面ファスナ用編地
【課題】面ファスナ用雌部材に用いられるトリコット編地であって、係合素子との係合力が大きくなり、係合素子を左右両方向から係合させた場合に係合力に左右差が生じず、生地の強度が高い安価なトリコット編地を提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明に係る面ファスナ用編地は、表面部の編糸と中間部の編糸と裏面部の編糸とからなるトリコット編地において、表面部、中間部、裏面部の編糸にはそれぞれ所定の間隔ごとにループ部が形成され、表面部の編糸に形成されたループ部と中間部の編糸に形成されたループ部とが連結され、中間部に形成されたループ部と裏面部に形成されたループ部とが連結される構成とした。また、トリコット編地を構成する表面部の編糸により形成されるパイルを同数ごとに左右交互に形成し、ループを形成する編糸の進行方向を表面部と中間部、及び中間部と裏面部とでそれぞれ逆方向とした。
【解決手段】
本発明に係る面ファスナ用編地は、表面部の編糸と中間部の編糸と裏面部の編糸とからなるトリコット編地において、表面部、中間部、裏面部の編糸にはそれぞれ所定の間隔ごとにループ部が形成され、表面部の編糸に形成されたループ部と中間部の編糸に形成されたループ部とが連結され、中間部に形成されたループ部と裏面部に形成されたループ部とが連結される構成とした。また、トリコット編地を構成する表面部の編糸により形成されるパイルを同数ごとに左右交互に形成し、ループを形成する編糸の進行方向を表面部と中間部、及び中間部と裏面部とでそれぞれ逆方向とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面ファスナの雌部材側に用いられる面ファスナ用編地に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば生地と生地あるいは布と布など物同士を簡易接着するために、粘着テープが用いられてきた。しかしながら粘着テープには、使用回数が増えると粘着層に埃やゴミ等が付着し粘着力が低下してしまうという問題点があった。このため、簡易接着用途として粘着テープの代わりに面ファスナが用いられることが多くなってきた。
【0003】
簡易接着用途に使用する面ファスナの雌部材にはトリコット編地が用いられることが多い。この面ファスナ用のトリコット編地には要求される着脱回数の使用に耐え得ることと、可能な限り製造コストを安くすることが求められる。また、雄部材などの係合素子との係合力は高いほうがよく、係合素子を剥がす際に生地が破れないように生地の強度も高いほうがよい。
【0004】
これらの見地から優れた面ファスナ用編地を作り出すために、種々の試みがなされている。例えば特開2005−118360にはポリエステル繊維を用いて低コストで安定した面ファスナーを提供することを目的とした雌部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−118360公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら該特許文献を含めて、従来の雌部材ではパイルを左右のどちらか一方方向に編成するため、係合素子との係合力に左右差が生じていた。また、従来の雌部材に用いられる方法ではループ部を小さくすることができないため同じ糸量を用いた場合パイルの高さを高くすることができず、係合力を高めるためには糸量を増やしてパイルの高さを高くする方法がとられていた。これには糸量が増えるため費用が余分にかかるという問題があった。さらに生地を構成するための裏面部の編糸は、主に1本の編糸を隣接する表面部と中間部の糸に挿入させ繋げる方法がとられており、生地の強度が弱いという問題があった。
【0007】
本発明は上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、雄部材等係合素子との係合力において左右差が生じず、できるだけ少ない糸量で高いパイルを形成して係合素子との係合力を高め、かつ裏面部にループを形成し中間部の編糸により形成されるループと連結させることで生地の強度を高めた低コストな面ファスナ用雌部材に用いる編地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明に係る面ファスナ用編地は、面ファスナ用編地に用いられるトリコット編地において、該トリコット編地は、種々の係合素子と結合されるパイル部を形成する表面部の編糸と、隣接する編糸群と繋がり生地を形成する裏面部の編糸と、該表面部の編糸と該裏面部の編糸とを繋げる中間部の編糸とからなり、表面部、中間部、裏面部の編糸は各々所定のステッチパターンの繰り返しにより編成され、表面部の編糸と中間部の編糸と裏面部の編糸とにはそれぞれ所定の間隔ごとにループ部が形成され、表面部の編糸に形成されたループ部と中間部の編糸に形成されたループ部とが連結され、中間部に形成されたループ部と裏面部に形成されたループ部とが連結されることを要旨とする。
【0009】
また、本発明に係る面ファスナ用編地は前記トリコット編地の構成において、表面部の編糸により形成されるパイルが所定の数ごとに左右交互に形成されることを要旨とする。
【0010】
また、本発明に係る面ファスナ用編地は前記トリコット編地の構成において、表面部の編糸により形成されるパイルが同数ごとに左右交互に形成されることを要旨とする。
【0011】
また、本発明に係る面ファスナ用編地は前記トリコット編地の構成において、表面部と中間部、及び中間部と裏面部とが連結される所定のループ部分に着目した場合に、ループを形成する編糸の進行方向は表面部と中間部、及び中間部と裏面部とではそれぞれ逆方向となることを要旨とする。
【0012】
また、本発明に係る面ファスナ用編地は前記構成において、該トリコット編地を1から9までのステッチ位置の繰り返しによるステッチパターンにより表示すると、表面部のステッチパターンは5−4/9−8/4−5/0−1の繰り返しで表され、中間部のステッチパターンが0−1/1−0/1−0/0−1の繰り返しで表され、裏面部のステッチパターンが4−3/7−7/3−4/0−0の繰り返しで表され、隣接する組織と結合される挿入部、及び中間部の編糸に形成されるループ部と結合されるループ部とを裏面部が有することによりトリコット編地の強度が増すことを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る面ファスナ用編地は、表面部の編糸と中間部の編糸と裏面部の編糸とからなるトリコット編地において、表面部、中間部、裏面部の編糸にはそれぞれ所定の間隔ごとにループ部が形成され、表面部の編糸により形成されたループ部と中間部の編糸により形成されたループ部とが連結され、中間部の編糸により形成されたループ部と裏面部の編糸により形成されたループ部とが連結される構成とした。
これにより、裏面部の編糸は隣接する編糸と繋がり、さらに裏面部に形成されるループ部が中間部のループ部と連結されることで、裏面部の編糸の所定部分が切断されたとしても容易にほどけることがなくなり、生地の強度が増す。
【0014】
また、本発明に係る面ファスナ用編地は、トリコット編地を構成する表面部の編糸により形成されるパイルが同数ごとに左右交互に形成される態様としたことにより、面ファスナの雄部材等の係合素子を左右どちらの方向から接着させても係合力に差を生じないため、係合素子を設ける方向等を気にする必要がなくなる。
【0015】
