面ファスナーの雌部材、この雌部材を用いた面ファスナー及びこの面ファスナーを用いた吸収性物品
【課題】面ファスナー部分の変形や瞬間的な衝撃引き剥がし力が作用しても、雄部材から剥がれることがなく、雄部材を引き剥がす際に、繊維質材が抜けることによる毛羽立ちが生じることがない面ファスナーの雌部材を提供する。
【解決手段】繊維質材で形成され相手雄部材に係合可能な面ファスナーの雌部材であって、前記繊維質材の目付けが高い複数列の繊維密部2と、これらの繊維密部2間に設けられて繊維密部2より繊維質材の目付けが低い複数列の繊維疎部3とからなる。繊維密部2が弾性変形するため、不用意な剥がれがなくなり、毛羽立ちも少なくなる。
【解決手段】繊維質材で形成され相手雄部材に係合可能な面ファスナーの雌部材であって、前記繊維質材の目付けが高い複数列の繊維密部2と、これらの繊維密部2間に設けられて繊維密部2より繊維質材の目付けが低い複数列の繊維疎部3とからなる。繊維密部2が弾性変形するため、不用意な剥がれがなくなり、毛羽立ちも少なくなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面ファスナーの雌部材、この雌部材を用いた面ファスナー及びこの面ファスナーが用いられ、使い捨て紙オムツ、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
紙オムツ等の吸収性物品では、身体への装着及び取り外しを可能とするため、面ファスナーを用いて展開を行うようになっている。面ファスナーは雄部材と雌部材との係合及び解除によって相互の結合及び分離を行うものであり、雄部材には複数の突起群(フック)からなる係合面が形成される一方、雌部材は突起群が係合可能な不織布が用いられている。特許文献1〜3には、面ファスナーにおける雌部材の従来例が開示されている。
【0003】
特許文献1には、主体繊維が30〜100mmからなるエアースルー不織布を用い、この不織布の全幅にわたってMD方向と交差するエンボス処理を施して、CD方向の2N/25mm加重時の伸長率を175%以下で厚さを0.4mm以上とした雌部材が記載されている。エアースルー不織布を構成する繊維は基本的に平面的に配列された層構造となっており、各繊維間は互いに融着連結した構造となっている。すなわち、繊維が多く配列しているMD方向と交差するようなエンボスパターンでのエンボス処理を行うことによって、繊維層を融着して一体化して各繊維間の連結を強化し、毛羽立ちを小さくしている。
【0004】
特許文献2には、熱収縮可能な繊維ウェブにスパンボンド不織布を重ねて一体化し、その後に熱処理して繊維ウェブを収縮させ、これによってスパンボンド不織布に深さ0.2〜3mmの皺を2〜40個/1cm2形成させた雌部材が記載されている。スパンボンド不織布は平面状に配列されたエンドレスな繊維が熱エンボス等で強固に融着されているため、毛羽立ちが発生しにくい特徴を有しており、このスパンボンド不織布の下層側で一体化した熱収縮性繊維ウェブを加熱収縮させることによりパンボンド不織布に多数の皺を発生させ、この皺によって雄部材との係合性を確保している。
【0005】
特許文献3には、熱収縮性の繊維層と非熱収縮性の繊維層とを積層し、この積層体に高圧流体流を噴射して繊維同士を交絡させると同時に繊維を再配列させて開孔不織布とし、その後、加熱処理を施して熱収縮性繊維層を収縮させて熱非収縮性繊維層に繊維束のループを形成することが記載されている。このような処理によって、ランダムな方向に隆起したカール状物が形成されている。
【特許文献1】特開平11−335960号公報
【特許文献2】特開平6−33359号公報
【特許文献3】特開平11−152669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、熱融着によって各繊維の連結が不織布平面の全方向に伸びており、尚且つエンボスによってさらに強固に一体化されていることから雄部材との係合力が大きく且つ毛羽立ちは小さくなるが、その反面、係合引き剥がし方向における不織布の弾性が失われている。このため、オムツなどの着用中に面ファスナーが変形したり、瞬間的な衝撃引き剥がし力が作用した場合には、係合状態に粘りがなく雄部材から簡単に剥がれる。
【0007】
特許文献2においても、特許文献1と同様な挙動を示し、同様な課題を有している。
【0008】
特許文献3では、繊維束のループが形成され、尚且つ不織布全体の繊維間結合が繊維交絡によってルーズな連結状態とされているため、上記特許文献1及び2のような課題はないが、反面、繊維交絡によるルーズな繊維間結合のため、雄部材を係合から剥がす際に簡単に繊維が抜けて毛羽立ちが生じるという課題を有している。このために繊維交絡の程度を強くすると、不織布全体が締まり過ぎて熱収縮による繊維束のループが生じにくくなるため、雄部材が引っ掛かり難くなる。
【0009】
そこで、本発明は、面ファスナー部分の変形や瞬間的な衝撃引き剥がし力が作用しても、雄部材から簡単に剥がれることがなく、しかも雄部材を引き剥がす際に、繊維質材が抜けることによる毛羽立ちが生じることがない面ファスナーの雌部材、この雌部材を用いた面ファスナー及びこの面ファスナーを用いた吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明の面ファスナーの雌部材は、繊維質材で形成され相手雄部材に係合可能な面ファスナーの雌部材であって、前記繊維質材の目付けが高い複数列の繊維密部と、これらの繊維密部間に設けられて繊維密部より繊維質材の目付けが低い複数列の繊維疎部とからなることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の面ファスナーの雌部材であって、前記繊維密部が前記繊維質材が積み重なって形成された凸状の畝部であり、前記繊維疎部が前記畝部間に設けられた凹状の溝部であることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の面ファスナーの雌部材であって、前記畝部は、厚みが0.3mm〜6mmであり、畝部の各列間ピッチが2mm〜15mmであることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の面ファスナーの雌部材であって、前記溝部の下部の繊維質材の厚み分からなる基層部上に繊維質材が積み重ねられて前記畝部が形成され、前記基層部上に積み重ねられた繊維質材の容量は前記溝部内の容量に相当する繊維質材に等しいことを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の面ファスナーの雌部材であって、前記繊維疎部には、表裏を貫通する開口部が前記畝部の各列方向に沿って複数形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の面ファスナーの雌部材であって、前記繊維質材は、繊維質材を構成する繊維同士が絡み合った状態で、繊維質材の厚み方向に沿って裏面側から表面側まで連なっていることを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の発明の面ファスナーは、複数の突起群からなる係合面を備えた雄部材と、前記係合面に係合可能な前記請求項1〜6に記載の雌部材とからなることを特徴とする。
【0017】
請求項8記載の発明の吸収性物品は、前胴回り部材、後胴回り部材、股下部材からなるアウター部材と、前記股下部材に一体に設けられて吸収体とによって形成される吸収性物品であって、前記前胴回り部材又は後胴回り部材のいずれか一方に設けられ係合面を備えた雄部材と、いずれか他方に設けられ前記係合面に係合可能な請求項1〜7に記載の雌部材とからなる面ファスナーを具備したことを特徴とする。
【0018】
請求項9記載の発明は、請求項7記載の吸収性物品であって、予め前記前胴回り部材の両側縁部と前記後胴回り部材の両側縁部が接合されており、前記前胴回り部材の両側縁部及び後胴回り部材の両側縁部に配置された面ファスナーが予め接合されることにより全体がパンツ型となっていることを特徴とする。
【0019】
