説明

面測定用皮膚検査シート

【課題】 皮膚の広い範囲の水分蒸発量やと分泌成分等を検査する面測定用皮膚検査シートを提供する。
【解決手段】 所定の皮膚状態を表示する指示薬が含まれているシート状の指示薬保持体12と、指示薬保持体12の片面に取り付けられ水蒸気透過性を有する拡散防止膜14と、拡散防止膜14の指示薬保持体12とは反対側の面の一部に形成された粘着剤層16から成る。拡散防止膜は、水蒸気透過性を有した樹脂フィルムで作られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は頬や顔全体等の広い面積の皮膚の水分蒸発量や体液pH、皮膚の保湿性や、その他の状態を検査する面測定用皮膚検査シートに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、皮膚は適度な水分保持状態が好ましく、皮膚表面は弱酸性に保たれ、健康な皮膚はアルカリに対して中和能を供えている。しかし、老化の進行や皮膚疾患などによって皮膚は徐々に乾燥しやすくなって皮膚水分蒸発量が高くなり、また皮膚のアルカリ中和能が低下し、皮脂量が低下する傾向を示す。
【0003】
そこで、広い面積で変色(濃淡)から皮膚表面のTEWL値の分布を調べ、TEWL値が高い部分は皮膚の老化の原因であり、この部位はシミ・しわになりやすいので、この結果からシミ・しわの発生を予測することができ、また皮膚の老化予防等のスキンケアをすることが可能となる。
【0004】
従来、皮膚水分を簡単に知る手段として、特許文献1に開示されている本願出願人による皮膚水分保持機能試験シート等がある。これは、粘着剤により皮膚に貼付される透明フィルムと、透明フィルムの粘着剤側の面に設けられ塩化コバルトを吸着させた1枚又は複数枚の塩化コバルト含浸ろ紙を有している。透明フィルムには、塩化コバルトが吸湿により反応する発色の色見本が設けられ、1枚又は複数枚の塩化コバルト含浸ろ紙は、異なる湿度で塩化コバルトの変色反応が開始されるように調整されている。
【特許文献1】特開2004−236794号公報
【特許文献2】特表2004−535859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シミの原因は年齢や精神的ストレスの他に化粧品・洗剤・食物・紫外線などによる物理的刺激があげられ、角質の劣化したTEWL値の高い部位はシミやしわが出来やすいことが知られている。この劣化の初期に適切なケアをすることによりシミ・しわを予防することができる。 上記従来の技術の場合、シートの中心に小形の塩化コバルト含浸ろ紙が設けられ、塩化コバルト含浸ろ紙が覆っている近傍の皮膚を検査してその周囲の状態を推測するものであり、広い範囲のTEWL値の分布を同時に測定して皮膚の状態を検査するものではなかった。また、特許文献2に開示されているような化粧品の評価シートは皺の状態を転写する目的で提案されている。単に大形の塩化コバルト含浸ろ紙や評価シートを皮膚に貼付して試験すると、皮膚の水分が塩化コバルト含浸ろ紙等の皮膚側の表面で拡散し、水分の分布が均一化され、皮膚の部分的なTEWL値の分布を調べることが出来ない。
【0006】
この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、皮膚の広い範囲のTEWL値の分布等を直接検査する面測定用皮膚検査シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
表皮は角質層・透明層・顆粒層・有棘層・基底層から構成され、角質は基底層から角質層に徐々に移動する。この角質によって肌の状態が異なり、特に肌の水分は老化の過程で角質のバリア機能の低下がすすむと共に低下する。このためTEWLの面積測定により微小部位の老化の進行の度合いを知ることが出来る。また、この測定によってTEWL値の高い部位に対してその進行の度合いに応じて予防的な治療が可能となる。
【0008】
この発明は、所定の皮膚状態を表示する指示薬が含まれているシート状の指示薬保持体と、前記指示薬保持体の片面に取り付けられ水透過性を有する拡散防止膜と、前記指示薬保持体とは反対側の面の一部に形成された粘着剤層が設けられている面測定用皮膚検査シートである。
【0009】
前記拡散防止膜は、ポリエチレン等の透湿性を有する樹脂フィルムで作られている。ポリエチレンの他に、例えばポリビニールアルコール、ポリオレフイン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリウレタン等でも良く、水分子の透過性があればよい。樹脂フィルムの種類と厚さを選ぶことにより水分の透湿速度を適宜調節することができる。また、透過速度を高めるためにはコロナ放電処理、機械的な開孔などの物理的な方法も有効である。
