説明

靴製造方法

【課題】 強固な靴底構造を有する靴の簡単な一体製造できる靴製造方法を提供する。
【解決手段】 発泡を経て体積が製品靴底より12%〜45%大きい半製品靴底と、アッパーと、靴型を有し且つ前記靴型の回りにキャビティが形成された金型とを用意する工程と、前記アッパーを前記靴型に被覆させてから、前記半製品靴底を前記アッパーの靴底と結合する一面に置くことで、前記アッパー及び前記半製品靴底を前記金型の前記キャビティに装入する工程と、前記金型を110℃〜150℃に昇温させることによって、前記半製品靴底を軟化し、前記キャビティの形に合わせて前記アッパーと一体に接着させる工程と、前記金型をまた冷却させて前記半製品靴底を製品靴底の体積になるように収縮させる工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴製造方法に関し、特に、発泡靴底を有する靴製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アッパー上にアウトソール、インソール、及びウェルトを一体に成型する装置が開示されている。この装置によると、熱可塑性材料を、それぞれ第1の型のキャビティ内、ウェルト成型キャビティ及びインソール成型キャビティに射出成型することにより、アウトソールとインソールとを成形すると共に、アッパーを支持する靴型上にもウェルトを形成することができる。
【0003】
しかしながら、熱可塑性材料を発泡成形させるには蒸気による高温及び高圧にて行う必要があり、上記のような射出成型による靴製造方法及び装置では、キャビティの中に樹脂を射出し、アウトソール及びインソールを一気に成形させてアッパーと結合させるので、熱可塑性材料の予想通りの収縮率を得るためには、蒸気の排気システムや成型圧力、成型温度に細かい注意を配りながら精確な制御を行う必要があり、成型材料の不足やはみ出しなどの問題も生じやすい。また、成型材料の不足を防止するために成型材料を多めに使うのは有効な解決法であるが、材料の浪費が却って目立つ欠点となる。
【特許文献1】米国特許第4960374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記に鑑みて、本発明の目的はさほど成型圧力や成型温度を正確に制御しなくても強固な靴底構造を有する靴を一体製造できる靴製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、発泡を経て体積が製品靴底より12%〜45%大きい半製品靴底と、アッパーと、靴型を有し且つ前記靴型の回りにキャビティが形成された金型とを用意する工程と、前記アッパーを前記靴型に被覆させてから、前記半製品靴底を前記アッパーの靴底と結合する一面に置くことで、前記アッパー及び前記半製品靴底を前記金型の前記キャビティに装入する工程と、前記金型を110℃〜150℃に昇温させることによって、前記半製品靴底を軟化し、前記キャビティの形に合わせて前記アッパーと一体に接着させる工程と、前記金型をまた冷却させて前記半製品靴底を製品靴底の体積になるように収縮させる工程と、を含むことを特徴とする靴製造方法。
【0006】
上記靴製造方法において、前記金型を昇温する工程では、前記アッパーに被覆されている前記靴型が、15〜75kg/cmの圧力を前記半製品靴底に掛けて前記アッパーと前記半製品靴底を強固的に接着させることが好ましい。
【0007】
上記靴製造方法では、前記半製品靴底の周縁の前記アッパーと接着する面にはフェンスが上に伸出て形成されていることが好ましい。
【0008】
上記靴製造方法では、前記靴型は、前記金型と共に昇温及び冷却されることが好ましい。
【0009】
上記靴製造方法では、前記キャビティ内に装入される前に、前記半製品靴底を予め50℃〜120℃に加熱することが好ましい。
【0010】
上記靴製造方法では、前記金型を昇温させる前に、アウトソールを前記アッパーと両側から前記半製品靴底を挟むように前記金型のキャビティに装入する工程も含むことが好ましい。
【0011】
また、前記アウトソールと前記半製品靴底を予め接着してから共に前記金型のキャビティに装入することが好ましい。
【0012】
前記金型には、互いに対向する2つの側型と、前記靴型に対向して前記2つの側型の間に挟まれている下型とからなり、前記2つの側型及び前記下型それぞれの内部には流路が設けられてその流路を介して前記各型の温度を調整することができるように構成することが好ましい。
【0013】
上記靴製造方法では、前記アウトソールは熱可塑性プラスチック材からなることが好ましい。
【0014】
