説明

面状温度検出センサ

【課題】自身の構成要素の発熱による影響を抑制し、検温対象物の温度を精度良く検出できる面状温度検出センサを実現する
【解決手段】面状温度検出センサ10は、検出側層11、非検出側層12および中間層13からなる平板状の筐体10を有する。筐体10内部には、複数のサーミスタ素子THが、検出面111側から見て磁束の中心を基準点として所定間隔で放射状に設置されている。各サーミスタ素子THを接続する配線電極15は、検出面111に対して直交する方向すなわち磁束方向に平行な方向に延びる第1部分電極151と、検出面111に対して平行に延びる第2部分電極152とを備える。第2部分電極152は、サーミスタ素子THを介して検出側層11と反対側で、且つサーミスタ素子THからも離間された位置に設置されている。第1部分電極151は、これら第2部分電極152とサーミスタ素子THとを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、平面領域での温度検出を行う面状温度検出センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、PTCサーミスタやNTCサーミスタ等の抵抗変化型の温度検出センサが一般に多く使用されている。そして、このような温度検出センサとして、平面領域での温度検出を行うセンサが存在する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、シート状の導電性ポリマー組成物に電極を形成した構造の面状温度検出センサが開示されている。図7は従来の面状温度検出センサの概略構成を示す図である。図7の面状温度検出センサは層状シート910の対向する両面に電極901,902がパターン形成された構造からなる。検出部912は、層状シート910とこの層状シート910を挟んで対向する電極901,902とで構成される。そして、検出部912として機能しない電極901,902が配線電極となる。
【0004】
このような構造の温度検出センサでは、シート状導電性ポリマー組成物の表面に発熱体が接触すると、この熱が層状シート910に伝達し、当該熱により層状シート910の抵抗率が変化する。そして、この抵抗率の変化による電極901,902間の電圧変化を検出することで温度検出を行う。
【0005】
そして、上述のような温度検出センサの利用用途として、例えばIH調理システムや非接触型充電システム等が存在する。このようなシステムでは、温度検出センサは所定の磁場内に配置されることになる。
【特許文献1】特表2002−528874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のようなシステムでは、システムの効率上、所定の磁場内に配置された温度検出センサの検出面は磁束方向に垂直に配置される。そして、特許文献1に記載の構成では、検出面が磁束方向に垂直に配置されることで、検出部および配線電極を構成する各電極も磁束方向と垂直に配置されることとなる。このような配置では、各電極で渦電流が発生しやすく、当該渦電流により電極が発熱してしまう。このため、検出部では、目的とする検温対象物の温度のみでなく、渦電流により発熱した電極の温度をも検出してしまい、検温対象物の温度を精度良く測定することができない。
【0007】
したがって、本発明の目的は、面状温度検出センサの構成要素の発熱による影響を抑制し、検温対象物の温度を精度良く検出できる面状温度検出センサを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、一面を検出面とする平板状の筐体と、該筐体の内部に配置され、それぞれが電気的特性の温度依存性に応じて温度検出を行える複数の検出部と、該複数の検出部を接続する配線電極と、を備え、検出面が外部磁界の方向に対して略垂直に配置された面状温度検出センサに関するものである。そして、この面状温度検出センサの配線電極は、検出部を挟んで筐体の検出面と反対側に配置されている。
【0009】
この構成では、渦電流の発生により発熱する配線電極が検出面から離間されるので、当該配線電極の発熱が検出部の検出温度に影響を与えない。
【0010】
また、この発明の面状温度検出センサの検出部は、それぞれが個別に形成された直方体形状のサーミスタ素子である。さらに、配線電極は、検出部に接続する端部を含む少なくとも一部が外部磁界による渦電流の発生を抑制する形状からなる渦電流抑制部を有する。
【0011】
この構成では、配線電極自体の発熱が抑制されるので、さらに検出部での検出温度に影響を与えない。
【0012】
また、この発明の配線電極は、外部磁界の磁束の中心を放射中心として、検出面から見て放射状に形成されている。
【0013】
この構成では、配線電極が放射状に形成されていることで、渦電流の流れる方向に対する有効面積を小さくすることができるので、渦電流の発生をさらに効果的に抑制できる。
【0014】