また、本発明に係る面ファスナ用編地は、ループを形成する編糸の進行方向を表面部と中間部、及び中間部と裏面部とでそれぞれ逆方向としたことで、各ループが緩む力が相殺されることによりループを小さい状態で保持することが可能となる。したがって、表面部のループに使われる糸量が減り、相対的にパイルに使われる糸量が増えることでパイルの高さを高い状態で維持することが可能となる。パイルの高さを高い状態で維持することで、係合素子との係合力が大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例に係る面ファスナ用編地の概略縦断面図である。
【図2】実施例に係る面ファスナ用編地の表面部の説明図である。
【図3】実施例に係る面ファスナ用編地の表面部、中間部、裏面部の編成パターンを示す説明図である。
【図4】別の実施例に係る面ファスナ用編地の表面部の説明図である。
【図5】実施例に係る面ファスナ用編地の裏面部の説明図である。
【図6】実施例に係る面ファスナ用編地の表面部、中間部、裏面部の連結状態を示す参考図である。
【図7】実施例に係る面ファスナ用編地の編成状態を示す参考図である。
【図8】実施例に係る面ファスナ用編地の強度を示す試験報告書である。
【図9】実施例に係る面ファスナ用編地の強度を示す試験報告書である。
【図10】実施例に係る面ファスナ用編地のパイルの側面拡大写真である。
【図11】比較例に係る面ファスナ用編地のパイルの側面拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る面ファスナ用雌部材は主に基材テープと粘着層とトリコット編地とからなる。トリコット編地は基材テープの一面に粘着層を介して接着される。また、トリコット編地は表面部の編糸、中間部の編糸、裏面部の編糸が所定のパターンにより編成されることで形成される。
本発明で用いられる編糸はナイロン繊維やポリエステル繊維などの合成繊維が考えられるが、これに限定されるものではない。
【0018】
本発明に係るトリコット編地は、主に以下の特徴を有する。
【0019】
裏面部の編糸は隣接する中間部の編糸や表面部の編糸と繋がることによって生地を形成する挿入部の他に、中間地点において所定の間隔ごとにループ部が形成される。このループ部が、上方の中間部の編糸において形成されるループ部分と連結されることで、生地の強度はより高いものとなる。
【0020】
表面部の編糸は中間地点にループ部を形成するとともに、該中間地点の左右に交互にパイルを形成する。すなわち、中間地点にループを形成、左側にパイルを形成、中間地点にループを形成、右側にループを形成、というようにループとパイルがそれぞれ形成される。
このように雄部材などの係合素子と係合するためのパイルを左右交互に形成することで、斜め左上方向から係合素子を接着させても、斜め右上方向から係合素子を接着させても同じ係合力を得ることが可能となる。
【0021】
また、上記のように1つずつ左右交互にパイルを形成する他、2つ左側にパイルを形成し、2つ右側にパイルを形成するなど、左右に形成されるパイルの数は任意である。
【0022】
また、本発明に係るトリコット編地では、表面部、中間部、裏面部のそれぞれに所定の間隔ごとに形成されるループが連結されることとなるが、このループを形成する編糸の進行方向は表面部と中間部、及び中間部と裏面部では逆方向となる。
すなわち、表面部のループが反時計回りで形成される場合は、これに連結される中間部のループは時計回りで形成されることとなる。また、この中間部のループに連結される裏面部のループは反時計回りで形成されることとなる。
【0023】
表面部、中間部、裏面部が編成されると、ループ部分には編糸の進行方向とは逆方向に力が加わるため、各ループは緩み大きくなってしまう。そして特に表面部のループが大きくなると、相対的に表面部に形成される各パイルは小さくなってしまう。
本発明では表面部、中間部、裏面部の各ループを形成する編糸の進行方向を逆方向とすることにより、各ループに編糸の進行方向とは逆方向に緩む力が加わったとしても、連結される他のループにはこれとは逆方向に緩む力が加わることで互いに緩む力が相殺されることとなる。
すなわち、裏面部のループに時計回りに緩む力がかかった場合は中間部のループでは反時計回りに緩む力がかかるため、両ループが接触することでそれぞれ反対方向に力がかかり、ループが緩む力が相殺される。同様に中間部のループで反時計回りに緩む力がかかった場合、表面部のループでは時計回りに緩む力がかかることで、ループが緩む力が相殺される。この仕組みにより表面部、中間部、裏面部の各ループにおいて編糸の進行方向とは逆方向に緩む力が加わったとしてもその力は相殺され、ループが緩んで大きくならないようにすることが可能となる。
これにより各ループを小さい状態で保持することが可能となり、表面部のループも小さい状態で保持されることから、相対的に表面部のパイルに用いられる糸長が長い状態を保持でき、パイルの高さが高い状態を保持することができる。
【0024】
本発明に係る編地を用いた面ファスナ用雌部材は主に使い捨て用又は簡易接着用の面ファスナに用いられるものであり、例えば好適には紙おむつに用いられるが、これに限定されるものではない。
【0025】
また、本発明に係るトリコット編地に用いられる編糸の太さは、面ファスナの用途などにより任意に設定すればよい。例えば紙おむつに用いる場合は表面部の編糸は太い(又は中くらい)、中間部の編糸は細い、裏面部の編糸は中くらいとし、その他の用途の場合は表面部の編糸は太い(又は中くらい)、中間部の編糸は中くらい(又は細い)、裏面部の編糸は太いとすることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
以下、本発明に係る面ファスナ用編地の好ましい実施形態について、図1〜3、5〜11を参照しながら説明する。なお、図6及び図7では、表面部(F)の編糸を破線で表し、中間部(M)の編糸を実線で表し、裏面部(B)の編糸を点線で表している。
【0027】
本発明に係る面ファスナ用雌部材(1)は図1に示すように、主にトリコット編地(2)、粘着層(3)、基材テープ(4)から形成され、トリコット編地は表面部(F)の編糸、中間部(M)の編糸、裏面部(B)の編糸から形成される。
裏面部(B)の編糸は隣接する編糸と繋がることで生地を形成する。また、該裏面部は基材テープ(4)上の粘着層(3)に接着される。
【0028】
図3に示すように、本実施例に係るトリコット編地のステッチパターンを1から9までのステッチ位置の繰り返しで表すと、表面部のステッチパターンは5−4/9−8/4−5/0−1の繰り返しで表され、中間部のステッチパターンが0−1/1−0/1−0/0−1の繰り返しで表され、裏面部のステッチパターンが4−3/7−7/3−4/0−0の繰り返しで表されるものである。
トリコット編地の所定の一列における表面部、中間部、裏面部の編糸のパターンを組み合わして編成すると図6のように表される。実際は複数列によってトリコット編地は編成され、図7のように表される。
図7において表面部(F)の各編糸は×印の位置で中間部(M)の編糸と結合され、×印と×印の中間において表面部の編糸は立ち上がり、パイルを形成する。
【0029】
上記ステッチパターンにより編成されるトリコット編地によると、従来の編地にはない以下の特徴を有する。
【0030】
本実施例に係る裏面部(B)は、図5に示すように左右交互に略蛇行して形成される挿入部(10)と、その中間地点に連続して形成されるループ部(8)とからなる。従来の裏面部の編地は挿入部によるのみであったが、本願では併せてループ部を形成した。
挿入部は図7に示すように隣接する中間部(M)や表面部(F)のループ部分等と繋がり、生地が形成される。しかしながら挿入部のみの場合、どこか一箇所が切断されると容易にほどけてしまう。そのため、生地の引き裂き強度が弱くなってしまっていた。
