを取得するために用いられる。摂動量生成ユニット202は、現在時刻に対する1つ又は複数の時刻におけるパルス相互作用の重み付け和を計算し、これにより、所定長さの伝送リンクに発生の加算摂動量及び乗算摂動量を取得するために用いられる。信号推定ユニット203は、シンボル情報シーケンス、加算摂動量、及び乗算摂動量に基づいて、受信端の受信信号を推定するために用いられる。
【0038】
上記加算摂動量は、現在時刻における現在偏波状態のパルス相互作用項の重み付け和を含まず、上記乗算摂動量は、現在時刻における現在偏波状態のパルス相互作用項の重み付け和を含む。これにより、従来技術に比べ、本発明の実施例による加算摂動量及び乗算摂動量はともに時変的であるので、時変的加算摂動量と乗算摂動量とに対して混合演算を行うことにより、信号推定の正確性を更に向上することができる。
【0039】
本実施例では、情報シーケンス取得ユニット201が取得したシンボル情報シーケンスは、補償前のシンボル情報であり、このシンボル情報は、採用される変調フォーマットに関係し、異なる変調フォーマットによって異なる。例えば、OOK変調フォーマットの場合、このシンボル情報シーケンスは、0、1であり、BPSK変調フォーマットの場合、このシンボル情報シーケンスは、−1、1であり、QPSK変調フォーマットの場合、このシンボル情報シーケンスは、1、j、−1、−jである。
【0040】
本実施例では、信号推定ユニット203は、具体的に、情報シーケンス取得ユニット201が取得したシンボル情報シーケンス、及び摂動量生成ユニット202が取得した加算摂動量及び乗算摂動量を利用して混合演算を行い、受信端の受信信号を推定するために用いられる。
【0041】
具体的な実施に当たっては、信号推定ユニット203は、まず、加算演算を行い、そして、乗算演算を行ってもよく、又は、まず、乗算演算を行い、そして、加算演算を行ってもよい。好ましくは、信号推定ユニット203は、まず、シンボル情報シーケンスと加算摂動量とに対して加算演算を行い、そして、この加算演算の演算結果と乗算摂動量とに対して乗算演算を行う。しかし、本発明は、これに限られず、実際の状況に応じて具体的な実施方式を決めてもよい。
【0042】
また、具体的な実施に当たっては、加算器、乗算器又は論理演算回路などのようなハードウェア回路を採用してもよい。例えば、PSK信号の場合は、シンボル間の乗算が参照テーブルにより実現されてもよく、PSK信号とCoefとの間の乗算が論理演算及び加算器により実現されてもよい。なお、従来の素子により実現され得るので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0043】
上述の実施例から分かるように、若干の異なる時刻におけるパルス相互作用の重み付け和を計算することにより、所定長さの伝送リンクに発生の加算摂動量及び乗算摂動量を取得し、また、このような時変的加算摂動量及び乗算摂動量に基づいて受信端にて非線形信号を推定することにより、推定の正確性を更に向上することができ、且つ、計算方法が簡単であるので、単一偏波及び偏波多重システムに応用され得るとともに、任意の変調フォーマットとの交換性をも有する。
【0044】
図3は、本発明の実施例による非線形推定装置の他の構成図である。図3に示すように、この非線形推定装置は、情報シーケンス取得ユニット301、摂動量生成ユニット302、及び信号推定ユニット303を含み、これらのユニットの機能は、図2に示す非線形推定装置の対応するものと同様であるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0045】
本実施例では、摂動量生成ユニット302は、次のような構成を採用して計算を行い、摂動量を処理してもよい。具体的には、図3に示すように、この摂動量生成ユニット302は、シンボル情報取得部3021、重み付け和計算部3022、及び摂動量取得部3023を含んでもよい。
【0046】
シンボル情報取得部3021は、複数の項の各々の、現在時刻に対しての1つ又は複数の時刻におけるパルスのシンボル情報を取得するために用いられる。
【0047】
重み付け和計算部3022は、各項の、現在時刻に対しての1つ又は複数の時刻におけるパルスのシンボル情報、及び予め取得した各項の対応する重み係数を用いて、各項の、現在時刻に対しての1つ又は複数の時刻におけるパルス相互作用の重み付け値を計算し、また、各項の重み付け値に基づいて上述の複数項の重み付け値の和を計算するために用いられる。
【0048】
摂動量取得部3023は、複数項の重み付け値の和に基づいて、所定長さの伝送リンクに発生の加算摂動量及び乗算摂動量を取得するために用いられる。
【0049】
以下は、k番目のパルスサンプリング時刻に対しての3つの時刻、即ち、m+k番目の時刻、n+k番目の時刻、及びn+m+k番目の時刻におけるパルス相互作用の重み付け和を例として説明を行う。若干の項の、現在時刻に対しての3つの時刻におけるパルス相互作用の重み付け和を計算するための「項の数」は、所定の(m,n)の値により決定される。
【0050】
なお、m、n、及びkは、(m+k)+(n+k)-(m+n+k)=kを満たす。m及びnは、任意の整数値であってもよく、即ち、パルスサンプリング時刻は、現在時刻に対する1つ又は複数の時刻であってもよい。
【0051】
さらに、具体的な実施例では、mn≠0であってもよく、m及びnの何れもゼロでないことを示し、これにより、(m+k)と(n+k)とは等しくてもよいが、(m+n+k)に等しくない。即ち、パルスサンプリング時刻は、現在時刻に対しての少なくとも2つの時刻であってもよい。
【0052】
このようにして、摂動量生成ユニット302は、具体的に、現在時刻、例えば、k番目の時刻に対しての3つの時刻、例えば、m+k、n+k、及びm+n+k番目の時刻におけるパルス相互作用の重み付け和を計算し、これにより、現在のk番目の時刻における非線形効果が所定長さの伝送リンクを経過している間に生じた摂動を取得するために用いられる。
【0053】
一実施例では、双偏波信号について、摂動量生成ユニット302は、上記「数4」に基づいて、所定長さの伝送リンクに発生の加算摂動量及び乗算摂動量を取得することができる。例えば、具体的には、下記「数6」及び「数7」に示すように、「数4」中の、現在時刻における現在偏波状態を含まない第3項及び第4項に基づいて加算摂動量を取得し、「数4」中の、現在時刻における現在偏波状態を含む第2項により乗算摂動量を取得することができる。
【数6】


