説明

鞍乗り型車両

【課題】本発明は、盗難対策装置を備えた鞍乗り型車両において、操舵ハンドルの操舵操作への影響を及ぼし難くできる技術を提供することを課題とする。
【解決手段】車体フレーム11に、操舵ハンドル16とシート24が前後に離れて設けられ、操舵ハンドル16とシート24の間にて車体フレーム11に、樹脂製品としての収納ボックス83とサイドカウル41L、41Rが取付けられている自動二輪車10において、車両側面視で、車体フレーム11より上方位置に、装置本体部101と、アンテナ部102と、装置本体部101からアンテナ部102まで延びるアンテナハーネス103とから構成される盗難対策装置80が配置される。アンテナ部102と装置本体部101は、共通のステー89を介して収納ボックス83に取付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部に盗難対策装置を備えた鞍乗り型車両の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者等の使用者が意図する場所に車両が無いことがある。この場合に、車両の位置が特定できると便利である。
【0003】
車両の位置が特定できる機能を有する盗難対策装置を備えた鞍乗り型車両が知られている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0004】
特許文献1の図1に示すように、盗難対策装置(50)(括弧付き数字は、特許文献1記載の符号を示す。以下同じ。)は、前輪(32)の上方にて操舵ハンドル(31)と一体に配置される。車両前部に位置する操舵ハンドル(31)に盗難対策装置(50)を配置することで、良好な通信環境を得ながら限られた車体スペースを有効に活用する。
【0005】
ところで、盗難対策装置(50)が操舵ハンドル(31)と一体に設けられていると、操舵ハンドル(31)の操舵によって、盗難対策装置(50)と車体側に設けられている電装部品の間の距離が変化する。盗難対策装置(50)と電装部品間の距離が変化すると、ハーネスの張り又は撓みが変化する。ハーネスの張り又は撓みが変化すると、操舵ハンドル(31)の操作が重くなる等操舵操作に影響を与えることがある。
盗難対策装置を備えた鞍乗り型車両において、操舵ハンドルの操舵操作への影響を及ぼし難くできる技術が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−116127公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、盗難対策装置を備えた鞍乗り型車両において、操舵ハンドルの操舵操作への影響を及ぼし難くできる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、金属製の車体フレームに、運転者が操舵するハンドルと運転者が座るシートが前後に離れて設けられ、ハンドルとシートの間にて車体フレームに、樹脂製品が複数個取付けられている鞍乗り型車両において、車両側面視で、車体フレームより上方位置に、装置本体部とアンテナ部と装置本体部からアンテナ部まで延びるアンテナハーネスとから構成される盗難対策装置が配置され、車両平面視で、盗難対策装置は、少なくとも2つの樹脂製品の隙間に配置され、装置本体部は、平面の面積が側面の面積より小さくなるようにして配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明では、アンテナ部は、平面の面積が側面の面積より大きくなるようにして配置され、且つアンテナ部の平面の面積は、装置本体部の平面の面積より小さいことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明では、アンテナ部は、装置本体部より上方に配置され、これらのアンテナ部と装置本体部が、共通のステーを介して樹脂製品の1に取付けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明では、複数の樹脂製品は、収納ボックスと、この収納ボックスの車両側方を覆う左右のサイドカウルであり、盗難対策装置は、左右のサイドカウルの一方と収納ボックスとの間の隙間に配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明では、複数の樹脂製品は、エアクリーナケースと、このエアクリーナケースの車両側方を覆う左右のサイドカウルであり、盗難対策装置は、左右のサイドカウルの一方とエアクリーナケースとの間の隙間に配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、収納ボックスの上部開口はキー付きリッドカウルで塞がれ、収納ボックスの前縁から車体前部の上面を覆うアッパカウルが延ばされ、このアッパカウルの後部を車体に止める留め具がリッドカウルの下に配置され、アッパカウルの下にステーが配置され、留め具はリッドカウルを開放したときに回すことができるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、ハンドルとシートの間にて車体フレームに、樹脂製品が複数個取付けられ、少なくとも2つの樹脂製品の隙間に、盗難対策装置が配置されている。すなわち、盗難対策装置は、車体本体側に配置される。