請求項10記載の発明は、前胴回り部材、後胴回り部材、股下部材からなるアウター部材と、前記股下部材と一体に設けられた吸収体とで形成される吸収性物品であって、前記前胴回り部材、後胴回り部材の少なくとも一方を請求項1乃至請求項6に記載の面ファスナーの雌部材で形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、繊維質材の目付けが高い繊維密部が厚さ方向に引っ張られるときに、その幅が縮まりながら高さが高くなる弾性変形を生じるため、雄部材との係合に粘りが生じて雄部材との係合性が良好となる。このため面ファスナーの変形や衝撃引き剥がし力があっても雄部材からの剥がれを防止でき、しかも繊維質材が抜けないため、毛羽立ちが生じることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1〜図3は、本発明の一実施形態における面ファスナーの雌部材1を示す。雌部材1は多数の繊維質材を構成要素としたエアースルー不織布であり、熱風によって繊維質材を相互に融着することにより形成されている。図1に示すように、雌部材1は繊維密部2及び繊維疎部3を備えている。
【0023】
繊維密部2は繊維質材の目付けが高い部分であり、繊維疎部3は繊維質材の目付が低い部分である。目付けは単位面積当たりの繊維質材の重量(量)であり、例えば、g/m2の単位によって表示される。繊維密部2及び繊維疎部3はMD方向(製造時に搬送される方向)に延びる帯状となっている。又、繊維密部2及び繊維疎部3は、CD方向(製造時に搬送される方向に対して直交する方向)に沿った複数の列状となっており、繊維疎部3の列は繊維密部2の列の間に位置している。すなわち、繊維密部2及び繊維疎部3はCD方向に沿って交互に位置するものである。なお、繊維密部2及び繊維疎部3を交互に配置する場合、繊維密部、繊維疎部、繊維疎部、繊維密部、あるいは、繊維疎部、繊維密部、繊維密部、繊維疎部という配置も含む。
【0024】
繊維密部2は後述するように、熱風によって繊維質材が積み重なって形成された部分であり、凸状の畝部4となっている。繊維疎部3は熱風によって繊維質材が排除された部分であり、凹状の溝部5となっている。これらの畝部4及び溝部こ5はMD方向に連続し、CD方向では交互に配置される。畝部4を構成する繊維質材はその畝部4内で繊維集合体を形成している。又、一つの畝部4を構成する繊維質材の大半は、隣接している畝部4とは独立している。また、溝部5の下部の繊維質材の厚み分からなる基層部7上に繊維質材が積み重ねられて畝部4が形成され、基層部7上に積み重ねられた繊維質材の容量は溝部5内の容量に相当する繊維質材に等しくなっている。すなわち、溝部5の下部側の繊維疎部3を形成する際に熱風によって排除された繊維質材が溝部5の両側に積み重ねられて畝部4である繊維密部2が形成されている。
【0025】
なお、一つの畝部4におけるいくらかの繊維質材は図2及び図3に示すように、畝部4の底部分(基層部7)において隣接している畝部4と連結している。この連結によって雌部材1は不織布シートとしての形態を保つことができる。
【0026】
図2及び図3に示すように、溝部5(繊維疎部3)には、開口部6が形成されている。開口部6は雌部材1の表裏を貫通するように形成されている。開口部6は熱風によって繊維質材を排除することにより形成されるものであり、開口部6を溝部5に形成することにより、開口部6の分、繊維質材を畝部4側に寄せることができるため、畝部4の目付けを高くすることができる。これにより、畝部4が図示せぬ雄部材との係合力を大きくでき、雄部材と安定して係合する。又、開口部6の周辺の繊維質材は図3に示すように、CD方向に向く傾向となるため、CD方向へのシートの延伸度が向上する。なお、開口部6については、形成しても良く、形成しなくても良い。
【0027】
この実施形態では、図1に示すように、畝部4が表面側に形成され、裏面側が平坦となっているが、畝部4を表裏の両面に形成しても良い。
【0028】
また、上記の実施例では、熱風により排除された繊維質材が溝部5の両側に積み重ねられて畝部4を形成したが、櫛状のもので表面に凹凸を付けることによって、繊維質材を排除して溝部5を形成し、溝部5から排除された繊維質材を溝部5の両側に移動させることで畝部4を形成するようにしても良い。
【0029】
次に、雌部材1における寸法、材料等の条件について説明する。
【0030】
雌部材1を構成する不織布全体の目付けは、好ましくは15〜100g/m2であり、より好ましくは、20〜50g/m2である。目付けが15g/m2未満の場合には、畝部4と溝部5との間の目付けの差を小さくしなければ溝部5の繊維質材が少なくなりすぎてCD方向の強度不足となる。一方、目付けが100g/m2を超えると、コストが高騰して好ましくない。
【0031】
畝部4の各列間ピッチP1(図2及び図3参照)は2mm〜15mmであり、より好ましくは3mm〜10mmである。ピッチP1が2mm未満では、上記目付け内で畝部4を均一に形成することができない。繊維質材を排除して畝部4を形成するためである。一方、ピッチP1が15mmを超える場合、溝部5の幅を小さくした場合(例えば、1〜2mm)、畝部4が広くなり、その反面、畝部4の高さ少なくなるため、雄部材と円滑に係合することができない。又、溝部5の幅を大きくした場合(例えば、5〜6mm)、雄部材との係合面積が少なくなって係合力が不足する。
【0032】
畝部4の厚みH1(図1参照)、すなわち不織布の厚みは、0.3mm〜6mmである。厚みH1が0.3mm未満の場合には、雄部材との掛かり具合が悪くなると共に畝部4の弾性変形効果を得ることができない。厚みH1が6mmを超える場合には、雌部材1が必要以上に嵩高となり取り扱いが不便となる。
【0033】
雌部材1である不織布に用いる繊維質材は、芯鞘構造を有する複合繊維が選択される。この複合繊維は、芯成分を構成する樹脂よりも、鞘成分が低融点の樹脂からなっている。これらの樹脂の配合比率は、好ましくは50%以上であり、さらに好ましい配合比率は100%である。なお、鞘成分よりも高融点材料の他の繊維を混合する場合には、不織布全体の強度低下や毛羽抜け発生の原因となるため好ましくない。しかしながら、例えば、嵩高とするための高捲縮タイプの繊維を混合したり、畝部4の弾性変形を保管する目的のための伸縮弾性糸を混合することは可能である。
【0034】
繊維質材としては、芯成分/鞘成分が例えば、PP(ポリプロピレン)/PE(ポリエチレン)、PP/低融点PP、PET(ポリエチレンテレフタレート)/低融点PET、PET/PEの組成を用いることができるが、これに限定されるものではない。繊維質材に混合する繊維としては、繊維質材の鞘成分樹脂と相溶性の良好なものが選択される。例えば、レーヨン、PET、PP、ナイロン等のポリアミド、アクリル、ウレタン、コットン等の繊維を選択できる。又、これに限らず、繊維質材に混合することによりウェブを形成できる材料であれば選択が可能である。
【0035】
繊維質材の太さとしては、1〜15dtexであり、好ましくは1.5〜9dtexである。1dtex未満では、単糸強度が低すぎて雄部材との係合時に繊維切れが起こりやすくなると共に、カードでのウェブ形成が難しくなり生産性が低下する。15dtexを超える場合には、風合いが悪くなると共に、単位重量あたりの繊維本数が少なくなって雄部材との係合強度が極端に低下する。
【0036】
使用される繊維質材の長さとしては、25mm〜100mmであり、好ましくは30mm〜60mmである。長さが25mm未満の場合には、繊維が短すぎるため、毛羽発生の原因となり、長さが100mmを超えるとカードでのウェブの形成が難しくなり生産性が低下する。
【0037】
以上の構造からなる雌部材1においては、溝部5の繊維質材が畝部4に加わっているため、畝部4の繊維質が多く、しかも嵩高となる。このため、雄部材との係合性が良好となる。又、畝部4の繊維質材は、溝部5に位置している繊維質材がエアージェットによって吹き飛ばされることにより畝部4を構成するため、畝部4を構成している繊維質材は、MD方向、CD方向さらには厚さ方向に対してもランダムな繊維配向となっている。このため、係合粘りが大きく、係合性に優れると共に毛羽立ち発生が少なくなる。これに対し、加熱融着によって繊維質材が相互に接合する構造では、毛羽立ちを抑制できる反面、係合粘りが低くなって係合性が低下する欠点を有している。
【0038】
図4及び図5は、この実施形態の雌部材1を雄部材8に係合させた状態を示し、図4は係合状態、図5は引き剥がし状態である。雄部材8は複数の突起9を有した係合面10を備えており、この係合面10が雌部材1に臨んでいる。雌部材1及び雄部材8を接近させて突起9を畝部4の繊維質材と係合させる。このとき、溝部5は係合しても良く、係合しなくても良い。
