説明

面取り工具

【課題】刃体を無駄なく有効に使用することができる面取り工具を提供する。
【解決手段】2本の刃体2を交差させて固定ネジ10によってホルダ4に固定し、2本の刃体2が交差して形成されるホルダ4から露出した面取り用コーナー部3を、対象物12の縁辺に圧接させつつ縁辺が延びる方向に移動させることにより、縁辺の角の面取りを行ない、刃体2が損耗して面取りし難くなった場合は、刃体2を長手方向に保持溝9の中でスライドさせることにより、面取り用コーナー部3になる刃体2の位置を刃体2の別の位置に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面取り工具に関し、さらに詳しくは、刃体を無駄なく有効に使用することができる面取り工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属プレートや樹脂プレートに対して、切断、穴あけ等の加工した場合、加工した部分にバリが発生する。このようなバリ取りや仕上げを行なうために、種々の工具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されている穿設孔のバリ取り工具は、握持するハンドルの先端部に刃体を有し、刃体を対象物に圧接させながらスライドさせることによりバリを除去する。切断面の面取りをする場合は、面取りに適した形状の刃体を先端部に取り付けた工具が使用される。しかしながら、このような面取り工具では、面取り作業を繰り返すことにより、刃体の対象物に圧接される部分が損耗してやがて使用できなくなる。即ち、刃体の一部分が損耗しただけであっても、新たな面取り工具に交換する必要があったり、新たな刃体に交換する必要がある。それ故、刃部が十分に利用されていないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−51529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、刃体を無駄なく有効に使用することができる面取り工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明の面取り工具は、2本の刃体と、この2本の刃体を交差させて長手方向にスライド可能に保持するホルダと、この2本の刃体をホルダに固定する固定手段とを備え、前記2本の刃体が交差して形成される面取り用コーナー部をこのホルダから露出させる構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ホルダから露出した面取り用コーナー部を対象物に圧接させつつ移動させることにより、対象物の面取りを行なうことができる。そして、刃体を長手方向にスライドさせることにより、面取り用コーナー部になる刃体の位置を刃体の別の位置に変更することができる。そのため、刃体を無駄なく有効に使用することができる。
【0007】
ここで、例えば、前記刃体をセラミックス製にする。この仕様によれば、刃体の腐食を防止できるとともに、取り扱いも安全になる。
【0008】
前記刃体の横断面が四角形である仕様にすることもできる。この仕様によれば、刃体の横断面の4つの角を面取り用コーナー部として利用することができるので、刃体をより有効に利用することができる。
【0009】
前記面取り用コーナー部の角度は、例えば45°〜120°にする。この角度範囲にすることで円滑に面取り作業を行ない易くなる。
【0010】
前記刃体に対して側面視で所定の角度をなす傾斜角度線を、前記ホルダの側面に表示した仕様にすることもできる。この仕様によれば、面取り作業を行なう際に、傾斜角度線を目安にしてホルダを傾けることにより、対象物に対する刃体の側面視の傾斜角度を所望の角度に合わせ易くなる。これにより、円滑な面取り作業を行なうには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の面取り工具を例示する正面図である。
【図2】図1の面取り工具の分解図である。
【図3】図1の面取り工具の側面図である。
【図4】面取り用コーナー部を形成している刃体を例示する斜視図である。
【図5】刃体の横断面である。
【図6】面取り作業をしている状態を例示する平面図である。
【図7】面取り作業をしている状態を例示する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の面取り工具を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1〜図3に例示するように、本発明の面取り工具1は、手持ちで面取り作業を行なうことができる手工具であり、2本の長板状の刃体2と、この2本の刃体2を交差させて保持するホルダ4と、ホルダ4に保持した2本の刃体2をホルダ4に固定する固定ネジ10とを備えている。
【0014】
ホルダ4は、2本の刃体2を長手方向にスライド可能に保持できるようになっている。2本の刃体2が交差して形成されるコーナー部のうち、ホルダ4から露出しているコーナー部が面取り用コーナー部3になる。即ち、ホルダ4に形成された切欠き部8から露出して交差している刃体2の部分が面取り用コーナー部3である。面取り用コーナー部3の角度Aは、例えば、45°〜120°程度に設定する。
【0015】
図2に例示するように、ホルダ4は、樹脂製の2枚の板状のボディ5、6を重ね合わせて、接着剤などで接合することにより構成されている。それぞれのボディ5、6は同じ形状(同じもの)である。これらボディ5、6は、突出したハンドル部7と三角状の切欠き部8を有する左右非対称のY字状形状であり、2つのネジ穴10aを有している。
【0016】
切欠き部8は、面取り用コーナー部3をボディ5、6から露出させるように鋭角状に切り込んだ形状になっている。これらボディ5、6の表面にはそれぞれ、1本の刃体2をスライド可能に保持する保持溝9が設けられている。保持溝9は長手方向途中で切欠き部8に開口するように延設されている。
【0017】
これらボディ5、6に設けられた保持溝9の深さは、保持する刃体2の厚さと同等、或いは、刃体2の厚さよりも若干浅く設定されている。これらボディ5、6を、互いの保持溝9が形成された表面を対向させて、互いの切欠き部8およびネジ穴10aを位置合わせして重ね合わせることにより、互いの保持溝9、9を交差した状態にしている。
【0018】