【数7】

【0054】
ただし、Δkadd及びΔkadd′は、加算摂動量を表し、Δkmul及びΔkmul′は、乗算摂動量を表し、C(m,n,z=L)は、各項の重み係数を表し、Am+kH及びAm+kVは、それぞれ、水平偏波状態及び垂直偏波状態のm+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、An+kH及びAn+kVは、それぞれ、水平偏波状態及び垂直偏波状態のn+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、(Am+n+kH)*及び(Am+n+kV)*は、それぞれ、水平偏波状態及び垂直偏波状態のm+n+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報の複素共役を表す。
【0055】
これにより、信号推定ユニット303は、下記「数8」を用いて信号推定を行うことができる。
【数8】

【0056】
他の実施例では、単一偏波信号について、摂動量生成ユニット302は、同様に、上記「数5」に基づいて、所定長さの伝送リンクに発生の加算摂動量及び乗算摂動量を取得する。例えば、具体的には、下記「数9」に示すように、「数5」中の、現在時刻における現在偏波状態を含まない第3項に基づいて加算摂動量を取得し、「数5」中の、現在時刻における現在偏波状態を含む第2項により乗算摂動量を取得することができる。
【数9】

【0057】
ただし、Δkaddは、加算摂動量を表し、Δkmulは、乗算摂動量を表し、C(m,n,z=L)は、各項の重み係数を表し、Am+k及びAn+kは、それぞれ、m+k番目及びn+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、(Am+n+k)*は、m+n+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報の複素共役を表す。
【0058】
これにより、信号推定ユニット303は、下記「数10」を用いて信号推定を行うことができる。
【数10】