本実施例に係るトリコット編地では挿入部(10)に加えてループ部(8)を形成し、該ループ部を中間部に形成したループ部(7)と連結した。これにより裏面部の所定箇所の編糸が切断されたとしても、切断箇所の前後には中間部のループ部と連結された裏面部のループ部が残存し、上方の中間部との連結状態は保たれる。したがって裏面部の編糸は容易にほどけるといったことはなく、生地の引き裂き強度が向上した。
【0031】
裏面部(B)にループ部(8)を形成することにより生地の引き裂き強度が向上した点を証明するために、裏面部にループ部を形成した20コース編立て生地とループ部を形成しない挿入部のみの20コース編立て生地とをそれぞれ5片ずつ作製し、JIS L 1018 A法(ペンジュラム法)により生地の引き裂き強度を求めた。この実験は、生地に2cmの切れ目を入れ、左右方向に力を加えることでどの程度の力にまで生地が耐え得るかを測定するものである。その測定結果を図8に示す。
図8の表において、試料行に記載の括弧番号は実験に用いた試料番号である。それぞれ以下の試料を意味する。
試料(1):裏面部にループ部を形成した20コース編立て生地
試料(2):裏面部にループ部を形成しない20コース編立て生地
「引裂強さ」の行の上段「ウェール*1」の行は生地の上部、即ち編み始め方向に2cmの切れ目を入れた場合の引き裂き強度を示す数値であり、下段「ウェール*2」の行は生地の下部、即ち編み終わり方向に2cmの切れ目を入れた場合の引き裂き強度を示す数値である。数値の単位はN(ニュートン)であり、数値が高いほど引き裂き強度が高い(生地が強い)ことを意味する。
また、「N=」とあるのは測定回数を意味し、例えば「N=1」は一度目の測定であり、「N=2」は二度目の測定を示す。コース数は1インチ中の生地の長さ方向の編目数によって定まり、コース数が高いほど生地の密度が高いことを意味する。
【0032】
図8の表にあるとおり、上部より2cmの切れ目を入れた場合、及び下部より2cmの切れ目を入れた場合のいずれにおいても、裏面部にループ部を形成した試料(1)の方が、引き裂き強度が高い結果となった。例えば上部より2cmの切れ目を入れた場合では、試料(1)の平均値は6.2Nであり、試料(2)の平均値は2.7Nであった。また、下部より2cmの切れ目を入れた場合では、試料(1)の平均値は6.0Nであり、試料(2)の平均値は3.2Nであった。このように、20コース編立て生地においては、裏面部にループ部を形成しない生地と比較して裏面部にループ部を形成した本実施例の生地は二倍程度引き裂き強度が増すことが実証された。
【0033】
次に、裏面部にループ部を形成した生地とループ部を形成しない生地とを20コースから5コースおきに40コースまでそれぞれ作製し、JIS L 1018 A法(ペンジュラム法)により生地の引き裂き強度を求めた。
【0034】
その結果は図9の表に記載の通りである。
この表において、試料行に記載の括弧番号は実験に用いた試料番号である。それぞれ以下の試料を意味する。
試料(1):裏面部にループ部を形成した20コース編立て生地
試料(2):裏面部にループ部を形成した25コース編立て生地
試料(3):裏面部にループ部を形成した30コース編立て生地
試料(4):裏面部にループ部を形成した35コース編立て生地
試料(5):裏面部にループ部を形成した40コース編立て生地
試料(6):裏面部にループ部を形成しない20コース編立て生地
試料(7):裏面部にループ部を形成しない25コース編立て生地
試料(8):裏面部にループ部を形成しない30コース編立て生地
試料(9):裏面部にループ部を形成しない35コース編立て生地
試料(10):裏面部にループ部を形成しない40コース編立て生地
【0035】
図9の表にあるとおり、上部より2cmの切れ目を入れた場合では、試料(1)は6.2N、試料(2)は7.1N、試料(3)は8.7N、試料(4)は8.9N、試料(5)は9.1N、試料(6)は2.8N、試料(7)は5.9N、試料(8)は6.9N、試料(9)は6.9N、試料(10)は10.3Nとなった。
また、下部より2cmの切れ目を入れた場合では、試料(1)は6.0N、試料(2)は6.5N、試料(3)は7.8N、試料(4)は9.3N、試料(5)は9.4N、試料(6)は2.6N、試料(7)は4.5N、試料(8)は5.5N、試料(9)は6.6N、試料(10)は10.7Nとなった。
このように、裏面部にループ部を形成しない試料(6)〜(9)より、裏面部にループ部を形成する試料(1)〜(4)のほうが引き裂き強度が高い結果となった。
40コース編立て(試料(5)、(10))では顕著な差異はでなかったものの、20コース編立て〜35コース編立て(試料(1)〜(4)及び(6)〜(9))では裏面部にループ部を形成したほうが引き裂き強度が約1.2〜2.3倍程度増すことが実証された。
以上のことから本実施例に係る裏面部にループ部を形成した編地によると、外側方向に引っ張る力が加わったときに生地が破れにくくなることから、本トリコット編地と雄部材等の係合素子との着脱可能回数がより多くなる。
【0036】
本実施例に係る表面部(F)は図2に示すように左右交互に略蛇行して形成されるパイル(5)と、その中間地点に連続して形成されるループ部(6)とからなる。パイルは隣接する左右の編糸等とは絡まず山型に立ち上がり、雄部材等の係合素子と結合される部分となる。
本実施例に係る表面部はループ(22)を中心にして左右均等にパイル(21)を配置した。これは係合素子を左右どちらから係合させても同等の係合力となるようにするためである。すなわち、本来であればパイルは垂直に立ち上がることが好ましいが、実際には右側に形成されたパイルは右側に傾斜して立ち上がり、左側に形成されたパイルは左側に傾斜して立ち上がることとなる。そのため、仮に左右のどちらか一方にのみパイルを形成すると、すべてのパイルはその方向に傾斜して形成されてしまい、係合素子を右上方から接着する場合と左上方から接着する場合とで係合力に差が生じてしまう。
【0037】
本願に係る面ファスナ用雌部材(1)は好適には使い捨ておむつ等に用いられる。この場合、左右両方向から雌部材に対して係合素子を接着させる構成が考えられるが、左右で係合力に差が生じると片方の係合素子は外れやすく、もう片方の係合素子は外れにくい、といった不都合が生じる。左右の一方向にのみパイルを形成した雌部材の場合、これを解消するには例えば中央から雌部材を切断し、一方を逆向きにして用いる方法が考えられるが、この作業には非常に手間がかかってしまう。
本願に係る面ファスナ用編地では上述のとおりパイルを左右交互に形成することで、係合素子を左右どちらの方向から接着させても係合力に差を生じないため、係合素子を設ける方向等を気にする必要がなくなり、上記問題点は解消される。
また、パイルが左右両方向に立ち上がることから、雄部材等の係合素子を右上から接着した場合と左上から接着した場合のパイルへの引っかかり易さに差が生じることがなくなり、どちらの方向からでも係合素子は雌部材に引っかかり易くなる。
【0038】
本実施例に係るトリコット編地(2)では、表面部(F)と中間部(M)のループ部、及び該中間部と裏面部(B)のループ部がそれぞれ連結される。そして図3に示すように、表面部のループ部と中間部のループ部とでは編糸の進行方向が逆になっており、かつ中間部のループ部と裏面部のループ部とでは編糸の進行方向が逆になっている。
図3において、所定のループ部に注目すると、表面部のループ部を形成する編糸が反時計回りになっている箇所では、対応する中間部のループ部を形成する編糸が時計回りになっており、同様に該中間部のループ部に対応する裏面部のループ部を形成する編糸が反時計回りになっている。
【0039】
この工夫により、本実施例に係るトリコット編地(2)では少ない糸量で効率的にパイルを高く形成することが可能となる。表面部の編糸は1本の糸でパイル部とループ部を形成するため、ループ部に多く糸量を用いるほど、換言すればループ部が大きくなればなるほど、相対的にパイルに用いられる糸量は少なくなり、パイル部の高さは低くなってしまう。
