靴の踵構造およびその踵構造を使用した作業靴
【目的】靴の踵部を踏んだり、踵部に集中的(例えば、一連の洗濯工程)に負荷が掛かった場合、それらの負荷を除去した際に、靴の踵部が速やかに正常状態に復元する作業靴の踵構造を提供する。
【解決手段】作業靴の踵部の構造であって、月型芯の形状及び踵部の後部から左右に掛けて弾力性を有し、かつ所定の幅と厚さを有する月型芯を挿入すると共に、靴の履き口上部の周囲には弾力性を有し、かつ所定の長さ、幅及び厚さを有する履き口クッションを挿入し、さらに、履き口部の「踏み込み時の折れ線」上にくびれを形成した履き口を有する作業靴の踵構造。
【解決手段】作業靴の踵部の構造であって、月型芯の形状及び踵部の後部から左右に掛けて弾力性を有し、かつ所定の幅と厚さを有する月型芯を挿入すると共に、靴の履き口上部の周囲には弾力性を有し、かつ所定の長さ、幅及び厚さを有する履き口クッションを挿入し、さらに、履き口部の「踏み込み時の折れ線」上にくびれを形成した履き口を有する作業靴の踵構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は安全で衛生的な靴(以下、作業靴という)の踵構造およびそれを使用した作業靴に関するものであり、さらに詳細には、靴の踵部を一時的に踏んだり、踵部に集中的(例えば、一連の洗濯工程)に負荷が掛かった場合、それらの負荷を除去した際に、靴の踵部が速やかに正常状態に復元する作業靴の踵構造および作業靴に関するものである。本発明は、特に度々靴を洗濯(以下、洗濯とは洗濯その事自体及び/又は一連の洗濯工程を意味する)する必要のある原子力発電所または核燃料施設等で使用する作業靴として好適である。
【背景技術】
【0002】
従来から公知の作業靴は、踵を踏みつけて履くことを想定しておらず、このため踵を踏みつけて履く事を防止するための構造を有する靴が多数提案されている(特許文献1、2等)。
【0003】
【特許文献1】実開昭63−103302号公報
【特許文献2】特開2004−321352
【0004】
しかしながら、上記従来の常識とは正反対で、踵部を一時的に踏みつけて履く事を、結果として一つの使用形態とした作業靴が存在している。この作業靴は原子力発電所または核燃料施設用作業靴であり、以下に詳細に述べる理由により踵部を踏みつけて履くことが多い。
【0005】
従来の原子力発電所または核燃料施設用作業靴は、日本工業標準JISZ−4811(放射性汚染防護用作業靴)及びJIST−8101(安全靴)(以下、JISZ−4811及び/又はJIST−8101と称す。)に規定されている放射性汚染防護用作業靴および安全靴を基準に、洗濯性を考慮し、革から人工皮革に変更されている。
原子力発電所または核燃料施設用作業靴は一つの靴を不特定多数の人が履く事等から、種々の理由で踵の潰れる事が多かった。踵部の潰れは「着用の問題」と、原子力発電所または核燃料施設特有の課題である靴の「メンテナンス」である浄化と除染用のための一連の洗濯工程での踵潰しがある。
洗濯の必要性と、それに相反するが洗濯は踵潰しの主要因であり、その踵漬しが起因で洗濯時の清浄性、除染性に苦慮し、それらに対応する適切な靴は無かった。
現在の作業靴は、洗濯に対する材質選択には考慮を払っているが、一般的に踵潰し防止に主眼があり、原子力発電所または核燃料施設の特殊環境に対応できる「踵潰し」を前提とし、塵挨、放射性物質等を容易に除去できる構造を持った作業靴の存在は無かった。即ち、従来からの作業靴には、踵部を踏みつけて履くための特別な踵構造を有したものは無く、使用上、様々な問題点があった。
【0006】
ここで従来の原子力発電所または核燃料施設用作業靴の問題点をさらに詳述する。
原子力発電所または核燃料施設等で使用する作業靴は、不特定多数の人が同じ靴を使用
する事が行われている。このため、例えば足の大きい作業者(人)は踵を踏みつけながら靴を履かざるを得ない。
さらに、原子力発電所または核燃料施設では一つの靴を不特定多数の人が履き、それらを洗濯して「再使用」している。洗濯は頻繁(ほぼ毎月)に行われるため靴の劣化、損傷、破損等が激しい。洗濯は一度に全重量が83.6Kg程度の靴(約110足に相当する)が約60°C程度の温度下で22分間行われている。
【0007】
さらに、原子力発電所または核燃料施設の放射性物質管理区域では個人個人に対して特定の靴は無く、洗濯後の靴の再利用を繰り返すために個人個人の足に合った馴染み性も無く、使用する度にサイズ不一致等、種々の理由で、踵を潰して履く人(場合)もある事は避けられない。
【0008】
実際に靴を着用する際の順を分析すると、特にサイズ不一致の場合、人は半履き状態で「ケンケン」してツマ先のみの着用で助走し、まず足入れを行ってから、靴をきちんと履く場合が少なくない。このような場合(人)は踵を一旦半潰し後にきちんと靴を着用する場合もある。この間に大抵の場合は踵が潰されている。繰り返される程に踵潰しは促進される。それによって靴の踵は踵部の中心線に対して踵部下部から左右斜め上方に約45°付近に「踏み込む時の折れ線」が発生する(当社、従来製品)。「踏み込み時の折れ線」が都度、違った位置に発生した場合は、折れ線同士が交差し、そこから膨らみが発生したり、履いて違和感を感じたり、月型芯、裏材等に裂傷、亀裂、摩滅、等が発生したり、強いては折れ線の「交点」から亀裂が発生し破断に到る事もある。場合によっては、踵部が変形しそれが恒久化する事も少なくない。
【0009】
考慮すべき事はこれまでの靴は「踵潰し」を前提に靴の設計がなされておらず、潰れる場合は、潰れ方がその都度、靴着用者の足の形状、着用法、履き癖、等による履き方に左右され、靴踵部の履き口周囲に鋸歯状の凹凸(ギザギザ)が形成される事である(図9参照)。このように不特定多数の人が靴の踵を潰して履く(鋸歯状のギザギザの発生)事により、靴を履く際に踵部に「踏み込む時の折れ線」が多数発生したり、踵部が前方に倒れたりして当該部に放射性物質等が付着したままになる事もある。この事は同時に洗濯がしにくい等の問題が発生する。さらに靴踵部の洗濯による洗浄性、除染性の妨げになっている。
【0010】
一方原子力発電所または核燃料施設で使用する作業靴の踵部(根本的には月型芯)は、挨、ゴミ等と共に放射性物質等の付着も除去する必要があるため「頻繁(ほぼ毎月)」に洗濯する事になっている。この洗濯は通常の汚れを落とす洗濯の他、靴の凹部に付着する「放射性物質等の除去」も行うため、靴全体は、洗濯が容易なように可能な限り余計な凹凸の無い形状として製作されねばならない。加えて、原子力発電所または核燃料施設では靴を「頻繁に、大量に、機械的に洗濯するために、結果として丁寧に洗濯する事は困難」である。また、靴の踵部も、仮に踏みつけて履いた後でも、極力凹部の少ない方が良いため、踵部が履く前の状態に復元する事が望ましい。つまり、踵部の45°方向の「踏み込み時の折れ線」への対応が必要である。
【0011】
大量の靴の一連の洗濯工程はそれ自体が靴を損傷する行為である。一連の洗濯工程自体が靴の構成材料に対し水分の吸脱水を繰り返し、洗濯終了後には濡れた重量増の靴を積上げ、この際靴(複数)は自重で踵部へ負荷を与え、濡れた状態での踵潰しが一定時間継続される。はなはだしい場合は踵部が擬似的に塑性変形化する。
靴の洗濯では大量の靴が同時に、機械的に浮遊されながら洗濯され、靴への負荷が大きい。大量洗濯では浮遊中に靴同士がぶつかったり、擦れたり、特定の一方向に偏重が掛かったり「踵部」への負荷が大きく、それによる変形も大きかった。
【0012】
踵部には洗濯工程の前後でも、種々の方向から負荷がかかり、踵部は中底方向へ変形したり、「鋸歯状の凹凸(ギザギザ)が形成」される(図9参照)。これら、変形や凹凸が繰り返されると、それら損傷は洗濯毎に同一箇所が一層強調される事が判っている。
さらに、直後には「50°Cの高温」での「強制乾燥工程」があり靴の構成材には負荷が連続的に多様な方向から、かつ多様な物理・化学的な(機械的な力、濡れの現象対策、熱応力、複雑な物理・化学的な応力)負荷が、踵部の「垂直方向に座屈応力」として作用する。
【0013】
従って、一連の洗濯工程において靴が座屈変形に対応するには「吸水性、耐熱性等に対応」できる材料で、かつその材料で「座屈しない部品設計」を行う必要がある。換言すると踵部に対する垂直荷重、つまり座屈荷重への対応が必要になる。総合的には、材料の選択と合わせ、踵部の強化に関連する周辺製靴部品の相関的な設計が必要とされている。
靴の変形と一連の洗濯工程は因果関係にあり、それらを両立させる靴の統合的な設計が必要である。
【0014】
図10に靴へ作用する“一連の洗濯工程を含む作業靴への主な負荷要因”を示す。
【0015】
踵部を踏みつけて靴を履いた場合、折れ曲がった踵部の凹部に放射性汚染物質等が付着し易くなりそれらを洗濯したとしても、放射汚染物質を完全に除去する事が難しい。靴を「潰して履く」事と「頻繁な洗濯」により、靴の踵部自体が軟化したり、靴の踵部に鋸歯状の凹凸が固定したりする。さらに、月型芯の強度を劣化させる事になり、靴の耐久性でも問題があり長寿命の靴が求められていた。
【0016】
ここで踵部に挿入する従来型月型芯の具体的問題点について説明する。
(1)材料(月型芯)について
踵部においては、一連の洗濯工程に関しそれに対応できる材料の使用が重要である。従来は一連の洗濯工程に対し吸水性、強制乾燥に対する耐熱性、様々な方向(45°:踵踏み付け時、垂直:洗濯時の積上げ、熱応力、等)及び多様なエネルギー負荷に対し弾性を有する材料が適切に選択使用されていなかった。
(2)踵部の復元と除染について
通常一人一人が専用の靴を履くのが普通であるが、原子力発電所または核燃料施設では種々の理由により共用化し、頻繁な洗濯を行っている。他方、それに相反するように洗濯を困難にしている踵を潰した靴の着用の必然性がある。従来このような問題に応える靴は無く、それぞれの不便の中で我慢して着用に到っているのが現実である。
(3)踵部の仕様(本来あるべき性能、品質等)
また当該施設で着用する作業靴の規格としてJISZ−4811(放射性汚染防護用作業靴)に規定の、4の4.1の(7)には“作業靴の平面は平滑で、不必要な凹凸がなく、除染しやすい構造であること”とされているが十分に対応できる作業靴は無かった。
【0017】
上記問題点から抽出される課題を整理すると下記のようになる。
1.被洗濯品(靴)の状態、洗濯条件、等によらず、付着した、塵、挨、等と共に放射性物質等を容易に「除染」できること。
2.そのために靴踵部が前倒しになったり或いは鋸歯状の凹凸の無い靴が必要であること。
3.多様な負荷の種類、負荷の方向に対し、かつ「頻繁な洗濯」に耐える丈夫な靴であること。
4.そのため、踵が倒れて無く、立っている元の状態での洗濯が望ましい。
5.そのために、「踵を潰して履いた場合でも」、脱いだ後に靴の踵部に鋸歯上の凹凸の無い靴が必要であること。
6.そのために平易な形で折り曲げられ、復元する踵部が必要であること。
7.靴は洗濯性の向上に併せ、次に履く人のために、踵が潰された場合でも、元に復元している事が望ましいこと。
8.上記の要求、問題点を改善した「放射性物質等を扱う原子力発電所または核燃料施設内で使用する適切な作業靴」が求められていること。
以上のように現在では、特に原子力発電所または核燃料用各施設で使用する作業靴において、「踵潰し、頻繁な洗濯、効果的な洗濯を前提とした作業靴」が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、前述したような原子力発電所または核燃料施設固有の諸問題点に対し対策を施した靴を提供することである。つまり、上記問題に対し、「発想を転換」し、一時的な踵潰し、機械・熱的等の重負荷な一連の洗濯工程に耐える靴の製作を前提にした靴を開発する事である。それによって踵の前倒しになる変形や鋸歯状の凹凸(ギザギザ)等を削減し、その効果によって洗浄性、「強いては除染性」を向上させる事を主な目的としている。
そのため、靴の形状維持により、靴の踵部の中底方向に閉じた形状や鋸歯状のギザギザした凹凸を少なくし、「靴踵部の洗濯性」の向上を図り、特に原子力発電所または核燃料施設で一定期間の作業後に作業靴に付着している放射性物質等の「除染向上」を大きな狙いとしている。
【0019】
そこで本発明は、原子力発電所または核燃料施設で使用する作業靴において、靴を共用する事を前提とし、踵部を踏みつけて使用した後及び靴への重負荷による繰り返し洗濯後でも、直ちに、靴の踵部が正常状態に復元する踵構造を持つ作業靴を提案する事により、踵潰れが無い事による「靴の履き易さ」、「洗濯性能」、「衛生上の品質」、「靴の見映え」、等を向上・実現し、最終的には除染性を改善する事により、従来の作業靴の問題点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このため、本考案が採用した技術解決手段は、作業靴の踵部の構造であって、月型芯の形状及び踵部の後部から左右に掛けて弾力性を有し、かつ所定の幅と厚さを有する月型芯を挿入すると共に、靴の履き口上部の周囲には弾力性を有し、かつ所定の長さ、幅及び厚さを有する履きロクッションを挿入し、さらに、履き口部の「踏み込み時の折れ線」上にくびれを形成した履き口を有する作業靴の踵構造である。
月型芯は非吸水性で弾性を有する材料を用い、過酷な洗濯工程、洗濯後の積上げ等の処理工程、強制乾燥工程、等に対応できる素材を選定し、繰り返し折り曲げや座屈変形対応を主とした部品設計を行う。(従来、月型芯の機能は踵の保護のみで、強度設計は必要無かった。)
【0021】
さらに、適切な素材選定の基、効果的に、長期間使用するために「踏み込み時の折り線」に準拠した各部品間の相関的関係に基いて月型芯の形状を決める。