【0059】
以上は、摂動量生成ユニット302及び信号推定ユニット303が如何に実現されるかについて詳細に説明したが、当業者は、上述に開示の内容に基づいて、適切な変形や変換を行ってもよい。言い換えると、本発明の上述の式は、例示的なものだけであり、本発明は、それらに限定されない。
【0060】
本実施例では、C(m,n,z=L)は、現在時刻に対してのm番目、n番目、及びm+n番目の時刻におけるパルス相互作用の重み係数に対応する。なお、偏波多重システムでは、3つの相互作用のパルスが、同一の偏波状態から生成されてもよく、異なる偏波状態から生成されてもよい。各項が対応する重み係数は、予め取得してもよく、重み付け和計算部3022が重み付け値を計算するために用いられる。
【0061】
図3に示すように、この非線形推定装置は、係数取得ユニット304を更に含み、係数取得ユニット304は、シミュレーション方式により各項の対応する重み係数を取得する、又は、実験方式(測定方式)により各項の対応する重み係数を取得する、又は、伝送リンクの配置及び現在時刻におけるパルスの位置に対する1つ又は複数の時刻における相互作用パルスの位置に基づいて各項の対応する重み係数を取得するために用いられる。
【0062】
シミュレーション又は実験の方法に基づいて重み係数を得るときは、シミュレーション又は実験中に異なる送信信号を用意し、受信信号に基づいて重み係数の値を導出することができる。この方法は、精度が高い。
【0063】
係数取得ユニット304が、伝送リンクの配置、及び現在時刻におけるパルスの位置に対する異なる時刻における相互作用パルスの位置に基づいて各項の重み係数を取得するときは、重み係数を計算するために、係数取得ユニット304は、下記「数11」を使用してもよい。
【数11】

【0064】
現在時刻がk番目の時刻であれば、現在時刻に対する3つの異なる時刻は、m+k番目の時刻、n+k番目の時刻、m+n+k番目の時刻である。また、複数の(m,n)の値は、予め決められている。ここで、各(m,n)値は、異なる重み係数C(m,n,z=L)に対応する。m、nは、例えば、負の無限大から正の無限大までの間の任意の整数値であり、現在時刻(k番目の時刻)の前及び後の時刻における値に関連する。
【0065】
また、一般的には、(m,n)の絶対値は大きくなると、対応するC(m,n,z=L)の絶対値は徐々に小さくなる。よって、要求された計算精度に基づいて、所定数の(m,n)で摂動量を計算することができる。この場合、m、nは、次のように決定してもよい。即ち、与えられたm、nに基づいて得られた係数C(m,n,z=L)のモジュラス|C(m,n,z=L)|が、所定値以上であれば、m、nは採用され、そうでないときは、m、nは採用されない。この所定値は、すべての係数の最大モジュラス値の比例係数に基づいて決定してもよい。例えば、正規化された係数Cは、|C(m,n,z=L)|>1e-3*max(|C(m,n,z=L)|)を満足するm、nのすべての組合せを採用し得る。
【0066】
p(z)は、伝送リンク上で送信端からzだけ離れた位置の信号のパワーを表す。s(z)は、伝送リンク上で送信端からzだけ離れた位置における累積された総分散値を表す。τは、パルスの半値幅を表す。Tは、パルス間隔を表す。γ(z)は、伝送リンク上で送信側からzだけ離れた位置の非線形係数を表す。
【0067】
或いは、伝送リンクに分散補償モジュールが存在せず、信号伝送中の減衰が無視できる程度であり、且つ分散係数及び非線形係数が伝送距離に応じて変化しないときは、係数取得ユニット304は、下記「数12」を用いて重み係数を計算してもよい。
【数12】

【0068】
ただし、γは、非線形係数を表す。P0は、送信端における信号のパワーを表す。β2は、分散係数を表す。expintは、指数積分関数を表し、下記「数13」のように表される。
【数13】