【0039】
図5の引き剥がし状態においては、畝部4を構成する繊維質材の大半が隣り合っている畝部4と独立しているため、個々の畝部4の頂点部分が厚さ方向に引っ張られる。この引っ張りの際には、畝部4は幅が小さくなりながら高さが大きくなるという弾性変形を生じる。このように係合している畝部4が伸び縮みすることにより、折れ曲がったり、腹圧などによる瞬間的な衝撃力が作用しても、これらのショックを吸収することができる。このため、雄部材8との係合状態から雌部材1が剥がれることがなくなる。
【0040】
図6及び図7は、雌部材1の裏面を係合面として用いた場合であり、図6は雄部材8の係合状態、図7は引き剥がし状態を示す。雌部材1は表面が吸収性物品などの外部部材に接着されて用いられる。雌部材1の表面には、畝部4及び溝部5が形成されているため、表面の全面が接着されることがない。このため、表面を係合面として用いる図4及び図5と同じ傾向の挙動を示し、引き剥がし時には図7に示すように弾性変形を生じる。従って、折れ曲がりや腹圧などの衝撃力があっても係合状態から剥がれることがなくなる。
【0041】
図8は、この実施形態の雌部材1を製造するために用いる装置を示し、図9は図8の装置における畝部4及び溝部5を形成する部分を示す。
【0042】
図8において、符号12は雌部材1の原料となる繊維ウェブである。繊維ウェブ12の走行路には、上流側から下流側に向かってホットエアージェットノズル13及び開孔プレートドラム14、熱風加熱炉15が配置されている。熱風加熱炉15内には、吸引装置17が設けられている。
【0043】
符号16は繊維ウェブ12を形成するカードである。カード16での通常の方法によって繊維ウェブ12を形成した後、繊維ウェブ12を開孔プレートドラム14に接触させる。開孔プレートドラム14は、図9に示すように多数の孔部14aが開口しており、孔部14aから矢印18で示す方向に繊維ウェブ12を吸引する。ホットエアージェットノズル13は、開孔プレートドラム14上に位置しており、CD方向に所定ピッチで並んだ複数のノズル13aからホットエアージェットを繊維ウェブ12に吹き付ける。この開孔プレートドラム14においては、繊維ウェブ12を下面から吸引しながら、繊維ウェブ12の上面に対してノズル13aから繊維質材の融点に対して+50℃〜−50℃のホットエアージェットを吹き付ける。
【0044】
ホットエアージェットが吹き付けられた部分における繊維質材は、両側に排除されるため、排除部分に溝部5が形成され、排除された繊維質材は隣り合うノズル13aの間で蒲鉾状に積み重なって畝部4が形成される。
【0045】
このように、ホットエアージェットノズル13を通過することにより繊維ウェブ12には畝部4及び溝部5が形成されて加工ウェブ19となる。この加工ウェブ19は、繊維質材が半融着状態のままで熱風加熱炉15内に導かれ、一般的なエアースルー不織布と同様に130℃〜160℃の熱風20が吹き付けられる。このことにより、繊維質材が十分な融着状態となり、ロール21に巻き取られて製造が終了する。
【0046】
以上の製造において、開孔プレートドラム14のCD方向に、ホットエアージェットノズル13と同期する波形状を賦型することによりウェブの両面に対して畝部4及び溝部5を形成することができる。又、溝部5に開口部6(図2及び図3参照)を形成する場合には、開孔プレートドラム14におけるホットエアージェットが噴射されるライン上に所定間隔を有して孔部14aがない部分を点在させることにより可能であり、孔部14aがない部分で開口部6が形成される。
【0047】
図10は本発明の吸収性物品31の一実施例を示す。吸収性物品31は、展開型使い捨てオムツであり、前胴回り部材32、後胴回り部材33及びこれらの間の股下部材34によってアウター部材35が形成されている。股下部材34の内面には、吸収体36が一体的に設けられている。吸収体36は液透過性であり、アウター部材35は液不透過性となっている。
【0048】
後胴回り部材33は、前胴回り部材32の上に重ねられるものであり、幅方向の両側縁部には雄部材37が取り付けられている。これに対し、前胴回り部材32の上部外面にはベルト状の雌部材38が取り付けられている。雄部材37を雌部材38に係合させることによりオムツの使用状態となる。この場合、雌部材38を前胴回り部材32の全体を覆うように取り付けても良い。
【0049】
このような吸収性物品31の雌部材38として図1〜図3に示す雌部材1を用いることにより雌部材38が雄部材37と良好に係合するため、オムツが変形したり、瞬間的な衝撃力が作用しても係合が外れることがない。
【0050】
図11は別の吸収性物品41を示し、図10と同一の部材には同一の符号を付して対応させてある。前胴回り部材32及び後胴回り部材33には、雌部材及び雄部材からなる面ファスナーが幅方向に取り付けられ、面ファスナーが係合することにより全体がパンツ型となっている。前胴回り部材32の縁部外面には雄部材37が取り付けられている。又、後胴回り部材33の縁部内面には、雌部材38が取り付けられており、雌部材38と雄部材37とが係合することによりパンツ型が保持されるようになっている。この吸収性物品41においても、雌部材38として図1〜図3に示す雌部材1を用いることにより雄部材37との不用意な係合外れを防止することができる。
【0051】
又、この構造の吸収性物品41では、雌部材38が装着者の身体側に位置しているが、雌部材38は畝部4及び溝部5を有した構造であって、柔らかく且つ透液性、通気性に優れているため、この位置に配置しても装着者を傷つけることがない。
【0052】
なお、上記実施形態では、使い捨てオムツである吸収性物品31の一部に雌部材38を用いたが、前胴回り部材32、後胴回り部材33の少なくとも一方を上述した雌部材38によって形成しても良い。
【実施例】
【0053】
表1は、実施例1及び比較例1、2に用いる繊維の特性を示す。
【0054】
(製造方法)
表1の配合比率の繊維を図8及び図9に示す製造装置に供給して面ファスナーの雌部材(不織布)を製造した。この製造は、孔径1.0mm、ピッチ50mmのノズル13aを4列配置し、ホットエアージェットノズル13から温度150℃、風量0.12m3/分/m2のホットエアージェットを吹き付け、その後、熱風加熱炉15内で温度150℃、風量15m3/分/m2の熱風20を約10秒間吹き付けることにより行った。これにより、目付け35g/m2、畝部4のピッチが5mm、溝部5の幅が1.3mmの表面を有した実施例1のエアースルー不織布を得た。この場合、溝部5には、MD方向に沿って5mmピッチの開口部6が形成されている。
【0055】
一方、表1に示す配合比率で、実施例1と同じ条件により比較例1及び2のエアースルー不織布を製造した。比較例1においては、ホットエアージェットノズル13からホットエアージェットを吹き付けることなく製造し、比較例2においては、実施例1におけるホットエアージェットの風量条件を10m3/分/m2に変更して製造した。比較例2は実施例1よりも厚い不織布となっている。
【0056】
(評価)
実施例1及び比較例1、2に対して、同じ構造の雄部材をMD方向から係合させて剥離強度、毛羽立ち、保持力、係合粘りについて評価した。結果を表2に示す。厚さに関しては表1に示す。以下に評価方法を説明する。
【0057】
[厚さ測定]
10cm角のサンプルを厚さ計(商品名「PEACOK DIAL THICKNESS GAUGE No.CI1352」)により3g/cm2の荷重で測定した。
【0058】
[135°ピール試験]
雌部材となっている不織布を3〜5cm×5cmにカットして試験片とし、この試験片を5cm×8cmのスパンボンド不織布(20〜30g/cm2)に両面粘着テープで剥がれないように貼り付けて雌部材サンプル53とした。一方、2cm×3cmの雄部材を12cm×3cmのスパンボンド不織布(20〜30g/cm2)に両面粘着テープで剥がれないように貼り付けて雄部材サンプル56とした。
【0059】