【0015】
仮に、操舵ハンドルの前方に盗難対策装置を配置すると、盗難対策装置からハーネスを車両本体側へ延ばす必要がある。ハーネスは車両本体側に設けられているバッテリ等の電装部品に接続される。盗難対策装置が車両本体側に配置される構造は、盗難対策装置がハンドル側に配置されるという構造に較べると、ハンドルを操舵するときに、ハーネスがハンドルの操舵に伴って引っ張られ又は撓むため、ハンドル操作が重くなる場合があった。
この点、本発明の盗難対策装置は、車両本体側に配置されるので、ハンドルの操舵操作が重くなる等操舵ハンドルの操舵操作への影響を及ぼし難くすることができる。
【0016】
さらに、盗難対策装置を囲う樹脂製品は電波を通すが、金属製の車体フレームは電波を通さない。このような車体フレームより上位に盗難対策装置が配置されるので、通信性能が良好になる。
【0017】
さらにまた、盗難対策装置の装置本体部は、少なくとも2つの樹脂製品の隙間に配置され、樹脂製品がプロテクタの役割を果たすため、盗難対策装置の装置本体部は良好に保護される。また、盗難対策装置の装置本体部は、平面の面積が側面の面積より小さくなるようにして配置されている。盗難対策装置は、いわゆる縦長に置かれるため、2つの樹脂製品の隙間を小さくすることができる。
【0018】
請求項2に係る発明では、アンテナ部の平面は送受信面となる。アンテナ部は、平面の面積が大きいのでGPSとの通信が良好になる。また、アンテナ部の平面の面積が、装置本体部の平面の面積より小さいため、2つの樹脂製品の隙間を小さくすることができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、アンテナ部は装置本体部の上位に配置されるため、アンテナ部の通信性能は良好になる。
また、盗難対策装置の本体部とアンテナ部は、共通のステーに支持される。本体部とアンテナ部のステーを共有させたので、本体部とアンテナ部をステーにサブアセンブリーした状態で、本体部とアンテナ部を一体化したステーを車体構成部品へ取付けることができる。
【0020】
仮に、本体部とアンテナ部とを別々のステーにサブアセンブリーすると、これらのステーを別々に位置決め及び取付ける必要があり、組立工数が嵩む。
この点、本発明では、本体部とアンテナ部とを共通のステーに取付けたので、組立工数を低減することができる。加えて、本体部とアンテナ部を各々専用のステーに取付ける構造に較べて、ステーの数を減らすことができる。
【0021】
請求項4に係る発明では、盗難対策装置が、サイドカウルと収納ボックスの間に配置されているので、サイドカウルと収納ボックスによって盗難対策装置を保護することができる。
【0022】
請求項5に係る発明では、盗難対策装置が、サイドカウルとエアクリーナケースの間に配置されているので、サイドカウルとエアクリーナケースによって盗難対策装置を保護することができる。
【0023】
請求項6に係る発明では、収納ボックスの前縁から車体前部の上面を覆うアッパカウルが延ばされ、このアッパカウルの後部を車体に止める留め具が収納ボックスの上部開口を塞ぐリッドカウルの下に配置される。
【0024】
リッドカウルが閉まっているときは、アッパカウルの後部を車体に止める留め具を回すことができない。留め具が閉まっていればアッパカウルを外すことができない。
アッパカウルを外すことができなければ、盗難対策装置を取外すことは困難となる。結果、盗難対策装置の不正な取外しを難しくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る自動二輪車の右側面図である。
【図2】図1から車体カバーを除いた図である。
【図3】図1の3矢視図である。
【図4】図3からリッドカウルを除いた平面図である。
【図5】収納ボックス及びそのキーロック構造を説明する断面図である。
【図6】シート、車体構成部品の支持構造を説明する断面図である。
【図7】盗難対策装置の取付構造を説明する斜視図である。
【図8】盗難対策装置の取付構造を説明する分解斜視図である。
【図9】アンテナハーネスを係止するクリップ部の断面図である。
