説明

非鉄金属溶湯の浮滓処理装置

【課題】非鉄金属の溶融炉で生じた浮滓を攪拌破砕し、浮滓に混入している非鉄金属溶融物を比重分離して回収する浮滓処理装置として、処理効率がよく、優れた耐熱性及び耐久性を備え、構造的に簡素で小型溶融炉用に適したものを提供する。
【解決手段】上方に開放した浮滓処理槽1と、浮滓処理槽1内に配置する攪拌羽根2と、攪拌羽根2の回転駆動手段3と、浮滓収容槽1を傾かせる傾動手段4とを備え、浮滓処理槽1の槽本体10の底壁部10b中央位置に、直立する筒状部11が一体形成され、筒状部11の内側に、回転駆動軸5が断熱材6を介して非接触状態で同心状に配置し、筒状部11の頂端11aより突出した回転駆動軸5の頂部5aに、攪拌羽根2の取付基部20が連結され、回転駆動手段3は回転駆動軸5を回転駆動させるように構成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムやその合金等の非鉄金属の溶融炉で生じる浮滓に混入する非鉄金属溶融物を比重分離して回収するのに用いる浮滓処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、アルミニウムやその合金等の非鉄金属を鉱石から精錬して製出したり、非鉄金属の屑や非鉄金属を含む廃材から非鉄金属を取り出す場合、高温の炉中で非鉄金属を溶融させるが、その溶融物の表面部に非金属物質(主として酸化物)がドロス、ノロ、スラグ等と称される浮滓として生成する。しかして、この浮滓中には非鉄金属の溶融物が数%から数十%程度混入しているため、資源の有効利用と経済性の両面より、該浮滓から非鉄金属溶融物を回収することが重要になる。
【0003】
そこで、従来においては、溶融炉から掻き出した浮滓を多孔底板の分離槽に投入して静置し、非鉄金属溶融物を浮滓との比重差で分離して底板の孔から落下させる静置分離方式(特許文献1)、同浮滓を多孔底板の圧搾室に収容し、圧搾して非鉄金属溶融物を絞り取る圧搾抽出方式(特許文献2〜4)、同浮滓を処理槽に収容し、上方に待機していた攪拌羽根を下降させて処理槽内に突入させ、該攪拌羽根の回転によって浮滓を攪拌し、分離沈降した非鉄金属溶融物を処理槽の底孔から流出させる攪拌分離方式(特許文献5)等により、浮滓から非鉄金属溶融物を回収することが行われている。
【0004】
しかしながら、前記の静置分離方式では、概して浮滓が塊状に固まった状態にあるため、含まれる非鉄金属溶融物を充分に分離できず、回収率が悪いという欠点があった。また、前記の圧搾抽出方式では、装置構成が複雑で且つ大掛かりになり、設備コストが非常に高く付く上、少量ずつしか圧搾を行えず、処理効率に劣るという難点があった。 一方、前記従来の攪拌分離方式では、攪拌羽根による攪拌を行うことから、浮滓が破砕されて非鉄金属溶融物を比重分離し易くなるが、攪拌羽根の駆動部が高熱で劣化するのを抑えるため、攪拌操作時以外は攪拌羽根を上方に退避させる必要があり、処理槽の上方側に攪拌羽根の昇降機構を組み付ける上で、大型の処理装置には適用できても、小型の処理装置には構造的及びコスト的に適用困難であった。
【0005】
すなわち、例えば容量が2〜3トン程度の小型溶融炉を対象とした場合、浮滓の生成が少ないために一回の処理量も少なくなり、それだけ浮滓自体の持つ総熱量が小さくて冷め易いから、溶融炉で生じた浮滓をバケット等に受けて処理槽まで運んで移すような時間的余裕がなく、溶融炉から掻き出した浮滓を直接に処理槽で受け、その場で直ちに処理を行うことになる。従って、小型溶融炉用として要求される浮滓処理槽は、溶融炉に接近させた状態で、その上端開口縁が溶融炉の掻き出し口よりも低位置、好ましくは作業デッキより低い位置にあり、且つ処理槽上方に付属物のない構造とする必要がある。
【0006】
なお、小型溶融炉用の浮滓処理装置として、旧来より浮滓処理槽内に攪拌羽根を固定的に設置する構造が種々提案されているが、いずれも耐久性の面から実用化に至っていない。その原因は、例えばアルミニウム溶湯では約750℃もの高温であることに加え、テルミット反応で更に高温化する場合もあり、その高熱によって攪拌羽根の回転支持部がすぐに劣化してしまい、回転駆動軸に摺接するブシュが焼け付いたり、軸受のグリスが蒸発・燃焼したり、更には駆動部に溶湯が侵入するといった事態に陥ることによる。