雌部材サンプル53を両面粘着テープによって6cm×10cmのステンレス板に皺が入らないように貼り付け、その後、雄部材サンプル56を雌部材サンプル53の上に重ね、その上から700gローラーを300mm/minの速度で1往復させ、試験片(雌部材)と雄部材とを係合させた。そして、係合面に剪断力がかかるように、係合させた雄部材サンプル56の一方端から500gの荷重を3秒間作用させる。なお、ローラーの幅は45mm、直径は95mmであり、テープ圧着ロール機はテスター産業(株)製のものを使用した。
【0060】
図12は135°ピール試験機を示し、上述したステンレス板をオートグラフに取り付け、雄部材サンプル56と雌部材サンプル53の剥離角度が135°となるように雄部材サンプル56の一方端から引っ張って剥離させる。この剥離に必要な力を135°剥離力とする。
【0061】
オートグラフの条件は、以下のように設定する。
【0062】
測定条件:ロードセル=5kg、引っ張り速度=300mm/min
上側チャック−サンプル間=50mm(垂直方向)
[保持力試験]
図13に示す保持力試験に用いる雌部材サンプル59は、5cm×5cmの雌部材61を10cm×10cmのスパンボンド不織布(20〜30g/cm2)に両面粘着テープで剥がれないように貼り付けて作成する。また、保持力試験に用いる雄部材サンプルは、2cm×4cmの雄部材54を4cm×8cmのスパンボンド不織布(20〜30g/cm2)に両面粘着テープで剥がれないように貼り付けて作成する。
【0063】
以上の雄部材サンプルを雌部材サンプル59の上に重ね、その上から700gローラーを300mm/minの速度で1往復して雄部材54と雌部材61とを係合させる。そして、このサンプルを20℃、60%RHで30分間放置する。
【0064】
図13は保持力試験機であり、雌部材サンプル59の上端部を固定具63によって吊り下げた状態とし、雄部材サンプル62の下端部に800gの重り64を吊り下げて40℃雰囲気中に放置する。そして、係合が剥がれて重り64が落下するまでの時間を測定して保持力とする。この場合、60分経過しても落下しない場合は、最大保持力60分とする。
【0065】
[係合粘り試験]
図14は係合粘り試験に用いる雌部材サンプルは、2cm×4cmの雌部材を3cm×5cmのスパンボンド不織布(20〜30g/cm2)に両面粘着テープで剥がれないように貼り付けて作成する。係合粘り試験に用いる雄部材は、1.5cm×3cmの大きさとし、その裏面に両面粘着テープを貼り付ける。この雄部材を雌部材サンプルの上に重ねてその上から700gローラーを300mm/minの速度で1往復して雄部材と雌部材とを係合させる。
【0066】
図14は係合粘り試験機であり、雄部材と雌部材とが係合した状態のサンプル68を上下2つのL字金具(重量13.5g)67の間に挟み込み、両面粘着テープで上下のL字金具67に貼り付ける。次いで、上下のL字金具67を上下のオートグラフ69に取り付けて係合粘り力を測定する。測定においては、最大負荷時の変位距離を「最大変位」として測定した。
【表1】
【表2】
【0067】
表2に示すように、実施例1の雌部材は表面及び裏面とも、1〜5回の135°ピール試験による剥離強度、毛羽立ち、保持力試験、係合粘り試験の全てで良好な結果となっている。実施例1においては、表面及び裏面の双方において剥離試験5回目の保持力は剥離試験1回目の保持力よりも高い結果となっている。これは、剥離試験を繰り返すことにより雌部材の厚みが回復して係合力が高くなったためである。
【0068】
これに対して、比較例1は剥離強度、毛羽立ちは良好であるのに対し、保持力試験及び係合粘り試験は不良であった。比較例2においては、135°ピール試験の5回目の剥離試験の際に剥離して破壊した。従って、比較例1及び2は良好な雌部材としてのレベルを有していない。ここで、破壊の状況は、資材自体のZ方向(厚み方向)の結合が外れ、層状に資材が雄部材に張り付き剥がされている。
【0069】
図15は剥離試験における係合粘り性の特性図を示し、曲線Eは実施例1の表面における係合粘り性を、曲線Fは実施例1の裏面における係合粘り性を示す。曲線Gは比較例1の表面の係合粘り性を示し、曲線Hは比較例2の表面の係合粘り性を示している。実施例1では、表面及び裏面の双方において大きな係合粘り性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施の形態の雌部材を示す断面図であり、図2のA−A線断面である。
【図2】一実施形態の雌部材の表面を示す平面図である。
【図3】一実施形態の裏面を示す底面図である。
【図4】一実施形態の雌部材の雄部材との係合状態を示す断面図である。
【図5】図4の状態からの引き剥がし状態を示す断面図である。
【図6】雌部材の裏面を係合面とした場合の係合状態を示す断面図である。
【図7】図6の状態からの引き剥がし状態を示す断面図である。
【図8】雌部材を製造するための製造装置の側面図である。
【図9】図8の製造装置におけるホットエアージェットノズル部分の断面図である。
【図10】本発明の吸収性物質の一実施形態を示す斜視図である。
【図11】面ファスナーを外した状態を示す斜視図である。
【図12】135°ピール試験機の正面図である。
【図13】保持力試験機の正面図である。
【図14】係合粘り試験機を示す正面図である。
【図15】剥離作用に対する係合粘り性を示す特性図である。
【符号の説明】
【0071】
1 雌部材
2 繊維密部
3 繊維疎部
4 畝部
5 溝部
6 開口部
8 雄部材
9 突起
10 係合面
31 吸収性物品
32 前胴回り部材
33 後胴回り部材
34 股下部材
35 アウター部材
36 吸収体
41 吸収性物質
【技術分野】
【0001】
本発明は、面ファスナーの雌部材、この雌部材を用いた面ファスナー及びこの面ファスナーが用いられ、使い捨て紙オムツ、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
紙オムツ等の吸収性物品では、身体への装着及び取り外しを可能とするため、面ファスナーを用いて展開を行うようになっている。面ファスナーは雄部材と雌部材との係合及び解除によって相互の結合及び分離を行うものであり、雄部材には複数の突起群(フック)からなる係合面が形成される一方、雌部材は突起群が係合可能な不織布が用いられている。特許文献1〜3には、面ファスナーにおける雌部材の従来例が開示されている。
【0003】
特許文献1には、主体繊維が30〜100mmからなるエアースルー不織布を用い、この不織布の全幅にわたってMD方向と交差するエンボス処理を施して、CD方向の2N/25mm加重時の伸長率を175%以下で厚さを0.4mm以上とした雌部材が記載されている。エアースルー不織布を構成する繊維は基本的に平面的に配列された層構造となっており、各繊維間は互いに融着連結した構造となっている。すなわち、繊維が多く配列しているMD方向と交差するようなエンボスパターンでのエンボス処理を行うことによって、繊維層を融着して一体化して各繊維間の連結を強化し、毛羽立ちを小さくしている。
【0004】
特許文献2には、熱収縮可能な繊維ウェブにスパンボンド不織布を重ねて一体化し、その後に熱処理して繊維ウェブを収縮させ、これによってスパンボンド不織布に深さ0.2〜3mmの皺を2〜40個/1cm2形成させた雌部材が記載されている。スパンボンド不織布は平面状に配列されたエンドレスな繊維が熱エンボス等で強固に融着されているため、毛羽立ちが発生しにくい特徴を有しており、このスパンボンド不織布の下層側で一体化した熱収縮性繊維ウェブを加熱収縮させることによりパンボンド不織布に多数の皺を発生させ、この皺によって雄部材との係合性を確保している。
【0005】
特許文献3には、熱収縮性の繊維層と非熱収縮性の繊維層とを積層し、この積層体に高圧流体流を噴射して繊維同士を交絡させると同時に繊維を再配列させて開孔不織布とし、その後、加熱処理を施して熱収縮性繊維層を収縮させて熱非収縮性繊維層に繊維束のループを形成することが記載されている。このような処理によって、ランダムな方向に隆起したカール状物が形成されている。
【特許文献1】特開平11−335960号公報
【特許文献2】特開平6−33359号公報
【特許文献3】特開平11−152669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、熱融着によって各繊維の連結が不織布平面の全方向に伸びており、尚且つエンボスによってさらに強固に一体化されていることから雄部材との係合力が大きく且つ毛羽立ちは小さくなるが、その反面、係合引き剥がし方向における不織布の弾性が失われている。このため、オムツなどの着用中に面ファスナーが変形したり、瞬間的な衝撃引き剥がし力が作用した場合には、係合状態に粘りがなく雄部材から簡単に剥がれる。