【図10】盗難対策装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図中及び実施例において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」は、各々、自動二輪車に乗車する運転者から見た方向を示す。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0027】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、自動二輪車10は、車体フレーム11と、この車体フレーム11のヘッドパイプ12に設けられ前輪13を操舵可能に支えるフロントフォーク15と、このフロントフォーク15に一体化される操舵ハンドル16と、車体フレーム11の後部に設けられるピボット軸17と、このピボット軸17から後方へ延びているスイングアーム18と、このスイングアーム18の後端部に取付けられる後輪21と、車体フレーム11に懸架される駆動源としてのエンジン22と、前輪13と後輪21の間にて車体フレーム11に載置され運転者が着座するシート24と、シート24と操舵ハンドル16の間に設けられ運転者25がひざ26で挟むニーグリップ部27とを備える。シート24に運転者が跨って乗車するため、この種の車両は鞍乗り型車両と呼ばれる。
【0028】
車体の外方は、車体カバー30で覆われる。車体カバー30は、車体の前部側方を覆う第1サイドカウル31と、この第1サイドカウル31の車両後方に連続して設けられ車体の中間部側方を覆う第2サイドカウル32と、この第2サイドカウル32の車両後方に連続して設けられ車体の中間部側方から後部側方を覆うリヤサイドカウル33と、第1サイドカウル31の上方に第1サイドカウル31に連続するように設けられ車体の側方から車体の上方にかけて覆うアッパサイドカウル34と、このアッパサイドカウル34の上方に連続するように設けられ車体の上方を覆うアッパセンタカウル35と、このアッパセンタカウル35の車両後方にて、第2サイドカウル32の上方に且つ第2サイドカウル32に連続するようにして設けられ後述する収納ボックスの上方を覆うアッパリッドカウル36とを主要素とする。
第1サイドカウル31と、第2サイドカウル32と、リヤサイドカウル33とからサイドカウル41が構成される。
これらの車体カバー30は、全て樹脂製品40である。車体カバー30は、車体フレーム11に取付けられている。
【0029】
次に、車体フレームの詳細を説明する。
図2に示すように、車体フレーム11は、ヘッドパイプ12と、このヘッドパイプ12の上部から後方へ延びているメインフレーム51と、このメインフレーム41の後部から後方へ延びた後下方に延びて下部にピボット部52を有するセンタフレーム53と、このセンタフレーム53から車両後方へ延びるシートレール54と、このシートレール54とセンタフレーム53の間に渡される支持フレーム55と、ヘッドパイプ12の下部から後方へ延びた後下方に延びているダウンフレーム56と、このダウンフレーム56とメインフレーム51の間に渡した第1サブフレーム57及び第2サブフレーム58とを主要な構成要素とする。
【0030】
メインフレーム51の後端に、エンジン22が取付けられる第1エンジンハンガ61が設けられ、ダウンフレーム56の下端にエンジン22が取付けられる第2エンジンハンガ62が設けられ、ピボット部52の上部及び下部にてセンタフレーム53にエンジン22が取付けられる第3エンジンハンガ63及び第4エンジンハンガ64が設けられている。
【0031】
メインフレーム51、センタフレーム53、ダウンフレーム56、第1サブフレーム57及び第2サブフレーム58は、車両の左右に一対設けられている。
同様に、第1エンジンハンガ61〜第4エンジンハンガ64は、車両の左右に一対設けられ、これらの第1エンジンハンガ61〜第4エンジンハンガ64によって、エンジン22は車体フレーム11に懸架される。
【0032】
ダウンフレーム56は、その端部がエンジン22の前部で止まっており、懸架したエンジン22を強度部材として利用した、いわゆる、ダイヤモンドフレームといわれる。すなわち、エンジン22に、車体フレーム11の機能をもたせた。
【0033】
駆動源としてのエンジン22は、クランクケース66と、このクランクケース66から車両斜め上方に延びているシリンダ部67と、このシリンダ部67の上方に配置される吸気系部材68と、シリンダ部67の下方に延びており排気管71及び消音器72を含む排気系部材73と、シリンダ部67の前方に配置されるラジエータユニット74とを備えている。ピボット部52にメインスタンド75が設けられている。
【0034】
次に、盗難対策装置を覆う車体カバーについて説明する。
図3に示すように、自動二輪車10の操舵ハンドル16(ハンドル16)周りに、車体を上方から覆うアッパカウル42が設けられている。アッパカウル42は、ハンドル16の下方にて車幅方向中心を覆うアッパセンタカウル35と、このアッパセンタカウル35の車幅方向左右に設けられる左右のアッパサイドカウル34L、34Rと、アッパセンタカウル35及び左右のアッパサイドカウル34L、34Rに連続して車両後方に延びているアッパリッドカウル36から構成される。
