説明

靴下

【課題】
足の保護や防寒性能等を有しながらも、足の力を靴や地面に確りと伝えられる靴下を提供できるようにする。
【課題を解決するための手段】
靴下における足の裏に当接する部分の少なくとも親指の下面に対面する部分の編地を、その厚さが他の部分の編地の厚さよりも薄くして力伝導部を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は靴下に関するものである。
【背景技術】
【0002】
靴下の役割としては、足の保護や防寒等を目的とする場合、例えば特許文献1〜3保温性とクッション性を高めるために肌に接する部分(靴下の内面部分)にパイル等の起毛を設けて、編地の厚みを厚くするようにしたものがある。
【0003】
【特許文献1】特開平9−172211号公報
【特許文献2】特開平11−61505号公報
【特許文献3】特開2002−38304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公報に記載された靴下では、靴下を形成する編地の厚みが略均一な厚みとなっている。一方、靴下を着用して歩いたり、力を入れて踏ん張る場合に足の裏から靴や地面に作用する力の分布は均一ではない。
したがって、強い力がかかる五本の指、特に親指の下面に対面する部分の編地が厚く、クッション性を有する場合、指が編地に沈んでしまい、力を靴や床面に充分伝えることができないという問題があった。
その結果、スポーツではいい記録がでない原因ともなっていた。
本発明は上記問題点に鑑み提案されたもので、足の保護や防寒性能等を有しながらも、足の力を靴や地面に確りと伝えられる靴下を提供できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明にかかる靴下は、靴下における足の裏に当接する部分の少なくとも親指の下面に対面する部分の編地を、その厚さが他の部分の編地の厚さよりも薄くして力伝導部を形成したことを最も主要な特徴とするものである。
【0006】
また、本発明にかかる靴下では、厚みの厚い部分がパイル編み若しくはカットパイルで形成され、厚みの薄い力伝導部を平編みで形成したことや、力伝導部が人差し指、中指、薬指及び小指の各下面に対面する部分の編地にも形成されていることも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の靴下によれば、靴下における足の裏に当接する部分の少なくとも親指の下面に対面する部分の編地を、その厚さが他の部分の編地の厚さよりも薄くして力伝導部を形成してあるので、歩行や登山、あるいはスポーツ時に足の親指から靴若しくは地面等に作用する力はその薄い編地部分から靴や地面に確りと伝えることができる。
これにより、足の保護や防寒性能等を有しながらも、確りと踏ん張って、体勢を維持することができるので、スポーツ等ではよい記録を期待することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明にかかる靴下について好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0009】
図1は本発明にかかる靴下の内外を反転させた状態の底面から見た図であって、図中符号1は靴下を全体的に示す。
この靴下1は、図外の丸編機により足の挿入口2から編み出され、脹脛3から踝4、踵5、土踏まず6を経てつま先4部分が編成され、筒状の編地が丸編機から離された後、つま先7部分の開口が縫着10されると靴下1が形成される。
次に、上記各部について説明すると、編み出しの足の挿入口2では、シリンダ針とダイヤル針とに亘ってウーリーナイロン等の編糸が各針の1本おきでジグザグに給糸されて編みたてが行われ、一方の編針に編みたての編目をタックさせた状態で他方の編み針の全部にゴム糸を挿入して所定コース数編成されるとここに挿入口2の締め込み部8が形成される。
【0010】
締め込み部8が形成されると、FTY等の弾性糸と表面用の編糸で編地が編成された前記一方の編針側の編針にも給糸して編地が形成されると、前記一方の編針にタックされていた編目が編地部分に編み込まれた状態となる。
脹脛3部分では、引き続きFTY等の弾性糸と表面用の編糸とで編地がシリンダ針とダイヤル針とにより脹脛3が筒状に形成された後、踝4を経て踵5にいたる。
踵5では当該部分を形成するためにその編成領域(編成幅)を一旦減少させ、再び元に戻すように編成されることにより、膨らんだ形の編地が形成される。
このとき、踵5部分の編地はパイル形成用編糸によるループパイル22が形成され、編地の厚みが厚くなっている。
【0011】
