説明

非鉄金属の電解採取方法

【課題】鉛の品位が極めて低い亜鉛や銅などの非鉄金属を安価に電解採取することができるとともに、鉛の品位が極めて低い亜鉛や銅などの非鉄金属をより長期間にわたって安定して電解採取することができる、非鉄金属の電解採取方法を提供する。
【解決手段】鉛を含むアノードを使用して硫酸亜鉛や硫酸銅などの非鉄金属の硫酸塩を含む電解液から亜鉛や銅などの非鉄金属を電解採取する方法において、電解液に浸漬される表面に100μm以上、好ましくは300μm以上の高低差が形成されたアノードを使用して、非鉄金属の電解採取を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非鉄金属の電解採取方法に関し、特に、鉛を含むアノードを使用して硫酸亜鉛や硫酸銅などの非鉄金属の硫酸塩を含む電解液から亜鉛や銅などの非鉄金属を電解採取する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アノードとして硫酸に不溶な鉛板または鉛−銀合金板を使用して、硫酸亜鉛や硫酸銅などの非鉄金属の硫酸塩を含む電解液から亜鉛や銅などの非鉄金属をカソード上に析出または付着させて、非鉄金属を電解採取する方法が知られている。
【0003】
しかし、このような非鉄金属の電解採取方法では、アノードから電解液中に少量の鉛イオンが移行して、その一部がカソード上に析出または付着して電着亜鉛や電着銅などに混入する。
【0004】
このような電着亜鉛中に混入する鉛の量を低減させるために、電解液に炭酸ストロンチウムなどの添加剤を少量添加して、電解液中の鉛イオンなどを吸着させて除去する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、アノードとして鉛を含まないDSE電極(寸法安定電極)を使用して、高純度亜鉛を電解採取する方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−20989号公報(段落番号0002−0007)
【特許文献2】特開平10−46274号公報(段落番号0020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、電解液に炭酸ストロンチウムを添加する方法では、炭酸ストロンチウムの水への溶解度が非常に低いため、電解液中にストロンチウムを均一に分散させることができず、カソード上の電着亜鉛中の鉛の品位をさらに低減させるのは困難である。また、比較的高価なDSE電極を使用せずに、安価な鉛板や(0.4〜3質量%の銀を含む)鉛−銀合金板を使用して、カソード上の電着亜鉛中の鉛の品位をさらに低減させることが望まれている。また、鉛の品位が極めて低い亜鉛や銅などの非鉄金属をより長期間にわたって安定して電解採取することができるようにすることも望まれている。
【0007】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、鉛の品位が極めて低い亜鉛や銅などの非鉄金属を安価に電解採取することができる、非鉄金属の電解採取方法を提供することを目的とする。また、本発明は、鉛の品位が極めて低い亜鉛や銅などの非鉄金属をより長期間にわたって安定して電解採取することができる、非鉄金属の電解採取方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、鉛を含むアノードを使用して非鉄金属の硫酸塩を含む電解液から非鉄金属を電解採取する方法において、電解液に浸漬される表面に100μm以上の高低差が形成されたアノードを使用することにより、鉛の品位が極めて低い亜鉛や銅などの非鉄金属を安価に電解採取することができることを見出し、また、ストロンチウムイオンを含む水溶液を電解液に添加し、電解液に浸漬される表面に100μm以上の高低差が形成されたアノードを使用して亜鉛や銅などの非鉄金属の電解採取を行うことにより、鉛の品位が極めて低い亜鉛や銅などの非鉄金属をより長期間にわたって安定して電解採取することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明による非鉄金属を電解採取する方法は、鉛を含むアノードを使用して非鉄金属の硫酸塩を含む電解液から非鉄金属を電解採取する方法において、電解液に浸漬される表面に100μm以上、好ましくは300μm以上の高低差が形成され、好ましくは表面の算術平均粗さRaが6μm以上であるアノードを使用することを特徴とする。