【特許文献1】特開平7−3252547号公報
【特許文献2】特開平8−309110号公報
【特許文献3】特開平10−195553号公報
【特許文献4】特開2000−303123号公報
【特許文献5】特開平9−87764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の情況に鑑み、浮滓処理槽内に攪拌羽根が固定的に設置され、しかも優れた耐熱性及び耐久性を備え、とりわけ処理量の少ない小型溶融炉用に適した非鉄金属溶湯の浮滓処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る非鉄金属溶湯の浮滓処理装置は、図面の参照符号を付して示せば、非鉄金属の溶融炉Fで生じた浮滓Dを攪拌破砕し、該浮滓Dに混入している非鉄金属溶融物を浮滓破砕物から比重分離して回収するのに用いる浮滓処理装置Mであって、上方に開放して浮滓を収容する浮滓処理槽1と、該浮滓処理槽1内に配置する攪拌羽根2と、該攪拌羽根2の回転駆動手段3と、前記比重分離した非鉄金属溶融物を流出させるために前記浮滓収容槽1を傾かせる傾動手段4とを備え、前記浮滓処理槽1の槽本体10の底部(底壁部10b)中央位置に、直立する筒状部11が一体形成されると共に、該筒状部11の内側に、回転駆動軸5が断熱材6を介して当該筒状部11とは非接触状態で同心状に配置し、前記筒状部11の頂端11aより上方突出した前記回転駆動軸5の頂部5aに、前記攪拌羽根2の取付基部20が相対回転不能に連結され、前記回転駆動手段3は前記回転駆動軸5をその下端側で回転駆動させるように構成されてなるものとしている。
【0009】
請求項2の発明は、前記請求項1の浮滓処理装置において、前記攪拌羽根2を内側に配置した前記浮滓処理槽1と、前記回転駆動手段3とが台座7上に固設され、前記傾動手段4が該台座7ごと浮滓処理槽1を傾けるものである構成としている。
【0010】
請求項3の発明は、前記請求項2の浮滓処理装置において、前記台座7に、前記回転駆動軸5をブシュ51a,51b又は/及び軸受(スラストベアリング33)を介して回転自在に抱持する回転軸保持筒8が立設され、この回転軸保持筒8が前記槽本体10の筒状部11内に突入配置すると共に、該筒状部11の内周と前記回転軸保持筒8の外周との間に断熱材6が介在してなる構成としている。
【0011】
請求項4の発明は、前記請求項1〜3のいずれかの浮滓処理装置において、前記攪拌羽根2を内側に配置した前記浮滓処理槽1と、前記回転駆動手段3とが台車9に搭載されてなる構成としている。
【0012】
請求項5の発明は、前記請求項4の浮滓処理装置において、前記台車9に前記傾動手段4が搭載されてなる構成としている。
【0013】
請求項6の発明は、前記請求項1〜5のいずれかの浮滓処理装置において、前記攪拌羽根2の取付基部20が前記回転駆動軸5の頂部5aに対して着脱可能である構成としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、浮滓処理槽1の槽本体10の底部(底壁部10b)中央位置に一体形成された筒状部11の内側に、回転駆動軸5が当該筒状部11とは断熱材6を介して非接触状態で同心状に配置し、該筒状部11の頂端11aより上方突出した回転駆動軸5の頂部5aに、攪拌羽根2の取付基部20が相対回転不能に連結され、回転駆動手段3が回転駆動軸5をその下端側で回転駆動させるようにしているから、浮滓処理槽1に収容した浮滓Dの高熱が回転駆動軸5に伝わりにくく、該回転駆動軸5に摺接するブシュ51a,51bや軸受(スラストベアリング33)、回転駆動手段3の各部の高熱による劣化が防止され、もって浮滓処理装置M全体が優れた耐久性を発揮する。
【0015】
