説明

非連続状態で供給される糸又は糸状体を一定張力で供給する装置及び方法

工業製品を製造するため、又は糸若しくは糸状体(8)を取り扱うために、繊維機械又は金属ワイヤを取り扱う巻取り機等の機械に供給される糸又は糸状体を一定張力で供給する装置であって、前記糸又は糸状体の供給は、前記糸又は糸状体の移動が、前記機械による少なくとも第1及び第2の供給すなわち取り込み状態が異なる状態となる非連続状態で行われ、前記第1及び第2の供給すなわち取り込み状態は、互いに遅滞なく一方が他方に続き、張力検知手段(3)として、糸又は糸状体蓄積手段(4)並びに、前記張力検知手段(3)及び前記糸又は糸状体蓄積手段(4)に接続された制御手段(40)が、設けられて、前記張力検知手段から得る張力値に基づいて、前記糸又は糸状体蓄積手段に関与するようにした装置において、前記糸又は糸状体蓄積手段(4)と、前記糸又は糸状体(8)に係り合うようにされた前記張力検知手段(3)との間に、補償手段(11)を設けて、前記第1の供給すなわち取り込み状態とこれに続く前記第2の供給すなわち取り込み状態の間で、前記糸又は糸状体の供給すなわち取り込み状態の変動を補償し、これにより、前記制御手段(40)が、前記糸又は糸状体蓄積手段(4)に関与できることによって、前記糸又は糸状体に対するその作用を修正し、前記張力検知手段(3)により検出される張力値を設定値に遅滞なく一定にし、前記張力値は、前記糸又は糸状体と前記補償手段間の相互作用により、供給状態が変動していても一定に保たれ、前記補償手段は、静止位置(PB)に対して、前記糸又は糸状体を移動させながら自由に移動できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の対象は、主請求項の前提要件事項部に記載した、繊維機械又は金属ワイヤを取り扱う巻取り機(コイル巻線機)等の機械に非連続状態で供給される糸又は糸状体を一定張力で供給する装置である。前述の供給方法を実施するのに適した方法も、本発明の対象である。
【背景技術】
【0002】
糸又は糸状体を一定張力で供給できるタイプの糸又は糸状体の供給装置は、公知である。この種の装置は、公知の一定張力での糸又は糸状体用供給装置により得られる公知の閉ループ制御法に従って運転される。この方法によれば、糸又は糸状体の供給速度とは関係なく、又、一定張力での糸又は糸状体用供給装置へ入る糸又は糸状体の張力変動とは関係なく、糸又は糸状体の一定供給が可能となる。張力変動が、糸又は糸状体の供給ボビン又は金属ワイヤの供給ボビンが徐々に空に近づいて行くために生ずる場合、及び、張力変動が、糸又は糸状体の不規則的な巻き戻しによる破断又は伸びによって生ずる場合でも、同様である。
【0003】
繊維業界で使用されている公知の一定張力での糸供給装置(例えば、本願出願人による欧州特許明細書第1492911号に係る発明)は、張力センサと、アクチュエータすなわち供給ホイール又はプーリに作用するモータと、制御(電子)ユニットとを備え、制御ユニットは、通常、前記センサにより測定される糸張力値を所望の目標張力値(すなわち設定値)と比較することにより、検出張力値を解析できるプロセッサすなわちDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)を備える。制御(電子)ユニットは、モータに関与して、モータと結合されたプーリを制御し糸に制動を掛け又は糸の供給を行って、繊維機械(工業製品製造用もの、又は糸自体の取り扱い用のもの)に供給される糸自体の張力を制御して一定に維持する。
【0004】
米国特許第4752044号明細書により、糸の張力を電子的に制御する装置が公知であり、この装置では、一定の巻き数で巻かれる糸巻きと可動アームで構成された張力検出器とに、回転部材を設けて、糸ガイド部材として機能させて、移動中糸の張力を検出できるようにしてある。この先行技術の発明では、可動アームは、位置制御と可動アームの動きを制御可能な電動機の関与とを受けて、所望の張力を維持する。
【0005】
この先行技術では、電動機を設けているため、可動アームの反応性が制限され、可動アームは、自由に移動して糸を案内することはできない。糸とこれに結合された部材は、糸の自由な供給に影響を与える慣性を持つため、工業製品に欠陥をもたらし、糸の破断さえ生じる。