【0010】
この非鉄金属の電解採取方法において、ケイ砂、亜鉛粒、亜鉛カットワイヤーまたはアルミナグリッドを使用するブラスト処理により表面を粗くして高低差が形成されたアノードを使用するのが好ましい。また、電解液にストロンチウムイオンを含む水溶液を添加して非鉄金属の電解採取を行うのが好ましい。この場合、ストロンチウムイオンを含む水溶液が、水に二酸化硫黄ガスを吹き込み且つ炭酸ストロンチウムを添加することによって、炭酸ストロンチウムを溶解させた水溶液であるのが好ましい。あるいは、ストロンチウムイオンを含む水溶液が、水に二酸化硫黄ガスを吹き込み且つ過剰の炭酸ストロンチウムを添加することによって、炭酸ストロンチウムの一部を溶解させるとともに残りを懸濁させた懸濁液でもよい。あるいは、ストロンチウムイオンを含む水溶液が、水に硫化水素ガスを吹き込み且つ水酸化ストロンチウムを添加することによって、水酸化ストロンチウムを溶解させた水溶液でもよい。また、ストロンチウムイオンを含む水溶液の代わりに、濃硫酸にストロンチウムが溶解したストロンチウム含有溶液を電解液に添加して非鉄金属の電解採取を行ってもよい。また、非鉄金属が亜鉛であり、非鉄金属の硫酸塩が硫酸亜鉛であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鉛を含むアノードを使用して非鉄金属の硫酸塩を含む電解液から非鉄金属を電解採取する方法において、電解液に浸漬される表面に100μm以上の高低差が形成されたアノードを使用することにより、鉛の品位が極めて低い亜鉛や銅などの非鉄金属を安価に電解採取することができる。特に、鉛の品位が3ppm以下の亜鉛、さらに1ppm以下と極めて低い(鉛フリーの)亜鉛を安価に電解採取することができる。また、鉛の品位が極めて低い亜鉛や銅などの非鉄金属をより長期間にわたって安定して電解採取することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による非鉄金属の電解採取方法の実施の形態では、鉛を含むアノードを使用して硫酸亜鉛や硫酸銅などの非鉄金属の硫酸塩を含む電解液から亜鉛や銅などの非鉄金属を電解採取する方法において、鉛を含むアノードの電解液に浸漬される表面に100μm以上、好ましくは300μm以上の高低差を形成した後、このアノードを使用して電解採取を行う。また、ストロンチウムイオンを含む水溶液を電解液に添加し、電解液に浸漬される表面に100μm以上、好ましくは300μm以上の高低差が形成されたアノードを使用して非鉄金属の電解採取を行ってもよい。
【0013】
鉛を含むアノードとしては、亜鉛や銅などの非鉄金属の電解採取において通常使用される鉛合金のアノードを使用するのが好ましく、鉛―銀―カルシウム合金や、鉛―銀合金などのアノードを使用するのが好ましい。
【0014】
このような高低差が表面に形成されたアノードは、アノードの表面をブラスト処理することによって得ることができる。すなわち、圧縮空気によって砂、アルミナグリッド、金属粒子などの硬質な粒子(メディア)を衝突させるブラスト処理を行うことによって得ることができる。このブラスト処理によって、アノードの表面を粗くして、表面の汚れや変質層を除去することができる。
【0015】
このブラスト処理には、メディアとして、粒径や形状の点から、砂、アルミナグリッド、金属粒子などを使用するのが好ましいが、安価でアノードの表面を比較的均一に加工できるアルミナグリッドや砂を用いたサンドブラスト処理を行うのがさらに好ましい。メディアとして砂を使用する場合には、ケイ砂4号程度でもよいが、砂よりもアルミナグリッドを使用した方がアノードの表面を粗くすることができ、消耗が少なく、扱い易いので、アルミナグリッドを使用するのが好ましい。アルミナグリッドを使用する場合には、#24から#14(710μm〜2.8mm)までの粗粒のアルミナグリッドを使用すればよい。また、アノードの表面に300μm以上の高低差を形成するためには、直径1〜2mm程度の亜鉛線を1〜2mm程度の長さに切断して得られた亜鉛カットワイヤーや、#24から#14(710μm〜2.8mm)までのアルミナグリッドをメディアとして使用するのが好ましい。