そして、この浮滓処理装置では、攪拌羽根2が浮滓処理槽1内に配置し、該浮滓処理槽1の上方に付属物がないから、浮滓処理の対象とする溶融炉Fが例えば溶湯容量2〜3トン程度の小型のものであっても、該溶融炉Fの近傍に配置した際の浮滓処理槽1の開口縁部を溶融炉Fの掻き出し口Oよりも低く設定することにより、当該溶融炉Fの掻き出し口Oから掻き出した浮滓Dを直接に浮滓処理槽1内に投入して、直ちに攪拌羽根2を回転して浮滓Dを攪拌破砕でき、もって該浮滓Dに混入していた非鉄金属溶融物が冷えて固まらない内に該溶融物を能率よく迅速に比重分離できる。かくして、比重分離された非鉄金属溶融物は、傾動手段4にて浮滓処理槽1を傾けることにより、該処理槽1から所要の器に流し込み、冷却固化させてインゴットとする。
【0016】
請求項2の発明によれば、攪拌羽根2を内側に配置した浮滓処理槽1と回転駆動手段3とが台座7上に固設されており、処理後の比重分離した非鉄金属溶融物を取り出す際、傾動手段4によって該台座7ごと浮滓処理槽1を傾ければよいから、回転駆動手段3の原動部から攪拌羽根2に至る回転力伝達経路には浮滓処理槽1の傾動変位に対応した複雑な係脱機構を設ける必要がなく、それだけ装置構成が簡素化し、処理装置の製作コストが低減される。
【0017】
請求項3の発明によれば、前記回転駆動軸5が台座7に立設された回転軸保持筒8に回転自在に抱持されているから、該回転駆動軸5の回転時に芯振れを生じにくく、攪拌羽根2の安定した回転性が得られると共に、槽本体10の筒状部11の内周と回転軸保持筒8の外周との間に断熱材6が介在するから、高温の槽本体10から回転軸保持筒8を介した回転駆動軸5及び台座7への伝熱が抑えられる。
【0018】
請求項4の発明によれば、攪拌羽根2を内側に配置した浮滓処理槽1と回転駆動手段3とが、台車9に搭載されて移動可能であるから、例えば溶融炉F近傍の浮滓受取り位置と、処理後の非鉄金属溶融部ならびに浮滓Dの両取出し位置との間で、迅速に移動させて作業能率を高めることができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、前記台車9に傾動手段4が搭載されているから、該台車9によって浮滓処理装置全体を工場内で自在に移動させることができる。
【0020】
請求項6の発明によれば,攪拌羽根2の取付基部20が回転駆動軸5の頂部5aに対して着脱可能であるから、攪拌羽根2の摩耗や損傷による交換と補修を容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明に係る非鉄金属溶湯の浮滓処理装置の一実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1は浮滓処理装置Mの側面図、図2は同平面図、図3は同浮滓処理装置Mの台車を外した状態での縦断側面図、図4は溶融炉Fから浮滓処理装置Mへの浮滓投入状況を示す概略正面図である。
【0022】
図1及び図2に示すように、この浮滓処理装置Mは、チャンネル材7a…にて枠組みされた台座7上に、上方に開放して内部に攪拌羽根2が配置した平面視略円形の浮滓処理槽1と、攪拌羽根2の回転駆動手段3の原動部である駆動モータ30とが前後して固設されており、その全体が前後左右の車輪90…を備えた台車9上に載置されてなる。
【0023】
浮滓処理槽1は、図3に示すように、FC20の如き鋳鉄製の槽本体10の周壁部10aから底壁部10bにわたる外面側と、外周カバー板12a及び下面カバー板12bとの間に、セラミックファイバーからなる断熱材6が装填されている。また、槽本体10は、底壁部10bの中央位置に直立した筒状部11が一体形成されると共に、上縁には前方へ突出した樋状の排出口13を有している。
【0024】
