説明

面状弾性体による座面を有するシート

【課題】 面状弾性体を適度な張力に設定ししかもバラ付きのない一定の張力を保ってシートフレームの枠内に容易に張設可能に構成する。
【解決手段】 面状弾性体2を周回り縁で保持する支枠プレート5を面状弾性体2と一体に樹脂成形すると共に、横断面略鏃形の掛止め突起6を支枠プレート5の外周に複数定間隔毎に設け、その掛止め突起用の係合孔1aをシートフレーム1の軸線方向に複数定間隔毎に設け、各掛止め突起6をシートフレーム1の係合孔1aに嵌め込んで支枠プレート5をシートフレーム1の前面側にあてがい固定することにより面状弾性体2を支枠プレート5でシートフレーム1の枠内に張設装備する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、伸縮性,通気性のある面状弾性体から座面部を形成する面状弾性体による座面を有するシートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】既に、伸縮性,通気性のある面状弾性体から座面部を形成するシートは提案されている(USP5,013,089、同5,533,789、特表平8ー507935号)。
【0003】このシートでは面状弾性体で通気性を座面部に付与できると共に、通常のシートとはデザイン的に変られる。また、通常の座面部を構成するのに要するパッド部材やスプリング部材等を省け、更には軽量化を図れて面状弾性体の薄さによりスペース効率もよいところから好ましい。
【0004】その先に提案されているシートにおいては、面状弾性体をシートフレームの枠内に張設固定するのに、樹脂プレートを面状弾性体の周回り縁に備えてシートフレームの軸線上に設けた凹溝に嵌め込み、或いは面状弾性体の周回り縁をシートフレームの軸線上に直接巻き付けて押えプレートと共にねじ止めするよう構成されている。
【0005】然し、樹脂プレートをシートフレームの軸線上に設けた凹溝に嵌め込んで面状弾性体を端末止着し、また、面状弾性体の周端縁をシートフレームの軸線上に直接巻き付けて押えプレートと共にねじ止めすることでは、面状弾性体を適度な張力に設定ししかもバラ付きのない一定の張力を保ってシートフレームの枠内に張設固定するのが難しい。また、このシートでは大きく隆起する土手部を組み立てるのも難しいところから着座時のホールド性に欠ける。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、面状弾性体を適度な張力に設定できると共に、バラ付きのない一定の張力を保ってシートフレームの枠内に容易に張設可能な面状弾性体による座面部を有するシートを提供することを目的とする。
【0007】また、本発明は面状弾性体による座面部より大きく隆起する土手部を簡単な構造で容易に組み立てでき、着座時のホールド性を向上可能な面状弾性体による座面を有するシートを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に係る面状弾性体による座面を有するシートにおいては、略四辺形枠状のシートフレームと、シートフレームの枠内に張設される面状弾性体と、シートフレームの軸線上に組み付けられる土手部パッドと、その土手部パッドを被包するトリムカバーとを備えてなり、面状弾性体を周回り縁で保持する支枠プレートを面状弾性体と一体に樹脂成形すると共に、横断面略鏃形の掛止め突起を支枠プレートの外周に複数定間隔毎に設け、且つ、該掛止め突起用の係合孔をシートフレームの軸線方向に複数定間隔毎に設け、各掛止め突起をシートフレームの係合孔に嵌め込んで面状弾性体を支枠プレートでシートフレームの枠内に張設装備することにより構成されている。
【0009】本発明の請求項2に係る面状弾性体による座面を有するシートにおいては、フイルムヒンジを掛止め突起の突端側に設けて掛止め突起を二つ割り可能なものに形成し、その掛止め突起の片側より連続させて支枠プレートと相対する押えプレートを一体に樹脂成形し、トリムカバーの片端末を支枠プレートと押えプレートとの間から掛止め突起の間に挟み込むと共に、各掛止め突起をシートフレームの係合孔に嵌め込んで面状弾性体を支枠プレートでシートフレームの枠内に張設装備し、更に、トリムカバーの片端末を掛止め突起でシートフレームに止着固定させてシートフレームの軸線上に組み付けられる土手部パッドを該トリムカバーで被包することにより構成されている。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して説明すると、図示実施の形態は図1で示すように車輌用シートにおいてシートバックB並びにシートクッションCを各々組み立てるのに適用されている。この車輌シートの各部B,Cは、略四辺形枠状のシートフレーム1,10と、シートフレーム1,10の枠内に張設される面状弾性体2,11と、シートフレーム1,10の軸線上に組み付けられる土手部パッド3,12と、その土手部パッド3,12を被包するトリムカバー4,13とから組み立てられている。