【0016】
このブラスト処理の条件は、圧縮空気の圧力による吐出圧、メディアの吐出量、吐出面積、吐出時間などによって制御することができる。これらの条件の少なくとも一つを変えることによって、アノードの表面粗さを制御することができる。なお、ブラスト処理は、必ずしもアノードの表面全体に施す必要はなく、少なくともアノードの電解液に浸漬される部分の表面に施せばよいが、アノードの電解液面近傍の部分とその下方の電解液に浸漬される部分の表面に施すのが好ましい。また、ブラスト処理後には、メディアが付着している場合もあるので、エアーなどにより払い落とすか、水や希酸などで洗浄するのが好ましい。
【0017】
ストロンチウムイオンを含む水溶液は、水に二酸化硫黄ガスを吹き込み且つ炭酸ストロンチウムを添加して、炭酸ストロンチウムを溶解させることによって作製することができる。例えば、純水に二酸化硫黄ガスを吹き込みながら炭酸ストロンチウム粉末を添加したり、純水に炭酸ストロンチウムを添加して二酸化硫黄ガスを吹き込むことによって、炭酸ストロンチウムを溶解させて、ストロンチウムイオンを含む水溶液(炭酸ストロンチウムが過剰の二酸化硫黄ガスに溶解した水溶液)を作製することができる。
【0018】
なお、炭酸ストロンチウム粉末は、二酸化硫黄ガスを吹き込んでpHが(例えば1.5程度まで)下がったことを確認した後に添加するのが好ましい。このように純水に二酸化硫黄ガスを吹き込みながら炭酸ストロンチウム粉末を添加して、炭酸ストロンチウムを溶解させることによって、ストロンチウムイオン(Sr2+)濃度が2.6〜2.8g/Lの高濃度のストロンチウムイオンを含む水溶液を作製することができる。
【0019】
このようにして作製したストロンチウムイオン濃度が2.6〜2.8g/Lの高濃度のストロンチウム水溶液を1体積%より多く電解液に添加すれば、電解液中のストロンチウムイオン濃度を26〜28mg/Lより多くすることができ、2体積%以上電解液に添加すれば、電解液中のストロンチウムイオン濃度を52〜56mg/L以上にすることができ、炭酸ストロンチウム粉末を電解液に添加する場合(この場合のストロンチウムイオン濃度は最大16mg/L)と比べて、電解液中のストロンチウムイオン濃度を極めて高くすることができる。また、この高濃度のストロンチウムイオンを含む水溶液を電解液に添加することにより、ストロンチウムイオンを電解液中に均一に分散させることができ、ストロンチウムによるPb共沈効果を電解液全体にわたって発揮させて、カソード上の電着亜鉛中のPb品位の低減を維持させることができる。
【0020】
また、電解採取後の電解液中の全ストロンチウム濃度が50mg/L以上になるようにするのが好ましい。このような電解採取後の電解液中の全ストロンチウム濃度にするためには、例えば、ストロンチウムイオン濃度が2.6〜2.8g/Lの水溶液を2体積%以上電解液に添加すればよい。
【0021】
また、純水に二酸化硫黄ガスを吹き込み且つ過剰の炭酸ストロンチウム粉末を添加することにより、炭酸ストロンチウムの一部を溶解させるとともに溶け残りを懸濁させた懸濁液として、ストロンチウムイオンを含む水溶液を作製してもよい。このようにすれば、ストロンチウムイオンを含む水溶液の電解液への添加量を少なくすることができる。この場合でも、高濃度のストロンチウムイオンを含む水溶液を電解液に添加することにより、カソード上の電着亜鉛中のPb品位が3ppm以下となる電解採取を維持することができる。
【0022】
また、純水に硫化水素ガスを吹き込み且つ水酸化ストロンチウムを添加して、水酸化ストロンチウムを溶解させることによって、ストロンチウムイオンを含む水溶液を作製してもよい。このように純水に硫化水素ガスを吹き込み且つ水酸化ストロンチウムを添加して、水酸化ストロンチウムを溶解させることによって、ストロンチウムイオン濃度が30g/Lの極めて高濃度のストロンチウムイオンを含む水溶液を得ることができる。また、極めて高濃度のストロンチウムイオンを含む水溶液を得ることができるので、ストロンチウムイオンを含む水溶液の電解液への添加量を少なくすることができる。この場合でも、極めて高濃度のストロンチウムイオンを含む水溶液を電解液に添加することにより、カソード上の電着亜鉛中のPb品位を数ppmまで低減させることができる。