それぞれ既知である、それぞれの靴の部品「履き口(アッパーの履き口)、履き口クッション及び月型芯」、部品の形状、組立て方(巻き縫い工程等)及び物理現象「踵の踏み込み時の折れ線の角度50°や垂直(90°近傍)に係る負荷及び靴の一連の洗濯工程時や強制乾燥時に掛かる熱応力等への対応」等原子力発電所または核燃料施設での特殊な用途に対応させるためそれぞれ部品間の踵潰しに掛かる「相互関係」を把握し、それに対応した「相関設計(月型芯、トップライン、履き口クッション、等の統合的設計)」、「折れ線(50°方向)から導かれる複数部品間の関係、複数部品間の製作工程法(巻縫い、等)」及び「50°及び90°方向の負荷対策として同時にそれらの設計を行なう複合部品設計(一つの部品に複数の技術的性能上の機能を含む部品設計)としての併合的な設計」を行い、それらの確実化のために各構成部品においても各々機能を付加する事によって、品質・機能維持の確かさの向上を計る設計手順を提案する。
例えば、月型芯の幅、履き口クッション等諸寸法の決定に複数部品から一つの設計値を算出することである。
【0022】
本発明では既設部品の一つ一つに対しても、従来の靴設計に対し、新規に複数の機能を設定している。
履き口部には履き口クッションの交点に対応する部署に「くびれ(図1中の符号10)」を設定する。つまり、くびれはその部署が「両隣より低い」事により、最初の「踏み込み時の折れ線」を導入する。
履き口、履き口部の「くびれ」の程度は、踵の潰し易さと復元性を考慮した設計を行う。本事項について、従来は必要の無かった、新規概念及び「相関設計」から導かれる「機能部品設計(一つの部品に構造材等の目的の他に、固有の技術的性能上の機能を保有させる部品設計)」である。
【0023】
履き口クッションについても、同様に足を保護する役目と併せて「踏み込み時の折れ線」との交点による長さ設定で、「踏み込み時の折れ線」の初期導入を導くための「機能部品設計」を行う。
履き口クッションにはその長さ、その長さ区間の「強さ」、「硬さ」及び「大きさ」(太さ)等強度差の設定により、「くびれ」と同時に「踏み込み時の折れ線」を確実に導入する。
月型芯単部品に対し月型芯そのものの役割と併せて「スキ」(後述する)及び「ブランクスペース」(後述する)によるきちんとした「踏み込み時の折れ線」の初期導入の促進を確実にするため、従来からの各々の部品の役割に併せて、本発明に沿って、複数の役割を追加するためにそれぞれの部品に「機能部品設計」を行う。
【0024】
月型芯には従来の機能に併せ、「スキ」及び「ブランクスペース」を形成することにより月型芯上できちんと「踏み込み時の折れ線」を初期及び第2次導入ラインに継続して行う。ブランクスペースは月型芯に0〜30°の角度、又は靴の踵部の形状によりそれに合致させる様な形状で設定する事による。
これらは、部品の相関設計により、「踏み込み時の折れ線」の確実化を推進する。そのために、月型芯を主体に各部品に「機能部品設計」を行う。これらは各部品への「新規機能の付与」である。
【0025】
以下、月型芯および履きロクッションの特徴を説明する。
月型芯の大きさ:踏み込み時の折れ線/折り代/復元性向上
月型芯の大きさ、形状等については図4及び6に基づいて後述する。
本発明の主要事項の一つである踵の前方への潰れ対策(人の履き込み及び洗濯工程前後の両方がある。)について説明する。踵潰しを前提に、それを相関的に設計するために、関連する部品アッパーの腰部、月型芯及び履きロクッションを同時に並列し、それらの相関関係を把握し、対応を施す。
【0026】
月型芯の諸寸法は図4に示す月型芯と履きロクッションの相関図によって設計上の各寸法が導かれる。月型芯の下部中央から上方へおおよそ「左右50°」で延伸した線が、踵を潰して履いた場合の「踏み込み時の折れ線」になる。50°の角度は折れ曲がり易く、かつ復元し易い状況を設定する。「踏み込み時の折れ線」の角度は踵を潰して履いた場合、若干広めが好ましい。丁度の角度より、若干広めに角度設定した方が折れ曲がり易い。靴の踵を潰して履いた後に、靴を脱ぐ際、またはケンケン後にきちんと靴を履く場合においても若干広めの方が好ましい。ほんの少し広い角度設定が鋭角な折れ曲がりを避けることができ、折れ曲がり部の長寿命化を図ることが可能となる。従って折れ曲がり線は中央値(45°)よりも若干広めの50°前後が望ましい。また、踏み込み時の折れ線は必ずしも左右対象である必要はなく、月型芯の前方への倒れ込み状況を設定するために左右の折れ線を非対象に決定することもできる。
【0027】
「踏み込み時の折れ線」の延長上に履きロクッションがあり、それとの「交点」が履き口クッションの長さになる。このように「踏み込み時の折れ線」の延長上に履き口クッションの端部を略一致させることで「踏み込み時の折れ線」を意図的かつ能動的に折れ曲がり線に誘導させることができる。また、「踏み込み時の折れ線」の延長上に靴の履き口に形成する「くびれ」を略一致させることで、踵部の前方への倒れ込みをより一層容易とすることができる。
【0028】
また、月型芯に形成される「踏み込み時の折れ線」の長さ(図4中のM参照)は少なくとも20mm以上であることが望ましく、また「踏み込み時の折れ線」の両外側に少なくとも250mm2 以上の「折り代」の面積を確保できる月型芯が好ましい。前記長さは、長い程折り曲げにくいが、踵の復元力に寄与する。このため月型芯に形成する折れ線は、踵の復元力の状況に応じて、総合的には「折り代」、ブランクスペース(後述する)、月型芯の繰り返し曲げ運動を考慮して、月型芯の設計時に決定することになる。
【0029】
従来の月型芯は踵保護、等のために履き易さ、等に重点を置かれて設計されてきた。表革と裏材の中にあって、踵や靴を保護するが、異物として足が感じないように、工夫・発明がされてきた。
本発明では、月型芯本来の機能は残しながら、さらに潰れた踵の「復元性向上」の「機能」を付与し、上述法により適切な月型芯の大きさと形を決定する。
【0030】
前記月型芯の上面は左右の両端に向かって、少なくとも0°以上〜30°以下の範囲で下方に向かって傾斜している事「ブランクスペース(図4中の符号11で示す範囲)又は靴の踵部の形状によりそれに合致させる様な形状を有すること)を特徴とする作業靴の踵構造である。この傾斜カットにより、履き口クッションとの間にブランクスペースが設定される。これら(左右)ブランクスペースは最初に履き口のくびれ及び履き口クッションが「踏み込み時の折れ線」に沿って折れ曲がりることを意図的に誘起し、折り曲げを引き続き継続させる場合、いきなり月型芯に折り曲げを行わず、その間迄の導入部として「第2次的折れ曲げの導入部」として機能を果たす事ができる。また、ブランクスペースは月型芯に曲げ作用が開始される迄の緩衝としての機能を果たす。従って、ブランクスペースの形状、大きさの決定は、前述した「踏み込み時の折れ線」の長さ、折り代などを考慮しながら決定することが望ましい。
【0031】
月型芯には用途等により「スキ」(図4中、符号9参照)を形成する事は周知の技術である。この「スキ」は通常、表革と裏材の間に挿入される月型芯に加工され、着用者及び靴の踵の保護にあたる事を目的としている。そのため月型芯の大きさ、形状、等はそれらを設計要因として決めている。図4に月型芯にスキを形成した平面図と断面図を示す。
本発明では「スキ」は、従来の「スキ」の目的に併せ、さらに「踏み込み時の折れ線」を能動的に促進させる機能を有している。即ち、「第三の折り曲げ線導入部」としての機能を付与している。具体的にはアッパー履き口のくびれと同時に、履き口クッションの両端で最初に折り曲げ部が潜在的に決定され、次いで上述「ブランクスペース」が第二の折り曲げ線導入の役割を果たし、最終的に月型芯の「スキ」が月型芯の「踏み込み時の折れ曲げ線」の最終的導入を確実にする。
【0032】
なお、月型芯は図7、図8に示すような形状でも同様な効果を得る事ができる。
図7に示すものは月型芯の下面に図示のような切欠を入れた形状であり、図8は月型芯の下端を中底側に折り曲げるための折り曲げ代を形成したものである。さらに月型芯の形状は図4、7、8等にこだわる必要はなく、靴の踵形状に合致させ中央部は高く、両端は絞り込む形状でも可能である。また、図示せぬ形状でも、本発明の目的を達成するための機能を有する月型芯形状であれば種々の形状を採用することもできる。
【0033】
月型芯の材質
本発明に係る月型芯は靴の頻繁な一連の洗濯工程による強度劣化を防ぐために非吸水性材料が適している。具体的には、前記月型芯1は、靴着用法及びメンテナンス(洗濯)から、形状復元機能に優れた材料、例えば熱可塑性樹脂、加硫ゴム、塩化ビニール、合成樹脂(アクリル、エポキシ、塩化ビニール、ポリウレタン、天然皮革、編布、等)、等、非吸水性で弾性に富んだ材料が適している。また月型芯は着用時には略50°方向に繰り返し曲げの負荷が、そして靴を積み上げる際は月型芯の垂直な方向に負荷が作用する。即ち、平面状の月型芯には繰り返し折り曲げ荷重が、立てた場合には座屈荷重等が作用する。月型芯は従来、靴の形状維持等の目的に使用されており、このような要求はなかった。このような条件を満たすために、月型芯の材料は非吸水性で、さらに一定の繰り返し曲げ荷重および座屈荷重に対応する材料を使用することが望ましい。
【0034】
月型芯の厚さに関し、本発明では履き心地としての足へのフィット性及び踵が潰れた場合の復元性の大別して2つの役割がある。
第1番目に、特に月型芯の厚さはフィット性への影響は大きいが0.5〜2.5mm程度は足に対しても異物感覚が無く、望ましくは1.5〜2.0mm程度が最適である。月型芯の厚さは他の製靴上の諸部品や木型との関係が重要であり一概する事は困難で、個別設計による。
第2番目に、本発明では月型芯は踵を潰して履いた後の復元及び靴を洗濯した後の復元性が必要とされている。特に一連の洗濯工程は過酷な条件で繰り返されるため、短時間での復元が必要とされる踵部の補強板として使用され、従来とは異質の特性を要求される月型芯の材質の選定は重要である。一連の洗濯工程の条件からは主として非吸水性で一定の弾性および剛性を有する材料が適している。
【0035】
月型芯全体のまとめ
通常は踵部を潰して履く事は、習慣として不謹慎とされ、実際踵を踏み潰して履く事は靴の衛生上及び安全上、特に作業及び安全靴としては、決して好ましい履き方では無かった。本発明では、このような状況を鑑み、原子力発電所または核燃料施設特有の使用環境及び靴踵部のメンテナンスを優先して、従来の習慣とは異なる、靴着用時およびメンテナンス時には、一時的に靴の踵部を潰して履く事を前提にした靴踵部の月型芯設計を行った事である。
【0036】
履き口クッションの材料
前記履き口クッションは、少なくとも合成樹脂、天然皮革、編布のいずれか一つを使用する。
履き口クッションの長さおよび強度差
履き口クッションの長さは、従来は足首のやや半周前後に相当する長さである。本例では、従来法と併せ「踏み込み時の折れ線」を確実におよび強調するために、且つ足を保護するために足首の1/2以上の周長で「踏み込み時の折れ線」との交点を考慮して決定する。履き口部に設定する「踏み込み時の折れ線」の初期曲げを確実にするために、かつ、相関設計から履き口クッションの端部と「くびれ」とが同一部所となるように、履き口クッションの長さを設定する。
さらに、履き口クッションは、他の履き口部分と比較し、相対的に「強度差」(或は硬度、等において)を付けることに事により「踏み込み時の折れ線」の位置が潜在的に決定され、履き口上での折れ曲がり点を潜在的に特定する。ここで、強度差は「踏み込み時の折れ線」を円滑且つ能動的に行うための分岐点でもある。
【0037】
洗濯工程前後の積上げによる踵部に作用する座屈荷重について
原子力発電所または核燃料施設用作業靴のメンテナンス(洗濯)と月型芯への影響
靴のメンテナンス:靴の洗濯
原子力発電所または核燃料施設用作業靴に使用される月型芯設計の主要要因の一つに一連の洗濯工程を考慮した月型芯の厚さと高さを決める事である。本洗濯は靴には負担の大きい洗濯法で、一度に83.6Kg前後の靴を60°Cの温度で洗濯する。洗濯後の靴は積上げ等により靴の踵に複雑な負荷(主として踵部への垂直方向な座屈)が作用し、その直後に「強制乾燥」(50°C)される。プロセスを鳥瞰すると、一連の洗濯工程での踵部の前倒れ、変形、鋸歯状の凹凸は洗濯の効率を下げている。その主因は洗濯後の靴の積上げ時に発生する垂直方向への荷重であり、結果的には踵芯(つまり、月型芯)への座屈荷重である。それへの対応が必要である。
【0038】
洗濯前後の月型芯は多量の作業靴が積上げられる際、結果として種々の荷重を月型芯に受ける。重量としてはおおよそ83.6Kg、足数に換算するとおおよそ110足に値する。一つ一つの靴は積上げにより、踵の多方向からの荷重を受ける。それがメンテナンス上から起因する、踵潰しの大きな問題である。特に洗濯後の靴は濡れており、つまり多量の水分を含み重量は相対的にさらに重量を増している(おおよそ1.5倍)。重量が増加している上に、踵芯を含む近傍の部品(つまり、月型芯、表革及び裏材)は濡れている事により強度は相対的(対、濡れる前に比較して)に弱体化している。
【0039】
靴のメンテナンス:月型芯の厚さ及び高さ
月型芯の高さは、主として、一連の洗濯工程から起因する踵芯としての、洗濯後の濡れた状態での靴の積上げ時の踵への座屈荷重に耐えるために十分な強度を要する。月型芯の高さは、従って強度を有し、かつ座屈を防止するために中底から履き口クッション迄の「フルの長さ」になる。踵の座屈を防止する上では優先的に決定される要因である。
月型芯は従来靴踵部の形状を維持したり、足踵部の保護が主要目的で、高さ方向の強度設計に関しては、特に問題にはならず、従って必要も無かった。本発明では、しかし原子力発電所または核燃料施設用作業靴の月型芯の用途に合致させるために、月型芯に新たな機能を付与した。
【0040】
月型芯の座屈強度/オイラーの式の適用
月型芯の適切な高さは、その座屈強度を求めるオイラーの式で求める事ができる。荷重を受ける材料(ここでは月型芯を設定)の状態は月型芯が表材(人工皮革)と裏材によって確りと支えられている状態として捉える事ができる。