【0069】
また、上述の非線形推定装置は、記憶ユニット(図示せず)を更に含み、この記憶ユニットは、取得した重み係数を保存するために用いられ、この重み係数は、重み付け値を計算する時に用いられる。また、記憶ユニットは、重み係数を計算するためのチャンネル家係数、例えば、非線形係数γ、分散係数β2、及び伝送リンク長さL等のパラメータを保存してもよい。
【0070】
以上は、本発明の実施例による非線形推定装置について詳細に説明した。以下は、具体的な例を用いて、本発明による技術効果について説明する。具体的には、単一偏波システムを例とし、この例では、ボーレートが32Gであり、変調フォーマットが16QAMであり、送信パワーが6.4dBmであり、シングルモード光ファイバー伝送の距離(伝送リンク長さ)が60kmであり、また、受信機にてリンク中の分散を補償する。
【0071】
図4Aないし図4Dは、この例が受信端にて得たコンステレイション図の効果を示す図である。図4Aは、チャンネル内の非線形性による干渉後に直接シミュレーションにより得られたコンステレイション図である。図4Bは、本発明の実施例による非線形推定により得られたコンステレイション図である。図4Cは、従来技術において全加算モデルにより得られたコンステレイション図である。図4Dは、従来技術において加算及び定数の回転により得られたコンステレイション図である。
【0072】
図4Aないし図4Dから分かるように、本発明の実施例では、時変的な加算摂動量と乗算摂動量との加算乗算混合モデルを用いることで得た推定結果が、従来技術に比べ、実際のシミュレーション結果にさらに接近するので、信号推定の正確性を更に向上することができる。
【0073】
上述の実施例によれば、1つ又は複数の時刻におけるパルス相互作用の重み付け和を計算することにより、所定長さの伝送リンクに発生の加算摂動量及び乗算摂動量を取得し、また、このような時変的加算摂動量及び乗算摂動量に基づいて受信端にて非線形信号を推定することにより、推定の正確性を更に向上することができ、且つ、計算方法が簡単であるので、単一偏波及び偏波多重システムに応用され得るとともに、任意の変調フォーマットとの交換性をも有する。
【0074】
また、本発明の実施例は、非線形推定方法をも提供する。なお、ここでは、上述の実施例と同じ内容を省略する。
【0075】
図5は、本発明の実施例による非線形推定方法のフローチャートである。図5に示すように、この非線形推定方法は、次のようなステップを含む。
【0076】
ステップ501:送信端の入力パルス信号のシンボル情報シーケンスを取得する。
【0077】
ステップ502:現在時刻に対する1つ又は複数の時刻におけるパルス相互作用項の重み付け和を計算し、所定長さの伝送リンクに発生の加算摂動量及び乗算摂動量を取得する。加算摂動量は、現在時刻における現在偏波状態のパルス相互作用項の重み付け和を含まず、乗算摂動量は、現在時刻における現在偏波状態のパルス相互作用項の重み付け和を含む。
【0078】
ステップ503:シンボル情報シーケンス、加算摂動量、及び乗算摂動量に基づいて、受信端の受信信号を推定する。
【0079】
さらに、ステップ503は、シンボル情報シーケンスと加算摂動量とに対して加算演算を行い、それから、この加算演算の演算結果と乗算摂動量とに対して乗算演算を行うことを含んでもよい。
【0080】
図6は、本発明の実施例による摂動量生成ステップのフローチャートである。図6に示すように、ステップ502は、次のようなステップを含む。
【0081】
ステップ601:現在時刻に対する1つ又は複数の時刻における複数項の各々のパルスのシンボル情報を取得する。
【0082】
ステップ602:現在時刻に対する1つ又は複数の時刻における各項のパルスのシンボル情報、及び予め取得した各項の対応する重み係数を用いて、現在時刻に対する1つ又は複数の時刻における各項のパルス相互作用の重み付け値を計算し、また各項の重み付け値に基づいて複数項の重み付け値の和を計算する。
【0083】
ステップ603:複数項の重み付け値の和に基づいて、所定長さの伝送リンクに発生の加算摂動及び乗算摂動量を取得する。
【0084】
また、この非線形推定方法は、シミュレーション方式で上記重み係数を取得する、又は、実験方式で上記重み係数を取得する、又は、伝送リンクの配置と、1つ又は複数の時刻における相互作用のパルスと現在時刻のパルスとの相対位置とに基づいて上記重み係数を取得する係数取得ステップを更に含む。
【0085】
一実施例では、入力パルス信号が単一偏波信号であり、この場合、信号推定ステップは、次の「数14」を用いてもよい。
【数14】