槽本体10の筒状部11の内側は上下方向に透通しており、台座7に立設された回転軸保持筒8と、該保持筒8の内側に上下位置のブシュ51,51を介して回転自在に抱持された回転駆動軸5とが、当該筒状部11の内側に同心状に配置している。しかして、槽本体10の筒状部11は頂端11aが浮滓処理槽1の上縁1aよりも若干低位に位置するが、回転駆動軸5の上端部5aは筒状部11から浮滓処理槽1の上縁1aを越える高さに突出し、この上端部5aに攪拌羽根2の短円筒状の取付基部20が外嵌すると共に、該取付基部20が径方向に貫通する連結ピン14によって回転駆動軸5に対して相対回転不能で且つ着脱自在に連結されている。また、回転軸保持筒8は槽本体10の筒状部11の頂端11aよりも低位にあり、この回転軸保持筒8と該筒状部11の内周との間、ならびに該回転軸保持筒8から突出した回転駆動軸5の上部側と同筒状部11の内周との間には、前記断熱材6が介在し、もって回転駆動軸5及び回転軸保持筒8は同筒状部11に対して非接触状態に保たれている。なお、図3で示すLは浮滓処理槽1内に収容する浮滓の最大レベルを示しており、筒状部11の頂端11aは該最大レベルよりも高位になる。
【0025】
一方、回転駆動軸5の下端部5bは台座7の内側に突入し、この下端部5bに固着されたスプロケット31aと、駆動モータ30の下方突出した駆動軸30aに固着されたスプロケット31bとの間にチェーン32が巻装されて回転駆動手段3を構成しており、駆動モーター30の駆動によって回転駆動軸5と攪拌羽根2が一体に回転する。なお、図3における33は、回転軸保持筒8の下端とスプロケット31aとの間に介在するスラストベアリングである。
【0026】
攪拌羽根2は、SS−400等の鋼材製であり、前記の短円筒状の取付基部20と、その外周面の径方向両側に上段部を溶接固着して垂下する一対の縦角棒体21a,21bと、両縦角棒体21a,21bの各々に基端側を溶接固着して浮滓処理槽1の半径方向に沿って斜め下向きに配置した複数本の角棒状羽根片22…と、両縦角棒体21a,21bの各下端部に溶接固着した三角羽根板23と、両縦角棒体21a,21bを下部側で連結する補強リング24とで構成されている。しかして、一方の縦角棒体21a側では各角棒状羽根片22が一側面部を上向きにして上下に一定間隔置きに配置するのに対し、他方の縦角棒体21b側では各角棒状羽根片22が一側辺部を上向きにして且つ縦角棒体21aとは半ピッチずれて上下に一定間隔置きに配置している。また、両縦角棒体21a,21bと槽本体10の筒状部11の外周面との間には間隙t1が設定されると共に、取付基部20の下端面と該筒状部11の頂端11aとの間にも間隙t2が設定され、もって攪拌羽根2全体が槽本体10に対して非接触状態に保持されるようになっている。
【0027】
図1及び図2に示すように、台車9の前端部の左右両側には傾動支持枠91,91が立設される一方、浮滓処理槽1の前縁部にはブラケット15a,15aを介して水平枢軸15が固着されており、該水平枢軸15の両端部が支持枠91,91の頂部に取り付けた軸受92,92を介して回転自在に枢支されている。また、台車9の後端部右側にはボールねじ方式の電動シリンダユニットからなる傾動手段4が枢軸93を介して起伏回動自在に取り付けられ、該傾動手段4の電動シリンダ40の伸縮ロッド40aと、浮滓処理槽1側の水平枢軸15の右端に固着されたレバー16の先端部とがピン16aを介して枢着連結されている。そして、該電動シリンダ40の収縮状態では、浮滓処理槽1を搭載した台座7が図示実線の如く水平姿勢で台車9上に載っているが、該電動シリンダ40の伸長作動により、レバー16が上方回動し、これに伴って浮滓処理槽1が台座7ごと前方へ傾動し、該電動シリンダ40の最伸長状態では図示仮想線の如く浮滓処理槽1が排出口13を下向きにした倒立姿勢になるように設定されている。なお、台車9の後部左側には制御盤94が、同後部右側には収納箱95が搭載されている。更に台車9の前後部には開放側を下向きに配置したチャンネル材9a,9aによってフォーク挿入部96,96が構成されており、これらフォーク挿入部96,96にフォークを挿入して処理装置M全体をフォークリフトで運搬できるようになっている。
【0028】
