説明

面対向型磁気カップリング装置

【課題】 トルクの伝達力を低下させることなく、軸方向の吸引力を低減させることができる磁気カップリング装置を提供する。
【解決手段】 磁気カップリング装置は、同一の軸心となるように配置された駆動軸1及び従動軸2は、軸受9、10によって各々支持されている。これら駆動軸1及び従動軸2の対向側の軸端にそれぞれ固定した円板状の駆動側永久磁石3及び従動側永久磁石4が固定されている。この駆動側永久磁石3及び従動側永久磁石4の対向面には、各々円周方向に複数対の磁極が着磁された磁極パターン5、6が形成されていて、磁極5a、6aの吸引力により駆動軸1及び従動軸2を非接触で結合してトルク伝達するように構成されている。そして、駆動側永久磁石3及び従動側永久磁石4に形成された各々の磁極パターン5、6の内周または外周には、単極に着磁された円環状の単極パターン7、8が形成され、これら単極パターン7、8を互いに面対向させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動軸と従動軸を磁気的に結合してトルクを伝達する面対向型磁気カップリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動軸と従動軸を磁気的に結合してトルクを伝達する磁気カップリング装置は、軸端を突き合わせて配置した駆動軸と従動軸の両方の軸端にそれぞれ円板状の永久磁石を固定し、両方の永久磁石を互いに面対向させ、両方の永久磁石の吸引力により駆動軸と従動軸を磁気的に結合している。例えば、実開昭58−108777号公報(特許文献1)、或いは、特許第3463700号公報(特許文献2)には、駆動軸に固定した円板状の永久磁石の円周方向に交互にかつ等間隔に異極になるように複数の磁極を形成させたものが開示されている。
【0003】
【特許文献1】実開昭58−108777号公報
【特許文献2】特許第3463700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の磁気カップリング装置は、図6及び図7に示すように、同一の軸心となるように配置された駆動軸100及び従動軸101は、各々軸受110、111に支持されている。そして、駆動軸100及び従動軸101の対向側の軸端には、それぞれ円板状の駆動側永久磁石103及び従動側永久磁石104が固定されている。この駆動側永久磁石103及び従動側永久磁石104の対向面には、各々円周方向に複数対の磁極105a、106aが着磁された磁極パターン105、106が形成され、磁極105a、106aの吸引力により駆動軸100及び従動軸101を非接触で結合してトルク伝達するように構成されている。
【0005】
近年の磁気カップリング装置は、トルクの伝達力を高めるために、永久磁石として、例えば、ネオジム磁石(Neodymium magnet)が用いられるようになっている。ところが、このネオジム磁石を使用した場合、吸引力が強いために、駆動側永久磁石103及び従動側永久磁石104は、互いに接近しようとするので、駆動軸100及び従動軸101は、図7に示す矢示の方向に移動する。このとき、駆動軸100及び従動軸101を支持する各々の軸受110、111には、常に軸方向の大きな負荷がかかることになる。このように、大きな負荷を与えられた軸受110、111は、大きなストレスによって、やがて破損する問題が生じていた。この対策として、高耐圧の軸受を採用することもあるが、この種の軸受は高額であり、また大型のため、実用的に採用できない問題もあった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、この問題を解決し、トルクの伝達力を低下させることなく、軸方向の吸引力を低減させることができる磁気カップリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明による磁気カップリング装置は、同一の軸心となるように配置された駆動軸及び従動軸と、これら駆動軸及び従動軸の対向側の軸端にそれぞれ固定した円板状の駆動側永久磁石及び従動側永久磁石とを備え、この駆動側永久磁石及び従動側永久磁石の対向面には、各々円周方向に複数対の磁極が着磁された磁極パターンを備え、前記磁極の吸引力により前記駆動軸及び従動軸を非接触で結合してトルク伝達する磁気カップリング装置において、前記駆動側永久磁石及び従動側永久磁石に形成された各々の磁極パターンの内周または外周には、単極に着磁された円環状の単極パターンが形成され、これら単極パターンを互いに面対向させたことを要旨としている。
【0008】