【0041】
PK=nπ2 (EI/l2 )(Kg)
ここで、PKは座屈荷重(Kg)、nは月型芯の支持法による係数、E は月型芯の弾性係数、Iは断面2次モーメント
そしてlは月型芯の長さである。
上式を変形すれば、
【0042】
【数1】
で求める事ができる。
上式より、下記が導かれる。
月型芯の高さは材料自身の強度に関係なく「I」の値、つまり断面2次モーメントに依存する。次に、nの値、つまり月型芯の保持法に依存する事が判る。月型芯の着用時および一連の洗濯工程の負荷状態を考慮すると、「月型芯の厚さ」は月型芯の全体的な設計に当って、最後に残された、つまり最後の調整役割としての設計要素である。
【0043】
オイラーの式の準用の限界
前述のように座屈荷重は「オイラーの式」から求められる。しかし、月型芯の場合は負荷を受ける状態として、洗濯時、積上げ時、等の温度、熱、水流抵抗、水流の逆流抵抗、靴同士の衝突、等多様な環境の基、負荷の形態、環境、等の経時変化も激しい。
状態によっては、座屈変形と弾性変形の両方の負荷を同時に受ける瞬問もあり、これらが同時進行する事もある。このように月型芯は時々刻々と多様な負荷を受けている。
月型芯には圧縮と引張り荷重が同時に負荷される場合もある。
さらに、オイラーの式では月型芯を支える部材、今回は表材と裏材になるが、これらも温度、吸水による材料の軟化、等の影響で刻々と影響を受け、その支え材としての効力は変化する。
【0044】
月型芯への垂直負荷と踵センターから略50°方向の負荷との両立
一方、本月型芯は弾性材である事が重要である。それは踵芯の垂直に掛かる荷重への対応と同時に、踵センターから略50°方向で踵潰しの際作用する負荷への対応である。本負荷に対して、踵芯(つまり、月型芯)は繰り返し曲げ応力に耐える事が必要である。従って、弾性に富んでいる事は重要である。
垂直方向への荷重はオイラーの式から、月型芯の厚さを求める事はできるが、弾性材を使用するため、実際は座屈以前に弾性変形する事が多い。本月型芯は50°及び90°方向の荷重への両立が必要になる。
本月型芯は、曲げ荷重に対する弾性、座屈荷重に対する剛性、そして液中で洗濯に対応するために非水溶性であることが必要で、結果的には意図的に座屈変形以前に弾性変形を促せるような材料の傾斜設計(弾性と剛性の適切な特性値点)を考慮したことである。
【0045】
オイラーの式準用と経験値
本発明では月型芯の高さは既知(優先条件)であるので(中底表面から履き口クッションの下面)、高さに基づいて、厚さの算出になる。
月型芯の高さがフルの場合、経験的に、実績も合わせ、つまり傾斜設計として、非吸水性でかつ弾性に富んだ化学的材料である合成樹脂、加硫ゴム、等では厚さは1.5mm〜2.0mmが適切な範囲である。
【発明の効果】
【0046】
以上種々述べてきたように本発明によれば、踵の復元能力が高いため、1足の靴を不特定多数の作業者が使用しても、靴の形態を正常状態に維持する事ができる。それにより、靴の洗濯が容易であり、放射性物質等の挨、ゴミ、等を容易に除去する事ができる。踵を踏んで使用しても、踵部の劣化が少ない。
絶えず左右一定の場所で「踏み込み時の折れ線」が繰り返され、足サイズの異なる人が
履いた場合でも、正常(例えば左右均等に)に履けば左右均一に、かつ比例的に「踏み込み時の折れ線」は並行に増減し、潰れた後の復元が容易にできる。
靴を履く際、正常に履かなかった場合(例えば、左右対称で無く、かたよって履いた場合)は、次の人が正常に履けば矯正できる。
さらに表材等と一緒に巻き縫いするために、靴を履く際や歩行時の負荷による月型芯の移動が無くなる。
また、靴の洗濯性も向上した。即ち月型芯及び履き口クッションの作用により踵の復元性が良くなり仮に踵を踏んで靴を履いた後でも、直ちに靴の踵が正常状態に復帰するため踵の潰れた靴は無く、健全な姿をした靴を洗濯する事により、靴の洗濯性が向上し、靴に付着した放射性物質、挨、ゴミ等を容易に除去する事ができる。
踵潰しを前提にした靴の設計により、踵の健全な靴を毎朝履く事が可能になり爽快な気分で一日の仕事を開始できる。
さらに、靴の浄化に加え、併せて「除染性」についても従来靴に比較して向上した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
本発明は、靴の踵の後部から左右に掛けて弾力性を有しかつ所定の幅、高さ及び厚さを有する月型芯を挿入すると共に、靴の履き口上部の周囲には弾力性を有し、かつ所定の長さ、幅及び厚さ有する履き口クッションを挿入し、且つ月型芯には「踏み込み時の折れ線」を形成し、踵部を踏み潰して履くことを前提とした作業靴である。
【実施例】
【0048】
以下に図面を参酌しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の作業靴の斜視図、図2は同作業靴の踵部の断面図、図3は踵部巻き縫いの平面図、図4は月型芯の平面図、図5は履き口クッションの平面図、図6は月型芯と履
き口クッションとの組み合わせ図である。
【0049】
作業靴は、従来公知の安全、作業、靴と同様に図1に示すような形状として形成されている。
そして、この作業靴の踵には従来の作業靴と同様に月型芯1が挿入されている。具体的には、踵部には、図2から図3に示すような月型芯1(詳細は後述する)が裏材3と表材4との間に配置され、また、月型芯1の下端部が靴の中底5に合わせて配置されている。月型芯1は中底5、裏材3、表材4に対して図3に示すように糸6で縫い付けられており、月型芯が表材4、裏材3の問で移動する事の無いように確りと固定されている(月型芯1は月型芯1を被う表材4と裏材3と密着して取り付け固定されている)。
また、靴の履き口には図5に示す形態の履き口クッションが挿入されている。さらに、履き口部には図1中符号10で示すように周囲の履き口よりも一段と下がった「くびれ」が形成されている。なお図中、符号7はミッドソール、8はアウトソールを示す。
【0050】
以下、踵部を構成する「月型芯」、「履き口クッション」、「くびれ」のそれぞれについて詳述する。
以下本例で使用する「月型芯」について図4を参照して詳述すると、図4は月型芯の平面図である。
本例の月型芯1は、従来の月型芯とは異なり、踵を踏みつけて履く靴に採用することを前提としており、踏みつけて履いた後でも、月型芯が正常状態に復元できる機能をもった月型芯として構成されている。
【0051】
図4において、月型芯1は、靴踵の後部から左右前向に向けて靴の履き口の略半分程度まで延長した長さL/2の倍の長さを有し、またその高さは、後部(踵部)が靴の踵の高さと略同程度の高さh1 、前部は後部の約1/2程度の高さh2 として形成されている。月型芯の高さを決定する要因は靴の履き易さ、踵を潰して着用する際の状態(踵の半潰し、踏み込み時の折れ線等)や、洗濯後の靴の積上げ負荷による踵芯への座屈応力、等がある。原子力発電所または核燃料施設用の場合、多くは、踵部の座屈荷重に対応するためには踵高さと同等の高さが望ましい。また、月型芯1は厚さが0.5〜2.5mm程度、望ましくは1.5〜2.0mm程度、月型芯の幅Lは130〜180mm程度であることが好ましい。
また、月型芯1には「踏み込み時の折れ線」1Bが形成されている。月型芯の下部中央から上方へ約「左右50°」で延伸した線が、踵を潰して履いた場合の「踏み込み時の折れ線」1Bになる。そして、「踏み込み時の折れ線」1Bの外側(図4中の斜線部)を折り代1Aとし、この折り代1Aの面積が略250mm2 以上、望ましくは500mm2 であるように構成されている。
【0052】
前記「踏み込み時の折れ線」1Bの角度θは、踵を潰して履いた際の中央値(約45°)より、若干広めが好ましく、若干広めに角度設定した方が月型芯1は「踏み込み時の折れ線」にそって折れ曲がり易いことになる。
なお、踏み込み時の折れ線1Bは必ずしも左右対象の角度である必要はなく、月型芯の前方への倒れ込み状況を設定するために左右の折れ線の角度を非対象(例えば左側は55°、右側は50°等のように)に決定することもできる。
【0053】
また、月型芯1に形成される「踏み込み時の折れ線」の長さM(図4参照)は少なくとも20mm以上であることが望ましい。さらに、「踏み込み時の折れ線」1Bの両外側に形成される「折り代」1Aの面積は少なくとも250mm2 以上であることが望ましい。前記長さMは、長い程折り曲げにくいが、踵の復元力に寄与する。このため月型芯に形成する「踏み込み時の折れ線」1Bは、踵の復元力の状況に応じて、総合的には「折り代」、ブランクスペース(後述する)、月型芯の繰り返し曲げ運動を考慮して、月型芯の設計時に決定することになる。
【0054】
非吸水性で、かつ弾性に富んだ材料からなる月型芯に対し適切な「折り代」の設定は折り代の「繰り返し折れ曲げ運動」上その性能保持、性能の継続性、等において重要な要因になる。「踏み込み時の折れ線」が左右共に1B内にある月型芯は負荷解放後の復元に対し、その特性を発揮する事ができない。また月型芯は「踏み込み時の折れ線」より外側であっても短過ぎると、跳ね返って裏材を破ったり、折れ曲がる方向とは反対側に巻き込まれたりして裏材に負荷をかけ、強いては裏材が破れたり、破断したりする。
「折り代」は大き過ぎたり、形状が不適切な月型芯は足当りを招いたり、コストアップ
の要因になり好ましい事ではない。折り代の面積として適切な値としては、250mm2 以上が性能発揮上適切である。
【0055】
月型芯は非吸水性で弾性を有する材料を用い、過酷な洗濯工程、洗濯後の積上げ等の処理工程、強制乾燥工程、等に対応できる素材を選定する。
本発明に係る月型芯は靴の頻繁な一連の洗濯工程による強度劣化を防ぐために非吸水性材料が適している。具体的には、前記月型芯1は、靴着用法及びメンテナンス(一連の洗濯工程)から、形状復元機能に優れた材料、例えば熱可塑性樹脂、加硫ゴム、塩化ビニール、合成樹脂(アクリル、エポキシ、塩化ビニール、ポリウレタン、天然皮革、編布、等)、等、非吸水性で弾性に富んだ材料が適している。また月型芯は着用時には略50°方向に繰り返し曲げの負荷が、そして靴を積み上げる際は月型芯の垂直な方向に負荷が作用する。このような負荷条件を満たすために、月型芯の材料は非吸水性で、さらに一定の繰り返し曲げ荷重および座屈荷重に対応する材料を使用することが望ましい。
【0056】
月型芯の厚さは履き心地と足へのフィット性及び踵が潰れた場合の復元性から決められる。特に厚さはフィット性への影響は大きいが0.5〜2.5mm程度は足に対しても異物感覚が無く、望ましくは1.5〜2.0mm程度が最適である。
【0057】
月型芯には図4に示すブランクスペース11およびスキ9が形成される。
ブランクスペース11は月型芯1の上部に接する水平線に対して斜め下方に月型芯をカットした際に形成されるスペースである。傾斜カットは0°以上〜30°以下、又は靴の踵部の形状によりそれに合致させる様な形状で設定する事であり、この傾斜カットはそれ自体希有な事では無いが、本法では傾斜カットにより直近に設定される部分(以後、「ブランクスペース」と呼称)が従来の機能に付加して、さらに異なる機能を持つ。この傾斜カットにより、後述する履き口クッションとの問にブランクスペースが設定される。これら(左右)ブランクスペース11は最初に履き口のくびれ及び履き口クッションが「踏み込み時の折れ線」に沿って折れ曲がりることを意図的に誘起する。即ち折り曲げ時において、いきなり月型芯1に折り曲げ作用が働くことがないよう「第2次的折れ曲げの導入部」として機能を果たす。また、ブランクスペース11は月型芯1に曲げ作用が開始される迄の緩衝区域としての機能を果たす。
【0058】
従来より、月型芯には用途等により「スキ」を形成する事は周知の技術である。この「スキ」は図4中のA−A断面に示すように月型芯の周囲を面取りした部分のことである。 本発明では「スキ」は、従来の月型芯のフィット性を求める「スキ」の目的に併せ、さらに「踏み込み時の折れ線」を能動的に促進させる機能を有している。即ち、「第三の折り曲げ線導入部」としての機能を付与している。具体的には図1に示す履き口のくびれ10部の折れ曲がりと同時に、履き口クッションの両端で最初に折り曲げ部が潜在的に決定され、次いで上述「ブランクスペース」11が第二の折り曲げ線導入の役目を果たし、最終的に月型芯の「スキ」9が月型芯の「踏み込み時の折れ曲げ線」1Bの最終的導入を確実にする。
【0059】
月型芯全体のまとめ
通常は踵を潰して履く事は、習慣として不謹慎とされ、実際踵を踏み潰して履く事は靴の衛生上及び安全上、特に作業及び安全靴としては、決して好ましい履き方では無かった。本発明では、このような状況を鑑み、原子力発電所または核燃料施設特有の使用環境及び靴踵部のメンテナンスを優先して、従来の習慣とは異なる、靴着用時およびメンテナンス時には、一時的には靴の踵部を潰して履く事を前提にした靴踵部の月型芯設計を行った事である。
【0060】
次に、本例で使用する履き口クッションについて図5を参照して詳述する。
履き口クッションにはその長さLc、その長さ区間の「強さ」、「硬さ」及び「大きさ」(太さ)等により、履き口部に形成する「くびれ」と同時に「踏み込み時の折れ線」を確実に導入する。
【0061】
作業靴の履き口上部には、図1に示すように履き口クッション2が挿入されている。履き口クッション2は、図5に示すように、靴の踵の後部から左右前方に向けて靴の履き口の形状に合わせた形状としてあり、その長さは靴の後部から左右前方に向けて靴の履き口の略半分程度迄延長した長さLc/2の倍の長さLc、長さは略150mm〜200mm程度、実際的には図6に示す「踏み込み時の折れ線」1Bの延長上で履き口クッションとの交点(又は交点の近傍)が履き口クッションの長さになる事が望ましい。
またその幅Hcは約15mm〜19mm程度、望ましくは約16mm〜18mm、厚さは略7mm〜15mm程度、望ましくは約8mm〜12mm程度が好ましい。
【0062】