上記構成の浮滓処理装置Mによってアルミニウムやその合金の如き非鉄金属溶湯の浮滓処理を行うには、例えば図4に示すように、アルミニウムやその合金の如き非鉄金属の溶融炉Fが設置された作業デッキP下側の床G上で、該溶融炉Fの掻き出し口Oの直下に浮滓処理槽1が臨むように当該処理装置Mを配置し、適当な掻き出し具を用いて炉内の浮滓Dを掻き出し口Oから掻き出して、シュートSを介して浮滓処理槽1内に直接に投入し、回転駆動手段3の作動によって攪拌羽根2を回転して該浮滓Dを攪拌破砕する。なお、アルミニウム溶湯では、アルミニウムの比重が約2.7であるのに対し、浮滓Dの酸化物の比重は1.37程度であるから、前記攪拌破砕によって比重分離が迅速に進むと共に、破砕によって塊状物中に取り込まれていた溶融物も遊離し易くなる。
【0029】
かくして浮滓Dに混入していた非鉄金属溶融物を比重分離したのち、傾動手段4にて浮滓処理槽1を傾けることにより、該処理槽1の排出口から所要の器に流し込み、冷却固化させてインゴットとし、浮滓処理槽1内に残る浮滓Dも同様に当該処理槽1を傾けて所要の容器等に排出する。なお、残る浮滓Dの排出に際しては、その排出促進のために攪拌羽根2を回転させるのがよい。また、浮滓処理槽1は、投入された浮滓Dが低温の該処理槽1に触れて急激に温度低下するのを回避する上で、溶融炉Fから浮滓Dを投入する前に、300〜400℃程度に予熱しておくことが好ましい。
【0030】
しかして、この浮滓処理装置Mでは、槽本体10の底部から立ち上がる筒状部11の内側に、回転駆動軸5が断熱材6を介して非接触状態で配置し、該筒状部11の頂端11aより上方突出した回転駆動軸5の頂部5aに攪拌羽根2の取付基部20が連結されているから、浮滓処理槽1に収容した浮滓Dの高熱が回転駆動軸5に伝わりにくく、該回転駆動軸5に摺接するブシュ51や回転駆動手段3の各部の高熱による劣化が防止され、もって装置M全体が優れた耐久性を発揮する。また、攪拌羽根2が浮滓処理槽1内に配置し、該処理槽1の上方に付属物がないから、浮滓処理の対象とする溶融炉Fが例えば溶湯容量2〜3トン程度の小型のものであっても、該溶融炉Fの近傍に配置した際の浮滓処理槽1の開口縁部(上縁1a)を溶融炉Fの掻き出し口Oよりも低く設定することにより、当該溶融炉Fの掻き出し口Oから掻き出した浮滓Dを直接に浮滓処理槽1内に投入でき、該浮滓Dに混入していた非鉄金属溶融物が冷えて固まらない内に該溶融物を比重分離して取り出すことが可能となる。
【0031】
なお、本発明においては、傾動手段4として、浮滓処理槽1のみを傾動させる機構を採用してもよいが、前記実施形態のように当該処理槽1及び回転駆動手段3を固設した台座7ごと傾動させる構成とすれば、回転駆動手段3の原動部から攪拌羽根2に至る回転力伝達経路には浮滓処理槽1の傾動変位に対応した複雑な係脱機構を設ける必要がなく、それだけ装置構成が簡素化し、処理装置の製作コストが低減されるという利点がある。また、実施形態のように、回転駆動軸5が台座7に立設された回転軸保持筒8に回転自在に抱持される構成とすれば、該回転駆動軸5の回転時に芯振れを生じにくく、攪拌羽根2の安定した回転性が得られるから、より処理効率が向上することになる。そして、この回転軸保持筒8を設ける場合、実施形態の如く槽本体10の筒状部11の内周と回転軸保持筒8の外周との間に断熱材6を介在させることにより、高温の槽本体10から回転軸保持筒8を介した回転駆動軸5及び台座7への伝熱が抑えられる。更に、実施形態のように攪拌羽根2の取付基部20が回転駆動軸5の頂部5aに対して着脱可能であれば、攪拌羽根2の摩耗や損傷による交換と補修を容易に行えるという利点がある。
【0032】
一方、実施形態の構成では、攪拌羽根2を内側に配置した浮滓処理槽1と回転駆動手段3とが、台車9に搭載されて移動可能であるから、例えば溶融炉F近傍の浮滓受取り位置と、処理後の非鉄金属溶湯ならびに浮滓Dの両取出し位置との間で、迅速に移動させて作業能率を高めることができると共に、台車9に傾動手段4が搭載されているから、該台車9によって処理装置M全体を工場内で自在に移動させることができる。
【0033】