さらに、本発明の磁気カップリング装置は、駆動軸及び従動軸が各々軸受によって支持され、駆動側永久磁石及び従動側永久磁石の磁極パターンの磁極の吸引力により、互いに対向する方向に付勢される構成としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の磁気カップリング装置によれば、駆動側永久磁石及び従動側永久磁石に形成された各々の磁極パターンの内周または外周に、単極に着磁された円環状の単極パターンを形成し、これら単極パターンを互いに面対向させたことにより、トルクを伝達させるために駆動側永久磁石と従動側永久磁石を近づけたときに、同極の単極パターン同士が反発することから、磁極パターンの磁極の吸引力が弱められる。この結果、駆動軸と従動軸を支持する各々の軸受に加わる軸方向の負荷が低減されることから、軸受に与えるストレスが低減され、軸受の損傷等を未然に防止するとともに、長寿命にすることが可能となる。
【0010】
また、駆動軸と従動軸とを非接触で結合してトルク伝達するときには、駆動側永久磁石及び従動側永久磁石に形成された各々の磁極パターンの磁極によって伝達されるので、磁気カップリング装置としての機能を損なうことはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明による磁気カップリング装置は、同一の軸心となるように配置された駆動軸及び従動軸は、軸受によって各々支持されている。これら駆動軸及び従動軸の対向側の軸端にそれぞれ固定した円板状の駆動側永久磁石及び従動側永久磁石が固定されている。この駆動側永久磁石及び従動側永久磁石の対向面には、各々円周方向に複数対の磁極が着磁された磁極パターンが形成されていて、磁極の吸引力により前記駆動軸及び従動軸を非接触で結合してトルク伝達するように構成されている。そして、駆動側永久磁石及び従動側永久磁石に形成された各々の磁極パターンの内周または外周には、単極に着磁された円環状の単極パターンが形成され、これら単極パターンを互いに面対向させている。
【0012】
以下、図面に基いて本発明の好適な実施例について説明する。図1は、本発明による面対向型磁気カップリング装置の概要構成を示した説明図であり、同一の軸心となるように配置された駆動軸1及び従動軸2の軸端には、それぞれ円板状の駆動側永久磁石3及び従動側永久磁石4が固定されている。この駆動側永久磁石3及び従動側永久磁石4は、大きな伝達トルクが要求される場合には、ネオジム磁石を使用することが望ましい。その他、フェライト磁石等の各種の永久磁石を使用しても良い。この駆動側永久磁石3及び従動側永久磁石4の対向面には、N極及びS極を一対とした複数対の磁極5a、6aが円周方向に着磁することにより、磁極パターン5、6が形成されている。図1に示した磁極パターン5、6には、4対8極が着磁されている。さらに、駆動側永久磁石3及び従動側永久磁石4に形成された各々の磁極パターン5、6の外周には、例えば、N極の単極に着磁された円環状の単極パターン7、8が形成され、これら単極パターン7、8と磁極パターン5、6が、同一の軸心となるように互いに面対向させている。そして、磁極パターン5、6の磁極5a、6aの吸引力により、駆動軸1及び従動軸2を非接触で結合してトルク伝達するように構成されている。
【0013】
図2は、面対向型磁気カップリング装置全体の構成を示した構成図であり、軸端にそれぞれ円板状の駆動側永久磁石3及び従動側永久磁石4が固定された駆動軸1及び従動軸2が軸受9、10によって回転自在に支持されている。これら軸受9、10は、ベース部11に配設された保持部12によって保持されている。また、駆動側永久磁石3と従動側永久磁石4との間は所定寸法離間させていて、その間には、例えばアクリル樹脂等の合成樹脂又はアルミニウム等の非磁性金属からなる隔壁13が、ベース部11に一端を固定した状態で配設されている。因みに、図示右方は駆動側として、駆動軸1、駆動側永久磁石3及び軸受9が大気中に配設されている。また、図示左方は従動側として、従動軸2、従動側永久磁石4及び軸受10が、例えば真空層や水槽の内部に配設されている。大気中と真空層や水槽との間は、隔壁13によって仕切られ、互いの流入を阻止している。
【0014】
このように構成された面対向型磁気カップリング装置において、図示しない回転駆動源から伝達されて駆動軸1及び駆動側永久磁石3が回転すると、磁極パターン5の磁極5aに磁極パターン6の磁極6aが吸引され、その吸引力によって従動側永久磁石4が従動回転する。その結果、従動側永久磁石4と共に従動軸2に伝達されることにより、トルクが伝達される。
【0015】
トルク伝達は、磁極パターン5、6の磁極5a6aの吸引力が必要となり、ネオジム磁石を使用した場合には、図4に示す矢示のように、大きな吸引力が生じる。この吸引力は、各々の磁極パターン5、6の外周に着磁された単極の円環状の単極パターン7、8を対向させることよって低減させるようにしている。すなわち、図4に示す矢示ように、単極の円環状の単極パターン7、8は同極に着磁されているので、対応させたときに、互いに反発力が発生する。このため、磁極パターン5、6による吸引力から、単極パターン7、8による反発力が差し引かれ、この結果、駆動軸1、2には、軸受9、10に悪影響を与えない程度の適度の軸方向のトルクが発生する。この単極パターン7、8による反発力は、単極パターン7、8の面積や着磁力を変化させることにより調整することができる。
【0016】