一般に面ファスナ用雌部材ではパイルが高ければ高いほど係合素子との係合力は大きくなり好ましい。そのため、表面部のループ部に用いられる糸量をいかに少なく抑えてパイルに用いられる糸量を多くするかが要点となる。
本実施例では表面部と中間部、及び中間部と裏面部のループ部の編糸の進行方向をそれぞれ逆行させたことで各ループ部を小さくし、用いられる糸量を少なくすることに成功した。
【0040】
編成時には各ループ部を小さく形成したとしても、時間経過とともに編糸の進行方向とは逆方向に力がかかるため、各ループは緩んでしまう。この点、本実施例に係るトリコット編地の編成では各ループ部にかかる進行方向とは逆向きの力が表面部と中間部、中間部と裏面部の各ループ間で相殺され、結果として各ループ部の緩みを抑制することが可能となる。したがって、編成時に各ループ部を小さく形成し、時間経過によってもループ部が大きくならず小さい状態を保持することができるため、表面部のパイルを高い状態で保持できるのである。
【0041】
図10の写真は表面部、中間部、裏面部の各ループ部の編糸の進行方向が表面部と中間部、中間部と裏面部とでそれぞれ逆向きになるように形成した本実施例に係る編地の側面を拡大したものである。
図11の写真は表面部、中間部、裏面部の各ループ部の編糸の進行方向が表面部、中間部及び裏面部とですべて同じ向きとなるよう形成した比較例に係る編地の側面を拡大したものである。
各写真の右側には1目盛りあたり0.5mmの間隔で目盛りが入っている。
各写真の中間から上部にかけて形成されている輪の部分が表面部の編糸によって形成されるパイルである。図10ではおよそ矢印αの間にパイルが形成されており、図11ではおよそ矢印βの間にパイルが形成されている。
なお、図10の本実施例に係る編地と図11の比較例に係る編地とは用いた編糸の長さはどちらも等量(同じ糸長)であり、20コース編立てで形成している。
【0042】
表面部と中間部、中間部と裏面部のループ部の編糸の進行方向がそれぞれ逆方向となるよう形成した場合(本実施例)は、図10の写真にあるとおり、パイルの高さが約3.0mm(約6目盛り)となった。
これに対して、表面部と中間部、中間部と裏面部のループ部の編糸の進行方向がそれぞれ同方向となるよう形成した場合(比較例)は、図11の写真にあるとおり、パイルの高さが約1.0mm(約2目盛り)となった。
この結果から分かるとおり、同じ糸長で編地を形成した場合、表面部と中間部、中間部と裏面部のループ部の編糸の進行方向がそれぞれ逆方向となるよう形成することにより、それぞれ同方向となるよう形成した場合の約3倍の高さでパイルを維持できることが実証された。
【0043】
係合素子と結合するパイル部分を高くかつ大きく形成できることで、係合素子との引っかかりもよくなり、かつ係合力が増す。また、糸長を長くすることなく、同じ糸長でより高いパイルを形成することができるため、編糸にかかる費用を抑えて高いパイルを形成することが可能となる。
【実施例2】
【0044】
本発明に係る面ファスナ用編地の別の実施形態につき、図4を参照して説明する。本実施例に係るトリコット編地は、表面部(F)の編糸のステッチパターンが異なり、その他の構成は前記実施例と同一である。
【0045】
本実施例に係るトリコット編地を形成する表面部(F)の編糸のステッチパターンを1から9までのステッチ位置の繰り返しで表すと、表面部のステッチパターンは4−5/0−1/4−5/0−1/5−4/9−8/5−4/9−8の繰り返しで表され、図4で示されるように編成される。
すなわち、連続するループ部分(6)を中間地点とした場合、左右交互に2部ずつパイル(5)を形成する。右側に2つパイルを形成し、続いて左側にパイルを2つ形成し、続いて右側に2つパイルを形成する、という形を繰り返すのである。
【0046】
このような編成によっても、左右交互に傾斜したパイルを形成できるため、雄部材等係合素子を右上方から接着する場合と左上方から接着する場合とで係合力に差が生じず、係合素子を設ける方向等を気にする必要がなくなる。
【0047】
上記各実施例に係るトリコット編地はトリコット編機又はラッセル編機等により編成される。トリコット編機等のゲージ数は例えば7〜18ゲージとすることが好ましい。また、編立コース数は15〜50コース/インチで編立てることが好ましい。ただしこれに限定されるものではなく、要求される係合力や生地の強度等により、これ以外の条件によって編立てしてもよい。
【0048】
なお、上記各実施例において用いられるトリコット編地の編成につきステッチパターンにより表現したが、ステッチパターンはゲージ・配列が変わると変化するため、各実施例に係るステッチパターンはこれらに限定されるものではない。
また、上記実施形態の記述は本発明をこれに限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更等が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 面ファスナ用雌部材
2 トリコット編地
3 粘着層
4 基材テープ
5 パイル
6 表面部のループ部
7 中間部のループ部
8 裏面部のループ部
10 裏面部の挿入部
21 パイル形成部分
22 ループ連結部分
F 表面部
M 中間部
B 裏面部
X 表面部の編糸の進行方向
Y 中間部の編糸の進行方向
Z 裏面部の編糸の進行方向
α 本実施例のパイルの高さ
β 比較例のパイルの高さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、面ファスナの雌部材側に用いられる面ファスナ用編地に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば生地と生地あるいは布と布など物同士を簡易接着するために、粘着テープが用いられてきた。しかしながら粘着テープには、使用回数が増えると粘着層に埃やゴミ等が付着し粘着力が低下してしまうという問題点があった。このため、簡易接着用途として粘着テープの代わりに面ファスナが用いられることが多くなってきた。
【0003】
簡易接着用途に使用する面ファスナの雌部材にはトリコット編地が用いられることが多い。この面ファスナ用のトリコット編地には要求される着脱回数の使用に耐え得ることと、可能な限り製造コストを安くすることが求められる。また、雄部材などの係合素子との係合力は高いほうがよく、係合素子を剥がす際に生地が破れないように生地の強度も高いほうがよい。
【0004】
これらの見地から優れた面ファスナ用編地を作り出すために、種々の試みがなされている。例えば特開2005−118360にはポリエステル繊維を用いて低コストで安定した面ファスナーを提供することを目的とした雌部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−118360公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら該特許文献を含めて、従来の雌部材ではパイルを左右のどちらか一方方向に編成するため、係合素子との係合力に左右差が生じていた。また、従来の雌部材に用いられる方法ではループ部を小さくすることができないため同じ糸量を用いた場合パイルの高さを高くすることができず、係合力を高めるためには糸量を増やしてパイルの高さを高くする方法がとられていた。これには糸量が増えるため費用が余分にかかるという問題があった。さらに生地を構成するための裏面部の編糸は、主に1本の編糸を隣接する表面部と中間部の糸に挿入させ繋げる方法がとられており、生地の強度が弱いという問題があった。
【0007】