また、この発明の面状温度検出センサは、筐体の内部における検出部と異なる領域を非検出部として、当該非検出部を検出部よりも低い熱伝導率で構成する。
【0015】
この構成では、配線電極で発生した熱の伝導が、低熱伝導率の非検出部で抑止される。これにより、さらに検出部への影響を抑制できる。
【0016】
また、この発明の面状温度検出センサは、筐体の検出部よりも検出面の側が絶縁部材からなる。
【0017】
この構成では、検出部より検出面側が絶縁部材であるので、検出面自体での発熱も抑制でき、検出部でさらに精度良く温度検出することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、配線電極等の温度検出センサを構成する素子からの発熱に影響されることなく、検出面に配置された検温対象物の温度を精度良く検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の第1の実施形態に係る面状温度検出センサについて図を参照して説明する。
図1(A)は、本実施形態の面状温度検出センサ1の検出側層11を取り除いた状態での検出面111側から見た平面図であり、(B)は面状温度検出センサ1における(A)のA−A’断面に相当する部分を示す側面断面図である。
【0020】
面状温度検出センサ1は、平板状の筐体10を備える。筐体10は、検出側層11、中間層13、非検出側層13が厚み方向に重ねられた層構造からなる。
検出側層11は、サーミスタ素子THと略同じ熱伝導率(例えば、2.0W/(m・K))の絶縁性部材からなる。この検出側層11の中間層13と反対側の外方に向く面が検出面111となる。検出側層11は、検出面111に存在する発熱体からの熱が、中間層13のサーミスタ素子THへ十分熱伝導可能な厚みで形成されている。
【0021】
中間層13は、サーミスタ素子THおよび検出側層11よりも低い熱伝導率(例えば、1.0W/(m・K))の樹脂からなり、内部に所定の配置パターンでサーミスタ素子THが複数設置されている。このような構成により検出面111側から見てサーミスタ素子THが配置された領域が検出部となり、当該検出部間の領域が非検出部100となる。サーミスタ素子THは、PTC型の所謂チップ型サーミスタであり、外部電極面とは異なる一つの側壁面が検出側層11へ当接するように設置されている。このサーミスタ素子THは、例えば、外部電極面が0.8mm×0.8mmで、外部電極間距離に略相当するチップ長が1.6mmのものが使用される。また、各サーミスタ素子は、高い熱伝導率(例えば、2.0W/(m・K))のものを用い、常温状態で高い抵抗値を有するものであるとよりよい。
【0022】
複数のサーミスタ素子THは、図1(A)に示すように、検出面111から見て基準点Oを中心に放射状に配置されている。具体的には、図1(A)に示すx軸およびy軸に沿ってそれぞれ4つのサーミスタ素子THが配置され、検出面111側から見て、これら軸に対して45°の角を為す二方向に沿ってそれぞれ2つのサーミスタ素子THが配置されている。
【0023】
さらに、中間層13には、複数のサーミスタ素子THの各外部電極に接続する複数の第1部分電極151(本発明の渦電流抑制部に相当する)が形成されている。これら第1部分電極151は、筐体10の各層が並ぶ方向に沿って延びる形状で形成されている。第1部分電極151は、例えばビアホール形成法等により形成される。
【0024】
非検出側層12は、中間層13と同様に、サーミスタ素子THおよび検出側層11よりも低い熱伝導率(例えば、1.0W/(m・K))の樹脂からなり、第2部分電極152が形成されている。第2部分電極152は、非検出側層12の中間層13側面である筐体内側面121に、当該筐体内側面121すなわち検出面111に平行に延びる形状で形成されている。さらに、第2部分電極152は、上述のサーミスタ素子THの配列パターンと同様に、検出面側から見た基準点Oを中心として放射状に延びる形状で形成されている。この際、第2部分電極152は、図1(A)に示すように、検出面111側から見て、放射状に配置されたサーミスタ素子THを最短距離で接続する放射形状で形成されている。
【0025】
さらに、非検出側層12は、検出面111側から見て、第2部分電極152の前記放射方向の末端となる位置に、外部引き出し電極16が形成されている。外部引き出し電極16は、非検出側層12を前記各層が並ぶ方向に沿って貫通する形状からなり、一方端が第2部分電極152に接続し、他方端が非検出側層12の外方面122から外部へ露出している。
【0026】
以上のような構成とすることで、面状温度検出センサ1は、検出面111側から見て、それぞれが検出部となる複数のサーミスタ素子THが、所定基準点Oを中心に放射状に配置され、これらサーミスタ素子THが、第1部分電極151および第2部分電極152からなる配線電極15により接続される構造を備える。そして、このような構造の面状温度検出センサ1は、当該センサが設置されるシステムによって印加される磁束(磁界)と検出面111とが直交するように配置される。さらに、上述の基準点Oが磁束の中心となる位置に配置される。