【0023】
また、上記のストロンチウムイオンを含む水溶液の代わりに、濃硫酸にストロンチウムが溶解したストロンチウム含有溶液を電解液に添加して非鉄金属の電解採取を行ってもよい。
【0024】
本発明による非鉄金属の電解採取方法の実施の形態では、電解液中の非鉄金属(例えば鉛やマンガン)が電解採取の際に酸化して(剥離し難い)スケールを形成し、このスケールがアノード全体を覆うことによってPbの溶出を防いでいると考えられ、アノードの表面の高低差が大きいほど、このスケールを形成し易いと考えられる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明による非鉄金属の電解採取方法の実施例について詳細に説明する。
【0026】
[実施例1]
まず、ブラスト処理に使用するメディアとして、直径2mmの亜鉛線を2mm程度の長さ切断して得られた多数の亜鉛カットワイヤー(大阪カットワイヤー株式会社製)を用意し、ブラストガンによってPb−Ag合金のアノード板の表面の電解液と接触する領域にエアー圧0.9MPaで亜鉛カットワイヤーを衝突させることによってブラスト処理を施した後、アノード板に付着している亜鉛カットワイヤーを取り払って水洗した。
【0027】
このようにしてブラスト処理したアノードの表面をマイクロスコープ(キーエンス株式会社製のVHX−1000)を用いて倍率100倍で画像を撮影して3D化し、内蔵された解析ソフト(クイック深度合成&3D)を用いてアノードの表面の高低差を求めたところ、アノードの表面に高低差1142μmの凹凸が形成されていた。
【0028】
また、上記の画像の3Dデータを、変換ソフト(三谷商事株式会社製のVHX 3D Exporter)を用いてCSVファイルに変換し、さらに変換ソフト(Tresvalle 7)を用いてFRNファイルに変換し、このFRNファイルを画像処理ソフト(WinRoof)に読み込んでキャリブレーションを行った後、測定範囲6.96mm(3.05mm×2.28mm)とし、カットオフ値を一定(0.8mm)にして、表面粗さの測定を行ったところ、アノードの表面の算術平均粗さRaは29.1μmであった。
【0029】
次に、硫酸亜鉛を含む電解液として、亜鉛製錬工程で得られた電解尾液をろ過した電解液(Zn:65g/L、FA:170g/L、全Pb:0.1mg/L)1.8Lを使用し、ブラスト処理したアノード板と、Alからなるカソード板を使用し、極間距離を26mmとし、42℃において電流密度600A/mで電解採取を行った。
【0030】
通電開始から1日毎(24時間毎)に電解液の一部を採取し、ICP質量分析装置(ICP−MS)により、採取した電解液をろ過しないで(電解液中に固体として存在するPbも含めた)全Pb濃度を測定するとともに、カソードに電着した亜鉛中の鉛の品位を測定した。また、測定毎(1日毎)に新しいカソード板に交換した。なお、測定値に対する電解液とアノード以外の要因からの影響を少なくするために、通電開始から1日目までを予備的に通電処理される予備電解の処理期間とした。
【0031】
その結果、通電開始から5日目では、電着亜鉛中のPb品位は0.04ppmであり、18日間にわたってPb品位が1ppm以下の低鉛の電着亜鉛を採取することができ、4N(99.99%)の亜鉛を得ることができた。なお、通電開始から18日目の電解液中の全Pb濃度は0.07mg/Lであった。
【0032】
[実施例2]
ブラスト処理に使用するメディアとして、直径1mmの亜鉛線を1mm程度の長さ切断して得られた多数の亜鉛カットワイヤー(大阪カットワイヤー株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、電解採取を行い、全Pb濃度を測定するとともに、カソードに電着した亜鉛中の鉛の品位を測定した。なお、本実施例においてブラスト処理したアノードの表面には高低差517μmの凹凸が形成され、アノードの表面の算術平均粗さRaは12.6μmであった。