本実施例において、右のアッパサイドカウル34L、34Rの下方に盗難対策装置80が配置され、盗難対策装置80は、右のアッパサイドカウル34Rによって覆われる。
【0035】
次に、図3からアッパカウルを取外した状態を説明する。
図4に示すように、アッパリッドカウル36の下方に、物を入れる上部開口82をもつ収納ボックス83が設けられ、この収納ボックス83の車両前方に、リッドカウル36に鍵をかけることができるキーシリンダ84が設けられている。
【0036】
車両平面視で、盗難対策装置80は、少なくとも2つの樹脂製品40の隙間85に配置される。詳細には、盗難対策装置80は、収納ボックス83と右のサイドカウル41Rの構成要素である右の第1サイドカウル31Rとの間の隙間85に配置される。さらに、盗難対策装置80は、エアクリーナ(図6、符号96)と右のサイドカウル41Rとの間の隙間に配置される。
【0037】
図3及び図4にて、収納ボックスの上部開口82はキー付きリッドカウル36で塞がれ、収納ボックスの前縁86から車体前部の上面を覆うアッパカウル42の構成要素となる左右のアッパサイドカウル34L、34Rが車両前方に延ばされ、このアッパサイドカウル34L、34Rの後部を車体に止める留め具88、88がアッパリッドカウル36の下に配置され、アッパリッドカウル36の下に盗難対策装置80を車体側へ止めるステー89が配置され、留め具88、88はアッパリッドカウル36を開放したときのみ外すことができるようにした。
【0038】
次に、収納ボックスの開閉構造について説明する。
図5に示すように、収納ボックス83の車両後部にヒンジ部91が設けられ、このヒンジ部91にアッパリッドカウル36が取付けられている。収納ボックス83の車両前部にキーシリンダ84が設けられ、このキーシリンダ84からケーブル92が延びており、このケーブルの先92aに設けられアッパリッドカウル36に設けた係合部93に係合可能なロック機構94がキーシリンダ84の車両後方にて収納ボックス83の車両前部に設けられている。ロック機構94は、キーシリンダ84の操作によって係合部93を収納ボックス83の前部に保持可能にする。
【0039】
すなわち、収納ボックス83の上部開口82は、収納ボックス83の後部に設けたヒンジ部91及びこのヒンジ部91に設けたアッパリッドカウル36によって開閉可能に設けられ、収納ボックス83の前部に設けたロック機構94によってロック可能に設けられている。図中、収納ボックス83に、ヘルメット90が収納される。
【0040】
次に、樹脂製品の取付構造について説明する。
図6に示すように、センタフレーム53の上方にて操舵ハンドル(図1、符号16)を回動可能に支えるヘッドパイプ12の車両後方には、エアクリーナケース96が配置され、このエアクリーナケース96の後方に収納ボックス83が配置され、この収納ボックス83の後方にシート24が配置される。ヘッドパイプ12とシート24の間は離間している。
【0041】
車体フレーム11の構成要素であるセンタフレーム53の上面前後に、前ステー77と後ステー78とが設けられ、前ステー77と後ステー78とに収納ボックスの底部97が複数の締結ボルト76によって締結される。なお、エアクリーナケース96はメインフレーム51に取付けられている。
すなわち、車体フレーム11に、樹脂製品40としての収納ボックス83とエアクリーナケース96が取付けられている。
後ステー78から上方へシート24を支えるシートステー79が延びている。
【0042】
このような自動二輪車10に、車両側面視で、車体フレーム11より上方位置に、盗難対策装置80が配置される。盗難対策装置80は、装置本体部101と、アンテナ部102と、装置本体部101からアンテナ部102まで延びるアンテナハーネス103とから構成される。
【0043】
図4にて、複数の樹脂製品40は、収納ボックス83と、この収納ボックス83の車両側方を覆う左右のサイドカウル41L、41Rであり、盗難対策装置80は、左右のサイドカウルの一方を構成する右のサイドカウル41Rと収納ボックス83との間の隙間85に配置されている。
【0044】
同様に、複数の樹脂製品40は、エアクリーナケース96と、このエアクリーナケース96の車両側方を覆う左右のサイドカウル41L、41Rであり、盗難対策装置80は、左右のサイドカウルの一方を構成する右のサイドカウル41Rとエアクリーナケース96との間の隙間87に配置されているということもできる。盗難対策装置80は、車両側面視で、樹脂製品40の構成要素であるエアクリーナケース96と収納ボックス83とにまたがるように配置される。
【0045】
図4及び図6にて、装置本体部101は、平面135の面積が側面136の面積より小さくなるようにして配置されている。アンテナ部102は、平面137の面積が側面138の面積より大きくなるようにして配置され、且つアンテナ部102の平面137の面積は、装置本体部101の平面135の面積より小さい。