前記実施形態の浮滓処理槽1では比重分離した非鉄金属溶融物と残る浮滓Dとを一つの排出口13から排出するようにしているが,本発明の浮滓処理装置Mでは、該排出口13を例えば径方向両側の2カ所に設け、一方向への傾動によって一方の排出口13から非鉄金属溶融物を排出したのち、反対方向への傾動によって他方の排出口13から残る浮滓Dを排出する構成としてもよい。また、本発明の浮滓処理装置Mでは、前記実施形態のように浮滓Dに含まれる非鉄金属溶融物が冷却固化しない内に迅速に処理を行えるが、予熱や降温防止のために加熱機構を設けた構成としてもよい。その他、本発明の浮滓処理装置Mにおいては、攪拌羽根2の形状、その取付基部20と回転駆動軸5との連結構造、回転駆動手段3の回転伝達機構、傾動手段4の傾動機構、台座7及び台車9の形態等、細部構成については実施形態以外に種々設計変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る非鉄金属溶湯の浮滓処理装置の側面図である。
【図2】同浮滓処理装置の平面図である。
【図3】同浮滓処理装置の台車を外した状態での縦断側面図である。
【図4】同浮滓処理装置による溶融炉からの浮滓投入状況を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 浮滓処理槽
1a 上縁
10 槽本体
10a 底壁部(底部)
11 筒状部
11a 頂端
2 攪拌羽根
20 取付基部
3 回転駆動手段
33 スラストベアリング(軸受)
4 傾動手段
5 回転駆動軸
5a 頂部
51a ブシュ
51b ブシュ
6 断熱材
7 台座
8 回転軸保持筒
D 浮滓
F 溶融炉
M 浮滓処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非鉄金属の溶融炉で生じた浮滓を攪拌破砕し、該浮滓に混入している非鉄金属溶融物を浮滓破砕物から比重分離して回収するのに用いる浮滓処理装置であって、
上方に開放して浮滓を収容する浮滓処理槽と、該浮滓処理槽内に配置する攪拌羽根と、該攪拌羽根の回転駆動手段と、前記比重分離した非鉄金属溶融物を流出させるために前記浮滓収容槽を傾かせる傾動手段とを備え、
前記浮滓処理槽の槽本体の底部中央位置に、直立する筒状部が一体形成されると共に、該筒状部の内側に、回転駆動軸が断熱材を介して当該筒状部とは非接触状態で同心状に配置し、
前記筒状部の頂端より上方突出した前記回転駆動軸の頂部に、前記攪拌羽根の取付基部が相対回転不能に連結され、
前記回転駆動手段は前記回転駆動軸をその下端側で回転駆動させるように構成されてなる非鉄金属溶湯の浮滓処理装置。
【請求項2】
前記攪拌羽根を内側に配置した前記浮滓処理槽と、前記回転駆動手段とが台座上に固設され、前記傾動手段が該台座ごと浮滓処理槽を傾けるものである請求項1に記載の非鉄金属溶湯の浮滓処理装置。
【請求項3】
前記台座に、前記回転駆動軸をブシュ又は/及び軸受を介して回転自在に抱持する回転軸保持筒が立設され、この回転軸保持筒が前記槽本体の筒状部内に突入配置すると共に、該筒状部の内周と前記回転軸保持筒の外周との間に断熱材が介在してなる請求項2に記載の非鉄金属溶湯の浮滓処理装置。
【請求項4】
前記攪拌羽根を内側に配置した前記浮滓処理槽と、前記回転駆動手段とが台車に搭載されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の非鉄金属溶湯の浮滓処理装置。
【請求項5】
前記台車に前記傾動手段が搭載されてなる請求項4に記載の非鉄金属溶湯の浮滓処理装置。
【請求項6】
前記攪拌羽根の取付基部が前記回転駆動軸の頂部に対して着脱可能である請求項1〜5のいずれかに記載の非鉄金属溶湯の浮滓処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−293080(P2009−293080A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147625(P2008−147625)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(503001894)有限会社リード技研 (2)
【Fターム(参考)】