【0033】
その結果、測定開始から2日目では、電着亜鉛中のPb品位は0.19ppmであり、7日間にわたってPb品位が1ppm以下の低鉛の電着亜鉛を採取することができ、4N(99.99%)の亜鉛を得ることができた。なお、通電開始から7日目の電解液中の全Pb濃度は0.21mg/Lであった。
【0034】
[実施例3]
ブラスト処理に使用するメディアとして#14アルミナグリッドを使用した以外は、実施例1と同様の方法により、電解採取を行い、全Pb濃度を測定するとともに、カソードに電着した亜鉛中の鉛の品位を測定した。なお、本実施例においてブラスト処理したアノードの表面には高低差723μmの凹凸が形成され、アノードの表面の算術平均粗さRaは23.5μmであった。
【0035】
その結果、測定開始から5日目では、電着亜鉛中のPb品位は0.02ppmであり、18日間にわたってPb品位が1ppm以下の低鉛の電着亜鉛を採取することができ、4N(99.99%)の亜鉛を得ることができた。なお、通電開始から18日目の電解液中の全Pb濃度は0.06mg/Lであった。
【0036】
[実施例4]
エアー圧を0.4MPaとした以外は、実施例3と同様の方法により、電解採取を行い、全Pb濃度を測定するとともに、カソードに電着した亜鉛中の鉛の品位を測定した。なお、本実施例においてブラスト処理したアノードの表面には高低差498μmの凹凸が形成され、アノードの表面の算術平均粗さRaは20.5μmであった。
【0037】
その結果、測定開始から6日目では、電着亜鉛中のPb品位は0.14ppmであり、12日間にわたってPb品位が1ppm以下の低鉛の電着亜鉛を採取することができ、4N(99.99%)の亜鉛を得ることができた。なお、通電開始から12日目の電解液中の全Pb濃度は0.14mg/Lであった。
【0038】
[実施例5]
ブラスト処理に使用するメディアとしてケイ砂4号を使用した以外は、実施例4と同様の方法により、電解採取を行い、全Pb濃度を測定するとともに、カソードに電着した亜鉛中の鉛の品位を測定した。なお、本実施例においてブラスト処理したアノードの表面には高低差223μmの凹凸が形成され、アノードの表面の算術平均粗さRaは6.1μmであった。
【0039】
その結果、通電開始から2日目と3日目では、電着亜鉛中のPb品位は1.0ppm以下であり、2日間にわたってPb品位が1ppm以下の低鉛の電着亜鉛を採取することができ、4N(99.99%)の亜鉛を得ることができた。なお、通電開始から3日目の電解液中の全Pb濃度は0.49mg/Lであり、4日目の電着亜鉛中のPb品位は3ppmであった。
【0040】
[実施例6]
ブラスト処理に使用するメディアとして亜鉛粒を使用し、通電開始から2日目までを予備電界の処理時間とした以外は、実施例4と同様の方法により、電解採取を行い、全Pb濃度を測定するとともに、カソードに電着した亜鉛中の鉛の品位を測定した。なお、本実施例においてブラスト処理したアノードの表面には高低差124μmの凹凸が形成され、アノードの表面の算術平均粗さRaは6.7μmであった。
【0041】
その結果、測定開始から3日目に1ppm以下の低鉛の電着亜鉛を採取することができ、4N(99.99%)の亜鉛を得ることができた。なお、通電開始から3日目の電解液中の全Pb濃度は0.3mg/Lであり、4日目以降の電着亜鉛中のPb品位は1ppmを超えたが、5日目まで3ppm以下のPb品位を維持することができた。
【0042】
[比較例1]
アノード板の表面の処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法により、電解採取を行い、カソードに電着した亜鉛中のPb品位を測定したところ、2日目で100ppm以上になり、Pb品位は極めて高かった。なお、本比較例において使用した未処理のアノードの表面には高低差39μmの凹凸があり、アノードの表面の算術平均粗さRaは0.8μmであった。
【0043】
[比較例2]
ブラスト処理の代わりにアノード板をサンドペーパー#40で研磨した以外は、実施例1と同様の方法により、電解採取を行い、全Pb濃度を測定するとともに、カソードに電着した亜鉛中のPb品位を測定した。なお、本比較例において研磨したアノードの表面には高低差81μmの凹凸が形成され、アノードの表面の算術平均粗さRaは5.3μmであった。