【0006】
同様な解決手段は、米国特許第4669677号明細書に開示されている。
【0007】
これらの装置(及びこれらにより実施される方法)では、糸の移動は、繊維機械による少なくとも第1及び第2の供給すなわち取り込み状態が異なる状態となる非連続状態で行われながら、糸が繊維機械に供給される場合には、性能限界がある。こうした異なる供給状態は、互いに遅滞なく一方が他方に続く。前述の性能限界は、糸の供給状態の変動(例えば、取り込み量が大である状態と取り込み量が極めて小である状態とが交互に起こる場合)後に関与を及ぼす制御ユニットの「ストレス」に対するアクチュエータ(電動機)又はプーリの反応速度に影響を与える。こうした取り込み量の変動性は、ジャカード織りの繊維業界では知られている。特に、極めて性能が高い複数個のアクチュエータ又は電動機を使用しても、用途を満たすことができる性能レベルを得ることはできないことが、知られている。
【0008】
このため、多くの場合、糸貯蔵供給装置は、取り込み量の変動が大きい状態で糸をピックアップする場合にも、糸が自由に取り出されるドラムに一定の糸巻き数を蓄積するのに限界を持ったまま使用されている。しかしながら、こうした解決法には、前述した装置に比べて極めて大きい装置を使用する点で限界があり、張力は、制御されないか、または、最適かつ精確には制御されない。巻き戻し張力が、制御されても、装置への手動による調整では、制御は限定的で、一定の張力範囲内で行わるに過ぎない。
【0009】
さらに、非連続状態で供給される糸状体に作用する公知の装置は、金属ワイヤの場合のように、糸状体が「剛い」タイプ、すなわち弾性的でない場合(例えば、エラストマーの中には、伸長値が300%であるものがあるにもかかわらず、糸状体の伸長値が10%以下である場合)、別の限界を持つ。こうした場合、糸状体自体の固有の弾性を利用して反応性の遅れを補償し、糸状体自体の糸状体自体の変動状した状態に適合できるようにすることは実際上できないので、こうした公知の装置は、剛い糸状体に使用することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、繊維機械又は金属ワイヤを取り扱う巻取り機等の機械に、非連続状態で供給される糸又は糸状体の供給を制御する方法と、既に公知の同様な方法及び装置に関して改良となる、当該方法を実施する装置を提供することにある。
【0011】
特に、本発明の目的は、ジャカード織り又は繊維機械でのメッシュの作成の場合に起こる非連続状態で繊維機械等の機械に糸状体を供給する場合に、上述したプーリを備えたタイプの公知の一定張力で糸状体供給装置の限界を克服できる装置を提供することにある。
【0012】
本発明のもう一つの目的は、糸状体が、非連続状態でピックアップされる場合でも、糸状体を一定の張力で供給する装置の使用を可能にして、公知の糸状体用ストレージフィーダよりもプログラミング精度、適応性及び使用の点で著しく向上できるようにすることにある。
【0013】
本発明のもう一つの目的は、糸又は糸状体を一定の張力で供給する公知の装置の動的加速/減速性能を高め、(繊維又は金属製)糸又は糸状体を非連続状態で供給する、公知の装置の適用限界を大幅に解消できる装置を提供することにある。
【0014】
本発明のさらにもう一つの目的は、糸又は糸状体を一定の張力で供給する従来の装置では適用に限界がある、極めて剛い糸又は糸状体(弾性度が、10%よりも低く0%近傍であるもの)に使用できる装置を提供することにある。
【0015】
本発明のこの他の目的は、糸又は糸状体の取り込み量の増減が突然に生じたことを実質的に予想し表示する情報を予め得ることにより、一定張力での供給装置の制御に関与できる制御システムの関与及び期待通りの反応を可能にする装置及び方法を提供することにある。
【0016】
さらにもう一つの目的は、糸又は糸状体の供給を極めて精確に制御し、公知の類似の解決手段と比べて反復可能性が極めて高い発明を提供することにある。
【0017】
本発明のもう一つの目的は、弾性の糸状体と剛い糸状体の双方を、同じ性能及び品質で供給できる、上述したタイプの装置を提供することにあり、本発明は、弾性の糸状体だけでなく剛い糸状体も実際上取り扱うことができる。
【0018】