【0027】
この様なシステムでは、面状温度検出センサ1の検出面111上に金属などの導電性物体が存在すると、印加磁束により導電性物体で渦電流が発生して発熱する。この熱は、検出面111を有する検出側層11を介してサーミスタ素子THへ伝導する。この際、非検出部100となる中間層13の熱伝導率が検出側層11およびサーミスタ素子THよりも低いので、検出面111からの熱は殆どサーミスタ素子THへ伝導する。これにより、高精度且つ高速に検出面111での異常発熱を検出できる。
【0028】
このような環境で上述の構成を備えることで、以下の作用効果が得られる。
【0029】
面状温度検出センサ1では、システムに発生する磁束に応じて、当該磁束の方向に垂直な面を有する第2部分電極152で渦電流が発生し発熱する。一方、絶縁性部材からなる検出側層11、非検出側層12および中間層13は、導電性を有さないので渦電流は発生せず、発熱しない。また、第1部分電極151は、磁束の方向に沿って延びる形状であり、磁束方向に垂直な面積が略「0」であるので、渦電流の発生は略皆無となる。
【0030】
ここで、第2部分電極152は、検出側層11およびサーミスタ素子THから離間される。したがって、検出側層11およびサーミスタ素子THへ、第2部分電極152で発生した熱が殆ど伝導しない。これにより、第2部分電極152からの熱をサーミスタ素子THが検出することを抑制でき、検出面111に対するサーミスタ素子THの温度検出精度を高くすることができる。
【0031】
さらに、第2部分電極152と、検出面111およびサーミスタ素子THとの間に中間層13を構成する熱伝導率の低い樹脂が介在することで、検出側層11およびサーミスタ素子THへ、第2部分電極152で発生した熱がさらに伝導し難くなる。これにより、サーミスタ素子THの温度検出精度がさらに向上する。
【0032】
また、さらに、第2部分電極152が磁束の中心を基準にして放射状のパターンで形成されることで、過電流の流れる方向に対する電極の有効面積を小さくすることができるので、第2部分電極152での渦電流の発生を抑制することができる。これにより、さらに確実にサーミスタ素子THへの不要な熱伝導を抑制することができる。
【0033】
また、さらに、サーミスタ素子THの抵抗値を高くすることで、サーミスタ素子TH自体の発熱も抑えられ、より温度検出精度を向上させることができる。
【0034】
次に、第2の実施形態に係る面状温度検出センサについて説明する。
図2(A)は、本実施形態の面状温度検出センサ2の検出側層21を取り除いた状態での検出面211側から見た平面図であり、(B)は面状温度検出センサ2における(A)のB−B’断面に相当する部分を示す側面断面図である。
【0035】
本実施形態の面状温度検出センサ2は、第1の実施形態に示した面状温度検出センサ1に対して、サーミスタ素子THの配列パターンが異なるのみで、他の構成は同じである。
図2に示すように、本実施形態の面状温度検出センサ2の複数のサーミスタ素子THは、直交する二方向に沿って所定の間隔に配置されている。具体的に、図2の例であれば、検出面211に対して平行で且つ互いに直交する二方向(図中のx方向およびy方向)に沿って、それぞれ4つずつと6つずつのサーミスタ素子THが二次元配列されている。
【0036】
このような面状温度検出センサ2でも、配線電極25は、検出面211に対して直交する方向に延びる第1部分電極251と検出面211に対して平行に延びる第2部分電極252とから構成される。そして、面状温度検出センサ2は、第2部分電極252がサーミスタ素子THおよび検出面211から離間して配置され、当該第2部分電極252を第1部分電極251でサーミスタ素子THに接続する構成を有する。
【0037】
このように本実施形態の構成を用いても、第1の実施形態と同様に、磁束の作用により第2部分電極252が発熱しても、当該熱が検出面211およびサーミスタ素子THに伝導されることを抑制できる。これにより、検出面211に対するサーミスタ素子THの温度検出精度を高くすることができる。
【0038】
次に、第3の実施形態に係る面状温度検出センサ3について説明する。
【0039】
図3(A)は、本実施形態の面状温度検出センサ3の検出側層31を取り除いた状態での検出面311側から見た平面図であり、(B)は面状温度検出センサ3における(A)のC−C’断面に相当する部分を示す側面断面図である。
【0040】
本実施形態の面状温度検出センサ3は、第1の実施形態に示した面状温度検出センサ1に対して、配線電極35の形状が異なるのみで、他の構成は同じである。
図3に示すように、本実施形態の面状温度検出センサ3では、配線電極35が検出面311に平行に延びる形状の部分から構成される。そして、配線電極35は、サーミスタ素子THに直接接続する構造を有する。このため、配線電極35は、筐体30における検出面311に直交する方向の略中心位置に配設される。このような構造の場合、サーミスタ素子THには直接接続するが、検出面311に対しては中間部33を構成する樹脂により離間される。したがって、配線電極35の熱が検出面311に与える影響は少ない。
