説明

靴底材及び釣用靴

【課題】優れた滑止効果を発揮する釣用靴及びこれに使用される靴底材の提供。
【解決手段】この釣用靴は、靴底材13を備える。靴底材13は三分割されており、土踏まず部81と、この前後に設けられた爪先部82及び踵部83とを有する。靴底材13はフェルトからなる。土踏まず部81の剛性は、爪先部82及び踵部83の剛性よりも低く設定されている。土踏まず部81、爪先部82及び踵部83は、取付部材33の上に配置されている。靴底材13は、土踏まず部81と爪先部82との間、及び土踏まず部81と踵部83との間で屈曲可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣用靴、特に釣用靴の靴底に使用される靴底材の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、川釣りや磯釣りにおいては、釣人は石や岩(磯)の上を歩行する。このような釣場の石や岩の表面は、一般に濡れていることが多く、またコケやノリ等が付着していることも多い。そのため、釣人が着用する釣用靴の靴底は、歩行の際に滑らないように従来からさまざまな改良が加えられている(例えば、特許文献1〜特許文献6参照)。
【0003】
具体的には、従来の釣用靴には、(ア)靴底材がフェルトから構成されているもの、(イ)靴底にスパイクピンが設けられているもの、(ウ)靴底に吸盤が設けられているもの等がある。これらの改良が施された釣用靴は、それぞれ一定の条件下(釣場の環境下)においては一定の滑止効果を発揮する。すなわち、例えば磯が平坦な岩からなり、あまり濡れていない場合には、靴底材がフェルトから構成されているものが好ましいし、石や岩に柔らかいコケが生え、常時濡れているような場合には、靴底にスパイクピンが設けられているものが好ましい。
【0004】
【特許文献1】特開2002−282009公報
【特許文献2】特開2001−197903公報
【特許文献3】特開平10−42905号公報
【特許文献4】実開平4−4803号公報
【特許文献5】実開平1−126101号公報
【特許文献6】実開昭63−191905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
釣場の環境はさまざまである。釣場に散在する石の表面が滑面である場合や、岩の表面が濡れた粗面である場合もある。また、岩の表面に柔らかいコケが生えている場合や、比較的硬い草が生えている場合もある。そのため、例えば、靴底にスパイクピンが設けられた釣用靴は、粗面の岩場では優れた滑止効果を発揮するが、コケ等が生えている場所では、必ずしも高い滑止効果を発揮することはできなかった。すなわち、単に石や岩との間の摩擦係数の向上を目的として靴底材の構造や靴底材を構成する材料が改良されるだけでは、さまざまな環境に対応して優れた滑止効果を発揮することは困難であった。
【0006】
本発明は、かかる背景のもとになされたものであって、釣場におけるあらゆる環境下においても優れた滑止効果を発揮する釣用靴及びこれに使用される靴底材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 人間の足(特に足の裏)は、優れた触覚機能を発揮することが知られている。したがって、釣人は、釣用靴を履いた状態であっても自己の足の裏によって釣場に散在する石や岩の状態(形状や表面の状態)を感じ取れることができれば、歩行時に自己の足を接地させようとする石や岩の表面が滑りやすいか否かをある程度把握することができる。そして、釣人は、当該石や岩の表面が滑りやすくなっていることを認知することができれば、自己の足の接地のしかたを工夫して足が滑りにくくすることもできる。本願発明者はこの点に着目し、靴底が所定の可撓性を備えていれば、当該靴を履いた釣人は、自己の足の裏で釣場の環境(滑りやすさ等)を確認することができ、その結果、当該釣用靴が高い滑止効果を発揮し得ると考えた。
【0008】
(2) そこで、本発明に係る釣用靴は、釣人の足が挿入され得る靴本体と、靴本体の外底面に設けられた靴底材とを有し、靴底材は、土踏まず部と、土踏まず部の前側に配置され且つ当該土踏まず部とヒンジ結合された爪先部と、土踏まず部の後側に配置され且つ当該土踏まず部とヒンジ結合された踵部とを備え、上記土踏まず部の剛性は、踵部の剛性及び爪先部の剛性よりも低く設定されていることを特徴とするものである。
【0009】