【0046】
次に、盗難対策装置の取付構造について説明する。
図7に示すように、収納ボックス83の右側面99に、上方からねじ104をねじ込むことができるボス部105が設けられ、このボス部105に盗難対策装置80を支えるステー89がねじ104により締結される。ステー89には、収納ボックス83に締結されるまえに、予め、盗難対策装置80の装置本体部101とアンテナ部102とが装着されている。
【0047】
次に、ステーとこのステーに装着される盗難対策装置の支持構造等について説明する。
図8に示すように、盗難防止装置80のうちの装置本体部101は、その周囲が例えば、ラバー部材等の弾性部材107によって包まれている。弾性部材107の外側に、第1凸部111〜第3凸部113が形成される。これらの第1凸部111〜第3凸部113に、各々、第1係合穴114〜第3係合穴116が開けられる。これらの第1係合穴114〜第3係合穴116を、各々、後述するステー89に設けた第1突設部121〜第3突設部123に差し込むことで、装置本体部101をステーに89に装着させる。
【0048】
ステー89は、装置本体部101が装着される縦部126と、この縦部126に対して折り曲げた水平部127とから構成される。縦部126に第1突設部121〜第3突設部123が立てられる。これらの第1突設部121〜第3突設部123に、装置本体部101の周囲を囲う弾性部材107の第1係合穴114〜第3係合穴116を各々差し込むことで、装置本体部101をステー89の縦部126に取付けるようにした。
【0049】
水平部127は、アンテナ部102が装着される部分であり、端部にアンテナ部102をより安定的に止める爪部128が付設されている。アンテナ部102は、その底部131が水平部127に載置され、下方から小ねじ104によって水平部127へアンテナ部102が締結される。アンテナ部102を避ける位置にて水平部127に、孔部133、133が開けられ、これらの孔部133、133を収納ボックス83の右側面99に設けたボス部105に合わせ、上方からねじ104、104によってステー89をボス部105へ締結する。
【0050】
上記ステー89によってアンテナ部102は、装置本体部101より上方に配置され、これらのアンテナ部102と装置本体部101が、共通のステー89を介して樹脂製品40の構成要素である収納ボックス83に取付けられる。
【0051】
次に、装置本体部とアンテナ部の間に渡されるアンテナハーネスの係止構造について説明する。
弾性部材107の外面108に、アンテナハーネス103を係止する第1〜第3クリップ部141〜143が形成される。第2クリップ部142は第1クリップ部141と第3クリップ部143の間に設けられる。
【0052】
図9(a)は、図8の9(a)−9(a)断面図である。図に示すように、第3クリップ部143は、外面108の側方に開放した断面C字状のクリップ部である。図8に示した第1クリップ部141は、第3クリップ部143と同様、外面108側方に開放した断面C字状のクリップ部である。
【0053】
図9(b)は第2クリップ部の断面図である。図に示すように、第2クリップ部142は、外面108の下方に開放したC字状のクリップ部である。このように、C字状のクリップ部の開放する向きを異なる向きとすることで、部品数を増加させることなく、アンテナハーネス103をクリップ部141〜143にしっかりと留めることができる。
【0054】
図9(a)にて、装置本体部101の周囲は、弾性部材107によって包まれるように囲われているので、単に、装置本体部101が接触する縦部(図8、符号126)のみに弾性部材を介在させた場合に較べて、外部の振動による装置本体部101への影響を減らすことができる。
【0055】
次に、自動二輪車に搭載されている盗難対策装置及びその関連部分のブロック図について説明する。
図10に示すように、盗難対策装置80は、装置本体部101と、この装置本体部101から延びているアンテナハーネス103と、このアンテナハーネス103の先に接続されるGPSアンテナ部(以下、「アンテナ部102」という。)とからなる。装置本体部64は、鞍乗り型車両(自動二輪車10)の車体に加えられた振動を検知する加速度センサ151と、複数の人工衛星から軌道情報を受信することにより車両の現在位置を検出する全地球測位システム部(Global Positioning System部)152と、加速度センサ151からの加速度信号SA及び全地球測位システム部152からの位置情報JPを受けて盗難対策を指令する制御部153と、制御部153からの交信指令SCに基づいて携帯電話基地局154へ位置情報JPを送信する携帯電話通信部155と、制御部153からのエンジン制御信号SECに基づきエンジン(図1、符号22)の点火装置156に点火停止信号SSSを送って点火装置156の作動を停止させる、すなわち、エンジン(図1、符号22)を停止させるエンジン制御部157と、制御部153からの警報制御信号SACに基づき警報装置158(ヘッドライト(図1、符号29)等の灯火器、ホーン)に警報信号SAを送って灯火器、ホーンを作動させる警報発生部161と、内部電源162とから構成される。内部電源162としては、例えば、リチウム電池が利用される。