もう一つの目的は、糸制御の取り返しのつかない失敗が生じた場合に、例えば、供給装置が、誤って設定され、供給装置による糸の供給品質に何らかの障害が生じうる場合、機械、繊維機械又は金属ワイヤを取り扱う機械を止めることにより、機械、繊維機械又は金属ワイヤを取り扱う機械を制御できる装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これらの目的、及び当業者には明らかとなる他の目的は、添付の請求の範囲に記載された装置及び方法により達成される。
【0020】
本発明をよりよく理解してもらうために、下記の図面を、限定目的を持つことなく単なる例示として、添付する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】繊維機械に供給する糸状体の張力を制御する公知の装置に組み合わせた、本発明による装置の正面図である。
【図2】図1に示した本発明の第1実施形態に係る装置の一部の斜視図である。
【図3】図3A及び図3Bは、一定張力供給型として公知の装置により供給される糸状体における時間の経過に伴う張力状態と、本発明による装置により供給される糸状体における時間の経過に伴う張力状態とを表す2個のグラフを示すものである。
【図4】本発明による装置のブロック図を示すものである。
【図5】別の実施形態における本発明による装置の一部を示すものである。
【図6】図1と同様な糸状体の張力を制御する公知の装置に組み合わせた、本発明による装置の変形態様を示す斜視図である。
【図7】前記変形態様を別の角度から見た斜視図である。
【図8】図6の本発明の変形態様の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
前述の図(対応する部分は、同一の符号で示してある)、特に、図1を参照すると、本発明による装置は、全体を符号1で示してあり、張力センサ3を備えた第1部分すなわち供給装置2(公知の一定張力での供給装置)と、プーリ専用電動機で駆動されるプーリ4(又はこれと均等な蓄積手段)と、好ましくはマイクロプロセッサである制御ユニットであって、通常は張力センサ3により検出された糸状体8の張力値を予め定めた値(すなわち設定値)と比較することにより解析して、前記電動機、つまりプーリ4に関与することにより、糸状体の張力を制御し調整する(所望値と異なっている場合)ことができるプロセッサすなわちDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)とを有する。こうした供給装置2及びその部分3及び4(電動機及び制御ユニットは図示していない)は、これら自体公知のタイプであり作用及び機能が知られているので、これ以上詳述しない。これらにより、糸状体を一定張力で繊維機械に供給できる。なお、繊維機械は、工業製品の製造ユニットであるか、又は、糸を取り扱う機械である。
【0023】
本発明による装置1は、糸状体8が、プーリ4を通過した後に、糸状体8と協働するようにされた第2部分、すなわち補償手段11を備える。この補償手段は、図4に示すように、糸状体張力調整リング内に位置付けられる。本発明によれば、装置1の動的性能は、糸状体の最終張力に正又は負の張力ピークを生ずることなく、電動機が新たな速度に達するのに必要な時間分一次しのぎを行うことによって糸状体の突然の取り込み量変動(正及び負の変動)に瞬時に対応できるので、増大する。
【0024】
さらに、補償手段を糸状体張力調整リング内に位置付けたため、供給装置2から送り出される糸状体の張力が、絶えず設定値となることが確実に保証される。
【0025】
さらに、特に、補償手段11は、簡易形態(図5)では、第1円筒形状部14を備えた補償ばね13と、第2ばね状部15と、糸状体8をスライドさせながら収容するのに適するようにされた半環状部すなわちフック17を最先端に備えた突出アーム16とを有する。補償ばね13は、アクチュエータ2(補償ばね13が、アクチュエータ2と直接的には協働しない場合には、繊維機械の近傍の固定部)と、プーリ4とこの他のアクチュエータの部分とを支持する本体部2Aの適切なピン(図示せず)に嵌められた第1円筒形状部14を介して結合される。
【0026】