この構成によれば、靴底材が爪先部、土踏まず部及び踵部に三分割されており、しかも、土踏まず部に対して爪先部及び踵部がそれぞれ独立して回動変位することができる。このため、この靴底材は、縦方向にきわめて撓みやすい。ここで、「縦方向」とは、当該釣用靴に釣人の足が挿入された状態における当該足の長さ方向(爪先と踵とを結ぶ方向)である。したがって、釣人は、釣用靴を履いた状態であっても足を長さ方向に容易に湾曲させることができる。そして、釣人は、このように足を湾曲させた状態で石や岩のうえに土踏まず部を当接させることができる。この土踏まず部の剛性は低く設定されているから、釣人は、この土踏まず部を通して釣場の石や岩の表面の状態を認知しやすくなる。
【0010】
上記靴底材は、可撓性を有するシート状の取付部材を備え、上記土踏まず部、爪先部及び踵部は、上記取付部材上に配置されているのが好ましい。この構成では、取付部材が湾曲ないし屈曲することによって、土踏まず部に対して爪先部及び踵部がそれぞれ独立して回動変位する。つまり、この取付部材が土踏まず部と爪先部とを連結するヒンジ及び土踏まず部と踵部とを連結するヒンジを構成することになる。したがって、靴底材の構造がきわめて簡略化される。
【0011】
上記土踏まず部と上記爪先部との境界、及び上記土踏まず部と踵部との境界に、断面形状がV字状の溝が設けられているのが好ましい。これにより、通常の状態(釣人が歩行せずに直立している状態)においても、靴底材の下面(石や岩との接触面)に開口する溝が形成されることになる。したがって、釣人は、釣用靴を履いた状態で足を長さ方向に沿って内側に容易に湾曲させることができる。すなわち、釣人は、足の裏により上記石や岩を把持するように靴底材を湾曲させることができる。これにより、釣人は、釣場の石や岩の表面の状態をより的確に認知しやすくなる。
【0012】
上記靴底材は、上記靴本体の外底面に着脱自在に設けられているのが好ましい。これにより、靴底材が摩耗等したときは、釣人は、靴底材のみを交換することができる。
【0013】
(3) 上記目的が達成されるため、本発明に係る靴底材は、釣用靴の靴本体の外底面に設けられる靴底材であって、土踏まず部と、土踏まず部の前側に配置され且つ当該土踏まず部とヒンジ結合された爪先部と、土踏まず部の後側に配置され且つ当該土踏まず部とヒンジ結合された踵部とを備え、上記土踏まず部の剛性は、踵部の剛性及び爪先部の剛性よりも低く設定されていることを特徴とするものである。
【0014】
この構成によれば、靴底材は、釣用靴の靴本体の外底面に取り付けられ、その状態で釣人は、当該釣用靴を着用する。靴底材が爪先部、土踏まず部及び踵部に三分割されており、しかも、土踏まず部に対して爪先部及び踵部がそれぞれ独立して回動変位することができる。このため、この靴底材は、縦方向にきわめて撓みやすい。ここで、「縦方向」とは、釣用靴に釣人の足が挿入された状態における当該足の長さ方向(爪先と踵とを結ぶ方向)である。したがって、釣人は、当該釣用靴を履いた状態であっても足を長さ方向に容易に湾曲させることができる。そして、釣人は、このように足を湾曲させた状態で石や岩のうえに土踏まず部を当接させることができる。この土踏まず部の剛性は低く設定されているから、釣人は、この土踏まず部を通して釣場の石や岩の表面の状態を認知しやすくなる。
【0015】
上記土踏まず部、爪先部及び踵部は、可撓性を有するシート状の取付部材上に配置されているのが好ましい。この構成では、取付部材の変形によって、土踏まず部に対して爪先部及び踵部がそれぞれ独立して回動変位する。つまり、この取付部材が土踏まず部と爪先部とを連結するヒンジ及び土踏まず部と踵部とを連結するヒンジを構成することになる。したがって、靴底材の構造がきわめて簡略化される。
【0016】
上記土踏まず部と上記爪先部との境界、及び上記土踏まず部と踵部との境界に、断面形状がV字状の溝が設けられているのが好ましい。これにより、通常の状態(釣人が歩行せずに直立している状態)においても、靴底材の下面(石や岩との接触面)に開口する溝が形成されることになる。したがって、釣人は、釣用靴を履いた状態で足を長さ方向に沿って内側に容易に湾曲させることができる。すなわち、釣人は、足の裏により上記石や岩を把持するように靴底材を湾曲させることができる。これにより、釣人は、釣場の石や岩の表面の状態をより的確に認知しやすくなる。
【0017】