【0007】
特許文献2においても、特許文献1と同様な挙動を示し、同様な課題を有している。
【0008】
特許文献3では、繊維束のループが形成され、尚且つ不織布全体の繊維間結合が繊維交絡によってルーズな連結状態とされているため、上記特許文献1及び2のような課題はないが、反面、繊維交絡によるルーズな繊維間結合のため、雄部材を係合から剥がす際に簡単に繊維が抜けて毛羽立ちが生じるという課題を有している。このために繊維交絡の程度を強くすると、不織布全体が締まり過ぎて熱収縮による繊維束のループが生じにくくなるため、雄部材が引っ掛かり難くなる。
【0009】
そこで、本発明は、面ファスナー部分の変形や瞬間的な衝撃引き剥がし力が作用しても、雄部材から簡単に剥がれることがなく、しかも雄部材を引き剥がす際に、繊維質材が抜けることによる毛羽立ちが生じることがない面ファスナーの雌部材、この雌部材を用いた面ファスナー及びこの面ファスナーを用いた吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明の面ファスナーの雌部材は、繊維質材で形成され相手雄部材に係合可能な面ファスナーの雌部材であって、前記繊維質材の目付けが高い複数列の繊維密部と、これらの繊維密部間に設けられて繊維密部より繊維質材の目付けが低い複数列の繊維疎部とからなることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の面ファスナーの雌部材であって、前記繊維密部が前記繊維質材が積み重なって形成された凸状の畝部であり、前記繊維疎部が前記畝部間に設けられた凹状の溝部であることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の面ファスナーの雌部材であって、前記畝部は、厚みが0.3mm〜6mmであり、畝部の各列間ピッチが2mm〜15mmであることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の面ファスナーの雌部材であって、前記溝部の下部の繊維質材の厚み分からなる基層部上に繊維質材が積み重ねられて前記畝部が形成され、前記基層部上に積み重ねられた繊維質材の容量は前記溝部内の容量に相当する繊維質材に等しいことを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の面ファスナーの雌部材であって、前記繊維疎部には、表裏を貫通する開口部が前記畝部の各列方向に沿って複数形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の面ファスナーの雌部材であって、前記繊維質材は、繊維質材を構成する繊維同士が絡み合った状態で、繊維質材の厚み方向に沿って裏面側から表面側まで連なっていることを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の発明の面ファスナーは、複数の突起群からなる係合面を備えた雄部材と、前記係合面に係合可能な前記請求項1〜6に記載の雌部材とからなることを特徴とする。
【0017】
請求項8記載の発明の吸収性物品は、前胴回り部材、後胴回り部材、股下部材からなるアウター部材と、前記股下部材に一体に設けられて吸収体とによって形成される吸収性物品であって、前記前胴回り部材又は後胴回り部材のいずれか一方に設けられ係合面を備えた雄部材と、いずれか他方に設けられ前記係合面に係合可能な請求項1〜7に記載の雌部材とからなる面ファスナーを具備したことを特徴とする。
【0018】
請求項9記載の発明は、請求項7記載の吸収性物品であって、予め前記前胴回り部材の両側縁部と前記後胴回り部材の両側縁部が接合されており、前記前胴回り部材の両側縁部及び後胴回り部材の両側縁部に配置された面ファスナーが予め接合されることにより全体がパンツ型となっていることを特徴とする。
【0019】
請求項10記載の発明は、前胴回り部材、後胴回り部材、股下部材からなるアウター部材と、前記股下部材と一体に設けられた吸収体とで形成される吸収性物品であって、前記前胴回り部材、後胴回り部材の少なくとも一方を請求項1乃至請求項6に記載の面ファスナーの雌部材で形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、繊維質材の目付けが高い繊維密部が厚さ方向に引っ張られるときに、その幅が縮まりながら高さが高くなる弾性変形を生じるため、雄部材との係合に粘りが生じて雄部材との係合性が良好となる。このため面ファスナーの変形や衝撃引き剥がし力があっても雄部材からの剥がれを防止でき、しかも繊維質材が抜けないため、毛羽立ちが生じることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1〜図3は、本発明の一実施形態における面ファスナーの雌部材1を示す。雌部材1は多数の繊維質材を構成要素としたエアースルー不織布であり、熱風によって繊維質材を相互に融着することにより形成されている。図1に示すように、雌部材1は繊維密部2及び繊維疎部3を備えている。
【0023】
繊維密部2は繊維質材の目付けが高い部分であり、繊維疎部3は繊維質材の目付が低い部分である。目付けは単位面積当たりの繊維質材の重量(量)であり、例えば、g/m2の単位によって表示される。繊維密部2及び繊維疎部3はMD方向(製造時に搬送される方向)に延びる帯状となっている。又、繊維密部2及び繊維疎部3は、CD方向(製造時に搬送される方向に対して直交する方向)に沿った複数の列状となっており、繊維疎部3の列は繊維密部2の列の間に位置している。すなわち、繊維密部2及び繊維疎部3はCD方向に沿って交互に位置するものである。なお、繊維密部2及び繊維疎部3を交互に配置する場合、繊維密部、繊維疎部、繊維疎部、繊維密部、あるいは、繊維疎部、繊維密部、繊維密部、繊維疎部という配置も含む。
【0024】
繊維密部2は後述するように、熱風によって繊維質材が積み重なって形成された部分であり、凸状の畝部4となっている。繊維疎部3は熱風によって繊維質材が排除された部分であり、凹状の溝部5となっている。これらの畝部4及び溝部こ5はMD方向に連続し、CD方向では交互に配置される。畝部4を構成する繊維質材はその畝部4内で繊維集合体を形成している。又、一つの畝部4を構成する繊維質材の大半は、隣接している畝部4とは独立している。また、溝部5の下部の繊維質材の厚み分からなる基層部7上に繊維質材が積み重ねられて畝部4が形成され、基層部7上に積み重ねられた繊維質材の容量は溝部5内の容量に相当する繊維質材に等しくなっている。すなわち、溝部5の下部側の繊維疎部3を形成する際に熱風によって排除された繊維質材が溝部5の両側に積み重ねられて畝部4である繊維密部2が形成されている。
【0025】
なお、一つの畝部4におけるいくらかの繊維質材は図2及び図3に示すように、畝部4の底部分(基層部7)において隣接している畝部4と連結している。この連結によって雌部材1は不織布シートとしての形態を保つことができる。
【0026】
図2及び図3に示すように、溝部5(繊維疎部3)には、開口部6が形成されている。開口部6は雌部材1の表裏を貫通するように形成されている。開口部6は熱風によって繊維質材を排除することにより形成されるものであり、開口部6を溝部5に形成することにより、開口部6の分、繊維質材を畝部4側に寄せることができるため、畝部4の目付けを高くすることができる。これにより、畝部4が図示せぬ雄部材との係合力を大きくでき、雄部材と安定して係合する。又、開口部6の周辺の繊維質材は図3に示すように、CD方向に向く傾向となるため、CD方向へのシートの延伸度が向上する。なお、開口部6については、形成しても良く、形成しなくても良い。
【0027】
この実施形態では、図1に示すように、畝部4が表面側に形成され、裏面側が平坦となっているが、畝部4を表裏の両面に形成しても良い。
【0028】
また、上記の実施例では、熱風により排除された繊維質材が溝部5の両側に積み重ねられて畝部4を形成したが、櫛状のもので表面に凹凸を付けることによって、繊維質材を排除して溝部5を形成し、溝部5から排除された繊維質材を溝部5の両側に移動させることで畝部4を形成するようにしても良い。