【0056】
盗難対策装置が備えられている鞍乗り型車両の作用を次に述べる。
図4にて、操舵ハンドル16とシート24の間にて車体フレーム11に、樹脂製品40が複数個取付けられ、少なくとも2つの樹脂製品40、40の隙間85に、盗難対策装置80が配置されている。
【0057】
仮に、操舵装置であるハンドルの前方に盗難対策装置を配置すると、盗難対策装置からハーネスを車両本体側へ延ばす必要がある。ハーネスは車両本体側に設けられているバッテリ等の電装部品に接続される。ハンドルを操舵する際、盗難対策装置が車両本体側に配置される構造は、盗難対策装置がハンドル側に配置されるという構造に較べて、ハーネスがハンドルの動きに伴って引っ張られ又は撓むため、ハンドルの操作が重くなる場合があった。
この点、本発明の盗難対策装置80は、車両本体側に配置されるので、ハンドル16の操舵操作が重くなる等操舵性に影響を与える心配はない。
【0058】
収納ボックス83の上部開口82はキー付きリッドカウル(アッパリッドカウル36)で塞がれている。収納ボックスの前縁86から車体前部の上面を覆うアッパカウル42の構成要素である左右のアッパサイドカウル34L、34Rが延ばされ、これらの左右のアッパサイドカウル34L、34Rの後部を車体に止める留め具88がアッパリッドカウル36の下に配置される。
アッパリッドカウル36が閉まっているときには、留め具88を回すことができない。留め具88が閉まっていれば左右のアッパサイドカウル34L、34Rを外すことができない。
【0059】
従って、盗難対策装置80を取外すためには、キーを解除してアッパリッドカウル36を開ける操作が必要となり、アッパサイドカウル34L、34Rを取外すためには、アッパリッドカウル36を外す必要がある。このアッパリッドカウル36がキーによりロックされていれば、アッパサイドカウル34L、34Rの取外しは困難となる。結果、盗難対策装置80の不正な取外しを難しくすることができる。
【0060】
図6にて、盗難対策装置80を囲う樹脂製品40としてのアッパカウル42及びサイドカウル41は電波を通すが、金属製の車体フレーム11は電波を通さない。このような車体フレーム11より上位に盗難対策装置80が配置されるので、通信性能が良好になる。
【0061】
また、盗難対策装置80が、右のサイドカウル41Rと収納ボックス83の間に配置されているので、右のサイドカウル41Rと収納ボックス83によって盗難対策装置80を保護することができる。
また、盗難対策装置80が、右のサイドカウル41Rとエアクリーナケース96の間に配置されているので、右のサイドカウル41Rとエアクリーナケース96によって盗難対策装置80を保護することができる。
【0062】
なお、本実施例で、盗難対策装置は右のサイドカウルとエアクリーナケースの間から右のサイドカウルと収納ボックスの間にかけて配置されているが、左のサイドカウルとエアクリーナケースの間から左のサイドカウルと収納ボックスの間にかけて配置することは差し支えない。
【0063】
図4を併せて参照して、盗難対策装置80は、少なくとも2つの樹脂製品40の隙間81に配置されるが、盗難対策装置80は、いわゆる縦長に置かれるため、2つの樹脂製品80の隙間81を小さくすることができる。
【0064】
さらにまた、盗難対策装置80の装置本体部101は、少なくとも2つの樹脂製品40、40の隙間81に配置され、樹脂製品40がプロテクタの役割を果たすため、盗難対策装置80の装置本体部101は良好に保護される。
【0065】
図8にて、アンテナ部102の平面137は送受信面となる。アンテナ部102は、平面137の面積が大きいのでGPSとの通信が良好になる。また、アンテナ部102の平面137の面積が、装置本体部101の平面135の面積より小さいため、2つの樹脂製品40の隙間81を小さくすることができる。
【0066】
また、アンテナ部102は装置本体部101の上位に配置されるため、アンテナ部102の通信性能は良好になる。また、盗難対策装置80の装置本体部101とアンテナ部102は、共通のステー89に支持される。装置本体部101とアンテナ部102のステー89を共有させたので、装置本体部101とアンテナ部102をステー89にサブアセンブリーした状態で、装置本体部101とアンテナ部102を一体化したステー89を樹脂製品40へ取付けることができる。
【0067】