前記熱可塑性プラスチック材はEVA樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)やTPR樹脂(trans−1,5−polypentenamer rubber)、TPU樹脂(熱可塑性ポリウレタン樹脂)のいずれかであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記構成によれば、予め発泡を経た半製品靴底を金型内で軟化の加熱処理を行いながらアッパーと組み合せてから冷却させて製品靴底の体積にするので、半製品靴底の収縮率が予想しやすく、さほど成型圧力や成型温度を正確に制御しなくても、収縮率の誤差が小さいので、成型材料の不足やはみ出しなどの発生を抑えることができる。
【0016】
更に、本発明において、金型を110℃〜150℃に昇温させて、体積が製品靴底より12%〜45%大きくなっている半製品靴底を加熱しながら、靴型による15〜75kg/cmの圧力を半製品靴底にかけるので、半製品靴底はその軟化及び収縮を進行しながらアッパーと接着するので、ちょうどいいサイズの製品靴底を得ることができ、そして製品靴底の上下両面の接着も強固になる。
【0017】
従って、本発明は成型材料の不足を防止するための成形材料の浪費も効果的に軽減できる上、簡単な方法で強固な靴底構造を有する靴を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下は各図面を参照して本発明にかかる靴製造方法の好ましい実施形態を説明する。図1に示すのは本実施形態のフローチャートであり、図2は各材料や部材の構成及び設置関係を示し、図3に示すのはアウトソール10と半製品インソール20とアッパー30とが金型50のキャビティに装入される時の金型50の断面図である。図1に示す順番に各工程を実行すれば、本発明の効果が得られる靴を製造することができる。
【0019】
本発明におけるアウトソール用意、半製品靴底用意、アッパー用意、靴型及び金型の用意するなどの用意工程は、前後の関係がなく、任意に順番を変え、もしくは同時に用意することができるが、この実施形態では最初にアウトソールを用意する(S101)。用意するアウトソールは、図2に示すように、1枚のものや、図4に示すように、アウトソール構成部10a、10bという前後2部分により組み合わせたもの、あるいは3部分、4部分により組み合わせたもの(図示せず)などを用いることができる。その材料についは、例えばゴムを採用することができる。また、EVA樹脂やTPR樹脂、TPU樹脂などの熱可塑性樹脂もアウトソールの材料として採用することができる。
【0020】
用意する半製品靴底20は熱可塑性EVA樹脂からなり、且つ、発泡を経たものである(S102)。図2を参照して見ると、ここで用意する半製品靴底20の体積は製品靴底より12%〜45%大きく、上面21と、下面22と、上面21の周縁から上に伸出て形成されているフェンス23とを有している。
【0021】
引き続いて、アッパー用意工程(S103)では、ミシンにより複数枚の甲材を、足を収容する空間を内包できるように組み合って、開口31と底面33と側面32を有するアッパー30を製造する。
【0022】
靴型及び金型を用意する工程(S104)では、靴底の形を有するキャビティ53が形成された金型50と、金型50が持つキャビティ53に装入できる靴型40とを用意する。図2を参照してみると、金型50は互いに対向する両側の2つの側型52と、靴型40に対向し、2つの側型52の間に挟まれている下型51とからなり、靴底の形は下型51の靴型40側の面に形成されている。また、図3をも参照してみると、2つの側型52と下型51と靴型40それぞれの内部には、各型の温度を調整する温度制御手段として流路54が設けられている。各流路54に熱湯などの熱媒体もしくは冷水などの冷媒体を注入すれば、各型の温度を制御調整することができる。ここで、流路54は側型52と下型51と靴型40それぞれの内部を貫通し、且つペアに設けているが、流路54を蛇行状に設けて温度の制御調整の効率を向上することができる。ちなみに、本発明の温度制御手段は流路に限られることなく、赤外線加熱装置や電磁波加熱装置などの温度を制御できる手段を用いて金型を加熱することもできる。
【0023】
上記各部材の用意が整ったら、アウトソール10と半製品靴底20と前記アッパー30とを一体に接着させて靴を製造する工程に移る。
【0024】