本発明は上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、雄部材等係合素子との係合力において左右差が生じず、できるだけ少ない糸量で高いパイルを形成して係合素子との係合力を高め、かつ裏面部にループを形成し中間部の編糸により形成されるループと連結させることで生地の強度を高めた低コストな面ファスナ用雌部材に用いる編地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明に係る面ファスナ用編地は、面ファスナ用編地に用いられるトリコット編地において、該トリコット編地は、種々の係合素子と結合されるパイル部を形成する表面部の編糸と、隣接する編糸群と繋がり生地を形成する裏面部の編糸と、該表面部の編糸と該裏面部の編糸とを繋げる中間部の編糸とからなり、表面部、中間部、裏面部の編糸は各々所定のステッチパターンの繰り返しにより編成され、表面部の編糸と中間部の編糸と裏面部の編糸とにはそれぞれ所定の間隔ごとにループ部が形成され、表面部の編糸に形成されたループ部と中間部の編糸に形成されたループ部とが連結され、中間部に形成されたループ部と裏面部に形成されたループ部とが連結されることを要旨とする。
【0009】
また、本発明に係る面ファスナ用編地は前記トリコット編地の構成において、表面部の編糸により形成されるパイルが所定の数ごとに左右交互に形成されることを要旨とする。
【0010】
また、本発明に係る面ファスナ用編地は前記トリコット編地の構成において、表面部の編糸により形成されるパイルが同数ごとに左右交互に形成されることを要旨とする。
【0011】
また、本発明に係る面ファスナ用編地は前記トリコット編地の構成において、表面部と中間部、及び中間部と裏面部とが連結される所定のループ部分に着目した場合に、ループを形成する編糸の進行方向は表面部と中間部、及び中間部と裏面部とではそれぞれ逆方向となることを要旨とする。
【0012】
また、本発明に係る面ファスナ用編地は前記構成において、該トリコット編地を1から9までのステッチ位置の繰り返しによるステッチパターンにより表示すると、表面部のステッチパターンは5−4/9−8/4−5/0−1の繰り返しで表され、中間部のステッチパターンが0−1/1−0/1−0/0−1の繰り返しで表され、裏面部のステッチパターンが4−3/7−7/3−4/0−0の繰り返しで表され、隣接する組織と結合される挿入部、及び中間部の編糸に形成されるループ部と結合されるループ部とを裏面部が有することによりトリコット編地の強度が増すことを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る面ファスナ用編地は、表面部の編糸と中間部の編糸と裏面部の編糸とからなるトリコット編地において、表面部、中間部、裏面部の編糸にはそれぞれ所定の間隔ごとにループ部が形成され、表面部の編糸により形成されたループ部と中間部の編糸により形成されたループ部とが連結され、中間部の編糸により形成されたループ部と裏面部の編糸により形成されたループ部とが連結される構成とした。
これにより、裏面部の編糸は隣接する編糸と繋がり、さらに裏面部に形成されるループ部が中間部のループ部と連結されることで、裏面部の編糸の所定部分が切断されたとしても容易にほどけることがなくなり、生地の強度が増す。
【0014】
また、本発明に係る面ファスナ用編地は、トリコット編地を構成する表面部の編糸により形成されるパイルが同数ごとに左右交互に形成される態様としたことにより、面ファスナの雄部材等の係合素子を左右どちらの方向から接着させても係合力に差を生じないため、係合素子を設ける方向等を気にする必要がなくなる。
【0015】
また、本発明に係る面ファスナ用編地は、ループを形成する編糸の進行方向を表面部と中間部、及び中間部と裏面部とでそれぞれ逆方向としたことで、各ループが緩む力が相殺されることによりループを小さい状態で保持することが可能となる。したがって、表面部のループに使われる糸量が減り、相対的にパイルに使われる糸量が増えることでパイルの高さを高い状態で維持することが可能となる。パイルの高さを高い状態で維持することで、係合素子との係合力が大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例に係る面ファスナ用編地の概略縦断面図である。
【図2】実施例に係る面ファスナ用編地の表面部の説明図である。
【図3】実施例に係る面ファスナ用編地の表面部、中間部、裏面部の編成パターンを示す説明図である。
【図4】別の実施例に係る面ファスナ用編地の表面部の説明図である。
【図5】実施例に係る面ファスナ用編地の裏面部の説明図である。
【図6】実施例に係る面ファスナ用編地の表面部、中間部、裏面部の連結状態を示す参考図である。
【図7】実施例に係る面ファスナ用編地の編成状態を示す参考図である。
【図8】実施例に係る面ファスナ用編地の強度を示す試験報告書である。
【図9】実施例に係る面ファスナ用編地の強度を示す試験報告書である。
【図10】実施例に係る面ファスナ用編地のパイルの側面拡大写真である。
【図11】比較例に係る面ファスナ用編地のパイルの側面拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る面ファスナ用雌部材は主に基材テープと粘着層とトリコット編地とからなる。トリコット編地は基材テープの一面に粘着層を介して接着される。また、トリコット編地は表面部の編糸、中間部の編糸、裏面部の編糸が所定のパターンにより編成されることで形成される。
本発明で用いられる編糸はナイロン繊維やポリエステル繊維などの合成繊維が考えられるが、これに限定されるものではない。
【0018】
本発明に係るトリコット編地は、主に以下の特徴を有する。
【0019】
裏面部の編糸は隣接する中間部の編糸や表面部の編糸と繋がることによって生地を形成する挿入部の他に、中間地点において所定の間隔ごとにループ部が形成される。このループ部が、上方の中間部の編糸において形成されるループ部分と連結されることで、生地の強度はより高いものとなる。
【0020】
表面部の編糸は中間地点にループ部を形成するとともに、該中間地点の左右に交互にパイルを形成する。すなわち、中間地点にループを形成、左側にパイルを形成、中間地点にループを形成、右側にループを形成、というようにループとパイルがそれぞれ形成される。
このように雄部材などの係合素子と係合するためのパイルを左右交互に形成することで、斜め左上方向から係合素子を接着させても、斜め右上方向から係合素子を接着させても同じ係合力を得ることが可能となる。
【0021】
また、上記のように1つずつ左右交互にパイルを形成する他、2つ左側にパイルを形成し、2つ右側にパイルを形成するなど、左右に形成されるパイルの数は任意である。
【0022】
また、本発明に係るトリコット編地では、表面部、中間部、裏面部のそれぞれに所定の間隔ごとに形成されるループが連結されることとなるが、このループを形成する編糸の進行方向は表面部と中間部、及び中間部と裏面部では逆方向となる。
すなわち、表面部のループが反時計回りで形成される場合は、これに連結される中間部のループは時計回りで形成されることとなる。また、この中間部のループに連結される裏面部のループは反時計回りで形成されることとなる。
【0023】
表面部、中間部、裏面部が編成されると、ループ部分には編糸の進行方向とは逆方向に力が加わるため、各ループは緩み大きくなってしまう。そして特に表面部のループが大きくなると、相対的に表面部に形成される各パイルは小さくなってしまう。
本発明では表面部、中間部、裏面部の各ループを形成する編糸の進行方向を逆方向とすることにより、各ループに編糸の進行方向とは逆方向に緩む力が加わったとしても、連結される他のループにはこれとは逆方向に緩む力が加わることで互いに緩む力が相殺されることとなる。