【0086】
ただし、C(m,n,z=L)は、各項の重み係数を表し、Am+k及びAn+kは、それぞれ、m+k番目及びn+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、(Am+n+k)*は、m+n+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報の複素共役を表す。
【0087】
他の実施例では、入力パルス信号が双偏波信号であり、この場合、信号推定ステップ502は、次の「数15」を用いてもよい。
【数15】

【0088】
ただし、C(m,n,z=L)は、各項の重み係数を表し、Am+kH及びAm+kVは、それぞれ、水平偏波状態及び垂直偏波状態のm+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、An+kH及びAn+kVは、それぞれ、水平偏波状態及び垂直偏波状態のn+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、(Am+n+kH)*及び(Am+n+kV)*は、それぞれ、水平偏波状態及び垂直偏波状態のm+n+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報の複素共役を表す。
【0089】
また、本発明の実施例は、受信機をも提供する。この受信機は、上述のような非線形推定装置を含む。
【0090】
上述の実施例から分かるように、若干の異なる時刻におけるパルス相互作用の重み付け和を計算し、所定長さの伝送リンクに発生の加算摂動量及び乗算摂動量を取得し、また、このような時変的加算摂動量及び乗算摂動量に基づいて受信端にて非線形信号を推定することにより、推定の正確性を更に向上することができ、且つ、計算方法が簡単であるので、単一偏波及び偏波多重システムに応用され得るとともに、任意の変調フォーマットとの交換性をも有する。
【0091】
また、上述の装置及び方法は、ハードウェアにより実現されてもよく、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせにより実現されてもよい。また、本発明は、プログラムにも関し、このプログラムは、論理部品(例えば、コンピュータ)により実行される時に、論理部品に、上述の装置又は構成部品を実現させ、或いは、論理部品に、上述の各種方法又はステップを実現させる。さらに、本発明は、上記プログラムを記憶しているコンピュータ読み出し可能な記憶媒体にも関し、この記憶媒体は、例えば、ハードディスク、磁気ディスク、光ディスク、DVD、フラッシュメモリなどを含む。
【0092】
また、上述の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0093】
(付記1)
非線形推定装置であって、
送信端の入力パルス信号のシンボル情報シーケンスを取得する情報シーケンス取得ユニットと、
現在時刻に対する1つ又は複数の時刻におけるパルス相互作用項の重み付け和を計算し、所定長さの伝送リンクに発生の加算摂動量及び乗算摂動量を取得する摂動量生成ユニットであって、前記加算摂動量は、前記現在時刻における現在偏波状態のパルス相互作用項の重み付け和を含まず、前記乗算摂動量は、前記現在時刻における現在偏波状態のパルス相互作用項の重み付け和を含む、摂動量生成ユニットと、
前記シンボル情報シーケンス、前記加算摂動量、及び前記乗算摂動量に基づいて、受信端の受信信号を推定する信号推定ユニットと、を含む非線形推定装置。
【0094】
(付記2)
付記1に記載の非線形推定装置であって、
前記摂動量生成ユニットは、前記現在時刻に対する少なくとも2つの時刻におけるパルス相互作用の重み付け和を計算する、非線形推定装置。
【0095】
(付近3)
付記1に記載の非線形推定装置であって、
前記摂動量生成ユニットは、
前記現在時刻に対する1つ又は複数の時刻における前記各パルス相互作用項のパルスのシンボル情報を取得するシンボル情報取得部と、
前記現在時刻に対する1つ又は複数の時刻における前記各パルス相互作用項のパルスのシンボル情報と、予め取得した前記各パルス相互作用項の対応する重み係数とにより、前記現在時刻に対する1つ又は複数の時刻における前記各パルス相互作用項のパルス相互作用の重み付け値を計算し、前記各パルス相互作用項の前記重み付け値に基づいて前記各パルス相互作用項の重み付け値の和を計算する重み付け和計算部と、
前記各パルス相互作用項の重み付け値の和に基づいて、前記所定長さの伝送リンクに発生の前記加算摂動量及び前記乗算摂動量を取得する摂動量取得部と、を含む、非線形推定装置。
【0096】
(付記4)
付記1に記載の非線形推定装置であって、
前記信号推定ユニットは、前記シンボル情報シーケンスと前記加算摂動量とに対して加算演算を行い、それから、該加算演算の演算結果と前記乗算摂動量とに対して乗算演算を行う、非線形推定装置。
【0097】
(付記5)
付記3に記載の非線形推定装置であって、
シミュレーション方式により前記重み係数を取得する、又は、実験方式により前記重み係数を取得する、又は、伝送リンクの配置及び現在時刻におけるパルスの位置に対する1つ又は複数の時刻における相互作用のパルスの位置に基づいて前記重み係数を取得する係数取得ユニットを更に含む、非線形推定装置。
【0098】
(付記6)
付記4に記載の非線形推定装置であって、
前記入力パルス信号は、単一偏波信号であり、
前記信号推定ユニットは、
【数16】