まず、図2及び図3に示すように、前記アッパー30をその開口31を経由して靴型40に被覆させると共に、アウトソール10及びアッパー10に接着剤を塗布し、半製品靴底20の両面それぞれに接着前処理剤を塗布する接着剤塗布工程(S105)を実行する。この工程において、接着剤をアッパー30の底面33及び側面32の下縁、そしてアウトソール10の半製品靴底20と接着する面に塗布し、接着前処理剤を半製品靴底20のアウトソール10及びアッパーの接着剤に対応して接着する上下二面21、22に塗布する。
【0025】
次に、図2及び図3に示すように、アウトソール10と、半製品靴底20と、アッパー30で覆われた靴型40との順に下から上へ前記金型50のキャビティ53に装入する装入工程(S106)を実行する。この装入工程において、アッパー30と半製品靴底20を予めに接着させてからキャビティ53に装入することもできる。また、この実施形態ではアウトソール10と、半製品靴底20と、アッパー30で覆われた靴型40とを、室温にてキャビティ53内に装入するが、半製品靴底20を予め50℃〜100℃に加熱してから、接着剤や接着前処理剤を塗布してキャビティ53内に装入することもできる。
【0026】
それから、熱媒体を各流路54に注入して、金型50を110℃〜150℃に昇温させ、同時にアッパー30で被覆されている靴型40により15〜75kg/cmの圧力が半製品靴底20に掛けて、半製品靴底20を軟化させると共にキャビティ53の形に合わせてアウトソール10及びアッパー30と共に一体に接着させる軟化接着工程(S107)を実行する。
【0027】
この軟化接着工程において、半製品靴底20は金型50により加熱され、軟化する同時にキャビティ53の形に合わせて変形し、アウトソール10と強固的に接着することができる。また、靴型40からの圧力をアッパー30を介して半製品靴底20にかけ、各流路54からの熱に伴って、軟化及び変形を経た半製品靴底の上面及び上面周縁のフェンス23をアッパー30の底面及び側面に強く張付けて強固に接着することができる。また、アッパー30の底面31にて予め細毛状や凹凸状に形成しておけば、半製品靴底とアッパー30の接着を更に強める効果がある。
【0028】
この軟化接着工程を1〜7分間行い、終わった後熱媒体の供給を停止して代りに冷媒体を各流路54に注入して金型50を冷却させる冷却工程(S108)を実行し、半製品靴底20を製品の靴底のサイズにするように冷却させる。
【0029】
最後にキャビティ53内からアウトソール10と製品靴底とアッパー30とが一体になった靴を取出して製品靴底のはみ出しを除去する仕上げ工程(S109)を実行して靴を完成する。
【0030】
ちなみに、上記の製造方法ではアウトソール10と半製品靴底20をそれぞれ用意して接着させて製品靴底にするが、アウトソール10を用意せずに半製品靴底20とアッパー30だけを金型50のキャビティ53に装入して半製品靴底20を軟化、収縮させて製品靴底にすることもできる。
【0031】
また、本発明の靴製造方法において、更に強化シートや強化ストリップなどの強化部材の設置をも製造方法に加えることができる。
【0032】
続いて、本発明の靴製造方法の利点を以下の通りにまとめている。
【0033】
まず、本発明では、靴底は発泡を経た半製品の状態で金型50のキャビティ53に装入され、キャビティ53内に軟化、同時にアウトソール10及びアッパー30との接着を行う。この方法は従来の靴底の射出成形より簡単に行うことができ、型の排気システムや成型圧力、成型温度による成型材料の不足やはみ出しなどの問題も大幅に解消される。
【0034】
更に、本発明は、金型50を110℃〜150℃に昇温させて、体積が製品靴底より12%〜45%大きくなっている半製品靴底を加熱しながら、靴型による15〜75kg/cmの圧力を半製品靴底にかけるので、半製品靴底はその軟化及び収縮を進行しながらアッパーと接着するので、ちょうどいいサイズの製品靴底を得ることができ、そして製品靴底の上下両面の接着も強固になる。
【0035】
更に、本発明は金型50を110℃〜150℃に昇温させて半製品靴底を加熱しながら、靴型40による15〜75kg/cmの圧力を半製品靴底20にかけるので、半製品靴底20はその軟化を進行しながらアウトソール10及びアッパー30と接着してから冷却させてちょうどいいサイズの製品靴底を得ることができ、そして製品靴底の上下両面を強固に接着することができ、製品靴底上面周縁のフェンス23もアッパー30に強く張付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