この靴底材は、上記靴本体の外底面に着脱自在に設けられているのが好ましい。これにより、靴底材が摩耗等したときは、釣人は、当該靴底材のみを交換することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、靴底材が容易に変形するので、釣人は、足を接地させようとする石や岩の表面の状態を自己の足の裏で認知することができる。これにより、釣人は、自己の足の接地のしかたを工夫することができ、その結果、この釣用靴は、釣場におけるあらゆる環境下においても優れた滑止効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣用靴の斜視図であり、図2は、この釣用靴の要部拡大断面図である。
【0021】
この釣用靴10は、例えば川釣り等において釣人が釣り場を安全に歩行等するために着用するものである。本実施形態に係る釣用靴10の特徴とするところは、釣用靴10のソール部分の構造である。すなわち、釣用靴10が後述の靴底材13を備えることによって、釣人が釣り場を歩行する際に、高い滑止効果が発揮されるようになっている。なお、釣人は、左右対称に形成された一対の釣用靴10を着用するが、説明の簡略化のために、以下では、右脚用の釣用靴10の構造のついて説明される。
【0022】
釣用靴10は、靴本体11と、靴本体11の外底面31に設けられた靴底材13とを備えている。靴本体11は、下部にミッドソール部12を備えており、このミッドソール部12に靴底材13が取り付けられている。
【0023】
靴本体11は、内布14と、本体ゴム15と、補強ゴム16〜20と、中敷21とを有する。
【0024】
内布14は、例えばナイロンその他ポリエステル等からなり、靴本体11の内壁面を構成している。内布14がナイロンその他ポリエステルにより構成されることによって、釣人にとって、釣用靴10を履いたときの履き心地が良い。中敷21は、内布14の内底部23に配置されている。内布14の内底部23は、釣人が釣用靴10を履いたときに足の裏部分が載置される載置部を構成している。中敷21は、例えば、発泡エチレン酢酸ビニル共重合体(発泡EVA)、発泡ポリウレタン(発泡PU)、発泡ポリエチレン(発泡PE)、スポンジ等により構成されている。このため、釣人が釣用靴10を履いたときに、当該釣用靴10が足にフィットし、釣人にとって一層履き心地の良いものとなる。ただし、中敷21は、省略されていてもよい。
【0025】
本体ゴム15は、内布14の底部を除く外周面を囲繞するように配置されている。本体ゴム15は、靴本体11の骨格を形成している。本体ゴム15としては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリ塩化ビニル(PVC)その他合成ゴム等が採用される。補強ゴム16は、靴本体11の先端部(爪先側)を被うように配置されており、当該部分を補強している。補強ゴム16としては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリ塩化ビニル(PVC)その他合成ゴム等が採用される。また、補強ゴム17は、靴本体11の後端部(踵側)を被うように配置されており、当該部分を補強している。この補強ゴム17は、特に肉厚部22を備えている。この肉厚部22は、釣人が釣用靴10を履いたときに釣人の踵の後方に該当する部分に設けられており、釣人の踵部分の安全が確保されている。補強ゴム17としては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリ塩化ビニル(PVC)その他合成ゴム等が採用される。
【0026】
補強ゴム18は、靴本体11の底部の近傍に配置され、靴本体11の周方向に沿って配置されている。つまり、この補強ゴム18は、靴本体11の下縁部を囲繞するように配置されており、靴本体11の先端部及び後端部をさらに補強している。この補強ゴム18としては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリ塩化ビニル(PVC)その他合成ゴム等が採用される。また、補強ゴム19は、上記補強ゴム18の外側に配置されている。補強ゴム19は、靴本体11の底部の近傍に設けられており、靴本体11の周方向に沿って配置されている。これにより、補強ゴム19は、靴本体11の先端部及び下端部をより一層補強しており、釣用靴10の耐久性及び安全性が向上されている。この補強ゴム19としては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリ塩化ビニル(PVC)その他合成ゴム等が採用される。さらに、補強ゴム20は、靴本体11の上部開口部36(釣人の脚が挿入される部分)の周縁部に配置されている。この補強ゴム20は、当該周縁部を補強している。この補強ゴム20としては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリ塩化ビニル(PVC)その他合成ゴム等が採用される。