本発明の靴は履き口部にくびれ10(図1参照)が設定される。くびれ10はその部分が「両隣より低い」事により、最初の「踏み込み時の折れ線」を導入する。
【0063】
以上説明した月型芯、履き口クッション、くびれからなる作業靴の踵構造
月型芯の底面は表材(人工皮革、等)、裏材、中底及び月型芯と共に縫付けられる事により、確りと固定されるようになっている(図2、図3参照)。
月型芯は縫い付ける事により、異なる人が、異なる足サイズ、足の形状で同一の靴の踵を潰して履いても、「踏み込み時の折れ線」が左右均等に折れ線の増減ができる事をより確実にするために月型芯を固定し、靴を左右かたよって(片方の足で)履く場合があっても、この折れ線の恒久化を防ぎ、次の人が正常に履く事によって是正できるように構成してある。
【0064】
履き口部のくびれ、月型芯、履き口クッションの動作
実際に靴を履く時の、履き口に形成したくびれ(従来品はこのようではない)、履き口クッション、月型芯等の動作を図6に示す月型芯と履き口クッションの関係図を基に説明する。
踵部を踏みつけて靴を履くときには、まず、履き口(別呼称アッパー部)のくびれている部署10が最初に折り曲げられ、同時に、履き口上で、強度差のある弱い点から、つまり履き口クッション2の両端から折り曲げられる。次に月型芯1が存在しないブランクスペース11(少なくとも月型芯上部に30°、又は靴の踵部の形状によりそれに合致させる様な形状のカット部がありそれにより履き口クッションから直接月型芯には折れ曲がりが続かない。)、つまり表材(人口皮革)と裏材のみで構成される部分が折り曲げられる。その次にスキ加工された月型芯1が導入部として曲げられ、最後に月型芯1の本体の折り曲げに入る。
【0065】
本発明に係る靴は、上述したように意図的に「踏み込み時の折れ線を」潜在的に決め、不特定多数の人が履いても、元の形状に復元し易い踵構造を持つ作業靴である。これは異なる人が、異なる足サイズ、足の形状で同一の靴の踵を潰して履いても「踏み込み時の折れ線」が左右均等に折れ線の増減ができる事をより確実にするために月型芯を固定し、靴を左右かたよって(片方の足で)履く場合があっても、この折れ線の恒久化を防ぎ、次の人が正常に履く事によって「踏み込み時の折れ線」が矯正できる踵部月型芯の形状設計、踵部の構造及び組み立て方を導入した踵部を持つ作業靴である。
【0066】
上記のように構成された作業靴は、踵部を踏んだ状態で靴を履くと、月型芯の折れ線に沿って月型芯が折れ曲がるが、この踏み付けを開放すると、月型芯はこの折れ線から立ち上がり(非吸水性かつ弾性の月型芯により)、靴の踵部は正常状態に復元する事になる。即ち月型芯の縫い付けにより、「繰り返し荷重」対し強度補強された月型芯は踵を潰して履いた場合、絶えず踵の復元を強力に推進できる場所で(折り曲げ線が絶えず確保されている)折り曲げられ、復元する作業を繰り返す事を確実に行える。
【0067】
図10は靴の洗濯条件を示す図であり、図11は“作業靴踵部の製法とそれらに対応する効果の比較”について、図12は靴に対し靴の着脱、一連の洗濯工程後の踵部の復元性について評価値をグラフで表示した。試験に供した靴は本法と従来法による靴を各々29足使用した。
図12に示す、一連の洗濯工程後の踵部の復元性についての定義は下記に示す。
100% 踵は垂直に立っており、踏みつけても直ぐに元にもどる状態である。 履き口のR形状も確保され、着脱にも問題が無い。
75% 踵部や履き口は折れたり、潰れたりするが10分以内に復元する。
50% 折れたり、潰れたりする踵部は10分以上の時間で復元する。
25% 折れたり、潰れたりする踵部が復元しない状態。
図12(グラフ)から本法による踵の復元性が確認できる。さらに従来法では160時間で75%、200時間でほぼ59%の復元性に対し、本法では240時間でも劣化の確認には至っていない。
図13には靴の着脱及び一連の洗濯工程後の靴の清浄性について述べる。
評価するための主な条件、効果、等はそれぞれ図10及び図11の“洗濯を含む作業靴への主な負荷要因”及び“作業靴踵部の製法とそれらに対応する効果の比較”に示す。試験に供した靴は本法と従来法による靴を各々29足使用した。
図13に示す一連の洗濯工程後の靴の清浄性についての定義は下記に示す。
100% 靴表面に汚れが付着してなく、内装の表面も清浄性を保っている。
75% 2mの距離からの目視で、靴表面に汚れが付着してなく、内装の表面も清 浄性を保っている。
50% 汚れがあるが5mの距離からの目視で、靴表面に汚れが付着してなく、内 装の表面も清浄性を保っている。
25% 汚れが随所にあり7m以上離れた距離から確認できる。
図13(グラフ)より本法による靴は清浄性を復元でき、かつ従来法に比べ本法による靴がより良い洗浄性を得ることができている。
【0068】
下記に洗濯後の除染性の確認について述べる。除染性については、実際にその作業の前後で着脱した靴からの測定用試料作成は本試験評価では、放射性物質等の管理上の問題から困難なため、下記に示す簡易的な方法で行なった。
試験法はJISZ−4507(1998)放射性物質で汚染された表面除染─除染の容易性の試験及び評価法─の試験方法Aを採用した。
試験片は下記要領で作成した。新旧それぞれの靴に対して10回洗濯を行い、その靴の甲部から直径50mmの試験片を作成した。
その結果、耐汚染指数として下記を得た。参考として記す。
評価項目 │ 靴の種類 │ 従来法による靴 │ 本法による靴 耐汚染指数 │ │ 0.07 │ 0.16
【0069】
本法において、洗濯時に靴内部の開口率を向上させる靴の構造設計が踵潰れの復元性を導き、それが洗濯性能を確保し、靴の鋸歯状凹凸部等の塵埃、ゴミ等に付着する放射性物質等を排斥することにより靴の除染性の向上につながる。
本法では課題とした改善事項に併行してそれによる靴の他要素による履き心地に劣化の有無を確認するためにフィールドサーベイ(現地での実際の着用試験)を行なった。試験に供した靴は本法と従来法による靴を各々29足使用した。“足に合った靴”とは、「指の付け根部分(ボールジョイント)がピッタリしており、指先が自由に動き(長さ、幅にゆとりがあり)、土踏まず部が確りと支えられて足の線(アーチライン)に良く合い、踵も十分に安定している事」である。
聴き取り調査は従来靴との比較に加え、上記に示す“足にあった靴”を下記に示すような優劣の定義を展開し、着用者によってそれらを念頭に適宜聴き取り調査を行なった。
【0070】
【表1】
【0071】
図14に本法による靴のフィールドサーベイの結果を示す。
本サーベイでは新旧それぞれ29足の靴を不特定多数の人が着用するため、のべ107名の被験者から聴き取り調査を行なった。
その結果、87%(93/107 フィールドサーベイの中の“甲当たりの改善”12%を含む)の着用者が改善を評価し、“変わらない”を含めると98%の着用者が本法による製品を従来品と比較して満足していることが判る。
本アンケートから判明することは踵潰しに対応するために行なった踵部に主眼をおいた靴のアッパーデザインが目的(洗濯性の改善、等)の達成と併行して他の要素において履き心地を損なっていない事である。むしろ、この程度のマイナスポイント(2/107:2%)はアンケートの誤差の範囲と考えても差し支えないと考えることができ、さらに本件(靴)の場合は既製靴の着用に加え、被験者それぞれの足の3次元的形状、大きさ、等を考慮すれば全体的には多要素の履き心地を損なうことなく開発課題を達成していると判断できる。
【0072】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した例に限定する事無く、同様の機能を達成できる他の構造等を使用する事ができる事は当然である。さらに、本発明は上記実施形態に限定する事無く、例えば作業靴の踵部の表材(外革)もできるだけ弾力に富んだ材料を使用する事で、月型芯の復元機能と合わせて一段と復元機能の高い踵とする事ができる。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱する事無く、他のいかなる形態でも実施する事ができる。そのため前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明による作業靴は、種々の作業現場で使用する事ができるが、特に原子力発電所または核燃料施設等での作業靴として利用可能性が大である。併せて業務上靴の踵を潰して履く事の多い業務で、例えば引越し、介護等靴の履き脱ぎが多い作業者用安全靴、作業靴、靴、等の履物に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の作業靴の斜視図である。
【図2】同作業靴の踵部の断面図である。
【図3】踵部巻き縫いの平面図である。
【図4】本実施例に係る月型芯の平面図である。
【図5】同履き口クッションの平面図である。・
【図6】月型芯と履き口クッションとを組み合わせた平面図である。
【図7】月型芯の他の例を示す平面図である。
【図8】月型芯の他の例を示す平面図である。
【図9】踵部が「鋸歯状の凹凸(ギザギザ)」状態に変形した状態を示す図である。
【図10】靴の洗濯条件を示す図である。
【図11】本発明に係る製品と、従来製品との比較図である。
【図12】本発明に係る製品と、従来製品との比較グラフである。
【図13】靴に対し靴の着脱、一連の洗濯工程後の靴の清浄性についての評価値を示すグラフである。
【図14】フィールドサーベイの結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
1 月型芯
2 履き口クッション
3 裏材
4 表材
5 中底
7 ミッドソール
8 アウトソール
9 スキ
11 ブランクスペース
1A 折り代
1B 踏み込み時の折れ線
M 踏み込み時の折れ線の長さ
【技術分野】
【0001】
本発明は安全で衛生的な靴(以下、作業靴という)の踵構造およびそれを使用した作業靴に関するものであり、さらに詳細には、靴の踵部を一時的に踏んだり、踵部に集中的(例えば、一連の洗濯工程)に負荷が掛かった場合、それらの負荷を除去した際に、靴の踵部が速やかに正常状態に復元する作業靴の踵構造および作業靴に関するものである。本発明は、特に度々靴を洗濯(以下、洗濯とは洗濯その事自体及び/又は一連の洗濯工程を意味する)する必要のある原子力発電所または核燃料施設等で使用する作業靴として好適である。
【背景技術】
【0002】
従来から公知の作業靴は、踵を踏みつけて履くことを想定しておらず、このため踵を踏みつけて履く事を防止するための構造を有する靴が多数提案されている(特許文献1、2等)。
【0003】
【特許文献1】実開昭63−103302号公報
【特許文献2】特開2004−321352
【0004】
しかしながら、上記従来の常識とは正反対で、踵部を一時的に踏みつけて履く事を、結果として一つの使用形態とした作業靴が存在している。この作業靴は原子力発電所または核燃料施設用作業靴であり、以下に詳細に述べる理由により踵部を踏みつけて履くことが多い。
【0005】
従来の原子力発電所または核燃料施設用作業靴は、日本工業標準JISZ−4811(放射性汚染防護用作業靴)及びJIST−8101(安全靴)(以下、JISZ−4811及び/又はJIST−8101と称す。)に規定されている放射性汚染防護用作業靴および安全靴を基準に、洗濯性を考慮し、革から人工皮革に変更されている。
原子力発電所または核燃料施設用作業靴は一つの靴を不特定多数の人が履く事等から、種々の理由で踵の潰れる事が多かった。踵部の潰れは「着用の問題」と、原子力発電所または核燃料施設特有の課題である靴の「メンテナンス」である浄化と除染用のための一連の洗濯工程での踵潰しがある。
洗濯の必要性と、それに相反するが洗濯は踵潰しの主要因であり、その踵漬しが起因で洗濯時の清浄性、除染性に苦慮し、それらに対応する適切な靴は無かった。
現在の作業靴は、洗濯に対する材質選択には考慮を払っているが、一般的に踵潰し防止に主眼があり、原子力発電所または核燃料施設の特殊環境に対応できる「踵潰し」を前提とし、塵挨、放射性物質等を容易に除去できる構造を持った作業靴の存在は無かった。即ち、従来からの作業靴には、踵部を踏みつけて履くための特別な踵構造を有したものは無く、使用上、様々な問題点があった。
【0006】
ここで従来の原子力発電所または核燃料施設用作業靴の問題点をさらに詳述する。
原子力発電所または核燃料施設等で使用する作業靴は、不特定多数の人が同じ靴を使用
する事が行われている。このため、例えば足の大きい作業者(人)は踵を踏みつけながら靴を履かざるを得ない。
さらに、原子力発電所または核燃料施設では一つの靴を不特定多数の人が履き、それらを洗濯して「再使用」している。洗濯は頻繁(ほぼ毎月)に行われるため靴の劣化、損傷、破損等が激しい。洗濯は一度に全重量が83.6Kg程度の靴(約110足に相当する)が約60°C程度の温度下で22分間行われている。
【0007】
さらに、原子力発電所または核燃料施設の放射性物質管理区域では個人個人に対して特定の靴は無く、洗濯後の靴の再利用を繰り返すために個人個人の足に合った馴染み性も無く、使用する度にサイズ不一致等、種々の理由で、踵を潰して履く人(場合)もある事は避けられない。
【0008】
実際に靴を着用する際の順を分析すると、特にサイズ不一致の場合、人は半履き状態で「ケンケン」してツマ先のみの着用で助走し、まず足入れを行ってから、靴をきちんと履く場合が少なくない。このような場合(人)は踵を一旦半潰し後にきちんと靴を着用する場合もある。この間に大抵の場合は踵が潰されている。繰り返される程に踵潰しは促進される。それによって靴の踵は踵部の中心線に対して踵部下部から左右斜め上方に約45°付近に「踏み込む時の折れ線」が発生する(当社、従来製品)。「踏み込み時の折れ線」が都度、違った位置に発生した場合は、折れ線同士が交差し、そこから膨らみが発生したり、履いて違和感を感じたり、月型芯、裏材等に裂傷、亀裂、摩滅、等が発生したり、強いては折れ線の「交点」から亀裂が発生し破断に到る事もある。場合によっては、踵部が変形しそれが恒久化する事も少なくない。