上記構成によれば、本発明の靴製造方法は、予めに発泡を経た半製品靴底を金型内で軟化の加熱処理を行いながらアッパー及びアウトソールと組み合せるので、半製品靴底の冷却における収縮率が予想しやすく、さほど成型圧力や成型温度を正確に制御しなくても、収縮率の誤差が小さいので、成型材料の不足やはみ出しなどの発生を抑えることができる。
【0037】
更に、本発明において、金型50を110℃〜150℃に昇温させて、体積が製品靴底より12%〜45%大きくなっている半製品靴底を加熱しながら、靴型40による15〜75kg/cmの圧力を半製品靴底にかけるので、半製品靴底はその軟化を進行しながらアウトソール及びアッパーと接着してから冷却させてちょうどいいサイズの製品靴底を得ることができ、そして製品靴底の上下両面を強固に接着することができる。
【0038】
従って、本発明は成型材料の不足を防止するための成形材料の浪費も効果的に軽減できる上、簡単な方法で強固な靴底構造を有する靴を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の好ましい実施形態の靴製造方法のフローチャートである。
【図2】該実施形態における各部材の構成及び設置関係を示し説明図である。
【図3】軟化接着工程を実行する際金型の断面図である。
【図4】前後2部分により組み合わせたアウトソールの場合、各部材の構成及び設置関係を示し説明図である。
【符号の説明】
【0040】
10 アウトソール
10a、10b アウトソール構成部
20 半製品靴底
21 上面
22 下面
23 フェンス
30 アッパー
31 開口
32 側面
33 底面
40 靴型
50 金型
51 下型
52 側型
53 キャビティ
54 流路(温度制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡を経て体積が製品靴底より12%〜45%大きい半製品靴底と、アッパーと、靴型を有し且つ前記靴型の回りにキャビティが形成された金型とを用意する工程と、
前記アッパーを前記靴型に被覆させてから、前記半製品靴底を前記アッパーの靴底と結合する一面に置くことで、前記アッパー及び前記半製品靴底を前記金型の前記キャビティに装入する工程と、
前記金型を110℃〜150℃に昇温させることによって、前記半製品靴底を軟化し、前記キャビティの形に合わせて前記アッパーと一体に接着させる工程と、
前記金型をまた冷却させて前記半製品靴底を製品靴底の体積になるように収縮させる工程と、を含むことを特徴とする靴製造方法。
【請求項2】
前記金型を昇温する工程では、前記アッパーに被覆されている前記靴型が、15〜75kg/cmの圧力を前記半製品靴底に掛けて前記アッパーと前記半製品靴底を強固的に接着させることを特徴とする前記請求項1に記載の靴製造方法。
【請求項3】
前記半製品靴底の周縁の前記アッパーと接着する面にはフェンスが上に伸出て形成されていることを特徴とする請求項1に記載の靴製造方法。
【請求項4】
前記靴型は、前記金型と共に昇温及び冷却されることを特徴とする請求項1に記載の靴製造方法。
【請求項5】
前記キャビティ内に装入される前に、前記半製品靴底を予め50℃〜120℃に加熱することを特徴とする前記請求項1に記載の靴製造方法。
【請求項6】
前記金型を昇温させる前に、アウトソールを前記アッパーと両側から前記半製品靴底を挟むように前記金型のキャビティに装入する工程も含むことを特徴とする前記請求項1に記載の靴製造方法。
【請求項7】
前記アウトソールと前記半製品靴底を予め接着してから共に前記金型のキャビティに装入することを特徴とする前記請求項6に記載の靴製造方法。
【請求項8】
前記金型には、互いに対向する2つの側型と、前記靴型に対向して前記2つの側型の間に挟まれている下型とからなり、前記2つの側型及び前記下型それぞれの内部には流路が設けられてその流路を介して前記各型の温度を調整することができることを特徴とする前記請求項1に記載の靴製造方法。
【請求項9】
前記アウトソールは熱可塑性プラスチック材からなることを特徴とする前記請求項6に記載の靴製造方法。
【請求項10】
前記熱可塑性プラスチック材はEVA樹脂やTPR樹脂、TPU樹脂のいずれかであることを特徴とする前記請求項9に記載の靴製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−110176(P2008−110176A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296570(P2006−296570)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(596176828)
【Fターム(参考)】