説明

靴の消臭具

【課題】 靴の悪臭を効率良く除去すると共に、消臭機能を長期間にわたって保持できる新規な靴の消臭具を提供する。
【解決手段】 一対の被覆片2、2を相互に重合可能にすると共に、被覆片の端縁をスライドファスナー5により開閉可能に接合してカバー体1を構成し、このカバー体1の内面に、木綿繊維、麻繊維又はレーヨン繊維にメタクリル酸をグラフト共重合反応させたものであって、繊維に対するメタクリル酸のグラフト化率が7〜15重量パーセントである改質セルロース繊維よりなる消臭材6の一対を設け、上記カバー体を開いた状態で、各消臭材を靴8の開口から内側に垂下すると共に、被覆片により靴の開口を閉塞するようにして使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、靴の消臭具に係り、特に、靴の悪臭を効率良く除去すると共に、消臭機能を長期間にわたって保持できる新規な靴の消臭具に関する。
【背景技術】
【0002】
特に婦人用のブーツやショートブーツ等の深い靴は、内部が蒸れて水虫菌やその他の雑菌が蔓延りやすく、悪臭がする、等の使用上の不都合があることは良く知られている。
【特許文献1】特許第3239146号に係る特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、靴の消臭手段として、例えば袋詰めにした活性炭をブーツの中に挿入する、等の方法があったが、これらの方法は比較的コスト高であり、しかも、短期間の内に消臭機能を失う、等未だ改良の余地がある。
【0004】
そこで、この発明は、簡単な構成で靴の悪臭を効率良く除去でき、しかも、消臭機能を多数回賦活できる新規な靴の消臭具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ブーツやショートブーツ等の靴の開口を覆うに足る大きさの被覆片の一対を、接続部を介して一体的に接続し、この接続部を縦断する折曲げ線により上記一対の被覆片を相互に重合可能にすると共に、被覆片の端縁をスライドファスナーにより開閉可能に接合してカバー体を構成し、このカバー体の内面に、木綿繊維、麻繊維又はレーヨン繊維にメタクリル酸をグラフト共重合反応させたものであって、繊維に対するメタクリル酸のグラフト化率が7〜15重量パーセントである改質セルロース繊維よりなる消臭材の一対を設け、上記カバー体を開いた状態で、各消臭材を靴の開口から内側に垂下すると共に、被覆片により靴の開口を閉塞するようにして使用することを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、上記消臭材が帯状の布又は不織布であって、各消臭材の一端を被覆片の内面に固着してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記のように構成されたこの発明による靴の消臭具は、被覆片により開口を閉塞された靴内に消臭材が垂下された状態で、悪臭の元であるアンモニアガス(尿臭)、イソ吉草酸ガス(足臭)、或いは酢酸ガス(酸っぱい臭い)が消臭材の繊維に共重合されたメタクリル酸と反応して臭わない物質に変化するので、ブーツ等の悪臭が速やかに除去される。
【0008】
但し、体臭以外の臭い、例えばタバコ、香水或いは化学薬品等の臭いは消臭されない。
【0009】
また、メタクリル酸は繊維の表面に塗布されるのではないので、上記悪臭ガスと反応して生成された無臭の物質は、それのみが消臭材の洗濯、或いは揉み洗い等により容易に除去され、このようにして消臭機能が洗濯により賦活される。この賦活は、多数回行うことができる。
【0010】
更にまた、使用しないときには消臭材をカバー体内に収納してスライドファスナー(ジッパー)により閉じることができるので、例えば旅行や出張に際しての携帯、或いは自宅における収納に便利である、等種々の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
消臭材として木綿繊維、麻繊維又はレーヨン繊維にメタクリル酸をグラフト共重合反応させたものであって、繊維に対するメタクリル酸のグラフト化率が7〜15重量パーセントである改質セルロース繊維を採用し、これを帯状にしてその一端をカバー体の内面に固着し、使用時カバー体により靴の開口を閉塞した状態で消臭材を靴中に垂下させるようにしたので、悪臭物質を良く吸着して効率良く靴の消臭を行わせるばかりでなく、消臭材を洗濯により賦活させることができるようにした。
【実施例1】
【0012】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1及び図2において符号1はカバー体を示し、このカバー体1は、ブーツやショートブーツ等の靴の開口を覆うに足る大きさの被覆片2の一対を、接続部3を介して一体的に接続したものである。
【0013】
図示の実施例におけるカバー体1は、例えば、2枚の正方形の被覆片2、2を連設して(繋げて)縦、横の比が2の細長いシートにし、この細長いシートの長手方向の辺を2等分する折曲げ線3を接続部4としたものである。
【0014】