【0029】
次に、雌部材1における寸法、材料等の条件について説明する。
【0030】
雌部材1を構成する不織布全体の目付けは、好ましくは15〜100g/m2であり、より好ましくは、20〜50g/m2である。目付けが15g/m2未満の場合には、畝部4と溝部5との間の目付けの差を小さくしなければ溝部5の繊維質材が少なくなりすぎてCD方向の強度不足となる。一方、目付けが100g/m2を超えると、コストが高騰して好ましくない。
【0031】
畝部4の各列間ピッチP1(図2及び図3参照)は2mm〜15mmであり、より好ましくは3mm〜10mmである。ピッチP1が2mm未満では、上記目付け内で畝部4を均一に形成することができない。繊維質材を排除して畝部4を形成するためである。一方、ピッチP1が15mmを超える場合、溝部5の幅を小さくした場合(例えば、1〜2mm)、畝部4が広くなり、その反面、畝部4の高さ少なくなるため、雄部材と円滑に係合することができない。又、溝部5の幅を大きくした場合(例えば、5〜6mm)、雄部材との係合面積が少なくなって係合力が不足する。
【0032】
畝部4の厚みH1(図1参照)、すなわち不織布の厚みは、0.3mm〜6mmである。厚みH1が0.3mm未満の場合には、雄部材との掛かり具合が悪くなると共に畝部4の弾性変形効果を得ることができない。厚みH1が6mmを超える場合には、雌部材1が必要以上に嵩高となり取り扱いが不便となる。
【0033】
雌部材1である不織布に用いる繊維質材は、芯鞘構造を有する複合繊維が選択される。この複合繊維は、芯成分を構成する樹脂よりも、鞘成分が低融点の樹脂からなっている。これらの樹脂の配合比率は、好ましくは50%以上であり、さらに好ましい配合比率は100%である。なお、鞘成分よりも高融点材料の他の繊維を混合する場合には、不織布全体の強度低下や毛羽抜け発生の原因となるため好ましくない。しかしながら、例えば、嵩高とするための高捲縮タイプの繊維を混合したり、畝部4の弾性変形を保管する目的のための伸縮弾性糸を混合することは可能である。
【0034】
繊維質材としては、芯成分/鞘成分が例えば、PP(ポリプロピレン)/PE(ポリエチレン)、PP/低融点PP、PET(ポリエチレンテレフタレート)/低融点PET、PET/PEの組成を用いることができるが、これに限定されるものではない。繊維質材に混合する繊維としては、繊維質材の鞘成分樹脂と相溶性の良好なものが選択される。例えば、レーヨン、PET、PP、ナイロン等のポリアミド、アクリル、ウレタン、コットン等の繊維を選択できる。又、これに限らず、繊維質材に混合することによりウェブを形成できる材料であれば選択が可能である。
【0035】
繊維質材の太さとしては、1〜15dtexであり、好ましくは1.5〜9dtexである。1dtex未満では、単糸強度が低すぎて雄部材との係合時に繊維切れが起こりやすくなると共に、カードでのウェブ形成が難しくなり生産性が低下する。15dtexを超える場合には、風合いが悪くなると共に、単位重量あたりの繊維本数が少なくなって雄部材との係合強度が極端に低下する。
【0036】
使用される繊維質材の長さとしては、25mm〜100mmであり、好ましくは30mm〜60mmである。長さが25mm未満の場合には、繊維が短すぎるため、毛羽発生の原因となり、長さが100mmを超えるとカードでのウェブの形成が難しくなり生産性が低下する。
【0037】
以上の構造からなる雌部材1においては、溝部5の繊維質材が畝部4に加わっているため、畝部4の繊維質が多く、しかも嵩高となる。このため、雄部材との係合性が良好となる。又、畝部4の繊維質材は、溝部5に位置している繊維質材がエアージェットによって吹き飛ばされることにより畝部4を構成するため、畝部4を構成している繊維質材は、MD方向、CD方向さらには厚さ方向に対してもランダムな繊維配向となっている。このため、係合粘りが大きく、係合性に優れると共に毛羽立ち発生が少なくなる。これに対し、加熱融着によって繊維質材が相互に接合する構造では、毛羽立ちを抑制できる反面、係合粘りが低くなって係合性が低下する欠点を有している。
【0038】
図4及び図5は、この実施形態の雌部材1を雄部材8に係合させた状態を示し、図4は係合状態、図5は引き剥がし状態である。雄部材8は複数の突起9を有した係合面10を備えており、この係合面10が雌部材1に臨んでいる。雌部材1及び雄部材8を接近させて突起9を畝部4の繊維質材と係合させる。このとき、溝部5は係合しても良く、係合しなくても良い。
【0039】
図5の引き剥がし状態においては、畝部4を構成する繊維質材の大半が隣り合っている畝部4と独立しているため、個々の畝部4の頂点部分が厚さ方向に引っ張られる。この引っ張りの際には、畝部4は幅が小さくなりながら高さが大きくなるという弾性変形を生じる。このように係合している畝部4が伸び縮みすることにより、折れ曲がったり、腹圧などによる瞬間的な衝撃力が作用しても、これらのショックを吸収することができる。このため、雄部材8との係合状態から雌部材1が剥がれることがなくなる。
【0040】
図6及び図7は、雌部材1の裏面を係合面として用いた場合であり、図6は雄部材8の係合状態、図7は引き剥がし状態を示す。雌部材1は表面が吸収性物品などの外部部材に接着されて用いられる。雌部材1の表面には、畝部4及び溝部5が形成されているため、表面の全面が接着されることがない。このため、表面を係合面として用いる図4及び図5と同じ傾向の挙動を示し、引き剥がし時には図7に示すように弾性変形を生じる。従って、折れ曲がりや腹圧などの衝撃力があっても係合状態から剥がれることがなくなる。
【0041】
図8は、この実施形態の雌部材1を製造するために用いる装置を示し、図9は図8の装置における畝部4及び溝部5を形成する部分を示す。
【0042】
図8において、符号12は雌部材1の原料となる繊維ウェブである。繊維ウェブ12の走行路には、上流側から下流側に向かってホットエアージェットノズル13及び開孔プレートドラム14、熱風加熱炉15が配置されている。熱風加熱炉15内には、吸引装置17が設けられている。
【0043】
符号16は繊維ウェブ12を形成するカードである。カード16での通常の方法によって繊維ウェブ12を形成した後、繊維ウェブ12を開孔プレートドラム14に接触させる。開孔プレートドラム14は、図9に示すように多数の孔部14aが開口しており、孔部14aから矢印18で示す方向に繊維ウェブ12を吸引する。ホットエアージェットノズル13は、開孔プレートドラム14上に位置しており、CD方向に所定ピッチで並んだ複数のノズル13aからホットエアージェットを繊維ウェブ12に吹き付ける。この開孔プレートドラム14においては、繊維ウェブ12を下面から吸引しながら、繊維ウェブ12の上面に対してノズル13aから繊維質材の融点に対して+50℃〜−50℃のホットエアージェットを吹き付ける。
【0044】
ホットエアージェットが吹き付けられた部分における繊維質材は、両側に排除されるため、排除部分に溝部5が形成され、排除された繊維質材は隣り合うノズル13aの間で蒲鉾状に積み重なって畝部4が形成される。
【0045】
このように、ホットエアージェットノズル13を通過することにより繊維ウェブ12には畝部4及び溝部5が形成されて加工ウェブ19となる。この加工ウェブ19は、繊維質材が半融着状態のままで熱風加熱炉15内に導かれ、一般的なエアースルー不織布と同様に130℃〜160℃の熱風20が吹き付けられる。このことにより、繊維質材が十分な融着状態となり、ロール21に巻き取られて製造が終了する。
【0046】
以上の製造において、開孔プレートドラム14のCD方向に、ホットエアージェットノズル13と同期する波形状を賦型することによりウェブの両面に対して畝部4及び溝部5を形成することができる。又、溝部5に開口部6(図2及び図3参照)を形成する場合には、開孔プレートドラム14におけるホットエアージェットが噴射されるライン上に所定間隔を有して孔部14aがない部分を点在させることにより可能であり、孔部14aがない部分で開口部6が形成される。
【0047】
図10は本発明の吸収性物品31の一実施例を示す。吸収性物品31は、展開型使い捨てオムツであり、前胴回り部材32、後胴回り部材33及びこれらの間の股下部材34によってアウター部材35が形成されている。股下部材34の内面には、吸収体36が一体的に設けられている。吸収体36は液透過性であり、アウター部材35は液不透過性となっている。