【0041】
一方、配線電極35は第1の実施形態と同様に放射状に形成されているので、磁束の影響による発熱は抑制される。このため、サーミスタ素子THに直接接続していても、配線電極35は、サーミスタ素子THへ殆ど熱を与えることがない。
【0042】
このように、本実施形態の構成を用いても、上述の第1、第2の実施形態と同様に、検出面311に対するサーミスタ素子THの温度検出精度を高くすることができる。
【0043】
次に、以上の第1〜第3の実施形態の構成による従来技術との優位性について、図4の実験結果を参照して説明する。
図4は、第1、第2、第3の実施形態に示した面状温度検出センサの構成と、従来技術に示した面状温度検出センサ900の構成とでの、検出面上の特定点の温度変化を示した図である。なお、図中では、第1の実施形態の面状温度検出センサ1と実施例1とが対応し、第2の実施形態の面状温度検出センサ2と実施例2とが対応し、第3の実施形態の面状温度検出センサ3と実施例3とが対応し、第1の実施形態の面状温度検出センサ1においてサーミスタ素子THの基準抵抗値を1/10とした面状温度検出センサ1’と実施例4とが対応し、従来技術の面状温度検出センサ900とモニターとが対応する。
【0044】
ここで、各面状温度検出センサの構成と前記特定点の位置(P)とは、図5(A)〜(D)に示し、(A)が第1の実施形態の面状温度検出センサ1および面状温度検出センサ1’に対応し、(B)が第2の実施形態の面状温度検出センサ2に対応し、(C)が第3の実施形態の面状温度検出センサ3に対応し、(D)は、基板として(A)〜(C)と同一の材料を有するサーミスタ基板を用いた従来技術の図の形状の面状温度検出センサ900に対応する。この図に示すように、本実験では、隣り合うサーミスタ素子THもしくは検知部912の中間の検出面上に特定点(P)を設定している。
【0045】
なお、本実験において、第1〜第3の実施形態の面状温度検出センサ1〜3の構成のサーミスタ素子THは、第1の実施形態の説明に示した、外部電極面が0.8mm×0.8mmで、外部電極間距離に相当するチップ長が1.6mmであるPTC型のチップ型サーミスタを使用し、基準抵抗値が470Ωのものを用いた。そして、このサーミスタ素子THの熱伝導率は、2.0W/(m・K)とする。また、各検出側層11,21,31の熱伝導率も、サーミスタ素子THと同じ2.0W/(m・K)とする。そして、面状温度検出センサ1〜4の他の樹脂分の熱伝導率は、1.0W/(m・K)とする。
【0046】
また、面状温度検出センサ1〜3,1’において、検出面に直交する方向の長さは、1.6mmとし、面状温度検出センサ1〜3の非検出面とサーミスタ素子THとの間隔が0.8mmとする。一方、従来技術の面状温度検出センサ900は、検出面に直交する方向の長さを1.6mmとし、熱伝導率を2.0W/(m・K)とした。また、検出部912の配置間隔が0.8mmとなるように電極パターンを形成した。
【0047】
このような条件下において、100μTの磁場を印加して実験を行った結果、図4に示すように、例えば120秒後に、従来技術では約64℃まで昇温しているのに対して、面状温度検出センサ1〜3,1’は、約42℃以下となっている。特に、面状温度検出センサ1,1’は、約34℃以下となっている。これにより、本発明の各実施形態の構成を用いることで、経時的な検出面の温度上昇を大幅に抑制することができる。すなわち、センサ自身の構成要素に起因する検出面の温度上昇を大幅に低下させることができる。特に、第1の実施形態の構成を用いることで、検出面の温度上昇をさらに効果的に抑制することができる。
【0048】
また、面状温度検出センサ1,1’の実験結果から分かるように、サーミスタ素子THの基準抵抗値を高くすることで、さらに検出面の温度上昇を抑制することができる。
【0049】
次に、第4の実施形態に係る面状温度検出センサ4について説明する。
図6(A)は、本実施形態の面状温度検出センサ4の検出側基板41を取り除いた状態での検出面411側から見た平面図であり、(B)は面状温度検出センサ4における(A)のD−D’断面に相当する部分を示す側面断面図である。
【0050】
本実施形態の面状温度検出センサ4は、第2の実施形態に示したように、サーミスタ素子THが検出面411に対して平行で且つ直交する二方向に配列設置されたものである。複数のサーミスタ素子THを介して検出側基板41と反対側には、非検出側基板42が設置されている。非検出側基板42には配線電極45が形成されており、当該配線電極45に対して複数のサーミスタ素子THが接続されるように実装されている。
【0051】
ここで、配線電極45は、少なくともサーミスタ素子THとの接続側端部から所定距離において電極幅が狭く形成されている。ここで、電極幅とは、検出面411に対して平行で且つ配線電極45の延びる方向に直交する方向の長さを示す。