すなわち、裏面部のループに時計回りに緩む力がかかった場合は中間部のループでは反時計回りに緩む力がかかるため、両ループが接触することでそれぞれ反対方向に力がかかり、ループが緩む力が相殺される。同様に中間部のループで反時計回りに緩む力がかかった場合、表面部のループでは時計回りに緩む力がかかることで、ループが緩む力が相殺される。この仕組みにより表面部、中間部、裏面部の各ループにおいて編糸の進行方向とは逆方向に緩む力が加わったとしてもその力は相殺され、ループが緩んで大きくならないようにすることが可能となる。
これにより各ループを小さい状態で保持することが可能となり、表面部のループも小さい状態で保持されることから、相対的に表面部のパイルに用いられる糸長が長い状態を保持でき、パイルの高さが高い状態を保持することができる。
【0024】
本発明に係る編地を用いた面ファスナ用雌部材は主に使い捨て用又は簡易接着用の面ファスナに用いられるものであり、例えば好適には紙おむつに用いられるが、これに限定されるものではない。
【0025】
また、本発明に係るトリコット編地に用いられる編糸の太さは、面ファスナの用途などにより任意に設定すればよい。例えば紙おむつに用いる場合は表面部の編糸は太い(又は中くらい)、中間部の編糸は細い、裏面部の編糸は中くらいとし、その他の用途の場合は表面部の編糸は太い(又は中くらい)、中間部の編糸は中くらい(又は細い)、裏面部の編糸は太いとすることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
以下、本発明に係る面ファスナ用編地の好ましい実施形態について、図1〜3、5〜11を参照しながら説明する。なお、図6及び図7では、表面部(F)の編糸を破線で表し、中間部(M)の編糸を実線で表し、裏面部(B)の編糸を点線で表している。
【0027】
本発明に係る面ファスナ用雌部材(1)は図1に示すように、主にトリコット編地(2)、粘着層(3)、基材テープ(4)から形成され、トリコット編地は表面部(F)の編糸、中間部(M)の編糸、裏面部(B)の編糸から形成される。
裏面部(B)の編糸は隣接する編糸と繋がることで生地を形成する。また、該裏面部は基材テープ(4)上の粘着層(3)に接着される。
【0028】
図3に示すように、本実施例に係るトリコット編地のステッチパターンを1から9までのステッチ位置の繰り返しで表すと、表面部のステッチパターンは5−4/9−8/4−5/0−1の繰り返しで表され、中間部のステッチパターンが0−1/1−0/1−0/0−1の繰り返しで表され、裏面部のステッチパターンが4−3/7−7/3−4/0−0の繰り返しで表されるものである。
トリコット編地の所定の一列における表面部、中間部、裏面部の編糸のパターンを組み合わして編成すると図6のように表される。実際は複数列によってトリコット編地は編成され、図7のように表される。
図7において表面部(F)の各編糸は×印の位置で中間部(M)の編糸と結合され、×印と×印の中間において表面部の編糸は立ち上がり、パイルを形成する。
【0029】
上記ステッチパターンにより編成されるトリコット編地によると、従来の編地にはない以下の特徴を有する。
【0030】
本実施例に係る裏面部(B)は、図5に示すように左右交互に略蛇行して形成される挿入部(10)と、その中間地点に連続して形成されるループ部(8)とからなる。従来の裏面部の編地は挿入部によるのみであったが、本願では併せてループ部を形成した。
挿入部は図7に示すように隣接する中間部(M)や表面部(F)のループ部分等と繋がり、生地が形成される。しかしながら挿入部のみの場合、どこか一箇所が切断されると容易にほどけてしまう。そのため、生地の引き裂き強度が弱くなってしまっていた。
本実施例に係るトリコット編地では挿入部(10)に加えてループ部(8)を形成し、該ループ部を中間部に形成したループ部(7)と連結した。これにより裏面部の所定箇所の編糸が切断されたとしても、切断箇所の前後には中間部のループ部と連結された裏面部のループ部が残存し、上方の中間部との連結状態は保たれる。したがって裏面部の編糸は容易にほどけるといったことはなく、生地の引き裂き強度が向上した。
【0031】
裏面部(B)にループ部(8)を形成することにより生地の引き裂き強度が向上した点を証明するために、裏面部にループ部を形成した20コース編立て生地とループ部を形成しない挿入部のみの20コース編立て生地とをそれぞれ5片ずつ作製し、JIS L 1018 A法(ペンジュラム法)により生地の引き裂き強度を求めた。この実験は、生地に2cmの切れ目を入れ、左右方向に力を加えることでどの程度の力にまで生地が耐え得るかを測定するものである。その測定結果を図8に示す。
図8の表において、試料行に記載の括弧番号は実験に用いた試料番号である。それぞれ以下の試料を意味する。
試料(1):裏面部にループ部を形成した20コース編立て生地
試料(2):裏面部にループ部を形成しない20コース編立て生地
「引裂強さ」の行の上段「ウェール*1」の行は生地の上部、即ち編み始め方向に2cmの切れ目を入れた場合の引き裂き強度を示す数値であり、下段「ウェール*2」の行は生地の下部、即ち編み終わり方向に2cmの切れ目を入れた場合の引き裂き強度を示す数値である。数値の単位はN(ニュートン)であり、数値が高いほど引き裂き強度が高い(生地が強い)ことを意味する。
また、「N=」とあるのは測定回数を意味し、例えば「N=1」は一度目の測定であり、「N=2」は二度目の測定を示す。コース数は1インチ中の生地の長さ方向の編目数によって定まり、コース数が高いほど生地の密度が高いことを意味する。
【0032】
図8の表にあるとおり、上部より2cmの切れ目を入れた場合、及び下部より2cmの切れ目を入れた場合のいずれにおいても、裏面部にループ部を形成した試料(1)の方が、引き裂き強度が高い結果となった。例えば上部より2cmの切れ目を入れた場合では、試料(1)の平均値は6.2Nであり、試料(2)の平均値は2.7Nであった。また、下部より2cmの切れ目を入れた場合では、試料(1)の平均値は6.0Nであり、試料(2)の平均値は3.2Nであった。このように、20コース編立て生地においては、裏面部にループ部を形成しない生地と比較して裏面部にループ部を形成した本実施例の生地は二倍程度引き裂き強度が増すことが実証された。
【0033】
次に、裏面部にループ部を形成した生地とループ部を形成しない生地とを20コースから5コースおきに40コースまでそれぞれ作製し、JIS L 1018 A法(ペンジュラム法)により生地の引き裂き強度を求めた。
【0034】
その結果は図9の表に記載の通りである。
この表において、試料行に記載の括弧番号は実験に用いた試料番号である。それぞれ以下の試料を意味する。
試料(1):裏面部にループ部を形成した20コース編立て生地
試料(2):裏面部にループ部を形成した25コース編立て生地
試料(3):裏面部にループ部を形成した30コース編立て生地
試料(4):裏面部にループ部を形成した35コース編立て生地
試料(5):裏面部にループ部を形成した40コース編立て生地
試料(6):裏面部にループ部を形成しない20コース編立て生地
試料(7):裏面部にループ部を形成しない25コース編立て生地
試料(8):裏面部にループ部を形成しない30コース編立て生地
試料(9):裏面部にループ部を形成しない35コース編立て生地
試料(10):裏面部にループ部を形成しない40コース編立て生地
【0035】
図9の表にあるとおり、上部より2cmの切れ目を入れた場合では、試料(1)は6.2N、試料(2)は7.1N、試料(3)は8.7N、試料(4)は8.9N、試料(5)は9.1N、試料(6)は2.8N、試料(7)は5.9N、試料(8)は6.9N、試料(9)は6.9N、試料(10)は10.3Nとなった。