【0048】
後胴回り部材33は、前胴回り部材32の上に重ねられるものであり、幅方向の両側縁部には雄部材37が取り付けられている。これに対し、前胴回り部材32の上部外面にはベルト状の雌部材38が取り付けられている。雄部材37を雌部材38に係合させることによりオムツの使用状態となる。この場合、雌部材38を前胴回り部材32の全体を覆うように取り付けても良い。
【0049】
このような吸収性物品31の雌部材38として図1〜図3に示す雌部材1を用いることにより雌部材38が雄部材37と良好に係合するため、オムツが変形したり、瞬間的な衝撃力が作用しても係合が外れることがない。
【0050】
図11は別の吸収性物品41を示し、図10と同一の部材には同一の符号を付して対応させてある。前胴回り部材32及び後胴回り部材33には、雌部材及び雄部材からなる面ファスナーが幅方向に取り付けられ、面ファスナーが係合することにより全体がパンツ型となっている。前胴回り部材32の縁部外面には雄部材37が取り付けられている。又、後胴回り部材33の縁部内面には、雌部材38が取り付けられており、雌部材38と雄部材37とが係合することによりパンツ型が保持されるようになっている。この吸収性物品41においても、雌部材38として図1〜図3に示す雌部材1を用いることにより雄部材37との不用意な係合外れを防止することができる。
【0051】
又、この構造の吸収性物品41では、雌部材38が装着者の身体側に位置しているが、雌部材38は畝部4及び溝部5を有した構造であって、柔らかく且つ透液性、通気性に優れているため、この位置に配置しても装着者を傷つけることがない。
【0052】
なお、上記実施形態では、使い捨てオムツである吸収性物品31の一部に雌部材38を用いたが、前胴回り部材32、後胴回り部材33の少なくとも一方を上述した雌部材38によって形成しても良い。
【実施例】
【0053】
表1は、実施例1及び比較例1、2に用いる繊維の特性を示す。
【0054】
(製造方法)
表1の配合比率の繊維を図8及び図9に示す製造装置に供給して面ファスナーの雌部材(不織布)を製造した。この製造は、孔径1.0mm、ピッチ50mmのノズル13aを4列配置し、ホットエアージェットノズル13から温度150℃、風量0.12m3/分/m2のホットエアージェットを吹き付け、その後、熱風加熱炉15内で温度150℃、風量15m3/分/m2の熱風20を約10秒間吹き付けることにより行った。これにより、目付け35g/m2、畝部4のピッチが5mm、溝部5の幅が1.3mmの表面を有した実施例1のエアースルー不織布を得た。この場合、溝部5には、MD方向に沿って5mmピッチの開口部6が形成されている。
【0055】
一方、表1に示す配合比率で、実施例1と同じ条件により比較例1及び2のエアースルー不織布を製造した。比較例1においては、ホットエアージェットノズル13からホットエアージェットを吹き付けることなく製造し、比較例2においては、実施例1におけるホットエアージェットの風量条件を10m3/分/m2に変更して製造した。比較例2は実施例1よりも厚い不織布となっている。
【0056】
(評価)
実施例1及び比較例1、2に対して、同じ構造の雄部材をMD方向から係合させて剥離強度、毛羽立ち、保持力、係合粘りについて評価した。結果を表2に示す。厚さに関しては表1に示す。以下に評価方法を説明する。
【0057】
[厚さ測定]
10cm角のサンプルを厚さ計(商品名「PEACOK DIAL THICKNESS GAUGE No.CI1352」)により3g/cm2の荷重で測定した。
【0058】
[135°ピール試験]
雌部材となっている不織布を3〜5cm×5cmにカットして試験片とし、この試験片を5cm×8cmのスパンボンド不織布(20〜30g/cm2)に両面粘着テープで剥がれないように貼り付けて雌部材サンプル53とした。一方、2cm×3cmの雄部材を12cm×3cmのスパンボンド不織布(20〜30g/cm2)に両面粘着テープで剥がれないように貼り付けて雄部材サンプル56とした。
【0059】
雌部材サンプル53を両面粘着テープによって6cm×10cmのステンレス板に皺が入らないように貼り付け、その後、雄部材サンプル56を雌部材サンプル53の上に重ね、その上から700gローラーを300mm/minの速度で1往復させ、試験片(雌部材)と雄部材とを係合させた。そして、係合面に剪断力がかかるように、係合させた雄部材サンプル56の一方端から500gの荷重を3秒間作用させる。なお、ローラーの幅は45mm、直径は95mmであり、テープ圧着ロール機はテスター産業(株)製のものを使用した。
【0060】
図12は135°ピール試験機を示し、上述したステンレス板をオートグラフに取り付け、雄部材サンプル56と雌部材サンプル53の剥離角度が135°となるように雄部材サンプル56の一方端から引っ張って剥離させる。この剥離に必要な力を135°剥離力とする。
【0061】
オートグラフの条件は、以下のように設定する。
【0062】
測定条件:ロードセル=5kg、引っ張り速度=300mm/min
上側チャック−サンプル間=50mm(垂直方向)
[保持力試験]
図13に示す保持力試験に用いる雌部材サンプル59は、5cm×5cmの雌部材61を10cm×10cmのスパンボンド不織布(20〜30g/cm2)に両面粘着テープで剥がれないように貼り付けて作成する。また、保持力試験に用いる雄部材サンプルは、2cm×4cmの雄部材54を4cm×8cmのスパンボンド不織布(20〜30g/cm2)に両面粘着テープで剥がれないように貼り付けて作成する。
【0063】
以上の雄部材サンプルを雌部材サンプル59の上に重ね、その上から700gローラーを300mm/minの速度で1往復して雄部材54と雌部材61とを係合させる。そして、このサンプルを20℃、60%RHで30分間放置する。
【0064】
図13は保持力試験機であり、雌部材サンプル59の上端部を固定具63によって吊り下げた状態とし、雄部材サンプル62の下端部に800gの重り64を吊り下げて40℃雰囲気中に放置する。そして、係合が剥がれて重り64が落下するまでの時間を測定して保持力とする。この場合、60分経過しても落下しない場合は、最大保持力60分とする。
【0065】
[係合粘り試験]
図14は係合粘り試験に用いる雌部材サンプルは、2cm×4cmの雌部材を3cm×5cmのスパンボンド不織布(20〜30g/cm2)に両面粘着テープで剥がれないように貼り付けて作成する。係合粘り試験に用いる雄部材は、1.5cm×3cmの大きさとし、その裏面に両面粘着テープを貼り付ける。この雄部材を雌部材サンプルの上に重ねてその上から700gローラーを300mm/minの速度で1往復して雄部材と雌部材とを係合させる。
【0066】
図14は係合粘り試験機であり、雄部材と雌部材とが係合した状態のサンプル68を上下2つのL字金具(重量13.5g)67の間に挟み込み、両面粘着テープで上下のL字金具67に貼り付ける。次いで、上下のL字金具67を上下のオートグラフ69に取り付けて係合粘り力を測定する。測定においては、最大負荷時の変位距離を「最大変位」として測定した。
【表1】
【表2】
【0067】
表2に示すように、実施例1の雌部材は表面及び裏面とも、1〜5回の135°ピール試験による剥離強度、毛羽立ち、保持力試験、係合粘り試験の全てで良好な結果となっている。実施例1においては、表面及び裏面の双方において剥離試験5回目の保持力は剥離試験1回目の保持力よりも高い結果となっている。これは、剥離試験を繰り返すことにより雌部材の厚みが回復して係合力が高くなったためである。
【0068】
これに対して、比較例1は剥離強度、毛羽立ちは良好であるのに対し、保持力試験及び係合粘り試験は不良であった。比較例2においては、135°ピール試験の5回目の剥離試験の際に剥離して破壊した。従って、比較例1及び2は良好な雌部材としてのレベルを有していない。ここで、破壊の状況は、資材自体のZ方向(厚み方向)の結合が外れ、層状に資材が雄部材に張り付き剥がされている。
【0069】
図15は剥離試験における係合粘り性の特性図を示し、曲線Eは実施例1の表面における係合粘り性を、曲線Fは実施例1の裏面における係合粘り性を示す。曲線Gは比較例1の表面の係合粘り性を示し、曲線Hは比較例2の表面の係合粘り性を示している。実施例1では、表面及び裏面の双方において大きな係合粘り性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施の形態の雌部材を示す断面図であり、図2のA−A線断面である。
