説明

【課題】靴踵部の形状を調節できるようにする。
【解決手段】靴1の踵部50は、踵部本体、カウンター60、及びベルト70を主として構成される。踵部本体は、カウンター60及びベルト70と比較して相対的に柔軟な素材で構成される。カウンター60は、踵部本体の後部中央に縫着、接着、又は内包され、踵下部から足のアキレス腱に沿って、踵部50を上方へ立たせる。ベルト70は、ベルト本体、ベルト止着部72及びベルト調整部74から構成される。ベルト止着部72は、ベルト本体を、踵部50の前方両側面(内甲、及び外甲側)の一部分に縫着、又は接着などによって止着する。ベルト70は、カウンター60の上部(アキレス腱に沿う部分)を覆うように跨いで締め付ける構造となっており、ベルト70の長さを調整することにより、履き口の踵側形状を変化させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踵側の調整が可能な靴に関する。
【背景技術】
【0002】
シューフィッティングでは、インソールを調整するなどして足に靴を合わせることが行われている。しかしながら、靴の踵側の調整は困難であった。
なお、スポーツシューズでは、靴紐などによる締付けによって踵や足首の密着感を増大させることが行われている。例えば、特許文献1には、帯状または紐状の緊締素材をシューズの踵部から内甲側または外甲部、そして足甲部にかけて配設して、緊締することで、踵部から土踏まず部分にかけてのフィット性と安定性を確保するシューズが開示されている。
【特許文献1】特開2001−211903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上述した背景からなされたものであり、靴踵側の形状を調節できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る靴は、靴の踵部に設けられたヒールカウンターと、前記ヒールカウンターの上部に当接する位置に配置され、少なくとも水平方向の長さを、固定的に調整可能なベルトとを有し、前記ベルトの長さを調整することにより、少なくとも靴の履き口の踵側の形状が変化する。
【0005】
好適には、足の甲側を締め付ける締付け手段をさらに有し、前記ベルトは、前記締付け手段とは独立して、長さを調整できる。
好適には、装着者のアキレス腱の付け根に相当する位置で、前記ヒールカウンターに固定されたチューブ状部材をさらに有し、前記ベルトは、前記チューブ状部材の穴に通された、幅0.5cm〜2.0cmのベルト状部材である。
好適には、前記ベルトは、履き口の一部を構成する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、靴踵部の形状を調節できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、本実施形態に係る靴1(右足用)を例示する右側面図、図2は、背面図、図3は、平面図である。
図1、2、及び3に例示するように、靴1は、足甲部10、靴紐20、爪先部30、甲被部40、踵部50、カウンター60(ヒールカウンター)、ベルト70、及びソール80を主として構成されている。なお、それら構成部の内、足甲部10、靴紐20、爪先部30、甲被部40、及びソール80は、特に限定されるものではなく、既存の靴としての機能を実現するものであればよい。
また、本実施形態における足甲部10は、靴紐20によって締め付けられる構造となっているが、足甲部10を締め付ける構造は、これに限定されるものではなく、例えば、ベルトやゴムなどによって締め付ける構造としてもよい。
【0008】
踵部50は、足の踵を包み込む部分であり、踵部本体と、カウンター60とで構成されている。踵部本体は、カウンター60及びベルト70(後述)と比較して相対的に柔軟な素材で構成される。例えば、踵部本体の素材をナイロン系の合成繊維とし、カウンター60、及びベルト70の素材を人工皮革などとしてもよい。
【0009】
カウンター60は、踵部50の後部中央に配置されている。カウンター60は、踵部本体に縫着、接着、又は内包され、踵下部から足のアキレス腱に沿って、踵部50を上方へ立たせた状態で維持する。
また、カウンター60の形状は、図2に例示されるように、踵下部及びアキレス腱の形状に合わせ、上部は細く、下部は丸みを帯びた、いわゆるオニオンカーブを形成するものであることが望ましいが、例えば、少なくともアキレス腱と同等の横幅がある略矩形型や略台形型などであってもよい。
【0010】
ベルト70は、ベルト本体、ベルト止着部72、及びベルト調整部74から構成される。ベルト70は、カウンター60の上部に当接する位置に配置され、少なくとも水平方向の長さを固定的に調整可能である。ここで、カウンター60の上部とは、カウンター60の上半分の領域を意味する。また、「固定的に調整」とは、一旦調整した後は、別途外力を加えない限り、ベルトの長さがほぼ変化しない状態をいう。本例のベルト本体は、幅0.5cm〜2.0cmの人工皮革などで構成されたベルト状部材であり、その長軸が略水平となっている。なお、ベルト本体は、少なくとも水平方向の長さが調整できるのであれば、水平配置に限定されるものではなく、例えば、両端が中央部よりも低くなるように斜め方向に配置されてもよい。本例のベルト70は、カウンター60の上端近傍(アキレス腱に沿う部分)を外側から覆うように跨いで締め付ける構造となっている。具体的には、履き主(装着者)のアキレス腱の付け根に相当する位置で、カウンター60に固定されたチューブ状部材(不図示)が設けられている。このチューブ状部材は、略水平方向の穴を有する。ベルト70は、このチューブ状部材の穴に通されており、水平方向には摺動可能であるが、鉛直方向には固定されている。
ベルト止着部72は、ベルト本体を、踵部50の前方両側面(内甲、及び外甲側)の一部分に縫着、又は、接着などによって止着する領域である。
【0011】