一方、図2は、本発明による補償手段11の別の実施形態を示すもので、補償ばね13が、糸状体8の作用で補償ばねの弾性的挙動をマニュアル調節するのに適するようにされたノブ21により、アンカーピン20に組み付けられる。ノブ及びアンカーピンは、アクチュエータに、固定部材25により結合できる基体部23に組み付けられ、基体部は、例えばセラミックス材料で形成される糸状体ガイド26に組み付けられる。
【0027】
補償手段11の補償ばね13は、図1に示すように、複数個の作動位置を取ることができる。定速で繊維機械に取り込まれるように糸状体8を供給する場合には、補償ばねは、中間ではあるが、突出アーム16の移動可能経路(両限界位置PCとPAとの間を占める)内にある位置PBにある(図1参照)。繊維機械の取り込み量が突然増加する場合には、本発明による装置1から出て行くときには張力がピークとならないように又は大幅に減少させ、かつプーリ4に作用する電動機を新たな速度に達しさせることにより、突出アーム16は、位置PBから位置PCに移動する。電動機が新たな速度に達すると、補償ばねは、位置PCから位置PBに戻る。位置PBから位置PAまでの補償ばねの経路は、取り込み量の減少にほぼ対応し、絶えず一定の設定張力で繊維機械に供給されるべき糸状体8の張力を一定に保つ速度となるように、プーリ4が、電動機により回転させられると、位置PBに戻る。
【0028】
言い換えると、糸状体の供給状態の種々の態様は、繊維機械による取り込み状態の変動と、アクチュエータ2の本体部2Aに対する補償手段11の補償ばね13の位置変化に対応する。こうした位置変化により、プーリ4の制御ユニットは、プーリを制御する電動機に関与してプーリを、糸状体の変動した移動状態に対応する回転又は静止状態にすることができる。
【0029】
図3A及び図3Bは、標準的な一定張力で糸状体を供給する装置と、ジャカード織り向けにした、補償手段11を備えた本発明による装置とにおける張力軌跡のそれぞれの記録を示すものである。これらの記録から明らかなように、信号軌跡を分析することにより、平均張力軌跡(軌跡X)並びに、正のピーク張力軌跡(軌跡C)及び負のピーク張力軌跡(軌跡Z)のそれぞれが、第2の場合(補償機構がある場合)の方が、明らかにより一定化していることが明白である。特に、ピーク張力の劇的な低下は、著しく、ピーク張力の低下により、糸状体への応力負荷が回避され、繊細な糸状体の場合に過度な張力が加わることにより破断する虞が低減される結果、繊維機械の速度を増加でき、生産性、品質及び効率が著しく高まる。
【0030】
明らかなように、本発明によるシステムの反応性と、従って、ほぼ高めの繊維機械による取り込み量の非連続状態を補償する能力とは、補償ばねに依存し、正負両方の取り込み量変動は、取り込み量が一定である場合には、補償ばねは、位置PBに維持されることになる。本システムの動きは、反応性、従って使用するばねの質量すなわち軽さに密接に関連する。このため、チタニウム、アルミニウム若しくはマグネシウム等の超軽金属、これらの合金、又は、例えば炭素繊維等の複合材で構成したばねを、使用するとよい。例として、チタニウムの比重は、4.87kg/dmであり、鋼の比重(7.8kg/dm)よりも低い。こうしたものを使用すると、本システムの動的挙動は、糸状体の供給中における取り込み量の変動を実際的に補償できるレベルまで向上する。その結果、プーリ4の制御ユニットと補償手段と間での相互関与により、末端装置のパーフォーマンスが劇的に向上することは明らかである。
【0031】
補償手段11内に、リニアホールセンサ30を取り付け、補償ばねを磁化することが極めて好ましい。こうすると、制御ユニットは、いずれの場合でも、補償ばねの位置を把握して、この情報を基にプーリ4に作用する電動機を制御することができる。繊維機械での糸状体の使用量が突然増加すると、補償ばねが、位置PBから位置PCに移動し、この移動は、制御ユニットにより適正に測定され制御され、例えば、プーリの回転速度をまず増加させて新たな供給速度に達するようにして、ばねを当初の位置PBに戻す。
【0032】
補償手段11の位置を把握すると、制御ユニットは、(正又は負の)消費量変動を補償する補償手段の移動後に、補償ばね13が、その当初位置に必ず戻って、新たな(正又は負の)消費量変動の補償に直ちに備えることができるようにする。
【0033】