【0052】
また、各サーミスタ素子THは、樹脂410でモールドされている。樹脂410は、サーミスタ素子THと同じ熱伝導率で絶縁特性を有する。さらに、樹脂410は、塗布可能な態様であり、固化することで各サーミスタ素子THと検出側基板41とを物理的に接合させる。さらに、樹脂410は、非検出側基板42上において、配線電極45の電極幅が広い部分を含まないようにモールドする。この構成により、本実施形態の面状温度検出センサ4の筐体40は、検出側基板41と非検出側基板42とがサーミスタ素子THと樹脂410とにより所定間隔で離間され、当該サーミスタ素子THおよび樹脂410のない部分すなわち非検出部400では、検出側基板41と非検出側基板42との間が空隙となる。
【0053】
このような構成では、磁束の作用により配線電極45で発熱するが、サーミスタ素子TH接続側の電極幅の狭い部分によりサーミスタ素子THへの熱伝導が抑制される。また、非検出部400における検出側基板41と非検出側基板42との間が空隙であるので、配線電極45から検出側基板41への熱伝導が空気により抑制される。
【0054】
これにより、本実施形態の構成を用いても、上述の第1、第2、第3の実施形態と同様に、検出面411に対するサーミスタ素子THの温度検出精度を高くすることができる。
【0055】
なお、第4の実施形態において、配線電極45の幅は、部分的に狭くするのではなく、全体的に狭くしても良い。
また、上述の各実施形態で示した放射状配列もしくは二次元配列されたサーミスタ素子THの配置数および配列数は、上述の例に限るものではなく、センサの仕様に応じて適宜設定すればよい。
また、上述の各実施形態では、サーミスタ素子THとしてPTC型サーミスタを例に示したが、NTC型サーミスタであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1の実施形態の面状温度検出センサ1の構成を示す図である。
【図2】第2の実施形態の面状温度検出センサ2の構成を示す図である。
【図3】第3の実施形態の面状温度検出センサ3の構成を示す図である。
【図4】第1、第2、第3の実施形態に示した面状温度検出センサの構成と、従来技術に示した面状温度検出センサの構成とでの、検出面上の特定点の温度変化を示した図である。
【図5】図4に示す実験での各面状温度検出センサの構成と前記特定点の位置(P)とを示す図である。
【図6】第4の実施形態の面状温度検出センサ4の構成を示す図である。
【図7】従来の面状温度検出センサの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
1,1’,2,3,4,−面状温度検出センサ、10,20,30,40−筐体、11,21,31−検出側層、12−非検出側層、13−中間層、41−検出側基板、42−非検出側基板、15,25,35,45−配線電極、16,26,36,46−外部引き出し電極、100、200,300,400−非検出部、111,211,311,411−検出面、TH−サーミスタ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面を検出面とする平板状の筐体と、該筐体の内部に配置され、それぞれが電気的特性の温度依存性に応じて温度検出を行える複数の検出部と、該複数の検出部を接続する配線電極と、を備え、前記検出面が外部磁界の方向に対して略垂直に配置された面状温度検出センサであって、
前記配線電極は、前記検出部を挟んで前記筐体の前記検出面と反対側に配置される、面状温度検出センサ。
【請求項2】
前記検出部は、それぞれが個別に形成された直方体形状のサーミスタ素子であり、
前記配線電極は、前記検出部に接続する端部を含む少なくとも一部が前記外部磁界による渦電流の発生を抑制する態様からなる渦電流抑制部を有する、請求項1に記載の面状温度検出センサ。
【請求項3】
前記配線電極は、前記外部磁界の磁束の中心を放射中心として、前記検出面から見て放射状に形成される請求項1または請求項2に記載の面状温度検出センサ。
【請求項4】
前記筐体の内部における前記検出部と異なる領域である非検出部は、前記検出部よりも低い熱伝導率からなる請求項1〜請求項3のいずれかに記載の面状温度検出センサ。
【請求項5】
前記筐体の前記検出部よりも前記検出面の側が絶縁部材からなる、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の面状温度検出センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−264803(P2009−264803A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111959(P2008−111959)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】