【0011】その具体的な構成をシートバックBに基づいて説明すると、図2で示すようにシートバックフレーム1は横断面コの字状の金属フレームを用いて略四辺形の枠状に組み立てられている。このシートバックフレーム1は各辺が座者の着座姿勢に適合するよう軸線曲げされ、その前面側は後述するような掛止め突起用の係合孔1a,1b…が軸線に沿って複数個定間隔毎に設けられている。
【0012】面状弾性体2としては、伸縮性,通気性を有する布地が用いられている。例えば、内装織物に使用される繊維状ヤーンからなる複数のストランドで交織された複数のエラストマーモノフィラメントで形成したもの、或いは1000〜4000デニールのエラストマーモノフィラメントを経糸また緯糸を織りまたは編んで伸縮性,通気性を付与した織物または編物を用いるようにできる。
【0013】その面状弾性体2には周回り縁を肉厚内にインサート成形することにより、支枠プレート5がポリプロピレン等の合成樹脂から周回り縁と一体に樹脂成形されている。この支枠プレート5は面状弾性体2を周回りより張設保持するものであり、シートバックフレーム1の前面側にあてがい配置可能な略四辺形の枠状に形成することができる。その支枠プレート5には、図3で示すように横断面略鏃形の掛止め突起6がシートバックフレーム1の係合孔1a,1b…と相応するよう複数個定間隔毎に外周に設けられている。
【0014】その掛止め突起6を含み、支枠プレート5は土手部パッド3を被包するトリムカバー4の端末止着用として兼用可能に形成することができる。このトリムカバー4の端末止着用として兼用するには、フイルムヒンジ60を掛止め突起6の突端側に設けて全体61,62を二つ割り可能なものに形成し、その片側62より連続させて支枠プレート5と相対する押えプレート7を一体に樹脂成形すればよい。その押えプレート7は、各掛止め突起6のフイルムヒンジ60を介して支枠プレート5の各辺と連続形成することにより各辺毎個別に設けられている。
【0015】土手部パッド3は発泡ウレタン等のクッションフォーム体でなり、シートバックフレーム1の外側より前面,側面並びに背面に嵌込み固定する凹部を備えて所定の立体形状に発泡成形されている。この土手部パッド3はシートバックフレーム1の各辺毎に個別に形成し、また、シートバックフレーム1の枠形状に合わせて全体を連続の一体ものとして形成するようにもできる。この土手部パッド3の前部側はホールド性の良好な土手部を組み立てるよう大きく隆起し、特に、上部側はヘッドレスト部として大きく隆起するよう形成することができる。
【0016】トリムカバー4としては、汎用の本革、合皮,ファブリック等のいずれでも用いることができる。その表皮材4は、内側が開放された横断面略C字形でシートバックフレーム1の各辺に組み付けられる土手部パッド3を外側より包み込めるよう全体が連続した一体ものに縫着形成することができる。このトリムカバー4には、玉縁状の縁取りコード8を掛止め突起6で挟込み止着される端末に沿って設けることができる。
【0017】上述した各部材からシートバックBを組み立てるには、図3で示すように支枠プレート5と押えプレート7とを掛止め突起6(61,62)のフイルムヒンジ60で開いてシートバックフレーム1の前面側に止着するトリムカバー4の片端末を支枠プレート5と押えプレート7との間から掛止め突起6(61,62)の間に挟み込む。この掛止め突起6(61,62)による挟込みでは、玉縁状の縁取りコード8が設けられていると、トリムカバー4が端末からズレ出し弛まないよう確実に挟持することができる。
【0018】次に、図4で示すように各掛止め突起6をシートバックフレーム1の係合孔1a,1b…に嵌め込んで支枠プレート5,押えプレート7をシートバックフレーム1の前面側にあてがい固定する。これにより、支枠プレート5は面状弾性体2の周端縁を肉厚内に取り込んで周回りから所定の張力で支持するものとして樹脂成形されているため、面状弾性体2はバラ付きのない一定な張力に保ってシートバックフレーム1の枠内に適度な張力で張設できてシートバックフレーム1をベースする座面部として形成できる。それと同時に、トリムカバー4の片端末もシートバックフレーム1に止着固定することができる。
【0019】その面状弾性体2並びに表皮材4の片端末をシートバックフレーム1に取り付け後、土手部パッド3をシートバックフレーム1の各辺に組み付け、トリムカバー4をシートバックフレーム1の前面側より背面側に巻き込んで土手部パッド3を包み込む。この土手部パッド3の組付けにより、支枠プレート5,押えプレート7は掛止め突起6の係合孔1a,1b…に対する嵌込み位置から直角方向に重ね曲がってシートバックフレーム1の前面側にあてがい固定される。なお、その支枠プレート5,押えプレート7は樹脂成形時に掛止め突起6の係合孔1a,1b…に対する嵌込み位置から直角方向に折曲させて形成することもできる。