さらに、補償ばね13の位置変位をモニターすることによって、補償ばねが取る位置が、所定の限界(超過ストローク)を越えないようにチェックして、正負二方向の一方向において補償手段11が補償機能を行い、万一の場合、警報を発し、繊維機械を停止する余地がない状態に陥るのを回避することができる。
【0034】
高めの取り込み量の変動を補償できることは、前述のように、補償ばね自体の力に依存しているので、制御ユニットと補償手段11との間の付加的な相互関与により、制御ユニットは、例えば、上述の制御ユニットを用いて、ノブ21に作用する組み付け電動機を駆動することによって、補償ばね自体の力を変化させることができる。こうして、用途又は運転状態に応じて制御を最適化する。実際、補償ばね13の位置変化をモニターすると、正負二方向の一方向において補償手段11が補償機能を行い、万一の場合、警報を発し、繊維機械を停止する余地がない状態に陥るのを回避すべきほどまでには、補償ばねの位置が、所定の限界(超過ストローク)を越えていないこともある。
【0035】
図4は、上述したように本発明の装置を動作させるためのブロック図を示すものである。この図には、制御ユニット又はPID40と、プーリ4のアクチュエータ41(電動機)と、張力センサ3と、補償手段11とが示してある。制御ユニット40は、予め設定した張力値、すなわち設定値50に基づいて、上述したモードに従って作動する。
【0036】
本発明によれば、上述の記載から理解されるように、いくつかの特有の効果が得られる。さらに、移動アーム16を下方移動させることにより、プーリ又は蓄積機構4が、硬い糸状体でも、あたかも弾性があるかのように操り制御できる。これは、硬い糸状体自体の供給状態に変動が生じても、移動アーム16の移動により糸状体の硬さを補償するからである。こうして得られる弾性度度合いは、手動により又は自動的に調整される、補償ばねの力に応じて、細かく調整される。
【0037】
特に、図6乃至8では、本発明による装置の突出アーム16は、装置1の基体部101のスロット100から突出する。基体部の側面には、図2のノブ21と同様に、突出アーム16の反応を調節するのに適するようにされた機構又はノブ103が、設けられる。さらに、基体部101は、供給装置2の本体部2Aと結合するのに適するようにされた先端部110と、糸ガイド111とを備える。
【0038】
上述した図面から分かるように、糸状体8は、プーリ4からプーリに対して接線方向に離れ、突出アーム16に達し、プーリにこれに対して接線方向に戻る。これにより、下方のプーリに向かって行われる、張力測定用の正確な三角測量を維持できる。さらに、突出アーム16と協働する糸状体の安定度を増すことができる。
【0039】
本発明の種々の実施形態を説明したが、他の実施形態も可能であり、これらも、特許請求の範囲内にあるものである。特に、上述の説明では、繊維分野を引き合いに出したが、本発明は、金属ワイヤを巻き取る機械等の分野にも適用可能である。例えば、半発明は、ボビンから解き、電動機等用に巻き付けを行うのに用いる、金属ワイヤを巻き取る機械に使用できる。したがって、本明細書において、糸状体と称したものは、繊維糸及び金属ワイヤの双方を意味するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工業製品を製造する、又は糸若しくは糸状体(8)を取り扱うのに適した、繊維機械又は金属ワイヤを取り扱う巻取り機等の機械に供給される糸又は糸状体を一定張力で供給する装置であって、前記糸又は糸状体の供給は、前記糸又は糸状体の移動が、前記機械による少なくとも第1及び第2の供給すなわち取り込み状態が異なる状態となる非連続状態で行われ、前記第1及び第2の供給すなわち取り込み状態は、互いに遅滞なく一方が他方に続き、張力検知手段(3)として、糸又は糸状体蓄積手段(4)並びに、前記張力検知手段(3)及び前記糸又は糸状体蓄積手段(4)に接続された制御手段(40)が、設けられて、前記張力検知手段から得る張力値に基づいて、前記糸又は糸状体蓄積手段に関与するようにした装置において、前記糸又は糸状体蓄積手段(4)と、前記糸又は糸状体(8)に係り合うようにされた前記張力検知手段(3)との間に、補償手段(11)を設けて、前記第1の供給すなわち取り込み状態とこれに続く前記第2の供給すなわち取り込み状態の間で、前記糸又は糸状体の供給すなわち取り込み状態の変