【0010】
また、前記指示薬は、水分によって変色する薬剤、たとえば塩化コバルトの他に、BCT(ブルムクレゾールパープル)、MR(メチルレッド)、CRP(クロールフェノールレッド)、PP(フェノールパープル)等のpH指示薬でもよい。また皮脂に反応する指示薬でも良い。そして、指示薬の種類や検出する成分に合わせて、拡散防止膜の水蒸気透過性の数値を適宜設定する。
【発明の効果】
【0011】
皮膚表面から蒸散する経表皮水分喪失(TEWL)は角質バリア機能の指標となり、バリア機能の低下と共にTEWL値は高くなる。また、このTEWL値を皮膚の細部について調べることにより、老化・シミ・しわの発生を予測することが出来る。
【0012】
本発明の面測定用皮膚検査シートは、被験者の皮膚状態を広い範囲で直接検査して、目的の成分の濃度分布を正確に検知することができ、皮膚疾患の予防や治療、また美容を目的とする処置を、皮膚の問題発生部位を0.5〜1mm2の面積で特定して皮膚の状態を診断し、老化等の予測が出来るので、効率良く治療することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1、図2はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の面測定用皮膚検査シート10は、水分量で色が変化する指示薬保持体12が設けられている。指示薬保持体12は、水分により変色する指示薬が、支持体であるろ紙に塗布又は含浸して作られている。ここで指示薬保持体12に使われる指示薬は、塩化コバルトである。なお指示薬は、塩化コバルトに限定されず、水と反応して変色する物質、例えばカルボン酸になりやすいラクトン又は無水物、あるいは水に溶解して活性化され導電性を有するもの、単に水溶性塩を溶解させることによって不溶性塩の色が生じる電解質などである。指示薬保持体12は、高分子樹脂に指示薬を溶解又は分散させ、透湿性のあるフィルムに形成したものでも良い。
【0014】
指示薬保持体12の一方の側面12aには、拡散防止膜14が設けられている。拡散防止膜14は、水蒸気透過性を有するポリエチレンフィルム等の樹脂フィルムであり、適度な柔軟性を有している。樹脂フィルムとしてはポリエチレンの他に、例えばポリビニールアルコール、ポリオレフイン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリウレタン等でも良い。測定感度や指示薬の種類等に合わせて、拡散防止膜14の水蒸気透過性を適宜設定することができる。
【0015】
拡散防止膜14の、指示薬保持体12と反対側の側面14aには、拡散防止膜14の周縁部に沿って、ほぼ一定の所定幅、例えば5mm程度の幅に、粘着剤層16が設けられている。粘着剤層16は、例えばアクリル系粘着剤またはSIS等の合成ゴム粘着剤である。
【0016】
拡散防止膜14の、粘着剤層16側の面には、剥離フィルム18が、粘着剤層16に周縁部を粘着されて取り付けられている。
【0017】
面測定用皮膚検査シート10の形状は、ゆるやかに湾曲した繭形で、例えば目元等に貼付して測定しやすい形状に形成されている。なお、面測定用皮膚検査シート10の形状は、適宜その他の形状に形成することができる。例えば、三日月形、10cm×10cm程度の矩形、頬等への貼付に適する円形、顔型のフェースマスク状に形成されたもの、腰部に適する楕円形等でも良い。さらに、例えば5〜10cm×2m程度のロール状でも良く、この場合、床ずれやアトピー性皮膚炎の部位など広い範囲の測定の際に、必要な寸法に裁断して使用することができる。
【0018】
次に、面測定用皮膚検査シート10の使用方法について説明する。まず面測定用皮膚検査シート10から剥離フィルム18を剥がし、粘着剤層16を皮膚に押し付けて貼着して、拡散防止膜14を皮膚に密着させる。この状態で、皮膚から蒸発した水分は、拡散防止膜14により周囲への拡散が阻止され、皮膚表面に対してほぼ直角に、拡散防止膜14内を透過する。透過した水分は指示薬保持体12に吸収され、指示薬の色を変化させる。そして所定時間貼付した後、面測定用皮膚検査シート10の指示薬保持体12の色を色見本等と照合し、皮膚水分の蒸発量の濃度分布を調べる。
【0019】
判定は、水分蒸発量(mg/cm/hr)の色見本と比較して行う。例えば、ここでは4段階で判定を行い、各段階は、−(0〜4mg/cm/hr)、+(5〜10mg/cm/hr)、+2(11〜20mg/cm/hr)、+3(21〜30mg/cm/hr)とした。図面では便宜上、水分透過性をパターンの濃さで示しその境界を仮想線で区別したが、実際は、連続した濃度の変化として表れる。TEWL値の更に高い精度での分析方法としてはデジタルカメラ等の光学的映像による解析は有効である。