【0020】そのトリムカバー4は硬質樹脂製のフック9を巻込み側の端末に沿って縫着装備し、このフック9をシートバックフレーム1の背面側からフランジ部の内側に掛け止めることにより端末止着するようにできる。これにより、土手部パッド3から大きく隆起する土手部を形成したシートバックBを簡単な構造で堅牢なものに組み立てることができる。また、リサイクル等の必要から面状弾性体2をシートバックフレーム1より外すのも、トリムカバー4のフック9による取り外しから支枠プレート5,押えプレート7の掛止め突起6による取り外しで容易に行える。
【0021】上述した実施の形態はシートバックBに基づいて説明したが、シートクッションCを構成するのも同様に適用することができる。
【0022】そのシートクッションCは、図1で示すようにスライドレール14a,14bで摺動自在に立付け支持されるブラケットプレート15a,15bに取り付け、このブラケットプレート15a,15bを外装カバー16a,16bで覆うことにより、通常のシートと同様に前後位置を調整可能に構成することができる。また、シート全体はリクライニング機構17を片側のブラケップレート15bに備えることによりリクライニングシートとして構成することができる。
【0023】
【発明の効果】以上の如く、本発明の請求項1に係る面状弾性体による座面を有するシートに依れば、面状弾性体を周回り縁で保持する支枠プレートを面状弾性体と一体に樹脂成形すると共に、横断面略鏃形の掛止め突起を支枠プレートの外周に複数定間隔毎に設け、且つ、その掛止め突起用の係合孔をシートフレームの軸線方向に複数定間隔毎に設け、各掛止め突起をシートフレームの係合孔に嵌め込んで面状弾性体を支枠プレートでシートフレームの枠内に張設装備するため、面状弾性体をバラ付きのない一定な張力に保ってシートフレームの枠内に適度な張力で張設できてシートフレームをベースする座面部として容易に組み付けることができる。また、リサイクル等の必要から面状弾性体をシートフレームから取り外すのも容易に行える。
【0024】本発明の請求項2に係る面状弾性体による座面を有するシートに依れば、トリムカバーの片端末を支枠プレートと押えプレートとの間から掛止め突起の間に挟み込むと共に、各掛止め突起をシートフレームの係合孔に嵌め込んで面状弾性体を支枠プレートでシートフレームの枠内に張設装備し、更に、トリムカバーの片端末を掛止め突起でシートフレームに止着固定させてシートフレームの軸線上に組み付けられる土手部パッドをトリムカバーで被包するため、シートフレームをベースとして座面部を面状弾性体で形成できると共に、土手部パッドから大きく隆起する土手部を有する簡単な構造で堅牢なものに容易に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る面状弾性体による座面を有するシートを示す展開斜視図である。
【図2】同シートを構成するシートフレームを示す斜視図である。
【図3】同シートを構成する面状弾性体,トリムカバー,支枠プレート,押えプレート並びに掛止め突起の関係を示す部分拡大断面図である。
【図4】同シートを図1のAーA線個所で示す拡大断面図である。
【符号の説明】
1 シートフレーム
1a,1b… 係合孔
2 面状弾性体
3 土手部パッド
4 トリムカバー
5 支枠プレート
6 掛止め突起
7 押えプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】 略四辺形枠状のシートフレームと、シートフレームの枠内に張設される面状弾性体と、シートフレームの軸線上に組み付けられる土手部パッドと、その土手部パッドを被包するトリムカバーとを備えてなり、面状弾性体を周回り縁で保持する支枠プレートを面状弾性体と一体に樹脂成形すると共に、横断面略鏃形の掛止め突起を支枠プレートの外周に複数定間隔毎に設け、且つ、該掛止め突起用の係合孔をシートフレームの軸線方向に複数定間隔毎に設け、各掛止め突起をシートフレームの係合孔に嵌め込んで面状弾性体を支枠プレートでシートフレームの枠内に張設装備してなることを特徴とする面状弾性体による座面を有するシート。
【請求項2】 フイルムヒンジを掛止め突起の突端側に設けて掛止め突起を二つ割り可能なものに形成し、その掛止め突起の片側より連続させて支枠プレートと相対する押えプレートを一体に樹脂成形し、トリムカバーの片端末を支枠プレートと押えプレートとの間から掛止め突起の間に挟み込むと共に、各掛止め突起をシートフレームの係合孔に嵌め込んで面状弾性体を支枠プレートでシートフレームの枠内に張設装備し、更に、トリムカバーの片端末を掛止め突起でシートフレームに止着固定させてシートフレームの軸線上に組み付けられる土手部パッドを該トリムカバーで被包してなることを特徴とする請求項1に記載の面状弾性体による座面を有するシート。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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