(ただし、Δkaddは、前記加算摂動量を表し、Δkmulは、前記乗算摂動量を表し、C(m,n,z=L)は、前記各パルス相互作用項の重み係数を表し、Am+k及びAn+kは、それぞれ、m+k番目及びn+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、(Am+n+k)*は、m+n+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報の複素共役を表し)を採用する、非線形推定装置。
【0099】
(付記7)
付記4に記載の非線形推定装置であって、
前記入力パルス信号は、双偏波信号であり、
前記信号推定ユニットは、
【数17】


(ただし、Δkadd及びΔkadd′は、前記加算摂動量を表し、Δkmul及びΔkmul′は、前記乗算摂動量を表し、C(m,n,z=L)は、前記各パルス相互作用項の重み係数を表し、Am+kH及びAm+kVは、それぞれ、水平偏波状態及び垂直偏波状態のm+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、An+kH及びAn+kVは、それぞれ、水平偏波状態及び垂直偏波状態のn+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、(Am+n+kH)*及び(Am+n+kV)*は、それぞれ、水平偏波状態及び垂直偏波状態のm+n+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報の複素共役を表し)を採用する、非線形推定装置。
【0100】
(付記8)
非線形推定方法であって、
送信端の入力パルス信号のシンボル情報シーケンスを取得する情報シーケンス取得ステップと、
現在時刻に対する1つ又は複数の時刻におけるパルス相互作用項の重み付け和を計算し、所定長さの伝送リンクに発生の加算摂動量及び乗算摂動量を取得する摂動量生成ステップであって、前記加算摂動量は、前記現在時刻における現在偏波状態のパルス相互作用項の重み付け和を含まず、前記乗算摂動量は、前記現在時刻における現在偏波状態のパルス相互作用項の重み付け和を含む、摂動量生成ステップと、
前記シンボル情報シーケンス、前記加算摂動量、及び前記乗算摂動量に基づいて、受信端の受信信号を推定する信号推定ステップと、を含む非線形推定方法。
【0101】
(付記9)
付記8に記載の非線形推定方法であって、
前記摂動量生成ステップは、前記現在時刻に対する少なくとも2つの時刻におけるパルス相互作用の重み付け和を計算することを含む、非線形推定方法。
【0102】
(付記10)
付記8に記載の非線形推定方法であって、
前記摂動量生成ステップは、
前記現在時刻に対する1つ又は複数の時刻における前記各パルス相互作用項のパルスのシンボル情報を取得するシンボル情報取得ステップと、
前記現在時刻に対する1つ又は複数の時刻における前記各パルス相互作用項のパルスのシンボル情報と、予め取得した前記各パルス相互作用項の対応する重み係数とにより、前記現在時刻に対する1つ又は複数の時刻における前記各パルス相互作用項のパルス相互作用の重み付け値を計算し、また前記各パルス相互作用項の前記重み付け値に基づいて前記各パルス相互作用項の重み付け値の和を計算する重み付け和計算ステップと、
前記各パルス相互作用項の重み付け値の和に基づいて、前記所定長さの伝送リンクに発生の前記加算摂動量及び前記乗算摂動量を取得する摂動量取得ステップと、を含む、非線形推定方法。
【0103】
(付記11)
付記8に記載の非線形推定方法であって、
前記信号推定ステップは、前記シンボル情報シーケンスと前記加算摂動量とに対して加算演算を行い、それから、該加算演算の演算結果と前記乗算摂動量とに対して乗算演算を行うことを含む、非線形推定方法。
【0104】
(付記12)
付記10に記載の非線形推定方法であって、
シミュレーション方式により前記重み係数を取得する、又は、実験方式により前記重み係数を取得する、又は、伝送リンクの配置及び現在時刻におけるパルスの位置に対する1つ又は複数の時刻における相互作用のパルスの位置に基づいて前記重み係数を取得する係数取得ステップを更に含む、非線形推定方法。
【0105】
(付記13)
付記8ないし12の何れか1つに記載の非線形推定方法であって、
前記入力パルス信号は、単一偏波信号であり、
前記信号推定ステップは、
【数18】