図3は、駆動軸1及び従動軸2の軸端に固定される円板状の駆動側永久磁石3及び従動側永久磁石4の固定手段を示す断面図であり、一方の従動軸2の軸端には、Dカット部2aが形成され、軸端の中心には、ネジ穴2bが形成されている。また、円板状の従動側永久磁石4は、アルミニウム等の金属材からなるケース13に嵌合固着されて収納されている。ケース13の中央には、透孔13aが穿設されている。従動側永久磁石4を収納したケース13の反対面には、突部13bが一体形成され、その軸方向中央には、従動軸2の軸端を挿入する嵌合孔13cが形成されている。この嵌合孔13cは、Dカット部1aに対応するように形成されていて、ケース13と従動軸2とが回転しないように構成されている。そして、ケース13の透孔13aにビス14を挿通して従動軸2のネジ穴2bに螺合することにより、駆動側永久磁石3と駆動軸1とが一体に構成される。なお、固定手段としては、上述した手段の他、キー溝による固定、セットビスによる固定、あるいは、締め込みによる固定等を適宜採用しても良い。
【0017】
図5は、本発明の他の実施例を示し、駆動側永久磁石3及び従動側永久磁石4に形成された各々の磁極パターン5、6の内周には、例えば、N極の単極に着磁された円環状の単極パターン20、21が形成され、これら単極パターン20、21と磁極パターン5、6が、同一の軸心となるように互いに面対向させるようにしている。この実施例においても、磁極パターン5、6による吸引力から、単極パターン20、21による反発力が差し引かれ、この結果、駆動軸1、2には、軸受9、10に悪影響を与えない程度の適度の軸方向のトルクが発生することは、前述した例と同様である。なお、この単極パターン20、21による反発力は、単極パターン20、21面積や着磁力を変化させることにより調整することができることも前述した例と同様である。
【0018】
以上、本発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であることは言うまでもない。例えば、上述した実施例においては、磁極パターンの磁極を8極としたが、2極以上の偶数極に着磁しても良い。また、円板状の駆動側永久磁石及び従動側永久磁石をケースの収納するようにして駆動軸や従動軸に固定するようにしたが、永久磁石または駆動軸等に固定手段を設けて、直接固定するようにしても良く、この固定手段は、周知の適宜の方法を採用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、非接触でトルク伝達を行う磁気カップリング装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による磁気カップリング装置の要旨構成を示した説明図である。
【図2】面対向型磁気カップリング装置全体の構成を示した構成図である。
【図3】駆動側永久磁石及び従動側永久磁石の固定手段の一例を示す断面図である。
【図4】磁極パターンによる吸引力と単極パターンによる反発力の状態を示す説明図である。
【図5】本発明による磁気カップリング装置の他の実施例を示す説明図である。
【図6】従来の磁気カップリング装置を示す説明図である。
【図7】従来の磁気カップリング装置における吸引力の状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1 駆動軸
2 従動軸
3 駆動側永久磁石
4 従動側永久磁石
5、6 磁極パターン
5a、6a 磁極
7、8 単極パターン
9、10 軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の軸心となるように配置された駆動軸及び従動軸と、これら駆動軸及び従動軸の対向側の軸端にそれぞれ固定した円板状の駆動側永久磁石及び従動側永久磁石とを備え、この駆動側永久磁石及び従動側永久磁石の対向面には、各々円周方向に複数対の磁極が着磁された磁極パターンを備え、前記磁極の吸引力により前記駆動軸及び従動軸を非接触で結合してトルク伝達する磁気カップリング装置において、前記駆動側永久磁石及び従動側永久磁石に形成された各々の磁極パターンの内周または外周には、単極に着磁された円環状の単極パターンが形成され、これら単極パターンを互いに面対向させたことを特徴とする面対向型磁気カップリング装置。
【請求項2】
前記駆動軸及び従動軸は、各々軸受によって支持され、駆動側永久磁石及び従動側永久磁石の磁極パターンの磁極の吸引力により、前記駆動軸及び従動軸が互いに対向する方向に付勢されている請求項1に記載の面対向型磁気カップリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−57790(P2012−57790A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219891(P2010−219891)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(310019981)株式会社ビープロ (2)