土踏まず6の部分では図上右側部分9を除き、パイル形成用編糸によるループパイル22が形成され、編地の厚みが厚くなっている。
なお、図1中符号11で示す部分は足の甲側の編地が回り込んだ部分であって、上記パイル形成用編糸によるループパイル22で形成された部分の厚みより薄くされた部分である。
つま先7部分で図1乃至図3に示すように、親指12の下面17に対面する部分と、人指し指13から小指16にかけた4本の各指13,14,15,16の下面部分18を一連にした編地部分19を平編みとして編地の肉厚を薄くした力伝導部20を形成するとともに他の編み地部分はパイル形成用編糸によるループパイル22が形成されて、編地の厚みを厚く形成してある。
【0012】
この時、つま先7の先窄まり形状を形成するために、足の甲21側の編目は休止させ、上記つま先7部分を編成した靴下1の底部分の編地の編み幅を一旦狭くした後、細くした編幅を復帰させるとつま先7部分を覆う編地が形成される。
つま先7部分を覆う編地が形成されると、丸編み機からつま先7部分の甲側が開口した状態の筒状の編地が靴下1の素材として払い落とされる。この開口部をリンキング等の縫着手段で縫着10すると本発明の靴下が完成する。
【0013】
斯くして編成された靴下1を図2に示すように、足の挿入口から履くと、ループパイル22により厚みを厚くした編地部分で足の保温と保護を図るとともに、歩行や登山、あるいはスポーツ時、図3に示すように足の裏から靴若しくは地面等に作用する大きな力が作用する部分(親指12の下面17に対面する部分、人指し指13から小指16にかけた4本の各指13、14、15、16の下面部分18)には、平編みの厚みの薄い編地部分が位置するので、当該指12、13、14、15、16部分は編地に沈み込むことなく、大きな力を靴若しくは地面等に確りと伝えることができる。
【0014】
なお、上記足の裏から靴若しくは地面等に作用する大きな力のうち、最も大きな力が作用するのは、親指12の下面17部分からであることから、少なくともこの親指12の下面17部分の編地の厚さを薄くすればよい。
また、上記実施の形態では、靴下1を丸編機で編成するようにしてあるが、こうしたものに限られず、横編機で編成することもできる。この横編機で編成する場合には、各指12、13、14、15、16を個別に包み込む5本の指袋を形成した所謂「指付き靴下」にすることもできる。
さらに、上記実施の形態では編地の厚みをループパイル22により厚くするようにし、薄くする部分は平編み19にするようにしてあるが、こうしたものに限られず、相対的に厚みが異なる編組織を組み合わせることにより、本発明の目的を達成することができるのはいうまでもないことである。
【0015】
加えて、上記実施例のように厚みを厚くするループパイル22を靴下1の裏面に形成するようにしてあるが、こうしたものに限られず、靴下1の裏面にかえて、若しくは靴下1の裏面とともに表面に形成することができるのはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】は本発明にかかる靴下の内外を反転させた状態の底面から見た図である。
【図2】は本発明にかかる靴下を着用した状態の縦断側面図である。
【図3】は足の裏から靴若しくは地面等に作用する大きな力の分布を示す説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1・・・靴下
12・・・親指
17・・・12の下面
19・・・平編み
20・・・力伝導部
22・・・ループパイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴下における足の裏に当接する部分の少なくとも親指の下面に対面する部分の編地を、その厚さが他の部分の編地の厚さよりも薄くして力伝導部を形成したことを特徴とする靴下。
【請求項2】
厚みの厚い部分がパイル編み若しくはカットパイルで形成され、厚みの薄い力伝導部を平編みで形成したことを特徴とする請求項1に記載の靴下。
【請求項3】
力伝導部が人差し指、中指、薬指及び小指の各下面に対面する部分の編地にも形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の靴下。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−214031(P2006−214031A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27629(P2005−27629)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(597104684)株式会社クワトロ・エー (6)
【Fターム(参考)】