【0044】
その結果、通電開始から2日目と3日目では、電着亜鉛中のPb品位はそれぞれ17ppmと5ppmであり、Pb品位が非常に高かった。なお、通電開始から3日目の電解液中の全Pb濃度は0.5mg/Lであり、4日目の電着亜鉛中のPb品位は5ppm以上と高かった。
【0045】
[実施例7]
硫酸亜鉛を含む電解液として、亜鉛製錬工程で得られた電解尾液をろ過した電解液(Zn:65g/L、FA:170g/L、全Pb:0.1mg/L)を用意した。また、純水に200mL/分の流量で二酸化硫黄ガスを吹き込みながら、40℃においてバッフル付きの二段タービンによって400rpmで10分間撹拌し、炭酸ストロンチウム5g/Lを添加してさらに30分間撹拌し、得られた水溶液を吸引ろ過して、ストロンチウムイオン濃度が2.58g/Lのストロンチウム含有水溶液を用意した。このストロンチウム含有水溶液40mLを電解液1.76Lに添加して、電解採取用電解液1.8Lを得た。この電解液を使用した以外は、実施例5と同様の方法により、電解採取を行い、全Pb濃度を測定するとともに、カソードに電着した亜鉛中の鉛の品位を測定した。なお、本実施例においてブラスト処理したアノードの表面には高低差223μmの凹凸が形成され、アノードの表面の算術平均粗さRaは6.1μmであった。
【0046】
その結果、通電開始から2日目〜8日目まではいずれも、電着亜鉛中のPb品位は1ppm以下であり、7日間は1ppm以下の低鉛の電着亜鉛を採取することができた。特に、7日目には、電着亜鉛中のPb品位が0.2ppmの非常に低鉛の電着亜鉛を採取することができ、4N(99.99%)の亜鉛を得ることができた。なお、通電開始から2日目〜8日目までの電解液中の全Pb濃度は0.2mg/Lであり、全Pb濃度は非常に低かった。
【0047】
[実施例8]
ブラスト処理に使用するメディアとして#14アルミナグリッドを使用し、エアー圧を0.9MPaとした以外は、実施例7と同様の方法により、電解採取を行い、全Pb濃度を測定するとともに、カソードに電着した亜鉛中の鉛の品位を測定した。なお、本実施例においてブラスト処理したアノードの表面には高低差584μmの凹凸が形成され、アノードの表面の算術平均粗さRaは20.5μmであった。
【0048】
その結果、通電開始から1日目〜25日目まではいずれも、電着亜鉛中のPb品位は1ppm以下であり、25日間は1ppm以下の低鉛の電着亜鉛を採取することができた。特に、3日目には、電着亜鉛中のPb品位が検出限度以下の0.02ppm以下の極めて低鉛の電着亜鉛を採取することができ、4N(99.99%)の亜鉛を得ることができた。なお、通電開始から1日目〜25日目までの電解液中の全Pb濃度は0.02〜0.05mg/Lであり、全Pb濃度は極めて低かった。また、1日目から低鉛の電解亜鉛を採取することができたことから、本実施例のように、アルミナグリッドを使用してブラスト処理を行うとともに、ストロンチウム含有水溶液を添加した電解採取用電解液を使用すると、予備電解が不要になることがわかった。
【0049】
[比較例3]
アノード板の表面の処理を行わなかった以外は、実施例7と同様の方法により、全Pb濃度を測定するとともに、カソードに電着した亜鉛中の鉛の品位を測定した。なお、本比較例において使用した未処理のアノードの表面には高低差39μmの凹凸が形成され、アノードの表面の算術平均粗さRaは5.3μmであった。
【0050】
その結果、通電開始から2日目〜8日目までは、電着亜鉛中のPb品位は4ppmであった。なお、通電開始から8日目の電解液中の全Pb濃度は0.1mg/L、電着亜鉛中のPb品位は4ppmであり、3ppm以下にならなかった。
【0051】
これらの実施例1〜8および比較例1〜3の結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