【0009】
考慮すべき事はこれまでの靴は「踵潰し」を前提に靴の設計がなされておらず、潰れる場合は、潰れ方がその都度、靴着用者の足の形状、着用法、履き癖、等による履き方に左右され、靴踵部の履き口周囲に鋸歯状の凹凸(ギザギザ)が形成される事である(図9参照)。このように不特定多数の人が靴の踵を潰して履く(鋸歯状のギザギザの発生)事により、靴を履く際に踵部に「踏み込む時の折れ線」が多数発生したり、踵部が前方に倒れたりして当該部に放射性物質等が付着したままになる事もある。この事は同時に洗濯がしにくい等の問題が発生する。さらに靴踵部の洗濯による洗浄性、除染性の妨げになっている。
【0010】
一方原子力発電所または核燃料施設で使用する作業靴の踵部(根本的には月型芯)は、挨、ゴミ等と共に放射性物質等の付着も除去する必要があるため「頻繁(ほぼ毎月)」に洗濯する事になっている。この洗濯は通常の汚れを落とす洗濯の他、靴の凹部に付着する「放射性物質等の除去」も行うため、靴全体は、洗濯が容易なように可能な限り余計な凹凸の無い形状として製作されねばならない。加えて、原子力発電所または核燃料施設では靴を「頻繁に、大量に、機械的に洗濯するために、結果として丁寧に洗濯する事は困難」である。また、靴の踵部も、仮に踏みつけて履いた後でも、極力凹部の少ない方が良いため、踵部が履く前の状態に復元する事が望ましい。つまり、踵部の45°方向の「踏み込み時の折れ線」への対応が必要である。
【0011】
大量の靴の一連の洗濯工程はそれ自体が靴を損傷する行為である。一連の洗濯工程自体が靴の構成材料に対し水分の吸脱水を繰り返し、洗濯終了後には濡れた重量増の靴を積上げ、この際靴(複数)は自重で踵部へ負荷を与え、濡れた状態での踵潰しが一定時間継続される。はなはだしい場合は踵部が擬似的に塑性変形化する。
靴の洗濯では大量の靴が同時に、機械的に浮遊されながら洗濯され、靴への負荷が大きい。大量洗濯では浮遊中に靴同士がぶつかったり、擦れたり、特定の一方向に偏重が掛かったり「踵部」への負荷が大きく、それによる変形も大きかった。
【0012】
踵部には洗濯工程の前後でも、種々の方向から負荷がかかり、踵部は中底方向へ変形したり、「鋸歯状の凹凸(ギザギザ)が形成」される(図9参照)。これら、変形や凹凸が繰り返されると、それら損傷は洗濯毎に同一箇所が一層強調される事が判っている。
さらに、直後には「50°Cの高温」での「強制乾燥工程」があり靴の構成材には負荷が連続的に多様な方向から、かつ多様な物理・化学的な(機械的な力、濡れの現象対策、熱応力、複雑な物理・化学的な応力)負荷が、踵部の「垂直方向に座屈応力」として作用する。
【0013】
従って、一連の洗濯工程において靴が座屈変形に対応するには「吸水性、耐熱性等に対応」できる材料で、かつその材料で「座屈しない部品設計」を行う必要がある。換言すると踵部に対する垂直荷重、つまり座屈荷重への対応が必要になる。総合的には、材料の選択と合わせ、踵部の強化に関連する周辺製靴部品の相関的な設計が必要とされている。
靴の変形と一連の洗濯工程は因果関係にあり、それらを両立させる靴の統合的な設計が必要である。
【0014】
図10に靴へ作用する“一連の洗濯工程を含む作業靴への主な負荷要因”を示す。
【0015】
踵部を踏みつけて靴を履いた場合、折れ曲がった踵部の凹部に放射性汚染物質等が付着し易くなりそれらを洗濯したとしても、放射汚染物質を完全に除去する事が難しい。靴を「潰して履く」事と「頻繁な洗濯」により、靴の踵部自体が軟化したり、靴の踵部に鋸歯状の凹凸が固定したりする。さらに、月型芯の強度を劣化させる事になり、靴の耐久性でも問題があり長寿命の靴が求められていた。
【0016】
ここで踵部に挿入する従来型月型芯の具体的問題点について説明する。
(1)材料(月型芯)について
踵部においては、一連の洗濯工程に関しそれに対応できる材料の使用が重要である。従来は一連の洗濯工程に対し吸水性、強制乾燥に対する耐熱性、様々な方向(45°:踵踏み付け時、垂直:洗濯時の積上げ、熱応力、等)及び多様なエネルギー負荷に対し弾性を有する材料が適切に選択使用されていなかった。
(2)踵部の復元と除染について
通常一人一人が専用の靴を履くのが普通であるが、原子力発電所または核燃料施設では種々の理由により共用化し、頻繁な洗濯を行っている。他方、それに相反するように洗濯を困難にしている踵を潰した靴の着用の必然性がある。従来このような問題に応える靴は無く、それぞれの不便の中で我慢して着用に到っているのが現実である。
(3)踵部の仕様(本来あるべき性能、品質等)
また当該施設で着用する作業靴の規格としてJISZ−4811(放射性汚染防護用作業靴)に規定の、4の4.1の(7)には“作業靴の平面は平滑で、不必要な凹凸がなく、除染しやすい構造であること”とされているが十分に対応できる作業靴は無かった。
【0017】
上記問題点から抽出される課題を整理すると下記のようになる。
1.被洗濯品(靴)の状態、洗濯条件、等によらず、付着した、塵、挨、等と共に放射性物質等を容易に「除染」できること。
2.そのために靴踵部が前倒しになったり或いは鋸歯状の凹凸の無い靴が必要であること。
3.多様な負荷の種類、負荷の方向に対し、かつ「頻繁な洗濯」に耐える丈夫な靴であること。
4.そのため、踵が倒れて無く、立っている元の状態での洗濯が望ましい。
5.そのために、「踵を潰して履いた場合でも」、脱いだ後に靴の踵部に鋸歯上の凹凸の無い靴が必要であること。
6.そのために平易な形で折り曲げられ、復元する踵部が必要であること。
7.靴は洗濯性の向上に併せ、次に履く人のために、踵が潰された場合でも、元に復元している事が望ましいこと。
8.上記の要求、問題点を改善した「放射性物質等を扱う原子力発電所または核燃料施設内で使用する適切な作業靴」が求められていること。
以上のように現在では、特に原子力発電所または核燃料用各施設で使用する作業靴において、「踵潰し、頻繁な洗濯、効果的な洗濯を前提とした作業靴」が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、前述したような原子力発電所または核燃料施設固有の諸問題点に対し対策を施した靴を提供することである。つまり、上記問題に対し、「発想を転換」し、一時的な踵潰し、機械・熱的等の重負荷な一連の洗濯工程に耐える靴の製作を前提にした靴を開発する事である。それによって踵の前倒しになる変形や鋸歯状の凹凸(ギザギザ)等を削減し、その効果によって洗浄性、「強いては除染性」を向上させる事を主な目的としている。
そのため、靴の形状維持により、靴の踵部の中底方向に閉じた形状や鋸歯状のギザギザした凹凸を少なくし、「靴踵部の洗濯性」の向上を図り、特に原子力発電所または核燃料施設で一定期間の作業後に作業靴に付着している放射性物質等の「除染向上」を大きな狙いとしている。
【0019】
そこで本発明は、原子力発電所または核燃料施設で使用する作業靴において、靴を共用する事を前提とし、踵部を踏みつけて使用した後及び靴への重負荷による繰り返し洗濯後でも、直ちに、靴の踵部が正常状態に復元する踵構造を持つ作業靴を提案する事により、踵潰れが無い事による「靴の履き易さ」、「洗濯性能」、「衛生上の品質」、「靴の見映え」、等を向上・実現し、最終的には除染性を改善する事により、従来の作業靴の問題点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このため、本考案が採用した技術解決手段は、作業靴の踵部の構造であって、月型芯の形状及び踵部の後部から左右に掛けて弾力性を有し、かつ所定の幅と厚さを有する月型芯を挿入すると共に、靴の履き口上部の周囲には弾力性を有し、かつ所定の長さ、幅及び厚さを有する履きロクッションを挿入し、さらに、履き口部の「踏み込み時の折れ線」上にくびれを形成した履き口を有する作業靴の踵構造である。
月型芯は非吸水性で弾性を有する材料を用い、過酷な洗濯工程、洗濯後の積上げ等の処理工程、強制乾燥工程、等に対応できる素材を選定し、繰り返し折り曲げや座屈変形対応を主とした部品設計を行う。(従来、月型芯の機能は踵の保護のみで、強度設計は必要無かった。)
【0021】
さらに、適切な素材選定の基、効果的に、長期間使用するために「踏み込み時の折り線」に準拠した各部品間の相関的関係に基いて月型芯の形状を決める。
それぞれ既知である、それぞれの靴の部品「履き口(アッパーの履き口)、履き口クッション及び月型芯」、部品の形状、組立て方(巻き縫い工程等)及び物理現象「踵の踏み込み時の折れ線の角度50°や垂直(90°近傍)に係る負荷及び靴の一連の洗濯工程時や強制乾燥時に掛かる熱応力等への対応」等原子力発電所または核燃料施設での特殊な用途に対応させるためそれぞれ部品間の踵潰しに掛かる「相互関係」を把握し、それに対応した「相関設計(月型芯、トップライン、履き口クッション、等の統合的設計)」、「折れ線(50°方向)から導かれる複数部品間の関係、複数部品間の製作工程法(巻縫い、等)」及び「50°及び90°方向の負荷対策として同時にそれらの設計を行なう複合部品設計(一つの部品に複数の技術的性能上の機能を含む部品設計)としての併合的な設計」を行い、それらの確実化のために各構成部品においても各々機能を付加する事によって、品質・機能維持の確かさの向上を計る設計手順を提案する。
例えば、月型芯の幅、履き口クッション等諸寸法の決定に複数部品から一つの設計値を算出することである。
【0022】
本発明では既設部品の一つ一つに対しても、従来の靴設計に対し、新規に複数の機能を設定している。
履き口部には履き口クッションの交点に対応する部署に「くびれ(図1中の符号10)」を設定する。つまり、くびれはその部署が「両隣より低い」事により、最初の「踏み込み時の折れ線」を導入する。
履き口、履き口部の「くびれ」の程度は、踵の潰し易さと復元性を考慮した設計を行う。本事項について、従来は必要の無かった、新規概念及び「相関設計」から導かれる「機能部品設計(一つの部品に構造材等の目的の他に、固有の技術的性能上の機能を保有させる部品設計)」である。
【0023】
履き口クッションについても、同様に足を保護する役目と併せて「踏み込み時の折れ線」との交点による長さ設定で、「踏み込み時の折れ線」の初期導入を導くための「機能部品設計」を行う。
履き口クッションにはその長さ、その長さ区間の「強さ」、「硬さ」及び「大きさ」(太さ)等強度差の設定により、「くびれ」と同時に「踏み込み時の折れ線」を確実に導入する。
月型芯単部品に対し月型芯そのものの役割と併せて「スキ」(後述する)及び「ブランクスペース」(後述する)によるきちんとした「踏み込み時の折れ線」の初期導入の促進を確実にするため、従来からの各々の部品の役割に併せて、本発明に沿って、複数の役割を追加するためにそれぞれの部品に「機能部品設計」を行う。
【0024】
月型芯には従来の機能に併せ、「スキ」及び「ブランクスペース」を形成することにより月型芯上できちんと「踏み込み時の折れ線」を初期及び第2次導入ラインに継続して行う。ブランクスペースは月型芯に0〜30°の角度、又は靴の踵部の形状によりそれに合致させる様な形状で設定する事による。
これらは、部品の相関設計により、「踏み込み時の折れ線」の確実化を推進する。そのために、月型芯を主体に各部品に「機能部品設計」を行う。これらは各部品への「新規機能の付与」である。
【0025】
以下、月型芯および履きロクッションの特徴を説明する。
月型芯の大きさ:踏み込み時の折れ線/折り代/復元性向上
月型芯の大きさ、形状等については図4及び6に基づいて後述する。
本発明の主要事項の一つである踵の前方への潰れ対策(人の履き込み及び洗濯工程前後の両方がある。)について説明する。踵潰しを前提に、それを相関的に設計するために、関連する部品アッパーの腰部、月型芯及び履きロクッションを同時に並列し、それらの相関関係を把握し、対応を施す。
【0026】
月型芯の諸寸法は図4に示す月型芯と履きロクッションの相関図によって設計上の各寸法が導かれる。月型芯の下部中央から上方へおおよそ「左右50°」で延伸した線が、踵を潰して履いた場合の「踏み込み時の折れ線」になる。50°の角度は折れ曲がり易く、かつ復元し易い状況を設定する。「踏み込み時の折れ線」の角度は踵を潰して履いた場合、若干広めが好ましい。丁度の角度より、若干広めに角度設定した方が折れ曲がり易い。靴の踵を潰して履いた後に、靴を脱ぐ際、またはケンケン後にきちんと靴を履く場合においても若干広めの方が好ましい。ほんの少し広い角度設定が鋭角な折れ曲がりを避けることができ、折れ曲がり部の長寿命化を図ることが可能となる。従って折れ曲がり線は中央値(45°)よりも若干広めの50°前後が望ましい。また、踏み込み時の折れ線は必ずしも左右対象である必要はなく、月型芯の前方への倒れ込み状況を設定するために左右の折れ線を非対象に決定することもできる。
【0027】
「踏み込み時の折れ線」の延長上に履きロクッションがあり、それとの「交点」が履き口クッションの長さになる。このように「踏み込み時の折れ線」の延長上に履き口クッションの端部を略一致させることで「踏み込み時の折れ線」を意図的かつ能動的に折れ曲がり線に誘導させることができる。また、「踏み込み時の折れ線」の延長上に靴の履き口に形成する「くびれ」を略一致させることで、踵部の前方への倒れ込みをより一層容易とすることができる。
【0028】
また、月型芯に形成される「踏み込み時の折れ線」の長さ(図4中のM参照)は少なくとも20mm以上であることが望ましく、また「踏み込み時の折れ線」の両外側に少なくとも250mm2 以上の「折り代」の面積を確保できる月型芯が好ましい。前記長さは、長い程折り曲げにくいが、踵の復元力に寄与する。このため月型芯に形成する折れ線は、踵の復元力の状況に応じて、総合的には「折り代」、ブランクスペース(後述する)、月型芯の繰り返し曲げ運動を考慮して、月型芯の設計時に決定することになる。