【図2】一実施形態の雌部材の表面を示す平面図である。
【図3】一実施形態の裏面を示す底面図である。
【図4】一実施形態の雌部材の雄部材との係合状態を示す断面図である。
【図5】図4の状態からの引き剥がし状態を示す断面図である。
【図6】雌部材の裏面を係合面とした場合の係合状態を示す断面図である。
【図7】図6の状態からの引き剥がし状態を示す断面図である。
【図8】雌部材を製造するための製造装置の側面図である。
【図9】図8の製造装置におけるホットエアージェットノズル部分の断面図である。
【図10】本発明の吸収性物質の一実施形態を示す斜視図である。
【図11】面ファスナーを外した状態を示す斜視図である。
【図12】135°ピール試験機の正面図である。
【図13】保持力試験機の正面図である。
【図14】係合粘り試験機を示す正面図である。
【図15】剥離作用に対する係合粘り性を示す特性図である。
【符号の説明】
【0071】
1 雌部材
2 繊維密部
3 繊維疎部
4 畝部
5 溝部
6 開口部
8 雄部材
9 突起
10 係合面
31 吸収性物品
32 前胴回り部材
33 後胴回り部材
34 股下部材
35 アウター部材
36 吸収体
41 吸収性物質
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維質材で形成され相手雄部材に係合可能な面ファスナーの雌部材であって、
前記繊維質材の目付けが高い複数列の繊維密部と、これらの繊維密部間に設けられて繊維密部より繊維質材の目付けが低い複数列の繊維疎部とからなることを特徴とする面ファスナーの雌部材。
【請求項2】
請求項1記載の面ファスナーの雌部材であって、
前記繊維密部が前記繊維質材が積み重なって形成された凸状の畝部であり、前記繊維疎部が前記畝部間に設けられた凹状の溝部であることを特徴とする面ファスナーの雌部材。
【請求項3】
請求項2記載の面ファスナーの雌部材であって、
前記畝部は、厚みが0.3mm〜6mmであり、畝部の各列間ピッチが2mm〜15mmであることを特徴とする面ファスナーの雌部材。
【請求項4】
請求項2又は3記載の面ファスナーの雌部材であって、
前記溝部の下部の繊維質材の厚み分からなる基層部上に繊維質材が積み重ねられて前記畝部が形成され、前記基層部上に積み重ねられた繊維質材の容量は前記溝部内の容量に相当する繊維質材に等しいことを特徴とする面ファスナーの雌部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の面ファスナーの雌部材であって、
前記繊維疎部には、表裏を貫通する開口部が前記畝部の各列方向に沿って複数形成されていることを特徴とする面ファスナーの雌部材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の面ファスナーの雌部材であって、
前記繊維質材は、繊維質材を構成する繊維同士が絡み合った状態で、繊維質材の厚み方向に沿って裏面側から表面側まで連なっていることを特徴とする面ファスナーの雌部材。
【請求項7】
複数の突起群からなる係合面を備えた雄部材と、前記係合面に係合可能な前記請求項1〜6に記載の雌部材とからなることを特徴とする面ファスナーの雌部材。
【請求項8】
前胴回り部材、後胴回り部材、股下部材からなるアウター部材と、前記股下部材に一体に設けられて吸収体とによって形成される吸収性物品であって、
前記前胴回り部材又は後胴回り部材のいずれか一方に設けられ係合面を備えた雄部材と、いずれか他方に設けられ前記係合面に係合可能な請求項1〜7に記載の雌部材とからなる面ファスナーを具備したことを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
請求項8記載の吸収性物品であって、
予め前記前胴回り部材の両側縁部と前記後胴回り部材の両側縁部が接合されており、前記前胴回り部材の両側縁部及び後胴回り部材の両側縁部に配置された面ファスナーが予め接合されることにより全体がパンツ型となっていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
前胴回り部材、後胴回り部材、股下部材からなるアウター部材と、前記股下部材と一体に設けられた吸収体とで形成される吸収性物品であって、
前記前胴回り部材、後胴回り部材の少なくとも一方を請求項1乃至請求項5に記載の面ファスナーの雌部材で形成したことを特徴とする吸収性物品。
【請求項1】
繊維質材で形成され相手雄部材に係合可能な面ファスナーの雌部材であって、
前記繊維質材の目付けが高い複数列の繊維密部と、これらの繊維密部間に設けられて繊維密部より繊維質材の目付けが低い複数列の繊維疎部とからなることを特徴とする面ファスナーの雌部材。
【請求項2】
請求項1記載の面ファスナーの雌部材であって、
前記繊維密部が前記繊維質材が積み重なって形成された凸状の畝部であり、前記繊維疎部が前記畝部間に設けられた凹状の溝部であることを特徴とする面ファスナーの雌部材。
【請求項3】
請求項2記載の面ファスナーの雌部材であって、
前記畝部は、厚みが0.3mm〜6mmであり、畝部の各列間ピッチが2mm〜15mmであることを特徴とする面ファスナーの雌部材。
【請求項4】
請求項2又は3記載の面ファスナーの雌部材であって、
前記溝部の下部の繊維質材の厚み分からなる基層部上に繊維質材が積み重ねられて前記畝部が形成され、前記基層部上に積み重ねられた繊維質材の容量は前記溝部内の容量に相当する繊維質材に等しいことを特徴とする面ファスナーの雌部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の面ファスナーの雌部材であって、
前記繊維疎部には、表裏を貫通する開口部が前記畝部の各列方向に沿って複数形成されていることを特徴とする面ファスナーの雌部材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の面ファスナーの雌部材であって、
前記繊維質材は、繊維質材を構成する繊維同士が絡み合った状態で、繊維質材の厚み方向に沿って裏面側から表面側まで連なっていることを特徴とする面ファスナーの雌部材。
【請求項7】
複数の突起群からなる係合面を備えた雄部材と、前記係合面に係合可能な前記請求項1〜6に記載の雌部材とからなることを特徴とする面ファスナーの雌部材。
【請求項8】
前胴回り部材、後胴回り部材、股下部材からなるアウター部材と、前記股下部材に一体に設けられて吸収体とによって形成される吸収性物品であって、
前記前胴回り部材又は後胴回り部材のいずれか一方に設けられ係合面を備えた雄部材と、いずれか他方に設けられ前記係合面に係合可能な請求項1〜7に記載の雌部材とからなる面ファスナーを具備したことを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
請求項8記載の吸収性物品であって、
予め前記前胴回り部材の両側縁部と前記後胴回り部材の両側縁部が接合されており、前記前胴回り部材の両側縁部及び後胴回り部材の両側縁部に配置された面ファスナーが予め接合されることにより全体がパンツ型となっていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項10】
前胴回り部材、後胴回り部材、股下部材からなるアウター部材と、前記股下部材と一体に設けられた吸収体とで形成される吸収性物品であって、
前記前胴回り部材、後胴回り部材の少なくとも一方を請求項1乃至請求項5に記載の面ファスナーの雌部材で形成したことを特徴とする吸収性物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−207844(P2009−207844A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56903(P2008−56903)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
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