また、下部より2cmの切れ目を入れた場合では、試料(1)は6.0N、試料(2)は6.5N、試料(3)は7.8N、試料(4)は9.3N、試料(5)は9.4N、試料(6)は2.6N、試料(7)は4.5N、試料(8)は5.5N、試料(9)は6.6N、試料(10)は10.7Nとなった。
このように、裏面部にループ部を形成しない試料(6)〜(9)より、裏面部にループ部を形成する試料(1)〜(4)のほうが引き裂き強度が高い結果となった。
40コース編立て(試料(5)、(10))では顕著な差異はでなかったものの、20コース編立て〜35コース編立て(試料(1)〜(4)及び(6)〜(9))では裏面部にループ部を形成したほうが引き裂き強度が約1.2〜2.3倍程度増すことが実証された。
以上のことから本実施例に係る裏面部にループ部を形成した編地によると、外側方向に引っ張る力が加わったときに生地が破れにくくなることから、本トリコット編地と雄部材等の係合素子との着脱可能回数がより多くなる。
【0036】
本実施例に係る表面部(F)は図2に示すように左右交互に略蛇行して形成されるパイル(5)と、その中間地点に連続して形成されるループ部(6)とからなる。パイルは隣接する左右の編糸等とは絡まず山型に立ち上がり、雄部材等の係合素子と結合される部分となる。
本実施例に係る表面部はループ(22)を中心にして左右均等にパイル(21)を配置した。これは係合素子を左右どちらから係合させても同等の係合力となるようにするためである。すなわち、本来であればパイルは垂直に立ち上がることが好ましいが、実際には右側に形成されたパイルは右側に傾斜して立ち上がり、左側に形成されたパイルは左側に傾斜して立ち上がることとなる。そのため、仮に左右のどちらか一方にのみパイルを形成すると、すべてのパイルはその方向に傾斜して形成されてしまい、係合素子を右上方から接着する場合と左上方から接着する場合とで係合力に差が生じてしまう。
【0037】
本願に係る面ファスナ用雌部材(1)は好適には使い捨ておむつ等に用いられる。この場合、左右両方向から雌部材に対して係合素子を接着させる構成が考えられるが、左右で係合力に差が生じると片方の係合素子は外れやすく、もう片方の係合素子は外れにくい、といった不都合が生じる。左右の一方向にのみパイルを形成した雌部材の場合、これを解消するには例えば中央から雌部材を切断し、一方を逆向きにして用いる方法が考えられるが、この作業には非常に手間がかかってしまう。
本願に係る面ファスナ用編地では上述のとおりパイルを左右交互に形成することで、係合素子を左右どちらの方向から接着させても係合力に差を生じないため、係合素子を設ける方向等を気にする必要がなくなり、上記問題点は解消される。
また、パイルが左右両方向に立ち上がることから、雄部材等の係合素子を右上から接着した場合と左上から接着した場合のパイルへの引っかかり易さに差が生じることがなくなり、どちらの方向からでも係合素子は雌部材に引っかかり易くなる。
【0038】
本実施例に係るトリコット編地(2)では、表面部(F)と中間部(M)のループ部、及び該中間部と裏面部(B)のループ部がそれぞれ連結される。そして図3に示すように、表面部のループ部と中間部のループ部とでは編糸の進行方向が逆になっており、かつ中間部のループ部と裏面部のループ部とでは編糸の進行方向が逆になっている。
図3において、所定のループ部に注目すると、表面部のループ部を形成する編糸が反時計回りになっている箇所では、対応する中間部のループ部を形成する編糸が時計回りになっており、同様に該中間部のループ部に対応する裏面部のループ部を形成する編糸が反時計回りになっている。
【0039】
この工夫により、本実施例に係るトリコット編地(2)では少ない糸量で効率的にパイルを高く形成することが可能となる。表面部の編糸は1本の糸でパイル部とループ部を形成するため、ループ部に多く糸量を用いるほど、換言すればループ部が大きくなればなるほど、相対的にパイルに用いられる糸量は少なくなり、パイル部の高さは低くなってしまう。
一般に面ファスナ用雌部材ではパイルが高ければ高いほど係合素子との係合力は大きくなり好ましい。そのため、表面部のループ部に用いられる糸量をいかに少なく抑えてパイルに用いられる糸量を多くするかが要点となる。
本実施例では表面部と中間部、及び中間部と裏面部のループ部の編糸の進行方向をそれぞれ逆行させたことで各ループ部を小さくし、用いられる糸量を少なくすることに成功した。
【0040】
編成時には各ループ部を小さく形成したとしても、時間経過とともに編糸の進行方向とは逆方向に力がかかるため、各ループは緩んでしまう。この点、本実施例に係るトリコット編地の編成では各ループ部にかかる進行方向とは逆向きの力が表面部と中間部、中間部と裏面部の各ループ間で相殺され、結果として各ループ部の緩みを抑制することが可能となる。したがって、編成時に各ループ部を小さく形成し、時間経過によってもループ部が大きくならず小さい状態を保持することができるため、表面部のパイルを高い状態で保持できるのである。
【0041】
図10の写真は表面部、中間部、裏面部の各ループ部の編糸の進行方向が表面部と中間部、中間部と裏面部とでそれぞれ逆向きになるように形成した本実施例に係る編地の側面を拡大したものである。
図11の写真は表面部、中間部、裏面部の各ループ部の編糸の進行方向が表面部、中間部及び裏面部とですべて同じ向きとなるよう形成した比較例に係る編地の側面を拡大したものである。
各写真の右側には1目盛りあたり0.5mmの間隔で目盛りが入っている。
各写真の中間から上部にかけて形成されている輪の部分が表面部の編糸によって形成されるパイルである。図10ではおよそ矢印αの間にパイルが形成されており、図11ではおよそ矢印βの間にパイルが形成されている。
なお、図10の本実施例に係る編地と図11の比較例に係る編地とは用いた編糸の長さはどちらも等量(同じ糸長)であり、20コース編立てで形成している。
【0042】
表面部と中間部、中間部と裏面部のループ部の編糸の進行方向がそれぞれ逆方向となるよう形成した場合(本実施例)は、図10の写真にあるとおり、パイルの高さが約3.0mm(約6目盛り)となった。
これに対して、表面部と中間部、中間部と裏面部のループ部の編糸の進行方向がそれぞれ同方向となるよう形成した場合(比較例)は、図11の写真にあるとおり、パイルの高さが約1.0mm(約2目盛り)となった。
この結果から分かるとおり、同じ糸長で編地を形成した場合、表面部と中間部、中間部と裏面部のループ部の編糸の進行方向がそれぞれ逆方向となるよう形成することにより、それぞれ同方向となるよう形成した場合の約3倍の高さでパイルを維持できることが実証された。
【0043】
係合素子と結合するパイル部分を高くかつ大きく形成できることで、係合素子との引っかかりもよくなり、かつ係合力が増す。また、糸長を長くすることなく、同じ糸長でより高いパイルを形成することができるため、編糸にかかる費用を抑えて高いパイルを形成することが可能となる。
【実施例2】
【0044】
本発明に係る面ファスナ用編地の別の実施形態につき、図4を参照して説明する。本実施例に係るトリコット編地は、表面部(F)の編糸のステッチパターンが異なり、その他の構成は前記実施例と同一である。
【0045】
本実施例に係るトリコット編地を形成する表面部(F)の編糸のステッチパターンを1から9までのステッチ位置の繰り返しで表すと、表面部のステッチパターンは4−5/0−1/4−5/0−1/5−4/9−8/5−4/9−8の繰り返しで表され、図4で示されるように編成される。
すなわち、連続するループ部分(6)を中間地点とした場合、左右交互に2部ずつパイル(5)を形成する。右側に2つパイルを形成し、続いて左側にパイルを2つ形成し、続いて右側に2つパイルを形成する、という形を繰り返すのである。