【0029】
従来の月型芯は踵保護、等のために履き易さ、等に重点を置かれて設計されてきた。表革と裏材の中にあって、踵や靴を保護するが、異物として足が感じないように、工夫・発明がされてきた。
本発明では、月型芯本来の機能は残しながら、さらに潰れた踵の「復元性向上」の「機能」を付与し、上述法により適切な月型芯の大きさと形を決定する。
【0030】
前記月型芯の上面は左右の両端に向かって、少なくとも0°以上〜30°以下の範囲で下方に向かって傾斜している事「ブランクスペース(図4中の符号11で示す範囲)又は靴の踵部の形状によりそれに合致させる様な形状を有すること)を特徴とする作業靴の踵構造である。この傾斜カットにより、履き口クッションとの間にブランクスペースが設定される。これら(左右)ブランクスペースは最初に履き口のくびれ及び履き口クッションが「踏み込み時の折れ線」に沿って折れ曲がりることを意図的に誘起し、折り曲げを引き続き継続させる場合、いきなり月型芯に折り曲げを行わず、その間迄の導入部として「第2次的折れ曲げの導入部」として機能を果たす事ができる。また、ブランクスペースは月型芯に曲げ作用が開始される迄の緩衝としての機能を果たす。従って、ブランクスペースの形状、大きさの決定は、前述した「踏み込み時の折れ線」の長さ、折り代などを考慮しながら決定することが望ましい。
【0031】
月型芯には用途等により「スキ」(図4中、符号9参照)を形成する事は周知の技術である。この「スキ」は通常、表革と裏材の間に挿入される月型芯に加工され、着用者及び靴の踵の保護にあたる事を目的としている。そのため月型芯の大きさ、形状、等はそれらを設計要因として決めている。図4に月型芯にスキを形成した平面図と断面図を示す。
本発明では「スキ」は、従来の「スキ」の目的に併せ、さらに「踏み込み時の折れ線」を能動的に促進させる機能を有している。即ち、「第三の折り曲げ線導入部」としての機能を付与している。具体的にはアッパー履き口のくびれと同時に、履き口クッションの両端で最初に折り曲げ部が潜在的に決定され、次いで上述「ブランクスペース」が第二の折り曲げ線導入の役割を果たし、最終的に月型芯の「スキ」が月型芯の「踏み込み時の折れ曲げ線」の最終的導入を確実にする。
【0032】
なお、月型芯は図7、図8に示すような形状でも同様な効果を得る事ができる。
図7に示すものは月型芯の下面に図示のような切欠を入れた形状であり、図8は月型芯の下端を中底側に折り曲げるための折り曲げ代を形成したものである。さらに月型芯の形状は図4、7、8等にこだわる必要はなく、靴の踵形状に合致させ中央部は高く、両端は絞り込む形状でも可能である。また、図示せぬ形状でも、本発明の目的を達成するための機能を有する月型芯形状であれば種々の形状を採用することもできる。
【0033】
月型芯の材質
本発明に係る月型芯は靴の頻繁な一連の洗濯工程による強度劣化を防ぐために非吸水性材料が適している。具体的には、前記月型芯1は、靴着用法及びメンテナンス(洗濯)から、形状復元機能に優れた材料、例えば熱可塑性樹脂、加硫ゴム、塩化ビニール、合成樹脂(アクリル、エポキシ、塩化ビニール、ポリウレタン、天然皮革、編布、等)、等、非吸水性で弾性に富んだ材料が適している。また月型芯は着用時には略50°方向に繰り返し曲げの負荷が、そして靴を積み上げる際は月型芯の垂直な方向に負荷が作用する。即ち、平面状の月型芯には繰り返し折り曲げ荷重が、立てた場合には座屈荷重等が作用する。月型芯は従来、靴の形状維持等の目的に使用されており、このような要求はなかった。このような条件を満たすために、月型芯の材料は非吸水性で、さらに一定の繰り返し曲げ荷重および座屈荷重に対応する材料を使用することが望ましい。
【0034】
月型芯の厚さに関し、本発明では履き心地としての足へのフィット性及び踵が潰れた場合の復元性の大別して2つの役割がある。
第1番目に、特に月型芯の厚さはフィット性への影響は大きいが0.5〜2.5mm程度は足に対しても異物感覚が無く、望ましくは1.5〜2.0mm程度が最適である。月型芯の厚さは他の製靴上の諸部品や木型との関係が重要であり一概する事は困難で、個別設計による。
第2番目に、本発明では月型芯は踵を潰して履いた後の復元及び靴を洗濯した後の復元性が必要とされている。特に一連の洗濯工程は過酷な条件で繰り返されるため、短時間での復元が必要とされる踵部の補強板として使用され、従来とは異質の特性を要求される月型芯の材質の選定は重要である。一連の洗濯工程の条件からは主として非吸水性で一定の弾性および剛性を有する材料が適している。
【0035】
月型芯全体のまとめ
通常は踵部を潰して履く事は、習慣として不謹慎とされ、実際踵を踏み潰して履く事は靴の衛生上及び安全上、特に作業及び安全靴としては、決して好ましい履き方では無かった。本発明では、このような状況を鑑み、原子力発電所または核燃料施設特有の使用環境及び靴踵部のメンテナンスを優先して、従来の習慣とは異なる、靴着用時およびメンテナンス時には、一時的に靴の踵部を潰して履く事を前提にした靴踵部の月型芯設計を行った事である。
【0036】
履き口クッションの材料
前記履き口クッションは、少なくとも合成樹脂、天然皮革、編布のいずれか一つを使用する。
履き口クッションの長さおよび強度差
履き口クッションの長さは、従来は足首のやや半周前後に相当する長さである。本例では、従来法と併せ「踏み込み時の折れ線」を確実におよび強調するために、且つ足を保護するために足首の1/2以上の周長で「踏み込み時の折れ線」との交点を考慮して決定する。履き口部に設定する「踏み込み時の折れ線」の初期曲げを確実にするために、かつ、相関設計から履き口クッションの端部と「くびれ」とが同一部所となるように、履き口クッションの長さを設定する。
さらに、履き口クッションは、他の履き口部分と比較し、相対的に「強度差」(或は硬度、等において)を付けることに事により「踏み込み時の折れ線」の位置が潜在的に決定され、履き口上での折れ曲がり点を潜在的に特定する。ここで、強度差は「踏み込み時の折れ線」を円滑且つ能動的に行うための分岐点でもある。
【0037】
洗濯工程前後の積上げによる踵部に作用する座屈荷重について
原子力発電所または核燃料施設用作業靴のメンテナンス(洗濯)と月型芯への影響
靴のメンテナンス:靴の洗濯
原子力発電所または核燃料施設用作業靴に使用される月型芯設計の主要要因の一つに一連の洗濯工程を考慮した月型芯の厚さと高さを決める事である。本洗濯は靴には負担の大きい洗濯法で、一度に83.6Kg前後の靴を60°Cの温度で洗濯する。洗濯後の靴は積上げ等により靴の踵に複雑な負荷(主として踵部への垂直方向な座屈)が作用し、その直後に「強制乾燥」(50°C)される。プロセスを鳥瞰すると、一連の洗濯工程での踵部の前倒れ、変形、鋸歯状の凹凸は洗濯の効率を下げている。その主因は洗濯後の靴の積上げ時に発生する垂直方向への荷重であり、結果的には踵芯(つまり、月型芯)への座屈荷重である。それへの対応が必要である。
【0038】
洗濯前後の月型芯は多量の作業靴が積上げられる際、結果として種々の荷重を月型芯に受ける。重量としてはおおよそ83.6Kg、足数に換算するとおおよそ110足に値する。一つ一つの靴は積上げにより、踵の多方向からの荷重を受ける。それがメンテナンス上から起因する、踵潰しの大きな問題である。特に洗濯後の靴は濡れており、つまり多量の水分を含み重量は相対的にさらに重量を増している(おおよそ1.5倍)。重量が増加している上に、踵芯を含む近傍の部品(つまり、月型芯、表革及び裏材)は濡れている事により強度は相対的(対、濡れる前に比較して)に弱体化している。
【0039】
靴のメンテナンス:月型芯の厚さ及び高さ
月型芯の高さは、主として、一連の洗濯工程から起因する踵芯としての、洗濯後の濡れた状態での靴の積上げ時の踵への座屈荷重に耐えるために十分な強度を要する。月型芯の高さは、従って強度を有し、かつ座屈を防止するために中底から履き口クッション迄の「フルの長さ」になる。踵の座屈を防止する上では優先的に決定される要因である。
月型芯は従来靴踵部の形状を維持したり、足踵部の保護が主要目的で、高さ方向の強度設計に関しては、特に問題にはならず、従って必要も無かった。本発明では、しかし原子力発電所または核燃料施設用作業靴の月型芯の用途に合致させるために、月型芯に新たな機能を付与した。
【0040】
月型芯の座屈強度/オイラーの式の適用
月型芯の適切な高さは、その座屈強度を求めるオイラーの式で求める事ができる。荷重を受ける材料(ここでは月型芯を設定)の状態は月型芯が表材(人工皮革)と裏材によって確りと支えられている状態として捉える事ができる。
【0041】
PK=nπ2 (EI/l2 )(Kg)
ここで、PKは座屈荷重(Kg)、nは月型芯の支持法による係数、E は月型芯の弾性係数、Iは断面2次モーメント
そしてlは月型芯の長さである。
上式を変形すれば、
【0042】
【数1】
で求める事ができる。
上式より、下記が導かれる。
月型芯の高さは材料自身の強度に関係なく「I」の値、つまり断面2次モーメントに依存する。次に、nの値、つまり月型芯の保持法に依存する事が判る。月型芯の着用時および一連の洗濯工程の負荷状態を考慮すると、「月型芯の厚さ」は月型芯の全体的な設計に当って、最後に残された、つまり最後の調整役割としての設計要素である。
【0043】
オイラーの式の準用の限界
前述のように座屈荷重は「オイラーの式」から求められる。しかし、月型芯の場合は負荷を受ける状態として、洗濯時、積上げ時、等の温度、熱、水流抵抗、水流の逆流抵抗、靴同士の衝突、等多様な環境の基、負荷の形態、環境、等の経時変化も激しい。
状態によっては、座屈変形と弾性変形の両方の負荷を同時に受ける瞬問もあり、これらが同時進行する事もある。このように月型芯は時々刻々と多様な負荷を受けている。
月型芯には圧縮と引張り荷重が同時に負荷される場合もある。
さらに、オイラーの式では月型芯を支える部材、今回は表材と裏材になるが、これらも温度、吸水による材料の軟化、等の影響で刻々と影響を受け、その支え材としての効力は変化する。
【0044】
月型芯への垂直負荷と踵センターから略50°方向の負荷との両立
一方、本月型芯は弾性材である事が重要である。それは踵芯の垂直に掛かる荷重への対応と同時に、踵センターから略50°方向で踵潰しの際作用する負荷への対応である。本負荷に対して、踵芯(つまり、月型芯)は繰り返し曲げ応力に耐える事が必要である。従って、弾性に富んでいる事は重要である。
垂直方向への荷重はオイラーの式から、月型芯の厚さを求める事はできるが、弾性材を使用するため、実際は座屈以前に弾性変形する事が多い。本月型芯は50°及び90°方向の荷重への両立が必要になる。
本月型芯は、曲げ荷重に対する弾性、座屈荷重に対する剛性、そして液中で洗濯に対応するために非水溶性であることが必要で、結果的には意図的に座屈変形以前に弾性変形を促せるような材料の傾斜設計(弾性と剛性の適切な特性値点)を考慮したことである。
【0045】
オイラーの式準用と経験値
本発明では月型芯の高さは既知(優先条件)であるので(中底表面から履き口クッションの下面)、高さに基づいて、厚さの算出になる。
月型芯の高さがフルの場合、経験的に、実績も合わせ、つまり傾斜設計として、非吸水性でかつ弾性に富んだ化学的材料である合成樹脂、加硫ゴム、等では厚さは1.5mm〜2.0mmが適切な範囲である。
【発明の効果】
【0046】
以上種々述べてきたように本発明によれば、踵の復元能力が高いため、1足の靴を不特定多数の作業者が使用しても、靴の形態を正常状態に維持する事ができる。それにより、靴の洗濯が容易であり、放射性物質等の挨、ゴミ、等を容易に除去する事ができる。踵を踏んで使用しても、踵部の劣化が少ない。
絶えず左右一定の場所で「踏み込み時の折れ線」が繰り返され、足サイズの異なる人が
履いた場合でも、正常(例えば左右均等に)に履けば左右均一に、かつ比例的に「踏み込み時の折れ線」は並行に増減し、潰れた後の復元が容易にできる。
靴を履く際、正常に履かなかった場合(例えば、左右対称で無く、かたよって履いた場合)は、次の人が正常に履けば矯正できる。
さらに表材等と一緒に巻き縫いするために、靴を履く際や歩行時の負荷による月型芯の移動が無くなる。
また、靴の洗濯性も向上した。即ち月型芯及び履き口クッションの作用により踵の復元性が良くなり仮に踵を踏んで靴を履いた後でも、直ちに靴の踵が正常状態に復帰するため踵の潰れた靴は無く、健全な姿をした靴を洗濯する事により、靴の洗濯性が向上し、靴に付着した放射性物質、挨、ゴミ等を容易に除去する事ができる。
踵潰しを前提にした靴の設計により、踵の健全な靴を毎朝履く事が可能になり爽快な気分で一日の仕事を開始できる。
さらに、靴の浄化に加え、併せて「除染性」についても従来靴に比較して向上した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
本発明は、靴の踵の後部から左右に掛けて弾力性を有しかつ所定の幅、高さ及び厚さを有する月型芯を挿入すると共に、靴の履き口上部の周囲には弾力性を有し、かつ所定の長さ、幅及び厚さ有する履き口クッションを挿入し、且つ月型芯には「踏み込み時の折れ線」を形成し、踵部を踏み潰して履くことを前提とした作業靴である。
【実施例】
【0048】
以下に図面を参酌しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の作業靴の斜視図、図2は同作業靴の踵部の断面図、図3は踵部巻き縫いの平面図、図4は月型芯の平面図、図5は履き口クッションの平面図、図6は月型芯と履
き口クッションとの組み合わせ図である。
【0049】
作業靴は、従来公知の安全、作業、靴と同様に図1に示すような形状として形成されている。