上述したように、ブラスト処理によりアノード板の表面に高低差100μm以上の凹凸を形成した実施例1〜8ではいずれも、電着亜鉛中のPb品位が1.0ppm以下であり、特に、実施例8では、電着亜鉛中のPb品位が0.02ppm以下と極めて低かった。一方、ブラスト処理によりアノード板の表面に高低差100μm以上の凹凸を形成しなかった比較例1〜3では、電着亜鉛中のPb品位がそれぞれ100ppm以上、5ppm以上、4ppm以上と高かった。
【0054】
また、電解液にストロンチウム含有水溶液を添加した実施例7および8では、電解液にストロンチウム含有水溶液を添加しなかった実施例5および6と比べて、電着亜鉛中のPb品位が1.0ppm以下の期間がかなり長くなり、アノード板のブラスト処理を行うとともに電解液にストロンチウム含有水溶液を添加して電解採取することにより、Pb品位が1.0ppm以下の亜鉛を長期間にわたって安定して採取することができることがわかった。また、電解後の電解液中の全Pb濃度も0.3mg/L以下と極めて低く、液管理の負担を軽減することができる。なお、実施例1〜8のいずれも電流効率が90〜93%であり、電流効率も良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛を含むアノードを使用して非鉄金属の硫酸塩を含む電解液から非鉄金属を電解採取する方法において、電解液に浸漬される表面に100μm以上の高低差が形成されたアノードを使用することを特徴とする、非鉄金属の電解採取方法。
【請求項2】
前記高低差が300μm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の非鉄金属の電解採取方法。
【請求項3】
前記高低差が形成されたアノードの表面の算術平均粗さRaが6μm以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の非鉄金属の電解採取方法。
【請求項4】
前記高低差が形成されたアノードが、ブラスト処理によって表面を粗くしたアノードであることを特徴とする、請求項1または2に記載の非鉄金属の電解採取方法。
【請求項5】
前記ブラスト処理が、ケイ砂、亜鉛粒、亜鉛カットワイヤーまたはアルミナグリッドを使用するブラスト処理であることを特徴とする、請求項4に記載の非鉄金属の電解採取方法。
【請求項6】
前記電解液にストロンチウムイオンを含む水溶液を添加して非鉄金属の電解採取を行うことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の非鉄金属の電解採取方法。
【請求項7】
前記ストロンチウムイオンを含む水溶液が、水に二酸化硫黄ガスを吹き込み且つ炭酸ストロンチウムを添加することによって、炭酸ストロンチウムを溶解させた水溶液であることを特徴とする、請求項6に記載の非鉄金属の電解採取方法。
【請求項8】
前記ストロンチウムイオンを含む水溶液が、水に二酸化硫黄ガスを吹き込み且つ過剰の炭酸ストロンチウムを添加することによって、炭酸ストロンチウムの一部を溶解させるとともに残りを懸濁させた懸濁液であることを特徴とする、請求項6に記載の非鉄金属の電解採取方法。
【請求項9】
前記ストロンチウムイオンを含む水溶液が、水に硫化水素ガスを吹き込み且つ水酸化ストロンチウムを添加することによって、水酸化ストロンチウムを溶解させた水溶液であることを特徴とする、請求項6に記載の非鉄金属の電解採取方法。
【請求項10】
前記電解液に、濃硫酸にストロンチウムが溶解したストロンチウム含有溶液を添加して非鉄金属の電解採取を行うことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の非鉄金属の電解採取方法。
【請求項11】
前記非鉄金属が亜鉛であり、前記非鉄金属の硫酸塩が硫酸亜鉛であることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載の非鉄金属の電解採取方法。

【公開番号】特開2013−49877(P2013−49877A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187260(P2011−187260)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(306039131)DOWAメタルマイン株式会社 (92)
【Fターム(参考)】