【0046】
このような編成によっても、左右交互に傾斜したパイルを形成できるため、雄部材等係合素子を右上方から接着する場合と左上方から接着する場合とで係合力に差が生じず、係合素子を設ける方向等を気にする必要がなくなる。
【0047】
上記各実施例に係るトリコット編地はトリコット編機又はラッセル編機等により編成される。トリコット編機等のゲージ数は例えば7〜18ゲージとすることが好ましい。また、編立コース数は15〜50コース/インチで編立てることが好ましい。ただしこれに限定されるものではなく、要求される係合力や生地の強度等により、これ以外の条件によって編立てしてもよい。
【0048】
なお、上記各実施例において用いられるトリコット編地の編成につきステッチパターンにより表現したが、ステッチパターンはゲージ・配列が変わると変化するため、各実施例に係るステッチパターンはこれらに限定されるものではない。
また、上記実施形態の記述は本発明をこれに限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更等が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 面ファスナ用雌部材
2 トリコット編地
3 粘着層
4 基材テープ
5 パイル
6 表面部のループ部
7 中間部のループ部
8 裏面部のループ部
10 裏面部の挿入部
21 パイル形成部分
22 ループ連結部分
F 表面部
M 中間部
B 裏面部
X 表面部の編糸の進行方向
Y 中間部の編糸の進行方向
Z 裏面部の編糸の進行方向
α 本実施例のパイルの高さ
β 比較例のパイルの高さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面ファスナ用編地に用いられるトリコット編地において、
該トリコット編地は、種々の係合素子と結合されるパイル部を形成する表面部の編糸と、隣接する編糸群と繋がり生地を形成する裏面部の編糸と、該表面部の編糸と該裏面部の編糸とを繋げる中間部の編糸とからなり、
表面部、中間部、裏面部の編糸は各々所定のステッチパターンの繰り返しにより編成され、
表面部の編糸と中間部の編糸と裏面部の編糸とにはそれぞれ所定の間隔ごとにループ部が形成され、表面部の編糸に形成されたループ部と中間部の編糸に形成されたループ部とが連結され、中間部に形成されたループ部と裏面部に形成されたループ部とが連結されることを特徴とする面ファスナ用編地。
【請求項2】
請求項1に記載のトリコット編地において、
表面部の編糸により形成されるパイルが所定の数ごとに左右交互に形成されることを特徴とする面ファスナ用編地。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のトリコット編地において、
表面部の編糸により形成されるパイルが同数ごとに左右交互に形成されることを特徴とする面ファスナ用編地。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載のトリコット編地において、
表面部と中間部、及び中間部と裏面部とが連結される所定のループ部分に着目した場合に、ループを形成する編糸の進行方向は表面部と中間部、及び中間部と裏面部とではそれぞれ逆方向となることを特徴とする面ファスナ用編地。
【請求項5】
該トリコット編地を1から9までのステッチ位置の繰り返しによるステッチパターンにより表示すると、表面部のステッチパターンは5−4/9−8/4−5/0−1の繰り返しで表され、中間部のステッチパターンが0−1/1−0/1−0/0−1の繰り返しで表され、裏面部のステッチパターンが4−3/7−7/3−4/0−0の繰り返しで表され、
隣接する組織と結合される挿入部、及び中間部の編糸に形成されるループ部と結合されるループ部とを裏面部が有することによりトリコット編地の強度が増すことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の面ファスナ用編地。
【請求項1】
面ファスナ用編地に用いられるトリコット編地において、
該トリコット編地は、種々の係合素子と結合されるパイル部を形成する表面部の編糸と、隣接する編糸群と繋がり生地を形成する裏面部の編糸と、該表面部の編糸と該裏面部の編糸とを繋げる中間部の編糸とからなり、
表面部、中間部、裏面部の編糸は各々所定のステッチパターンの繰り返しにより編成され、
表面部の編糸と中間部の編糸と裏面部の編糸とにはそれぞれ所定の間隔ごとにループ部が形成され、表面部の編糸に形成されたループ部と中間部の編糸に形成されたループ部とが連結され、中間部に形成されたループ部と裏面部に形成されたループ部とが連結されることを特徴とする面ファスナ用編地。
【請求項2】
請求項1に記載のトリコット編地において、
表面部の編糸により形成されるパイルが所定の数ごとに左右交互に形成されることを特徴とする面ファスナ用編地。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のトリコット編地において、
表面部の編糸により形成されるパイルが同数ごとに左右交互に形成されることを特徴とする面ファスナ用編地。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載のトリコット編地において、
表面部と中間部、及び中間部と裏面部とが連結される所定のループ部分に着目した場合に、ループを形成する編糸の進行方向は表面部と中間部、及び中間部と裏面部とではそれぞれ逆方向となることを特徴とする面ファスナ用編地。
【請求項5】
該トリコット編地を1から9までのステッチ位置の繰り返しによるステッチパターンにより表示すると、表面部のステッチパターンは5−4/9−8/4−5/0−1の繰り返しで表され、中間部のステッチパターンが0−1/1−0/1−0/0−1の繰り返しで表され、裏面部のステッチパターンが4−3/7−7/3−4/0−0の繰り返しで表され、
隣接する組織と結合される挿入部、及び中間部の編糸に形成されるループ部と結合されるループ部とを裏面部が有することによりトリコット編地の強度が増すことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の面ファスナ用編地。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−34832(P2012−34832A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177519(P2010−177519)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【特許番号】特許第4861503号(P4861503)
【特許公報発行日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【出願人】(501014991)丸紅インテックス株式会社 (6)
【出願人】(310004943)丸羽経編株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【特許番号】特許第4861503号(P4861503)
【特許公報発行日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【出願人】(501014991)丸紅インテックス株式会社 (6)
【出願人】(310004943)丸羽経編株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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