そして、この作業靴の踵には従来の作業靴と同様に月型芯1が挿入されている。具体的には、踵部には、図2から図3に示すような月型芯1(詳細は後述する)が裏材3と表材4との間に配置され、また、月型芯1の下端部が靴の中底5に合わせて配置されている。月型芯1は中底5、裏材3、表材4に対して図3に示すように糸6で縫い付けられており、月型芯が表材4、裏材3の問で移動する事の無いように確りと固定されている(月型芯1は月型芯1を被う表材4と裏材3と密着して取り付け固定されている)。
また、靴の履き口には図5に示す形態の履き口クッションが挿入されている。さらに、履き口部には図1中符号10で示すように周囲の履き口よりも一段と下がった「くびれ」が形成されている。なお図中、符号7はミッドソール、8はアウトソールを示す。
【0050】
以下、踵部を構成する「月型芯」、「履き口クッション」、「くびれ」のそれぞれについて詳述する。
以下本例で使用する「月型芯」について図4を参照して詳述すると、図4は月型芯の平面図である。
本例の月型芯1は、従来の月型芯とは異なり、踵を踏みつけて履く靴に採用することを前提としており、踏みつけて履いた後でも、月型芯が正常状態に復元できる機能をもった月型芯として構成されている。
【0051】
図4において、月型芯1は、靴踵の後部から左右前向に向けて靴の履き口の略半分程度まで延長した長さL/2の倍の長さを有し、またその高さは、後部(踵部)が靴の踵の高さと略同程度の高さh1 、前部は後部の約1/2程度の高さh2 として形成されている。月型芯の高さを決定する要因は靴の履き易さ、踵を潰して着用する際の状態(踵の半潰し、踏み込み時の折れ線等)や、洗濯後の靴の積上げ負荷による踵芯への座屈応力、等がある。原子力発電所または核燃料施設用の場合、多くは、踵部の座屈荷重に対応するためには踵高さと同等の高さが望ましい。また、月型芯1は厚さが0.5〜2.5mm程度、望ましくは1.5〜2.0mm程度、月型芯の幅Lは130〜180mm程度であることが好ましい。
また、月型芯1には「踏み込み時の折れ線」1Bが形成されている。月型芯の下部中央から上方へ約「左右50°」で延伸した線が、踵を潰して履いた場合の「踏み込み時の折れ線」1Bになる。そして、「踏み込み時の折れ線」1Bの外側(図4中の斜線部)を折り代1Aとし、この折り代1Aの面積が略250mm2 以上、望ましくは500mm2 であるように構成されている。
【0052】
前記「踏み込み時の折れ線」1Bの角度θは、踵を潰して履いた際の中央値(約45°)より、若干広めが好ましく、若干広めに角度設定した方が月型芯1は「踏み込み時の折れ線」にそって折れ曲がり易いことになる。
なお、踏み込み時の折れ線1Bは必ずしも左右対象の角度である必要はなく、月型芯の前方への倒れ込み状況を設定するために左右の折れ線の角度を非対象(例えば左側は55°、右側は50°等のように)に決定することもできる。
【0053】
また、月型芯1に形成される「踏み込み時の折れ線」の長さM(図4参照)は少なくとも20mm以上であることが望ましい。さらに、「踏み込み時の折れ線」1Bの両外側に形成される「折り代」1Aの面積は少なくとも250mm2 以上であることが望ましい。前記長さMは、長い程折り曲げにくいが、踵の復元力に寄与する。このため月型芯に形成する「踏み込み時の折れ線」1Bは、踵の復元力の状況に応じて、総合的には「折り代」、ブランクスペース(後述する)、月型芯の繰り返し曲げ運動を考慮して、月型芯の設計時に決定することになる。
【0054】
非吸水性で、かつ弾性に富んだ材料からなる月型芯に対し適切な「折り代」の設定は折り代の「繰り返し折れ曲げ運動」上その性能保持、性能の継続性、等において重要な要因になる。「踏み込み時の折れ線」が左右共に1B内にある月型芯は負荷解放後の復元に対し、その特性を発揮する事ができない。また月型芯は「踏み込み時の折れ線」より外側であっても短過ぎると、跳ね返って裏材を破ったり、折れ曲がる方向とは反対側に巻き込まれたりして裏材に負荷をかけ、強いては裏材が破れたり、破断したりする。
「折り代」は大き過ぎたり、形状が不適切な月型芯は足当りを招いたり、コストアップ
の要因になり好ましい事ではない。折り代の面積として適切な値としては、250mm2 以上が性能発揮上適切である。
【0055】
月型芯は非吸水性で弾性を有する材料を用い、過酷な洗濯工程、洗濯後の積上げ等の処理工程、強制乾燥工程、等に対応できる素材を選定する。
本発明に係る月型芯は靴の頻繁な一連の洗濯工程による強度劣化を防ぐために非吸水性材料が適している。具体的には、前記月型芯1は、靴着用法及びメンテナンス(一連の洗濯工程)から、形状復元機能に優れた材料、例えば熱可塑性樹脂、加硫ゴム、塩化ビニール、合成樹脂(アクリル、エポキシ、塩化ビニール、ポリウレタン、天然皮革、編布、等)、等、非吸水性で弾性に富んだ材料が適している。また月型芯は着用時には略50°方向に繰り返し曲げの負荷が、そして靴を積み上げる際は月型芯の垂直な方向に負荷が作用する。このような負荷条件を満たすために、月型芯の材料は非吸水性で、さらに一定の繰り返し曲げ荷重および座屈荷重に対応する材料を使用することが望ましい。
【0056】
月型芯の厚さは履き心地と足へのフィット性及び踵が潰れた場合の復元性から決められる。特に厚さはフィット性への影響は大きいが0.5〜2.5mm程度は足に対しても異物感覚が無く、望ましくは1.5〜2.0mm程度が最適である。
【0057】
月型芯には図4に示すブランクスペース11およびスキ9が形成される。
ブランクスペース11は月型芯1の上部に接する水平線に対して斜め下方に月型芯をカットした際に形成されるスペースである。傾斜カットは0°以上〜30°以下、又は靴の踵部の形状によりそれに合致させる様な形状で設定する事であり、この傾斜カットはそれ自体希有な事では無いが、本法では傾斜カットにより直近に設定される部分(以後、「ブランクスペース」と呼称)が従来の機能に付加して、さらに異なる機能を持つ。この傾斜カットにより、後述する履き口クッションとの問にブランクスペースが設定される。これら(左右)ブランクスペース11は最初に履き口のくびれ及び履き口クッションが「踏み込み時の折れ線」に沿って折れ曲がりることを意図的に誘起する。即ち折り曲げ時において、いきなり月型芯1に折り曲げ作用が働くことがないよう「第2次的折れ曲げの導入部」として機能を果たす。また、ブランクスペース11は月型芯1に曲げ作用が開始される迄の緩衝区域としての機能を果たす。
【0058】
従来より、月型芯には用途等により「スキ」を形成する事は周知の技術である。この「スキ」は図4中のA−A断面に示すように月型芯の周囲を面取りした部分のことである。 本発明では「スキ」は、従来の月型芯のフィット性を求める「スキ」の目的に併せ、さらに「踏み込み時の折れ線」を能動的に促進させる機能を有している。即ち、「第三の折り曲げ線導入部」としての機能を付与している。具体的には図1に示す履き口のくびれ10部の折れ曲がりと同時に、履き口クッションの両端で最初に折り曲げ部が潜在的に決定され、次いで上述「ブランクスペース」11が第二の折り曲げ線導入の役目を果たし、最終的に月型芯の「スキ」9が月型芯の「踏み込み時の折れ曲げ線」1Bの最終的導入を確実にする。
【0059】
月型芯全体のまとめ
通常は踵を潰して履く事は、習慣として不謹慎とされ、実際踵を踏み潰して履く事は靴の衛生上及び安全上、特に作業及び安全靴としては、決して好ましい履き方では無かった。本発明では、このような状況を鑑み、原子力発電所または核燃料施設特有の使用環境及び靴踵部のメンテナンスを優先して、従来の習慣とは異なる、靴着用時およびメンテナンス時には、一時的には靴の踵部を潰して履く事を前提にした靴踵部の月型芯設計を行った事である。
【0060】
次に、本例で使用する履き口クッションについて図5を参照して詳述する。
履き口クッションにはその長さLc、その長さ区間の「強さ」、「硬さ」及び「大きさ」(太さ)等により、履き口部に形成する「くびれ」と同時に「踏み込み時の折れ線」を確実に導入する。
【0061】
作業靴の履き口上部には、図1に示すように履き口クッション2が挿入されている。履き口クッション2は、図5に示すように、靴の踵の後部から左右前方に向けて靴の履き口の形状に合わせた形状としてあり、その長さは靴の後部から左右前方に向けて靴の履き口の略半分程度迄延長した長さLc/2の倍の長さLc、長さは略150mm〜200mm程度、実際的には図6に示す「踏み込み時の折れ線」1Bの延長上で履き口クッションとの交点(又は交点の近傍)が履き口クッションの長さになる事が望ましい。
またその幅Hcは約15mm〜19mm程度、望ましくは約16mm〜18mm、厚さは略7mm〜15mm程度、望ましくは約8mm〜12mm程度が好ましい。
【0062】
本発明の靴は履き口部にくびれ10(図1参照)が設定される。くびれ10はその部分が「両隣より低い」事により、最初の「踏み込み時の折れ線」を導入する。
【0063】
以上説明した月型芯、履き口クッション、くびれからなる作業靴の踵構造
月型芯の底面は表材(人工皮革、等)、裏材、中底及び月型芯と共に縫付けられる事により、確りと固定されるようになっている(図2、図3参照)。
月型芯は縫い付ける事により、異なる人が、異なる足サイズ、足の形状で同一の靴の踵を潰して履いても、「踏み込み時の折れ線」が左右均等に折れ線の増減ができる事をより確実にするために月型芯を固定し、靴を左右かたよって(片方の足で)履く場合があっても、この折れ線の恒久化を防ぎ、次の人が正常に履く事によって是正できるように構成してある。
【0064】
履き口部のくびれ、月型芯、履き口クッションの動作
実際に靴を履く時の、履き口に形成したくびれ(従来品はこのようではない)、履き口クッション、月型芯等の動作を図6に示す月型芯と履き口クッションの関係図を基に説明する。
踵部を踏みつけて靴を履くときには、まず、履き口(別呼称アッパー部)のくびれている部署10が最初に折り曲げられ、同時に、履き口上で、強度差のある弱い点から、つまり履き口クッション2の両端から折り曲げられる。次に月型芯1が存在しないブランクスペース11(少なくとも月型芯上部に30°、又は靴の踵部の形状によりそれに合致させる様な形状のカット部がありそれにより履き口クッションから直接月型芯には折れ曲がりが続かない。)、つまり表材(人口皮革)と裏材のみで構成される部分が折り曲げられる。その次にスキ加工された月型芯1が導入部として曲げられ、最後に月型芯1の本体の折り曲げに入る。
【0065】
本発明に係る靴は、上述したように意図的に「踏み込み時の折れ線を」潜在的に決め、不特定多数の人が履いても、元の形状に復元し易い踵構造を持つ作業靴である。これは異なる人が、異なる足サイズ、足の形状で同一の靴の踵を潰して履いても「踏み込み時の折れ線」が左右均等に折れ線の増減ができる事をより確実にするために月型芯を固定し、靴を左右かたよって(片方の足で)履く場合があっても、この折れ線の恒久化を防ぎ、次の人が正常に履く事によって「踏み込み時の折れ線」が矯正できる踵部月型芯の形状設計、踵部の構造及び組み立て方を導入した踵部を持つ作業靴である。
【0066】
上記のように構成された作業靴は、踵部を踏んだ状態で靴を履くと、月型芯の折れ線に沿って月型芯が折れ曲がるが、この踏み付けを開放すると、月型芯はこの折れ線から立ち上がり(非吸水性かつ弾性の月型芯により)、靴の踵部は正常状態に復元する事になる。即ち月型芯の縫い付けにより、「繰り返し荷重」対し強度補強された月型芯は踵を潰して履いた場合、絶えず踵の復元を強力に推進できる場所で(折り曲げ線が絶えず確保されている)折り曲げられ、復元する作業を繰り返す事を確実に行える。
【0067】
図10は靴の洗濯条件を示す図であり、図11は“作業靴踵部の製法とそれらに対応する効果の比較”について、図12は靴に対し靴の着脱、一連の洗濯工程後の踵部の復元性について評価値をグラフで表示した。試験に供した靴は本法と従来法による靴を各々29足使用した。
図12に示す、一連の洗濯工程後の踵部の復元性についての定義は下記に示す。
100% 踵は垂直に立っており、踏みつけても直ぐに元にもどる状態である。 履き口のR形状も確保され、着脱にも問題が無い。
75% 踵部や履き口は折れたり、潰れたりするが10分以内に復元する。
50% 折れたり、潰れたりする踵部は10分以上の時間で復元する。
25% 折れたり、潰れたりする踵部が復元しない状態。
図12(グラフ)から本法による踵の復元性が確認できる。さらに従来法では160時間で75%、200時間でほぼ59%の復元性に対し、本法では240時間でも劣化の確認には至っていない。
図13には靴の着脱及び一連の洗濯工程後の靴の清浄性について述べる。
評価するための主な条件、効果、等はそれぞれ図10及び図11の“洗濯を含む作業靴への主な負荷要因”及び“作業靴踵部の製法とそれらに対応する効果の比較”に示す。試験に供した靴は本法と従来法による靴を各々29足使用した。
図13に示す一連の洗濯工程後の靴の清浄性についての定義は下記に示す。
100% 靴表面に汚れが付着してなく、内装の表面も清浄性を保っている。
75% 2mの距離からの目視で、靴表面に汚れが付着してなく、内装の表面も清 浄性を保っている。
50% 汚れがあるが5mの距離からの目視で、靴表面に汚れが付着してなく、内 装の表面も清浄性を保っている。
25% 汚れが随所にあり7m以上離れた距離から確認できる。
図13(グラフ)より本法による靴は清浄性を復元でき、かつ従来法に比べ本法による靴がより良い洗浄性を得ることができている。
【0068】
下記に洗濯後の除染性の確認について述べる。除染性については、実際にその作業の前後で着脱した靴からの測定用試料作成は本試験評価では、放射性物質等の管理上の問題から困難なため、下記に示す簡易的な方法で行なった。
試験法はJISZ−4507(1998)放射性物質で汚染された表面除染─除染の容易性の試験及び評価法─の試験方法Aを採用した。