ベルト調整部74は、足甲部10を締め付ける靴紐20(締付け手段)とは独立して、ベルト70の実効的な長さを調整する部材である。例えば、ベルト調整部74は、図2に例示するように、外甲側のベルト止着部72Aから延びる長い方の一端を、内甲側のベルト止着部72Bから延びる短い方の一端に設けた金具を介して折り曲げて、面ファスナーなどで固定するような構造である。
なお、ベルト調整部74の位置及び太さは、踵部50の形状を十分に調節できるように、カウンター60の上部(アキレス腱に沿う部分)の範囲とすることが望ましい。
【0012】
図4(A)は、本実施形態に係る靴1においてベルト70を長めに調整した踵部50の図であり、図4(B)は、ベルト70を短めに調整した踵部50の図である。
図4(A)に例示するように、ベルト70を長めに調整した場合には、踵部50の形状は、略半楕円形をしている。これにより、靴1の履き口は、踵側で広めの形状に保たれる。
そして、図4(B)に例示するように、図4(A)の状態からさらにベルト70を締めると、ベルト止着部72が踵部50の後方にひっぱられ、踵部50の形状がカウンター60を中心として内側に歪んで、細くなる。なお、このとき、カウンター60は、変形しない程度の強度、又は弾力性を有していることが望ましい。これにより、靴1の履き口は、踵側で狭い形状に変形する。
【0013】
このようにして、履き主は、ベルト70の長さを調整することによって、カウンター60で踵下部からアキレス腱にかけての部位を支えつつ、踵部50の形状をアキレス腱の横側を締めるように調節することができる。これは、例えば、着物の帯板のようにお腹全面をしっかり押さえつつ、脇腹を締める効果に近い。
【0014】
また、踵部50の形状を踵下部からアキレス腱にかけての部位の形状に合わせることは、踵の横ずれや摩擦を防ぐこと、さらには、ウォーキングなどにおける安定性や足と靴との一体感が得られることに繋がる。
【0015】
[変形例]
次に、上記実施形態の変形例を説明する。
図5は、変形例における靴100(右足用)の右側面図である。
図5に例示するように、靴100は、足甲部110、爪先部130、甲被部140、カウンター160、ベルト170、及びソール180を主として構成されている。すなわち、靴1と比較して、靴紐20、及び踵部本体がない構成となっている。
なお、それら構成部の内、足甲部110、爪先部130、甲被部140、及びソール180は、特に限定されるものではなく、既存の靴としての機能を実現するものであればよい。
【0016】
カウンター160は、靴100において踵下部から足のアキレス腱に沿うように位置し、ソール180に縫着、又は接着などによって止着される。カウンター160は、ソール180から延びる同一部材で構成されてもよい。
なお、カウンター160の形状は、前述のカウンター60と同様とする。
【0017】
ベルト170は、ベルト本体、ベルト止着部172及びベルト調整部174から構成される。ベルト止着部172は、ベルト本体を、足甲部110の一部分に縫着、又は、接着などによって止着する。ベルト調整部174は、前述のベルト調整部74と同様の構造とする。
すなわち、本変形例では、カウンター160と、ベルト170の一部とが、靴の踵側及び両側面の履き口を構成している。
【0018】
このような構成をとることで、履き主は、ベルト170の長さを調整することによって、履き口の踵側形状を、略半楕円形の形状(上方から見た形状)から略逆三角形の形状まで変形させることができる。
そして、例えば、踵の細い履き主は、ベルト170によって形成される形状を略逆三角形に近づけるように調節することで、前述の靴1と同様に、カウンター160で踵下部からアキレス腱にかけての部位を支えつつ、ベルト調整部174によってアキレス腱の横側を締めることができる。一方、踵の太い履き主は、ベルト170によって形成される形状を略半楕円形の形状に調節することで、自身の踵の形状に靴の踵を合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】靴1(右足用)を例示する右側面図である。
【図2】靴1(右足用)を例示する背面図である。
【図3】靴1(右足用)を例示する平面図である。
【図4】(A)は、靴1においてベルト70を長めに調整した踵部50の形状を例示し、(B)は、ベルト70を短めに調整した踵部50の形状を例示する図である。
【図5】変形例における靴100(右足用)の右側面図である。
【符号の説明】
【0020】
1,100・・・靴
10,110・・・足甲部
20・・・靴紐
30,130・・・爪先部
40,140・・・甲被部
50・・・踵部
60,160・・・カウンター
70,170・・・ベルト
72,172・・・ベルト止着部
74,174・・・ベルト調整部
80,180・・・ソール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴の踵部に設けられたヒールカウンターと、
前記ヒールカウンターの上部に当接する位置に配置され、少なくとも水平方向の長さを、固定的に調整可能なベルトと
を有し、
前記ベルトの長さを調整することにより、少なくとも靴の履き口の踵側の形状が変化する
靴。
【請求項2】
足の甲側を締め付ける締付け手段
をさらに有し、
前記ベルトは、前記締付け手段とは独立して、長さを調整できる
請求項1に記載の靴。
【請求項3】
装着者のアキレス腱の付け根に相当する位置で、前記ヒールカウンターに固定されたチューブ状部材
をさらに有し、
前記ベルトは、前記チューブ状部材の穴に通された、幅0.5cm〜2.0cmのベルト状部材である
請求項1に記載の靴。
【請求項4】
前記ベルトは、履き口の一部を構成する
請求項1に記載の靴。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−154999(P2010−154999A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335855(P2008−335855)
【出願日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(304053669)有限会社 のさか (6)
【Fターム(参考)】