それぞれの保持溝9に刃体2を挿入して、ボディ5、6のネジ穴10aを連通させた固定ネジ10を締めることにより、2本の刃体2はボディ5、6に挟まれ押圧されて固定される。即ち、固定ネジ10が、刃体2をホルダ4に固定する固定手段になっている。刃体2を保持溝9の中で長手方向の任意の位置に配置して固定ネジ10を締めることで、面取り用コーナー部3となる刃体2の位置を変更することができる。
【0019】
図3に例示するように、ホルダ4の側面にはホルダ4に固定された刃体2に対して、側面視で所定の角度Bをなす傾斜角度線11が表示されている。刃体2に対して傾斜角度線11がなす角度Bは、例えば、30°〜60°程度である。
【0020】
2本の刃体2は、図4に例示するように交差して、面取り用コーナー部3を形成する。図4(A)は、図5(A)に示すように横断面が四角形の刃体2を用いた場合の面取り用コーナー部3を示している。図4(B)は、図5(B)に示すように横断面が半円形状の刃体2を用いた場合の面取り用コーナー部3を示している。
【0021】
刃体2は、セラミックス製やアルミニウム、アルミニウム合金などの軽金属製を含め種々の金属製のものを使用することができる。セラミックス製の刃体2にすると、腐食を防止できるとともに、取り扱いも安全になる。
【0022】
面取り工具1を用いて面取り作業をする場合は、図6に例示するように、対象物12の縁辺を2本の刃体2で挟むようにして面取り用コーナー部3を配置する。そして、図7に例示するように、ホルダ4を所定の傾斜角度Cに保って、面取り用コーナー部3を縁辺に圧接させながら縁辺が延びる方向に移動させる。これにより、縁辺の両側の角には同時に面取り部13が形成される。
【0023】
面取り作業を繰り返すことにより、面取り用コーナー部3が損耗して面取りし難くなる。その場合は、固定ボルト10を緩めてそれぞれの刃体2を若干スライドさせた後、固定ボルト10を締めて、この位置で2本の刃体2をボディ5、6に固定する。これにより、面取り用コーナー部3になる位置が刃体2の別の位置に変更となるため、新品の刃体2と同様に面取り作業を行なうことができる。この面取り用コーナー部3が損耗したら、同様に刃体2をスライドさせて刃体2の新たな位置を面取り用コーナー部3にする。それ故、本発明によれば、刃体2を無駄なく有効に使用することができる。
【0024】
図5(A)に例示するように刃体2の横断面が四角形であると、刃体2を徐々にスライドさせて1つの角2aを面取り用コーナー部3として使用し終わっても、順次、別の角2b、2c、2dを使用することができる。図5(B)に例示するように刃体2の横断面が半円形状であると、2つの角2a、2bを面取り用コーナー部3として使用することができる。したがって、4つの角2a、2、2c、2dを面取り用コーナー部3として利用できる横断面四角形の刃体2を用いると、刃体2をより有効に利用することができる。
【0025】
面取り用コーナー部3の角度Aは、45°〜120°程度に設定すると円滑に面取り作業を行ない易くなる。この角度Aは、90°に近づけるとより好ましい。
【0026】
また、面取りを行なう縁辺に対して、刃体2の側面視の傾斜角度Cは、30°〜60°程度にすると面取り作業を行ない易くなる。この角度Cは、45°に近づけるとより好ましい。角度Aを90°、角度Cを45°の組み合わせにすると、非常に円滑に面取り作業を行なうことができる。
【0027】
この実施形態では、ホルダ4に固定された刃体2に対して、側面視で30°〜60°の所定の角度Bをなす傾斜角度線11が表示されている。したがって、面取り作業を行なう際に、傾斜角度線11を目安にして傾斜角度線11が縁辺と平行になるようにホルダ4を傾けることにより、縁辺に対する刃体2の側面視の傾斜角度Cを予め設定した所定の角度(30°〜60°)に合わせやすくなる。これにより、円滑な面取り作業を行なうには有利になる。例えば、角度Bを45°にしておくと、傾斜角度線11が対象物12の縁辺に平行になるように、ホルダ4を傾けることで、縁辺に対する刃体2の側面視の傾斜角度Cを45°に合わせ易くなる。
【0028】
セラミックス製やアルミニウムなどの軽金属製の刃体2を使用する場合は、面取りをする対象物12の材質は、主に合成樹脂であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリカーボネート、塩化ビニル、アクリル等である。
【0029】
この実施形態では、ホルダ4が同形状の2枚のボディ5、6を一体化することにより構成されているので、ボディ5、6を製造する型が1種類で済むという利点がある。ホルダ4の仕様(構造、形状、材質等)はこの実施形態で例示したものに限定されるものではない。例えば、ホルダ4を1つのボディで構成して、このボディに2つの保持溝9を交差するよう形成することもできる。そして、保持溝9の中に保持した刃体2を、固定ネジ10等で直接、押圧してホルダ4に固定することもできる。刃体2をホルダ4に固定する固定手段も固定ネジ10に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0030】
1 面取り工具
2 刃体
2a、2b、2c、2d 角
3 面取り用コーナー部
4 ホルダ
5、6 ボディ
7 ハンドル部
8 切欠き部
9 保持溝
10 固定ネジ
10a ネジ穴
11 傾斜角度線
12 対象物
13 面取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の刃体と、この2本の刃体を交差させて長手方向にスライド可能に保持するホルダと、この2本の刃体をホルダに固定する固定手段とを備え、前記2本の刃体が交差して形成される面取り用コーナー部をこのホルダから露出させる構成にしたことを特徴とする面取り工具。
【請求項2】
前記刃体がセラミックス製である請求項1に記載の面取り工具。
【請求項3】
前記刃体の横断面が四角形である請求項1または2に記載の面取り工具。
【請求項4】
前記面取り用コーナー部の角度が45°〜120°である請求項1〜3のいずれかに記載の面取り工具。
【請求項5】
前記刃体に対して側面視で所定の角度をなす傾斜角度線を、前記ホルダの側面に表示した請求項1〜4のいずれかに記載の面取り工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−130996(P2012−130996A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285890(P2010−285890)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(390010526)コミー株式会社 (10)
【Fターム(参考)】