(ただし、Δkaddは、前記加算摂動量を表し、Δkmulは、前記乗算摂動量を表し、C(m,n,z=L)は、前記各パルス相互作用項の重み係数を表し、Am+k及びAn+kは、それぞれ、m+k番目及びn+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、(Am+n+k)*は、m+n+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報の複素共役を表し)を採用する、非線形推定方法。
【0106】
(付記14)
付記8ないし12の何れか1つに記載の非線形推定方法であって、
前記入力パルス信号は、双偏波信号であり、
前記信号推定ユニットは、
【数19】


(ただし、Δkadd及びΔkadd′は、前記加算摂動量を表し、Δkmul及びΔkmul′は、前記乗算摂動量を表し、C(m,n,z=L)は、前記各パルス相互作用項の重み係数を表し、Am+kH及びAm+kVは、それぞれ、水平偏波状態及び垂直偏波状態のm+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、An+kH及びAn+kVは、それぞれ、水平偏波状態及び垂直偏波状態のn+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、(Am+n+kH)*及び(Am+n+kV)*は、それぞれ、水平偏波状態及び垂直偏波状態のm+n+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報の複素共役を表し)を採用する、非線形推定方法。
【0107】
(付記15)
付記1ないし7の何れか1つに記載の非線形推定装置を含む受信機。
【0108】
(付記16)
コンピュータに、付記8ないし14の何れか1つに記載の各ステップを実行させるためのプログラム。
【0109】
(付記17)
付記16に記載のプログラムを記憶しているコンピュータ読み出し可能な記憶媒体。
【0110】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されず、本発明の趣旨を離脱しない限り、本発明に対するあらゆる変更は本発明の技術範囲に属する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非線形推定装置であって、
送信端の入力パルス信号のシンボル情報シーケンスを取得する情報シーケンス取得ユニットと、
現在時刻に対する1つ又は複数の時刻におけるパルス相互作用項の重み付け和を計算し、所定長さの伝送リンクに発生の加算摂動量及び乗算摂動量を取得する摂動量生成ユニットであって、前記加算摂動量は、前記現在時刻における現在偏波状態のパルス相互作用項の重み付け和を含まず、前記乗算摂動量は、前記現在時刻における現在偏波状態のパルス相互作用項の重み付け和を含む、摂動量生成ユニットと、
前記シンボル情報シーケンス、前記加算摂動量、及び前記乗算摂動量に基づいて、受信端の受信信号を推定する信号推定ユニットと、を含む非線形推定装置。
【請求項2】
前記摂動量生成ユニットは、
前記現在時刻に対する1つ又は複数の時刻における前記各パルス相互作用項のパルスのシンボル情報を取得するシンボル情報取得部と、
前記現在時刻に対する1つ又は複数の時刻における前記各パルス相互作用項のパルスのシンボル情報と、予め取得した前記各パルス相互作用項の対応する重み係数とにより、前記現在時刻に対する1つ又は複数の時刻における前記各パルス相互作用項のパルス相互作用の重み付け値を計算し、前記各パルス相互作用項の前記重み付け値に基づいて前記各パルス相互作用項の重み付け値の和を計算する重み付け和計算部と、
前記各パルス相互作用項の重み付け値の和に基づいて、前記所定長さの伝送リンクに発生の前記加算摂動量及び前記乗算摂動量を取得する摂動量取得部と、を含む、請求項1に記載の非線形推定装置。
【請求項3】
前記信号推定ユニットは、前記シンボル情報シーケンスと前記加算摂動量とに対して加算演算を行い、それから、該加算演算の演算結果と前記乗算摂動量とに対して乗算演算を行う、請求項1に記載の非線形推定装置。
【請求項4】
シミュレーション方式により前記重み係数を取得する、又は、実験方式により前記重み係数を取得する、又は、伝送リンクの配置及び現在時刻におけるパルスの位置に対する1つ又は複数の時刻における相互作用のパルスの位置に基づいて前記重み係数を取得する係数取得ユニットを更に含む、請求項2に記載の非線形推定装置。
【請求項5】
前記入力パルス信号は、単一偏波信号であり、
前記信号推定ユニットは、
【数20】