【0027】
ミッドソール部12は、上記内布14の外側の底面24に配置されている。ただし、靴本体11の底面周縁部に補強シート25が配設されている。このため、ミッドソール部12は、この補強シート25を挟んで上記底面24に固着されている。ミッドソール部12は、基部26と、シート部材27と、クッション部材28とを備えている。基部26は、例えば合成ゴム等により構成されており、その外形形状は、上記底面24の形状に対応している。シート部材27は、基部26の上面に配置され、このシート部材27の上面にクッション部材28が配置されている。換言すれば、基部26、シート部材27及びクッション部材28は、順に積層されており、これらが一体となって上記内布14の外側の底面24に取り付けられている。この基部26の底面が靴本体11の外底面31を構成している。この外底面31は、後に詳述される靴底材13が装着されるための凹部32を備えている。
【0028】
シート部材27は、薄肉の板材からなる。シート部材27を構成する材料は、例えば、樹脂が含浸された紙材のほか、ラバー、フェルト、プラスチック、金属等が採用され得る。クッション部材28は、発泡エチレン酢酸ビニル共重合体、発泡合成ゴム、発泡天然ゴム、発泡ウレタン、フェルト材等の発泡成形部材により構成されている。なお、本実施形態では、シート部材27の上面にクッション部材28が積層されているが、基部26の上面にクッション部材28が配置され、その上面にシート部材27が配置されていてもよい。ただし、これらシート部材27及びクッション部材28は、省略されていてもよい。
【0029】
図3は、靴底材13の斜視図である。同図において、靴底材13の上側の面が当該靴底材13の下面40である(図2参照)。
【0030】
図2及び図3が示すように、靴底材13は、靴本体11の外底面31に着脱可能に取り付けられている。靴底材13は、取付部材33を備えている。靴底材13は、板状に形成されており、その外形形状は、上記靴本体11の外底面31に対応するように形成されている。具体的には、靴底材13の外形形状は、上記外底面31に設けられた凹部32にぴったりと嵌め合わされるように形成されている。靴底材13の肉厚寸法Dは、本実施形態では15mmに設定されている。ただし、この肉厚寸法Dは、10.0mm〜20.0mmの範囲で適宜設定され得る。
【0031】
靴底材13は、本実施形態では三分割されている。すなわち、靴底材13は、中央部に配置された土踏まず部81と、爪先部82と、踵部83とを有する。土踏まず部81は、釣人がこの釣用靴10を履いた状態で、足の裏の土踏まず部分に対応している。爪先部82は、土踏まず部81の前側に配置されており、釣人の足の裏の爪先から土踏まずまでの部分に対応している。踵部分83は、土踏まず部81の後側に配置されており、釣人の足の裏の踵部分に対応している。土踏まず部81、爪先部82及び踵部83は、互いに隣接しており、それぞれ上記取付部材33上に配置されており、この取付部材33に固定されている。土踏まず部81と爪先部82、及び土踏まず部81と踵部83は、それぞれ後述のようにヒンジ結合されている。したがって、土踏まず部81に対して爪先部82が回動自在となっており、また、土踏まず部81に対して踵部83が回動自在となっている。
【0032】
土踏まず部81、爪先部82及び踵部83は、それぞれ、図3が示すようにブロック状に形成されている。これら土踏まず部81、爪先部82及び踵部83は、フェルトを主成分として構成されている。つまり、土踏まず部81、爪先部82及び踵部83は、繊維が立体的に且つ方向の規則性なく集合されることによって構成されている。この繊維の種類は、例えばナイロンその他ポリエステル等の合成繊維のほか、やしがら繊維や麻等の天然繊維が採用され得る。ただし、土踏まず部81の剛性(構造物としての剛性)は、爪先部82の剛性及び踵部83の剛性よりも低く設定されている。土踏まず部81の剛性を抑える手段としては、例えば、上記繊維の密度を小さくする手段や剛性の小さい繊維を使用する手段等が考えられる。