【0020】
この実施形態の面測定用皮膚検査シート10によれば、被験者の皮膚状態を広い範囲で直接検査し、正確に皮膚の水分蒸発量の濃度分布を判定することができる。そして、この結果を基にして水分の足りない部分に保湿成分を塗布する等、部分的できめ細かい処置を行うことができ、皮膚の老化その他のトラブルを効率的に予防することができる。
【0021】
さらに、本発明の面測定用皮膚検査シート10を用いることによりしみや皺の予防、床ずれの発生予測、アトピー性皮膚炎やアレルギー性疾患部位の検出を行うことができる。そして、早期の予防的治療が可能になり、より適切なスキンケアが可能となる。また、皮膚の細部の状態、例えば1mm程度の位置の違いでのバリア機能の有無、高低を数値で分析できるので、適切な治療を施すことができる。美容の面でも、皮膚の状態を正確に知ることにより手入れ方法の判断に役立てることができ、老化等の進行の度合いを0.5〜1mmの精度で調べることができる。
【0022】
また、面測定用皮膚検査シート10の変色反応の濃度分布を調べることにより、貼付部位のTEWL(皮膚水分蒸発率)値を面で測定し、TEWL値の数値の分布を調べることができる。その結果から微細な部位のTEWL値の差が変色の度合いで調べることができる。
【0023】
さらにこの実施形態の面測定用皮膚検査シート10は、面測定用皮膚検査シート10の皮膚に接触する面に、拡散防止膜14が設けられているため、水分蒸発量が高い部分の水分が周囲に拡散することを防ぎ、指示薬保持体12の色の濃度分布の境界が明確となり、正確に判定することができる。また、面測定用皮膚検査シート10は製造が容易であり、コストも安価で経済的に優れている。
【0024】
なお、この発明の面測定用皮膚検査シートは上記実施形態に限定されるものではない。例えば、水分を検査するもの以外に、pHを調べるものでも良い。pH指示薬として、BCT(ブルムクレゾールパープル)、MR(メチルレッド)、CRP(クロールフェノールレッド)、PP(フェノールパープル)等を用いる。そのほか、皮膚から発する体臭成分に反応する指示薬を用いたり、皮膚表面の脂質に反応する指示薬を用いたりして、体臭や脂質の度合いを検査するものでも良い。水分、pH、脂質等の検査結果を組み合わせて総合的に皮膚の状態を把握してもよい。拡散防止膜の水蒸気透過性の数値は、指示薬の種類や、検出する成分に合わせて適宜設定するものである。また、面測定用皮膚検査シートの形状は、自由に変更可能であり、貼付部位は、顔、首、腰、手、ひじ、膝、足、かかと等、自由に選択可能である。そして必要に応じて粘着剤層の面積や取り付ける位置と形状を変更しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施形態の面測定用皮膚検査シートの正面図である。
【図2】この実施形態の検査シートの縦断面図である。
【図3】この実施形態の検査シートの使用状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 面測定用皮膚検査シート
12 指示薬保持体
14 拡散防止膜
16 粘着剤層
18 剥離フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の皮膚状態を表示する指示薬が含まれているシート状の指示薬保持体と、前記指示薬保持体の片面に取り付けられ水分透過性を有する拡散防止膜と、指示薬保持体とは反対側の面の一部に形成された粘着剤層が設けられていることを特徴とする面測定用皮膚検査シート。
【請求項2】
前記拡散防止膜は樹脂フィルムで作られていることを特徴とする請求項1記載の面測定用皮膚検査シート。
【請求項3】
前記指示薬は、水分を検知する塩化コバルトであることを特徴とする請求項1記載の面測定用皮膚検査シート。
【請求項4】
前記指示薬は、pH指示薬であることを特徴とする請求項1記載の面測定用皮膚検査シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−325828(P2006−325828A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152212(P2005−152212)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(397043190)ライフケア技研株式会社 (11)
【Fターム(参考)】