動を補償し、これにより、前記制御手段(40)が、前記糸又は糸状体蓄積手段(4)に関与できることによって、前記糸又は糸状体に対するその作用を修正し、前記張力検知手段(3)により検出される張力値を設定値に遅滞なく一定にし、前記張力値は、前記糸又は糸状体と前記補償手段間の相互関与により、供給状態が変動していても一定に保たれ、前記補償手段は、静止位置(PB)に対して、前記糸又は糸状体を移動させながら自由に移動できることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記補償手段(11)は、2個の異なる供給状態間の過渡状態における前記糸又は糸状体の取り込み変動を、移動により補償するようにされた可動補償手段で構成され、前記補償手段(11)は、前記糸又は糸状体(8)が、前記機械による取り込みが少ない状態から取り込みが多い状態に移る場合には、前記糸又は糸状体(8)の供給方向にある前記静止位置(PB)から移動し、前記糸又は糸状体(8)が、取り込みが多い状態から取り込みが少ない状態に移る場合には、反対方向に移動し、前記補償手段の移動は、前記制御手段(40)が、前記糸又は糸状体の前記糸又は糸状体蓄積手段(4)の作用を、変動した供給状態に合うようにさせることにより、前記糸又は糸状体の張力を一定に保つように自動的に自由に行われ、前記補償手段(11)は、取り込み量変動の終端で、静止位置(PB)に戻ることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記静止位置(PB)は、2個の限界位置(PA及びPC)を持つ前記補償手段の移動経路内にあることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記補償手段(11)は、少なくとも1個のフック形状の端部(17)により前記糸又は糸状体(8)に作用するようにされた細長のアーム(16)を備えた弾性変形可能な部材(13)であり、前記アームは、前記弾性変形可能な部材(13)の少なくとも一部(14、15)から全体が突出し、前記機械近傍で固定位置に設けられることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記弾性変形可能な部材は、ばね(13)であり、前記アーム(16)は、円筒形状部(14)に結合された螺旋状部(15)から突出し、前記円筒形状部は、前記ばね(13)を前記機械近傍で固定位置に拘束することを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記ばねは、チタニウム、マグネシウム、アルミニウム、これらの合金、又は、複合材等の超軽量材料で構成されることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記弾性変形可能な部材(13)は、前記機械近傍で固定位置に位置付けることができる支持体(23)に取り付けられ、前記弾性変形可能な部材(13)は、前記支持体(23)に取り付けられた前記弾性変形可能な部材(13)の弾性作用の調節手段(21、103)と協働し、前記支持体は、好ましくは、糸状体ガイド部材(26)を備え、前記糸又は糸状体(8)は、前記弾性変形可能な部材(13)の前記細長のアーム(16)と接触する前に、前記糸状体ガイド部材の作用を受けることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項8】
前記調整手段(21、103)の前記弾性変形可能な部材への作用を修正できるようにされたアクチュエータ手段を備え、前記アクチュエータ手段は、前記制御手段(40)により制御されることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記静止位置(PB)に対する前記弾性変形可能な部材の前記細長のアーム(16)の移動を、好ましくは、前記静止位置(PB)に対する前記移動の範囲をも検出できるようにされたセンサ手段(30)を備えることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項10】