このカバー体1(被覆片2)の材質は、目の詰んだ布、不織布、或いはビニールシート等所謂通気性の悪いものが望ましく、また、可撓性を有するものが好適である。
【0015】
また、被覆片2の大きさは、例えば約16cm四方程度とし、ブーツやショートブーツ等の足先を入れる開口を余裕をもって覆うことができるようにすることが望ましい。
【0016】
更にまた、カバー体の端縁にスライドファスナー(ジッパー)を装着し、各被覆片2の接続部3を除く3つの端縁を開閉可能に接合する。
【0017】
すなわち、スライドファスナーを閉じたときには図1に示すように袋状になり、開いたときには、図2に示すように2枚の被覆片2、2が一体に接続された細長いシートになるようにする。
【0018】
一方、上記カバー体1を構成する各被覆片2の内面に、夫々細長い帯状の消臭材6の一端が固着されている。
【0019】
この消臭材6の材質は、前記したように、木綿繊維、麻繊維又はレーヨン繊維にメタクリル酸をグラフト共重合反応させたものであって、繊維に対するメタクリル酸のグラフト化率が7〜15重量パーセントである改質セルロース繊維である。
【0020】
上記改質セルロース繊維の構成及び製造方法については、前記特許文献1に詳細に記載されていて周知であるから、ここでは更に詳細な説明は省略する。
【0021】
また、上記消臭材3は上記改質セルロース繊維を布或いは不織布にしたものを所定の幅で裁断し、端縁を繊維が解れないように糸でかがってある。
【0022】
図示の実施例では、図2から明らかなように、1条の細長い帯状の消臭材6の中央部の2ヵ所を、夫々各被覆片2の内面のほぼ中央部に縫着7されている。
【0023】
なお、図示の実施例では、図2に示すように、一対の消臭材の他端(自由端)に例えば細長い金属板等の重錘を縫込んであり、後述するように消臭材をブーツ内に挿入するときに円滑に垂下できるようにしてあるが、この重錘10はこの発明の必須の構成要素ではない。
【0024】
上記のように構成されたこの発明の一実施例による靴の消臭具は、図3に示すように、つま先及び踵を揃えたブーツ8の開口を被覆片2、2で閉塞して臭気が外に洩れないようにした状態で、被覆片の裏面の消臭材6、6を夫々ブーツ8の片足部分内側に垂下させるようにして使用する。
【0025】
そして、本発明による靴の消臭具の消臭メカニズムは前記した通りであるが、その公的検査機関によるガスの除去性能評価試験の一例を揚げると、アンモニアガスの除去性能評価試験では、アンモニア濃度(ppm)の初発濃度100ppmが2時間後には0.5ppm以下となり、減少率は99パーセント以上で、これは消臭材の100回の洗濯後でも殆ど同じである。
【0026】
ちなみに、ブランク(空試験)では、初発濃度100ppmが2時間後でも74ppmであった。
【0027】
同じく酢酸ガスの除去性能評価試験では、初発濃度50ppmが2時間後0.9ppmなのに対し、洗濯10回後では、初発濃度50ppmが2時間後0.6ppmで、洗濯によって逆に性能が良くなったという結果が得られた。
なお、上記二つの検査例における消臭材の、前記改質セルロース繊維の混紡率は40〜50パーセントである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の一実施例による消臭具の携帯状態を示す外観斜視図。
【図2】その使用状態を示す外観斜視図。
【図3】その使用状態を示す外観斜視図で、ブーツを破断して示す。
【符号の説明】
【0029】
1 カバー体
2 被覆片
3 接続部
4 折曲げ線
5 スライドファスナー
6 消臭材
7 縫着部
8 ブーツ
10 重錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブーツやショートブーツ等の靴の開口を覆うに足る大きさの被覆片の一対を、接続部を介して一体的に接続し、この接続部を縦断する折曲げ線により上記一対の被覆片を相互に重合可能にすると共に、被覆片の端縁をスライドファスナーにより開閉可能に接合してカバー体を構成し、このカバー体の内面に、木綿繊維、麻繊維又はレーヨン繊維にメタクリル酸をグラフト共重合反応させたものであって、繊維に対するメタクリル酸のグラフト化率が7〜15重量パーセントである改質セルロース繊維よりなる消臭材の一対を設け、上記カバー体を開いた状態で、各消臭材を靴の開口から内側に垂下すると共に、被覆片により靴の開口を閉塞するようにして使用することを特徴とする靴の消臭具。
【請求項2】
上記消臭材が帯状の布又は不織布であって、各消臭材の一端を被覆片の内面に固着してなる請求項1に記載の靴の消臭具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−279191(P2009−279191A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134351(P2008−134351)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(505325811)
【Fターム(参考)】