試験片は下記要領で作成した。新旧それぞれの靴に対して10回洗濯を行い、その靴の甲部から直径50mmの試験片を作成した。
その結果、耐汚染指数として下記を得た。参考として記す。
評価項目 │ 靴の種類 │ 従来法による靴 │ 本法による靴 耐汚染指数 │ │ 0.07 │ 0.16
【0069】
本法において、洗濯時に靴内部の開口率を向上させる靴の構造設計が踵潰れの復元性を導き、それが洗濯性能を確保し、靴の鋸歯状凹凸部等の塵埃、ゴミ等に付着する放射性物質等を排斥することにより靴の除染性の向上につながる。
本法では課題とした改善事項に併行してそれによる靴の他要素による履き心地に劣化の有無を確認するためにフィールドサーベイ(現地での実際の着用試験)を行なった。試験に供した靴は本法と従来法による靴を各々29足使用した。“足に合った靴”とは、「指の付け根部分(ボールジョイント)がピッタリしており、指先が自由に動き(長さ、幅にゆとりがあり)、土踏まず部が確りと支えられて足の線(アーチライン)に良く合い、踵も十分に安定している事」である。
聴き取り調査は従来靴との比較に加え、上記に示す“足にあった靴”を下記に示すような優劣の定義を展開し、着用者によってそれらを念頭に適宜聴き取り調査を行なった。
【0070】
【表1】
【0071】
図14に本法による靴のフィールドサーベイの結果を示す。
本サーベイでは新旧それぞれ29足の靴を不特定多数の人が着用するため、のべ107名の被験者から聴き取り調査を行なった。
その結果、87%(93/107 フィールドサーベイの中の“甲当たりの改善”12%を含む)の着用者が改善を評価し、“変わらない”を含めると98%の着用者が本法による製品を従来品と比較して満足していることが判る。
本アンケートから判明することは踵潰しに対応するために行なった踵部に主眼をおいた靴のアッパーデザインが目的(洗濯性の改善、等)の達成と併行して他の要素において履き心地を損なっていない事である。むしろ、この程度のマイナスポイント(2/107:2%)はアンケートの誤差の範囲と考えても差し支えないと考えることができ、さらに本件(靴)の場合は既製靴の着用に加え、被験者それぞれの足の3次元的形状、大きさ、等を考慮すれば全体的には多要素の履き心地を損なうことなく開発課題を達成していると判断できる。
【0072】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した例に限定する事無く、同様の機能を達成できる他の構造等を使用する事ができる事は当然である。さらに、本発明は上記実施形態に限定する事無く、例えば作業靴の踵部の表材(外革)もできるだけ弾力に富んだ材料を使用する事で、月型芯の復元機能と合わせて一段と復元機能の高い踵とする事ができる。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱する事無く、他のいかなる形態でも実施する事ができる。そのため前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明による作業靴は、種々の作業現場で使用する事ができるが、特に原子力発電所または核燃料施設等での作業靴として利用可能性が大である。併せて業務上靴の踵を潰して履く事の多い業務で、例えば引越し、介護等靴の履き脱ぎが多い作業者用安全靴、作業靴、靴、等の履物に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の作業靴の斜視図である。
【図2】同作業靴の踵部の断面図である。
【図3】踵部巻き縫いの平面図である。
【図4】本実施例に係る月型芯の平面図である。
【図5】同履き口クッションの平面図である。・
【図6】月型芯と履き口クッションとを組み合わせた平面図である。
【図7】月型芯の他の例を示す平面図である。
【図8】月型芯の他の例を示す平面図である。
【図9】踵部が「鋸歯状の凹凸(ギザギザ)」状態に変形した状態を示す図である。
【図10】靴の洗濯条件を示す図である。
【図11】本発明に係る製品と、従来製品との比較図である。
【図12】本発明に係る製品と、従来製品との比較グラフである。
【図13】靴に対し靴の着脱、一連の洗濯工程後の靴の清浄性についての評価値を示すグラフである。
【図14】フィールドサーベイの結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
1 月型芯
2 履き口クッション
3 裏材
4 表材
5 中底
7 ミッドソール
8 アウトソール
9 スキ
11 ブランクスペース
1A 折り代
1B 踏み込み時の折れ線
M 踏み込み時の折れ線の長さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業靴の踵部に踵の後部から左右に掛けて弾力性を有する月型芯を挿入するとともに、靴の履き口の上部周囲に弾力性を有する履き口クッションを挿入してなる作業靴の踵構造において、前記月型芯には、踵の中央下部から左右斜め上方に向けて踵を踏み込む際の踏み込み時の折れ線を形成し、さらに、前記履き口クッションは、前記クッションが前記折れ曲がり線の延長上と交差する位置にクッションの両端の端部が位置する長さとして形成されていることを特徴とする作業靴の踵構造。
【請求項2】
前記作業靴の履き口の左右には、踵部が踏んだときに踵部が前方に倒れ易くなるように機能するくびれを形成したことを特徴とする請求項1に記載の作業靴の踵構造。
【請求項3】
前記左右上部に形成した前記くびれの位置は前記履き口クッションの端部および前記踏み込み時の折れ線交差と略一致するように構成したことを特徴とする請求項2に記載の作業靴の踵構造。
【請求項4】
前記月型芯の踏み込み時の折れ線は月型芯の中心線と成す角度θが30〜60°前後の角度であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の作業靴の踵構造。
【請求項5】
前記月型芯は、厚さが0.5〜2.5mm程度、月型芯の幅は130〜180mm程度であり、さらに折り代は略250mm2 以上の面積が確保されべく構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の作業靴の踵構造。
【請求項6】
前記月型芯の上面は、左右の両端に向かって、少なくとも0°以上〜30°以下の範囲で下方に向かって傾斜させ、または靴の踵部の形状によりそれに合致させる様々な形状で履き口クッションとの間にブランクスペースを形成させることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の作業靴の踵構造。
【請求項7】
前記月型芯の周囲にはスキ加工がなされていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の作業靴の踵構造。
【請求項8】
前記月型芯は、靴の洗浄及びその前後の一連の工程で作用する座屈荷重に耐える強度を有し、かつ、月型芯の折れ曲がり状態からの復元を可能とする材料で構成したことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の作業靴の踵構造。
【請求項9】
前記月型芯は人工皮革等からなる表材、中底、裏材及び月型芯を合わせて縫付けて固定する事を特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の作業靴の踵構造。
【請求項10】
前記月型芯は、少なくとも熱可塑性樹脂、加硫ゴム、塩化ビニール、合成樹脂のいずれか一つの材料で、かつ非吸水性で、弾性に富んだ材料を使用したことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の作業靴の踵構造。
【請求項11】
前記月型芯の中央部高さは、最大で中底から履き口クッションまでの高さとし、かつ、略84Kgの垂直荷重に耐える強度とするとともに、月型芯は、月型芯を被う表材と裏材と密着して取り付け固定してあることを特徴とする請求項1および請求項8〜10のいずれかに記載の作業靴の踵構造。
【請求項12】
前記履き口クッションは少なくとも合成樹脂、天然皮革、編布、等のいずれか一つを使用し、かつ長さは略150mm〜200mm程度、幅は略15mm〜19mm程度、厚さは略7mm〜15mm程度で構成され、さらに履き口クッションを挿入した部分とそれ以外の履き口上部との間に相対的な強度差を有することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の作業靴の踵構造。
【請求項13】
前記請求項1〜請求項12に記載の作業靴の踵構造を備えたことを特徴とする原子力発電所または核燃料施設用の作業靴。
【請求項1】
作業靴の踵部に踵の後部から左右に掛けて弾力性を有する月型芯を挿入するとともに、靴の履き口の上部周囲に弾力性を有する履き口クッションを挿入してなる作業靴の踵構造において、前記月型芯には、踵の中央下部から左右斜め上方に向けて踵を踏み込む際の踏み込み時の折れ線を形成し、さらに、前記履き口クッションは、前記クッションが前記折れ曲がり線の延長上と交差する位置にクッションの両端の端部が位置する長さとして形成されていることを特徴とする作業靴の踵構造。
【請求項2】
前記作業靴の履き口の左右には、踵部が踏んだときに踵部が前方に倒れ易くなるように機能するくびれを形成したことを特徴とする請求項1に記載の作業靴の踵構造。
【請求項3】
前記左右上部に形成した前記くびれの位置は前記履き口クッションの端部および前記踏み込み時の折れ線交差と略一致するように構成したことを特徴とする請求項2に記載の作業靴の踵構造。
【請求項4】
前記月型芯の踏み込み時の折れ線は月型芯の中心線と成す角度θが30〜60°前後の角度であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の作業靴の踵構造。
【請求項5】
前記月型芯は、厚さが0.5〜2.5mm程度、月型芯の幅は130〜180mm程度であり、さらに折り代は略250mm2 以上の面積が確保されべく構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の作業靴の踵構造。
【請求項6】
前記月型芯の上面は、左右の両端に向かって、少なくとも0°以上〜30°以下の範囲で下方に向かって傾斜させ、または靴の踵部の形状によりそれに合致させる様々な形状で履き口クッションとの間にブランクスペースを形成させることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の作業靴の踵構造。
【請求項7】
前記月型芯の周囲にはスキ加工がなされていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の作業靴の踵構造。
【請求項8】
前記月型芯は、靴の洗浄及びその前後の一連の工程で作用する座屈荷重に耐える強度を有し、かつ、月型芯の折れ曲がり状態からの復元を可能とする材料で構成したことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の作業靴の踵構造。
【請求項9】
前記月型芯は人工皮革等からなる表材、中底、裏材及び月型芯を合わせて縫付けて固定する事を特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の作業靴の踵構造。
【請求項10】
前記月型芯は、少なくとも熱可塑性樹脂、加硫ゴム、塩化ビニール、合成樹脂のいずれか一つの材料で、かつ非吸水性で、弾性に富んだ材料を使用したことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の作業靴の踵構造。
【請求項11】
前記月型芯の中央部高さは、最大で中底から履き口クッションまでの高さとし、かつ、略84Kgの垂直荷重に耐える強度とするとともに、月型芯は、月型芯を被う表材と裏材と密着して取り付け固定してあることを特徴とする請求項1および請求項8〜10のいずれかに記載の作業靴の踵構造。
【請求項12】
前記履き口クッションは少なくとも合成樹脂、天然皮革、編布、等のいずれか一つを使用し、かつ長さは略150mm〜200mm程度、幅は略15mm〜19mm程度、厚さは略7mm〜15mm程度で構成され、さらに履き口クッションを挿入した部分とそれ以外の履き口上部との間に相対的な強度差を有することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の作業靴の踵構造。
【請求項13】
前記請求項1〜請求項12に記載の作業靴の踵構造を備えたことを特徴とする原子力発電所または核燃料施設用の作業靴。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−313052(P2007−313052A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146169(P2006−146169)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(390002222)株式会社シモン (7)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(591031430)株式会社千代田テクノル (22)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(390002222)株式会社シモン (7)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(591031430)株式会社千代田テクノル (22)
【Fターム(参考)】
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