仮に、本体部とアンテナ部とを別々のステーにサブアセンブリーすると、これらのステーを別々に位置決め及び取付ける必要があり、組立工数が嵩む。
この点、本発明では、装置本体部101とアンテナ部102とを共通のステー89に取付けたので、組立工数を低減することができる。加えて、装置本体部101とアンテナ部を各々専用のステーに取付ける構造に較べて、ステーの数を減らすことができる。
【0068】
尚、本発明は、実施の形態では自動二輪車に適用したが、三輪車にも適用可能であり、一般の車両に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、盗難対策装置が備えられている自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0070】
10…鞍乗り型車両(自動二輪車)、11…車体フレーム、16…操舵ハンドル、24…シート、40…樹脂製品、41L、41R…左右のサイドカウル、80…盗難対策装置、83…収納ボックス、87…隙間、89…ステー、101…装置本体部、102…アンテナ部、103…アンテナハーネス、135…装置本体部の平面、136…装置本体部の側面、137…アンテナ部の平面、138…アンテナ部の側面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の車体フレーム(11)に、運転者が操舵する操舵ハンドル(16)と前記運転者が座るシート(24)が前後に離れて設けられ、前記操舵ハンドル(16)と前記シート(24)の間にて前記車体フレーム(11)に、樹脂製品(40)が複数個取付けられている鞍乗り型車両において、
車両側面視で、前記車体フレーム(11)より上方位置に、装置本体部(101)とアンテナ部(102)と前記装置本体部(101)から前記アンテナ部(102)まで延びるアンテナハーネス(103)とから構成される盗難対策装置(80)が配置され、
車両平面視で、前記盗難対策装置(80)は、少なくとも2つの前記樹脂製品(40、40)の隙間(81)に配置され、
前記装置本体部(101)は、平面(135)の面積が側面(136)の面積より小さくなるようにして配置されていることを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記アンテナ部(102)は、平面(137)の面積が側面(138)の面積より大きくなるようにして配置され、且つ前記アンテナ部(102)の平面(137)の面積は、前記装置本体部(101)の平面(135)の面積より小さいことを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記アンテナ部(102)は、前記装置本体部(101)より上方に配置され、これらのアンテナ部(102)と装置本体部(101)が、共通のステー(89)を介して前記樹脂製品(40)の1に取付けられていることを特徴とする請求項2記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記複数の樹脂製品(40)は、収納ボックス(83)と、この収納ボックス(83)の車両側方を覆う左右のサイドカウル(41L、41R)であり、前記盗難対策装置(80)は、前記左右のサイドカウル(41L、41R)の一方と前記収納ボックス(83)との間の隙間(85)に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記複数の樹脂製品(40、40)は、エアクリーナケース(96)と、このエアクリーナケース(96)の車両側方を覆う左右のサイドカウル(41L、41R)であり、前記盗難対策装置(80)は、前記左右のサイドカウル(41L、41R)の一方と前記エアクリーナケース(96)との間の隙間(87)に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
前記収納ボックス(83)の上部開口(82)はキー付きリッドカウル(36)で塞がれ、前記収納ボックスの前縁(86)から車体前部の上面を覆うアッパカウル(34R)が延ばされ、このアッパカウル(34R)の後部を車体に止める留め具(88)が前記リッドカウル(36)の下に配置され、前記アッパカウル(34R)の下に前記ステー(89)が配置され、
前記留め具(88)は前記リッドカウル(36)を開放したときに回すことができるようにしたことを特徴とする請求項3記載の鞍乗り型車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−23046(P2013−23046A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158796(P2011−158796)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)