【0033】
図4は、靴底材13のIV−IV断面図であり、靴底材13が屈曲した状態を示している。
【0034】
図3及び図4が示すように、取付部材33は、靴底材13の上面39に張り付けられている。取付部材33は、薄肉平板状(シート状)の部材であって、靴底材13の上面39(図3では、下側の面)を覆っている。この取付部材33は、例えば、ナイロンその他ポリエステル等の合成繊維を含む不織布からなり、可撓性に優れている。上記土踏まず部81、爪先部82及び踵部83は、互いに隣接しているが互いに固着されていない。したがって、取付部材33が屈曲することにより、靴底材13は、図3が示す姿勢から図4が示す姿勢に屈曲することができる。つまり、前述のように、土踏まず部81と爪先部82とがヒンジ結合され、また、土踏まず部81と踵部83とがヒンジ結合された状態となっている。そして、上記シート状の取付部材33が、土踏まず部81と爪先部82とを連結するヒンジを構成し、また、土踏まず部81と踵部83とを連結するヒンジを構成している。
【0035】
本実施形態では、上記取付部材33がヒンジを構成しているので、ヒンジ機構を備えた靴底材13の構造がきわめて簡略化されるという利点がある。ただし、土踏まず部81と爪先部82、及び土踏まず部81と踵部83を連結するヒンジ部材が別に設けられていてもよいことは勿論である。
【0036】
本実施形態では、この取付部材33と上記凹部32の壁面との間に面ファスナー機構が構成されている。すなわち、取付部材33の表面(図3及び図4では、下側の面)では、繊維がループ状に形成されており、上記凹部32の内面では、繊維がフック状に形成されている。したがって、靴底材13が上記凹部32に嵌め込まれたときに、取付部材33が上記凹部32の壁面に一定の保持力で着脱自在に係合する。これにより、靴底材13は、一定の保持力でミッドソール部12に着脱自在に保持されることになる。もっとも、取付部材33がループテープから構成され、上記凹部32に、このループテープと係合するフックテープが設けられていてもよい。
【0037】
この釣用靴10は、概ね次のようにして製造される。釣用靴10の製造には、足型が用いられる。まず、この足型に上記内布14が被せられる。この内布14を被うように上記本体ゴム15が被せられる。次に、内布14の底部にクッション部材28及びシート部材27が貼り付けられ、さらに、上記補強シート25及び各補強ゴム16〜20が順に貼り付けられる。そして、靴本体11の底部を被うようにミッドソール部12の基部26が貼り付けられる。上記本体ゴム15、各補強ゴム16等及び基部26は、既知の接着剤や加硫処理等によって固着される。中敷21は、靴本体11の上部開口部36から挿入され、靴本体11の内底部に配置される。また、上記靴底材13は、予め別部品として組み立てられる。この靴底材13がミッドソール部12の凹部32に嵌め込まれるだけで、上記面ファスナー機構を介してミッドソール部12に固定される。なお、本実施形態では、靴底材13は着脱自在に靴本体11に取り付けられているが、靴底材13が靴本体11に固定されていてもよい。
【0038】
釣人は、自己の足を上記上部開口部36(図1参照)から挿入することによって、この釣用靴10を履くことができる。釣人は、この釣用靴10を着用して釣り場を歩行すると、靴底材13が爪先部82、土踏まず部81及び踵部83に三分割されているから、土踏まず部81に対して爪先部82及び踵部83がそれぞれ独立して回動変位することができる(図4参照)。つまり、この靴底材13は、縦方向にきわめて撓みやすい。この「縦方向」とは、釣人の足の長さ方向(爪先と踵とを結ぶ方向)である。したがって、釣人は、釣用靴10を履いた状態であっても足を長さ方向に容易に湾曲させる(反らせる)ことができる。そして、釣人は、このように足を反らせた状態で石や岩のうえに土踏まず部81を当接させることができる。しかも、前述のように、この土踏まず部81の剛性は低く設定されているから、釣人は、この土踏まず部81を通して釣場の石や岩の表面の状態を認知することができる。
【0039】
このように靴底材13が容易に変形するので、釣人は、足を接地させようとする石や岩の表面の状態を自己の足の裏で認知することができる。したがって、釣人は、自己の足の接地のしかたを工夫することができ、その結果、この釣用靴10は、釣場におけるあらゆる環境下においても優れた滑止効果を発揮する。
【0040】
次に、本実施形態の変形例について説明される。図5は、本実施形態の変形例に係る靴底材73の断面図である。