(ただし、Δkaddは、前記加算摂動量を表し、Δkmulは、前記乗算摂動量を表し、C(m,n,z=L)は、前記各パルス相互作用項の重み係数を表し、Am+k及びAn+kは、それぞれ、m+k番目及びn+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、(Am+n+k)*は、m+n+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報の複素共役を表し)を採用する、請求項3に記載の非線形推定装置。
【請求項6】
前記入力パルス信号は、双偏波信号であり、
前記信号推定ユニットは、
【数21】


(ただし、Δkadd及びΔkadd′は、前記加算摂動量を表し、Δkmul及びΔkmul′は、前記乗算摂動量を表し、C(m,n,z=L)は、前記各パルス相互作用項の重み係数を表し、Am+kH及びAm+kVは、それぞれ、水平偏波状態及び垂直偏波状態のm+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、An+kH及びAn+kVは、それぞれ、水平偏波状態及び垂直偏波状態のn+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報を表し、(Am+n+kH)*及び(Am+n+kV)*は、それぞれ、水平偏波状態及び垂直偏波状態のm+n+k番目の時刻におけるパルスのシンボル情報の複素共役を表し)を採用する、請求項3に記載の非線形推定装置。
【請求項7】
非線形推定方法であって、
送信端の入力パルス信号のシンボル情報シーケンスを取得する情報シーケンス取得ステップと、
現在時刻に対する1つ又は複数の時刻におけるパルス相互作用項の重み付け和を計算し、所定長さの伝送リンクに発生の加算摂動量及び乗算摂動量を取得する摂動量生成ステップであって、前記加算摂動量は、前記現在時刻における現在偏波状態のパルス相互作用項の重み付け和を含まず、前記乗算摂動量は、前記現在時刻における現在偏波状態のパルス相互作用項の重み付け和を含む、摂動量生成ステップと、
前記シンボル情報シーケンス、前記加算摂動量、及び前記乗算摂動量に基づいて、受信端の受信信号を推定する信号推定ステップと、を含む非線形推定方法。
【請求項8】
前記摂動量生成ステップは、
前記現在時刻に対する1つ又は複数の時刻における前記各パルス相互作用項のパルスのシンボル情報を取得するシンボル情報取得ステップと、
前記現在時刻に対する1つ又は複数の時刻における前記各パルス相互作用項のパルスのシンボル情報と、予め取得した前記各パルス相互作用項の対応する重み係数とにより、前記現在時刻に対する1つ又は複数の時刻における前記各パルス相互作用項のパルス相互作用の重み付け値を計算し、また前記各パルス相互作用項の前記重み付け値に基づいて前記各パルス相互作用項の重み付け値の和を計算する重み付け和計算ステップと、
前記各パルス相互作用項の重み付け値の和に基づいて、前記所定長さの伝送リンクに発生の前記加算摂動量及び前記乗算摂動量を取得する摂動量取得ステップと、を含む、請求項7に記載の非線形推定方法。
【請求項9】
前記信号推定ステップは、前記シンボル情報シーケンスと前記加算摂動量とに対して加算演算を行い、それから、該加算演算の演算結果と前記乗算摂動量とに対して乗算演算を行うことを含む、請求項7に記載の非線形推定方法。
【請求項10】
請求項1ないし7の何れか1項に記載の非線形推定装置を含む受信機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−74625(P2013−74625A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−211397(P2012−211397)
【出願日】平成24年9月25日(2012.9.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】