前記センサ手段(30)は、前記機械への一定張力での前記糸又は糸状体の供給用の制御ユニット(40)に接続され、前記制御ユニットは、一定張力での前記糸又は糸状体の供給用の前記制御手段を構成し、前記制御ユニットは、前記センサ手段(30)により検出されたデータに基づいて、したがって、前記静止位置(PB)に対する前記細長なアーム(16)が取る位置(PA,PC)に基づいて、前記機械への前記糸又は糸状体の供給中の張力を一定に保つことができるようにした前記蓄積手段(4)に関与して制御することを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記補償手段(11)は、前記糸又は糸状体(8)が、前記蓄積手段(4)から接線方向に離れて前記補償手段(11)に達し、前記糸又は糸状体が、前記補償手段(11)から離れることにより前記蓄積手段に絶えず接線方向に戻るように、前記蓄積手段(4)に対して位置付けられることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
工業製品を製造する、又は糸若しくは糸状体(8)を取り扱うのに適した、繊維機械又は金属ワイヤを取り扱う巻取り機等の機械に供給される糸又は糸状体の一定張力での供給を制御する方法であって、前記糸又は糸状体の供給は、前記糸又は糸状体の移動が、前記機械による少なくとも第1及び第2の供給すなわち取り込み状態が異なる状態となる非連続状態で行われ、前記第1及び第2の供給すなわち取り込み状態は、互いに遅滞なく一方が他方に続き、前記糸若しくは糸状体(8)の張力を検出し、前記糸若しくは糸状体の張力を調節して、蓄積手段(4)を前記糸若しくは糸状体に作用させて前記糸若しくは糸状体の張力を一定かつ設定値に維持する方法において、第2の供給すなわち取り込みへの移行が起こると、前記蓄積手段(4)が前記糸若しくは糸状体に作用する下流で、第1供給状態に対応する通常の供給における前記糸若しくは糸状体の位置から前記糸若しくは糸状体(8)を移動し、前記移動は、こうした経路に設けられた可動手段すなわち補償手段(11)を移動することにより生じ、前記糸若しくは糸状体(8)は、前記糸若しくは糸状体の取り込みに増加又は減少が生じた状態に応じて、前記蓄積手段(4)の下流で、前記可動手段すなわち補償手段に前記繊維機械に向かう方向又はこれと反対方向に作用し、前記補償手段(11)は、状態変化すなわち非常事態の終端で前記糸若しくは糸状体(8)を通常走行位置に戻すことを特徴とする方法。
【請求項13】
通常の供給位置に対応する前記糸若しくは糸状体の静止位置からの前記可動手段すなわち補償手段(11)の移動と移動度合とを検出することにより、非常事態の場合でも、すなわち前記糸若しくは糸状体の取り込み状態に変化が生じても、前記蓄積手段(4)を機能させて、前記糸若しくは糸状体(8)への前記蓄積手段の関与を修正し、前記糸若しくは糸状体の張力値を遅滞なく一定に維持することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記可動手段すなわち補償手段(11)の移動度合を調節して、前記糸若しくは糸状体の張力とは独立して、前記糸若しくは糸状体の通常の供給における位置を調節することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記調節は、前記補償手段(11)に作用する可動アクチュエータを機能させることにより行うことを特徴とする請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A−3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−514939(P2011−514939A)
【公表日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550074(P2010−550074)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【国際出願番号】PCT/EP2009/001663
【国際公開番号】WO2009/112221
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(596111896)ビ.ティ.エッセ.エルレ.インターナショナル ソチエタ ペル アチオーニ (8)
【Fターム(参考)】