【0041】
本変形例に係る靴底材73が上記実施形態に係る靴底材13と異なるところは、上記土踏まず部81と爪先部82との境界、及び土踏まず部81と踵部83との境界に、それぞれV字状の溝84、85が設けられている点である。なお、その他の構成については、上記実施形態と同様である。
【0042】
このような溝84、85が設けられることにより、常時において、靴底材73の下面40(石や岩との接触面)に露出する開口部が形成されることになる。この場合、「常時において」とは、釣人が釣用靴10を履いたまま歩行せずに直立している状態(通常の状態)の意である。常時において靴底材73の下面40に上記開口部が形成されるので、釣人は、釣用靴10を履いた状態で足を縦方向に沿って内側にも外側にもきわめて容易に湾曲させることができる。すなわち、釣人は、自己の足の裏によって石や岩を把持するように靴底材73を湾曲させることができる。したがって、釣人は、釣り場の石や岩の表面の状態をより的確に認知することができ、その結果、当該釣用靴10は、なお一層高い滑止効果を発揮するという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、川釣りや磯釣りに使用される釣用靴に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る釣用靴の斜視図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る釣用靴の要部拡大断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る釣用靴の靴底材の斜視図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係る釣用靴の靴底材のIV−IV断面図である。
【図5】図4は、本発明の一実施形態の変形例に係る靴底材の断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10・・・釣用靴
11・・・靴本体
12・・・ミッドソール部
13・・・靴底材
31・・・靴本体の外底面
32・・・凹部
33・・・取付部材
39・・・靴底材の上面
40・・・靴底材の下面
43・・・矢印
73・・・靴底材
81・・・土踏まず部
82・・・爪先部
83・・・踵部
84・・・溝
85・・・溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣人の足が挿入され得る靴本体と、靴本体の外底面に設けられた靴底材とを有し、
靴底材は、土踏まず部と、土踏まず部の前側に配置され且つ当該土踏まず部とヒンジ結合された爪先部と、土踏まず部の後側に配置され且つ当該土踏まず部とヒンジ結合された踵部とを備え、
上記土踏まず部の剛性は、踵部の剛性及び爪先部の剛性よりも低く設定されている釣用靴。
【請求項2】
上記靴底材は、可撓性を有するシート状の取付部材を備え、上記土踏まず部、爪先部及び踵部は、上記取付部材上に配置されている請求項1に記載の釣用靴。
【請求項3】
上記土踏まず部と上記爪先部との境界、及び上記土踏まず部と踵部との境界に、断面形状がV字状の溝が設けられている請求項1又は2に記載の釣用靴。
【請求項4】
上記靴底材は、上記靴本体の外底面に着脱自在に設けられている請求項1から3のいずれかに記載の釣用靴。
【請求項5】
釣用靴の靴本体の外底面に設けられる靴底材であって、
土踏まず部と、土踏まず部の前側に配置され且つ当該土踏まず部とヒンジ結合された爪先部と、土踏まず部の後側に配置され且つ当該土踏まず部とヒンジ結合された踵部とを備え、
上記土踏まず部の剛性は、踵部の剛性及び爪先部の剛性よりも低く設定されている靴底材。
【請求項6】
上記土踏まず部、爪先部及び踵部は、可撓性を有するシート状の取付部材上に配置されている請求項5に記載の靴底材。
【請求項7】
上記土踏まず部と上記爪先部との境界、及び上記土踏まず部と踵部との境界に、断面形状がV字状の溝が設けられている請求項5又は6に記載の靴底材。
【請求項8】
上記靴本体の外底面に着脱自在に設けられている請求項5から7のいずれかに記載の靴底材。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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